能力者の影 ( No.50 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:24
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「戻すときは逆の手順だ。テーブルに近づいて、ベルトとキッチリ合わせてテーブル手前のボタンを押す。そう、それでテーブルの脚がなくなる。今度は一個だけ残ったポケット傍のモンスターボールのボタンを押してくれ。その時も危ないから手とか近付けるなよ。最後にさっきのボールを最初とは逆にへそ側へ押してカチッと鳴ったら終わりだ。そう、そうだ」
二人はバトルベルトをはずして風見に返す。風見はテストプレイが上手く行ってご満悦のようだ。 「さて、私に負けたから言うことを一つ聞いてもらうわよ」 ショックからか、下を向く拓哉の傍へ松野さんが近づきながら言い放つ。 「私の言うことは、『私の言う事を聞いてほしい』よ」 「は?」 思わず間抜けた声が出る。意味がまるでわからん。 「まあ、分かりやすく言うと、貴方達を呼んだ理由を話すからさっきみたいに喧嘩とか売らないで私の話を黙って聞いてほしいの」 「はぁ」 イマイチしっくりこない。そんなまどろっこしい事しなくてもいいのに。 しかしそのお願いを完全に無視して風見が先制パンチ。 「それよりも松野さんが何故株ポケのオフィスに? クリーチャーズのオフィスでは」 「どうしても確かめたいことがあったから、無理を言って入れてもらったのよ。それも今から言う話に関係するからよく聞いてね」 松野さんの目が真剣になる。相当は威圧眼だ、自分のつばを飲み込む音が聞こえた。 「まず、君」 と言って松野さんは拓哉を指差す。 「この前の風見杯で、君は人を消した。君の言い方を借りると、異次元に幽閉した、かしら」 「あ、ああ」 「君みたいに不思議な『能力(ちから)』を持つ人が最近あちこちに現れたの」 「なんだと?」 「どういうことですか? 詳しく教えてください」 風見だけは話を聞くというより、話を聞いている俺と拓哉を静観しているようだった。事情は既に聞いているのだろうか。 「それぞれ藤原君とは違う能力だけど、まあ似た類のものが跋扈して困ってるのよ。たとえば、ここ東京では対戦相手がことごとく意識不明になったり、青森県ではカードのポケモンが具現化したり、島根県では左半身麻痺の女の子がポケモンカードをやっているうちに麻痺が回復したり」 「いろいろありますね」 「今のところ二十八人確認されてるわ。このままだと増加していく一方よ」 「それで?」 「この、能力を持つ人のこと。まあ能力者って名づけようかしら。その人達の全員が勝率百パーセントなのよ。ほら」 パソコンの方へ誘導される。モニターを覗き込むと、これは大好きクラブのポケモンカードゲームネットワークの画面。 指で示された所には大好きクラブのユーザー名と、何勝何敗かが書かれている。勝数はバラバラだが、どれも負けがない。 「あれ? でも一敗してる人も数人混ざってる……」 「ええ。勝負で負けた能力者は能力にセーブがかかるようになるの。能力というより精神かしら。まあなんにせよ能力がほとんど無効化されて能力者とは言えなくなるわね」 「精神?」 「今のところ、負けた能力者は藤原君を含め五名。その五名とも、何かしら出来事があって精神状態が崩れ、能力を身に付けた」 「具体的に言うと藤原は母親と揉めてから、今までの怒りや不満が爆裂して精神状態が崩壊して能力を身に付けた。精神状態が安定しないためについでに人格が増えた」 松野さんに代わって風見が代弁するも、拓哉の気に触れたようで「ついでってなんだよ!」と怒鳴られる。 「高揚している精神が、負けによって一気にクールダウンして落ち着くの。なんでもかんでも回り構わず夢中で能力を使っていたのが、まるで夢から覚めたような気になり、使わなくなる。藤原君もそうでしょ? 奥村君に負けないまではなんでもかんでも能力を使おうとしていたが、負けてからはその気が失せる」 「……。ああ」 拓哉が沈んでいく。きっと能力を使ったときの事を思い出しているのだろうか。とてもじゃないが人を気に入らないからといって幽閉するだなんて正気の沙汰でない。幽閉と言ってるが実質、拉致監禁以外の何物でもない。今こうして沈んでいるのはきっと後悔しているのだろう。 「俺達を呼んだのはそれを伝えるだけじゃないでしょう?」 「ええ、もちろんよ。君たちにはお願いがあるの。風見君も含めてね」 じっとこちらを見つめていただけの風見がふと我に返ったように松野さんを見る。 「能力者を倒してほしい」 これが福本漫画なら、ざわざわ擬音が浮かんでいるところだ。倒してほしいって簡単に言ってくれる。 「このまま不祥事が表立ってしまったら私の会社やここ(株式会社ポケモン)が完全に信用を失ってしまうの。我儘なのは承知よ。でもこれもポケモンカードの、いや、むしろポケモンの存続のためなの」 最後の言葉で完全にお願いが脅迫になったじゃないか。こうなったらもう選択肢は一つしかない。 「なんとかします」 「おい翔! それでいいのか!?」 「いや、いいもクソも」 「だってある種、ポケモンの存続危機だぞ?」 「それは……そうだが」 「俺もやるぞ」 「風見、テメーも!」 拓哉は不満もいいとこ、興奮のあまり思いっきり脚をドタドタ踏みならす。下の階に迷惑だ。 しかしふと何か気づいたらしく、松野さんに向かって拓哉が言葉を放つ。 「というよりも能力者をポケモンカードから遠ざければいいだけだろ!」 「それがそうもいかないのよ」 拓哉の言う事は正しい。そうすれば問題は大抵なくなるはずである。しかしそうもいかないとはどういうことだろうか。俺と拓哉は頭にクエスチョンマークを浮かべる。 「さっき言った東京の能力者は、ポケモンカードから遠ざけようとした親を意識不明にしたの」 「つまりあんまり意味がないどころか犠牲者が増えるってことだ。分かったか?」 松野さんと風見が辛辣な表情で答える。分かれ道があるように思えた道も結局合わさり一本道になった。やるしかない。 「分かりました。やります!」 「し、仕方ない! こうなったらやってやる!」 「二人ともありがとう。能力者のほとんどがPCCに出るの。対戦表は操作できないけど、高確率で勝ちあがってくるはずよ。その時に必ず倒してね」 公式大会に出す前になんとかならんものか。 「東京はまだしも他の道府県は?」 「そこの有力トレーナーにもう話はつけてあるわ」 俺たちは現場をこの目で見たのだが、その有力トレーナーとやらはほとんどが能力を見てないだろう。こんなオカルト(というよりはファンタジック?)めいた話をよく信じたもんだ。 「まあなんにせよ、俺たちは初めから相手が誰だろうと勝ち抜くつもりですよ!」 「ああ」 「けっ、全くだ!」 しかし俺たちは能力者の真の恐ろしさを知らなかった。
松野「今日のキーカードというよりは前回のキーカードよ。 このスタジアムが場にある限り出した番、あるいは進化した番にも進化できるわ。 これがあるだけで試合のスピードが一気に変わるわね。
破れた時空 サポーター おたがいのプレイヤーは、自分の番に、その番に出たばかりのポケモンを進化させられる。(その番に進化したポケモンも進化させられる。)
スタジアムは、自分の番に1回だけバトル場の横に出せる。別の名前のスタジアムが出たなら、このカードをトラッシュ。
─── 結末は出来てるけど過程ができてない>< あと二話くらいのストックはあるけども
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かーどひーろー ( No.51 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:24
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 眠れない。あんな話を聞いてしまった日だ。
実際に拓哉という前例があるだけに信じるほかないが、あんなのが二十人もいるのだ。 「どうしたの? 翔」 「いや、なんでも。ちょっと水飲みたくて」 隣の布団で寝ていた姉さんを起こしてしまったようだ。別に水は欲しくなかったけど、言ってしまったものなので蛇口の水をひねり、コップの水を飲む。 能力者は負けると能力(ちから)の効力が弱まり、精神自身も能力を使いたがらなくなるらしい。理由は分からんが、だいたい負ければ能力が消えると考えていいだろう。 『このまま不祥事が表立ってしまったら私の会社やここ(株式会社ポケモン)が完全に信用を失ってしまうの。我儘なのは承知よ。でもこれもポケモンカードの、いや、むしろポケモンの存続のためなの』 やっぱり脅しだ。強烈な脅しだ。
「なあ、翔。この辺で(※)シングル買い出来るカード屋あるか?」 (※)シングル買い……カードをパックで買わず、カード屋で一枚だけカードを買うことをシングル買いと言う。 日曜を挟んで月曜日の放課後。恭介がそんなことをふと尋ねてきた。 「カード屋? あるっちゃあるけど学校からそれなりに距離があるぜ」 「どれくらい?」 「自転車で二十分するかしないかかな」 「それなら行けるじゃん! 蜂谷も誘っていいか?」 「おう」 「よし、先に駐輪場行っといてくれ」 と言うなり俺の机を離れ、廊下に出ようとしていた蜂谷の元へ駆けだす。背後から急に肩を叩かれ驚いた蜂谷だが恭介の話を聞いて嫌そうな顔がどんどん好奇の顔に変わる。 そんな二人を傍目に先に学校の駐輪場に向かうことにした。
「うおおおおおおおお、さみいいいいいいいいいいいい」 「寒いぞちっきしょおおおおおおおおおおお」 「お前ら本当に仲いいな」 仲いいというよりうるさいな。 本日の最高気温はわずか八度。五時くらいで日も傾き始めた今では五度切ってるんじゃないか? そんな寒空の下を男三人が自転車に乗って道を爆走している。しかもそのうち二人は寒さにやられてしまった。 「っておまえら勝手に俺より先行くな! ってそこまっすぐじゃない! 曲がれえええええ! 左に曲がれえええ!」 俺もダメみたいだ。 二十三分かかってようやく着いたカード屋「かーどひーろー」は珍しくポケモンカードをシングル買いできるカード屋である。 ポケカは他のカードよりも置いてる店が少なく、シングル買いになるとより少なく、売ってくれる店となればさらに少なくなる。というのも理由がちゃんとあるのだ。 一応子供向けであるポケカは主に大人が集まるカード屋ではあまり人気ではない。シングル買いになると同じくだ。あんなスペースをとるのに客が来ないとなればもうやる意味がない。 売ってくれるのはまたちょっと違い、いわゆるポケカショックというやつだ。恐らくほとんどの方はご存じだろうが、ポケカは裏面が変わったことがある。そのおかげでポケカを見限ったカード屋が多い。裏面が変わるということは対戦では絶対使えなくなる。まあ、今も(※)レギュ落ちが存在するんだが。まあもう一度裏面が変わるかもしれないということで売り手が増えても買い手がつかなくなる。ということで売れる店は基本ない。ヤフオクでなんとかしてください。 (※)レギュ落ち……ポケカのシリーズが変わると、前のシリーズが大会で使えなくなることがある。そのことをレギュ落ちという。最近新シリーズLEGENDに移行したためWCS2010でDPシリーズが使えなくなる。 「早く入ろうぜ!」 「言われなくてももちろん!」 自転車を店の傍に止めてカード屋に入る。「かーどひーろー」は一階は普通のカード屋である。あちこちに棚があり、遊戯王、ポケカ、デュエルマスターズのシングルがある。二階はカード屋によくあるデュエルスペース。(※)ジムチャレもここで開かれることがある。また、デュエルターミナルも二台置かれている。 (※)ジムチャレ……ジムチャレンジのこと。ポケカの公式カードバトル大会。詳しくはポケモンカードゲーム公式サイトで。 「うおおおお、いっぱいカードあるじゃん!」 「とりあえず静かにしてくれ」 「いやだって翔よ、こんなにカードあるなんて思ってなかったもん。なあ恭介!」 「うんうん」 「いや、あのさ」 俺よりも十センチ以上背丈の大きい二人の肩に手を置き俺の口元に無理やり二人を近づけ、店主に聞こえないように小さな声で話しかける。 「店主いるじゃんか、あの人すっげー無愛想だからあんまりそんなんされると追い出されるかもしれないからさあ」 「それは困る」 「だったら静かにしてくれよ」 「分かった、分かった、心配すんな」 だといいんだが。こいつらは元がうるさい。先生が静かにしろと言ってまともに静かにする試しがほとんどない。 俺は二人から離れて先にカードを見始める。 バシャーモFB LV.X1820円か……。結構下がってきたな。DPt1のバシャーモの値段も下がってきた。 アルセウスはLV.X以外単価が低いな。無色のアルセウスだけちょっと高いって感じか。 ショーケースから離れて今度は積まれている十円コーナーを見る。 「おっ」 アンノーンGが十円かよ! これは買いだな。ハマナもミズキもあるじゃんか。破れた時空もマークか、いやいや迷うなら買いだ。店主、価値わかってねえな。 その後もカードを見続け欲しいカードを手に持ち、レジの傍にある紙切れとボールペンを取って再びショーケースに戻る。 カード屋は主に盗難防止のために高いカードはショーケースに入れてある。で、そのショーケースに入ったカードをどう買うかというとだいたい二パターンある。 一つ目は店の人をショーケースまで呼び寄せ、これが欲しいと直に訴える方法。 そしてもう一つは店に紙切れとボールペンがあるのでそれに欲しいカードの番号(ショーケースの中のカードにはカードの下に番号が書かれたタグが置いてあることが多い)を書く。かーどひーろーは後者だ。 欲しいカードを書いた紙をレジに持っていくと、店主がこれでもかというほどめんどくさそうに立ち上がり、うわめんどくせえというオーラを体から発しながらショーケースに向かって歩き出す。 先ほども述べたがこの店主、愛想が最悪である。ちなみに髪の毛の残り具合も最悪である。大抵は二階のデュエルスペースでこれまたクソめんどくさそうにぼんやり座ってるだけなのだが今日は割と珍しくレジにいた。普段は一人だけいる店員がレジの番をしている。 「これかい?」 背後で聞こえるデュエルターミナルのデモプレイの音声よりも声が小さくていちいち聞き取りにくい。 「はい」 ショーケースの鍵は足元当たりについている。いちいちショーケースを開けるためには屈伸運動をしなくちゃいけないのでこの店主はそれがどうも嫌いなようだ。別のショーケースにすればよかったのに。 「1910円ね」 何言ってるかわからない(聞こえない)のでレジの表示を見て財布から二千円を差し出す。ちゃんと90円帰ってきました。ちょっと帰ってくるか不安だった。 「恭介、蜂谷、先に上で待ってるわ」 「おう」 「分かったぜ」 ポケモンとデュエルマスターズのスペースの間に階段があるので登っていく。この階段横が狭くてすれ違うとなると大変である。 登り切った先の二階はパイプイスとテーブルがあの店主が置いたのか気になるくらいきれいにおいてあり、なんと二十四席もある大きなカード屋である。 ただ、かなり大きな窓がついているためこの季節では窓際はかなり寒い。 休日はそれなりに混んでいるが今日は男か女か分かりにくい中学生か高校生かくらいのヤツが一人いるだけだった。ポケカをしているが知らないやつだ。ここで行われるジムチャレに何度か来たが、見たことない。 しかしそんな俺とは違ってどこか聞き覚えのある声でそいつは話しかけてきた。 「翔、久しぶり」 と。
翔「今日のキーカードだ! って言っても名前だけだけど。 ポケパワーのGUARDが非常に強力! 相手の強力なワザの効果をシャットアウトする究極のメタカードだ!
アンノーンGLv.17 HP50 超 (DP4) ポケパワー GUARD[ガード] このポケモンがベンチにいるなら、自分の番に1回使える。このポケモンについているすべてのカードをトラッシュし、このポケモンを「ポケモンのどうぐ」として、自分のポケモンにつける。このカードをつけているポケモンは、相手のワザの効果を受けない。(ポケモンについているかぎり、このカードは「ポケモンのどうぐ」としてあつかわれる。) 超無 めざめるパワー 50 自分にダメージカウンターがのっているなら、このワザのダメージは「10」になる。 弱点 超+10 抵抗力 にげる 1
─── まさかここまでカード屋の説明をするだなんて微塵も思わなかった。 一応、実際の知識ですが店によってもちろん大差あります。
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再会 ( No.52 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:25
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「誰?」
首の辺りまでボサボサに伸びた髪と茶色の暖かそうなダウン、そして青色のジーンズ。デジャヴがまるで起きない。顔もこれといって目立つほくろとかもないようだし、本当に誰かわからん。 「俺だよ俺、石川薫だ」 「ああああああ! お前か!」 聞き覚えがあると声と思えば風見杯決勝トーナメント二回戦で戦った石川薫だ。こいつ、一人称が「俺」だけど女なんだよな。 ……にしても雰囲気がだいぶ違うように思える。 前回はボサボサは同じだがもっと短髪で、風見杯はまだ十二月くらいなのに半袖半ズボンと季節違いも甚だしい格好をしていたのだが、今回はちゃんと季節をわきまえている。えらくなった。 「って近所なのか?」 風見杯は一応大会だ。ちょっと遠場でも無理してくる人が多いのだがこんなカード屋に来ると言う事は近所だろう。念のために聞いてみる。 「うん。ここまで電車で二駅だ」 「電車ってこの辺じゃJRか。でもJRからまた歩かなきゃならないじゃん?」 「化石掘りには足が全てだ」 「なるほどね……」 やはりこいつには常識のネジが飛んでる。 「その制服……。翔は平見高校なのか?」 「そうだぜ」 「実は俺も二カ月したらそこに通うことになるんだぜ!」 「へえ。……ってえええ!?」 「で、今日は制服採寸の帰りだ」 「なるほど。だから体育館使えなかったんだな」 ここまで喋って立ちっぱなしだったということに気づく。石川の目の前の席に着いた。 制服採寸といや、そういえばこいつ女だから一応スカートか。全然想像できんというのはある意味すごい。 「折角だしやろうぜ」 と、石川がデッキを取り出す。枚数的にハーフだな? 「よし受けよう」 鞄からデッキケースを取り出して応手する。 「先攻は翔からだ」 「よし。俺の先発はヒトカゲだ。お前はトリデプスGLか、相変わらずカセキだな」 「化石は俺のライフスタイルだからな」 ライフスタイルねえ。それにしてもやっぱり笑うとちょっと可愛いな。傍に思いつつヒトカゲに炎エネルギーをつける。 「ヒトカゲの助けを呼ぶでデッキからヒノアラシを手札に加えるぜ」 「よし、俺のターンだな。って勝負やってるけど連れが来たら帰らなくちゃいけないんだよな」 とかいいつつしっかりベンチにたての化石を置き、それに鋼エネルギーを乗せる。 「翔のターンだ」 「連れ?」 「ああ。俺の友達で一緒に平見高校行くことになってるヤツだ。下でカード見てると思うぜ」 ヒトカゲをリザードに進化させ、ヒノアラシをベンチにだす。続いて炎エネルギーをリザードに乗せて手札のゴージャスボールを石川に見せる。石川が頷いたのでデッキからヒトカゲを選び出す。 「へえ。名前は?」 デッキをシャッフルし直しヒトカゲをベンチに出した。 「よし、たたきつけるだ」 テーブルの端のコインを取ってトスする。 「向井ってやつだ。こないだの風見杯にも出てたんだぜ」 「向井……? どっかで聞いたことあるような……。表裏だから30ダメージ。そんでもって弱点で二倍になって60ダメージだな」 たたきつけるはコインを二回投げ、オモテの数かける30ダメージのワザだ。そしてトリデプスGLは弱点が炎なので、二倍である60ダメージをくらうことになる。これで80から20まで一気に消耗、次のターンは倒せるだろう。 「あああ! そうだ、向井ってどこかで聞いたと思ったら風見杯で姉さんと戦ったヤツか!」 石川は鋼エネルギーをたての化石につけ、化石にタテトプスを重ねて進化させる。そしてママのきづかいを俺に見せる。ママのきづかいは山札からカードを二枚引くカードだ。石川はその通り二枚山札から引く。 「あの人お姉さんなのか! 翔と同じ名字だったからもしかしたらと思ったらそうだったんだな。ターンエンドだ」 「そういやお前には兄弟姉妹いるのか?」 俺はリザードをリザードンに進化させて炎エネルギーをつけ、サポーターのハンサムの捜査を発動する。俺は石川の手札を見せてもらい、自分の手札を戻して五枚までカードを引く。 「いないぜ」 「そうなのか。炎の翼で攻撃。ポケボディーの火炎の陣の効果で、俺のベンチに炎タイプのポケモンが二匹いるからワザの威力は20アップだ。30に20足してそれを二倍、100ダメージだ」 「やるな! 兄弟ってどんな感じだ?」 石川がトリデプスGLをトラッシュし、ベンチのタテトプスを場に出す。俺はサイドを一枚引いた。 「そーだなぁ。まあ家によってマチマチじゃないか?」 石川がタテトプスを進化させ、鋼エネルギーをつける。そして達人の帯をつけた。むう。 「まあそうだけど、翔のところはどうだ、って聞いてるんだ」 「俺のとこは姉さんが俺を助けてくれてるって感じかな。喧嘩なんて小学校出て以来したことないからな」 トリデプスは鉄壁というワザをもつ。このワザは30ダメージだが、コイントスをして表なら次の番ワザによるダメージや効果を受けない。 達人の帯の効果でトリデプスはHPとワザの威力が20増えるので、鉄壁を食らうとリザードンは残りHPが90になり、次の俺の番はダメージが与えれないので何もできない。そして次の石川の番にまたエネルギーを一つつけられるとアイアインタックルを食らうと80ダメージ。達人の帯でさらに20ダメージ加算され100ダメージをリザードンが食らうことになり、リザードンが気絶してしまう。 「なるほどね。鉄壁攻撃。トスは……表」 「うわっ」 「ラッキーだぜ」 しかし鉄壁を破る方法はいくらでもある。 「俺のターン。ワープポイントだ! 互いのバトルポケモンを入れ替える。お前のベンチにはポケモンがいないからそのままだが、俺はベンチのヒトカゲをリザードンと入れ替える」 「なっ」 「ヒノアラシをマグマラシに進化させ、リザードに炎エネルギーをつけてターンエンドだ」 「くそっ。手札の鋼エネルギーをトリデプスにつけて……」 詰んだな。俺の手札にはリザードンがある。次の番に進化させればリザードのHPは更に140まで上昇する。 石川がこの状況を打開するには鉄壁で三回連続コイントスを成功させなければならない。 「あーもう、何考えてもダメだぁ! 降参だ降参!」 「よし、これで二連勝って感じか。高校で会ったらまた相手になってやるよ」 「その前にPCCがあるだろ、そこで勝負だ」 階段を上る複数の足音が聞こえる。恭介達か? 「石川もPCC出るのか。でも戦えるかどうかは分からないぞ」 「きっと戦うことになるさ」 石川は今度はニヤリと笑うと荷物を片付け階段に向かう。 「それじゃあまたな」 階段から現れた足音の主は知らない大人二人と向井だった。向井はこちらに一礼すると石川と共に帰って行く。 「……。PCC、ちょっと楽しみになったな」 一人でカードを広げ、硬いパイプ椅子にもたれて誰に向けてでもなく呟く。今度は聞き覚えのある声が階下から聞こえてきたので自分も荷物をまとめることにする。 下からガヤガヤ声を立てながら興奮してやってきた恭介と蜂谷を叱りながら俺達は家路に着くことにした。
薫「今日のキーカードはトリデプスだ! 鉄壁で守りつつ、アイアンタックルで攻撃! ポケボディーもなかなか優秀な俺のカードだ!
トリデプスLv.56 HP130 鋼 (DPt1) ポケボディー きんぞくしつ このポケモンに「ポケモンのどうぐ」がついているなら、ポケモンチェックのたび、このポケモンのダメージカウンターを1個とる。 鋼鋼無 てっぺき 30 コインを1回投げオモテなら、次の相手の番、自分はワザのダメージや効果を受けない。 鋼鋼無 アイアンタックル 80 自分にも30ダメージ。 弱点 炎+30 抵抗力 超−20 にげる 4
─── 分かると思いますが翔のリザードンはDPt4のリザードンです。
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姉弟 ( No.53 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:26
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- PCCが着実に近づいてきた二月のとある寒い日曜日の昼ごろ。姉さんがキッチンでチャーハンを作ろうとしていた時だった。
軽快な電子音を鳴らして玄関のチャイムが鳴る。うちはボロアパートだがチャイムだけついているのだ。 「翔、悪いけど見てくれない?」 「はいはい」 丁度床で寝転がって英単語集を見ていた俺は今開けてるページをスプーンの尻の部分で栞代わりに挟み、玄関へ向かった。 「宅配便です」 扉を開けると少し年を取った男の人が細長い段ボールを抱えていた。 「ここにハンコを……」 男の人は段ボールを左足と左脇で器用に挟むと、開いた両手で伝票を渡してくる。 ハンコをきっちり押して伝票を渡すと、先ほどと同じ器用な動作で伝票を直すと段ボールを手渡してきた。邪魔なので先に家の中に入れておく。 「ご苦労様です」 男の人は律儀に社名とロゴの書かれた帽子を脱いでこちらに深くおじぎをする。誘われてこちらも少しからだ全体を下げた。 ふぅ、なんだかやけに疲れる宅配便だった。 改めて段ボールを見ると、それにはびっしり風見のとこの会社のロゴマークが。差出人もきっちり風見雄大だ。 確かにこのデカさ、学校で渡されると軽いが非常に迷惑である。段ボールに貼られた伝票の品名を覗くと「バトルベルト」と書かれていた。 ん、バトルベルトだって!? 「うおおお! 姉さんバトルベルト来たっ!」 しかし反応なし。割と大きな声を出したつもりが換気扇のせいで聞こえていなかったようだ。 段ボールを掲げて姉さんの傍に寄って、さっきと同じ言葉を繰り返す。 今度は姉さんもビックリしてこちらを見つめた。俺は踵を返し、リビングへ戻りサンタさんがプレゼントをくれたかのように無邪気に段ボールを開けていく。
チャーハンはとてもおいしかったです。開けた段ボールの中には商品用のバトルベルト二式と、風見の手紙が入っていた。 手紙といっても、「普段の礼だ」みたいな大したことは書かれていなかったので早々にトラッシュした。 バトルベルトは赤と青の二式で、俺は赤のベルト、姉さんは青のベルトをもうらことに。 「折角だし、早速やってみよう」 もらったバトルベルトをPCCが開かれるまで埃かぶせる気はさらさらない。 ちっさい部屋の中でバトルベルトを起動させようとする。使い方はこないだの勝負で見て覚えた。 「ちょっと待って! ここじゃ狭すぎて出来ないらしいわよ」 姉さんが取扱説明書をヒラヒラさせる。 「えー。じゃあこんな寒いのに外でなくちゃいかんのか」 「仕方ないじゃない。まあ風邪ひかないようにちゃんと何か着といてね」
幸いにも今日はまだ暖かい方で、コートを着てさえいればなんてことない寒さだった。といえど、外でカードをしてたら手はほぼ間違いなくかじかむだろう。 だがそれでも早速。子供のように無邪気な気持ちでバトルベルトを起動する。 「おおおおっ、おおおお!」 いざやってみるとめちゃくちゃ楽しいです。勝手に変形するなんて、子供時代に見た戦隊アニメの合体ロボットを思い出す。 「このボタンでテーブルとベルトを切り離すんだな」 よし、離れた。デッキをデッキポケットに入れてオートシャッフルのボタンを入れる。 本当に勝手にシャッフルしてくれて、さらに最初の手札となる七枚をデッキから突き出して用意してくれる。手札のポケモンをセットすると、いつの間にかサイド置き場にサイドが三枚置かれていた。 「よし、先攻は俺からだ!」 俺の最初のバトルポケモンはヒノアラシでベンチはなし。姉さんの最初のバトルポケモンはデリバードでベンチはタマザラシだ。 氷タイプねぇ。氷タイプといってもポケモンカードでは氷タイプは水タイプにカテゴライズされていているのだが、弱点が違う。 ポケカの水タイプは基本的に雷タイプに弱いのだが、ゲームで氷タイプとなっているポケモンはカードでは鋼タイプが弱点になっている。 現に今目の前にいるデリバードとタマザラシは弱点が鋼タイプだ。 「ヒノアラシに炎エネルギーをつけて攻撃。体当たり!」 ヒノアラシがデリバードに頭から突っ込んで体当たりを仕掛ける。デリバードは少し後方に飛ばされると、体当たりを食らった場所をさすりながら元のポジションに戻る。デリバードの緑色のバーが少し削られ、HP表示は60/70となる。 「あたしの番ね。手札のスーパーボールを発動。デッキのたねポケモンを一枚選んでベンチに出すわ」 タマザラシの右側にどこからかスーパーボールが現れた。スーパーボールは閃光を放つとユキワラシが姿を現していた。 「ユキワラシに水エネルギーをつけてデリバードのプレゼント!」 デリバードが尻尾の袋をごそごそ漁り始める。パチスロのリーチ画面を見てる気分。 「コイントスをして表なら、デッキから好きなカードを一枚手札に加えれるわ。さて、トスよ」 姉さんがコイントスのボタンを押す。運は俺の方に傾いていないらしく、表と表示された。 「この効果で山札のカードをサーチしたとき、相手に見せる必要はないのよ。さあ、何を引いたでしょう?」 どうせ進化系のカードだろう。トドクラーかトドゼルガかオニゴーリかユキメノコか。って結構可能性多いな。 「行くぞ、俺のターンだ!」 しゃきん。引いたカードはハマナのリサーチ。まずはこちらもポケモン達を立てていかないとな。 「手札のハマナのリサーチを発動。山札から基本エネルギーまたはたねポケモンを合計二枚まで選び、相手に見せてから手札に加える。俺が選ぶカードは……」 デッキのカードをサーチする前に気づく。近所の小学生が俺たちの周りに集まっていた。 そうか、バトルベルトが物珍しくて見学か。子供が見てる前で負けるなんてちょっと恥ずかしいな。 安いプライドだが、相性は悪いものの安易に負けるわけにはいかないな。
雫「今日のキーカードはデリバードよ コイントス次第だけど、プレゼントはなかなかいい効果。 好きなカードを一枚、ってのは大きなアドバンテージになるわよ!
デリバードLv.26 HP70 水 (DP4) ─ プレゼント コインを1回投げオモテなら、自分の山札の好きなカードを1枚、手札に加える。その後、山札を切る。 水 アイスボール 20 弱点 鋼+20 抵抗力 にげる 1
─── 奥村雫の使用デッキ 「DD・フローズン」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-692.html
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凍結! ( No.54 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:26
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「俺はハマナのリサーチの効果によりデッキからヒトカゲとヒノアラシを手札に加える。そしてその二匹をベンチに出す。あらかじめバトル場にいるヒノアラシに炎エネルギーをつけてマグマラシに進化させる!」
バトルベルトに内蔵された3D投影機によってヒトカゲとヒノアラシが現れ、ヒノアラシはマグマラシへ進化した。 3D投影機は風見との対戦や風見杯、こないだの拓哉と松野さんの戦いのせいで俺らにとっては至って普通だが一般的には珍しい部類だ。 そのせいか、辺りの小学生がアクションを起こす度に黄色い声を上げるので耳が痛い。ていうか小学生の数が姉さんのターンのときより少し増えてる気がする。 「うーん、なんか調子狂うなぁ」 「翔、早くしなさいよ」 「はいはい。マグマラシで攻撃。火花! コイントスをして表なら技は成功、裏なら失敗する。……裏」 「あっはっは、運に見放されてるわね」 「うるさいなぁ」 次のターンに一体何があるか分からない。少しでも、ダメージを与えるのが吉であるのだが。これは痛い。 「あたしのターン! ユキワラシに水エネルギーをつけ、タマザラシをトドグラーに進化させる。更にユキワラシもユキメノコに進化させるわよ」 ポケモンが進化すると同時に子供たちの歓声もあがる。 「そして進化した瞬間にユキメノコのポケパワー、雪の手土産を発動! ユキメノコに手札から進化させた時、自分のデッキから好きなカードを一枚手札に加える。これもデリバードと一緒で相手にカードを見せなくてもいいわ」 姉さんはまたもうふふと笑いながら何かしらデッキからカードをサーチする。 「そして手札からサポーターカードのギンガ団のマーズを発動。このカードの効果によってあたしはデッキからカードを二枚引き、その後相手の手札を裏のまま一枚選んでデッキの下に置いてもらうわ。それじゃあ翔から見て一番左のカード」 げげ、バクフーンがデッキボトムへ行ってしまった。 「デリバードのプレゼントを発動。……裏ね」 「俺のターンだ。ベンチのヒノアラシをマグマラシに進化させ、手札のゴージャスボールを発動する」 カードの発動宣言と同時に、バトル場のマグマラシの横にゴージャスボールが現れた。 「俺はデッキからリザードンを手札に加える」 そう宣言するとゴージャスボールが開き、リザードンのカードの拡大コピーが数秒姿を見せる。 「そして手札の不思議なアメを発動。ベンチのヒトカゲを手札からリザードンに進化させる!」 お馴染みの不思議なアメのエフェクトは相変わらずのようだ。ヒトカゲを大きな光の柱が覆い、徐々にリザードンへとフォルムを変えていく。シルエットがリザードンになると、リザードンは光の柱をかき消して大きく吠える。 「手札からハンサムの捜査を発動。その効果によって相手の手札を見ることが出来る」 姉さんが俺の方に手札を見せると同時に、デリバードの前に姉さんの四枚の手札が先ほどのゴージャスボールと同じように拡大して現れる。 水エネルギーにワープポイント、トドゼルガとハマナのリサーチ。ワープポイントが気になるってところか。 「俺はハンサムの捜査の効果によって手札をデッキに戻してシャッフルした後、カードを五枚ドローする。しかし今の俺の手札は0なので、手札をデッキに戻す行為は省略だ」 手札が五枚まで潤う。 「手札の炎エネルギーをベンチのリザードンにつけてマグマラシで攻撃。火花!」 コイントスボタンをもう一度押す。子供らも見守る中で表示される結果は裏。子供らの笑い声が聞こえてちょっとムッとなる。 「それじゃああたしの番ね。ワープポイントを発動」 バトル場のマグマラシとデリバードの足元に青い渦が現れ、二体ともそれに引き込まれていく。 「ワープポイントによって互いのバトルポケモンを自分のベンチポケモンと入れ替える。あたしはユキメノコを場に出すわ」 「ならば俺はリザードン」 さっきと同様にユキメノコとリザードンの足元にも青い渦が現れて二匹を引き込み、バトル場に残っていた青い渦からその二匹が現れる。同じようにベンチにデリバードとマグマラシが帰っていく。 「手札の水エネルギーをトドグラーにつけて、トドゼルガに進化させるわ。そしてこの瞬間にトドゼルガのポケパワー発動」 「また!?」 「トドゼルガのポケパワー、凍結はさっきよりも強力よ? このカードを手札から進化させたときに一度使えるわ。コインを二回投げて全てオモテなら相手のバトルポケモンとそのポケモンについているカードをトラッシュさせる!」 「なにっ!?」 「さあコイントスよ!」 姉さんはまるで俺から運を吸収しているかのようにコイントスを見事に成功させる。子供らが感嘆の声をあげると、姉さんは子供らに向けて手を大きく振る。 「凍結!」 トドゼルガが足元から放つ冷気がリザードンを包み込み、リザードンは文字通り氷漬けとなった。 「このポケパワーで唯一残念なのはこの効果でトラッシュさせても、気絶扱いじゃないことね」 「俺はエネルギーが付いていない方のマグマラシをバトル場に出す」 このままだとまだ何かされそうだ。大事をとって育ってない方を。 「あたしはハマナのリサーチを発動。水エネルギーとタマザラシを手札に加えて、タマザラシをベンチに出すわ」 しかしそれでも姉さんの手札は水エネルギー一枚のみ。まだまだ勝負は分からない。 「ユキメノコの攻撃。霜柱!」 マグマラシの足元から人の背ほどあるような霜柱が何十本も伸びてきてマグマラシを襲う。こんな大きさの霜柱は果たして霜柱と分類していいのか。 しかし大きいのは霜柱だけでなく、被ダメージ量も半端ない。マグマラシのHPゲージがほとんどなくなり、色も緑から黄、赤色と変わっていく。 マグマラシのHPは80に対し、ユキメノコの霜柱のダメージは50。更に、マグマラシの弱点が水+20なので合計70ダメージとなり、残りHPはたったの10。でもまあ首の皮一枚繋がっただけまだマシか。 「俺の番だ、ドロー」 引いたカードはバクフーン。めぐりめぐりでようやく手札に戻ってきた。しかし来るタイミングが悪い。 「ベンチのマグマラシをバクフーンに進化させて、ポケパワー焚きつけるを発動。トラッシュの炎エネルギーを自分のベンチポケモンにつける。俺はバクフーンにトラッシュの炎エネルギーをつける」 手札がリザード、リザードン、不思議なアメ、ポケドロアー+、ワープゾーンしかない。ポケドロアー+に賭けてもいいが、これまでの戦況的に運に持ち込むのは自殺行為だ。 「俺もワープポイントを発動。マグマラシとバクフーンを入れ替える」 「あたしはトドゼルガと交代よ」 再び青い渦がポケモン達を入れ替える。思えばこれはかなり正しい選択だ。トドゼルガは逃げようにも逃げるエネルギーが多い。交代させられないままサンドバッグするのは良い判断だ。 「バクフーンで攻撃。気化熱!」 バクフーンが口から溢れんばかりの炎をトドゼルガにぶつけると、大きな音を立てて蒸発していった。トドゼルガのHPバーが半分近くの70/130まで削られ、トドゼルガの体から水エネルギーのマークが出てくると、水エネルギーのマークが真っ二つに割れる。 「気化熱は攻撃を与えた相手の水エネルギーをトラッシュさせる!」 「なるほどねぇ。これじゃあトドゼルガはどうあがいても、ワザを使う事も逃げることもできないってことね」 ようやく雲行きがこちらに傾いてきた。
雫「今日のキーカードはトドゼルガよ! コイントスで二回連続表は大変だけど、効果は絶大! ワザのアイスバインドは任意トラッシュかマヒの付属つき!
トドゼルガLv.51 HP130 水 (DP2) ポケパワー とうけつ 自分の番に、このカードを手札から出してポケモンを進化させたとき、1回使える。コインを2回投げ、すべてオモテなら、相手のバトルポケモン1匹と、そのポケモンについているすべてのカードをトラッシュ(この効果はきぜつでなはい)。 水水無 アイスバインド 70 相手プレイヤーが手札を1枚トラッシュしないかぎり、相手をマヒにする。 弱点 鋼+30 抵抗力 にげる 3
─── 日曜更新になってきた。
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油断大敵 ( No.55 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:27
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「あたしのターン! 水エネルギーをタマザラシにつけて、ギンガ団のマーズを発動。デッキから二枚ドローしたのち、相手の手札を表を見ずに一枚選択し、それをデッキの底に戻す。一番右のカードを戻してもらうわ」
ポケドロアー+がデッキの底に戻される。二枚で一つの効果を放つポケドロアー+がこのタイミングでデッキの底に戻ると言う事は、もうポケドロアー+の二枚で発動する効果を使うのは無理だろう。 「タマザラシをトドクラーに進化させてターンエンドよ」 今、俺のバトル場にはHP満タン(=HP110/110)で、炎エネ三枚のバクフーンと、ベンチに残りHPが僅か10(=HP10/80)のマグマラシ。そして姉さんのバトル場にはサンドバック状態になったトドゼルガ(HP70/130)と、ベンチには少しだけダメージを受けているデリバード(=HP60/70)と無傷で水エネが二枚ついているユキメノコ(80/80)と水エネ一枚ついたトドクラー(80/80)。 ポケモン的には俺の方が不利だが、流れは今俺に来ている。 「俺のターン! 手札の炎エネルギーをマグマラシにつけてバクフーンで攻撃。気化熱!」 トドゼルガのHPバーが0に近づく。60ダメージを受けて残りはわずか10ダメージ。ちょっとだけ残るのは少し癪だが、次のターンに倒せれる! 「あたしのターン。トドクラーに水エネルギーをつけてターンエンド」 姉さんの手札は未だ一枚のまま。手札が潤わなければ状況の打開も難しい。つまりこれは俺の優勢の維持を意味する。 「俺のターン。もういっちょバクフーンで気化熱だ!」 ようやくトドゼルガのHPも0になり、気絶。サイドカードを一枚引くと、ようやくたねポケモンのヒトカゲを引き当てた。一方で姉さんはユキメノコをバトル場に出す。 俺のベンチが危なっかしくて不安だったが、それからもようやく解放された。 次のターンが来れば、俺の不安はきれいさっぱりなくなる。 それが唯一の油断だったと思う。 「あたしの番よ。トドクラーをトドゼルガに進化させるわ」 「進化!? ということは……」 「この瞬間にトドゼルガのポケパワー発動。氷結!」 二回連続で二回連続コイントスを成功させるのは至難。あれ、二回連続が二回連続でうーん。 「よそ見してていいの?」 はっ、と気付いた時には時すでに遅し。バクフーンが目の前で氷漬けになっていた。氷結が成功していたのだ。 「今日はなんか運がいいわね」 バクフーンはトラッシュされ、今や残るは瀕死のマグマラシのみ。そして止めの一撃が襲いかかる。 「ユキメノコでマグマラシに攻撃。霜柱!」 再びいくつもの巨大の霜柱がフィールドに現れ、マグマラシを襲う。HPバーが尽きたマグマラシは力なく倒れる。 「マグマラシが倒れたからサイドを一枚引くわ。でも、今マグマラシが倒れて翔の(戦える)ポケモンがいなくなったからあたしの勝ちね」 ショックのあまり、膝をついて倒れる。 敗因はコイントス。運で負けるというのはどうも気が晴れない。無念。 ギャラリーの子供たちは姉さんの元に集まっていく。すごいねー、だのなんだのそういう声が聞こえた。 いつまでも地べたに寝転ぶのもどうかと思い、立ち上がろうとしたそのとき。子供のうちの一人が俺の顔の傍にやってきてボソッと呟く。 「全然ダメじゃん」 完全に立ち上がる気を失くした。
「ほらほら、翔。そんなに落ち込まないの。そうだ、今日は外食(弁当屋に弁当を買いに)に行こうか!」 「……」 「子供の言う事なんて気にしなくていいのよ! ほらっ、さっさと出かける準備準備」 「子供は正直に物を言う、だっけか」 「っ……」 その日俺はしばらく憂鬱な気分で過ごすハメになった。
雫「今日のキーカードはユキメノコね。 進化したとき、好きなカードを一枚サーチ! 霜柱もエネルギー二個で50ダメージ!
ユキメノコLv.45 HP80 水 (DPt4) ポケパワー ゆきのてみやげ 自分の番に、このカードを手札から出してポケモンを進化させたとき、1回使える。自分の山札の好きなカードを1枚、手札に加える。その後、山札を切る。 水無 しもばしら 50 場に「スタジアム」があるなら、このワザは失敗。 弱点 鋼+20 抵抗力 にげる 3
─── 日曜更新に間に合ったあああああ
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訪問者 ( No.56 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:27
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- PCC東京予選まであと三日。そんなまだ寒さの続く三月中旬の木曜日。
「(やらなくて)いいって言ってるのに」 「お母様から命じられていますから」 学校の帰り、いつものように運転士のついている車に乗って登下校を繰り返す。 おぼっちゃまな仕様であるのが、逆に風見の苛立ちの元となる。 自分で言うのもなんだが、成金の父親の金にだけ惚れてくっついた母親は何かと息子に贅沢暮らしをさせたいらしく(詳しくは39話)、当の本人は嫌だと言うのに車の送迎だけはつけてくる。 だったら車に乗らなければいいじゃんというもののこの運転士も曲者で、車を使って道を塞いでくるなどと周りを気にしない傍若無人なことをしてくる。 「本当にやめてくれないか」 「いくらおぼっちゃまのおっしゃることでも」 「おぼっちゃまと言うのもやめろ!」 信号に引っかかって車が止まっているのをチャンスと、扉を開けてダッシュで歩道まで逃げる。 結構強引なことはしたが、逃げれただろう。と、言っても相手は学校も家も知ってるから焼け石に水だろうが。
電車を乗り継いで自宅のあるマンションへ向かう。23区内にある築八年、2LDKのそこそこの賃貸マンションが俺の家だ。 一人で暮らすにはちょっと広すぎる。家と云っても勉強するスペースとパソコン、ベッドと風呂トイレがあれば問題なかったのだが、良い感じの広さで割と手ごろな値段な物件は全て先客がいて、残っているのはちょっと高めの広い家かワケアリ物件ばかりだったのだ。 ちょっとボロが効き始めたエレベーターは俺の家がある九階に止まる。外廊下はまだ冷える風が直接かかって少し寒い。 そして自宅の前にたどり着いた時、部屋の中から誰もいないはずなのに、声が聞こえた。 泥棒か? とりあえず様子を見てみよう。こういうときこそ冷静にならないと。 冷たい玄関の扉に耳をあてる。 「風見君は何作ったら喜んでくれるかなー? ラザニア? チャーハン? カルパッチョ?」 聞こえた声は泥棒とはまるでかけ離れた平和なものだが、それはある種、俺にとっては泥棒よりも驚異的な存在だ。 足音を立てないよう、こっそりとエレベーターホールへ逆走する。 なんだってあいつがいるんだ。くそっ。 あいつ、というだけあって『一応』知り合いである。知り合いたくないけど知り合ってしまった。 それは京都の大手の製薬会社の跡取り娘の久遠寺麗華(くおんじ れいか)。どういうわけか知り合ってしまい、一目惚れしたらしい。 俺が東京にいることすら教えていない(教えるつもりもない)はずなのだがどうしてここに。ていうか家の中にいるんだ。 念のためにポケットを確かめるが家の鍵がきちんとある。相鍵は他にないはずだが一体どうなってんだ。 とりあえずアレがどっか行くまで誰かの家に厄介するか。 携帯を取り出して目ぼしい相手に連絡をつけてみる。 『すまんな、さすがに無理だ』 『俺は行けるけど親がなぁ』 『この電話は電波のつながらないところに───』 翔、蜂谷、恭介諸共壊滅。恭介に至っては電波がダメ。次にあてになりそうな人は……。藤原の家にかけるのは億劫だな。親子喧嘩でもされちゃ敵わん。そうなれば……。 「退くわけにはいかない……」 家に泊めてくれと言えそうな仲のいい人はもうこの人しかいない。 「もしもし、風見です」 『あら、風見くん。珍しいわね』 「松野さん、えーと、無理を承知で言うんですが、家に泊めてくれませんか?」 『……は? えーごめん。なんかあったの?』 「実は───」
結局OKをもらってしまった。年上の女の人の家に泊めてもらうとかどこかで聞いたことがあるようなシチュエーションだが。 松野さんの家は同じ23区内だが区が違う上に離れているので東京メトロを駆使して、松野さんが住むマンションに向かう。 俺の住む賃貸とは違い、しっかりしたマンションで高級感……というのは言いすぎだが割と値が張ってそうな家だ。駐車場まで完備である。 そのマンションの七階までエレベーターで昇ると、エレベーターホールで松野さんが待っててくれていた。それにしても中廊下はいいな。 松野さんの家は黒色のソファーと透明なテーブルのようにシックな家具が多く、大人な雰囲気を放つ……のだが、ところどころにあるポケドールが折角のシックさを削っていく。 「風見君はご飯食べてるの?」 「いえ、食べてないです」 「プライベートなんだしタメでいいわよ」 えー、そんなこと言われてもだな。 「それで、何食べたい? ある程度のものなら作れるつもりなんだけど」 「……しっかりしたものが食べたいです、……じゃなくて食べたいな」 「それじゃあそぼろ丼でも作るわ。適当にくつろいどいて」 と言われてもやることがない。なんとなくテレビを見ながらソファーでごろごろしていよう。こういう無意味な時間を味わうのが初めてなので、少し新鮮な感じがする。 『それはマクロじゃなくてマグロやー!』 まるで面白くない。それにしてもソファーが気持ちいいが、このままでは寝てしまいそうになる。いつもより重力がかかっているように感じられる体に鞭打ち、ソファーから立ち上がらせる。 が、足元がふらついてしっかり歩けない。両手をばたばたさせて何か掴めないか手さぐりする。 あった。右手でがっちり握る。……と、そのとき取っ手が動いた。完全にバランスを崩した俺は尻もちをついてしまう。 だけならよかったのだが、さらに大量の衣類が被さってきた。 どうやら握ったのはくの字型に開くクローゼットで、掴んだはいいものの体の重心が後ろに傾き、それと同時にクローゼットを引いてしまったらしい。 そしてクローゼットに無理やり山積みにされてた衣類が大雪崩を引き起こした。 良い感じに動けない。体の四方をどっさりと衣類で囲まれ、ついでに頭には紫色のブラジャーがちょこんと居座っている。 目の前のブラジャーのタグを見ると、Bとしっかり表記されていた。……、Bあったのか。ちなみにこの間、ソファーから立ち上がってわずか三十秒足らず。 「ちょっ、風見くん、ってええええ」 物音を聞いて様子を見に来た松野さんがお箸を片手に慌てふためく。 「動けないんで助けてください」 「あ、うんわかった」 いつもは冷静な松野さんがこんなに取り乱すなんてちょっと可笑しいな。 松野さんの懸命な救出作業の甲斐もあり、なんとか動けるようになった。何やってんのよと怒られて弁明したが、なんでこんなにたくさん衣服が積まれてたんですかと返すとまた慌てふためきキッチンへ逃げた。 広かったように思えたリビングが、大雪崩のせいで結構狭く見えた。 「風見くん、そぼろ丼出来たわよ」 キッチンから戻ってきた松野さんの両手にはおいしそうな匂いのする茶色のどんぶり茶碗。松野さんは先に食べといて、と言ってキッチンへ戻った。 「いただきます」 そぼろ丼だなんて中々食べる機会がないな。折角だから堪能しよう。 ふんわりとした卵と肉汁が溢れるようなミンチ肉が食欲を更に加速する。これはおいしい! 「気にいった?」 微笑みながら戻ってきた松野さんの両手にはワインとワイングラス。 「そぼろ丼にワインですか? ……じゃなくてワインなのか?」 「私はワインが大好きなのよ。毎週火、木、土曜日はワインって決めてるの」 まるでゴミ出しの曜日みたいだ。というよりもそぼろ丼とワインは組み合わせが悪くないか? 「風見くんも飲む?」 「遠慮する。それよりもアレ……」 未だに事故現場となる大量の衣類に視線を移す。 「ああ、片付けが苦手なのよ」 あははと乾いた笑みを浮かべる松野さん。こんなに感情が起伏な松野さんはウルトラレアだな。 「手伝いますよ」 「タメが混ざったり混ざらなかったりビミョーね。折角だから少しは手伝い頼もうかしら」 それがいい。シックな部屋だったはずが相当カオスになってるからな。 「それにしても松野さんは一人暮しなんですね」 「プライベートだったら『松野さん』じゃなくて『(※)アイコ』って呼んでよ。(※)一部じゃいつもそう呼ばれてるし」 ※アイコ・松野藍の藍に子ってつけたら可愛くなくね? と、言われて定着したあだ名。 ※一部・クリーチャーズ開発一部のこと。松野藍の職場。 オンとオフの切り替えがすごいと賞賛するべきかな。ここまで変容する人はちょっと珍しいのでは。にしても妙に気恥かしい。 「それで……。一人暮しなんですね」 「……。まあね、私は実家が嫌で東京に逃げ出したクチだし」 「東京出身じゃないのか」 「ええ。広島よ。でも東京にいる方が長くて広島弁なんて抜けてるけどね」 「実家が嫌っていうのは」 「うちの親父がうざくてちょっといろいろね。中学から東京の女子校に寮住まいしに上京したわ」 いろいろ複雑なんだなぁ。両親に振り回されている人はたくさんいるから、俺も母があーだこーだ言うのは言い訳にすらならないだろう。 「ごちそうさまでした。そぼろ丼おいしかったです」 意識してもタメと敬語が微妙に混ざる。 「それは結構」 松野さんがにっこり笑う。食器を下げようと立ち上がると、家のチャイムが鳴る。 「あら、結構遅い時間なのに。宅配便かしら。代わりに出てくれない?」 はいはい。食器を再びテーブルの上に置きなおし、玄関へ向かう。 今思えばインターホンで誰か確かめずに玄関の扉を無警戒で開けたのが失敗だった。 扉を開けた先には捲いたはずの久遠寺麗華がいたのだから。
風見「次回のキーカードとなるギャラドスだ。 三種類の技で多彩に攻めろ! テールリベンジの威力には素晴らしいものがある。
ギャラドスLv.52 HP130 水 (破空)) ─ テールリベンジ 自分のトラッシュの「コイキング」の数×30ダメージ。 水無 あばれまくる 40 ウラが出るまでコインを投げ続け、オモテの数ぶんのカードを、相手の山札の上からトラッシュ。 水水無無無 ドラゴンビート 100 コインを1回投げオモテなら、相手のポケモン全員から、エネルギーをそれぞれ1個ずつトラッシュ。 弱点 雷+30 抵抗力 闘−20 にげる 3
─── 日曜日に間に合わなかった\(^0^)/
PCC編のOPソング「go my days」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-699.html
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二人目 ( No.57 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:27
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- なぜか久遠寺麗華が目の前にいた。それが衝撃過ぎて、扉を閉めるのも忘れてしまう。
様子を見に来た松野さんが玄関にやってくる。 「風見くん……。折角お料理作って待ってたのに、他の女の人のところに行くなんて」 非常に嫌な予感がする。俺が言葉を返す前に、松野さんが先制する。 「この子が例のストーカーね。風見くんも迷惑がってるからやめたら?」 声音がオフ(プライベート)からオンに切り替わって冷たくなる。 「くっ、風見くんはなんでよりにもよってこんなチビを選ぶのよ!」 「チビィ? 頭の容量の小ささは貴女の方がトップクラスね」 「何よこのチビ! わたくしと比べたら家柄は確実に下でしょう」 「それじゃあポケモンカードで決めましょう? 折角貴女の方からバトルベルトを持ってきてくれてるんだから」 言われて久遠寺の左手を見ると、俺のバトルベルトともうひとつ黄色のバトルベルトが握られていた。 「いいわ、それじゃあわたくしと早速勝負よ」 「ということで風見くんよろしくね」 松野さんが戦うんじゃないのか? 背を向けて部屋へ戻ろうとした松野さんに手を伸ばそうとすると、俺のデッキケースが飛んできた。 「……」 「家の中じゃ狭いから、この辺じゃあ駐車場の屋上とかどうかしら」 「いいわ、それじゃあ早速行きましょう」 俺の話なのに勝手に進んでいく。久遠寺は先にエレベーターホールへ向かって行った。 「ちょっと食器洗いしてから行くから先に行っておいて」 玄関にある自分の革靴を履き、玄関から出ようとした時家の中から松野さんの声が聞こえてきた。 「ああ、言い忘れてたけど彼女は能力者だから」 唐突さに数秒固まってしまった。一体、どういう……。
「駐車場の屋上、ここだな」 三月とはいえ夜なのでいくばか寒い。それにしても屋上という立地条件か、停まっている車の台数はまばら。立体映像でドンパチしても迷惑はかからなさそうだ。 しかし久遠寺が能力者とはにわかには信じられない。藤原の時は体からいかにもヤバそうな雰囲気を発していたが、目の前のやる気マンマンなお嬢様にはそんな雰囲気をみじんも感じれない。 「約束は約束よ!」 「分かってる分かってる」 ……。それにしても『能力者相手だからビビる』だなんてらしくないな。PCCでも能力者を倒していかないといけないんだ。そうだ。こんなところで躓いてられない。 「よし、行くぞ!」 俺の言葉を合図に俺達はバトルベルトを起動させる。いつもは枚数三十枚のハーフデッキで戦っていたが、今回は本格的に六十枚のスタンダードデッキでの対戦だ。 デッキポケットにデッキをセットし、オートシャッフルさせた。手札七枚とサイド六枚が自動でセットされる。 最初の手札となる七枚を手に取るが、こういうときに限って雲行きが悪い! 「先攻はわたくしからよ」 俺の最初のバトルポケモンはフカマルでベンチはコイキング。相手のバトルポケモンはストライク。ベンチにはチェリンボ。 「ドロー。手札の草エネルギーをストライクにつけるわ」 しかし、ストライクが草エネルギー一枚で使えるワザは剣の舞のみ。剣の舞は次の番に使うもう一つのワザ「スラッシュダウン」の威力を上げるだけだ。初手から攻撃はないようだ。 「ストライクで剣の舞。それにしても風見君がコイキングなんて、堕ちたものね。北海道を飛び出さない方が良かったわよ絶対」 「何とでも言え。俺のターン」 手札に来たのはコイキング。いいタイミングで来た! 「スージーの抽選を発動。手札のコイキング二枚をトラッシュしてデッキから四枚ドローする」 「たねポケモンを二匹も!?」 「不思議なアメを発動。フカマルはガブリアスになる!」 フカマルを光の柱が覆う。光の柱からはガブリアスが雄たけびを上げながら現れた。 「ガブリアスに水エネルギーをつけ、レジアイスをベンチに出す。ターンエンドだ」 「わたくしのターン。ドロー。手札の草エネルギーをストライクにつけて、ストライクをハッサムに、チェリンボをチェリムに進化させる! 更に手札のゴージャスボールを発動、ストライクを手札に加える」 ハッサムの隣にゴージャスボールが現れ、これまた白色の光を吐きだしながらボールが開く。ボールの中からはハッサムとほぼ同サイズの縦幅を持つ拡大されたストライクのカードの絵が現れ、五秒するとゴージャスボールもろもろ消えていった。 「ストライクをベンチに出し、ハッサムでガブリアスに攻撃しますわ。振りぬく攻撃!」 ハッサムが赤いハサミを大胆にガブリアスに叩きつける。すさまじい衝撃音と共にガブリアスの右下に表示されているHPバーが半分以下になる。 「ハッサムの振りぬくは、自分の場にポケパワーを持つポケモンがいなければ30ダメージ追加で攻撃を与えれますの。更にチェリムのポケボディー、日本晴れによって炎、草ポケモンが相手に与えるワザのダメージも10追加。よって元の威力40に30と10を加え80ダメージですわ」 「……中々やるな」 感心して言ったが、正直のところそんな余裕はない。2ターン目から80はかなりの痛手だ。もっと穏やかな攻撃と思っていたんだが、お陰でガブリアスのHPが130から50に削られた。 「行くぞ、俺のターン! ガブリアスをレベルアップさせる! この瞬間にガブリアスLV.Xのポケパワー発動。このポケモンが手札からレベルアップした時に発動でき、三回コイントスをして表の回数分のダメージカウンターを相手のベンチポケモン全員に与える!」 バトルテーブルのデッキポケット横の赤いボタンを押す。表、裏、表。表の回数は二回。 「よって20ダメージを受けてもらう。竜の波動!」 ガブリアスが鳴き声を放ちながら口から衝撃波を放つ。ベンチにいたチェリムは花弁を閉じようと、ストライクは両手で体をカバーしようと体勢をとるも衝撃波をモロに受けてHPバーが削られる。これでチェリムのHPは60/80。ストライクは40/60だ。 「お前、コイキングを見て俺を堕ちたと言ったな? 最初は弱くとも、いずれ信じる力と共に強く成長する証を見せてやる! コイキングを進化させ、現れろギャラドス!」 力なくベンチで跳ねていたコイキングが白い光に包まれ、より大きく。より力強くギャラドスへとそのフォルムを変えていく。 「ガブリアスLV.Xは逃げるのにエネルギーが不要だ。ガブリアスLV.Xを戻してギャラドスをバトル場に出す。更にレジアイスのポケパワー、ポケムーブを発動。俺は手札を二枚トラッシュする」 俺がトラッシュしたのは四枚目のコイキングとニドクインだ。 「レジアイスのポケパワーによって、お前のベンチの進化していないポケモンとバトル場のポケモンを入れ替えてもらう。どのベンチの進化していないポケモンを選ぶかの選択権は貴様にあるが、残念ながら条件に該当するポケモンはストライクだけだな」 久遠寺の顔が少し歪んだ。その目の前でストライクとハッサムの位置が一瞬で入れ替わった。 「でも貴方のギャラドスにはエネルギーが一つもついてませんわよ!」 「エネルギーなど不要だ! ギャラドスでストライクに攻撃。テールリベンジィィ!」 ギャラドスがその巨大な体躯をうねらすと、長い尻尾でストライクを力いっぱい叩きつけた。ゴム毬のようにストライクの体が宙に浮きながらそのHPバーは0を刻む。 「テールリベンジはトラッシュのコイキングの数かける30ダメージの威力だ。今俺のトラッシュにはコイキングが三枚。よって90ダメージ。受けてもらったぞ。サイドを引いてターンエンドだ」 そうだ! 俺はこんなところで負けていられないんだ。立ち止まる暇はないんだ……!
風見「今日のキーカードはハッサムだ。 エネルギー二つで最大70ダメージを与えることができる。 もう一つのワザも、ポケボディーも非常に優秀でオススメ出来るぞ」
ハッサムLv.47 HP100 草 (破空) ポケボディー ハニカムディフエンダー このポケモンにダメージカウンターが6個以上のっているなら、このポケモンがワザによって受けるダメージは、「−40」される。 無無 アクセレート 30 このワザのダメージで、相手を気絶させたなら、次の相手の番、自分はワザのダメージや効果を受けない。 草草 ふりぬく 40+ 自分の場にポケパワーを持つポケモンがいないなら、30ダメージを追加。 弱点 炎+20 抵抗力 にげる 1
─── あけましておめでとうございます。 留年しなければ今年で高校三年生。よって間違いなく毎週更新は不可能です。 日曜更新は変えませんが、二週間ペースおよび一カ月ペースかどうかは知りません。 まあでも今のうちに書きためておこうかな
あと、「エネルギーなど不要だ!」が書いててツボった
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精神戦 ( No.58 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:28
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「風見君!」
「松野さん!」 夜の闇に包まれた駐車場に松野さんが現れた。多少走ったのか肩が上下している。 「今のところは優勢ね」 「ところで久遠寺が能力者っていうのは?」 能力者。この前の風見杯で起きた藤原拓哉の例を思い出す。負けるとは思いたくないが、負けた時のことが気になるのは確かだ。 「やっぱり藤原とかのように……」 藤原の能力は『相手を消すこと』。本人は『次元幽閉』と言っていたが、やはり久遠寺もそういう類のものなのか。 「久遠寺さんの能力は『位置検索』よ」 「は?」 かなり身構えていたのに帰ってきた答えが意外としょうもないことでちょっとガッカリもした。しかし位置検索? なるほど、確かに俺の住所を教えていないのに俺の家を知っていたのは説明がいく。 「だから、負けたとしても消されたり病院送りとかそんなことはないはずだけど気を抜いちゃダメよ」 松野さんはグッと目に力を入れた。この人の目力は恐ろしく強い。思わずシャキンと背筋が伸びる。 「それに、能力者と戦う事だけで負担になるんだから。精神力で負けたらあっという間に飲み込まれるわよ。能力者との戦いで一番大事なのは強い心!」 「そろそろわたくしのターンを始めてもよくって?」 ずっと無視されていた久遠寺が、怒ったのか俺が松野さんに返事する前に声をかけてくる。 「ああ、始めてくれ」 「わたくしのターン。ハッサムに達人の帯をつける」 ハッサムの突出したお腹の辺りに帯が巻かれるが、ちょっと不格好。 達人の帯は装備したポケモンのHPと与えるワザのダメージを20増やすポケモンの道具だが、達人の帯がついているポケモンが気絶したとき相手が引くサイドは普段より一枚多い二枚となる。久遠寺は打点を増やしに来た。 「続いてサポーターのハマナのリサーチを発動。このカードの効果はもちろん分かっていらして?」 「たねポケモンおよび基本エネルギーを合計二枚までデッキから手札に加えるカードだ。馬鹿にするな」 「わたくしはストライクとチェリンボを加えますわ」 しかし加えたところでベンチには出せない。出したとしても、出した番には進化できないからレジアイスでバトル場に引き出され、俺のギャラドスの餌食になる。久遠寺もそれを分かっているのかポケモンをベンチに出してこない。 「ハッサムでギャラドスに攻撃。振りぬいてください!」 ハッサムがまたもやギャラドスにハサミを振りぬく。ギャラドスの豊富なHPがあっという間に虫の息。 振りぬくは自分の場にポケパワーを持つポケモンがいなければ威力が30上がり、更にチェリムのポケボディー、日本晴れによって草タイプであるハッサムの威力が10、達人の帯で20上昇している。よって元のダメージが40のはずの振りぬくが100という超強力な威力に変わる。 「これで風見君のギャラドスのHPは30よ。ターンエンド」 気持ちで負けたら飲み込まれる。踏ん張りどころはここだ! 「行くぞ、俺のターン!」 しかしドローが冴えない。手札はわずか三枚。どう乗り越えるか考えるんだ。 今の俺の場には満身創痍のギャラドス、ベンチには傷を負ったガブリアスLV.Xとレジアイス。レジアイスのポケパワーは使えない上、ギャラドスを逃がすこともできない。 「俺もハマナのリサーチを発動! フカマルと超エネルギーを手札に加える。フカマルをベンチに出し、超エネルギーをフカマルにつける」 これで手札は残り二枚。レジアイスのポケパワーの発動コストとして常にキープしていたい。 「ギャラドスで攻撃。テールリベンジ! 90ダメージを受けてもらおう」 ギャラドスが振り下ろした尻尾をハッサムが両手の挟みで受けるも、ハッサムのHPバーは四分の一。達人の帯で120まで最大HPが増えたハッサムだがもう30まで削ってやった。 「さあ、お前の番だ」
一見サイドの枚数的にも風見君が有利のように見えるけど、押しているのは確実に久遠寺麗華だ。 もうHPが30しかないハッサムだけど、アレだけで風見君のポケモン二体は確実に気絶させてくる。 風見君はきっと心の底で「所詮『位置検索』程度ならばどうってことないだろう。藤原とは違って負けた時のリスクもない」と高をくくっている。 それがダメなのだ。能力者との戦いは精神戦。先に心が挫けた方が負ける。能力者達は概して強い意思を持っているのにそんな事では勝てない。 とはいえ相手は人間、揺さぶればその強固な意思も崩れるはず。なのだけど、風見君はそういった会話能力がない。 あらかじめ私がシェイクしたんだけど、役立ててはくれないようだ。 「わたくしのターン。グッズカードのポケドロアー+を二枚発動。このカードは一枚単品で使った時と、二枚同時に使った時で効果が変わるわ。二枚同時に使ったので、わたくしはデッキから好きなカードを二枚加えてシャッフルします」 風見君の表情はまだ余裕が浮かんでいる。余裕であれば余裕であるほど心のスキが出来て窮地に陥ってしまうのに彼は気づかない。しかし、ここでアドバイスしたところでむしろ今度は焦りに変わるだけで、彼のためにはならない。彼のためと思うなら、黙って見守ることが一番だ。 「そしてサポーターカードのオーキド博士の訪問を発動。山札から三枚引いてその後、手札から一枚デッキの底に戻します」 手札を増強してきたわね。一気に動いてくるはず。 「手札からスタジアムカード発動。破れた時空!」 「破れた……時空だと」 風見君の表情から余裕が消え、みるみる生気を失っていく。 「このカードがある限り、互いにその番に場に出たばかりのポケモンを進化させれますわ。私はストライクをベンチに出し、ハッサムに進化させて草エネルギーをつけまして。バトル場のハッサムで攻撃! アクセレート!」 アクセレートのワザの元々の威力は30だけど、チェリムと達人の帯によって威力は60。残りのHP30のギャラドスはハッサムの攻撃を受けて気絶した。 「俺の次のポケモンはガブリアスLV.Xだ……」 「わたくしはサイドを一枚引いてターンエンド」 もはや風見君には焦燥しか見えない。このままだと正常の判断も出来ない、声をかけるなら今。 「風見君! アクセレートの効果に気をつけて!」 「効果……」 「アクセレートで相手のポケモンを気絶させたとき、そのハッサムは次の風見君の番ではワザのダメージも効果も与えれないわ」 「ガブリアスにエネルギーをつけてガードクローをしかけようとしたが、尚早だったな。だったら! 行くぞ、俺のターン!」 風見君の目に闘志が戻った。さあ、どんな戦術を見せてくれるのかしら。 「フカマルをガバイトに進化させる。そして俺も破れた時空の効果を使わしてもらうぞ。今進化したばかりのガバイトをガブリアスに進化だ! 更に水エネルギーをガブリアスにつける」 風見君の手札が一気に消費されて残り一枚になる。 「俺は手札からユクシーをベンチに出す。そしてこの瞬間にポケパワーを発動だ。セットアップ!」 セットアップは手札が七枚になるまでドローする強力なポケパワーだ。しかし、当のユクシー自体のステータスは乏しく、HPはわずか70。 「手札のスージーの抽選を発動。俺は手札のニドラン♀と不思議なアメをトラッシュしてデッキから四枚ドローする。そしてガブリアスLV.Xのワザを使わしてもらう。蘇生!」 空いているベンチに白い穴が形成された。そしてその穴の中からギャラドスがリフトアップして出現する。 「ガブリアスLV.Xの蘇生は、自分のトラッシュのLV.X以外のポケモンをたねポケモンとしてベンチに出す。俺はその効果によってギャラドスを戻した。ターンエンドだ」 「一度倒されたポケモンを戻してきたところでどうなるのかしら」 「笑っていられるのもいまのうちだ」 焦燥の色が風見君から消えていく。少しずつ、自分のペースを取り戻してきたようだ。本人に自覚はないと思うが、どうも彼は思っているよりも周りに流されやすい。しかしそれは一度だけ。自分のペースを取り戻した彼はもう迷わない。 「わたくしのターン。手札のポケモン図鑑を発動しますわ」 ポケモン図鑑は自分のデッキのカードを上から二枚を確認し、片方を手札に。もう片方をデッキの底に戻すグッズカード。グッズなのにドローが可能という扱いやすさがウリだ。 「続いてチェリンボをベンチに出しますわ。続いてサポーターのデンジの哲学を発動。手札が六枚になるまで引きます。今のわたくしの手札は0。よって六枚ドローしますわ」 手札の枚数が風見君とほぼ互角になった。久遠寺麗華にはまだまだ余裕の表情が浮かんでいる。 「チェリンボをチェリムに進化させます。そしてベンチのハッサムに草エネルギーをつけて、わたくしはそのガブリアスLV.Xに攻撃をしますわ。アクセレート!」 「またアクセレートっ!」 ハッサムがはさみでガブリアスの腹部を強く打撃するように突進する。ガブリアスのHPバーは完全に尽きて倒れ伏す。 「サイドを一枚引きますわ。これで追い抜きましたわね?」 確かにサイドは久遠寺麗華が一枚上回っている。その上、彼女の場には次の番に攻撃を受けないハッサム。ベンチには同じくすぐに攻撃に移れるハッサムがいる。そしてそのハッサムを支援するチェリムが二匹。それに対して風見君のポケモンは、置物と化したユクシーとレジアイス。そして蘇生したばかりのギャラドス、エネルギーが二個ついたガブリアス。状況的には風見君が責められ続けているという感じだ。 だがしかし。 「だったらガブリアスが次の俺のポケモンだ」 風見君の表情は純粋なところから来る笑みに包まれていた。
風見「今日のキーカードはチェリム。 ベンチにいてこそ活躍するカードだ。 ポケボディーの日本晴れで炎、草タイプのワザの威力が上がるぞ」
チェリムLv.30 HP80 草 (破空) ポケボディー にほんばれ 自分の草ポケモンと炎ポケモンが使うワザの、相手のバトルポケモンに与えるダメージは、すべて「+10」される。 あまからかふん 20 自分のポケモン1匹から、ダメージカウンターを2個とる。 草無無 ソーラービーム 50 弱点 炎+20 抵抗力 水−20 にげる 1
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暴風 ( No.59 ) |
- 日時: 2010/09/09 00:23
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「風見君、変わりましたわね」
「?」 俺がデッキからドローする前に、久遠寺が急に話しかけてきた。 「昔の風見君と今の風見君、だいぶ変わりましたわね」 「ああ。俺はこの半年で自分を変えてきた。俺は過去と決別する」 「それじゃあわたくしも過去なの? これだけ風見君の事を想ってるのに! ここまで来てすぐ向かいにいるのに!」 「……」 「今までわたくしが接してきたことも全て無になるってこと?」 今までにこいつと接してロクな事があった試しもないんだけどな。 「そういうことになる」 「あんまりです!」 久遠寺の悲痛な叫びが襲いかかる。ヤツはただ叫んだだけなのに、ものすごい暴風が来て吹き飛ばされそうになる。手札を持ってない左手で地面のコンクリートに触れて見えない衝撃を受けきる。 今のは一体何なんだ……? 「どうしてそういうことにっ……。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 鼓膜が爆発しそうな叫びだ。両手で耳をふさぎ、再び謎の暴風に耐えるため姿勢を低く維持する。 暴風が収まり、立ち上がった。正面にいる久遠寺の表情は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。 「風見君、あなた本当に会話ヘタクソね!」 背後から松野さんの声が聞こえる。松野さんも謎の暴風に煽られていたようで、暴風が止んだ今でも右手で顔をカバーする体勢を組んでいる。どうやらまた暴風があってもいいように構えているようだ。 「振るなら振るでちゃんとまともに振りなさいよ! どう考えても相手を怒らせちゃったじゃない」 「いや、だって」 「だってもクソもない! こうなったらこの勝負に勝って、過去と決別しなさい!」 「はっ、はい」 なんという剣幕、正直久遠寺と同じくらい怖かった。どっちにしろ退けなくなった。 「久遠寺! 俺がお前とのこの勝負で俺の意志を見せてやる! 俺のターンだ!」 まずは目の前のハッサムをどうにかしなくてはいけない。残りHPは30だが先ほどのターン、アクセレートでガブリアスLV.Xを倒したためこのターンはワザのダメージと効果を一切受けない。 俺のバトル場はエネルギーが二つついたガブリアス(130/130)。ベンチにはユクシー(70/70)とレジアイス(90/90)とギャラドス(130/130)。一方の久遠寺のバトル場は達人の帯をつけ、草エネルギーが二つついたハッサム(30/120)、ベンチには体力マンタンで同じく草エネルギー二つのハッサム(100/100)とエネルギーなしのチェリム二匹(60/80)、(80/80)。 久遠寺の手札は五枚、サイドは四枚。俺の手札は今九枚でサイドは五枚。スタジアムは久遠寺が発動させた破れた時空がある。 「水エネルギーをガブリアスにつける。まずはそのハッサムをのけてやる。ワープゾーンを発動。互いのバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える。入れ替えるポケモンを選ぶのは各々だ」 ガブリアスとハッサムの真下に青い穴が現れ、穴が二匹を青い闇に吸い込む。 「俺はギャラドスを選択する!」 ベンチのギャラドスも同じように青い穴に吸い込まれた。久遠寺からは声がしなかったが、ベンチのハッサムを選択したようで、同じように青い穴に吸い込まれる。 そして吸い込まれた計四匹のポケモンはバトル場とベンチを入れ替えて青い穴から現れた。これで俺のバトルポケモンはギャラドス。久遠寺のバトルポケモンは達人の帯がついていないハッサムになった。 「更にサポーターのクロツグの貢献を発動。トラッシュのポケモンと基本エネルギーを合計五枚までデッキに戻し、シャッフルする。俺はフカマル、ガブリアス、ガブリアスLV.X、ニドラン♀、水エネルギーの五枚をデッキに戻してシャッフルする」 この一連の操作が、ボタン一つで出来るのはかなり進んだものだなと我ながら思う。デッキポケット隣の青いボタンを押すと、トラッシュからカードを自動回収(オートサルベージ)してバトルテーブル内を通ってデッキポケットに収まり、自動でシャッフルするのだ。 「ギャラドスでハッサムに攻撃。テールリベンジ!」 ギャラドスが大きな尻尾を勢いよくハッサムに叩きつける。ハッサムは軽々と吹き飛ばされ、HPゲージも0となる。 そう、先ほどは90ダメージしか受けなかったはずなのに、HPが100あるハッサムが倒されている。久遠寺の目はそのことに驚いているかのように見える。 「忘れてもらっちゃ困るが、リベンジテールはトラッシュのコイキングの数かける30ダメージだ。一、二ターンで俺は手札のコイキング三枚をカード効果で捨てたのを覚えてるな?(49話参照) そして四枚目のコイキングはそのときバトル場にいたギャラドスの下にあった。つまりバトル場のギャラドスはコイキングから進化していたわけだ。だが、今バトル場にいるギャラドスはガブリアスLV.Xの蘇生によって戻ってきたギャラドス。蘇生の効果により、『四枚目のコイキングはトラッシュのまま、ギャラドスはたねポケモンとして戻って来た』というわけだ。よってトラッシュのコイキングの数は四匹。120ダメージだ。俺はサイドを引いてターンエンド」 ようやくイーブンか。だが波は確実にこちら向きだ。久遠寺は先ほどベンチに戻されたハッサムをバトル場に出すも、手負いの虎は怖くない。 「わたくしの……ターン。草エネルギーをチェリムにつけますわ」 久遠寺は力ない声と動きでカードを動かす。少し震えている唇からは荒れた吐息が絶え間なく続く。松野さんは能力者との戦いは精神戦と言っていたが、久遠寺が先に折れたのか? 「ハッサム、で、振りぬく、攻撃っ」 壊れそうな久遠寺とは打って変わってハッサムの動きは相変わらず機敏にギャラドスに襲いかかる。130あったHPがなんと20まで削られた。威力は申し分ない。 「よし、俺のターンだ。グッズカード、夜のメンテナンスを発動。トラッシュのポケモン及び基本エネルギーを三枚までデッキに戻してシャッフル。俺はコイキング一枚とニドクインをデッキに戻す。夜のメンテナンスで戻せるのは三枚までなのであって、三枚以下であるなら何枚でも可能だ!」 「コイ、キングをデッキに……?」 「俺は手札のスージーの抽選を発動。手札のアンノーンGとミステリアスパールをトラッシュして四枚ドローする。ハッサムにはハニカムディフェンダーというポケボディーがあるのは知っている。ハッサムにダメカンが六個以上のっている時、ハッサムが受けるダメージは−40されるという優秀なポケボディーだ。だが、そのハニカムディフエンダーを適用した上でも俺のギャラドスのテールリベンジは防げない。ギャラドスでハッサムに攻撃だ、リベンジテール!」 リベンジテールで90ダメージ与えるはずだが、ハニカムディフエンダーでその威力は50まで削がれる。しかし残りHP30のハッサムを気絶させるのには十分すぎる。 「ハッサムには達人の帯がついている。達人の帯はつけたポケモンは最大HPもワザの威力も上がるが、それがついているポケモンが気絶した場合、俺が引けるサイドは二枚となる。これで優劣が一気に変わったな」 俺の残りサイドは2枚。勝利がだいぶ近づいてきた。久遠寺は肩で息をしながらバトルテーブル上のカードを動かす。次のポケモンは先ほどエネルギーをつけたチェリムだ。 「わたくしの、ターン。ベンチのチェリムに、草エネルギーをつけてチェリムで攻げ、コホッ! 攻撃! 甘辛花粉!」 久遠寺は疲労(?)のせいか、行動が短絡的になっている。ワザを指定されたチェリムは一度花弁を閉じると、勢いよく開いた。開くと同時に黄色の細かい花粉がギャラドスに襲いかかった。甘辛と名のつくだけに、ギャラドスは花粉に反応して大きな体をぐねらして暴れている。 甘辛花粉は威力20。チェリムが二匹いることによって40まで与えるダメージが増えていく。残りHP20のギャラドスは、ある程度暴れるとそのままぐたりと動かなくなった。 「風見君、チェリムの甘辛花粉はダメージを与えるだけじゃないわ。自分のポケモン一匹のダメージカウンターを二つ取り除く効果つきよ」 松野さんが背後から声を掛けてくれた。ベンチのチェリムの目をやると、先ほど撒き散らされた花粉がベンチのチェリムにも行き届いていたようなのだが、ギャラドスとは違ってHPバーは最大まで回復していた。どうやらギャラドスにかかったのは辛い花粉で、チェリムにかかったのは甘い花粉ということのようだ。 俺はガブリアスを次のポケモンとしてバトル場に投入した。久遠寺がサイドを引いたのを確認してから俺のターンを始める。 「行くぞ、コイキングをベンチに出す。スタジアムの破れた時空の効果により、この番出したばかりのポケモンも進化させられる。コイキングをギャラドスに進化させるぞ!」 手札の残り枚数が危うくなる。手札を増強するカードも手元にないためハンドアドバンテージも稼げない。 「ガブリアスでチェリムに攻撃。スピードインパクト!」 ガブリアスが急に見えなくなると同時にチェリムの元で衝撃が発生する。物凄い初速で突撃したガブリアスの攻撃を受けたチェリムのHPバーはあっという間に尽きる。 「スピードインパクトは相手のエネルギーの数かける20、与えるダメージが減るが元のダメージ量は120。この場合は与えるダメージは100! チェリムが気絶したことによってサイドを引かせてもらう」 これで残りのサイドは一枚。油断は最後まで出来ない。俺の場にはまだガブリアスもギャラドスもいるが、下手に凌がれるとどうなるか。久遠寺の最後のポケモンは草エネルギーが一枚ついた二匹目のチェリムだ。 「わたくしのターン。……草エネルギーをチェリムに、つけて、グッズカードを、使いますわ……。ポケブロアー+を二枚、発動」 虚空から赤い手が現れ、ガブリアスを掴む。それだけではなく、再び虚空からもう一つの手が現れてベンチのギャラドスも掴んだ。そして掴んだまま二匹を持ち上げ、二匹それぞれの場所を入れ替える。 「ポケブロアー+は一枚だけで使うときと二枚同時に使うときで効果が異なるカードよ! 今のように二枚同時に使った時は相手のベンチポケモンを一匹選んでバトルポケモンと入れ替える効果を持つわ」 松野さんが再びアシストしてくれる。しかしなぜ、ガブリアスからギャラドスに変えたのか。ギャラドスはエネルギーなしでもワザが使えるのに。 「わたくしは、まだ諦めてませんわ! チェリムに草エネルギーと達人の帯をつけて、甘辛花粉!」 チェリムのHPが100まで上昇し、ワザの威力も20上がる。チェリムのポケボディーと加えてギャラドスに襲いかかるダメージは50。 「俺のターン! ギャラドスのリベンジテール! トラッシュのコイキングは三枚。よって90ダメージだ」 「チェリムは、水タイプに抵抗を、持っていましてよ! それによって受けるダメージは70ですわ」 しかしそれでもチェリムのHPは確実に削っていく。100あったHPがあっという間に30まで削って行った。 「わたくしのターン! 草エネルギーをチェリムにつけて攻撃……」 久遠寺がふらついている体を再びしっかり持ち直す。揺らいでいた視線が真っすぐ俺を見つめる。その瞳には闘志が見られる。 「ソーラービーム!」 夜にも関わらず、太陽を直視したような眩い光がチェリムから放たれた。眩さ余り、思わず目を閉じ右腕で顔を覆う。 視界は防がれても、音で何が起きてるかはわかる。ギャラドスのHPバーが尽き、ギャラドスが大きな音を立てて崩れ落ちる。 ようやく視界が戻ったときには久遠寺が五枚目のサイドを引いていたところだった。 「ソーラービームの元の威力は50、帯とポケボディーで80まで威力が上がったか。確かにギャラドスを倒すには十分……」 バトルテーブルでベンチにあるガブリアスのカードをバトル場へと動かす。それに対応するようにガブリアスが足音を出しながらバトル場へ歩み寄る。 「だがここまでだ。俺のターン! ガブリアスでとどめだ! スピードインパクトォ!」 ガブリアスが突進する前に、久遠寺の目じりに涙が浮かんでいるのを見かけた。その次の瞬間、ガブリアスの突進によって巻き起こる砂煙のビジョンで久遠寺が見えなくなる。 俺が最後のサイドを引いたことによってガブリアス達の映像が消え、そして砂煙のビジョンも晴れる。そして見つけた久遠寺は、うつ伏せに倒れていた。 「っ……! うぐあ!」 その刹那、物凄い脱力感が体を包み込み、物凄い吐き気がしてくる。急に腹の中から押し上げられたような衝撃に、口を右手で防いでいたのだが吐き出るものが全て出てしまった。苦さと苦しさに少しだけ目頭がジーンとしてきた。 「風見くん、大丈夫?」 松野さんが必死に背中をさすってくれ、ようやく平静を取り戻した。松野さんが渡してくれたハンカチで口元をぬぐう。それでもまだ不快感は残っているが、とりあえず展開しているバトルテーブルをバトルベルトに戻す。 「なんとか、大丈夫……です」 「それじゃあ私は久遠寺麗華をどうにかするから、私の家のベッドで休んでおきなさい」 松野さんが家の鍵を手渡した。携帯電話で誰かと連絡を取り始めた松野さんをよそに、一人先に休めるところに向かう。 しかし能力者との対戦がこんなにきついとは。風見杯で藤原と対戦したのち、俺とも対戦した翔の精神の強さを思い浮かべる。 それにしても、久遠寺と戦ったことで本当に過去と決別したことになるのだろうか。いや、俺の決別はまだ……。
松野「今回のキーカードはポケブロアー+。 一枚だけでは効果は微妙だけれど、 二枚使うと相手のポケモンと入れ替えれるわよ!」
ポケブロアー+ グッズ このカードは、同じ名前のカードと2枚同時に使ってもよい。 1枚使ったなら、コインを1回投げる。オモテなら、相手のポケモン1匹に、ダメージカウンターを1個のせる。 2枚使ったなら、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替える。(この効果は、2枚で1回はたらく。)
─── みんな応募ありがとー! こんなに集まるとは思わんかった。とりあえず期間まで応募まってまーす。
久遠寺麗華の使用デッキ 「ハッサムPB」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-719.html
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出陣 ( No.62 ) |
- 日時: 2010/09/09 00:25
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 三月下旬の日曜日、待ちに待ったPCC(ポケモンチャレンジカップ)の※東京Aの地区予選が開催される日だ。
※東京A・東京は参加する人数が多いため、東京Aと東京Bに分けられることがある。 姉を置いて一人、先に会場となるサンシャインシティを目指し池袋駅に着いた。 「姉を置いて一人」とは言ったものの、日ごろの仲間達とは待ち合わせをしてある。集合場所はJR池袋駅の改札だ。 どうやら一番乗りらしい。集合時間の七分前に来てしまったのだが、とりあえず歩行者の邪魔にならないよう壁際で待つ。 三分ほどしてやってきたのは石川薫だった。 「あれ? 遅れてごめん」 「まだ集合時間の四分前だから問題ないぜ」 「いや、本当はおれが一番に来るつもりだったんだけどやられちまった」 三月下旬の東京はようやく春めいてきた。今日の最高気温は十五度だが、それでも薄着だとそこそこ寒いと感じることもある。 俺もそれを見越して、真ん中に英語がプリントされた長袖のTシャツの上に長袖の赤系チェックシャツを羽織っているのだが、事あろうか石川は肩出しニット一枚だ。ちなみにパンツは俺が薄青ダメージジーンズで、石川がレギンス付きスカートを履いている。 しかし肩にギリギリ届かない程度の石川の髪が、柔らかい雰囲気を持ったためなのか可愛らしい印象を受ける。 「毎度思うけど寒くないの?」 「そもそも今日って寒い? 暖かいと思うんだけど」 「いや、なんでもない」 思えばこいつは真冬にあった風見杯で半袖半ズボンという理解不能な服装をしていた。それに比べれば今回はマシというわけだが、やはり理解に及ばず。 ちなみに石川とはこの間かーどひーろーで会った後にもう一度別の日にかーどひーろーで会い、そこで連絡先を交換した。折角なので、一緒にPCCに行こうと誘ってみたのだ。 「もうすぐ時間かな」 他愛ない話をしている最中、ジーンズの尻ポケットに入れていた携帯で時間を確認する。時刻は丁度集合時間の一分前を指していた。 「おっすー、待たせたな」 図ったかのようなタイミングで人ごみの中から声が聞こえてきた。 まずやってきたのは恭介と蜂谷と拓哉だった。 「ちょっとまてよ翔、そこの女の子はどなただよおい」 蜂谷が眉間にしわ寄せ問うてくる。そんながっつくなよ。 「こないだの大会で戦って、かーどひーろーで再会してから連絡先交換したんだよ。お前も初めてかーどひーろー来た時顔見ただろ?」 人がマジメに答えてやったのに、蜂谷は頭をひねる。そのまま百八十度まわしてやろうか。 「ちょっと待てよ、こないだの大会?」 蜂谷に代わり今度は恭介が食いついてきた。 「ああ、風見杯本戦の二回戦で」 「ってあの季節違いの服装してたやつか! って男じゃないの!?」 やっぱりそういう覚え方してたかー。でも本人の目の前で言うのはどうかと思うぞ。 「おれは女だ!」 「説得力ねー!」 さかさず突っ込んだ石川だが、恭介に返される。互いに睨みあうせいで(恭介が睨む必要性はないと思うが)妙に緊迫した雰囲気になった。 「そういえば確かに風見杯のときと比べて急に印象変わったよね」 俺の問いかけに石川は睨みあいを中断し、素直に首を縦に振る。 「お母さんに、高校に入るんだから女の子らしくしろって言われてさ」 「じゃあ風見杯のアレは黒歴史になるわけか」 「さっきからうっさい!」 「ごべばっ!」 鳩尾を思いっきり殴ってきた。とてつもないダメージで、思わず床に両手をつく。その様子を見ていた恭介は、口は笑っているも目が死んでいた。 「遅れてすまんな。何かあったのか?」 背後から風見の声がした。怪訝な顔を作る風見から手を借りて立ち上がる。 「いや、大丈夫、何でもないさ。おそらくだけど」 「? まあそんなことより時間だしそろそろ行こうか」 「ちょっと待ったぁ!」 会話を割ったのは蜂谷だ。 「風見の後ろにいる人誰?」 「ああ、お前は風見杯に来てなかったんだな。風見杯ベスト16の向井剛だっけか。PCCに来るようだったからな」 要は拾ってきたという事か。向井は恥ずかしそうにお辞儀をした。人見知りっぽいね。 向井と同級生(幼馴染でもあるらしい)である石川は、「一緒にいこーぜ!」と背中をバシバシ叩きまくってる。手綱は石川にアリ、か。 「それじゃあそろそろ行くぞ」 音頭を取ったのは風見だった。皆が風見の後ろをついていく形になる。 風見と絡むようになってから知ったのだが、非常にリーダーシップを持っている。働いているという理由もあるのだろうが、各々に別方向を向いているヤツらを一気に同じ向きに向かせる程のリーダーシップは天性のものだろう。 「今回の会場はサンシャインシティだ。35番出口から出るのが一番早い」 下調べもバッチリか、風見先導のまま地上に出てからも迷うことなく進んでいく。休日日曜の朝も、池袋は人の行き交いがとても盛んだ。七人で固まってあるいていると通れる道も通れないので、自然とだいたいな二列縦隊に組まれる。 俺はなんとなく先頭の風見の左隣りで落ち着いた。俺の後ろには恭介と蜂谷と拓哉、その更に後ろは石川と向井と続く。 「翔、今回の自信の程は?」 「まあ少なからず予選は抜けたいな」 「なんだ、風見杯の優勝者がこんな弱気とは拍子抜けだな」 「本当のことを言うと全国に出たい」 「本音はそっちか。まあ会場に向かう人の大多数が望むことだからな」 「いや、約束なんだ」 「約束?」 風見が眉をひそめる。風見の疑問に応えるために、ポケットに入れていたデッキケースから一枚のカードを取り出す。 「『マニーの決意』? 見た感じ創作カードのようだが」 まるで警察官が証拠品をみるかのように、そのカードをいろんな角度から見る。 このカードは、裏面は普通のカードと変わりないのだが、表面の部分は剥がされ、ザラザラになった表面にボールペン等でイラストとテキストが書かれているものだ。 「一応サポーターか。筆跡は翔のではないな」 風見が呟いたように、一応このカードはサポーター扱いである。どっちにしろ実際に勝負するときには使わないけどね。バクフーンを連れ、腕組みをした男がイラストの部分に鎮座している。 このカードの効果のテキストは、『全国大会で再会する約束を守る』とある。風見が言った通り、これを書いたのは俺ではない。 「これは?」 「中学時代の仲間と書いたんだ。これと同じのがあと二枚、その仲間が各自持ってる」 「ほう、じゃあその仲間というのも翔とあと二人か」 「ああ。一人は今大阪にいて、もう一人は東京にいるはずなんだけど……」 「?」 「連絡がつかないんだ。メールしても電話しても、年賀状も帰ってこないし」 「気になるな」 「冴木才知(さえき さいじ)ってやつなんだけどな……」 「全国に出れば何も分かるかもしれない、ってことか」 黙って頷く。風見が返してきたカードをデッキケースに戻す。 「翔、これを貸しておく。使うか使わないかはお前次第だ」 風見がポケットから十枚程度のカードを裏向けのまま渡した。拒否出来ない雰囲気に負け、何事もないかのように受け取ってしまう。 「よし、後はこのエレベーターで三階まで昇ったら会場だ。気を引き締めていくぞ!」 「おー!」 カリスマ性だな、と感じる。今の風見がとった音頭も、普段は俺がするポジショリングなんだが今日は風見の機嫌がいいような気もする。おー! と返した恭介達の表情も実に柔らかい。 サンシャインシティ、文化会館展示ホールへ向かうエレベーターは四つ。エレベーターホールには、俺たち以外にPCCに出ると思われるような人達が見受けられる。 バトルベルトを既に装着している人はカードで出るのだろうと分かるが、俺のようにまだ未装着の人をゲームかカードかどちらで出るのかは分からない。 「翔、エレベーター来たぞー」 蜂谷に小突かれる。辺りを見回すのに必死で、目の前の目的を忘れるところだった。稼働するエレベーターは四つあるが、どれもこれもエレベーター一つではここにいる人を運びきれない。ちょうど他にも降りてきたエレベーターに人が分かれて乗り込む。 自分の意志でエレベーターに向かわずとも、人ごみに押されて自然とエレベーターの中に収まる。エレベーターが閉まる瞬間、ホールの方から嫌な視線を感じたような気がした。
翔「今回のキーカードはマニーの決意。 一年前の約束のカードだ」
マニーの決意 サポーター 全国大会で再会する約束を守る。
サポーターは、自分の番に1枚だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。
※このカードは実在しません。
─── 無理やりマニー出演。これで全シリーズ登場おめでとう。 ようやくPCCが開催されますが、今思えばそれまでの過程が長かったなぁ。 そして、キャラ募集に参加していただいた皆さんありがとうございました! 前述の通り、出演をもって結果を発表したいと思います。
50話記念企画第2弾として、レイコさんに挿絵を描いてもらいました。 風見杯編のクライマックスシーン、37話「決戦の果て」 http://www.geocities.jp/derideri1215/library/card/37.html
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PCC予選 ( No.66 ) |
- 日時: 2010/09/09 00:31
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 聞いた話によると、カード部門は予選は普通にバトルベルトを使わないでテーブルを使用し、決勝トーナメントからはバトルベルトを使用するということらしい。
展示場Cの入り口でポケモンだいすきクラブのカードを提示し、そのあとセキュリティーチェックと手荷物検査を受けてようやく会場内に入る。 入ったその先、展示場Cには大量のテーブルとDSを置いた台が綺麗に並んでいる。 「思ったよりも味気ねーなぁ」 蜂谷がぼやいた通りである。真っ白な壁と地面に、青く着色された柱が十本近く並んでいる展示場Cに、緑のプレイマットが敷かれたテーブルだけでは味気がない。ゲームの方では用意されているDSも、そのDSを置いてある机も白なので、会場全体が虚しさを放っている。 「まあ大会は普通こうだよ」 公式大会に初めて参加するのは恭介と拓哉と蜂谷と向井の四人。四人の顔はどこかしら少し興奮が混じって見える。 「おっとすみません」 背後から誰かと浅くぶつかった。保護者らしき男の人が、人の多い会場を駆ける子供を追っている。 「修也ー! 待ちなさい」 親になるっていうのは大変なんだなぁ。灌漑にふける先、その男の人とクロスするように小さな女性のシルエットが現れる。 「一か月ぶりくらいかしら?」 あの人は、クリーチャーズの。確か松野さんだったかな。 前回会ったときのレディーススーツと違って、ベージュのシフォンタックワンピに茶色のパンチングベルト、そしてヒールの高いベージュのスプリングブーツ。前回会った時のレディーススーツがピシッとしている印象を与えたせいで、大人の女性というイメージが強かったのだが、何だかやけに可愛らしい服装を着ていてるためどんなキャラかが掴めない。 「風見くん、翔くん、藤原くん。ちょっと」 「あの人誰? 知り合い?」 「うわー! まさか藤原まで女の子の知り合いが!」 後ろから石川や蜂谷の痛い目線を受けながら適当に手を振って松野さんに着いていく。時間が時間なので、俺らを除く四人のエントリーを石川に託したのだが、恭介や蜂谷みたいなクセのあるやつをなんとかできるかな。 俺たちは松野さんと共にスタッフのみしか入れない部屋にでも行くのかと思えばそうでもなく、ついた先は会場の隅だった。 松野さんは携帯電話を操作して、俺達に画面を見せる。 「今回の大会に参加してる能力者は二人。一人目は『高津 洋二(たかつ ようじ)』。丁度そこの柱の傍にいるわね」 松野さんが指さす方向には、柱にもたれかかって携帯電話をいじくる男がいる。こいつの能力は「影響直受」という名前らしく、ワザのダメージが実体化するものらしい。しかしプレイマットでの戦いでは能力が発動しないとのこと。 「そして二人目が『山本 信幸(やまもと のぶゆき)』よ。うーん、見当たらないわね、まあここに写真があるからいいけれども」 携帯電話に映っている写真には、黒縁の眼鏡をかけた不健康そうな男がいた。これがこの間聞いた、「意識幽閉」の能力をもつヤツらしい。こいつに負けると病院送りは必至、意識不明になってしまう。 「対戦表までは操作できないから、予選で当たるか決勝戦で当たるかなんてのは分からないわよ」 三人とも同時に固唾を飲み込む。どことあらぬ方向に意識を向けていたが、松野さんが携帯を閉じる音によって現実に引き戻される。 「そもそもこの二人に戦う前に負けたら承知しないわよ。さ、また後でね」 さっさと去りゆく松野さんを見て、この人は精神が強いなと思わずにはいられない。俺の心臓の鼓動は緊張のせいで早くなっているのに、松野さんの顔はそういう類の感情がまるで浮かんでいないように見えるのだ。 「こいつらに当たろうが、当たらなかろうが、俺は勝つ」 藤原(性格の悪い人格の方)が反吐でも吐くように呟き、エントリーに一人で先に向かう。追いかけようとしたときには既に雑踏の中に紛れて姿が見えなくなっていたのだが。 ……あいつ、大会初出場なんだからちゃんとエントリー出来るかが心配だな。 「翔、さっさとエントリーを済ますぞ」 「そうだな」 藤原の後をつけるように、俺と風見もエントリーをしに人ごみの中に歩み寄る。
「俺のターン! 手札の炎エネルギーをつけてバクフーンでサワムラーに攻撃。気化熱!」 PCCはゲームもカードも共に、小学生以下と中学生以上の二部門に分かれる。もちろん俺たちが出るのは中学生以上の部門だ。 そして予選は同じ勝ち数の人が適当に対戦することになる。分かりやすく砕いて言うと、自分が今0勝なら対戦相手も0勝の人で、今1勝ならば相手も1勝。という感じ。その予選で三連勝すると先着三十二名が本戦を進むことができる。予選からも一度たりとも負けることを許されない。 さっきも言ったが、予選はテーブルでの試合で行われる。今俺は二連勝同士のテーブル、つまり予選最後の勝負をしていた。「していた」と過去形なのは、たった今俺のバクフーンの攻撃で勝利が確定したわけで、サイドを引いてスタッフに勝利の判を押してもらったところなのだ。 テーブルから離れて、俺は先に最初にエントリーを行った場所で本戦に進むために必要なバトルシートを貰った。 「翔はえーな!」 恭介が笑いながらこっちにやってきた。その様子だと、恭介も勝ち抜いてきたようだ。 「忘れずに本戦のバトルシートもらっとけよ」 「おう!」 「とりあえず他の奴らの応援しとくぜ」 恭介と別れてテーブルの方へ向かう。試合をしている選手以外は入れないようにテープが敷かれてあり、その周りを囲むように負けた人或いは勝ち抜いた人が応援をしたり、トレードしたりと自由に活動している。 別に風見の応援をする、だとか蜂谷の応援をする、みたく別に誰の応援をするとかは考えてなくて、とにかく目についた奴の応援をしようと思っているので適当に辺りを見渡す。 「俺のターン。ハクリューをカイリューに進化させて攻撃。破壊光線!」 聞きなれた声の方を振り向くと。風見が小さくガッツポーズを組んでいた。風見もこれで予選を勝ち抜きだな。 「行くぜ、ビークインで攻撃だ。ビーパウダー!」 その風見の二つ奥のテーブルで蜂谷が拳を天井に向けて突き上げた。初挑戦ながらも蜂谷が本戦に参戦確定。風見杯での恭介を彷彿させる。 「おれのターン。バトル場のプテラを逃がして、ラムパルドを新たにバトル場に出す。ラムパルド、真空頭突きだ!」 蜂谷の斜め右では石川がおっしゃー! と拳を握る。 「私のターン。グラエナでトドゼルガに攻撃、やけっぱち!」 石川の三つ手前で、松野さんも勝利をしたようだ。ん? よく見ると、松野さんの相手は姉さん。ということは姉さんは予選落ちか。後で適当に慰めておこう。 「そりゃ皆が皆本戦に行けるわけじゃないよなぁ」 「何言ってんだ、んなの当り前だろうが」 俺のつぶやきに応えるように、背後から拓哉の声がした。 「勝ったのか?」 「当たり前だ、この俺を誰だと思ってる」 「はいはい、藤原拓哉だろ」 他にも勝ち抜けを決めたメンバーが集まってきた。しかし本戦は一時から始まるとのことなのでそれまで昼飯を食う事になった。昼飯を用意してるやつ、してないやつなどいろいろいるので基本的に各自自由行動になる。 「翔! 一緒に飯食おうぜー!」 石川が俺の肩をバシバシ叩きながら笑顔で言ってくる。手加減ないから痛い痛い。 「分かったから叩くのやめっ、ちょマジ痛い!」 ようやく叩くのをやめてくれた石川は、「ちょっと待ってて」と鞄をごそごそ漁る。 そんなとき背後から俺を射す視線に気づいたので、振りかえってみると風見がいた。 「翔、ちょっと」 「分かった。石川、悪い! すぐ戻るから待っててくれ」 「はっ? ちょっと翔!」 不貞腐れた石川を置いておくのは気が引けるが、風見の真剣な表情が大きな事情───恐らく能力関係だろう───があることを物語っていたのでそちらを優先させていただく。 「能力者は両方とも予選抜きをしたようだ。高津は前述したとおり、プレイマットの試合なので影響なし。一方の山本は能力が作動して、負けた三人は皆一旦救護室にいるようだ」 「……」 「藤原のときのように、山本に勝てば意識を失った人々が戻ってくるかもしれない。俺達次第だ」 「そうだな……」 風見が俺の肩を軽く叩く。そしてそのままどこかへ去って行く。 どうしようもなくなった俺は、石川の元に戻ることにした。
翔「今日のキーカードはビークごふっ!」 蜂谷「今日のキーカードはビークイン! 状態異常に火力上昇。なのにエネルギーコストは悪くないんだぜ!」
ビークインLv.44 HP100 草 (破空) ポケボディー みどりのいげん このボディーは、自分のサイドの枚数が、相手のサイドの枚数より多いなら、はたらく。このポケモンが使うワザの、バトルポケモンに与えるダメージは、自分のベンチの草ポケモンの数×10ダメージぶん大きくなる。 草 ビードレイン 20 相手に与えたダメージぶんのダメージカウンターを、自分からとる。 草無 ビーパウダー 50 コインを2回投げ、すべてオモテなら、相手をどくとやけどとマヒにする。 弱点 炎+20 抵抗力 闘−20 にげる 1
─── 久しぶりの本編更新 カードの公式大会出たことないからWCSゲーム部門と同じような感じにしてます。
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昼時 ( No.68 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:51
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「翔! 頑張って早起きして弁当作ったんだ、食ってくれ!」
石川の元に戻ると、腕を引っ張られて展示ホールの外へ(展示ホール内での飲食はご遠慮くださいということらしかった)連れ出された。そして座れるところまで来ると、まるで飛んで跳ねるようなテンションで俺に弁当の入った包みを渡してきた。 「これで昼飯代は浮くな、ありがとう」 とは口で言ったものの、包みを開ける手は化学の実験をしてるかのような慎重な手つきだった。偏見で悪いけど、いかにもご飯作れなさそうなタイプだもんね。 「おっ」 水色の包みの中から可愛らしいくまさんのお弁当箱が出てきた。俺の予想ではこの辺ですさまじい臭いが襲いかかってくるはずだったのだが、そんなことはなさそうだ。 「よし、それじゃあいただきます」 意を決して弁当箱を開けてみると、悪臭どころかむしろおいしそうな匂いが。予想はいい方向に外れたらしい。しかし、具を良く見ると。 「ハンバーグにからあげに肉団子にたこさんウインナー……」 「からあげと肉団子は冷凍のやつだけど、他は全部自分でやったんだぜ」 野菜がどこにも見当たらん。 「あ、ありがとう……」 そのときどこかからこちらを見つめる視線を感じた。慌てて視線の元へ顔を向けたが別段こちらを向いてるような人は見受けれなかった。 「翔」 「うん?」 「お口あけて」 「いや、ハンバーグを一口で食わせようとするのはどう考えてもあばばばばっ!」
「クソッ、本当なら百合ちゃんのお弁当をお口あーんでいただけたのに」 「ざまあ」 蜂谷が口に含んだコンビニおにぎりをこぼしそうな勢いで笑いだす。イラっとしたので睨み返す。 「ていうか口の中にモノ入れながら喋るな」 頭を少し叩いてやると、蜂谷は左手を俺の眼前に突き出した。止まれってこと? ようやく飲み込んだらしい蜂谷は左手を下ろす。 「なあ恭介、さっきから気になってるんだけどアレは何の騒ぎなんだ?」 口の中がようやく開いたらしい蜂谷は、人だかりができてる一帯を指差す。 「行ってみるか」 慌ててコンビニおにぎりを口の中にねじ込み、ゴミを捨てて人だかりの中に突っ込む。 どうやらこの人だかりの何人かはカメラを構えているようだ。人と人の間を頭を無理やり突っ込んで先に進む。 「ぬおぅわ!」 右の方から呑気な蜂谷の声が聞こえる。どうやら転んだようだ。一方で俺はようやく最前列までたどり着いたのだが、目の前の光景を見るとこれがまたとんでもない。 なんとメイドさんがいたのだ。 「おおおおおおおおぉぉぉぉ!」 どうやらこの人だかりはメイドさんを写真に撮ろうとしてるようだ。急いでポケットから携帯を取りだす。 どうやらメイドさんは派手に転んだ蜂谷を労わっているようだ。蜂谷は後で肩パン。 「あの大丈夫ですか?」 「あいてて……、うん?」 辺りを軽く見渡してようやく状況を飲み込めた蜂谷は、彼女の手を借り立ち上がる。服の砂埃を払った蜂谷は、俺に向かって 「恭介、写メ撮って俺の携帯に送って!」 「断る!」 「あの、一緒に写真撮ってもらってもいいですよね」 聞けよ! 「え、いいですけどそれよりもお怪我は大丈夫なんですか?」 メイドさんはどうすればいいか分からずはたまた蜂谷を気遣う。 「ええ大丈夫です。紳士ですから」 意味がわからん。 「はいチーズ」 二人がきちんとこちらを向く前に携帯カメラのシャッターを押した。 「まだ準備できてねーだろ! マジメに頼む!」 「お前といるからメイドさん困ってるじゃん! むしろ俺が一緒に!」 あぁ、これはいつもの終わらない醜い言い争いのパターンだな……。メイドさんとの写真は諦めるべきか。 「あの……」 「はい?」 「それじゃあ三人で撮りましょう。それなら問題ないでしょう?」 俺と蜂谷は急いで携帯をその辺の人に渡し、写真を撮ってもらうことにした。
写真を撮ってもらった長岡君と蜂谷君は喜色満面の表情を浮かべながら肩を組んでホールの方へ走って行く。 「平和ねぇ」 「ですね」 私こと松野藍はその様子を職場の部下である一之瀬和也(いちのせ かずや)と共に眺めていた。 「ずっとこんな状態が続けばいいのにねぇ」 「そうですね」 「それよりも能力者、か。いったい何でそんなのが現れたのよ」 隣にいる一之瀬君にはっきりと聞こえるよう溜息をつく。 「とか口に言いながらアイコさんあんまり困った表情してませんね」 「どっちかっていうとめんどくさいって感じね。対応が」 「言いますね」 「こういうときに前の主任がいればなぁ」 「奥村昌樹さんでしたっけ」 「ええ、あの人にはお世話になったわ」 奥村昌樹さんは奥村翔君の父親である。面倒見がいい人で、常に笑顔を絶やさない太陽のような人だった。……父親か。 「アイコさんがそんなに人を褒めるのはみたいことないなぁ」 「一之瀬君は会ったことないもんね。さて、私達もそろそろ戻るわよ。一之瀬君は別の業務よろしくねー」 「アイコさんも負けないで下さいよ」 「当たり前じゃない。むしろ負けるわけにはいかない、って感じよ」 鞄からバトルベルトを取り出し、装着する。 「折角コーディネートしてきたのにバトルベルトのせいでブチ壊しね」
「拓哉! 飯は食ったのか?」 「あっ翔君。うん、ちゃんと食べたよ」 「そうか。……そろそろ決勝リーグの時間だな」 「僕と蜂谷くんの出番だね」 バトルベルトは広い空間を要するため、スペース上の問題からか同時に四試合しか出来ない。そして決勝リーグのバトルシートに記載されてる番号が1〜8の選手が最初に戦う。 拓哉は1番、蜂谷は5番である。うまくいけば三回戦(準々決勝)でぶつかることができる。一方で俺は27番なので一回戦をするのは最後(前に書いたとおり決勝リーグは32人)だ。 「しっかり行ってこいよ!」 「うん。……風見杯のときに迷惑かけたからさ」 「ん?」 「だから、PCCで少しでも役に立ちたいんだ。だから絶対負けない!」 「ああ、その心意気だ。絶対勝てよ!」 「うん!」 先を行く拓哉の後ろ姿がいつもよりも大きいように感じられた。
風見「前回使ったキーカードだ。 エネルギーはたくさん必要だが、威力は申し分ない」
カイリューLv.61 HP140 無 (DP5) 無無無 はかいこうせん 40 コインを1回投げオモテなら、相手のエネルギーを1個トラッシュ。 無無無無 りゅうせいぐん 相手の場のポケモン全員に対して、それぞれ1回ずつコインを投げ、オモテが出たポケモン全員に、それぞれ50ダメージ。 弱点 無+30 抵抗力 闘−20 にげる 3
─── 54話の挿絵をレイコさんがつけてくれました。感謝! http://www.geocities.jp/derideri1215/library/card/54.html
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ケンカ ( No.69 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:52
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「よし、決勝リーグ一回戦頑張ろう!」
両頬をパチンと手のひらで叩いて気合いを入れる。すると、耳の奥から僕にだけしか聞こえない声が聞こえる。 (俺が出なくてもいいのか?) とある事情で二カ月ほど前に僕の中で生まれたもう一つの人格。彼が心の奥から声をかけてくる。 「大丈夫。予選も僕が勝ち抜いたし、僕だって出来るってことをさ」 (そうか。応援はしてるが、ヤバそうになったら俺が出るからな。例えば……能力者とか) 「分かってるさ、そのときは頼むよ」 外からすれば独り言にしか聞こえない。そのため傍にいるスタッフがこちらを変な人を見る目で見つめる。 (ケッ、損な役回りだ事) 心の中の存在のため、表情は見えないがきっと笑っているのだろう。 スタッフに誘導され指定位置につくと、バトルベルトを起動する。 かつてもう一人の人格がバトルベルトを使用したことがあるが、僕自身がバトルベルトを使うのは初めてである。そのためどう操作すればいいかわからない。 (おいおい。そんなんで本当に大丈夫か?) 「ごめん、変わって」 折角頑張ろうと思ったのにこれじゃあどうしようもない。息を吸って目を閉じればもう一人の人格がなんとかしてくれるだろう。
「フン」 相棒がようやくしっかりしたかと思えば結局これかよ。以前にあの松野とかいうチビと戦ったことを思い出すのは癪だが、そのときに言われた通りベルトを起動させる。 「ねえ、この程度の操作も満足にできないの」 既にバトルベルトを展開してバトルテーブルを組み立てた対戦相手が声をかけてきた。 「ああん? 今組み立ててんのが見えねぇのか」 「早くしろよな……」 「ケッ、どうしてこうもチビガキの相手ばっかり俺がしなくちゃいけないんだ」 対戦相手の背丈からして中坊程度だろう。しかし相手の容姿で気になるのは背丈よりも左目にしている眼帯と、対戦をするというのに未だつけられているヘッドホンだ。 肩にかかるぐらいに伸びたちょっとパーマ掛かった黒髪。そして上は半袖の白色Tシャツの上から手が隠れるほどぶかぶかな白のパーカだが、下は鼠色と黒のチェック柄のスーツというやや変わった格好がそいつの変わり具合を更に醸し出す。 「準備出来たぜキテレツ野郎」 「ちゃんと沙村凛介(さむら りんすけ)っていう名前があるんだけど」 「お前の名前なんて知ったこっちゃねえ。せいぜい俺に潰されるっていう程度でしか価値はねーよ」 「一々五月蠅いな……」 今のはきっと本人にとって独り言のつもりで言ってるのだろうが、声が大きいため耳に普通に入ってくる。それが俺の苛立ちを加速させる。 (揉めても仕方ないよ) 「それくらい分かってる」 デッキをデッキポケットにセットして、デッキ横の赤いボタンを押す。カードがオートでシャッフルされ、デッキの底から六枚サイドがセットされる。そしてデッキの上から手札となる七枚が突き出される。 互いに最初のバトルポケモン及びベンチポケモンをセットする。 「さあ潰しあいと行こうか!」 セットされたポケモンが表示される。俺のバトル場にはヨマワル50/50。そしてベンチには同じくヨマワル。一方、相手のバトル場のポケモンはドーブル70/70からのスタートだ。 「先攻は僕がもらう。ドロー。ディアルガをベンチに出し、ディアルガに鋼エネルギーをつける」 いきなりベンチに大型ポケモンのディアルガ90/90が現れたため、ドーブルがとても小さく見える。もちろんドーブルだけではなく俺のヨマワルもだ。 「ドーブルの色選びを発動。自分のデッキから基本エネルギーを三つまで選び、手札に加える」 ドーブルが自分の尻尾で空中に絵を描く。鋼のシンボルマークが三つ描かれた。 「鋼ねぇ。まあ俺様のオカルトデッキの相手になんねえな」 「所詮エスパーじゃん」 「どこまでも喧嘩売んのが好きなガキだな。よっぽど痛い目に遭いたいと見た」 「そんなこと言ってると自分が負けた時すごくはずかしいから気をつければ?」 「ケッ。俺のターン! ベンチにヤジロンを出してバトル場のヨマワルに超エネルギーをつける。手札からサポーターのミズキの検索を発動する。デッキからたねポケモンか基本エネルギーをそれぞれ二枚まで選択して手札に加える。俺が選ぶのはゴースと超エネルギーだ」 デッキ横の赤いボタンを押すと、デッキから指定通りのカードが出てくる。便利なこった。 「ヨマワルで攻撃。影法師! このワザの効果によって相手にダメカンを一つ乗せる!」 ヨマワルは一瞬で姿を消すと、ドーブルの影から現れ右手でドーブルをはたく。ドーブルが振りかえる前にヨマワルは再び姿を消し、俺のバトル場に戻った。 「ターンエンドだ」 「僕のターン。ディアルガに鋼エネルギーをつけてベンチにコイルを出す」 ディアルガの隣にコイル50/50が現れるが、ディアルガと大きさを対比すると小さいのなんの。 「そして手札のモンスターボールを発動。コイントスをして表ならデッキから好きなポケモンを手札に加える」 そうして沙村はデッキ横の青いボタンを押した。ドーブルとヨマワルの間に大きなコインが現れ、虚空にトスされる。示された結果は裏。沙村はおもむろにバツの悪そうな顔にする。 「ドーブルでもう一度色選び」 再び鋼のシンボルマークが三つ、ドーブルによって描かれる。 「鋼しか入ってねえのかよ」 「いちいち五月蠅いなあ。ムカつく。マジでくたばっちゃえよ」 「そおかい。だったらお前に特別に地獄を見せてやる。まずはそのための下準備だ。俺のターン、手札からミズキの検索を発動。手札を一枚戻し、デッキから好きなポケモンを手札に加える。俺はネンドールを手札に加えさせてもらうぜ」 手札のカードを一枚デッキトップに置いて青いボタンを押すと、ネンドールがオートで選ばれデッキから突き出される。俺がネンドールを手札に加えるや否や、デッキは再びオートでシャッフルしだす。 「ベンチのヤジロンをネンドールに進化させ、バトル場のヨマワルに超エネルギーをつけてサマヨールに進化させる!」 それぞれのポケモンが進化する。ポケモンの右下に表示されるHPバーはサマヨールが80/80で、ネンドールも同じ80/80だ。 「ここでネンドールのポケパワーを発動だ、コスモパワー! 自分の手札を二枚まで好きな順にデッキの底に戻し、自分の手札が六枚になるまでドローする!」 手札のクロツグの貢献をデッキボトムに戻す。これによって俺の手札は0。よって六枚きっちりドローすることができる。 「手札のポケモンの道具、ベンチシールドをネンドールにつける。ベンチシールドがついたポケモンはベンチにいる限りワザのダメージは受けなくなる」 ベンチにいるネンドールの前に六角形の水色の薄い盾が現れる。 「ここでサマヨールで攻撃だ。闇の一つ目!」 サマヨールが目を閉じて息を大きく吸うと辺りが暗くなった。サマヨールが勢いよく目を開くと、まさにインパクトは大。ドーブルは衝撃で後ろへ吹っ飛ばされる。ドーブルのHPバーは60/70から40/70へ。 「闇の一つ目の効果によって、俺は手札を一枚捨てる。そしてお前も手札を一枚捨てるんだ」 俺は手札からヨマワルを捨てる。相手は鋼エネルギーを捨てたようだ。 「僕のターン。手札の鋼エネルギーをドーブルにつける。ベンチのコイルをレアコイルに進化させてサポーターカード、スージーの抽選を発動。手札を二枚トラッシュしてデッキから新たに四枚ドローする」 沙村が手札からトラッシュしたカードは鋼エネルギーとディアルガLV.Xだ。 (LV.Xのカードを捨てるって一体……) 「なんかしらのサルベージ手段があンだろな」 「手札からゴージャスボールを発動。デッキからLV.X以外のポケモンを手札に加える。僕が手札に加えるのはジバコイル」 ドーブルの横にゴージャスボールが現れ、パンと軽快な音を立てて開く。中からはジバコイルの拡大コピーの絵が現れた。 「ドーブルでトレース。このワザはコイントスをして裏ならば失敗する」 再びコイントス。さっきのモンスターボールで外れたせいか、今回はきっちり表を出した。 「トレースのダメージや効果は相手のベンチポケモンのワザと同じになる。あんたのネンドールのワザをもらうよ。回転アタック」 ドーブルがコミカルに回転し、サマヨールに突撃していく。 「わりぃな。サマヨールの抵抗力は無色だ。よってサマヨールが受けるダメージは40から20へ減少する」 サマヨールのHPバーは60/80。まだまだ余裕はある。 「さあ俺のターンだ。ドロー。ゴースに超エネルギーをつけてゴーストに、サマヨールをヨノワールに進化させる!」 これでヨノワールのHPは100/120。一気に40上昇だ。ゴーストも80/80までHPが上がる。 「ネンドールのポケパワー、コスモパワーを発動。俺は手札を一枚デッキボトムに戻して六枚になるよう、つまり五枚ドローする。ベンチのヨマワルをサマヨールに進化させ、サポーターのシロナの導きを発動する。自分のデッキの上から七枚を見て、そのうち一枚手札に加える。残りをデッキに戻してシャッフル!」 上から七枚めくって確認する。コール・エネルギー、ヨノワールLV.X、アンノーンQ、ネンドール、ミズキの検索、不思議なアメ、ゴーストの七枚だ。 「ケッ、憎いほどいいタイミングだな」 黙ってヨノワールLV.Xを手札に加える。シロナの導きの効果によって手札に加えたカードは相手に見せるまたは知らせる必要はない。残りの六枚をデッキに戻してシャッフルさせる。 (場は揃ってきたけど油断は禁物だよ) 「はいはい。だがまあまずは目の前のドーブルを潰すとっからだな」 今の手札は五枚。ヨノワールを効率よく動かすには一枚邪魔だな。 「ゴースをベンチに新たに出すぜ」 これで俺のベンチはサマヨール、ネンドール、ゴースト、ゴースの四匹がいることになる。空きスペースに入れるのは残り一匹か。 「ここでヨノワールのポケパワーだ。影の指令! デッキからカードを二枚ドローし、手札が七枚以上ならば六枚になるようにトラッシュする。その後ヨノワールにダメージカウンターを二つ乗せる」 手札をわざわざ四枚にしたのはこのためだ。用無く手札からカードを捨てるのはあまり得策ではない。 「ダメカンを乗せてまでドローしたいの?」 「俺がわざわざ手札を引きまくった理由を教えてやる。ヨノワールでダメージイーブン!」 ヨノワールの腹にある口が開き、四つの赤い玉が現れる。 「さっさとそのドーブルを潰させてもらうぜ」 頬の筋肉が痛くなりそうなほど笑ってやる。ヨノワールが放出した赤い玉はドーブルに突き刺さり、HPバーを削って0にする。するとドーブルは急に力を失ったように前に倒れこんだ。 「ダメージイーブンはヨノワールに乗ってるダメージカウンターの分だけ相手のポケモン一匹にダメージカウンターを乗せる。影の指令でダメージカウンターを乗せなきゃドーブルのHPは20しか削れず20/70で耐えられるが、わざわざカードを二枚引くだけでお前のドーブルは気絶だ。ざまあねえな」 「っ……。次のバトルポケモンはディアルガだ」 「ケッ。サイドを一枚引いてターンエンドだ。この俺様にケンカを売ったんだ、もうちょっと楽しませてくれよ?」
拓哉(裏)「今回のキーカードはヨノワールだ。 影の指令、ダメージイーブン、ナイトスピンとそれぞれ方向性が違う。 このカードを使うトレーナーのプレイングが鍵だ」
ヨノワールLv.48 HP120 超 (破空) ポケパワー かげのしれい 自分の番に、1回使える。自分の山札からカードを2枚引き、自分の手札が7枚以上になったら、6枚になるまで手札をトラッシュ。その後、このポケモンにダメージカウンターを2個のせる。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 超無 ダメージイーブン 自分のダメージカウンターと同じ数のダメージカウンターを、相手のポケモン1匹にのせる。 超超無 ナイトスピン 50 次の相手の番、自分は、ついているエネルギーが2個以下のポケモンから、ワザのダメージや効果を受けない。 弱点 悪+30 抵抗力 無−20 にげる 3
─── ツッキーの応募キャラ登場! 今後もたくさん出てきます。 Hyper freshのED曲 「Hyper fresh」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-740.html
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地獄 ( No.70 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:52
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「僕のターン、ドロー。手札の鋼エネルギーをディアルガにつけ、ベンチにココドラとコイルを出す。そしてミズキの検索を発動。手札を一枚デッキに戻し、好きなポケモンを手札に加える。ボスゴドラを手札に加え、更に不思議なアメを発動。自分のたねポケモンから進化するポケモンを手札から一枚選び、そのポケモンに乗せて進化させる。僕はココドラをボスゴドラへ一気に進化させる!」
現れたばかりのココドラの足元から光の柱が形成される。光の中でシルエットだけ浮かぶココドラのフォルムが徐々に変わり、光の渦が消えるや否やボスゴドラが現れる。だがディアルガに比べると大きさは半分以下。フィールド的には俺の方が威圧されている雰囲気がある。 これで今の沙村のバトル場は鋼エネルギー三つのディアルガ90/90。ベンチにはレアコイル70/70、ボスゴドラ130/130、コイル50/50。 「ディアルガでラスターカノン!」 ディアルガが口を開くと口の前で鈍色のエネルギー体が形成され、ヨノワールに向けて放たれた。ディアルガの口元にあるときラスターカノン自体は大きく見えなかったが、ヨノワールの元に来ると意外とでかい。ヨノワールのHPが40削られ60/120へ。 「なんだぁ? そんなもんか? つまんねえな」 (……) サイドも一枚有利なため勢いづく俺だが、相棒はむしろ危機感を持っているようだ。 「どうした相棒」 (あんまり熱くなり過ぎちゃダメだよ) 「それくらい言われなくても分かってる」 どちらかというと、いちいちそんなことを口に出されることで冷静さを欠きそうだった。 「俺のターン! ゴースに超エネルギーをつけてゴーストに進化させる。そしてベンチのサマヨールをヨノワールに進化させる!」 これで俺のバトル場には超エネルギー二つのヨノワール60/120と、ベンチにはエネルギーなしのヨノワール120/120、ベンチシールドのついたネンドール80/80、超エネルギーがついたゴースト80/80が二体。相手と比べ、ほとんどベンチのポケモンが立っている。 「ネンドールのポケパワー、コスモパワーを発動する。俺は手札を一枚戻し、手札が六枚になるまで。つまり四枚ドロー。それだけじゃねえ、バトル場のヨノワールをレベルアップさせる!」 これでヨノワールのHPは更に増強され、80/140となった。これでだいぶタフになった。簡単にはやられまい。 「さて、ヨノワールLV.Xで攻撃だ。ダメージイーブン!」 ヨノワールに乗っているダメージカウンターの数だけ、つまり六個の奇妙な赤い玉がヨノワールの腹部にある口からディアルガに向けて放たれる……。と誰もが思ったはずだが、ディアルガを通り抜けてその後ろにいたコイルに赤い玉の群れが襲いかかる。 「なっ……!」 「ダメージイーブンによってダメージカウンターを乗せられるのは『相手』ではなくて『相手のポケモン』だ。よってベンチのポケモンにもダメージカウンターが乗せられるってわけだ」 コイルのHPバーがあっという間に底を尽き、急に力を失ったよう空中から地面に落ちた。 「サイドを引いてターンエンドだ」 これで俺の残りサイドは四枚。相手とは二枚の差ぶん引き離している。決勝リーグってのに大した事ねえな。 「僕のターン。手札からグッズカード、プレミアボールを発動。自分の山札またはトラッシュからLV.Xを一枚手札に加える。僕はトラッシュからディアルガLV.Xを加えて場のディアルガをレベルアップさせる!」 「ディアルガLV.X……。二ターン前のか!」 (あのときにスージーの抽選で捨てたカード、やっぱりサルベージしてきたね) ディアルガのHPは90/90からレベルアップすることによって110/110まで上昇。ダメージイーブンで倒そうとするにもヨノワールの残りHPが10だけでなくてはならない。 「そしてサポーターカード、デンジの哲学を発動。手札を六枚になるようにドローする。また、ドローする前に手札を一枚トラッシュ出来る。僕は手札の鋼の特殊エネルギーをトラッシュ。これによって今の手札は0。なので六枚ドロー!」 「特殊鋼……」 エネルギーはエネルギーでも、基本エネルギーはサーチやサルベージ手段が豊富であるが特殊エネルギーはその逆でサーチもサルベージもしづらい。そんな貴重なカードをトラッシュしてまで六枚引きたかったのだろうか。 「ベンチのレアコイルをジバコイルに進化させ、バトル場のディアルガLV.Xに特殊鋼エネルギーをつける!」 ジバコイルに進化することによってHPが70/70から120/120へと大幅に上昇した。更にディアルガLV.Xについた特殊鋼エネルギーは、そのエネルギーが鋼タイプのポケモンについているなら受けるワザのダメージを10減らす厄介なものだ。 「ディアルガLV.Xのポケパワーを発動。その効果によって相手プレイヤーはコインを二回投げる」 「ふん」 コイントスのボタンを押す。……裏、裏。二回とも裏か。 「ディアルガLV.Xでヨノワールに攻撃。メタルフラッシュ!」 ポケパワーは発動されなかったのか……? 考える間もなくディアルガLV.Xの体が眩く輝きだし、視界が白で覆われる。その中でヨノワールLV.Xは両腕を使って目をかばうも、HPバーは順調に削られて0になった。 「メタルフラッシュの威力は80。だけどメタルフラッシュを使った次のターン、このワザは使えない」 「そんな程度知ったこっちゃねえ。だがたった今、お前は自分で地獄行きのチケットを切った。ヨノワールLV.Xのポケパワー発動。エクトプラズマー!」 「そんな、倒したはずなのに……」 「こいつのポケパワーは、こいつ自身がバトル場にいて相手のワザによって気絶させられた時に発動する」 俺と沙村の周囲が一気にスタジアム状で紫色の何かに包まれる。観客の姿は見えなくなり、俺と沙村とそのポケモンしかモノが見えなくなった。上下左右前後全てが紫色で、足元までも紫色なので地面に立っている感じがしないでもない。 「その効果により、ヨノワールLV.Xはスタジアムカードとして扱われる」 急きょ俺たちを包んでいた紫の景色にスゥっと切れ目がいくつも入り、それは開いた。目だ。人の目のような小奇麗なものではない。少し濁った白目の真ん中にあるその瞳孔は闇のように暗い。上下左右前後にウン百万、ウン千万もある目は丁度俺達の方を向いている。 普通なら気分が悪くなる。あまりの不快感に吐き気を催すだろう。だが俺はこの程度じゃ何ともない、そのついでに沙村も戸惑いはしたが、やがて何事もないように俺をしっかり見据えた。なかなか根性があるじゃねーか。周りにいた観客共は嫌そうな顔をして俺らから離れるのが大半だ。 「このスタジアムの中ではポケモンチェックの度に『相手のポケモン全員に』ダメージカウンターを一つずつ乗せていく。ギリギリな寿命でファックしとけ。俺の次のポケモンはもう一匹のヨノワールだ」 「サイドを引いてターンエンド」 沙村がターンエンドをすると同時にポケモンチェックが行われる。急に沙村のポケモンが苦しそうにのたうつ。HPバーが10ずつ減って行き、ディアルガは100/110。ジバコイルは110/120。ボスゴドラは120/130。どいつもなかなかタフそうだな。 「俺のターン、ドロー!」 「この瞬間、ディアルガLV.Xのポケパワー発動、タイムスキップ!」 「あぁ?」 「このポケパワーによって行ったコイントスで二回とも裏を出した場合、次の相手の番の最初に相手がドローした瞬間、そこで強制的にターンエンドとなる」 「俺のターンを……スキップだと!?」 予想外の展開に驚かざるを得ない。まさか自分のターンが簡単に飛ばされるだなんて。だが。 「ポケモンチェックは行ってもらうぜ」 再びポケモン達がのたうつ。苦しそうな悲鳴を上げる奴もいる。なかなかな情景じゃねぇか。ディアルガLV.Xは90/110。ジバコイル100/120。ボスゴドラ110/130。少しずつ。少しずつだが確実にダメージを負わせている。 「それじゃあ僕のターン、ドロー。特殊鋼エネルギーをボスゴドラにつけ、ディアルガLV.Xを逃がしてボスゴドラと入れ替える」 (そうか、ジバコイルのポケボディー、電磁波によってあの人のバトルポケモンに鋼エネルギーさえ乗っていたら逃げるエネルギーは必要なくなるんだ) 「ケッ、入れ替えるのは構わねえがそいつ(ボスゴドラ)には生憎まだエネルギーが一個しか乗ってねえぞ」 「僕は手札からエネルギー付け替えを発動。その効果によってディアルガLV.Xについている鋼の基本エネルギーをボスゴドラに付け替える」 その辺も考えているのか。気に食わねえな。 「さらにスタジアムカード、帯電鉱脈を使う。新しいスタジアムが発動したことにより、前のスタジアムはトラッシュされる」 紫色の空間は霧のように消え行き、一度元のホールに戻る。だが休む間もなくまた新たな背景へと変わる。今度は殺伐とした谷だ。その谷の底の部分にあたるところに立っているようだ。辺りからは紫電が飛び交っている。 「悪いが地獄はこの程度じゃ終わんねぇぜ。ヨノワールLV.Xはトラッシュされるとき、手札に戻ってくる」 常に辺りに不快感を撒き散らしていた沙村だが、今回ははっきりと悪意のある目を向けて舌打ちをしてきた。 「帯電鉱脈の効果により自分の番にコインを一回投げることができる。表なら自分のトラッシュの雷または鋼エネルギーを一枚手札に加えることができる」 なるほどねぇ。さっきから鋼エネルギーを簡単に捨てていたからどうかと思っていたが、リカバリー手段はあるんだな。 沙村のコイントスの結果は表。ヤツはトラッシュから鋼の基本エネルギーを手札に加えた。この帯電鉱脈では鋼の特殊エネルギーもサルベージ出来るはずなのに、あえて鋼の基本エネルギーを選んだ。何かあるな。 「ココドラをベンチに出し、ボスゴドラで攻撃。山盛り」 ボスゴドラは右腕で地面を殴りつけた。もちろん立体映像なので会場自体にヒビが入るわけもないのだが、ボスゴドラの腕は帯電鉱脈の地面に深々とめり込んでいた。そして力技で右腕を引っこ抜く。 引っこ抜いた時に鉱脈がヒビ割れ、ヨノワールの足元までヒビが広がり、そのヒビから大量の土砂がヨノワールめがけて飛んでくる。しかし飛んできたのは土砂だけではない。土砂の中に鋼のシンボルマークがいくつも混ざっていた。 「自分のトラッシュにあるエネルギーを全てデッキに戻してシャッフルする。戻すエネルギーの中に鋼の特殊エネルギーがある場合、元の威力40に加え更に30ダメージ追加する」 だから帯電鉱脈のときに鋼の特殊エネルギーを戻さなかったのか! 沙村は自分のトラッシュにある鋼の基本エネルギー二枚と鋼の特殊エネルギーを一枚デッキに戻した。これによってヨノワールが受けるダメージは70。HPも50/120と大幅に減った。 「ほう。行くぞ、俺のターン」 今の沙村は勝ち急いでいる。俺に優勢をとられていたため、流れを持ち返そうとしていて、実際流れは沙村にあるように見える。 が、実際は全然逆だ。その理由として先ほどのターンにディアルガLV.Xの効果を使わなかったのが挙げられる。もしこれでタイムスキップを発動すれば利率は大きい。しかしタイムスキップは相手が二回とも表を出した時にそこで自分のターンが終わってしまうというデメリットも存在する。沙村はそれを恐れたのだ。 「中々頑張ってる。と褒めてやりたいところだが、俺と戦(や)ろうってんならその程度じゃ困るな」 沙村は再び悪意のある視線を送りつけてきた。感情的だな。ああ、感情的だ。こうも簡単に挑発に乗ってくれると助かるぜ。 「手札からミズキの検索を発動。手札を一枚デッキに戻し、俺はゲンガーを手札に加える。ベンチにいるゴーストを二匹ともゲンガーにし、ヨノワールをレベルアップさせる!」 ゲンガーはのHPは二匹とも110/110と高水準に昇り、ヨノワールLV.Xは70/140となった。 「片方のゲンガーに超エネルギーをつけてネンドールのコスモパワーを使うぜ。手札を二枚デッキの底に戻して三枚引くぜ。これでターンエンドだ」 「僕のターン。スージーの抽選を発動。ドーブルと鋼の特殊エネルギーをトラッシュして四枚ドロー! 更にボスゴドラに鋼の特殊エネルギーをつける!」 さっきまでおとなしい口調が、段々荒くなっている。語尾に力がこもってる。完全に冷静さを欠いているな。戦法も粗い。 「さあ、タイムスキップでもすんのか? またしょっぼいコイントスして裏二回出るといいな、ああ?」 もはや脅しともとれるような声音でもう一段階挑発する。 「……。ボスゴドラでヨノワールLV.Xに攻撃! 山盛り!」 再び地面にヒビが入り、土砂がヨノワールLV.Xを襲う。さっき捨てられたばかりの鋼の特殊エネルギーはデッキに戻ってシャッフルされる。ヨノワールLV.XはHPが尽きた。 「さあもう一度地獄の幕開けだ!」 演出っぽく指をパチンと鳴らすと同時、殺風景な谷から元のホールへ。そして再びあの紫の空間に戻って行く。またもや空間のあちこちから目が現れて二人を、どちらかというと沙村を見つめる。 「俺様のお次は超エネルギー一個の方のゲンガーだ!」 「サイドを一枚引いてターンエンドっ!」 もう一段階深い地獄を見せてやる。 乾いた下唇を少し舐めて憤っている沙村を見つめる。
拓哉(表)「今日のキーカードはディアルガLV.X。 特徴的なポケパワーはコイントス次第。 だけど決まればすごいことになるよ!」
ディアルガLV.X HP110 鋼 (DP3) ポケパワー タイムスキップ 自分の番に、1回使える。相手プレイヤーは、コインを2回投げる。すべてオモテなら、この番は終わる。すべてウラなら、次の相手の番の最初に、相手プレイヤーが山札からカードを1枚引いた後、すぐにその番は終わる。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 鋼鋼無無 メタルフラッシュ 80 次の自分の番、自分は「メタルフラッシュ」を使えない。 ─このカードは、バトル場のディアルガに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 炎×2 抵抗力 超−20 にげる 2
─── 翔の使用デッキ 「フレイムブースト」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-747.html また、wikiもだいぶ更新しました。 http://www15.atwiki.jp/kinaga/
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俺流 ( No.71 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:53
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「さあ、ポケモンチェックだ。エクトプラズマーの効果によってお前のポケモン全員にダメージカウンターを乗せる」
沙村のポケモン達は各々の姿勢で苦しみだす。そしてそのままHPバーは緩やかに減少していく。 バトル場にいる鋼の特殊エネルギーが二枚、基本エネルギーが一枚ついたボスゴドラは100/130。ベンチのジバコイルは90/120。鋼の基本エネルギーが二つ、鋼の特殊エネルギーが一つついたディアルガLV.Xは80/110、ココドラは40/50。 それに対して俺のバトル場のポケモンは超エネルギー一つついているゲンガー110/110、ベンチには同じゲンガー110/110、ベンチシールドのついたネンドールは80/80。 残りのサイドは互いに四枚だが、主導権は完全に掌握している。 「俺のターン。ゴースとヤジロンをベンチに出し、ゲンガーで攻撃する。シャドールーム!」 ゲンガーは両腕を自分の腹部に持っていく。すると右手と左手の間に黒と見違えるほどの濃い紫色の立方体の謎の物体を作り出す。ゲンガーが腕を広げるとその立方体もそれに合わせて大きくなる。ある程度の大きさになると、ゲンガーはその立方体を投げつけた。 謎の立方体は沙村のバトル場にいるボスゴドラに───。少なくとも沙村はそう思ったはずだ。実際には、謎の立方体はボスゴドラの脇腹の横を通り過ぎてベンチにいるココドラにぶつかった。 ぶつかっただけならまだしも、謎の立方体はココドラを包み込む。謎の立方体にココドラが捕えられる様子になった。 「なっ」 ココドラのHPバーが40から10へと減少すると、ココドラを包んでいた謎の立方体は霧散した。 「シャドールームは『相手のポケモン一匹』にダメージカウンターを三つ乗せる技だ。そこのデカブツみたいに真正面しか殴れないと思うなよ。ポケモンチェックだ!」 休む間もなく沙村のポケモンが苦しみ始める。ボスゴドラのHPは90/130、ジバコイルは80/120、ディアルガは70/110。そしてココドラのHPは尽きた。 「サイドを一枚引くぜ」 「くっ、僕のターン! ジバコイルにマルチエネルギーをつける」 (マルチエネルギーはポケモンについてる限り全てのタイプのエネルギー一個ぶんとして働くエネルギーだね) 「あいつのジバコイルのワザには鋼エネルギーと無色エネルギーしか必要としねぇはずだ。何かあるかもな」 「そしてグッズカードのエネルギーつけかえを発動。ディアルガLV.Xについている鋼の基本エネルギーをボスゴドラにつけかえる! 更にサポーターのバクのトレーニングを発動」 バクのトレーニングとは、自分の山札からカードを二枚引くサポーターだ。しかし効果はそれだけでなく、このカードを使用したターンはポケモンのワザの威力を10上げるのだ。 「来いよ、潰してみろ!」 「ボスゴドラでゲンガーに攻撃。ハードメタル! ボスゴドラに40ダメージを与えることによって、ワザの威力は60から100へ。更にバクのトレーニングの効果によってゲンガーに与えるダメージは110!」 鈍色の光に包まれたボスゴドラが地面を蹴り勢い良くゲンガーに肩からぶつかっていく。ゲンガーを地面に叩き伏せるようにのしかかると、ボスゴドラは思い切り頭をゲンガーの頭に叩きつける。爆ぜるような音が衝撃の強さを物語り、頭突きを見舞ったボスゴドラでさえ、ふらつきながら後退るとゲンガーから距離をとった。 ゲンガーのHPは110から一気に0へ。ボスゴドラのHPは70/130。ハードメタルの効果で自らも40ダメージを受けるはずだが、現に20しか受けていない。 「ハードメタルの効果でボスゴドラが受けるダメージは、鋼の特殊エネルギーで軽減できる。ボスゴドラについている鋼の特殊エネルギーは二つ。よって受けるダメージは20軽減され、20ダメージ」 「まーたトリガー引いたな。再び天国か地獄かのターニングポイントだ! ゲンガーのポケパワー発動。死の宣告!」 「倒したはずなのに……」 「倒されたときに発動するポケパワーなんだよ。今から俺様はコイントスをする。裏なら効果はないが」 出来るだけ相手に緊張感や動揺を与えれるようにわざと言葉を区切る。 「表だった場合は問答無用でボスゴドラは地獄送り(気絶してトラッシュ)だ!」 バトルテーブルを叩きつけるようにコイントスのスイッチを押す。結果は、 「わりぃな、表だ」 倒されたゲンガーの影がすっと伸びてボスゴドラの影と重なり、重なった影はゲンガーの形を形成した。ボスゴドラが異変に気づいて振りかえったのが最期、なんと影が立体と化してボスゴドラを殴りつけた。70も余力のあったボスゴドラのHPはあっという間に0になる。 今まで無表情、それかかろうじて悪意の眼差ししかしなかった沙村の顔が初めて負の色に包まれた。思い通りにいかない動揺、予想しない出来ごとの連続から来る驚愕。 「ようやくいい表情しはじめたじゃねえか」 「……ゲンガーが気絶したことによってサイドを一枚引く。新しいバトルポケモンはジバコイル」 「俺も引かしてもらうぜ。ベンチにいたもう一匹のゲンガーをバトル場に出す。そして楽しみポケモンチェックだ」 何度目だろうか、またも沙村のポケモンが苦しみ始める。先ほどよりもポケモンの数が減ったのでうめき声の音量は控えめだ。今回のエクトプラズマーによってジバコイルは70/120、ディアルガLV.Xは60/110へ。 「俺のターン、ドロー。ゴースに超エネルギーをつけ、ヤジロンをネンドールに進化させてベンチシールドをつける」 これでベンチにベンチシールドがついたネンドールが二匹ずつ並んだことになる。 「まずは一匹目のコスモパワーだ。俺は手札を二枚デッキボトムに戻し、手札が六枚になるよう。つまり三枚ドロー。さらに二匹目のコスモパワーもいくぞ。手札を二枚デッキボトムに戻して二枚ドロー。そしてベンチのゴースをゴーストに進化させる」 一見手札をぐるぐる回してるだけに思える行為だが、「今自分に要らない手札」をデッキボトムに戻し、「これから必要になるであろう手札」をデッキから新たに探っているのだ。そして、そのためのピースは揃った。 ケッ、もうサポーターを使う必要性も感じねえ。チェックメイトどころかもう、剣が体に突き刺さってるじゃねえか。後は息の根が止まるのを待つだけだな。 「ゲンガーで攻撃。シャドールーム!」 再びゲンガーが謎の立方体を生み出す。今度はベンチのディアルガLV.Xに向けて投げられた。投げられた謎の立方体はディアルガLV.Xに届く前に自然と大きくなり、あの大きなディアルガLV.Xをも閉じ込めた。 「ダメージカウンター三つだけではまだディアルガLV.Xは気絶しない!」 「カードテキストも読めねえのか? シャドールームは確かに相手のポケモン一匹にダメージカウンターを三つだけ乗せる技だ。だが、乗せる相手がポケパワーを持っている場合は更に乗せるカウンターを三つ増やす!」 今のディアルガLV.XのHPは60/110。きっちりHPは0となり、ディアルガLV.Xは足に力が抜けて崩れ落ちるように倒れた。 「タイムスキップで逆転の可能性もあったのにこうなっちゃどうしようもねえな。サイドを一枚引いてターンエンド。あれ、もう残りサイド一枚か?」 沙村の舌打ちが聞こえる。だが、舌打ちだけじゃなかった。 「さっきからいちいち一言余計でむかつくんだけど」 態度だけで我慢していた沙村だったが、ついに言葉に表した。 「むかつかせてんのはどっちの方だ?」 「くっ……!」 返す言葉がないようだ。そしてジバコイルに再びエクトプラズマーの効果が適用され、HPは60/120まで下がった。 「僕のターン。ジバコイルに鋼の基本エネルギーをつけて、レベルアップさせる!」 ジバコイルはレベルアップしたことによってHPが80/140へと拡張。それだけでなく新しい技をも使えるようになった。だが、その位想定内だ。 「ジバコイルLV.Xでゲンガーに攻撃。サイバーショック!」 ジバコイルLV.Xを中心に、眩い青白い光が拡散する。眩さあまり思わず目を伏せ両腕で顔を隠したが、健康に悪そうな光ったらありゃしねえ。 光が収まったので目を開いてフィールドを見ると、ゲンガーのHPバーは30/110まで一気に下がっていた。さらに、ゲンガーは体が麻痺しているのか、立っているだけでつらそうに見える。 「エネルギー二個でなかなか大技だな」 「サイバーショックは相手に80ダメージを与えて更に相手を麻痺にする技。自分についている鋼と雷エネルギーをトラッシュしなくてはいけないけど、効果は十分」 沙村のターンが終わったのでポケモンチェックが入る。エクトプラズマーによってジバコイルLV.XのHPは70/120へ。 「俺のターン。まさかゲンガーが動けないからこのままターンエンド。……とか言うと思ったか?」 「……」 「手札からグッズカード発動。ワープポイント!」 ゲンガーとジバコイルLV.Xの足元に青い渦が発生する。 「ワープポイントの効果により、互いにポケモンを入れ替える。ただ、お前は替えるポケモンがいないからそのままだな。俺はゲンガーとゴーストを入れ替える!」 青い渦はゲンガーを飲み込んだ。ベンチのゴーストの足元にも青い渦が現れて、同様に吸い込む。そして互いに先ほどとは違う渦から現れる。沙村のジバコイルLV.Xの足元にあった青い渦は別段何もせずに消えていった。 「新しくバトル場に来たゴーストをゲンガーに進化させ、ジバコイルLV.Xに攻撃だ。シャドールーム!」 これで三回目となるシャドールーム。謎の立方体がジバコイルLV.Xを包んだ。 「ジバコイルLV.Xには使われなかったが、ポケパワーがある。よって乗せるダメカン六つだ」 「ジバコイルLV.Xの抵抗力は超タイプ。だから受けるダメージは───」 「ダメージじゃねえよ。このワザは『相手にダメージを与える』んじゃなくて『相手のポケモン一匹にダメージカウンターを乗せる』効果だ。抵抗力はダメージに対してしか働かねえ。これでジバコイルLV.XのHPは10/140だな」 沙村は左手に持っていた手札六枚をポロポロと落とす。そんな沙村とは関わりがまるでないように、ジバコイルLV.XのHPバーは残り僅かの赤へ減少する。 「そしてポケモンチェック。スタジアム、エクトプラズマーの効果発動だ」 今度こそジバコイルLV.XのHPが0となる。急に浮力を失ったジバコイルLV.Xは金属音を放って落ちた。 「最後のサイドを引いて終わりだな」 ようやく紫色の空間が消え、辺りは元の展示ホールへ戻った。「くっそぉ!」と声を荒げてバトルテーブルを叩く沙村に向けて言い放つ。 「俺は自分の場と相手の場にある全てのカード、全てのポケモンを最大限に活かして一つのバトルを組み立てる。そのためにあいつほどじゃねえが、俺も俺なりにデッキを信じてる」 そうやって観客として試合を観ているはずの翔を探した。目があったが、それだけだった。再び沙村に視線を戻す。 「お前に足りないのはそういうものと、後は簡単に挑発に乗ってくる精神の弱さだ。ま、戦う分には最高ってくらいやりやすかったけどな」 バトルテーブルを変形させて元のバトルベルトに戻し、その場から立ち去ろうと振りかえると背後から声がかかった。 「次は絶対ぶっ倒す」 「ケッ、そんときゃ精々スクラップにならないようにな」 何はともあれ一回戦突破だ。誰にも見えないように拳をグッと握って小さくガッツポーズを作る。
「やるわね彼」 今の勝負を静観していた松野がようやく口を開いた。ずっと腕組みして試合を見続けていた風見は腕組みを解いて松野に話しかける。 「藤原だってなんだかんだ言って元能力者ですしね。松野さんは今の勝負見ていてどう思いました?」 「まず最初の方で、わざわざ自分でヨノワールにダメカンを乗せてダメージイーブンを放ったときに感覚でやってるのじゃないというのは感じたわね。あの挑発も、感情的にやってるものかと思えばそうではなくて相手の冷静さを欠くもの。私と戦った時より全然成長して、今は立派な策士ね」 「このまま順当に昇って行けばあいつは準々決勝で能力者の高津洋二との対戦、ですか」 「風見くんも勝ち続ければ準決勝で山本信幸との対戦よ」 「まずは目の前の一勝を、ですね」 能力者の足音が聞こえる位置にいることを、風見は改めて自覚した。
拓哉(表)「今日のキーカードはジバコイルLV.X。 サイバーショックはリスキーだけど威力も効果も高レベル! エネルギーが足りなくなったらポケパワーでつけなおそう!」
ジバコイルLV.X HP140 鋼 (DP5) ポケパワー でんじトランス 自分の番に、何回でも使える。自分のポケモンの雷エネルギーまたは鋼エネルギーを1個選び、自分の別のポケモンにつけ替える。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 雷鋼 サイバーショック 80 自分の雷エネルギーと鋼エネルギーを、それぞれ1個ずつトラッシュし、相手をマヒにする。 ─このカードは、バトル場のジバコイルに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 炎×2 抵抗力 超−20 にげる 4
─── 拓哉(裏)様の名言でましたー 沙村凛介の使用デッキ 「鋼の世界」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-752.html この後気長wikiに沙村をうpる予定です。 読めば分かりますが今回で拓哉VS沙村も終わり、次の話にはまた別の応募キャラが出ます。
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痛快 ( No.72 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:53
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 藤原が勝負を繰り広げようとしている時と同じころ、同じブロックにいた俺こと蜂谷亮も決勝リーグの一回戦が始まろうとしていた。
対戦相手の名前は沙羅 比香里(さら ひかり)と言うらしく、俺(16)より二つ上の年上のお姉さんである。艶のある黒色の長髪に、スタイルの良さを魅せる紅蓮のライダースーツ。正直カードに対するわくわくよりも違う方向でわくわくが働いて仕方ありません! 「ふっ、これは役得」 近くで試合を見ている恭介をニヤニヤしながら見つめると、なんか腕でジェスチャーをし始めた。何を伝えたいかは分からないのだが。 ここは勝負で勝って、「お姉さん、僕がカードの勝ち方をご教授しますよ」みたいなことを言ってそのまま……。 「……。早くしてくんない?」 「へあ?」 妄想しているうちにお姉さんはバトルテーブルを組み立て、デッキをセットしていた。俺も遅れないようセットする。 俺の遅さに遅れたお姉さんはポケットから小さな青い箱を取り出し、箱の中身を開けようとした。が、なぜか辺りを見渡しながら箱をポケットに戻す。 理由は単純。あの青い箱の中身はタバコだ。うちの親父が吸ってる、ピース・インフィニティっていうやつだ。お姉さんもまだ未成年、特にこういう年齢のバレやすい場所で吸うとすぐに注意されたりする可能性があるからな。特に目の前の対戦相手とか。 代わりに違うポケットから緑の大きな箱が出てきた。アレはプリッツのサラダ味だ。そっちなら問題ないです。 「よし、準備出来た!」 俺も遅れてデッキポケットにデッキをセットし、シャッフルさせる。手札が七枚引かれ、サイドが六枚セットされる。そして互いに最初のバトルポケモンを選ぶとポケモンが表示される。俺のバトルポケモンはフィオネ60/60、ベンチにはヤジロン50/50。一方で相手のバトルポケモンはロコン50/50、ベンチにはブビィ40/40。 「俺から先攻だぜ。ドロー!」 一ターン目の先攻はトレーナーカードが使えず、進化もできない。俺の今の手札がゴージャスボール、ポケドロアー+、コール・エネルギー、破れた時空、バトルサーチャー、ミズキの検索となっているだけにほとんどすることがない。 「よし、手札のコール・エネルギーをフィオネにつけてエネルギーの効果発動だ! 自分の山札からたねポケモンを二匹ベンチに出すぜ」 俺のベンチエリアにビードル50/50が二匹現れる。しかし出したはいいけど、相手は炎デッキっぽいぞ……。どう対処しようか。 「私のターン。手札からスタジアムカードの破れた時空を発動」 辺りがあっという間に破れた世界への入り口が開いた槍の柱に変わる。この瞬間俺の手札の破れた時空が腐った。よりによって相手が発動かよ。 「破れた時空が場にある間は互いに場に出したばかりまたは進化したばかりのポケモンをさらに進化させることができる。よってロコンをキュウコンに、ブビィをブーバーに進化させる」 沙羅さんのポケモンが一気にキュウコン90/90、ブーバー70/70へと進化する。全体的にHPの少ない俺のポケモンからすると、大きさもHPも圧迫されている気がする。 「そしてサポーター、地底探検隊を発動。自分の山札のカードを下から四枚見て、好きなカードを二枚手札に加える。その後残りのカードを好きな順番にして山札の下に戻す」 沙羅さんが手札に加えたカードは俺からでは分からない。地底探検隊のテキストには加えたカードを相手に見せる必要はないからだ。しかし四枚のうち二枚と言えど、ある程度のレベルでチョイスが可能だ。何を引いたのか……。 「キュウコンに炎エネルギーをつけて、ワザを使うわ。炎の宴! 裏が出るまでコイントスをして、表の数だけデッキから炎エネルギーを選んで好きだけ自分のポケモンにつける」 コイントスの結果は表が三回出てようやく裏、つまり炎エネルギーを三枚自由につけることが出来る。 キュウコンの周りに炎のシンボルマークが三つ現れて三つともブーバーに吸収されていく。 「私はブーバーに炎エネルギーを三つつけてターンエンド」 「よし、俺のターンだ! 手札からグッズカード発動。ゴージャスボール! 自分の山札からLV.X以外のポケモンを一枚手札に加える。俺はコクーンを手札に加えるぜ」 バトル場にいるフィオネの隣にゴージャスボールが現れる。ゴージャスボールが開くと、拡大されたコクーンのカードの絵が映し出された。 「更にサポーターカードのハマナのリサーチも使うぜ。デッキからビードルを二匹加えてそいつらもベンチに出す!」 これで俺のベンチはヤジロンとビードル四匹で全て埋まった。 「ビードルのうち一匹をコクーンに進化させるぜ」 ビードルのうち一匹がコクーン80/80へと進化する。他のポケモンはポケモンバトルレボリューションみたいな感じである程度各自で動作を取っているが、コクーンだけは微動だにしない。流石だ。 「そしてコクーンに草エネルギーをつけ、フィオネのワザを使う! 進化の願い。自分のデッキから、自分のポケモン一匹から進化するカードを選んでそのポケモンに進化させる。俺はベンチのヤジロンをネンドールにさせるぜ」 フィオネが両手を胸の辺りで手を合わせると、ヤジロンに淡い光が降り注ぐ。するとヤジロン自身が白く輝きフォルムを変えてネンドール80/80へと進化する。 「よし、ターンエンドだ」 「私のターン。ブーバーをブーバーンに進化させ、ベンチにデルビルを出すわ。そしてキュウコンに炎エネルギーをつける」 進化したブーバーン100/100と新たに現れたデルビル50/50が壁となる。かろうじてデルビルが悪タイプなのが救いだが、残りが丸ごと炎タイプ。草タイプを主として戦う俺にとっては不利だ。 「キュウコンで攻撃、怪しい炎!」 九色の火の玉がフィオネの周りを輪のように遊泳し、同時にフィオネに襲いかかる。フィオネのHPが20/60へ一気に下がり、更に火傷のマーカーと混乱の象徴としてフィオネの頭上で幾多の星が回り始める。 「怪しい炎は自分の場のエネルギーの数が相手の場のエネルギーより多いとき、相手を火傷と混乱にする。今の私の場のエネルギー五つ。あんたのエネルギーは二つ。よってフィオネは火傷と混乱になってもらうわ。そしてポケモンチェックよ」 「む……」 火傷は各ターン終了後に行われるポケモンチェックでコイントスをし、裏ならそのポケモンに20ダメージを。混乱は、ワザを使用するときにコイントスをして裏ならワザが失敗してそのポケモンに30ダメージを与える状態異常だ。 このコイントスで裏が出ればフィオネは気絶。ベンチが整っていない状況でのこれは出来る限り避けたい。 「せあ!」 コイントスボタンを押すと、結果は表。ダメージはなんとか免れた。 「ふうー」 一息つかざるを得ない。肺に溜めていた空気をすべて吐き出す。 「よし、俺のターンだ。手札からグッズのポケドロアー+を二枚発動。ポケドロアー+は同時に二枚使うと効果が変わるカードだ。二枚使った場合、自分の山札の好きなカードを二枚選んで手札に加えることが出来る。もちろんこの効果は、二枚で一回しか働かないけどな。俺はカードを二枚手札に加え、ベンチのビードルを二匹コクーンに進化させる!」 俺がポケドロアー+の効果で手札に加えたのはコクーン二匹だ。 ベンチのビードル二匹がコクーンに進化したことによって、コクーン三匹ビードル一匹という割と奇妙な構図が出来あがる。 「そして草エネルギーのついたコクーンをスピアーに進化させる!」 コクーンが殻の内側から光を発すると、そこからスピアー110/110が現れる。小型ポケモンばかりの俺のベンチにようやく大きめのポケモンがようやく登場だ。 「まだだ、ミズキの検索発動。手札のカードを一枚デッキに戻して好きなポケモンを一枚手札に加える。俺が加えたのはスピアー! ベンチのコクーンをスピアーに進化させる」 再びベンチのコクーンがスピアーに進化する。だが俺のデッキのエンジンはかかったばかり。相手が強力な炎のビートダウンなら、やられる前にやるまで。 「ベンチのスピアーのポケパワーを使う。羽を鳴らす! 自分のデッキから草ポケモンを一枚手札に加えることができる。俺はコクーンを手札に加え、ベンチのビードルをコクーンに進化させる。そしてもう一匹のスピアーの羽を鳴らすも発動。スピアーを手札に加えてコクーンを進化させる!」 「嘘!?」 相手もようやく危機感を感じたらしいが、これだけじゃあ止まらない。ちなみに今進化させたスピアーはポケパワー、羽を鳴らすを持つスピアーとは別のスピアーだ。シリーズ分けで呼ぶなら、羽を鳴らすのスピアーがスピアー(DPt2)で、今進化させたのがスピアー(DP4)。 「更にネンドールのポケパワーを発動。コスモパワー! 手札を一枚か二枚デッキの底に戻し、手札が六枚になるようにドローする。俺は手札を一枚戻すことによって今の手札は0。だから六枚ドローだ!」 これで残りデッキ枚数は三十。 「貴女が発動させてくれた破れた時空のお陰でおお助かりだぜ。更にベンチのコクーンをスピアー(DP4)に進化させ、そのスピアー(DP4)に草エネルギーをつける。そしてフィオネのコール・エネルギーをトラッシュしてベンチに逃がし、草エネルギーのついたスピアー(DP4)と入れ替える!」 「くっ」 フィオネがベンチに逃げることで、混乱と火傷が回復する。これでいつ気絶するかわからないハラハラする状況は防ぎきった。 「スピアー(DP4)でキュウコンに突撃だ! 皆で襲う!」 バトル場のスピアーがキュウコンに向かって襲いかかる。それを号令に、ベンチにいる他のスピアー三匹もキュウコンに飛びかかる。 「皆で襲うは俺の場にいるスピアーの数かける30ダメージを与えるワザ。今俺の場にはベンチにいるスピアーが三匹、そしてバトル場にいるスピアーが一匹。よって合計四匹。与えるダメージの累計は120だ!」 スピアーの突撃から身を守っているキュウコンのHPバーはあっという間に0になり、その場に崩れ去る。 「やるね。私はブーバーンを新たにバトル場に出すわ」 「よし! やられる前に勝負を決めるぜ! サイドを一枚引いてターンエンド!」 ふう、一時はどうなるかとひやひやしたけどもなんとか捲き返せそうなとこまで試合を運んでやったぜ。 俺だってまだポケモンカードを始めて二ヶ月くらいだけど、やればここまで出来るんだ! 満更でもない表情でチラと後ろにいる恭介を見つめる。予想通り驚いた顔をしているあいつを見れてなかなか痛快だ。
蜂谷「今日のキーカードはスピアー! ベンチにスピアーを集めれば、 草エネルギー一個で120ダメージも与えれるんだぜ!」
スピアーLv.41 HP110 草 (DP4) 草 みんなでおそう 自分の場の「スピアー」の数×30ダメージ。 無無無 ダブルニードル 50× コインを2回投げ、オモテ×50ダメージ。 弱点 炎+30 抵抗力 − にげる
─── いくらなんでも蜂谷のこのチートドロー、やりすぎであると書いてて思った。 蜂谷亮の使用デッキ 「ハイパービートスピア」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-756.html
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真剣 ( No.73 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:54
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 「へへっ」
笑いながら鼻の下を指でこする。俺の残りサイドは五枚で、対戦相手の沙羅さんは六枚。 俺のバトル場には草エネルギーのついたスピアー(DP4)110/110。ベンチにはネンドール80/80、草エネルギー一つついたスピアー(DPt2)110/110、スピアー(DPt2)110/110、スピアー草(DP4)110/110、ダメージを負っているフィオネ20/60。 相手のバトル場には新しく登場した炎エネルギーが三つついているブーバーン100/100、ベンチにはデルビル50/50。まだまだ俺の方が有利だ。 「喜ぶにはまだ早いぞ。私のターン」 しかし沙羅さんの手札は今ドローしてもようやっと二枚だ。たった二枚じゃ俺のこのリードは揺るがないさ。 「手札の炎エネルギーをデルビルにつけて、ベンチにユクシーを出す。そしてこの瞬間にポケパワー発動。セットアップ!」 ユクシー70/70が新たにベンチに現れると、ユクシーの周りにカードを象った長方形が七つどこからともなく出てきた。 「このポケモンを手札からベンチに出した時、自分の手札が七枚になるようにデッキからドローする。今の私の手札は0。よって七枚ドローする」 なんということだ。一気に相手の手札が潤ってしまった。文字通り開いた口が塞がらない。 「そしてブーバーンをブーバーンLV.Xにレベルアップさせてサポーターカード、ミズキの検索発動。手札を一枚戻し、ポケモンのカードを一枚手札に加える。私はヘルガーを手札に加え、ベンチのデルビルを進化させる」 沙羅さんの手札はあっという間に四枚まで減るものの、バトル場には悠然とブーバーンLV.X130/130、ベンチにはヘルガー80/80とユクシー70/70が構えている。 「ブーバーンLV.Xで攻撃。火炎太鼓!」 ブーバーンLV.Xがバトル場のスピアーに向かって大きな咆哮をあげると、それに遅れてブーバーンLV.Xの体から溢れんばかりの火炎がほとばしり、それは拡散しつつも確かにスピアーを狙った。 スピアーのHPバーは減り続ける。半分を切り、四分の一を切り、そして0。 「えっ、もう気絶!?」 「ブーバーンの火炎太鼓は威力は80と高いけど、自分の進化前にブビィが無ければ自分の手札のエネルギーを二枚トラッシュしないと使えないワザ。私のブーバーンLV.Xはブビィから進化しているからカードをトラッシュする必要はないわ。更にスピアーの弱点は炎+30。よってスピアーが受けるダメージは110!」 「110って、スピアーのHPと同値じゃねえか……。くそっ、俺はスピアー(DP4)をバトル場に出すぜ」 「サイドを一枚引いてターンエンド」 「たった一ターンで追いつかれるとは思わなかったな。俺のターン! 手札からグッズカード、夜のメンテナンスを使うぜ。トラッシュの基本エネルギーかポケモンを合計三枚までデッキに戻す。俺はビードル、コクーン、スピアー(DP4)をデッキに戻してベンチのスピアー(DPt2)のポケパワー、羽を鳴らすを発動。その効果によってデッキからビードルを手札に加える。さらにもう一匹のスピアー(DPt2)の羽を鳴らすを発動してスピアー(DP4)を手札に戻す! ビードルをベンチに出して不思議なアメを発動。ベンチのビードルをスピアー(DP4)に進化させるぜ」 「倒したばっかりなのに?」 俺のベンチには再びスピアーが三匹並んだ。沙羅さんは驚いて絶句しているようだ。 「倒されても諦めねー! それが俺の根性だ。バトル場のスピアー(DP4)に草エネルギーをつけ、ネンドールのポケパワー、コスモパワーを発動。手札を二枚デッキボトムに戻し、デッキから五枚ドロー!」 またたく間にデッキの残り枚数は二十七枚になる。流石にドローしすぎかな? 「スピアー(DP4)で攻撃。皆で襲う!」 またスピアーの大群がブーバーンLV.Xに襲いかかる。130あるブーバーンLV.XのHPがあっという間に10まで削り取る。 「よっし、ターンエンド!」 「私のターン。……、それにしても正直驚いたわ。まさか倒した次のターンにポケモンをすぐ並べるだなんて」 「俺にとっては造作ないことですさ」 「そう。だったらそのリズムを崩すとこから攻めていくわ」 沙羅さんが余裕の笑みに。思わず俺は身をグッと構える。 「まず手始めに。あんたのポケモンが手早く進化する流れを断つ。新しいスタジアム、ポケモンコンテスト会場を発動。新しいスタジアムが発動されたため、破れた時空はトラッシュされる」 暗い背景が元の展示場に戻ると、今度は明るいポケモンコンテスト会場がバックに現れる。辺りもヨスガシティの栄えた街になり、平和な光景が広がった。 「そしてポケモンコンテスト会場の効果発動。お互いのプレイヤーは、自分の番ごとにコインを一回投げれる。そして表だった場合、自分のデッキからたねポケモンを一枚ベンチに出してポケモンのどうぐをつけることができる。……表ね、デッキからデルビルをベンチに出し、達人の帯をつける」 コンテスト会場の扉が開くと、中から達人の帯をつけたデルビル50/50が現れる。しかし、達人の帯の効果でHPが20増えてデルビルのHPは70だ。それ以外にも達人の帯をつけたポケモンはワザの威力が+20され、気絶させられた場合相手はサイドを二枚引くという効果もある。 「ブーバーンLV.Xに炎エネルギーをつけて、ブーバーンLV.Xのポケパワー発動。灼熱波動!」 ブーバーンLV.Xが深く息を吸い込むと、紅蓮の吐息を俺のバトル場のスピアー(DP4)に吹きかける。吹きかけられたスピアーには火傷マーカーがつけられた。 「灼熱波動は相手のバトルポケモンを火傷にするポケパワー。このポケパワーで火傷になった場合、火傷で受けるダメージは通常の20から30になるわ」 「30!? いや、でもまあある程度は余裕あるか……」 「草ポケモンをサーチし続けるスピアー(DPt2)は厄介だけど、それ以上にドローエンジンとなるネンドールが一番厄介。ブーバーンLV.Xでネンドールに攻撃。フレイムブラスター!」 ブーバーンLV.Xは真正面にいるスピアー(DP4)ではなく、ベンチにいるネンドールに向けて真っすぐに右腕を突き出すと唸るような低い音と共にすさまじい火炎が放たれ、それは広がりはしないものの不規則に荒れ狂いながらネンドールを包み込んだ。そしてネンドールのHPは瞬きする間に80から0へ下がって行く。 「一撃でこんなにやられるとは」 「フレイムブラスターはブーバーンLV.Xについている炎エネルギーを二個トラッシュしなくてはならない上に次の番にこのワザが使えないデメリットがあるけど、相手の場のポケモン一匹に100ダメージを打ち込む大技よ。『相手』ではなくて『相手のポケモン一匹』だからベンチのネンドールを攻撃できたってワケ。サイドを引いてターンエンド」 沙羅さんの番が終わったため、ポケモンチェックが行われる。コイントスボタンを押すと、儚い願いは届かず裏。スピアー(DP4)の体が一瞬だけ炎に包まれるエフェクトが発生し、HPバーが110から80へ緩やかに削られる。 「俺のターン! 手札の草エネルギーをベンチのスピアー(DP4)につけ、俺もポケモンコンテスト会場の効果を発動させるぜ。コイントス!」 今度こそと憤ってみるも、またもや裏。俺には分かる。こういうときはダメだ。運も流れもついてこない。 「バトル場のスピアー(DP4)をベンチに逃がし、今エネルギーをつけたばかりのベンチのスピアー(DP4)を新たに場に出すぜ。逃げるエネルギーは0だからエネルギーはトラッシュしなくて済む上に、ベンチに逃がすことで火傷も回復だ」 俺にちょくちょくカードを教えてくれた風見が、「運が向かないと思ったらコイントスは避けろ」と言っていたのを思い出す。思えばあいつのデッキにはコイントスを要するカードがほぼないな……。と余計なことを考えていた。 「よーし。スピアー(DP4)で攻撃だ。皆で襲う!」 本日何度目だろうか、スピアーの大群が残りHP10しかないブーバーンLV.Xにとどめの一撃を───いや、スピアーが大勢で襲いかかる様を一撃と言い表すのには無茶があった───食らわす。 「サイドを一枚引いてターンエンドだ」 次の沙羅さんのポケモンは先ほどポケモンコンテスト会場の効果でベンチに出した達人の帯つきのデルビルだ。 「私のターン。流れを断ったと思ったら考えは甘いわね。手札のグッズ、ゴージャスボールを発動。自分のデッキからLV.X以外の好きなポケモンのカードを手札に加える。私が加えるのはもちろんヘルガー。そしてバトル場のデルビルを進化させる。 小柄なデルビルの体が二倍程大きくなってヘルガーとなる。達人の帯をつけているせいでHPが通常のヘルガーより20大きい100/100だ。 「そしてこのヘルガーに炎エネルギーをつけて、傷を焦がす攻撃!」 「へへん、傷を焦がすは威力たったの20! 達人の帯と弱点の効果で20、30と加算していったところで俺のスピアー(DP4)が受けるダメージは70だぜ!」 「甘いわね。ヘルガーには復讐の牙というポケボディーがあるの。私のベンチポケモンの数があなたのベンチポケモンより少ない場合、ヘルガーがバトルポケモンに与えるワザのダメージは+40される。今の貴方のベンチにはスピアー三体とフィオネの四体。私のベンチはヘルガーとユクシーのみ。よってポケボディーが働き、このワザでそのスピアー(DP4)に110ダメージを与える」 「110って俺のスピアー(DP4)の最大HPと一緒じゃねえか!」 気付いた時にはスピアー(DP4)はぐったりと倒れていた。仕方なく、さっき火傷を受けたスピアー(DP4)70/110をバトル場にだす。 「残念ね、サイドを一枚引いてターンエンドよ」 「俺のターンだ。えーと、くそ! どうすんだ」 俺の手札は今八枚ある。しかし、内訳がネンドール、草エネルギー二枚、コール・エネルギー二枚、フィオネ、アグノム、ミズキの検索。このピンチを打開する手がない。アグノムやフィオネをベンチに出せばヘルガーのポケボディーで……。 焦りを通り過ぎてイライラしてしまっていた。風見に「どんな不利な状況であっても自分をしっかりと保て。チャンスは必ず来る」とアドバイスを受けていたのだがそれさえ思い出す余裕がなかった。 「ベンチのあらかじめ草エネルギーが一つついてあるスピアー(DPt2)に草エネルギーをつけ、バトル場のスピアー(DP4)で皆で襲う攻撃!」 しかしヘルガーを倒しきることは出来なかった。スピアーの数が減ったため、皆で襲うの威力は90しか出ずにヘルガーのHPを10だけ残すという状況で俺の攻撃は終わった。 「私のターン。ベンチのヘルガーに炎エネルギーをつけ、傷で焦がす攻撃!」 またも110の三ケタダメージで俺のスピアー(DP4)は気絶。さっきエネルギーをつけたスピアー(DPt2)をバトル場に出す。 「サイドを一枚引いてターンエンド」 俺のサイドは四枚なのに沙羅さんのサイドはもう二枚だ。どうすれば勝てるんだ。どうやったら。 「俺のターン、スピアーに草エネルギーをつけて攻撃だ。ニードルショック!」 さっきみたいにスピアーをまたトラッシュから速攻でベンチに戻すコンボは、トラッシュのカードをデッキに戻してから始まる。しかし俺の手札にはそれを可能にさせるカードがない。だからがむしゃらに攻撃するしかない。 本来ニードルショックは相手を毒とマヒに出来るワザだが、残りHP10のヘルガー相手ではその効果も無意味。勿体ないな、と思った。 「私はベンチのヘルガーをバトル場に出すわ」 「今倒したヘルガーは達人の帯をつけていたため、俺はサイドを二枚ドローできる!」 ようやく夜のメンテナンスが来た! 間に合うか……!? 「私のターン。手札の炎エネルギーを更にバトル場のヘルガーにつけて攻撃。紅蓮の炎!」 ヘルガーが口をあんぐりと開くと、そこから真っ赤な炎が射出された。 「紅蓮の炎の威力は60。弱点とポケボディーの効果によって与えるダメージは130だ」 HP110は本来決して低いという数字ではない。そのはずが、さっきから何度も何度も三ケタダメージばかりを食らっているのだ。どういうことだ。 「紅蓮の炎を使った後、コイントスをして裏ならヘルガーについている炎エネルギーを二枚トラッシュ。……表。よってエネルギーはトラッシュしないわ」 もう後がない。ベンチの最後のスピアー(DPt2)をバトル場に出した。 「サイドを一枚引いてターンエンド」 「俺のターン!」 手札の夜のメンテナンス。これを使えばまたスピアー(DP4)を呼び出せるかもしれない。 「手札からグッズカード、夜の───」 いや、ちょっと待てよ? もしスピアー(DP4)を呼んで、攻撃できるようになったとしてもそのスピアー(DP4)と今バトル場にいるスピアー(DPt2)の二体しかスピアーがいないため、皆で襲うは60しか威力が出せない。それじゃあ今目の前にいるヘルガー80/80は倒せない。 そして次の番、沙羅さんがヘルガーで紅蓮の炎をしたら……。 そこから導き出せる結論、俺がすべきことは一つ。 「降参します」
俺のナンパ計画は終わった。そのまま膝からがっくりと崩れ落ちるが、沙羅さんはそんな俺に見向きもせずにどこぞに行ってしまった。 後ろの方で拓哉が対戦相手の中学生の男子に向かって「俺は自分の場と相手の場にある全てのカード、全てのポケモンを最大限に活かして一つのバトルを組み立てる。そのためにあいつほどじゃねえが、俺も俺なりにデッキを信じてる」と言っていた。 翔ぐらいだと「ちゃんとデッキを信じずに自分の目先の欲望だけ考えてたからこうなったんだろ?」と言ってきそうだ。 そこまで考えると胸に堅いものが突き刺さり、もう自力でそこから立てそうになかった。
蜂谷「今回のキーカードはブーバーンLV.X…… レベルアップ前も非常に強くてバラエティに富んだ戦い方が出来るみたい……。 帰っていい?」 翔「こないだ俺のセリフを俺を撥ね退けてでも無理やりでも言ったヤツとは思えないなぁ。っておい大丈夫か!?」
ブーバーンLV.X HP130 炎 (DP2) ポケパワー しゃくねつはどう このポケモンがバトル場にいるなら、自分の番に1回使える。相手のバトルポケモン1匹をやけどにする。ポケモンチェックのとき、このやけどでのせるダメージカウンターの数は3個になる。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 炎炎炎炎 フレイムブラスター 自分の炎エネルギーを2枚トラッシュし、相手のポケモン1匹に100ダメージ。次の自分の番、自分は「フレイムブラスター」を使えない。 ─このカードは、バトル場のブーバーンに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 水×2 抵抗力 − にげる 3
─── 小説のストックなくなってきました。 沙羅比香里の使用デッキ 「爆炎!咆哮の光」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-760.html
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下準備 ( No.74 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:54
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 最初の四試合が終わり、拓哉は無事に二回戦へ駒を進めた。その一方で蜂谷は敗北から来た喪失感なのか、「心ここに在らず」状態でどこを見てるのかイマイチ分からない状況だ。
そしてこの最初の四試合のうち一つに、能力者の一人である高津洋二の試合があった。そう、あったはずなのだがなぜか全然目に止まらなかった。 試合が終わってからそういえば高津の試合があったなと思い出す程度で、びっくりするくらい存在感のない試合だった。 そして担架でその対戦相手が運ばれてたのに、ほとんどの人が知らんぷりというよりは気づいていない感じだった。 真っ白な服を着た男性が数人で担架を運んでいればどう考えても目立つのは必至なのに、周りはそれに気付かない。 この不思議な光景に一抹の不安を感じた俺は、風見と共に首をかしげるしかなかった。 そして次の四試合。向井が三十近く見えるおっさんと戦って圧勝。相手の引きが悪くて、たねポケモンが二匹しか揃わなかったところを向井は遠慮なく叩きのめした。 一回戦は残り八試合。今から行われる四試合には、恭介と風見が。そしてその後は俺と石川と松野さんと、もう一人の能力者である山本信幸が戦う。 恭介の選手番号は17で、風見の選手番号は21。二人がぶつかるのは三回戦だ。そしてその恭介らの試合が今から始まろうとしている。
「恭介ー! 俺の仇をとってくれー!」 「えー」 「おいこら『えー』ってなんだよ!」 蜂谷が外野からぎゃーぎゃー騒いでいると、翔がコツンと蜂谷の頭を叩いた。 「蜂谷、お静かに。周りから変な目で見られると一緒にいる俺らが恥ずかしいじゃん」 「……はい」 とりあえず蜂谷は翔に任せれば大丈夫そうだ。気分を入れ替えるために両頬をピシャと叩いて、これから始まる試合に集中しようと図る。 バトルベルトをマニュアル通りに起動させる。今まで遠目で見てたが、目の前で使ってみるとなんだか楽しい。時代の最先端にいる気がする。 「うおおお、すげえ楽しい!」 とはしゃいだはいいものの、今から決勝リーグ一回戦だと考えると緊張する。部活のバスケの試合前とかと同じような緊張感があって、ポケモンカードは遊びだが、その遊びにいろいろ懸けている人がいるんだなあと認識させられる。 負けたくないな。勝ちたい。別に勝って優越感に浸りたいとかそんなんじゃなくて、純粋に勝ちたいなと思う。 「よろしくお願いします」 「こちらこそお願いします」 俺の対戦相手は八雲 真耶(やくも まや)と言う名前らしく、綺麗な艶のある黒色の痛みの少ない肩甲骨辺りまでのロングヘアー。カールした毛先が可愛らしい。 身体は細いが若干引き締まっていて、ウェストにくびれがある。首に黒のチョーカーを付けていて、色の濃い長袖のシャツと、タイトなジーンズを履いている。男装が似合いそうな印象がある。あと、年齢はタメだ。ピシッとしている印象があって年上に見えた。 デッキをデッキポケットに入れ、オートシャッフルのボタンを押す。バトルテーブルがデッキを認識して、人がするシャッフルの何十倍もの速さでデッキがシャッフルされ、手札とサイドが分配される。 「う」 最初の俺の手札は雷エネルギー、雷エネルギー、ピチュー、ライチュウ、ナギサシティジム、ハマナのリサーチ、ゴージャスボール。最初のたねポケモンがピチューのみのため、下手をすれば相手に一撃でやられてしまう恐れがあるため決していい手札とは言い難い。 やむなくピチューをバトル場にセットする。相手のセッティングも終わったらしく、同時に最初のポケモンを開示する。 俺のバトル場はピチュー50/50で、八雲のバトル場はサイホーン60/60、ベンチにはヒポポタス70/70。 「最悪だ……」 右手でパシンと額を叩く。ここまで来ると言葉にせざるを得ない。雷タイプの最大の弱点となる闘タイプのポケモンがまとめてやってきた。こっちの弱点でもあるし、相手にとっては抵抗力があるためダメージが綺麗に通らない。 「恭介、まだ諦めんなよ! 始まってさえないんだから!」 「そうだ! 翔の言う通りだ! ……セリフ取られて大して言う事がない」 翔と蜂谷が後ろの方からエールを送ってくれる。根拠はないが、なんだか安心できる気がする。 運が悪いと嘆いている俺だが、実は相手の手札はこのとき五枚とも全て闘エネルギーという俺よりもっと悲惨な典型的な逆エネ事故を起こしていた。もちろん、俺は知る余地がなかったのだが。 「先攻は俺がもらうぜ! ドロー」 今引いたのはピチュー。ハマナのリサーチやゴージャスボールを使ってなんとかやられる前に立てようと思うが、先攻一ターン目はトレーナーカードを一切使えない。 「雷エネルギーをバトル場のピチューにつけ、俺は新たにベンチにピチューを出すぜ。そしてピチューのワザ。おさんぽ! このワザは自分のデッキのカードを上から五枚見て、その中のカードを一枚手札に加える。そして残りのカードをデッキに戻してシャッフルする技だ!」 バトルベルトがオートでデッキの上から五枚のカードのディスプレイを表示する。エレキブルFB LV.X、ピカチュウ、雷エネルギー、バクのトレーニング、ベンチシールドの五枚だ。今一番必要なカードは……。ピカチュウだ。ピカチュウを手札に加えてシャッフルボタンを押すと、再びバトルベルトが高速でシャッフルを行う。 「私のターンです。ドロー。……手札の闘エネルギーをサイホーンにつけて攻撃します。角で突く!」 サイホーンがドスンドスンと大きな足音を立てながらピチューに突っ込み、そしてそのまま額の角でピチューを突き飛ばした。本来角で突くのワザの威力は10だが、ピチューは弱点として闘ポケモンからワザを食らうと更に10食らう。ピチューのHPは30/50となった。 「よし、俺のターンだ。まずはゴージャスボール。自分のデッキから好きなポケモンを一枚手札に加える。俺が手札に加えるのはライチュウ。そして更にサポーター、ハマナのリサーチを発動。俺はヤジロンとピカチュウを手札に加える。そしてヤジロンをベンチに出すぜ」 ベンチのピチューの隣にヤジロン50/50が現れる。 「そしてバトル場のピチューのポケパワー発動。ベイビィ進化! 自分の番に一度使え、自分の手札のピカチュウをピチューに重ねて進化させる。そのときピチューの受けているダメージは全て回復だ!」 ピチューのHPゲージがMAXまで回復すると、その体が白く包まれてピカチュウ60/60へと進化する。 「ベンチのピチューも同様にベイビィ進化だ! 更にバトル場のピカチュウに雷エネルギーをつけて、手札からスタジアムカードを発動。ナギサシティジム!」 スタジアムカードを所定の位置にセットすると、丁度俺達二人を中心に周りの景観が変わって行く。回転する歯車やスイッチなどが辺りに大量に現れ、ゲームを想わせる環境になった。 「このナギサシティジムが発動している間、互いの雷タイプの弱点はなくなり、雷ポケモン全員のワザは相手の抵抗力を無視してダメージを与えることができるようになる。なんとかこれでバトルはイーブンに持ちこめるぜ」 雷タイプの最大の弱点をこれで補うことができる。俺のデッキに入ってるポケモンのほとんどが闘タイプが弱点であり、その逆の闘タイプは雷タイプに抵抗力を持っていることが多い。現にサイホーンとかがそうだ。 「ピカチュウで攻撃。ビカビカ!」 ワザの宣言と同時にコイントスをする。このワザはコイントスが表の場合、与えるダメージを10追加することができるワザだ。 「ラッキー! コイントスは表! よって20に10足してサイホーンに30ダメージ!」 ピカチュウの頬から放たれる電撃がサイホーンに襲いかかる。それだけでなく、なんとジムのギミックからもサイホーンに向けて放電されていた。何はともあれ、サイホーンのHPは30/60。もし次のターン進化できず、またビカビカが成功すれば倒せる。 「ターンエンドだ」 「私のターン、ドロー。サイホーンに闘エネルギーをつけ、サイドンに進化させます」 サイドン60/90がドスドスと響くような足踏みをして現れる。一通り足音を鳴らし終えると、こちらを睨んできた。その目が妙にリアルに感じられて気圧される。 「サイドンで攻撃。突き壊す!」 サイドンが牛のように左足で数回地面をならすと、頭のドリルを前にして突っ込んできた。ピカチュウがトラックに撥ねられたように、というよりはコミカルに吹っ飛んだが、サイドンはピカチュウなんて最初からいなかったと想わせるようまだまだ突進していく。そしてベンチのピカチュウとヤジロンの間をすり抜け、俺の隣もすり抜け、俺の背後にあるナギサシティジムの壁に激突する。するとジグソーパズルが崩れるような感じでナギサシティジムの景観は失われ、元の会場に戻って行く。 「突き壊すは場にスタジアムがある場合20ダメージを追加し、そのスタジアムをトラッシュさせます」 突き壊すの威力は30。それに20追加されると50ダメージ。ピカチュウのHPはあっという間に10/60となった。しかしサイドンが隣を通った時は冷や汗が浮かんだ。 「幸いなのはワザのダメージを計算してからスタジアムがトラッシュされたことだな……。もし処理順がスタジアムのトラッシュを優先されてたら弱点も計算してピカチュウは気絶していたぜ」 俺がそうつぶやくと、対戦相手の八雲もまったくだと言わんばかりに頷いてきた。 「俺のターン! よし。手札のポケドロアー+を二枚発動。このグッズは二枚同時に発動したとき、自分のデッキから好きなカードを二枚手札に加える効果を持つ!」 ナギサシティジムを手札に加えようとした。しかし、それを選択する前に一つの考えが頭をよぎる。 もしこのターン、再びジムを発動させても次のターンまたまたサイドンにトラッシュされてしまうのではないか。もしドサイドンに進化できる環境であっても、再び突き壊すをしてくるという可能性は否めない。 だからといってジムを手札に加えないと、俺のポケモンがやられてしまう。どちらも阻止するにはどうすればいいか。 「これだ!」 適当に山札から引くこと! 全ては後から考える。引いたカードはワープポイント。……良いこと思いついたぜ。もう一枚は順当にネンドールを選ぶ。 「ヤジロンをネンドール80/80に。ベンチのピカチュウをライチュウ90/90に進化させるぜ。そしてネンドールのポケパワー発動。コスモパワー。手札を一枚か二枚デッキの底に戻して手札が六枚になるようにドローする!」 俺は手札のライチュウをデッキの底に戻す。これで手札はワープポイントのみとなり、新たに五枚ドローする。 「エレキブルFB[フロンティアブレーン]をベンチに出す」 これで俺のベンチにはライチュウとネンドールとエレキブルFBが並ぶことになる。 「そして雷エネルギーをこのエレキブルFBにつけ、グッズ発動。ワープポイント!」 バトル場のピカチュウとサイドンの足元に青い渦が現れて両者を飲み込む。 「ワープポイントによって互いにバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える! 俺はエレキブルFBをバトル場に」 「私はヒポポタスを……」 八雲の顔が陰る。これが俺の即興タクティクス。ヒポポタスを引きずり出すことに一見意味はなさそうだが、ヒポポタスは逃げるエネルギーが二つ必要なうえに使えるワザもまだ大したことない。 「そしてエレキブルFBのワザを使うぜ。トラッシュドロー。自分の手札のエネルギーを二枚までトラッシュし、トラッシュした枚数×2枚ドローする。俺は手札の雷エネルギーを二枚捨てて四枚ドロー。ターンエンド」 「私のターン。手札の闘エネルギーをヒポポタスにつけ、スタジアム発動します。ハードマウンテン!」 今度は周囲が険しい山に変わる。丁度山の高いところにいるようで、俺達より低い(ように見える)ところに雲がかかっている。 「ハードマウンテンの効果は、互いのプレイヤーは自分の番に一度自分のポケモンの炎または闘エネルギーを一個選んで別の炎または闘ポケモンにつけかえることが出来ます。これでサイドンの闘エネルギーをヒポポタスに一つつけかえます」 「これでヒポポタスのエネルギーは二つ!?」 「そしてサポーター、ミズキの検索を発動。手札を一枚デッキに戻し、LV.X以外のポケモンを手札に加えます。私が加えるのはドサイドン」 ヒポポタスを逃がさないでくれ……! と祈っていたが、よく考えるとそれをする利率は低そうだ。 サイドンの今の闘エネルギーは一つ。そしてサイドンのワザエネルギーは闘無の突き壊すと闘闘無の激突。既にこのターン、ヒポポタスにエネルギーをつけかえているのでサイドンは攻撃できないことになる。 「ヒポポタスで攻撃、突き飛ばす!」 ヒポポタスが体で思い切りタックルをすると、エレキブルFBはベンチエリアまで吹っ飛んだ。弱点が闘×2のエレキブルFBは10×2の20ダメージを受けて70/90に。 「突き飛ばすの効果で、相手はバトルポケモンとベンチポケモンを強制的に入れ替えなくてはなりません」 「俺はピカチュウをバトル場に出す」 「ターンエンド」 「俺のターン、ドロー。ピカチュウの雷エネルギーをトラッシュしてベンチに逃がし、エレキブルFBをまたバトル場に出すぜ。そして手札の雷エネルギーをベンチのライチュウにつけて、サポーター発動。ハマナのリサーチ。その効果によってデッキからピチューとピカチュウを手札に加る。そしてベンチにピチューを出してピチューのポケパワー、ベイビィ進化によってピカチュウに進化させるぜ!」 これで俺のベンチに二匹目のピカチュウが並ぶ。 「エレキブルFBをレベルアップさせるぜ!」 エレキブルFB LV.Xの咆哮が響く。HPも100/120と大台に乗り、ポケパワーも強力になる。 「さあ、こっからが本番だ!」
恭介「こいつが今日のキーカード! ポケパワーを使うとターンは終わるけど、 エネルギーをトラッシュするワザの多い雷タイプとの相性はいいぜ!」
エレキブルFB LV.X HP120 雷 (DPt3) ポケパワー エネリサイクル 自分の番に、1回使えて、使ったら、自分の番は終わる。自分のトラッシュのエネルギーを3枚まで選び、自分のポケモンに好きなようにつける。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 雷無無 パワフルスパーク 30+ 自分の場のエネルギーの合計×10ダメージを追加。 ─このカードは、バトル場のエレキブルFBに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 闘×2 抵抗力 鋼−20 にげる 3
─── ストックおしまい。来週はHF更新か本編更新か……? PCC編のED「one step」 http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-764.html
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チェーン ( No.75 ) |
- 日時: 2010/09/11 23:55
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- PCC東京Aのカード大会は決勝リーグに入った。そしてその一回戦。俺こと長岡恭介と八雲真耶との対戦が行われている。
俺のバトル場には雷エネルギーが一つついたエレキブルFB LV.X100/120と、ベンチにはネンドール80/80、ピカチュウ60/60、雷エネルギー一つついたライチュウ90/90、同じく雷エネルギーが一つついたピカチュウ10/60。 一方の八雲のバトル場は闘エネルギーが二つついたヒポポタス70/70と、ベンチには闘エネルギー一つのサイドン60/90。スタジアムはハードマウンテンが依然発動されたままだ。 そして今は俺のターン。 「エレキブルFB LV.Xのポケパワーを発動。エネリサイクル!」 トラッシュをチラと確認する。 「エネリサイクルは自分の番に一度使え、自分のトラッシュのエネルギーを三枚、好きなようにつけれるパワーだ。俺はトラッシュの雷エネルギーを二枚ライチュウにつけ、もう一枚の雷エネルギーをダメージを受けていないピカチュウにつける! エネリサイクルを使うと自分のターンは終了する」 「私のターン。手札からサイホーンをベンチに出して、ヒポポタスをカバルドンに進化させます」 これで八雲のバトル場にはカバルドン110/110。ベンチにサイドン60/90とサイホーン60/60がいる形になる。 「そしてカバルドンに闘エネルギーをつけます」
「なんだかんだあったけどだいぶ相手も食いついてるなあ」 「まだまだ始まったばっかだろ? ……まあ風見の方はもう勝負決まったみたいだけど」 蜂谷がいろんな試合を見ては、何を納得したかふんふん言っている。確かに流石は決勝リーグだけあってどの試合もプレイングは丁寧だ。だがその中で光るプレイングをしているのは風見である。 「ギャラドスでナッシーに攻撃。テールリベンジ!」 風見の最後の一撃が決まった。ナッシーが倒れたことによって、風見の対戦相手の戦えるポケモンがいなくなったので風見の勝利だ。 風見はバトルベルトを閉じるとそのまま観客エリアにいる俺達の方へやってきた。 「長岡はまだ対戦中か。相手は……、闘タイプ。雷タイプを主に使う長岡では苦戦しそうな相手だな」 「ああ。でも、恭介ならなんとかするんじゃないかな?」 「俺もそう思う」 蜂谷は分かっているのか分かっていないのかというような言い方で適当に相槌を打つ。決勝リーグまで勝ち進んだとはいえ本当に強いのかどうかよくわからない。恐らく単純に運が良いんだろうなあ。 「カバルドンの闘エネルギーは三つか。ハードマウンテンの効果でサイドンの闘エネルギーをカバルドンにつけかえるとグランドクエイクが使えるな」 風見の解説に蜂谷が聞き返す。 「グランドクエイク?」 「グランドクエイクは闘闘無無で使えるカバルドンのワザだ。威力は80で、互いのベンチにいる進化していないポケモンに10ダメージを与える効果をもつ」 「それじゃあグランドクエイクが使われれば恭介のエレキブルFB LV.Xも、ピカチュウも一気に気絶になんのか!」 俺よく計算出来ました! とでも言いたそうな蜂谷の肩をトンと叩いて「バーカ」と言う。 「恭介のピカチュウは、どれもピチューから進化してるからグランドクエイクでダメージは受けねーぞ。むしろ対戦相手自身のサイホーンがダメージを受けるだけだ」 「じゃあもう一個のワザを使うのか?」 「だろうなあ。砂をため込むは無色エネルギー一個で使えるワザの割に小回りいいしな。元の威力は20だけど、自分のエネルギー×10ダメージ分追加できて、ダメージを与える前にトラッシュの闘エネルギーを一枚つけることができるからな。まあ最もその闘エネルギーがトラッシュにないんだけど」 「エレキブルFB LV.XのHPは100/120だからハードマウンテンの効果は使わなくてもいいんだな!」 「そういうことだ! 今度こそよく出来ました」 「馬鹿にすんじゃねー!」 蜂谷は血眼になって俺を睨んできた。その様子が面白おかしくて「ははっ」と微かに声を出して笑った。風見も声には出さなかったが、口元は緩んでいた。
「カバルドンで攻撃。砂をため込む!」 カバルドンに向かって周囲から砂が大量に集まっていく。その砂にエレキブルFB LV.Xが足を取られ、後ろへ倒れこんでしまう。そんなエレキブルFB LV.Xに遠慮なく砂はどんどんカバルドンに集まって行くため、エレキブルFB LV.Xは砂に埋もれてしまう形になった。地形変化したため、カバルドンの位置が高くなり逆にエレキブルFB LV.Xの位置が低くなる。カバルドンが見下ろす形になった。 「砂をため込むのワザの威力は20に30足され、更に弱点を突いたことによって二倍。つまり100ダメージ!」 「つまり……、エレキブルFB LV.Xは気絶っ……!」 エレキブルFB LV.Xの体が崩れ落ち、表示されているHPバーにはしっかりと0/120と書かれていた。 「俺の次のバトルポケモンはライチュウだ」 「サイドを一枚引いてターンエンドです」 「くっそー……。俺のターン!」 今引いたのはナギサシティジム。発動してもいいが、ベンチにはまだサイドンがいる。あのサイドンがいる限り、ナギサシティジムはまた破壊されるだろう。デッキにこのカードは三枚しかない上に、スタジアムはトラッシュからサルベージする手段がほぼ無いので使いどころが大事だ。そう。プレイングを求められている。 少しくらいは長考してもいいだろう。気の向くままにトントン拍子で戦って、知らぬままに相手のペースにハマるのはもう御免だ。蜂谷の二の舞はしたくない。 手札を、自分の場を、相手の場を、そして互いのサイドの数、トラッシュのカードをチェックして「自分なり」でベストと思うプレイングをするんだ。 「よし、手札からスタジアムカードを発動。ナギサシティジム! 新しいスタジアムが発動されたため、ハードマウンテンはトラッシュ!」 八雲の顔が僅かに陰る。 「そして手札の雷エネルギーをベンチのピカチュウ(60/60)につけ、サポーター発動。バクのトレーニング! デッキからカードを二枚ドロー!」 まだ手札は六枚ある。頭の中でやりたいことと手札との釣り合いを考え直す。 「ライチュウをレベルアップさせるぜ」 これが俺がこの大会のために作ったデッキのエースカード。このライチュウLV.X110/110で、逆転への軌跡を紡ぐ。 「ライチュウLV.Xで攻撃だ! 必殺! ボルテージシュート!」 ライチュウLV.Xの頬から紫電が矢のような速さで射出され、カバルドンの横を通ると後ろにいるサイドンに命中する。サイドンの残りHPは一瞬で削られて0になった。 「ボルテージシュートは手札の雷エネルギーを二枚トラッシュすることによって、相手のポケモン一匹に80ダメージを与えるワザ。残りHP60だったサイドンは一発KOだ! サイドを一枚引くぜ」 「くっ……。私のターン───」 「まだ俺はターンエンドを宣言してないぜ。サイドンを倒したこの瞬間、ポケボディー発動。連鎖雷! レベルアップした番にボルテージシュートを使ったなら、もう一度ライチュウLV.Xは攻撃出来る!」 「二回攻撃!?」 八雲の表情が困惑のそれになる。 「二撃目を食らえ! 炸裂玉!」 ライチュウLV.Xの半分くらいの大きさの黄色と白が入り乱れた球体が先ほどのボルテージシュートとは違って遅いスピードで発射される。その玉がカバルドンの目先まで来ると、辺りの人が皆振り返る程の大きい音を発して爆発を起こした。 「炸裂玉は場のエネルギー三枚をトラッシュするカード。俺はベンチにいるピカチュウ10/60についている雷エネルギー一枚、ピカチュウ60/60についている雷エネルギーを二枚トラッシュだ」 「炸裂玉の威力は100。抵抗力で威力は20引かれて───」 「ナギサシティジムを忘れちゃ困るぜ。こいつの効果によって、雷タイプが闘タイプに攻撃するとき、抵抗力の計算を行わない!」 「しかしカバルドンのHPは110! なんとか10は耐えきった。カバルドンのポケボディー、サンドカバーであなたのポケモンLV.X全員に10ダメージを与えます」 「ちゃんと目の前のカバルドンを見てみな」 八雲は怪訝な表情を浮かべ、ワンテンポ置いてからカバルドンをチェックする。本来ならHP10を残しているはずのカバルドンだがそこにいたカバルドンのHPバーは0/110と表示されていた。 「どうして!?」 「俺がさっき使ったバクのトレーニングの効果は、このカードが自分のバトル場の横にあるときに自分のバトルポケモンが与えるワザの威力を10足すというものだ。サポーターは使ったら自分のバトル場の横に置き、自分の番の終わりにトラッシュするカード。だから炸裂玉の威力は100に+10で110。カバルドンも気絶ってことさ。サイドを一枚引いて今度こそターンエンド!」 八雲は苦虫を潰すような顔で渋々とサイホーンをバトル場に出す。このサイホーンはまだエネルギーが一枚もついておらず、八雲の手札は五枚ある俺に比べて僅か二枚。そしてサイドは俺の方が四枚、彼女は五枚でなおかつベンチポケモンはなし。 この勝負勝てるかもしれない。決して、油断はしない。とは思うものの、頭をひねって考えたコンボが上手く決まったことに快感を感じずにはいられない。 よっしゃ! と心の中で大きなガッツポーズを作る。 「私のターン! っ……」 暗い八雲の表情が、少しだけマシになる。もしかしたらなんとかなるかもしれない程度のカードを引いたのだろうか。 「サイホーンに闘エネルギーをつけ、ベンチにユクシー(70/70)を出します。そしてユクシーをベンチに出したタイミングでユクシーのポケパワー、セットアップを発動。手札が七枚になるようにドロー。今の私の手札は一枚。なので六枚ドロー」 あれよあれよと言う間に手札の数が俺を越す。もしかしたらもしかしてしまうかもしれない。なんとなく握った拳に手汗が生じる。 「サポーター発動。ミズキの検索。手札を一枚デッキに戻し、私はデッキからドサイドンを手札に加えます。そしてグッズカードの不思議なアメを使います」 不思議なアメはたねポケモンを一進化、或いは二進化ポケモンに一気に進化させるカード。ドサイドンを手札に加えたという事は。 「サイホーンをドサイドン(140/140)に進化! そしてドサイドンのポケパワー、地割り!」 ドサイドンはその重たい腕を持ち上げると、地面に向けて振り下ろす。地面はあっさり砕けると、ドサイドンの位置から俺の位置まで亀裂が生じ、カード(もちろん実際のカードではなく、立体映像のカード)が亀裂の中に三枚吸い込まれる。別に映像と音だけであるはずなのに、ドサイドンが腕を地面に叩きつけた時は本当の衝撃があるような錯覚を覚えた。 「ドサイドンのポケパワー、地割りは手札からこのカードを進化させたとき、相手のデッキを三枚トラッシュする効果!」 トラッシュしたカードはエレキブルFB、達人の帯、そして三枚目のナギサシティジム。サイドンがいないので破壊されることはないが、もし今発動されているナギサシティジムが破壊されればもうリカバリーはできない。 「まだです。もう一枚グッズを使います。レベルMAX!」 八雲はカードの宣言と同時にコイントスのボタンを押す。判定は表、効果が適用される。 「レベルMAXの効果はコイントスして表のときに発動でき、自分の山札から自分のポケモン一匹からレベルアップさせるLV.Xのカードを選び、そのポケモンの上に乗せレベルアップさせるカード。もちろん、私はドサイドンをレベルアップ!」 ドサイドンのHPバーは既に140/140という高水準から更に伸び、170/170。 「ひゃ、170!?」 170だなんてHPは壊れ物である。平均的な二進化ポケモンのLV.XのHPは140が相場だ。170なんてどんな攻撃をすれば倒せるんだ。 「そしてドサイドンで攻撃。ハードクラッシュ! このワザはエネルギーなしで使え、自分の山札のカードを上から五枚トラッシュしてその中にあるエネルギーの数かける50ダメージを与えるカード。もしも三枚トラッシュできれば、ライチュウLV.XのHPは0、気絶です!」 ドサイドンLV.Xは両腕をライチュウLV.Xに突きだす。すると両手の噴射孔から茶色い弾丸がいくつか発射された。効果的に弾丸一つにつき50ダメージだろう。打ち出された弾丸が三つなら絶体絶命……!
恭介「こいつが今日のキーカード! そして俺のデッキのエースカード! ボルテージシュートはピカチュウ(DP2)とも相性がいいし、 連鎖雷はライチュウ(破空)の炸裂玉とも相性がいいぞ!」
ライチュウLV.X HP110 雷 (破空) ポケボディー れんさかみなり このポケモンが、レベルアップした番に「ボルテージシュート」を使ったなら、そのあとに追加で1回、このポケモンはワザを使える(追加できるのは1回だけ)。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。 雷雷無 ボルテージシュート 自分の手札の雷エネルギーを2枚トラッシュし、相手のポケモン1匹に、80ダメージ。(トラッシュできないならこのワザは失敗。) ─このカードは、バトル場のライチュウに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─ 弱点 闘×2 抵抗力 鋼−20 にげる 0
─── なんとか更新は間に合いました。
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