訪問者 ( No.56 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:27
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- PCC東京予選まであと三日。そんなまだ寒さの続く三月中旬の木曜日。
「(やらなくて)いいって言ってるのに」 「お母様から命じられていますから」 学校の帰り、いつものように運転士のついている車に乗って登下校を繰り返す。 おぼっちゃまな仕様であるのが、逆に風見の苛立ちの元となる。 自分で言うのもなんだが、成金の父親の金にだけ惚れてくっついた母親は何かと息子に贅沢暮らしをさせたいらしく(詳しくは39話)、当の本人は嫌だと言うのに車の送迎だけはつけてくる。 だったら車に乗らなければいいじゃんというもののこの運転士も曲者で、車を使って道を塞いでくるなどと周りを気にしない傍若無人なことをしてくる。 「本当にやめてくれないか」 「いくらおぼっちゃまのおっしゃることでも」 「おぼっちゃまと言うのもやめろ!」 信号に引っかかって車が止まっているのをチャンスと、扉を開けてダッシュで歩道まで逃げる。 結構強引なことはしたが、逃げれただろう。と、言っても相手は学校も家も知ってるから焼け石に水だろうが。
電車を乗り継いで自宅のあるマンションへ向かう。23区内にある築八年、2LDKのそこそこの賃貸マンションが俺の家だ。 一人で暮らすにはちょっと広すぎる。家と云っても勉強するスペースとパソコン、ベッドと風呂トイレがあれば問題なかったのだが、良い感じの広さで割と手ごろな値段な物件は全て先客がいて、残っているのはちょっと高めの広い家かワケアリ物件ばかりだったのだ。 ちょっとボロが効き始めたエレベーターは俺の家がある九階に止まる。外廊下はまだ冷える風が直接かかって少し寒い。 そして自宅の前にたどり着いた時、部屋の中から誰もいないはずなのに、声が聞こえた。 泥棒か? とりあえず様子を見てみよう。こういうときこそ冷静にならないと。 冷たい玄関の扉に耳をあてる。 「風見君は何作ったら喜んでくれるかなー? ラザニア? チャーハン? カルパッチョ?」 聞こえた声は泥棒とはまるでかけ離れた平和なものだが、それはある種、俺にとっては泥棒よりも驚異的な存在だ。 足音を立てないよう、こっそりとエレベーターホールへ逆走する。 なんだってあいつがいるんだ。くそっ。 あいつ、というだけあって『一応』知り合いである。知り合いたくないけど知り合ってしまった。 それは京都の大手の製薬会社の跡取り娘の久遠寺麗華(くおんじ れいか)。どういうわけか知り合ってしまい、一目惚れしたらしい。 俺が東京にいることすら教えていない(教えるつもりもない)はずなのだがどうしてここに。ていうか家の中にいるんだ。 念のためにポケットを確かめるが家の鍵がきちんとある。相鍵は他にないはずだが一体どうなってんだ。 とりあえずアレがどっか行くまで誰かの家に厄介するか。 携帯を取り出して目ぼしい相手に連絡をつけてみる。 『すまんな、さすがに無理だ』 『俺は行けるけど親がなぁ』 『この電話は電波のつながらないところに───』 翔、蜂谷、恭介諸共壊滅。恭介に至っては電波がダメ。次にあてになりそうな人は……。藤原の家にかけるのは億劫だな。親子喧嘩でもされちゃ敵わん。そうなれば……。 「退くわけにはいかない……」 家に泊めてくれと言えそうな仲のいい人はもうこの人しかいない。 「もしもし、風見です」 『あら、風見くん。珍しいわね』 「松野さん、えーと、無理を承知で言うんですが、家に泊めてくれませんか?」 『……は? えーごめん。なんかあったの?』 「実は───」
結局OKをもらってしまった。年上の女の人の家に泊めてもらうとかどこかで聞いたことがあるようなシチュエーションだが。 松野さんの家は同じ23区内だが区が違う上に離れているので東京メトロを駆使して、松野さんが住むマンションに向かう。 俺の住む賃貸とは違い、しっかりしたマンションで高級感……というのは言いすぎだが割と値が張ってそうな家だ。駐車場まで完備である。 そのマンションの七階までエレベーターで昇ると、エレベーターホールで松野さんが待っててくれていた。それにしても中廊下はいいな。 松野さんの家は黒色のソファーと透明なテーブルのようにシックな家具が多く、大人な雰囲気を放つ……のだが、ところどころにあるポケドールが折角のシックさを削っていく。 「風見君はご飯食べてるの?」 「いえ、食べてないです」 「プライベートなんだしタメでいいわよ」 えー、そんなこと言われてもだな。 「それで、何食べたい? ある程度のものなら作れるつもりなんだけど」 「……しっかりしたものが食べたいです、……じゃなくて食べたいな」 「それじゃあそぼろ丼でも作るわ。適当にくつろいどいて」 と言われてもやることがない。なんとなくテレビを見ながらソファーでごろごろしていよう。こういう無意味な時間を味わうのが初めてなので、少し新鮮な感じがする。 『それはマクロじゃなくてマグロやー!』 まるで面白くない。それにしてもソファーが気持ちいいが、このままでは寝てしまいそうになる。いつもより重力がかかっているように感じられる体に鞭打ち、ソファーから立ち上がらせる。 が、足元がふらついてしっかり歩けない。両手をばたばたさせて何か掴めないか手さぐりする。 あった。右手でがっちり握る。……と、そのとき取っ手が動いた。完全にバランスを崩した俺は尻もちをついてしまう。 だけならよかったのだが、さらに大量の衣類が被さってきた。 どうやら握ったのはくの字型に開くクローゼットで、掴んだはいいものの体の重心が後ろに傾き、それと同時にクローゼットを引いてしまったらしい。 そしてクローゼットに無理やり山積みにされてた衣類が大雪崩を引き起こした。 良い感じに動けない。体の四方をどっさりと衣類で囲まれ、ついでに頭には紫色のブラジャーがちょこんと居座っている。 目の前のブラジャーのタグを見ると、Bとしっかり表記されていた。……、Bあったのか。ちなみにこの間、ソファーから立ち上がってわずか三十秒足らず。 「ちょっ、風見くん、ってええええ」 物音を聞いて様子を見に来た松野さんがお箸を片手に慌てふためく。 「動けないんで助けてください」 「あ、うんわかった」 いつもは冷静な松野さんがこんなに取り乱すなんてちょっと可笑しいな。 松野さんの懸命な救出作業の甲斐もあり、なんとか動けるようになった。何やってんのよと怒られて弁明したが、なんでこんなにたくさん衣服が積まれてたんですかと返すとまた慌てふためきキッチンへ逃げた。 広かったように思えたリビングが、大雪崩のせいで結構狭く見えた。 「風見くん、そぼろ丼出来たわよ」 キッチンから戻ってきた松野さんの両手にはおいしそうな匂いのする茶色のどんぶり茶碗。松野さんは先に食べといて、と言ってキッチンへ戻った。 「いただきます」 そぼろ丼だなんて中々食べる機会がないな。折角だから堪能しよう。 ふんわりとした卵と肉汁が溢れるようなミンチ肉が食欲を更に加速する。これはおいしい! 「気にいった?」 微笑みながら戻ってきた松野さんの両手にはワインとワイングラス。 「そぼろ丼にワインですか? ……じゃなくてワインなのか?」 「私はワインが大好きなのよ。毎週火、木、土曜日はワインって決めてるの」 まるでゴミ出しの曜日みたいだ。というよりもそぼろ丼とワインは組み合わせが悪くないか? 「風見くんも飲む?」 「遠慮する。それよりもアレ……」 未だに事故現場となる大量の衣類に視線を移す。 「ああ、片付けが苦手なのよ」 あははと乾いた笑みを浮かべる松野さん。こんなに感情が起伏な松野さんはウルトラレアだな。 「手伝いますよ」 「タメが混ざったり混ざらなかったりビミョーね。折角だから少しは手伝い頼もうかしら」 それがいい。シックな部屋だったはずが相当カオスになってるからな。 「それにしても松野さんは一人暮しなんですね」 「プライベートだったら『松野さん』じゃなくて『(※)アイコ』って呼んでよ。(※)一部じゃいつもそう呼ばれてるし」 ※アイコ・松野藍の藍に子ってつけたら可愛くなくね? と、言われて定着したあだ名。 ※一部・クリーチャーズ開発一部のこと。松野藍の職場。 オンとオフの切り替えがすごいと賞賛するべきかな。ここまで変容する人はちょっと珍しいのでは。にしても妙に気恥かしい。 「それで……。一人暮しなんですね」 「……。まあね、私は実家が嫌で東京に逃げ出したクチだし」 「東京出身じゃないのか」 「ええ。広島よ。でも東京にいる方が長くて広島弁なんて抜けてるけどね」 「実家が嫌っていうのは」 「うちの親父がうざくてちょっといろいろね。中学から東京の女子校に寮住まいしに上京したわ」 いろいろ複雑なんだなぁ。両親に振り回されている人はたくさんいるから、俺も母があーだこーだ言うのは言い訳にすらならないだろう。 「ごちそうさまでした。そぼろ丼おいしかったです」 意識してもタメと敬語が微妙に混ざる。 「それは結構」 松野さんがにっこり笑う。食器を下げようと立ち上がると、家のチャイムが鳴る。 「あら、結構遅い時間なのに。宅配便かしら。代わりに出てくれない?」 はいはい。食器を再びテーブルの上に置きなおし、玄関へ向かう。 今思えばインターホンで誰か確かめずに玄関の扉を無警戒で開けたのが失敗だった。 扉を開けた先には捲いたはずの久遠寺麗華がいたのだから。
風見「次回のキーカードとなるギャラドスだ。 三種類の技で多彩に攻めろ! テールリベンジの威力には素晴らしいものがある。
ギャラドスLv.52 HP130 水 (破空)) ─ テールリベンジ 自分のトラッシュの「コイキング」の数×30ダメージ。 水無 あばれまくる 40 ウラが出るまでコインを投げ続け、オモテの数ぶんのカードを、相手の山札の上からトラッシュ。 水水無無無 ドラゴンビート 100 コインを1回投げオモテなら、相手のポケモン全員から、エネルギーをそれぞれ1個ずつトラッシュ。 弱点 雷+30 抵抗力 闘−20 にげる 3
─── 日曜日に間に合わなかった\(^0^)/
PCC編のOPソング「go my days」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-699.html
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