謎、事情、幻聴 ( No.28 ) |
- 日時: 2010/10/31 22:13
- 名前: あずらび◆4fprnT0Yg.2
- 「なっ……!?」
クウが投げたモンスターボールに、ラルトスは入った。入ったのだが、捕獲には至らず、ボールが開いてラルトスが出てしまったのだ。 あれほどダメージを与えたつもりだった。ラルトスが逃げようとして、油断している隙に捕獲する、その作戦では明らかに捕獲のチャンスで、有利なはずだった。 そして、そのボールから出てきたラルトスは木の実を無視して、その場を逃げてしまった。クウとライトは追いかけようとしたが、あまりの暗さにすぐ見失ってしまった。
「うーん……まぁ木の実を盗っていかなかっただけまだいいけど……なんだか、あのラルトスが欲しくなっちゃった」 『ブイ?』
ライトはどうして? という顔でクウに首を傾げた。クウは少しんーと考えた。 初めてのクウの捕獲が、あのラルトスで失敗した。捕獲に失敗するほどなら、まだ体力は残っていたと考えられる。すると、結構の実力がある野生ポケモンと考えた。 それならば、あのラルトスを捕獲リベンジとして捕まえたい。あの野生のラルトスを、手持ちに入れてみたい……と、考えた。
「そうと決まれば、早速明日、あのラルトスを探してみよう!!」 『ブイッ!』
ラルトスなんて、何処にでもいる。しかし、あのラルトスには特徴があった。気持ちを感じ取ることができる赤い角、あの先端が少し欠けていたことをクウは見逃さなかった。 それに、あのラルトスはあまり移動するとは思えない。だから、明日こそ捕獲をしてやる、そう決めたクウは、先ほどの木の下に寝っ転がってゆっくりと眠りについた。
次の日、朝起きると午前8時を過ぎていた。眠い目を擦っていると、真夜中のラルトスのことを思い出した。隣のアリスはまだ寝ていて、起こさないようにこっそりとその場から離れた。 木の実を探しているのなら、きっと木の実が多い場所に取りに行っているかもしれない。正直甘い考えをしていたクウだが、なんと的中していて驚いた。 少し離れた場所に木の実がいっぱいなっている“ネイントの木の実畑”を発見した。名前の由来は、ネイチャタウンとプラントシティの真ん中に存在する場所であるから、二つの街の名前を取ったと言われている。 そのネイントの木の実畑に、昨日のラルトスがいた。間違いなく、赤い角の先端は欠けていた。クウ達はこっそりと近くの草むらに隠れて、行動を見張ることにした。 ラルトスは、マジカルリーフという技を使って木の実を取っていた。そこでクウは疑問に思った。 なぜ、最初からネイントの木の実畑から回収をせずに、私たちの木の実を盗ろうとしたのか――――
「……あ、移動したよ! 追いかけよう!」
クウは小声でライトに言うと、ライトも小さく頷くと、なんとかばれない様に木の陰に隠れながらラルトスについていった。 しばらくついていくと、人気がほとんどなく、花ひとつない場所についた。クウ達はラルトスにバレないようについて行っていたが、ピタリとラルトスは止まると、振り向かずにクウ達に向かってマジカルリーフを飛ばしてきた。 慌ててクウ達は避けるが、ラルトスについて行ってたことがバレてしまった。しまった、とクウは思ったが、ラルトスはそのまま、その奥の小さな洞窟に進んでいった。 クウとライトは顔を見合うと、まだ懲りずに、ラルトスが入った洞窟に向かった。
(暗い……)
水が滴っている洞窟の壁を手で触りつつ、足元に気をつけながら慎重に洞窟を進んでいく。ちょっと進むと、すぐに光が見えたので、そこに向かった。 すると、その先には、たくさんのポケモン達がいた。が、普通の状態のポケモンではなく……全身が傷ついたり、いかにも病気っぽそうなポケモンがたくさんいた。その中に、あのラルトスもいた。 ラルトスは、先ほど取った木の実をポケモン達に与えていた。しかし、そのラルトスでさえ少し体力が弱っていたこと。
(……分かった、ラルトスがどうして私たちの木の実を奪おうとしたのかを)
クウ曰く、ラルトスはここにいるたくさんのポケモン達に木の実を与えようと、木の実を探していた。しかし、自分もそれほどという体力はなく、昨日の晩はマジカルリーフすら出す気力がないほど弱っていた。 そこで、ラルトスは匂いか何かでクウ達の木の実を発見し、手っ取り早い方法で念力を使って木の実を奪おうとしたが、自分達にばれてしまい、攻撃され、捕獲されそうになった。 しかし、まだ自分はポケモン達を元気にするということを果たしていない、その気持ちが強くなり、捕獲されずに、その場を去った。だが、念力で木の実を奪うほどの余裕がなく、結局収穫はゼロで、ますます時間を無駄にしたということになる。 そして今日、一晩寝て少しだけ技が出せそうになったラルトスは、木の実を探している所を、ネイントの木の実畑を見つけた。 1秒でも早く仲間の所に木の実を持っていこうとしたが、再び自分達に追いかけられていることを知り、後ろを向かずマジカルリーフを放った。 ……と、いうことになるだろう。
『っラル!』 「っと」
再びラルトスがマジカルリーフを放ってくる。しかし体力がほとんど残っていないせいか、とてもスピードは遅く、すぐに避けきれた。
「……木の実が、欲しかったんだよね?」 『!!』 「私達は悪者じゃない。……あの時は貴方の事情も知らずに捕まえようとしてごめんなさい。でも、何か手伝えることがあったら……!!」 『ラルゥ!』
ラルトスはまだクウ達を信用してないせいか、まだマジカルリーフを放ってくる。そしてそのラルトスの威圧感は異常であった。 ここまで言っても、このラルトスは信用をしてくれない。それほど、クウ達に警戒心があるのだ。ここまでか、というほどクウは困ったことになるが、クウの前に、ライトが立った。
『ブイ、ブブイ!』
ライトは、ラルトスに何かを訴えている。クウはポケモン達の声は聞こえないが、なんとなく、会話内容は分かっていた。 クウの代わりにライトがラルトスを説得している。信用してもらうためには相手に分かってもらう必要がある。ラルトスに届かないクウの声を、ライトが変わりに必死に訴えていた。 しかしラルトスは、まだ信じられない、と、首を横に振った。するとライトは険しい顔でラルトスに睨みつけた。
『……お願い! クウは貴方達を助けようとしているのよ!』 「っつ………………え?」
――――幻聴。ポケモン達の幻聴が、ほんの一瞬だけクウの耳に届いた。 その一瞬の後、何事もなかったかのようにライトは『ブイブイ』鳴いている。しかし、本当に一瞬だけ、ライトが“普通の人間の言葉を放った”ように感じた。 否、正しく言えば、“そう聞こえた”だけかもしれない。が、自分にポケモンの言葉が分かる筈がない……。
『ブイ!』 「…………あ、うん、何?」
ライトはクウの足を何度も手で叩いた。ぼーっとしていたのか、とクウは我に返ると、ライトはラルトスの方に向かって手を出した。
『ラルゥ』
ラルトスは、ライトのお陰もあってか、クウを信用していた。先ほどの威圧感がまるで何処に行ってしまったかのように。 少しずつラルトスはクウに近づくと、ゆっくりと頭を下げた。どうやら、声のトーンの低さから、先ほどまで信用せずに攻撃ばかりしていたことを謝罪しているように感じた。
「いいよいいよー、気にしなくて!」
基本フレンドリーなクウは、それくらいのことはあまり気にしなかった。すると、ラルトスからは満面の笑みがこぼれた。 ……しかし、クウは辺りを見渡すと、元気じゃないポケモンがいることを見て、木の実が必要なことを思い出した。そして、洞窟からライトとラルトスを連れ出した。
「そっか。木の実だね。探しに行こう!」
おー! と腕をあげると、ライトとラルトスと共に、木の実を探しに洞窟を後にし、先ほどの木の実の木まで目指した。
「幹部、ネイントの木の実畑にてレーザーが反応しました」 ≪ネイントの木の実畑……ずいぶんマニアックな場所で反応したな。……まぁいい、そこを徹底的に調査しろ!≫ 「分かりました! ……あ、邪魔な人間が入り込んできたら?」 ≪排除しろ、慎重しな≫ 「了解!」
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