86話 時の利 ( No.153 )
日時: 2010/12/16 20:29
名前: 天月 ID:aaVMMjcQ

86話 時の利


―その瞳あらば、確実な未来が見通せ、真実の過去が見渡せるであろう―
そのチカラを持つ者が望む限り、その能力は無限なのだ

かつて、そのチカラで死を視てしまった少年は、チカラを嘆いた
視たくもない。だがチカラは彼から離れることは無い。永久に、永遠に
たとえ、彼が死を迎えたとしても、そのチカラから逃れることは出来ない


(……本当の死は、俺たちには無いから)

だが、そのチカラは今の彼には簡単に制御が出来ている
未来も、過去も、現在も。彼が望まない限り、視える事は無い

(…だから、今も、視ない)

これは、勝負なのだから。




「レイド、“瞑想”」

レイドと呼ばれたエルレイドにユウトは指示をする。レイドはその場ですっ、と目を閉じた
一瞬、レイドの身体が淡く光り、レイドは再び目をあけ、構える。たとえるならば、侍の、武者の、武将の如く


一方、クウトが出したのはギャロップのロップであった
炎のたてがみをゆらゆらなびかせ、主人同様飄々といった感じで立っていた

「―ロップ、気、つけろよ?」
『判ってる。俺だって……落ち着くときゃ、落ち着くよ』
「そうだといいな。…ロップ、“火炎車”」

すっ、と指をさし、クウトは指示を下す。ロップはソレに従い、炎を全身に纏いながら、高速でレイドに近づいていった
―ロップの炎がレイドに触れる直前、凛とした声が響く

「“辻斬り”」

ヒュ、と風の音がした
レイドの姿は見えず、ロップはキョロキョロと周りを見る。その間、自分の身体は傷つけられていく
相手が見えないもどかしさと、傷つけられる痛みで、ロップの怒りが次々と積み重なっていく
ヤバイ、と思いクウトはすぐ指示を出した

「“火炎放射”!!!」

主人の指示で怒りが沈み、ロップはその馬口から周りを熱するほどの炎を吐き出した
これならレイドも当たるだろう、とクウトは考えた上での指示だった
―案の定、レイドは炎に当たり、ユウトの下へと戻った

「あつい……」
『そんな事言ってる場合ですか!?』
「だって、熱いもんは熱いんだもの…。まぁいいや、こんなうざったい熱、さっさと冷ましましょうか。レイド、“あまごい”」

熱を冷ます、と言って、ユウトはレイドに雨を降らせ、本当の意味で熱を冷ました
炎がまだ残っていたため、一気に蒸発してしまった炎が白い煙がフィールドに広がっていく
もちろん、炎と熱を消すためだけに雨を降らせたわけではない。7割がそれなのだが。…残りの3割は、相手にあった
―ギャロップの外側のほとんどは炎。雨が降るイコール、身体の炎が消える、つまりは……

「弱っちゃうよねぇ」
『……怖いですよ。まぁ…いい作戦ではありますが』
「たとえ兄貴だからって、容赦しないよー」
(……いつものことでは……)

レイドはあえて突っ込まず、再び構える
対して、ロップは炎が消えかかって弱っているため、ぜいぜい、と息を荒くしていた
クウトは見ていられなくなり、ロップをボールへと戻す。そして次に出したのは……

「いけ、クライ!!」
(ライボルトかー…)

クライは電気タイプ、そして今現在の天候は雨……
ユウトは、「アレ」がくるだろうな、と今より少し集中してみた

「クライ、“充電”」
「(やっぱり)…レイド」
「っしゃ、いけクライ!!“雷”!!!」

充電し終わった途端にクウトは指示をした。雨雲は雷雲に変わり、そして……
レイドの頭上に落ちた


                はずだった


「なっ!?」
「ざんねーん。レイド、その雷を……地面に、打ちつけて消滅させちゃって」
『御意』

レイドは刃のような腕をあげ、雷を防いでいた。…“念力”で
ユウトの指示どおり、レイドは腕を勢いよく振り下げたのと同時に、念力で留まらせていた雷も地面へ打ち付けられ、吸収され消えていった

「ッ……。こんな使い方って……」
「あるんだよねぇ、それが。レイド“サイコカッター”」

冷たく言い放ち、ユウトはトドメと言わんばかりに指示を放った
エルレイドは両の刃を垂直に斬り、真空波…ならぬ、念力の刃をクライへと飛ばした

「クライ、よけろ!!」
「レイド“サイコカッター”」

クライはギリギリ避けるものの、レイドは再び同じ技を繰り出してきた
クライの体力がもつか、それが勝敗の境界線であった


   ―その瞳に未来視えなくとも、未来を創りだす頭脳があるならば……―
            (俺は、負けないよ)