涙は絶対に枯れない ( No.306 ) |
- 日時: 2011/03/13 19:47
- 名前: 桜庭 ID:Gpdb/fBY
- 第183話 涙は絶対に枯れない
「もうすぐでジム戦かあ〜どんな人が相手なんだろ?」 「確かだけどよォ、なんでも体格がすっげーやつらしいぜ? そんでもってポケモンたちも鍛え上げられてるとか」
ベッドに腰掛けてボールの中にいる仲間を見ながらマイは呟く。身支度を着々と済ましながらゴールドはマイを脅しかけるようなニヤつけた顔で言う。
「ええ! こわいの?」 「さーな? まっオレなら……オイオイオイオイ! 泣くなよ! 嘘だから! マイならいける!」 「本当に?」
ただでさえ人間関係は苦手なのに、戦う前からそんなことを言われたもんだから良からぬ予想でもして泣き出したではないか。 変わってねェなあ、なんて腰に抱き着いて来たマイの頭を撫でながらぼやく。 流石に泣き出した時には、らしくない焦りを見せてしまったが。
「たりめぇだろ! だから泣くなよ、なっ?」 「……うん」
背中に回された手に力が入る。あの″R″のことが原因か、精神が狂ってしまっているのかもしれない。 もちろんゴールドは″R″を知らないので、変わってないと思っているわけで。 仕方ないという表情で、身支度をしていたリュックから財布を取り出した。 残金を確認して、一言。
「よしっじゃー泣き止んだらアイスのひとつやふたつ奢ってやらァ!」 「アイス! 泣き止んだよ! よし行こう! アイスこっちに売ってたよ!」
顔が引きつりながら笑顔で言ってやると、さっきまで泣いていたのが嘘のようにマイが泣き止み、ゴールドの手を掴んで部屋の外へ出る。
***
「おいひー」 「はいはいよかったですね」 「ありがとーゴールド」 「……どういたしまして」
三段に積まれたアイスを器用に舐めて落とさないマイ。 はじめ絶対落とすからカップにしろ、と心配したゴールドにとびっきりの笑顔で、大丈夫! と宣言された。 そして今も、甘ったるい声色で礼を言われる。体温上昇と共に、残金ピンチがどうでもよくなった瞬間である。
「じゃっ部屋戻るぞ」 「うん! あ、一口食べる?」 片手でアイスコーンを持ち、片手はゴールドに握られているという何と言う親子状態だ、とツッコミをくらいそうだが、マイは全く気にしてないのかアイスをゴールドの口元まで手を伸ばして運ぶ。
「…………ん」 「えへへー。おいひ?」
にっこにっこして幸せ満開のマイに、ある意味幸せを掴み取ったゴールド。 そんなふたりに、とある主の声が聞こえた。 否、直接的に脳に伝えられてるような、そんな声が。
〈ねえ、聞こえる?〉
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