Re: 光と闇の時空神  コメントは控えてください>< ( No.16 )
日時: 2010/09/07 13:44
名前: 天月 ID:

35話 夜月

さて、双子が人に街に出会っている頃、二人は
タイの森を抜け、ノンノの手前にある分かれ道を、ノンノではない方の道へと進んだ

そこは………

「“太陽と月の都市、チュツシティ”……だって」
「この地方は、自然とかの名前が多いな」
「まぁねー」

ユウナはシルバーの言葉に胸を張って答える
お前が自慢してどうする。とツッコミたくなるが、いつになくユウナが上機嫌なので許しておく
話しながら歩いていると、あっという間にポケセンにたどり着いた

ポケセンに入り、ユウナは宿泊受付に行き、シルバーは飲み物を買いに自販機まで行った

(えっと、ユウナは…冷たいココアで…俺は……。いいや、俺もそれで)

二人分のお金を入れ、同じボタンを二回押す
そして、落ちてきた飲み物(缶)を取り出しどこかその辺のソファに座り、シルバーはユウナを待っていた

少しして、ユウナが部屋の鍵を二つ分持ってきて(当たり前ですが別室です)
一つをシルバーに渡し、シルバーは持っていたココアを手渡す
ユウナはプシュッとプルタブを開け、一口飲んだ

「はぁー甘くて冷たくて美味しい〜♪」
「そうだな……。丁度のども渇いてたしな」
「ねー。あ、シルバーもココアなんだね!」
「あ、あぁ」

実を言うと、二人は甘党で、シルバーの母によると自分も奈々も甘党だということから、母親同士の遺伝だろうな。とシルバーは考えていた

ココアを飲み干し、二人は宿泊部屋と向かった

「んじゃ、入ってきたら殴るからね!!!」
「……。大丈夫だ」
「うん。じゃぁお休みー」
「お休み」

二人は部屋のドアを閉じながら、手を振り合った
宿泊部屋は洋室で、とても綺麗な部屋で、チュツの景色が良く見えた


ユウナはまず、ベッドにダイブした後、ポケギアで彼に電話した

「もしもしー、レッドー?」
《ユウナ!! 今どの辺に居るんだ?》
「えー? チュツシティ。って場所だよー。結構遠くまで来た」
《へぇー。頑張ってるな!》
「うん!! レッドも来れば良かったのになぁ……
……。っあ!! 今のはなんでもない!! 空耳! じゃあね!!!」

ピッ!と慌しく通話を終わらせる。一体何口走ったんだ自分は!!!!
とユウナは布団に顔を埋めながら自己嫌悪に陥った
もちろん、ユウナはただ今レッドがレイシンに居るなんて露程にも思っていない


『ユウナー。ボクにはちゃーんと聞こえてたよ?』
『私もちゃーんと聞こえてたよー!』

いつの間にかボールから出ていた二匹―ルナとピル―は先ほどのユウナの言葉を聞いていた様だ

「……ルナ…? ピル……?」
『『!?』』

埋めていた顔を上げ、怖い笑顔で二匹を見た
二匹はビクッと身体を強張らせ、後ずさる
逃がせまいとユウナは二匹を猫掴みする(ねずみと犬?を)

『ご、ごめんなひゃい……』
『だってだってー!!!』
「だって、じゃない!!」

二匹に一喝を入れ、ボールに戻す
怒った事で疲れが溜まったのか、お風呂に入ってもう寝ようとユウナは思った



            *



「おはよー!シルバー!」
「おはよ。ユウナ。……昨日、叫んでたな」
「それは……この子たちに、ちょっとした喝を、ね?」
「そうか…(一体、何やったんだよ……)」

はぁ、とシルバーはユウナの腰についているボールを見た
ルナとピルは、心なしか落ち込んでいた


続く

36話 純粋な悪魔  +あの方視点+


ったく……。ルリアってば……
怒る気もなくすよ、まったく

「っと、こっちは神子を見なくちゃいけないんだっけ……
って、何で“悪”の私が神子を……“天”のルリアが見たほうが、よかったんじゃ……」

ま、独り言はここまでにしておこうっと
あ私はユイナ。本当の名前は“純悪結那”
由来は「“純”粋な“悪”魔」から。矛盾してるけど、私はこれはこれで良いと思う
だって、人のココロなんて矛盾で満ち溢れてるもの……



……“宝来優奈”。影の二つ名は“光闇の神子”
ソノ血には、アルセウスの能力の血とマサラの血が混ざっている
その過程で、彼女は“意思繋ぎ”の能力を手に入れた
んで、ダークライの能力の血も、ね
クレセリアの血も……ちょっとだけ混ざってるのかな

私もルリアみたいに、神の四家には関係ないけど、神サマにはちょっと関係している
神サマというか、私は“悪魔”にルリアは“天使”に……
でもその悪魔は悪いことをできない、純粋な悪魔
純粋で無垢で、儚い悪魔
なんていうか、堕天使にも悪魔にもなれなかった。そんな悪魔

ルリアは、人に幸福を与えられなかった天使
だって自分が幸福じゃないのに人に幸福を与えれるなんて、無理に決まっている
言うなら、堕天使にも天使にもなれない。そんな天使だったそうだ

………文献によれば、それは、私たちのご先祖様だったそうだ
これは私しか知らない。ルリアはきっと知りたくないだろうから


すっ、と腰についている一つのボールを取り出す
中には、ブラッキーのダーク。英語で闇
私の一番のパートナーで、この子の声は聞こえる
っていうか、悪タイプの子の声は聞こえるんだよね
ルリアは、声っていうか…ココロが詠める。人やポケモン、物にもね
これも、ご先祖様の能力だったらしい


「私たち、大変だね」

私は自嘲気味に笑う、ダークは心配そうに私の顔を見る
……ありがと

「さぁって、神子さんのこと見守らなくちゃね!」


続く

37話 Evil that approaches 


影はいつだってついてくる。光がある限り闇があり
正義がある限り悪だってあるのだ
悪を全て消そうなど、愚かにも程がある―――




「さて、ココで特訓でもしよっかー。ね、シルバー」
「あぁ。ここなら広いしな」


二人は、チュツの外れの森に来ていた
その森の中に、バトルに最適な場所を見つけたらしい
二人はさっ、とボールを宙に投げた
ユウナはルナ。シルバーはニューラだ


「……ニューラ、“乱れ引っかき”」
「ルナ!“影分身”!!」

シルバーの指示から、特訓は始まった
どちらも悪タイプのため、二人は出来るだけ悪タイプの技を使わずに指示している




―その時だ。二匹は不意にピタッと動きを止める
そして、辺りをキョロキョロと見回す。まるで何かに警戒しているように
そんな様子に、二人も辺りの気配に気づく


何か、潜んでいる。と―――

(…どういう事? さっきまでシルバーでさえ気づかなかったのに……
でも、さっきからこの辺りは邪気で溢れてる
………怖い)


「……何処に居る!!! さっさと出て来い!!!」

いきなり、シルバーが叫んで、ユウナと二匹は驚く
それもそのはず、シルバーが怒鳴ることは、稀だ
そして潜んでいる相手も突然の怒鳴り声に驚き、ガサッと音を立ててしまったようだ
それを、シルバーは見逃さず素早くニューラに指示を出した

「ニューラ、“電光石火”!!!」

ニューラは音の鳴った草地へと高速で向かう
……が、相手は居なかった
確かにそこに居たはずだ、そして自分の指示は音が鳴った瞬間だから、他の場所に移動なんて、ほぼ不可能だ
……テレポートなら別……。テレポート?


そして再び、草の揺れる音が鳴った
なった場所は……ユウナの背後
それに、相手は……ユウナの真後ろに居た

「!?、ユウッ……」

ユウナ。と呼ぼうとしたその時、相手は、ユウナの頭上に、刃物を、振りかざしていた

「ッ……ユウナ!!!!!!!」

つっかえた喉から出てきた言葉は、酷く裏返って掠れていた
その声にユウナは振り向くが、もう刃物は目の前に迫っていた

痛みと、死を覚悟してユウナは目を瞑る


ザグ、と肉を切る音がした。



……だが、何時まで経っても痛みはこない
そっ、とユウナは目を開けると、相手の持っている刃物には、血が
そして、自分と相手の間には……

最も信頼していた、家族が、倒れていた
黒い毛からは、赤黒い血が流れ、黄色の毛の部分が赤黒く染まっていく
ユウナは、何が起こったか理解できなかった。否理解したくなかった


「あ……ルナ……………!?」
『あ、はは……ユウナ、大丈夫だっ、た……?
怪我、してない………?』

ルナは、自分が危険な状態に陥りながら尚、ユウナを、この世で最も大好きな主人を心配していた

「どうして……、あんたがっ、犠牲になったのよ……」

ユウナは、力尽きたようにその場にペタンと座り込み、息の薄いルナを見つめた
その赤い瞳も虚ろで輝きをも失いかけていた
それでも、彼は笑って

『ぼ、くは……ゆうなが、傷つくほうが……もっと、辛くて、痛いから……
こんな傷、へっちゃら、だよ……』

そして、彼は微笑み、気を失った
あ。とユウナは息を止める、思いたくない
思いたくないけれど最悪の状況が、目の前に映った気がした
それは―――――「 」。


そんな事、絶対にさせまいとユウナはルナを抱き、全速力で森を出ようと駆け出す
シルバーはそこで置き去りになって、気づいた

いつの間にか、敵が居なくなったという事に
きっとユウナはルナのことで頭がいっぱいで、気づかなかったのだろう
そして、シルバーも目の前の光景に戸惑い、敵が居なくなったことにも気づけなかった


「…相手は、ユウナを狙っていた。だが、予想外の出来事がおき、去っていた。……かな」
「ニュラ……。ニュラ!!!」
「あぁ、俺たちも早く森を出るか」

そう言い、シルバーとニューラも、森を出て行った


            *



「ユウナ………」
「シルバー、ルナはね、ギリギリ助かるって!
見た目以上に傷は酷くなくって、手術して、少ししたら、すぐ、良くなるって…!!」


その顔は、嬉しさと涙でぬれていた
だが、その裏には、きっと……。
シルバーはチラリとユウナの服を見た
…血で、ぬれていた

「……ユウナ、服。血ついてる」
「え!? ……本当だ。気づかなかった……
着替えてくるね!!!」

タタッと、ユウナはシルバーの横を通り過ぎて、脱室へと向かった
シルバーは傍にあったベンチに腰掛、背中を壁に預けて、肺の中を整理させるように息をはいた


驚いた。とでも言えばいいのだろうか
人に刃物を向ける人など、おぞましい行為だ
たとえいかなる思いがあろうとも……
そして、ユウナは泣いていた
稀にしか涙を見せない彼女はきっと、涙が出てることさえ気付いていないんだろう……


           *


脱衣室でユウナは着替え、血のついた服を洗っていた
その時初めて自分は泣いていたんだと気付く
目の前の鏡に映る自分の瞳は濡れていて、赤くなっていた

ショックだった。目の前で家族が傷ついたのだから
それも、自分を庇って
そして彼女は無意識に自分を責めていた

何故、気配に気付けなかった?
何故、周囲に気を配らなかった?
何故、ルナを出しっぱなしにしていた――?

気配に気付けば、少なくとも誰も怪我をしなかった
周囲に気を配れば、すぐに相手の場所がわかっていた
ルナをボールに戻せば、彼は傷を負わなかった


それなのに………。自分はなんて、酷いのだろう
自分はなんて……未熟なのだろう―――



           *


「ちょっと、貴方…その血塗れた刃物はなぁに?」
「ッ……!!」
「もしかして、神子さんを傷つけたりした?」
「していない…。しようとしたが、邪魔された」
「そう。…………でも、神子様を傷つけようとした罪は、重いわよ?
ヘル“催眠術”」


黒い髪の少女―ユイナ―は、ヘル(ムウマ)の催眠術で
先ほどルナを傷つけた相手を眠らせた
その後、被っていたフードをとったら
攻撃した相手は、自分や彼女らとなんら変わらない歳ほどの少年だった
コートを取り、服を見れば胸のほうに「B」のイニシャルがあった


(………“ブレイク団”は、子供も雇ってるのね……ったく、酷い奴ら)


だが、この少年は、刃物で人を傷つける事に何も疑問を抱かなかったのだろうか……
その疑問を解決するべく、彼女はポケギアで通話をした


「ルリア? 今すぐ私の居る場所にきて」
《りょうかーい。何か見つけたんだね?》
「えぇ。一刻も早くよ」
《オッケー》

そう言い、通話は途切れた
早く、こいつが目覚める前に………



続く

38話 心詠

ユイナが電話してから少し後、ルリアはトゲキッスに乗ってやって来た
トゲキッス…ホーリーは眠っている相手を起こさぬよう、目的地より少し遠くで着地する
ルリアはホーリーの背から降り、首元をひと撫でしてからボールに戻しユイナの元へ向かった
もちろん、相手を起こさぬように静かに
そして二人は小さな声で会話する


「おまたせ」
「ん。さすが早いね」
「ユイナは“判りやすい”からすぐ場所が判るの
…で、この子が? 私たちと同じくらいじゃない」

先ほど眠らせた少年を目で見て、ルリアは言う
そしてユイナはまじめな顔で頷いた
チッ、と小さく舌打ちしたあと、ルリアは目を瞑った

―心詠<ハーツリーディング>
これが、彼女の先天性の能力で人を始めとするさまざまなモノ(ポケモンや自然関係など)の心を詠むことがきる
ただ、時間が経つにつれ、記憶が薄れていくのと同時に心を詠む時も曖昧になっている時がある
そのため途切れ途切れの事も多い
イエローと似たような能力だが、ポケモン以外の心を詠むことが出来る部分と自身の精神力を使わない部分は違っている
先ほどの「ユイナは“判りやすい”」というのは、彼女の心がルリアにとって“発信機”のように詠み取れるだからであろう



―『――です!ぼ―…に、そ――こと!!』
―『……か。なら―……。お仕置―だな』
―『!? ―めて、くだ―い!!』
―『なら―…、コレを―って、宝来の神子を……殺せ』
―『ッ……はい』




ルリアは、驚いて目を開ける
宝来の神子――。それは問えば誰もが一致する答えを言うだろう
「宝来優奈」と………
ちらり、とルリアは少年の手に握られている刃物にこびりついている血……
それは、彼女のものなのだろうか……

そして再び目を瞑り、少年の心を詠んでいく
…記憶が新しい。きっと今日のことだろう


―『ッ、ユウナ!!!!』

酷く裏返った少年の声の叫びの後、肉を切る、嫌な音がした
だが、ユウナは傷一つついていない
代わりに傷ついているのは……ブラッキーだった

そうか…あの刃物についた血は…ブラッキーもの……
きっとユウナを護ろうとした、決死の行動だったのだろう
そして、この少年はケーシィの“テレポート”でその場から去った
元々人を殺すことを躊躇ったのだ。動揺して場を去るのは当たり前だろう

―『…どうしよう、僕、失敗した……!!
あの人に、殺される……!!!
…でも、僕だってやりたくてやったわけじゃない……
あの人が無理やり僕を団に入れて、無理やりこんな仕事を与えたんだ……』


ここで、真実が見えた。この少年は攫われてブレイク団に入団させられた
きっとこの少年以外にも少女や少年が同じような扱いを受けているのだろう

もう十分だろう。とルリアは思い、目を開ける
ユイナに詠み取ったことを伝えた


「そっか……つまり、強制的に殺人をやらせようと……にしても、“あの人”ってやっぱ……」
「ボス、でしょうね。それかその幹部か部下
……神子様が、優奈が死ななかっただけでも不幸中の幸いね」
「えぇ。“神の四家の内の二家の次期跡継滅んだ時、世界に歪みが生まれる”と記されているくらいだし……」
「うん。宝来家と神崎家の次期跡継…優奈、悠斗、空斗のうち誰かが滅んだとき…世界に歪みが生まれる
優奈の場合は光と闇の均衡<バランス>が乱れ、人々の心が壊れてしまう
悠斗の場合は時間の均衡が崩れ、時間が止まったり、早まったり、戻ったり、進んだりする
空斗の場合は空間の均衡が歪み、人が消えたり土地、建物が消え最終的には世界が消える」

ゴクリ、とユイナは息を呑む。恐らく、いやきっとその3人はまったく知らないのであろう
けれど…疑問が残る

「じゃぁ“前世”の空斗は殺された。でも本当は悠斗が殺される予定だった
……それは、どういう事?」
「……あの祖父は知らなかった。だから双子の弟を殺そうとした
けれど空斗が庇い、空斗は弟を見守りたいという未練から、自らを弟の“裏の姿”とし、世界の歪みを押さえてた……。とした言えないわ」

そっか……とユイナは満月が浮かぶ夜空を見上げる
―満月は厚い雲に覆われそうになっていた


ん…、と自分でもルリアでもない呻き声が聞こえた
少年が起きたのだ
そして上半身を起こし、寝ぼけ眼で辺りを見回す
そして…目の前に自分を眠らせた少女が居て、頭が起きたらしく後ずさる


「あ。起きてる」
「な…あ………あ……」
「…。落ち着いて。私たちは貴方を傷つけることはしない。絶対に
とりあえず、貴方はこの子に乗って、この地方から出て
この子が向かう場所を判っているから」
「な、ん………」

いきなり「レイシンから出て逃げろ」と言われて動揺しないほうがおかしい
不安と恐怖で顔を歪ませる少年を見て、彼女は優しく微笑み、言う


「私は、私たちは、あなたを見殺しにしたくない
…きっと、このまま“あの人”の場所へ帰れば任務失敗で殺される
私はそんなことさせたくない。あなたも殺されたくないでしょう?」

その口から紡がれる言葉は相手を包容するような母の優しさだった
少年は、頷く。その仕草にルリアは目を細めて続ける

「この子…ホーリーの背に乗って、あなたは逃げて
大丈夫。この事が終われば迎えに行くから。ね?」
「……わか、った……」
「うん。じゃぁホーリー、よろしくね」
「キュイ!」

ホーリーは片翼をあげて鳴いた「まかせて!」とでも言ったのだろう
少年はホーリーの背に乗り、ホーリーはゆっくりと宙に浮く
そして、行くべき場所へと飛び立った


「あの………ありがとう!!!!!」


少年は去り際に、ルリアとユイナに礼を言った
もしこの二人に会わなければ自分は死んでいた
この二人は命の恩人だ。と思ったのだろう






「……あの子、やっぱりあそこに向かわせたの?」
「うん。“天魔教会”の神父さん…ううん、お父さんとお母さんなら、事情を判ってくれるからね」
「……そうね」


二人は顔を見合わせ、ニコリと微笑んだ
その後、二人は再び別れ双子と神子を見守る為に
二人は“天使”と“悪魔”として、世界を護る為に


続く

39話 ごめんね

パッ、と「手術中」と書かれたライトが消える
それが消えたと同時にユウナは座っていたベンチから立ち上がり、扉の向こうを見つめた

ガチャリ、と扉が開き、中からジョーイさんが安心したような顔で出てきて
こう言った

「貴方のブラッキーは、治りましたよ」


嬉しさと驚きで目を丸くしているユウナに、ジョーイさんは微笑み、言う

「逢いに行ってあげて、ユウナさん」
「…はい。ありがとうございます!」

ユウナはジョーイさんにお辞儀をして、彼女の横を通り過ぎた


「……あの、」
「大丈夫ですよ、シルバーさん。ブラッキーは助かりました
……ただ、気になるのは傷です。あの切り裂いた傷は……」
「…はい。刃物…です、でも、俺は、ユウナはやっていません
顔は見えなかった…だが、フード付のコートを、着ていました」
「そう……。やっぱり……」

目を伏せたジョーイさんにシルバーは問う

「あの…まさか、知っている。とか?」
「えぇ。実は――――」


             *


「ルナ……」
『…ユウナ! いたぁ!?』
『あ! まだ完全に傷が癒えてないんですから!! 大人しくしてくださいよ!』
『はーい…』

ルナとジョーイさんのラッキーがそんな会話をしていたからおかしくなってユウナは思わず笑った
そして

「……ごめんね、ルナ」
『ふぇー? 大丈夫だよー。それより、ユウナは怪我無いー?』
「…。私は、無いよ。………ありがとう」
『そっか! 良かったー! ユウナが傷ついたら、ボク絶対3ヶ月寝込んじゃうよー』
『3ヶ月も…ですか』

へらへらと、優しく言うルナに
…ルナに気づかないように、


ごめんね。とありがとうと呟いた

           *


「………、ブレイク……団?」
「えぇ。……最近、レイシンに…ね」



続く

40話 痛み   


「………。」
「シルバー? ねぇシルバーってば!!」

その日の夜、私はシルバーに呼ばれた
呼ばれた。呼ばれた。でも、シルバーはさっきから無言で前を歩き続けてる(無視ってことね)
私は無視と虫と無死が嫌いなんだよ!
いつもなら、服を引っ張ってでもとめた
でも、シルバーから放たれるオーラがそうさせなかった


            *
+シルバー視点+

『……ブレイク団?』
『えぇ。…最近このレイシンに…やってきたのよ』
『で、でも、この地方に“邪気”は無いって……』
『えぇ、少なくともロケット団の様な邪気の塊は無かった』

“ロケット団”その言葉に反応してしまうのはやはり、繋がった血の所為なのだろう
邪気の塊…邪気…悪者……
あ。
前に一度、あの黒い奴……あいつも、まさか……

『…俺、もしかしたら会った事あるかもしれない』
『え……? 神子…ユウナさんは大丈夫だったの!?』

ジョーイさんは、急に慌てて俺に問うた
神子。という言葉に首を傾げたが、ただうなずいた
そしたら、ジョーイさんはほっ、と肩の力を抜く

『……気をつけなさい。奴らは世界の均衡を崩し、世界を我が物としようとしているの
その為には、子供だって利用する
この地方で最近誘拐事件が多発しているのは全てブレイク団の仕業だと警察は踏んでいるわ』

世界の…均衡…バランス…それを崩す。バランスを崩せば、倒れる…壊れる
……奴らはソレを利用して世界中を恐怖に覆い、その恐怖心を煽る様に、利用する…という訳か

『…ユウナさんはきっと知らないわ
だから、教えてあげて。“彼女が世界の均衡を保っている”ということを』
『――――――ッ!?』

ユウナが、世界のバランスを……保っている……?


           *


「ねぇ、シル…バー……?」

シルバーは、人目のつかないところに来て、立ち止まる
けれどユウナの方は向かなかった

(……言えるかよ。ユウナがそんな重大な立場だって知ったら、あいつは絶対に
また背負い込むことになる。
宝来家の跡継、俺の従姉、図鑑所有者、孤独……
これ以上、背負わせて溜まるかよ……
少なくともユウナはアノ人のお陰で………)


「……何、考えてるの。私には言えない事だよね
でも言わなきゃ大変なことになるような事だよね
それでもシルバーは自分の口から言うのは躊躇う事なんだよね
それでも私に言わないといつかヤバイ事になるような事なんだよね」


ユウナの口から紡がれる言葉に疑問は無かった
確定したように紡ぐ言葉だった
その瞳に光は無く、“蒼”から“銀”に変わる前だった
シルバーはその瞳を幾度か見たことがある
けれど、今回は恐ろしくて振り向けなかった

何故、自分の考えていることがわかった?
心を詠むなんて、普通の人間が出来るはず無い
それが怖くて、振り向けなかった
が。

「………仲間って、嘘は無いんだよね?」

その言葉にシルバーは振り向いた
ユウナは笑っていた。光のない瞳で
蒼と銀が入り混じったが、だんだんと銀に変わっていく瞳で

「……それ、お前が言えることかよ?」
「やっとコッチ向いた。
もう一度言うよ。仲間ってのは……」


パシン、と乾いた音が静かな空間に響く
シルバーは、右手でユウナの左の頬を叩いた
たった、それだけの事


「……確かにな、仲間は嘘や隠し事は無い
けど、それをお前が言えるか? 言う権利はあるのか?
俺とお前、どちらの方が隠し事が多い? 嘘が多い?
考えるまでも無い。お前の方が多い
どんなに俺が、俺たちが訊いても“何でもないよ”って泣きそうな顔で笑って
最終的にはあの人にだけ話して!!!!
それも出来なかった時は狂って………
俺たちは心底心配してるのに、お前は……。
……だから、お前は仲間なんかじゃない
嘘をつかないのが仲間なら、お前は……仲間じゃ、無い」


その言葉に、ユウナは無表情で訊いていた
そして、全てを堪える様に笑い


「そ、っか。それはそれで良いんじゃないかな?
だって私が旅に出なかったら少なくとも仲間じゃなかったんだし
たったそれだけの事だよ。ただ私たちが仲間になったのは、ただの運命がぶつかっただけ
神サマのイタズラだよ。ただの。
だから……もう、帰っていいよ、シルバー」

最後に、唇をかみ締めて、笑い、隠すようにシルバーの横を通り過ぎていった


何も言わず、俯いているシルバーは、嗚咽を堪えて泣いていた
判っていた。あんな事を言えば彼女は強がると
「嫌だ」とも「やめてよ」とも言わず
「良いんじゃない?」と強がった
本当は泣きながら否定したいはずだ
なのに彼女はそれすらもしなかった
否、“知らなかった”
我侭を言う術も人に甘える術も人を愛する術も何も知らなかった

突然、ザッ、と地を踏む音がし、涙を拭って彼は前を向く
そこには漆黒のごとく黒い瞳と黒い髪。そして汚らわしい白の肌の男がいた
あの、黒服だった


「なっ……!!」
「おっと、攻撃なんて真似してはいけませんよ。攻撃した直後、貴方はその倍の攻撃を私の部下によって受けますからね」
「………!? やはり、お前…ブレイク団……」

彼の後ろには、たくさんの部下……いや、自分と対して変わらない少年少女が多数いた
中には全てを諦めたような無表情。中にはここまできてもやりたくないと泣きそうな顔
中には傷つけたいと笑う顔があった


「おや、知っていたんですか
……それなら話が早いですね。サカキさんの息子さん」
「なっ、ぜ……それを、知っている……?」
「何故って…そりゃぁ自分たちと同類の者の情報など、当然入ってくるに決まってるでしょう
一人は物質的支配。一人は空間的支配。一人は時間的支配。二人は自然的支配
…まぁどれも、貴方やそのお仲間によって防がれましたけれどね
……私たちの目的はそんなチャチなものではない
世界的支配。とでも言いましょうか……」
「世界……? ……あ」

そういえば、先ほどジョーイさんが

“彼らは世界の均衡を崩し、世界を我が物にしようとしているのよ”

「………。行かせない。この先には絶対に行かせない」
「おや、先ほど貴方は“仲間ではない”と口にしたはずですが……?」
「それでも、行かせない。行くのなら、殺す」
「……ソノ前に、貴方の身体が蜂の巣になりますがね?
…っと私の目的はそんな野蛮なことではありません」

黒服は、淡々と喋っていく
黒服は、漆黒の瞳でシルバーを見ながら続ける



「……彼女を救うために、一役買ってもらいませんか?」
「は…………?」
「もちろん、嫌と言ってもいいですよ。その代わり……私たちは彼女を瀕死にさせてでも掻っ攫います」
「なっ………」

どちらを選んでも、世界は奴らのモノになってしまう
どちらを選んでも、ユウナは傷つく
シルバーが一役買えば、彼女の心が
シルバーが断れば、彼女の身体が
結果、どちらを選んでも悪い結果になる
残された道は唯一つ。
この場で奴を倒すこと
だが、代償にシルバーは傷つく。最悪の場合死に至る

それでも、倒さなければ、いけない

「……俺は、お前を倒す」

男は、ニヤリと嘲笑った(わらった)


それでも、シルバーは退かなかった

続く

41話 ふつうのひと +ユウナ視点+


どれぐらい、走ったんだろう
……あはは、またやっちゃったよ………
私は、力が抜けたようにその場に座り込む
ってか、“我侭を言う事”も“甘え方”も“愛し方”も“素直になる事”も判らない私って
普通の人間じゃないよね……あ。生まれた時から、か
普通の人間になりたかった
でもほんのちょっとだけ特別な人になりたかった
だから、羨ましかった
“普通の日常”から“特別”になった図鑑所有者が
…そりゃぁ、シルバーやブルーさんは、少し違うけど……

世界に数人しか居ない聖人<セイジン>
それは、生まれた時から神の能力を継がれている
神に限らず、天使や悪魔も
その人達は外見は人間でも中身は“神代<ゴットレプリカ>”みたいに呼ばれている
文字通り、神サマの代り。まぁ言うなれば双子のどちらかが風邪引いて、引かなかったほうが弟の代わりを務める
そんな感じ
現実世界にあまり出られない神サマの代りに私たちは現実世界で生きる。ってこと。ただ、現人神とはちょっと違うんだけどね
だから私は、私たちは普通じゃない
私たちが死んで、世界が狂うことだって有り得るのだから……

それにその聖人たちには必ず二つ名が存在する
私は「光闇の神子」
お父さんは「光闇の竜王者」
神崎双子は「時空双子」
ユウトが「時間の覇者」
クウトが「空間の破壊者」

っていう風に、一人ひとりにまたは二人で一つの二つ名がある
代名詞じゃない、二つ名
だから、この地方で二つ名を言えばどんな場所でもきっと通れるでしょうね


「………なんで、普通の人として生まれなかったのかなぁ………」
「“運命のイタズラ”でしょうね」

急に聞こえた、低くい声
アイツの声は低くも高くもとれない声
シルバーの声は声変わりし始めた少し低い声
どちらでもない……
じゃぁ、ダレ?

「……あんたは………、確か……」
「覚えててくれましたか。えぇ、以前貴方を襲った者です」
「……。何のよう? っていうか……シルバー、は?」
「あぁ、あの少年なら………私の部下が倒しました」
「なっ!?」

部下……? 倒したって、まさかシルバー……!?
その男は、笑って

「大丈夫ですよ。“殺しはしません”から」
「………あんたねぇ……無関係な人を巻き込むんじゃないわよ!!!
シルバーは関係ない! 用があるのは私のほうでしょ!?
シルバーが一体、何したって言うの!?」
「……彼は、私を行かせまいと勇敢に滑稽に攻撃した
だから……反撃した。たったそれだけ」

何で…何で、攻撃したのよバカシルバー
“帰っていい”って言ったのに!
私のことなんか放って置いて良かったのに!
何でよ………

「…彼は私を殺してまでも行かせない。と言っておりました
優しい方ですね、あなたとは違う優しさ
罪を犯してまで守り抜こうとする優しさ
心配をかけぬよう嘘を使って巻き込ませないようにする優しさ
……一体どちらが正しいのでしょうかね」

……そんなの、変らない
傷つく相手が変るだけ
だから私は他人が、仲間が傷つくより自分が傷ついたほうが良いと思った
だから嘘ついた。平気じゃないのに大丈夫って言った
そうすることで、少なくとも巻き込む確率は減る
……アイツはその嘘さえ見抜くだろうけど
だから、私はアイツに、縋ってしまう


「………、シルバーが死なないのならいいわ
で? 何の様なの?」
「…ちょっとだけ、“前世”と入れ変ってもらえませんか?
“宝来優奈”」


前世……? 前の、私………?
一体、どういう事……?


「どういう、事よ……」
「対して意味はありませんが……少なくとも前世のあなたの方が意志が強かったらしいですよ」
「い、し………?」

こいつ、何言ってるの?
前世の私は、ここ(現世)にはいないはずでしょ?
頭おかしくなったの……?


「彼女は、心の傷を背負いながら世界を救った
同じくして幼き頃に全てを失った時間の子と共に」


――――――――――――あ。



あー。なるほど。懐かしいね
“約束”まだ果たしてなかったっけ?
そーだそーだ。やっと思い出したよ


「……で? この子に何の用があるの?
今のユウナに、何の用?」
「………。(口調が少々変ってますね……。自信の表れでしょうか…?)」
「……、口調が変るのは、仕方ないことよ
この子は大人しい…ってうより謙遜ちゃんだもの」


でも、この子の方がよっぽど女の子らしいけれどね
そんでもって強がり
……私は、泣き虫だからね
周りに頼ってしまうってのは一緒かもしれないけど


「……まぁこの私と、この子との違いを見たかっただけなんでしょう?
なら、もう戻るわ」
「…………好きにすればいい」


……大丈夫だよ。あんたなら
今の私より強くなれるからね――――





「…………、それじゃぁ。改めて目的を…教えて」



続く

42話 世界的支配

「……貴方の力をかりて、世界を支配する
というのが“当初”の目的でしたが…方針が変りました
貴方と時空双子の力を借り、世界をわがブレイク団のものとします
……そういえば、まだ名を名乗ってませんでしたね
私の名は……クロイ<黒射>。と申します」

黒射……黒を射る……クロイ……
真っ黒……

「……ふーん、じゃぁクロイさん
どうして私とあの双子が対象なの?」
「……貴方やあの双子が後を継いだ時、現在の頭首はその能力は完全なるものではなくなるからですよ」
「………そう。でも、私がそれに協力するわけにはいかないのよ
私の使命は“この世に潜む悪を倒す”事
そんな私が悪者に協力するなんて外道なこと、出来ないよ
……無理やりにでもさせるんなら……
私を倒してからにしな!!!!」

その声に応えるように、ユウナの腰に付けてあるモンスターボールからは、彼女の“家族”たちが出てきた
“意思繋<インテーションティース>”
それが、彼女の能力
ポケモンと自分の意思を繋ぐ事により、そのポケモンは普段よりも能力は増幅する
あるいは素早さのみがあがったり、力量が上がったりする

「……いいでしょう」


            *


ソノ頃、シルバーは既にボロボロの状態だった

「ッ、くそっ………」
「大丈夫ッスかぁ? そんなボロボロになって…
っつか、ニューラ一匹で俺たちに挑むとか、バカか? お前
今頃、クロイさんは……お前の大事な“従姉さん(ねえさん)”と交渉中かもねぇ?」

倒れ、息の荒いシルバーに声をかけたのはとある少年の口調と似た少年だった
だが、その言葉に優しさは含まれていなかった
身体に鞭を打つようにシルバーは全精力を持って立ち上がろうとする
だが、その様子をみていた少年は彼の前髪を持ち、持ち上げた

「ッ………!?」
「ったく、楽になっちゃえよシルバーちゃん
別に俺らはお前を殺したくねぇんだ
……だから、楽に死んでおくれよ」
「……断るッ………!!!!」
「…………なら、俺が殺してやるか」

少年は、前髪を掴んでいない反対の手を握り、シルバーの顔に拳を向けようとした
その瞬間


「“ツルの鞭”!!!!」


何処からか延びて来たツルが、拳を握った腕に絡まり、動きを止めた
シルバーはその声を主を知っていた


「………れっ、ど……さ、ん……」
「……お前、俺の仲間に何やってんだ?
……んでもって、俺のユウナは何処にいる?」

黒い髪、赤い瞳…
表情は笑っていたが、瞳は笑っていなかった
明らかに、怒っている
……レッドは

「……離してくれませんかねぇ? このツル」
「断る。お前こそその手を離せ
……じゃないと、俺のフッシーの“葉っぱカッター”がお前を切り刻むぜ?」
「………チッ」


やはり自分の身体が傷つくのが嫌だったのだろう、少年はしぶしぶソノ手を離した
地面に直撃しかけたシルバーは、フッシーのツルによってそれは逃れた
これ以上怪我させれば、義姉さんの報復が来るだろう


「さっさと退け。俺は容赦しないぜ?」
「………てめぇら、ここは一旦退くぞ
……クロイさんは、奥にいる」
「そうかい。ありがとな」


そうして、子供たちはいなくなった
緊張が解けたのか、シルバーはぐらり、と気を失って倒れた

「………無理しすぎなんだよなぁ、お前ら従姉弟は
とりあえず、休んでろ。フッシー頼んだぜ」

こくん、とフッシーはうなずき、レッドは奥へと走っていった



            *



「…クロイさん、もう勝負はつきましたよ……
いいか、げん……諦めたら、どうです……?」
「……まだですよ」
「こんの、根性悪男が!!!!!!」


確かに、勝敗は明らかにユウナが勝っている
というより、クロイのポケモンは全滅した
けれどクロイは引き下がらない
その時、クロイは何か気づいたように言う


「貴方のその能力は、精神力を使うのですね」
「っ、それが……どうしたの?」
「………貴方と私、どちらの方が体力が残っていると思いますか…?」


ユウナは既に肩で息をしている状態で
対するクロイはまだ涼しい顔をしていた

「……そんな、の関係……ない……でしょ……」

そう言った時、ユウナは立ちくらみを覚え、そのまま倒れそうになった
だが、地面の感触ではなく、ユウナが一番好きで一番安心できる
温もりの感触だった
ユウナは顔を上げると、そこには……


「……なっ、レッド……!?」
「意思繋ぎは体力を使うんだよ。って言ったのはどこの俺の嫁ですかねー」
「………五月蝿い」
「まぁいいや。クロイ…だっけ? お前の部下はとっくに退いたぜ
…だから、このレッド様にやられるまえにお前もちゃちゃっと退けよ」

レッドは極めて笑顔でクロイに話しかける

「………………仕方ないですね
まぁいいです。……いずれ、私は貴方を手に入れますから」
「…………。」

             *



「……ってことで。俺は行くな
二人とも無理するなよ」
「「はーい」」


レッドはポケセンで二人の怪我の手当てをしてから、二人と別れた
心なしか、ユウナの顔は残念そうだったのは言うまでも無い


「……あの、シルバー……ごめん」
「いや、俺も………すまなかった」
「……あの、さ、これからも一緒に……旅、できる……?」
「……………あぁ」


続く

43話 Secret

―次の日、二人はこの街を出ようと思ったが、レッドの計らいで二人は今日一日外に出るな。とジョーイさんに言われた
元々一つ所にあまり留まりたくない二人だったため、膨れっ面としかめっ面のまま昼になってしまった

「……暇」
「知るか。…俺もだが」
「…………、あ、そうだ」

ユウナは何かひらめいたようにシルバーの顔を見る
シルバーは首を傾げるが、脳内には嫌な選択肢が浮かんでいた

「……私の秘密、話そうかな。こんなことになっちゃったんだし」
「……いいのか? ユウナはそれで……」
「良いよ。……その代わり、シルバーも危険に関わってしまうかもしれない
最悪の場合、人が死ぬ所を見てしまうかもしれない
…もしかしたら、シルバーは死んでしまうかもしれない
ただ、関わってしまった場合、こんな傷では済まないと思ってて
……それでも、一緒に旅してくれる?」

ユウナは、シルバーの頭に巻かれている包帯を見ながら、シルバーの瞳を見ながら訊く
そんなの……、と呟きシルバーは


「そんなの、元々俺は危険に関わったんだ。今更そんなこと訊くまでもないだろう
それに俺は昨日言った筈だ
……一緒に行く。地獄の果てだって、お前に付いて行く」
「………ありがとう
…じゃぁ、まず宝来家…神に関する人達の事について説明するよ
私たちは外見はなんら変らない人間
でも中身は“ニセモノの神サマ”まぁ“神代”と呼ばれてるんだけどね
だから私達は神サマの能力を使える」


ユウナは陰りのある表情で話す
ニセモノの神。つまり中身は普通の人間ではない
そのことが気に入らないのだろう
……そういえば、去年の七夕の短冊に
「普通の人になりたい」って書いてあったっけ……


「そんでもって、私達が死んだら世界になんらかの支障が出る
私の場合、全人類の心が狂うわ」
「……知ってたのか…? ユウナが死ぬことによって、世界の均衡が崩れるってこと……」

シルバーは驚きながらそう言うと、ユウナも驚いてシルバーを見た
きっとお互いがお互いに知らないと思っていたのだろう


「…なら、話し早いね。あいつ等はそれを利用して世界を手に入れようとしている
もし、レッドがこなかったら……あっさり捕まってたかもね、私
ま、だから巻き込みたくなかった
私達が旅に出てから着かれている事は何となく判ってた
……まぁ、イレスシティで“見つかった”時に確定できたことなんだけどね……」


はぁ、と溜息をつきながら、髪を耳にかける
そういえば、ユウナがこんなに自分のことを話したのは…、恐らく初めてのことだろう
そんな些細なことが、シルバーには少し嬉しかった


「………こんなことしてる間にも、どこかで私達の情報が漏れているかもしれないから早く出たかったんだけどなぁ……
特に、あの2人に事情説明しないと……
あと、ノチウにいる銀羽の所にも……」
「銀羽?」
「うん。海の神と願星…ルギアとジラーチの能力を継ぐ神の四家の一つよ
あとシンオウにももう一つあったんだけど…そっちは多分理解済みだろうから……」
「多いな……」
「でしょ? なんでも大昔、神サマ達とミュウが決めたことなんだってさ」

ふーん。とシルバーは興味なさそうに答えながら席を立ち、自販機へと向かう
もちろん、興味が無い訳ではなく、子供のように目をキラキラさせて答えるのが恥ずかしいだけだったりする

「シルバー! 私ミックスオレ!」
「はいはい、っと」


……まぁ、一先ず一件落着。ってことかな?

           *

さて、レッドはソノ頃―――

「……さてと、俺はユウナとは別ルートで調べますとしますか
とりあえずこっちは人脈を使って……。もしもし、グリーン?」
《なんだ?》
「あのさー最強のジムリーダーさんとオーキド博士にちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだ
“ブレイク団”について、調べてもらえないか…?」
《ブレイク団? ………もしかしてレイシンで何かあったのか?》

よしよし、食いついてきた
まぁ何かあったってのは本当のことだから、全部話すか
そのほうが受け入れてくれそうだし

「あぁ、実は昨日、そういつらにシルバーと俺のユウナが襲われていたんだ
クロイ……っていう幹部らしい奴に」
《なっ………。判ったこっちも人脈を使って調べてみる
何かわかったらすぐ電話するからな》
「あぁ。よろしく。……あと気をつけろよ」

声は聞こえなかったが、多分うなずいたんだと思う
俺はポケギアの通話終了ボタンを押してまた歩き出す
……多分、俺も危険に関わった身だから追われているだろう
でもそんな危険、俺の危険の内に入らない
俺は、ユウナを救うためなら何だってやってやるさ

―なんたって、俺はユウナの婿だからな


            *



「ふぅ、私が出る幕じゃなくて良かった。ね、サタン」
「プゥ!」

私はサタン(フワライド)に捕まりながらサタンに言う
私はサタンの言葉は理解できないけど、うなずいてくれたのはわかった

「………でも、まだこれはほんの序章よ神子さん
あなたの言うとおり、最悪の状況も無きにしも非ず。だからね」

でも多分、アノ子ならやってくれると思う




―そう、ここからが本当の物語の幕開けなのかもしれない


続く