Re: ポケノベ2010夏企画 移転中につきコメント禁止 ( No.18 ) |
- 日時: 2010/09/06 22:55
- 名前: 南瓜
- Bコース【STADIUM】
緑と人が共存するロアークシティで開催される恒例のサマーフェスティバル。メインストリートから裏通りに渡って軒を連ねる屋台、華やかな衣装に身を包んだ人々とポケモンによる盛大なパレードなど人々を惹き付ける理由は数有れどその目玉はなんといっても大樹に囲まれた街のシンボル、巨大スタジアムで行われる大規模なポケモンバトルトーナメントだった。出場資格はジムバッヂ6個以上。腕自慢のトレーナー達がリーグから招待された四天王の二人、ローズとエリンへそれぞれへの挑戦権を巡り毎年激しく繰り広げる試合模様はロアークシティのみならずまさにこの地方の夏の風物詩である。
もうすぐ初戦開始の夜九時を回る。街の中心部に位置する巨大なバトルスタジアムは観客で埋め尽くされ溢れかえっていた。バトルフィールドを照らす太陽のように強烈なスタジアムライト同様に人々の目は興奮で輝いている。 ゲートから現れた明らかに遅れてきた様子の青年は人混みを見渡し、少しうんざりした様子で手にしていたマップを広げる。俯いた拍子にストレートの艶のある金髪が目にかかりイライラと払いのけた。肩に掴まっているラルトスは彼の急な動きに翻弄されることもなく、落ち着いた様子でマップを横から覗き込んでいる。上着なしのスーツ姿から察するに仕事先からスタジアムへと直行したようである。青年はすらりと背が高くスタイルが良い上に非常に整った容貌だったが、右頬に傷を負っているらしく大きな絆創膏を貼り付けていた。他人の注意を引くには申し分のない外見であるが現在観客の関心は主に来賓席の四天王や先程まで行われていた開会式に対して向けられており、幸い彼を取り立てて目に止める者は身近になかった。
青年が苦労しながらもなんとか予約席までたどり着くとすでに隣の座席に着いていた同年代の青年がニッと彼に笑いかけた。 「よお、遅かったな! しっかしお前スーツって……」 毛先を無造作に遊ばせた流れるような黒髪、小麦色に日焼けした肌、濃紺の甚平を身に纏いネイティを肩に乗せ、金髪の青年に負けず劣らず端正な顔立ちの彼は綿菓子を二つ突き立て翼を広げたチルットのようなバケツ大のポップコーンのカップを青年の席からどける。 「“仕事”帰りだ。お前こそ甚平なんか着やがって……羽目を外すのもほどほどにしとけ」 金髪の青年は無愛想に答えると空いた席にどかっと座り、足を組む。 肩の上のラルトスは黒髪の青年とネイティに向かって丁寧かつ上品に一礼したので、黒髪の青年は手をひらひら振って笑顔で応えてから唇を尖らせて反論する。 「おいおい祭りだぞ。あーあ、早く言ってくりゃお前の分も用意してやったのにな!」 「そういうオリエンタルな格好は似合う気がしねえ」 「そーか? まー羽目はともかくネクタイくらい外せって」 うるせえ、と言いながらも彼は言われたとおり水色のネクタイをぐいと解き、続いてポーチから人目に触れないように無線イヤホンを取り出して耳に装着し、次に小さな双眼鏡を取り出すと海のような青い眼に当ててスタジアムを見渡し始める。黒髪の青年は綿菓子に噛みつき口をもごもごさせながら横目で様子を伺っていたが、急に金髪の青年に向かって囁いた。 「なぁおい……か?」 「あぁ? 今なんか言ったか」 この騒ぎだ。相席とはいえ聞き取れないのも無理もない。 「ほら、来賓席。ローズ・エカルラートとエリン・ギルバスターと“ミディ”なら誰が一番好みだ?」 「……それ聞いてどうすんだ?」 「どうもしねえよぉー」 ニタニタとあからさまな笑みを浮かべ、話を続ける黒髪の青年。 「ローズはやっぱ美人じゃん。巨乳だしな! 大人の色気あるよなー。でもエリンも可愛いんだよな。17っつーことはオレらと同い年な訳だし親近感湧くっつーか、んでもって“ミディ”は……」 「知るか」 熱弁も虚しく一蹴された。 「お前相変わらずだなぁ! どんなにルックスが良くても愛想が最低だとモテねえぜ! あはははは」 あっけらかんとした黒髪の青年の笑顔にラルトスは苦笑し、金髪の青年は双眼鏡から目を放し思わず頬の筋肉を緩ませた。 「お前こそ相変わらずだな。俺がいない間真面目にあの二人を見張ってたのか?」 今にも笑い出しそうな呆れた口ぶりに対し黒髪の青年は胸を張って答えた。 「当然だ。じっくり観察したからこんな台詞が吐けるんだろ、ははは」 「!」
無線イヤホンに通信が入り、氷のような緊張感が二人の顔から和やかな空気を奪い去る。
「こちらA班“ソレイユ”、現在マル害及び“ミディ”の位置を確認、周辺に不審人物は見当たらない模様。どうぞ」 「こちらA班“メール”、“ソレイユ”と合流完了。引き続き監視を行う。どうぞ」 「……OUI」 「OUI」 無線を切ると一気に騒々しい現実に引き戻された。鋼のように鋭く冷えた全身に苦しい程の熱気がじわじわと迫る。二人は真剣な表情で顔を見合わせた。ソレイユと名乗った金髪の青年は素早くラルトスに目配せし、ラルトスは頷くが早く行き先も告げずテレポートでどこかへ消え去った。 メールと名乗った黒髪の青年は肩のネイティの冠羽を撫でながら静かに呟いた。 「しっかし……トーナメント開催期間中に四天王を襲うなんていかれてるぜ」 ネイティとソレイユは遠くを見ながらもメールの言葉にじっと耳を傾けている。自然と彼らの頭には本部に届いたとされる挑戦状こと某ファックスの文面が思い出された。 「動機がイマイチよく分かんねえ。なんか得するか?」 「さあな」 明確な犯人像は浮かび上がっていない。ただ護衛に囲まれた来賓席にいる四天王ローズとエリンに尤も接近かつ危害を加える絶好の機会があるとすれば、それは優勝者のみに与えられる挑戦権を利用したポケモンバトルである。すなわちこのスタジアム内の人間の仲で犯人である可能性が高いとされるのはこのトーナメントに出場した勝率未知数のポケモントレーナー総勢50名。 「だが、売られた喧嘩は買うまでだ」 国際警察の威信にかけ、ソレイユは宣言する。 バトルフィールドに立つ二名のポケモントレーナー。審判によって試合の開始が告げられるとスピーカーからは実況アナウンサーの声がスタジアム中に響き渡り人々は熱狂の渦に包まれた。
 |
|