旅の序章 ( No.44 ) |
- 日時: 2010/12/27 22:38
- 名前: あずらび◆2UZxO8bG3w ID:EtSQpPH.
- 参照: キマワリのマワリをマワリ、キマワリもマワル
- 「電光石火よ!」
「そんなことしても無駄よ、メガドレイン」
クウはとにかくダメージを与えようと攻めるが、ルイスがそれを拒むように回復技を指示する。 イーブイは、特殊耐久は高いのだが、キマワリの特殊攻撃はやはり結構のダメージを受けてしまう。このままだと、ハートの頑張りが台無しになってしまう。 なんとしてでも、キマワリを倒したいのだが……あの回復をずっとされてしまうと、相手にダメージを上手く与えることができない。
「もどかしいわね。一発で決めさせてもらうわ。ソーラービーム!!」 (! どうしよう、このままでは本当にやられちゃう。何か対策を――――そうだ!)
再びソーラービームがくる。この天候では一発で来てしまう。……クウは、周りに生えてる木々を見て何かを思い浮かんだ。
「ライト! キマワリの周りを回って!」 『ブイ!!』 「? キマワリ、きちんと狙いを定めてソーラービームよ!!」
ライトはクウの謎な指示に疑問も持たず、ただ言われた通りにキマワリの周りを回った。キマワリはパワーを溜め始めると、つられて回る。ルイスこそ、疑問に持つものだったが、それは至って冷静だった。 そして、クウは止まって、というとライトは止まる、しかし、キマワリは急にとまることができず、ソーラービームを発動した。
「上にジャンプ! そしてキマワリに電光石火!」 「!! キマワリ!?」
ライトは上にジャンプし、ソーラービームを発射している途中のキマワリに電光石火をくらわせ、それは少しずつ弱くなり、やがて止まった。 キマワリは目を回したまま、その場に立っていた。やがて我に返り、戦闘態勢に変わる。
「でも、どうして……」 「キマワリは強いのは確かです。でもルイスさんはさっき、“キマワリは遅い”と言っていましたよね? でも葉緑素で素早さは高い。……ならば、ある程度素早さのあるライトで周りを回れば、つられて回る。きっとライトより素早さは高くなっているので、急にとまることはできず、自分は止まったと思いこんで技を放ったと思うんです」 「成程、すごい発想ね。……でも、どうしてジャンプなんて危険なことをしたの? 当たるかもしれなかったのに」 「キマワリにはリスクがあった。貴方のキマワリのソーラービームは確かに威力が高い。でも、“細い”んですよ。だから、ジャンプしてかわすことができた、ということです」
クウは、ルイスの全ての発言を記憶していた。それでなければ、勝てる戦いではなかった。ルイスは「余計なこと喋っちゃったかなぁ」と苦笑していた。 それでも、キマワリはまだ倒れる気配はなかった。それは、ダメージの一部を与えることだけしかできなかった。攻撃をかわすことにすぎなかった。
「ライト、穴を掘る!」 「……地面技で来た? キマワリに地面技は効果はいまひとつよ!」 「キマワリに攻撃するために指示したわけではないです! ライト、地上に来て砂掛け!!」
他愛のない会話を終わらせて、再び戦闘態勢になる。クウは、ライトに穴を掘るを指示したが、ルイスは横からそんなことを口ずさんだ。 ……それは、クウにはとっくに知っていた。しかし狙いはダメージを与えるわけではない、“ダメージを与えさせない”ためだ。ライトは地下から地上に戻ると、キマワリに向かってたくさんの砂を掛けた。 ――――このフィールドは、草が生い茂っていて土がないため、砂掛けができなかった。しかし、“植物は地面から生える”ため、地下にはきっと……いや、確実に土があると図った。
「穴を掘れば、土が出てくる。だから、それをうまく利用したんです」 「貴方、見かけによらず頭がいいのね。でも、絶対に技が当たらないとは限らないわよ!! 葉っぱカッター!!」 「ライト、避けて体当たり!!」
意外にクウは頭を使って戦っている。バカなのは間違いはないのだが。 キマワリは葉っぱカッターを放った。しかし、目がくらんでいるのか、変な方向に飛ばしてしまい、ライトもそれをうまく避けるため、確実にダメージを与えることができず、ライトの攻撃も当たってダメージを受ける。 ルイスは油断をしてしまっていた。クウには最大のチャンスだった。キマワリも半分くらいはダメージを喰らっていた。今なら、倒せると。
「トドメだよライト! キマワリに突進!!」 『ブイッ!!!』
クウは大ダメージを与える突進を指示した。自分はダメージを受けても、まだHPには余裕があった。 ルイスは慌てて「かわして!」というが、目がよく見えてないキマワリは避けきれることができず、そのまま直撃、キマワリはダウンした。
「キマワリ戦闘不能、イーブイの勝ち! よって勝者……挑戦者クウ!!」
審判が旗をクウ側に上げると、クウの口角がだんだんと上がって、嬉しさが込み上げていた。後ろにいたアリスがクウの所に来て、「おめでとう!」と言った。 ルイスはため息をつくと、倒れたキマワリをモンスターボールに戻し、一言「ありがとう」と呟くと、二人の所にやってきた。
「いやぁ……貴方、本当に旅に出たばかりなの? すごく強くて……とても面白い戦いだったわ」 「ありがとうございます! ……でも、ルイスさんも相当強かったですよぉ」 「とにかく、戦えて嬉しかったわ。……じゃあ、これを」
ジムサポートの人が何かのトレイを持ってきて、ルイスに“それ”を渡すと、それを手に取り、クウに渡した。 それとは、ずっとクウが手にしたかったジムバッジだ。ちょっと変わった色をしていて、葉っぱの形をしていた。
「モエギバッジだよ。このプラントジムに勝った証なの。さぁ、どうぞ」 「あっ、ありがとうございます!!!」
クウは心の底から感謝の気持ちでいっぱいになりながらモエギバッジを受け取った。そして、サクラ博士から貰ったバッジケースの中へと収めた。
「――――で、アリスもジム戦やるんでしょ?」 「ぇ……わ、私は、いっかなぁ……」 「え、そうなの?」
クウはずっとアリスもジム戦に挑戦するものだと思っていた。だから、挑戦しないと聞いてかなり驚いていた。
「うん、残念だなぁ。……ま、しょうがないね。……貴方達、この先の街にも行くんでしょ?」 「あ、はい」 「私よりまだまだ強いジムリーダーばかりだけど……頑張ってね、応援してるよ」 「はい!!」
ルイスは初めて会った時のように、ニコリと笑うと、二人はジムを後にして外を出た。
「ねね、なんでジム挑戦しなかったの?」 「あ、うん……クウちゃんで苦戦してるほど強いから、私じゃ敵わないかぁなって……」 「――――そっか。よし、1秒で早く次の街に行こう! 走るよー!!」 「え、ちょっとまってよ、クウちゃん!!!」
クウの肩にはライトを連れて、全力質素で先に向かって言った。一方のアリスは、腕にロコンを抱いたまま、ゆっくりと歩いてクウを追っていた。 そして、クウが見えなくなったころ、ロコンが急にアリスに語りかけた。
『……クウ、ジムバッジを手に入れたんだな』 「うん。正直すごいなぁって思う。クウちゃんには、このまま頑張ってほしいよ」 『“言わなくていいのか”?』 「……ここでそんなこと言わないでよ。少なくとも、クウちゃんにはバレないようにしておいてよ」 『……お前とクウは、合ってないんじゃねぇか?』 「そんなことないよ。きっと……ね」
――――ジムバッジを手にしたクウと、何かを隠しているアリスの冒険は、始まったばかり、序章に過ぎなかった。
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