91話 静かな夜こそ要注意 ( No.178 ) |
- 日時: 2011/04/03 19:13
- 名前: 天月 ID:4VjGt0ow
- 91話 静かな夜こそ要注意
いつ、どこに、なにが。待っているか判らないから。
(サンはさっきの破壊光線で今は動けない…。これはユウトでもどうしようもできないこと。……つまり、)
「ナイト、“悪の波動”!」
クウトはこの絶好のチャンスを見逃さずに、ナイトに指示をする すると、ナイトの周りから真っ黒い、禍々しいオーラ(波動)をサンに向かって放つ その攻撃を、避けたくても避けられないサンは、見事に直撃して、先ほどのナイトのように壁へと反動で飛ばされた エスパータイプに悪タイプの攻撃は効果抜群。これでサンとナイトの体力はほぼ五分五分となった
「せこっ」 「うるせー。でも……次で最後だな、きっと」 「……そうだね。じゃぁ、……サン、“穴を掘る”!」
サンはその指示が聞こえた瞬間、倒れていた身体を起こし、フィールドの地面の中に潜り込んだ
「どっから来るかわかんねーから、気をつけろよ、ナイト」 『ああ。……………、きた』
目をつぶって精神を研ぎ澄ましていたナイトは、その目をカッ、と開き、それを見たクウトは、最後になるであろう指示をだす
「いっけぇ!“シャドーボール”!!」
ぼこり、と土が盛り上がり、サンの紫の身体が出てきた瞬間、サンが見たものは 黒い玉を作り出しているナイトの姿だった 「負けてしまう」そう思った瞬間、耳に大切な主人の声が入ってきた
「サン、“アイアンテール”で打ち落とせ!」
主人は諦めてなどいない。その想いに応えるため、力を振り絞り、鋼のように硬くなった尻尾で黒い玉を地面に打ち落とした チッ、と小さくナイトが舌を打ったのを、サンはあえて聞かないようにした
「サン、これで終わりにするぞ、“破壊光線”!」 「ナイト、行くぞ、“ギガインパクト”!!」
サンは先ほどと同じように額の珠から眩い光線を繰り出し ナイトは全ての力を振り絞りながら、サンへと突撃していく
2つの大きな力が、ぶつかり合って大きな爆発音と黒煙を産み出した 2人は煙が目と口に入らないように目をつぶり、口を服で押さえた
………煙が晴れた頃、2人は同時に目を開ける 誰もが、息を呑んで、勝敗を見ていた
2匹はギリギリの状態で立っていた 静寂はまだ続く ……一瞬、2匹はふっ、と笑い、そして…… ナイトの身体が傾き、地面に倒れ、その少し後にサンもゆっくりと倒れた
この場合、先に倒れたほうが「負け」となるので…………
《勝者、ユウト選手ーーー!!!》
アナウンサーが耳がキーンとなるほど大きな声で勝敗を口にする その瞬間、ワァァアア...と歓声が巻き起こり、紙ふぶきがどこからか降って来た そんな歓声たちにお構いなしにユウトは倒れたサンの元へ歩いていく クウトも同じだ。悔しがる前に、最後まで頑張ってくれたナイトの元へ歩いていく
「………おめでとう、ユウト」 「兄貴も、お疲れ様。………楽しかったよ」 「俺も。こんなに燃えた戦いはお前としか出来ないって思ったよ」
2人はサンとナイトを腕に抱え、同じように「お疲れ様」と労った
「あらら〜お兄さん負けちった」 「ユウト強いなぁ〜……。でも、2人ともすごく満足した顔してるね」 「ああ。……こんなバトル、いつかアイツとしてみたいな」 「ああ、ゴールドとかー。何時になるんだろうな」 「ま、それはおいておいて、2人ともお疲れ様って言いに行こう!」
観客席にいた3人は、閉会式に出るついでに、2人を労うために今まで座っていた席を立ち、フィールドまでやや早歩きで向かった
閉会式は会長の話やら、今回の優勝者・ユウトにメダルやらを渡し、スムーズに進んでいった 最後に、今までの優勝者・ユウリの話になった
「…そういえば、今回の件はどうなってるんだろう。タイトルマッチ?やってないよね」 「あー……ってか俺のときもやってなかったからなぁ……」 「いや、あのときは色々あったからでしょ」 「その後のやつも、俺やってないし」 「ああ……、そっか、去年だったよね」 「そして俺は今でもチャンピオンってわけ」 「……ってことは」 「まぁ、そゆことじゃね?ユウトにはここのチャンピオンやるわけにゃいかないし」 「そうだね」
そんな会話をしているうちに、ユウリの話は終盤に向かっていった(つまり聞いてなかった)
「ユウト君、僕は、よければ君にチャンピオンの称号を譲りたいんだが……君はどうしたい?」 「要りません。俺は…シンオウで、やりたいことがあるので」 「そうか。なら仕方ないな。でも君は、今年のレイシンポケモンリーグでの優勝者、という由緒ある栄光を、忘れないでくれ」 「はい」 「では、これで私の話を終る」
一礼をし、ユウリは話を終えた つまり、ユウリは再びこの地のチャンピオンとなるわけだ 今までもそうだった。ユウリは最近になっていつもこの話のときに「譲りたい」とその年の優勝者に訊いていた しかし、いつも答えはこうだった 「ユウリ様の席を奪うわけには行きません」と。今までの優勝者がレイシン出身の者だったからだろう。ユウリはこの答えにはもう飽き飽きしていた しかし、ユウトの断り方はユウリにとってとても満足のいくものであった。「やりたいことがあるから」と言ったときのユウトの瞳は意思が通っているとても綺麗な瞳だった それだけで、もう十分の様な気がした
「さすが、マサトの子だよ」
小さくユウリはそう呟いたのだった
続く
|
|