89話 見せてやろうか、本気ってやつを ( No.173 ) |
- 日時: 2011/03/03 19:20
- 名前: 天月 ID:4VjGt0ow
- 「ラス、“ハイドロポンプ”!」
ボールから出してすぐにクウトは指示をだす ラスは口を大きく開け、そこから水圧が半端じゃないほどの水を発射する 何度も言うが、水圧は半端無いので、衝撃でラスも少し後ろに下がっていく その水流の流れは速く、ほぼ一瞬で穴のある場所の上空に居たフライにぶちあたった そのぶちあたった水の水圧に負けて、水に押されるようにフライはフィールドの壁にぶちあたる。 見事に、というべきか。壁には綺麗な型が付いている フライは地面タイプで水攻撃は効果抜群だったため、すぐに戦闘不能となった ここらへんで、クウトとユウトの戦略の違いが垣間見れたことだろう ユウトはフライをボールに戻しながらぼやく
「兄貴、ほんっと、せっかちなお人好しだよ」 「うっせー! 俺はさっさと勝負を片付ける派なんだよ!」 「はいはい」 「くっそー…ムカつく……」
ぎりり、と歯軋り。そして拳をよりいっそう強く握る どっちも子供だなぁー、とユウナはそれを見ながら思ったのだという
「……でも、あの2人、最初のころのシルバーとゴールドにそっくりだよね」 「え……、俺、あんな大人気なかったか?」 「うん」
即答。自他共にクールキャラだと思っていたシルバーには少々重い現実だったようだ 黒い影が見え隠れするのがユウナとレッドの2人には見えた
「でもさー、双子なのに全然違うよな、戦い方が」 「そうだね。クウトは一気に仕留める派。ユウトはじりじり追い詰める、って感じ」 「そうそう。双子でここまで違うのは、珍しいんかね?」 「さぁ……。でも、あの2人性格まったく違うからねー」
あはは、とユウナとレッドは2人して笑う 横にいたシルバーは (やってろバカップル…)と思っていた。実際これより場を弁えないバカップルはこの世に点在している。至る所に さて、試合に戻ろうか
「レン、お願い」
どこまでもドSな神崎さんちのユウト君。彼が出したのは、彼が二番目に信頼しているレントラーのレンだ やばい、と。先ほどのクライの二の舞にでもなると思ったのか、クウトは腰につけてあるラスのボールと、もうひとつのボールに手をかける
「レン、“電磁波”」
にやり、と不敵な笑みを浮かべながらユウトはゆっくりと、まるで死刑宣告をするようにその言葉を紡いだ その指示…の、最初の一言めからレンは弱い電気を発生させていた さすが、長い間ユウトと過ごしただけある。声の調子などで、どの技を指示されたのかがわかるようになっているのだ
けれど、やられっぱなしのダメ兄貴なんかではない。少なくとも、バトルでは
「ラスっ! レンの周りに“水鉄砲”!!」
ラスはその言葉にすぐさま反応に、レンの周りに水を散らす すると、レンの放った弱い電気は……、 ラスよりも、周りに散らされた水の中へ流されていった 頭のいいラスは、自分の周りに一切の水滴すら残していない。誰がどういおうと、クウトの作戦と発想の勝利である
「チッ、……ずるいね。兄貴」 「るっせー。やられっぱなしなんて、カッコ悪いし」 「元からじゃん」 「るっせー!!」
すぐ相手(弟)のからかいに過剰な反応をするのが彼の悪いくせだ 良く言えば、感情に素直。悪く言えば、判りやすい はぁ、とユウトはそんな恥ずかし(くもないのだが)い兄の様子をみて溜息をついてから、一つの提案を下した
「次の一撃で、2戦目終らせようよ。同時に攻撃しかけて、どっちが負けるか、勝負」 「なっ、俺完璧不利じゃねーか」 「あれぇ〜? 兄貴は自信ないの〜?」
貴重な貴重な弟様の裏声。それも相乗してか、クウトにはカチン、とくるものがあった やっぱり乗られやすい馬鹿兄貴
「わかったよ。ずるは無しな!」 「はいはい、それじゃぁ………、」
きっ、と同時に2人は目つきを変える 一連の口論を見ていた観客達も、ごくり、と唾を呑む もちろん、ユウナ達も例外ではない。ただしレッドは子供みたいに興奮していたが
そして、なんの合図も無しに、2人は息をぴったり合わせ、本当に“同時”に、指示を下した
「“10万ボルト”!」 「“雪崩”!!」
同時に出された攻撃は、傍から見ればまるで自然災害の如く、嵐のように荒れていた 大きな大きな電圧は、流れ落ちる雪の中を走り、確実にラスに近づいている 一方、レンに向かって、ものすごいスピードで迫る雪崩は、既にレンの姿をなくしていた
全員が全員、勝敗の行方を見守る中、たった1人の少女は、静かにほくそ笑んだ
「……この勝負、引き分けー」
隣にいた者は、一瞬だけ驚いたが、雪煙が晴れると、すぐに納得した 雪に埋もれ、寒さと勢いで倒れてしまったレンと 届いてしまった電圧に負けてしまったラスがいた
双子は、最後まで頑張って耐えようとした己のポケモンを労わりながら、ボールの中へと戻した
《さぁ、これで本当の最後です! ユウト選手・クウト選手が出す最後のポケモンとは――!?》
続く
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