85話 試合前、彼らは何を思う ( No.142 )
日時: 2010/11/21 17:10
名前: 天月 ID:fK5Pqtp6

《さぁ、やってまいりました決勝戦!!! 今回の選手は、シンオウ地方からやってきた双子対決!
その兄弟愛に傷が入らなければいいがー!?》

「「あるか!!!!!!!! 兄弟愛なんてもん!!!」」
(((ないのか……)))

思いがけない司会の説明に双子揃って反対し、ユウナ、レッド、シルバーは同じことを思いながら、心の中で溜息をついた

「ユウナとシルバーは一回負けてるんだっけ?」
「「言わないで(ください)。傷(つく/つきます)……プライドが」」
「う、ごめんごめん」

申し訳なさそうにレッドは言う。あの時平気面していた2人は、じつは結構実力的なプライドで傷ついていたのだ
気を持ち直して、ユウナは2人に問う

「どっちが勝つと思う?」
「んー…どっちだろーなぁ…」
「俺は……ユウトかな」

レッドは2人の実力を知らないため、曖昧な答え
一方シルバーは実体験をしたためか、あるいはオーダイルを倒したのがユウトのエーフィだったのか、ユウトに一票した
そっかー、とユウナは流すように言う。ユウナはどちらにも票を入れなかった
“あの時はあの時。今は今”が彼女の本音であった

「ちなみにさ、私とレッドのとき、どっちが勝つと思った?」
「え…っと……。レッドさん…?」
「ですよねー」

そりゃそうだ。とユウナは思う。自分は名無しのトレーナーで相手はチャンピオンなのだから(ユウナは名無しというわけではないが)、チャンピオンに票を入れるのは当たり前だと
それで、引き分けならば、まあ…一応、満足だ
まだ、時間は残っているのだから、その間に勝てればいい話ではあるから


「…でもさ、色々、大丈夫なのか?」
「なにが?」
「ほら…もし、どっちかが勝ったらさ、どっちかがココのチャンピオンになるんだろ?
…それで、クレームとか、批判とかそういうの…とか…」

レッドもそれ以上言いたくないのか、最後のほうは空気と同化するように話した
2人はそれに今気付いたのか、難しい顔をする
イレスシティで起こった、レイラの事を考えると…
レッドの言い分も、まったく可能性がない。というか、9割そうなるだろう
それに2人はシンオウ地方の者。チャンピオンになるのは、難しいのもまた事実

できるならば、ユウナは2人にそんなことを背負わせたくなかった
言葉の暴力は、拳よりも辛いものだと知っているから
そんなとき、ユウナの脳裏にある人物が思い浮かんだ


「お父さん…」
「え? ―――――あ! ユウリさんが認めなかったら…」
「うん。2人は…言い方おかしいけど、チャンピオンにならずに済むよ!」
「それか、ユウリさんがどちらかとバトルして、ボロ負けさせたら、当然無理だろうからな」

シルバーの言葉に、2人は頷く
先ほどの心配が一気に消え去った。そして3人は改めて、決勝戦を目に焼き付ける


(皆も、こんな風に、俺とグリーンの試合を見ていたんだろうな…
あんな大勢に、俺の存在を焼き付けられた。…なんか、びっくりだな)


フィールドに目を向けながら、レッドの記憶は、4年前に遡っていた
今と同じような舞台で、ライバルと戦ったときの記憶を、甦らせていた


                *

同じころ、双子はフィールドの対岸に立っていた
クウトは飄々として
ユウトは冷静だった

でも、2人は心の中では、嬉しくて、緊張して。そんな複雑な心境であった
まだ試合が始まらないらしく、クウトはユウトに話しかける

「なんか…実感わかないな」
「そうだね。…兄貴と戦えるなんて、あんまりなかったし」
「なー。ずっと、2人一緒だったから」
「こうして、兄さんとバトルすることが出来て」
           「「嬉しいよ」」

最後の最後にはもって、2人はプッ、と吹き出す
話が終わり、いよいよ試合が始まる
騒がしかった場内が、水を打つように静まり返った

静まった場内。響いたスタートの合図で、冷えた会場は一気に熱量を上げる


               《試合開始!!!!》




続く