風見の用事 ( No.47 ) |
- 日時: 2010/09/07 22:18
- 名前: でりでり
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 二月下旬、非常に寒い季節は続く。私立高ゆえに土曜日も授業があり、今日がその土曜日。昼までだからと言えど喜ばしくない。
そんな朝、俺と風見はいつものように談笑をしていた。 「相変わらず寒いな」 「寒すぎて黒い塊が出そうだ」 「正体不明で白い息より怖いな」 「鼻からよだれが出る」 「どういう状況か分からん」 渾身のボケがことごとくかわされ、風見は笑うどころか苦笑いを浮かべている。 「翔、お前熱でもあるんじゃないか」 「失礼な! いや、中学時代の友達のまねごとをしたんだ」 「と、言うと?」 「大阪出身の友達がいてさ、こんな感じで面白い事言ってたんだけども俺には面白いこと言えないなぁ」 「しかしどうして急に?」 「久々にメールがあったんだ」 と言って制服ズボンの左ポケットから携帯を取り出し、受信メールを見せる。 受信ボックスの一番上には宇田由香里(うだゆかり)と書かれたメールが数通ある。その中の一つを表示して風見に見せた。 「『ポケモンチャレンジカップに出るん?』、か。こいつもポケモンカードをしているのか?」 「ああ、中々強いぜ」 「一度手合わせしたいもんだな。大会でぶつかれたらいいな」 ポケモンチャレンジカップ、略してPCCはまず全都道府県で地区予選を行い、その後は地方予選、全国大会となる。 由香里は中学時代だけ大阪で過ごし、今は大阪に戻って高校に行っているので遭うとしたら全国大会だ。 「ああ、そのためにはまず東京での激戦勝ち抜かなきゃならないな」 「そうだな」 その刹那、教室の扉が開く。担任かと思い振り返ると担任ではなく拓哉がやってきた。すかさず風見が声をかける。 「藤原か。悪いが今日の放課後暇か?」 「え? 僕? うーん、大丈夫と思うよ。急にどうしたの?」 「翔とお前とでちょっと着いてきてもらいたいところがあるんだ」 あれ? なんだその話は。 「あれ、俺が行くのはもう確定済みなのか。今初めて聞いたんだけど」 「よし、これできまりだな。放課後よろしくな」 「初耳なんだけど……」
放課後、風見の車に乗せてもらうことになった。いかにも高級感溢れる車だ。この車だけで我が家の総資産を超えることはほぼ間違いない。 「あまり好きじゃないんだがこういうときは便利だな」 助手席に座った風見が呟く。 「好きじゃない、とは?」 「ああ。個人的な話なんだが、今俺は一人暮らしをしてるんだ」 「ほうほう」 「親父の差し金だ。本来北海道に住んでたんだが、高校に入ると同時に上京したんだ。お袋は俺を金持ち暮らしに浸からせたいが、親父は俺を割と一般的な暮らしをさせたい。というわけで親父はお袋から俺を引きはがすために地元から東京に呼び寄せたんだ。俺も親父と同意見だから大歓迎なんだが、その際お袋が抵抗してな、こんな送迎車をつけてきやがった」 うらやましい悩みである。 「お母さんのこと嫌いなのか?」 「ああ。面倒にも程がある、今は一人で暮らせて快適だ。親の束縛がないのは非常に十分だ。……まぁこれは多少仕方ないが」 「いろいろあるんだなぁ」 「戸籍的には俺はまだ北海道に住んでることになってるしな」 「えらく長い旅行ですね」 「その言い方は腹が立つな」 「そういえば僕と翔くんはどこに向かってるの?」 拓哉が俺たちの会話に割ってきた。そういえばすっかり忘れていた。 「もうすぐ着く。着いてからの楽しみだ」 「俺と拓哉っていう組み合わせがイマイチ謎だな。恭介とかはいいのか?」 「ああ。用事があるのは翔と藤原の二人だ。それ以外は関係ない。具体的に言うと、翔とこないだの大会で翔と戦った方の藤原だ」 風見のひと声でスイッチが入る。急に隣にいる拓哉のオーラというか気配というか、そんな感じのが変わって殺気めいたものが溢れだす。 「俺様に何の用なんだ?」 「着いてから話そう。もう着く」 「勿体ぶってんじゃねえよ!」 「落ち着け拓哉」 「翔は黙ってろ!」 「ごめんなさい」 「な、なんだよ……。なんで謝んだよ……」 これが一番黙ってくれそうな返答だと思ったんです。どうやら当たりを引いたみたい。 ムスッとした拓哉を乗せて車は進む。 「高校生が六本木かよ」 「ここだここ」 「しかもヒルズかよ」 車が停車したので降りる。ヒルズの森タワーに入るのは初めてのことなのでちょっとドキドキ。 エレベーターに乗りそのまま十八階へ上がる。風見はまだ何も教えてくれないが、きっと風見の手にあるアタッシュケースが関係あるのか? 「こっちだ」 風見の後を着いていくと、株式会社ポケモンと書かれている扉が目の前にあった。 「えええ!? 株ポケかよ! 入っていいの?」 「翔、興奮するのはいいがもうちょっと静かにしてくれないか。入ってくれ」 扉を開けるとそこはオフィスが並ぶ普通の会社という感じのする一室と思いきやちょいと違う。辺り一面にはポケモン関連のグッズが所狭しと並び、そこに大きなテーブルや会議室っぽいの、デスクがいろいろ。結構広い。 しかしこの広い空間には社員と思わしき人物はなぜか一人もおらず、代わりにレディーススーツを来た小さな女の子がまるで俺たちを待っていたかのように立っていた。 「いらっしゃい、奥村翔君、藤原拓哉君」 その女の子はやけに大人びた笑みを浮かべた。
翔「今日のキーカードはハマナのリサーチ! たねポケモンと基本エネルギーがサーチできる! 試合展開をこれで早めよう!
ハマナのリサーチ サポーター 自分の山札から、「たねポケモン」または「基本エネルギー」を合計2枚まで選び、相手プレイヤーに見せてから、手札に加える。その後、山札を切る。
サポーターは、自分の番に1回だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。
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