Re: 光と闇の時空神 ( No.14 ) |
- 日時: 2010/09/06 23:57
- 名前: 天月 ID:
- 11話 火を祀りし街
「「あ」」
二人(正確には4人)がイレスシティに着いたのはほぼ同時だった
「………え、何でここに」 「私がジム制覇しちゃダメなわけ?」 「……………あぁ。なるほどね」 「納得かい!!!」
数十秒して納得したユウトに、クウトは素早くつっこんだ 「何だこいつ等……」とシルバーは内心思っていた
「まさか、二人も?」 「ん? あぁ。一応な」 「………二人一斉に、か?」 「んなわけねぇだろ。俺らはタッグ専用じゃねぇんだから」 「そうか…」
4人はそんな会話をしながら、イレスシティにいつの間にか入っていた 傍から見れば、普通の仲良しの4人組だ 誰も“ライバル同士”とは思っていないだろう そして双子に限っては 誰も“神継ぐ子”とは思ってないだろう
と、その時だった
「ちょっと、“ファイア”!!! 待って!!!」
前方から声がした後、シルバーは何かのポケモンに見事タックルを食らわされ、シルバーは二歩ほど後ずさったが転びはしなかった そのポケモンはブースター。イーブイの進化系の一つでもあるポケモン
「あ、大丈夫ですか!? すいません。アタシのファイアが………」 「……いや。平気だ……」
シルバーは無表情でファイアと呼ばれたブースターを主人に渡す
「………あれ? 貴方まさか、ユウナ様?」 「様って……。そうですけど………?」
“ユウナ様”と呼ばれたユウナは疲れたように言った 様って……。とユウトとクウトは小声で話していたが、シンオウは自分達を特に「様」付けしていなかったな…とも言っていた
「え、あ、どうされたんです」 「あのさ、敬語はいいから」
―か。言い切る前にユウナは敬語を拒否した 少女は、「でも……」と戸惑っていたがユウナの少しだけ怒っているような顔に「判りました」と言った後
「それで、どうしたのですか?」 「ハァ………。別に、私達はただジム制覇の旅をし始めただけよ。ねぇ?」 「あぁ…。俺はただの付き添いだがな」
ふいに話を振られたのに関わらずシルバーは何時もの調子で頷いた
「ジム…制覇ですか………」 「そ。この地方でユウナ…っつか宝来家が崇まられてんのか知らねーけど。俺達とユウナはただのトレーナーだぜ?」
クウトは会話に乱入するように言うと、少女はキッと朱色の瞳を釣り上がらせて、言った
「貴方達ねぇ!!! ユウナ様…宝来様がどれほどこの世界の平和を保っているか知らないの!? それに、馬鹿っぽい顔してユウナ様を呼び捨てにしないでよ!!! あんた達はただのトレーナーかもしれないけどユウナ様は由緒あるトレーナーなのよ!? あんた達なんかと一緒にされたら」
「うっせぇんだよ。そうやって自分の地方の令嬢だけ褒めて崇めても、“俺達”神サマは何もしてやんねーよ」
時間が止まったような感覚。その間クウトは「またか」という顔でため息をついていた そう言ったのは、ユウトであった 素人目で見てもユウトはあまり怒らないタイプだろう 第一ユウナとシルバーはそう思っていた そんなユウトが何かを引き金にキレている
「な……俺達って何よ!!」 「俺の兄貴、本気になれば人だって“素手”で殺せるし、俺だって視ようと思えばお前の死ぬ未来も視れちゃうんだよ?」
な………。と少女は後ずさる。目の前の少年は あまりに場違いであまりに恐ろしい瞳を向けていたのだから
「“世界”ってね、時間と空間とで成り立ってるんだよ。知ってた? あぁ、知ってるわけ無いか。さぞかしこの世界は“アルセウス”だけが創った。くらいにしか考えてないんでしょ? それがさ、違うんだよ。本当はね…… “アルセウスとパルキアとディアルガ、ギラティナが世界を創ったんだよ” その時空の能力を受け継いだのが、俺達神崎家。知ってた? だからさ……」
――――そういう侮辱するようなこと、言わないで――――
この未来も過去も視得てしまう能力は嫌い “ともだち”が居ないのだって俺がお坊ちゃまだから でも………俺は俺を生んでくれた母さんや父さん それに、兄貴もディアルガもパルキアも…シェイミも 皆好きだから。 だから、そう卑下されるのは許せない
「………ねぇジムリーダーさん」 「な、なに………?」 「今日、貴方に挑戦を申し込みたいんだけど。良いかな?」
いつ、一体いつこの朱色の瞳の少女がジムリーダーだと判ったのだろうか ただの勘だったのかもしれないがそれは当たっていた
「…………いいわ。貴方が勝ったらさっきの言葉は訂正する。でもアタシが勝ったら…訂正しないから」 「うん。いいよ。………負ける気しないから」
ソノ後、4人は少女…レイラにジムへと案内された
続く
12話 双子の意思
確かに俺はこの能力は嫌いだ 未来も過去も視える能力なんて誰も望んでいない
……それでも、「感謝」はしているんだ―――
「………それじゃぁ、始めましょう?」 「あぁ。――――サン、お願い」
試合はまだ始っていないのに、ユウトはボールからサンを出した サンは一度「フィッ」と鳴くと、戦闘態勢をとる
「これより、ジムリーダー・レイラ対チャレンジャー・ユウトの試合を始めます! 使用ポケモンは3対。どちらか全てが戦闘不能になった場合、試合を終了します ……はじめ!!」
審判の声と同時にレイラはポケモンを出す
「行きなさい、エンカ!!」
レイラは「エンカ(焔華)」と呼ばれたキュウコンを出した
――――
ソノ頃、3人は観戦席で試合を見ていた
「……あの、さ。クウト」 「んー?」 「ユウト、何であんなに怒ったの?」
ただし話の内容は試合ではなかったが ユウナの問いにクウトは一度考え込んで答えがわかったように言い出した
「ユウトはさ、なんつーか……“差別”されるのが嫌いなんだよ だから、ユウナは俺達と同等の立場…のはずなのに、さっきああ言われた事に腹立ったんだと思うぜ」
ま、本当の答えは本人にしかわからないけど とクウトは付け足して言った その話を横で聞いていたシルバーは
「双子なのにお互いの意思が判らないんだな」
と言った 図星をつかれたのか、クウトは髪を掻きながら言う
「アイツ、普段から自分の意思を隠すような奴だから、俺にもよくわかんねーんだよな」 「……双子なのに? 双子ってテレパ(テレパシー)とかつかえ―――――」 「夢の見すぎ…、まぁ俺とユウトにとってテレパシーは“出来てもおかしくない”ことなんだろうけど」
その意味は要するに「俺たちは他の人間には出来ないことができる」という意味であった つまり、「俺たちは普通の人間」ではない。という事になる
「でも、ユウトは心を閉ざしているようには見えないけど……」 「そうだけど……。でもアイツ、人に悩みを言えるような奴じゃないから、多分その影響なんだろうなぁ………」
はぁ、とやや自棄気味にクウトはため息をつき、ユウトのほうを見ていた ユウナは腑に落ちない様子だったがこれ以上人の詮索をしない方がいい。と思ったのか、これ以上は追求しなかった
気づけば、ユウトはレイラの手持ちを残り一匹まで追い詰めていた それも、サン一匹で
――――
「…残り一匹。でしょ?」 「………強いんだね、キミ。さっきのバカと顔そっくりだけど、もしかしてお兄さん?」 「いや、逆。それに兄貴はバカだけどそこまでバカじゃないなら」
え、弟? とでも言いたげなレイラに少々(いやかなり)呆れたようにユウトは言葉を投げ出した
「……まぁでも、これで終わらせてあげるわ ファイア!!!」
レイラはボールから先ほどのブースターを出す ♂のようで、ファイアはやる気満々のようだった
「アタシは負けないからね!」 「俺も、負ける気にはならないし、負ける気しない」
続く
13話 父親雑談
ピンポーン、と家(というか豪邸)のインターフォンがなる 入ってきたのは、蒼い瞳、黒い髪の男性であった
「久しぶり。優李」 「久しぶりだねぇ、昌斗」
迎えたのは家主であるユウナの父親、優李だった 二人は知り合い…というか親友同士の仲らしくよく逢っているようだった 客室に連れて行き、二人は早速雑談を開始した
「そういえば、あの双子ちゃんがココにやって来たんだってね」 「双子ちゃんて……。そういう君も、娘さんがやっと戻ってきたらしいじゃないか」 「あぁ。可愛い従弟を引っ張ってね」 「あー……。アノ子か…。そういえばユウナちゃんはその従弟を探しに旅に出たんだってね」 「あぁ。拉致られた。って知った時ユウナ『絶対にシルバーを助けに行く!』って言ってたよ」 「ハハ、そして見事に見つけた。ってわけか」
そう言い、昌斗は紅茶を口に含む。砂糖を微塵も入れてない甘くない紅茶だったが 対して、優李の紅茶は甘い紅茶であった
「……世界も随分とまた極端に変わったよね」 「あぁ。俺もこうして“生きて”二人の成長を見届けられる」 「僕も、アノ子が傷つかなくて本当、良かったよ」 「………ただ、アイツは、ユウトは未だに苦労してる様だけど」
何でだろうな。と言って軽くため息をつく まぁねー。とのんびりと優李は腕を組んで考える
「ま。ユウト君はそういう子なんだよ」 「そうかもしれないけど、何もユウトじゃなくっても……」 「そりゃ、ね。どうして息子が“違う世界”になったのに“苦労体質”は継続されちゃってるからね 挙句の果てには、“自分の能力”も嫌ってるし」 「時視がまだ制御できなかった時、周りの人の死ぬまでの未来とか、そういうのが視える。って怖がってたから、それがトラウマなんだと思う」
はぁ。と次は盛大にため息をつく 「苦労体質なのは、案外お前だったり」と優李は心のうちで思っていた
「まぁでも、ユウナに逢えたんだから、“光のチカラ”でユウト君も少しは救われると思うよ? 前もそうだったわけだし」 「前は…ユウトがユウナちゃんを救ったんだろ?」 「うん。でもソノ後二人はお互いを救いあって生きてきたんだって」
そこで、間が空き
「――――幸せ。に出逢うのが今回は遅かっただけ、じゃないかな?」
と優李は言う。その言葉に昌斗は笑って
「そうだな」
と言った
「うん。さて、僕も特訓開始しないと。いつ僕の前に現れるか判らないし …手伝ってくれる? 元シンオウ四天王君?」 「はいはい。いいですよ。11歳でチャンピオンになって一度も破られていないチャンピオン」
そういって、二人は客室を出て、特訓場へと向かう
「龍牙(リュウガ)、お願い」 優李はカイリューのリュウガを
「いけ、爽剣(ソウキ)」 昌斗はエルレイドのソウキを出した
「あれ、ハクはお休み? ……それとも、手を抜いてるの? 龍王が?」 「そういう君も、アサヒ(エーフィ)じゃないじゃないか。エスパーを極めた者なのに」 「……ふん、どうせ……
「これから本気を出す。」に決まってるんだろ?」
二人はまるで子供のような笑みを浮かべ
「勝てるの? 僕に」 (勝てるのー? ユウトが私に)
「勝ってやるよ。ついでにその鼻っぱし折る」 (勝ってやる。って言ってるだろーが)
それは、まるで。本当の子供のようだった
「僕が勝っても文句なしだよ?」 (どっちが勝っても、文句言わないでよ?)
「当たり前」 (んな事、判ってるっつの)
それは、かつての“二人”を見ているようだった
「んじゃ、「始めますか」」 (それじゃ、(始めるか!!!!))
それは、まるで。前の“二人”と同じであった。
続く
14話 時間の思い
ドサッ、とファイアの身体が地面に倒れる
「あ…………」
それを信じられないかのように、レイラは地面に視座を着く そこに、ユウトはゆっくりと近づく レイラは顔を上げると、ほぼ無表情のユウトが自分を見下していた
その顔は、哀しんでいるようにも見える無表情だった レイラはその顔がとてつもなく恐ろしく思い、怯えた色を瞳に宿していた
「…………ごめん、」
―恐がらせて。 と言ってユウトはスッと手を伸ばす
「え………?」 「今、恐がってたでしょ? だからごめん」 「……………怒ってないの?」
そう訊かれ、ユウトはふるふると首を横に振って
「怒ってないよ。…ただ俺は、ユウナが嫌そうな顔してたから あと、兄貴をバカにされたから、だよ」 「………。」
それを「怒る」というのでは。とレイラは思ったが 目の前で手を差し伸べている少年の顔は、酷く悲しそうな顔をしていたので何もいえなかった レイラはフッと笑い、ユウトの手をとって立ち上がった
「……ごめんなさい。訂正するわ さっきはあんな事言って。貴方達だって神家のひとつだものね …………ごめんなさい」 「いいって、気にしてないよ」 「…ありがとう、あ。あとこれ、“ブレイブバッチ”よ」
レイラは、銅(あか)色の炎を模したバッチを授けた ユウトはそのバッチをとり、ありがと。と言った
*
―ポケモンセンター
「なぁ、ユウト」 「んー…?」 「お前さ、最後レイラとなんの話してたんだ?」 「んー……………忘れた」 「おいこら」
嘘だろ。とツッコミを入れるクウトを無視して、ユウトは規則的な寝息を立てた
「ちょ、寝るの早いだろ……… ……ま、疲れたんだな。お前、怒ると大抵疲れる体質だし …………お疲れさん」
クウトはユウトの髪を一撫でして自分も眠りに着いた
「………悪かったな、怒ると疲れる体質で」
とユウトが呟いたのは誰も知らなかった
続く
15話 狂夢想
狂って狂って狂って狂いきれ。それが『俺』に出来なくて“俺”に託されたこと
― 生きたいのなら、狂え ―
「ッ!?」
思わずベッドから上半身を起き上がらせた 首やら額には気味悪い冷や汗、だが手はカサカサに乾いていた
「……俺に、出来なくて…俺に託された…こと………?」
まて、日本語おかしい。『俺』は一人……一人? まてまてまてまてまてまて。 俺は、一人、ひとり、独り………? 違う、俺は独りなんかじゃない。違う 俺は昔とは違う。絶対独りなんかじゃない―――
*
「……寝不足か?」 「らしい…………」
盛大な欠伸、あの変な夢のせいでアノ後よく寝れなかった 兄貴は心配して俺の顔をさっきから見ている こういう部分は、兄というか何というか………
「あ、居た!!!」
ポケモンセンターから出ると、昨日みた赤毛が居た 名前は確か……
「シルバー……?」 「そうだ、というかこの前名乗ったはずだが」 「つか。如何したんだよ。ユウナは?」 「…………朝早く、ジムに行ったきり、帰ってこない」
え、今は……あ。13時か……わーお俺たちお寝坊さん♪ ってことは、シルバーも……
「寝坊して、行かなかった?」 「ッ……!! 五月蝿い、とりあえず一緒に探せ」 「何で俺たちが………」 「とある人に殺される。と言ったら?(半分冗談、半分本気)」 「「やります」」
とある人って……気になるけど、シルバーの顔みたら何か冗談に聞こえなかった それに、なんか胸騒ぎする……し
「え? ユウナ様…ならアタシと勝負した後、出て行ったわよ?」 「そっか……ドコに行くかは言ってないのか?」 「えぇ」
なんか、シルバーの周りに「ヤバイ」オーラが出てる気がするのは気のせいだろうか それに、滅茶苦茶焦ってる
「………………あ!!!!!」 「!? ど、どうした……?」 「いや、俺バカだわ。すぐ見つかる方法あったよ」 「まじか!? そ、それってなんだ…?」
シルバーに問い詰められて、兄貴は後ずさりながら、俺を指差す ……俺?
「ゆ、ユウトの時視でこの街の未来を視れば…いいんじゃないか?」 「あー、なるほどね。でも出来るか判んないから期待するなよ」
一応釘をさしておいた後、俺は未来に集中させて時を視た
―白い……白衣の男が……3人。の後ろに黒い奴一人…… 囲まれてるのは……………ユウナ 場所は、外れの森……か
「……視えた。ユウナは、この街の外れの森にいる」 「よし今すぐ行くぞ、ヤミカラス!」 「フライ」 「ホーク!」
俺はフライゴンのフライ、兄貴はムクホークのホークをだして、俺の視た森へ向かっていった
続く
16話 絶望の表情(カオ)
ユウナが白衣の男と黒服に囲まれたのはついさっきであった レイラとのバトルを終え、ジムを後にした後散歩手柄に森に行ったのが間違いだった 自分の“何”を狙ってか、研究員のような男3人。そしてそれを従えているような黒服、彼女にしては忌まわしく、同時に哀しい存在に似ている服であった
「…………。」 「どうした? 反抗しないのか? まぁ大人しい方がこちらといては好都合だけどな」
と、白衣の男の一人が悪者特有の笑みを浮かべてそう言った、吐き気のするような笑みで ユウナは3人を睨みつけることもせず、ただただ追い詰められていた その表情は無表情に見えて全てに絶望したような顔だった もちろん、ボールに収まっている自分の家族達からは“声”が聞こえてくる。だが回復もしていないのにバトルに出すなんて非常識で非情すぎる それに、何故だがきっと助けが来ると思っていたから、ユウナはボールに手を掛けなかった
「ま、いいだろう。……コイル、“でんじ… 「ニューラ、“凍える風”!!!!」な!?」
コイルに指示をしようとした途中、声変わりをしはじめた少年の指示でコイルは「こおり」状態になった まるで、それはユウナの望み通りに助けが来た様に
「殺されたくなかったら、ユウナを返せ。今すぐに」
と、ニューラを指示したシルバーは純粋な銀の瞳で男達を一瞥しながら言った その後ろには、双子の姿が
「……言うこと聞かないと、」 「時空の果てで木っ端微塵にさせるぜ?」
双子は、まるで二人で一つの言葉を言うように蒼の瞳で男達をにらみつけた、否挑発していた
「ふっ、騎士の登場…というのは本当にあるんですねぇ」
黒服の男が皮肉をこめたようにシルバー達3人を見た それも品定めするような目で
「お前がユウナを……?」 「えぇ、ですがこれは私のみの行動ではなく、上からの命令、ですけれど」
シルバーの問いに黒服は素直に答える その異常なまでの素直さにユウトは疑念を抱いていた それはシルバーとクウトも同じで
「……口封じ、ってわけか。ウィン“火炎放射”!!!」
その理由に気づいたのか、ユウトは黒服に向かってウィンディに指示を出した 黒服は避ける事無く炎を浴び、黒服は焼けてコートのように剥がれ落ちた。実際コートだったのだが
コートを脱いだ男は、下の服も黒く、髪も瞳も闇のように黒かった それに反射するように肌は白い。汚れた白であったが
「まったく……随分直接的ですね、“遠慮”を知らないんですか? 神崎悠斗」 「なっ…………!?」
初対面である男の口から名前はともかく本名を出されたことに、ユウトは目を見開き、男を見る ユウトはその瞬間得体の知れない感覚に襲われる それは「恐怖」。無意識に身体が震え、足がガクガクと揺れる
「ユウト…………?!!」
クウトはユウトの変化に驚きそして思い出す “彼は恐怖心が人一倍強い”ことを やりたくない。と思い軽く舌打ちした後クウトはボールからサーナイトをだし、催眠術でユウトを眠らせた 今はこうするしかなかった
再び黒服の男と対峙すると、男はフッと笑い
「今回は失敗ですね。思わぬヒーローのお出ましに ……今回は見逃しますが、次は本気で行きますよ?」
その残酷な笑みにシルバーとクウトは背筋に悪寒を覚えた コイツが本気を出したら、太刀打ちできないんじゃないか、と思うほどに
男はテレポートかなんかで姿を消した。白衣の男と共に その間、樹に凭れ掛かっていたユウナの元にシルバーが駆け寄る
「大丈夫か?」 「………うん、平気。ありがとねシルバー、ユウト、クウト」 「……何故、反撃しなかった? ユウナなら返り討ちにすることぐらい、容易いだろ……」 「……………ジムバトルのあとだった。ってことも理由の一つなんだけど ………絶望、しちゃってさ」
そう言って見せたユウナの表情は本当に絶望しているような陰りを見せた表情だった
困惑しているシルバーに、弱く笑みを見せてからユウナは
「汚れの無い、人間なんて居ないんだよ 汚れていない世界も無いんだよ」
と言った
続く
17話 心の闇
時刻は、空に星が瞬きはじめた夜。今日の月は嘲笑う形に似た三日月
「汚れの無い人間も、世界も無いって……どういうこと?」 「そのまんまの意味だよ。本当に綺麗な人間も世界も無い。そう、仮初の白。のようにね」
ユウトの質問に、ユウナは歌うように答える 仮初の白。それは白い服を洗濯して綺麗になったように見えても、本当は汚れている。という意味だった
「……ごめんね、私が光に近い所為だもんね。こんんなこと言っちゃうの」 「間違ったことは言ってないよ。俺もそう思ってた事あるから」 「そうだな…、俺も思ったことは何度かある」
ユウトに倣うように、シルバーも頷いて言う クウトだけは、何も言わなかった そっか。とだけユウナは言って空を仰いだ
前に誰かが自分のことを「夜空」と称した人がいた 誰かはわからない。でもその人は今の自分と酷く似ていた 愛されることが足りないまま育ってしまった自分と似ていたのだった その人は自分にとって太陽のような人だった。自分を闇から連れ出してくれる。そんな人だった気がする 最も、ユウナはその人が誰なのかももう忘れていたのだが それに、不思議なことに、自分が生まれる前に逢った。という事は覚えていた。こんなことあるはずが無いのに
「……でも、本当に汚れた人間も多くは無いだろ?」
というクウトの言葉にユウナは我に代える 多くは無い。逆に言えば少なくも無い。つまり居るけどそんなに居ない。ということだった
「少なくとも、俺たちは、な」 「…自意識過剰」 「うっせ!」 「五月蝿いのは兄貴だろ? …まぁ、兄貴の言うことも間違ってないけどさ」
ユウトはそう言いながら、とても安心したような笑みを浮かべていた まるで、その言葉を待っていたかのように
「そうだな。確かにこの世界にはユウナの言う汚れた人間ばかりかもしれない でも、汚れきった人間はそう居ない クウトの言うとおり、俺たちは……大丈夫、だろ?」 「シルバー……」
シルバーは少し負い目を感じるような表情で言う それはきっと、かつて自分が背負っていた過去と罪からくるのだろう それでも、彼は精一杯言ってくれた。成長の、証
「そうだね。私が逢って来た人の殆どは、そんな人達じゃなかった 心を、闇に染め上げては居なかった 大丈夫だよね。またあいつ等がやって来ても…私達なら、起こせるよね? 奇跡」 「あぁ。大丈夫だ。ココにいる間、俺がユウナを……護る、から」 「ありがと、シルバー」
いつの間にか二人の世界に入っていて着いていけなくなった双子は、完全に蚊帳の外だった
「…どうする?」 「んー……もう行くか?」 「…そだね」 「ユウナ、シルバー。俺たちもう行くから、また逢う時はよろしくな!!!」 「あ、うん!! またねユウト、クウト!!!」
そして、双子の姿が完全に見えなくなった後、シルバーは一つの質問を問いかけた
「そういえばさ、さっきアイツに刃向えなかった理由、もう一つあるんだろ」
疑問系ではなく、確定しているように問う ユウナはあはは、と空笑いをして頷いた
「アイツの姿見たとき、シルバーも同じ事思ったんでしょ?」 「あぁ…。酷く、奴らに似ていた」
シルバーは一旦間を置いて
「「ロケット団」」
とユウナと同時にその言葉を放った ユウナが刃向えなかった理由。それはあの黒服が、ロケット団の服に似ていたからであった 敵。そのカテゴリに入ってはいるものの、ユウナには多少の戸惑いがあった それは、シルバーがロケット団のボス……サカキの息子で、自分は従姉であるからだ、だから微少ではあるものの、ユウナにも“ロケット団の血”というものが流れていた それはシルバーも同じことで
「…だが、それは似ているだけであってロケット団ではない」 「そうだね…。今回は初対面だったし…次からは、こっちだって大人しくしてる気は無いよ」 「言うと思った……。それじゃ俺たちも行くか」 「うん!」
その声と同時に、ユウナは自分が座っていた岩から飛び降りる。が、バランスを崩し転びかけたところをシルバーが片手で抑えた
「ありがとー」 「……危なっかしい」
続く
18話 憧れ
それは、まだアタシが小さい頃の話 アタシと歳、変わらないのに、すっごく強く見えて……それから、ずっと憧れの存在なんだ
ファイア(イーブイ)と外で散歩していたら、大勢の大人が横を通り過ぎた 何だろう? と思ったから、私はこっそり大人の後を着いて行った その大人たちが見ているのは…ピカチュウ? にしても、小さいピカチュウ……
「あの、どうしたんですか?」 「あー、あのピカチュウ、この街に来たんだってよ んで、果物を落としちまって、また野菜…って感じだと」
あ、じゃぁこの人は被害者。って訳じゃないのか…… もう少し集団をかいくぐって前のほうに来ると そのピカチュウは、なんだか…怯えていた
「ブイッ」 「ファイア…やっぱり、アノ子ちょっと…違うよね?」 「ブイ」
ファイアも頷いてる。でも、言うの恐いな…… アタシはまだ8歳だし、相手は大人だし……… そんな時、
「何、やってるんですか!?」
その声に、一斉に振り向く人(アタシ含めて) その声の主は……
「ユウナ、さん……!?」 「そんなことより、そこに…居ますよね? ポケモン」 「え、えぇ……」 「退けて下さい。……大丈夫? ピカチュウ」
ユウナ…宝来家のユウナ。確か…アタシと同じ歳… 凄い、なぁ……
そのピカチュウは、やっぱり怯えていた それに気づいたユウナさんは、微笑んで、ピカチュウの頭を撫でた
「大丈夫よ。大丈夫……」 「ピ……」 「――――――――そっか、恐かったんだね」
ピ、とそのピカチュウは頷く ユウナさんはそのピカチュウを抱き上げると、キッ、と大人達を見た
「どうして、この子を恐がらせたんですか?」
その声は、怒りを含みながらもすごく冷静な声だった 逆に、その冷静さが恐かった
「だ、って…ですね、コイツ、俺の野菜、やほかの店の果物とか、落としたんですよ?」 「…わざとにですか?」 「いや……わざと、じゃないとは思うけど…」 「この子、住処の森から迷って出てきちゃって、始めてみる人に怯えてて… わざとじゃないのに、追いかけられて…すごく恐がってたんです この子に悪気なんて無かったんですよ、最初から」
アタシと同じ歳…のはずなのに、すごく大人に見えた これが、“お嬢様”ってやつなのかな……
「ピ、ピカチュ」 「……もう、良いって?」 「ピ。ピッカチュ!!」 「………ありがとう」
多分、ピカチュウは「ありがとう」と言ったんだと思う そのあと、大人たちはピカチュウに謝って、散り散りになった アタシも、家に帰ろうと踵を返す その時、確かにアタシの心に芽生えたのは「憧れ」という気持ちだった
「宝来優奈。ユウナ…様、か……」 「ブイ?」 「アタシね、アノ子の事、憧れちゃったみたい」 「ブイー」 「あはは、もちろん、お母さんも憧れてるよ!」 「ブイッ!!」
『ねぇ、名前…何?』 「私はね、ユウナ。よろしくね、ピカチュウ…じゃなくて、ピル」 『ピル?』 「そ。貴方は私にとって家族なんだから、ピカチュウのままじゃ他人みたいでしょ? ♀だから、ピル」 『可愛い…。ありがとう、ユウナ!』 「ありがとう、これからよろしくね、ピル」 『うん!』 『あーっ、ボクの事忘れてるでしょ、ユウナ!!』 「忘れてないって。あ、この子はルナ。一応♂だよ」 『一応じゃない!! ボクは生粋の♂だよ!!』 『……。あはっ、よろしくね、ルナ!!』 『よろしく、ピル!』 「早速仲良しだねー、二人とも♪」
続く
19話 森
―タイの森
「…ハクタイより、鬱蒼と茂ってる森だな、ココ」 「だね。ニュアンスとしてはジョウトのウバメっぽいかも」 「………良く知ってるな」 「基本中の基本だぞ?」 「…………っるせ」
そう言われ、やれやれ。と言ったふうにユウトは肩をすくめる ……にしても、とユウトは木々で殆ど見えなくなっている空を見上げた なんだか、嫌な予感がする。そんな予感は――――
「………って、ここ、さっきも来た、よな……」
的中した。なんということか、最初の場所に戻ってしまったらしい どんだけ典型的なんだか……とため息をつく しかし、これからどうしたものか。 もう一度迷う…なんてことはしたくない ………あ、アノ子を使えば良いんだ
「サン、出ておいで」 『どうしたんですか? まさか迷った…のですね』 「そ。だからさ、出口まで教えてくれない?」 『……空間使いのクウトが迷ったのですか…』 「うるせー。いちいち一言多い奴だな……」 「ま、いいからさ。夜になる前に出たいんだけど」 『判りました』
サンは頷いて、二人の前を歩いていく クウトは相変わらずブツブツ言っていたが、ユウトは無視し続けた これで大丈夫。そう思っていたが………
「あれー………?」 「……………ザ・予想外」
あろうことか、再び戻ってきてしまった …まさか、エンドレス?と二人は頭の隅で考えてしまった サンもサンで、平静を装ってはいるものの、かなり動揺していた
『……おかしいですね』 「何が?」 『“行けない”んですよ。出口まで まるで、“何かに阻まれているように”』 「…………って、ことは………」
ユウトは、何か閃いたようにクウトのほうへ振り向いた え?俺? という顔をしたが、クウトもユウトの考えていることがわかったらしく なるほどな。と呟いた
「その阻んでる“何か”を壊せば良いんだな」 「そ。んじゃぁサン、その阻まれてる所まで行ってみて?」 『はい』
((……でも、何で……、“俺たちを動かないように”したんだろう………))
続く
20話 空殺し
歩き続けて、サンが何も無い場所で立ち止まる 一見、ただの道に見えるがサンが言うにはココが阻まれている場所だという ユウトはサンにありがとう、と言ってボールに戻した クウトはその阻まれている場所を凝視して、力の弱い場所を探していた(そこを壊す方が体力を温存できるらしい)
「よし、ここだな。ユウト下がってろよ」 「はいはい。別に流れ弾なんてこないと思うけどね」
そうだけど、と言おうと思ったが喉まで出かけた言葉を呑み込んだ クウトは力の一番弱い場所に手を置き、右手に神経を集中させる 空殺し<スペースブレイカー> それは、クウトが空間神パルキアから受け継いだ能力 それはこの世界に存在する物質を力を込めるだけで壊せる。というもので、本気になれば人だって、あるいは世界だって壊せるらしい 最も、一度もやったという記述は無いのだが
パリ、と何も無い場所から亀裂のはいる音がする そしてその音は次々と増えていく パリ、パリパリ、パリパリパリ……… そして、最後にパリン、と心地の良い音がした
「……終わった?」 「あぁ。…にしても、これただの“リフレクター”だったよ」 「“リフレクター”が……?」
リフレクター。それはエスパー技で特殊技の威力を少なくさせる技 人を通れなくするほどの力は無い……はずだ
「…ま、さっさと行こうぜ。もうじき夕方だ」 「そだね。次の町は……ノンノタウンらしいよ」 「ノンノ?」 「花。って意味だって“花香る町”って呼ばれてるらしいよ」 「ふーん…俺らの故郷みたいなところ…かな」
二人の故郷、ソノオタウンも花が綺麗な町だった ノンノ、とついているくらいだからその町も花が綺麗なんだろうと思うが 二人は自分の故郷の花のほうが綺麗だ。と内心思っていた
二人は足早に森の出口まで歩き出した その背中を木の上から見ている人物が居た その人物は、白い髪、翡翠色の瞳をしている少女のようで少年のような体格をしていた その少年はポケギアである人に電話を繋ぐ
「してやられちゃいました。兄のほう…普段は悪そうな頭していますが やるときはやる頭みたいですよ。っていうか意外と頭良かったです …リフレクターというのが判ったくらいですからね」
チッ、と少年は相手に聞こえないように舌打ちする 相手はただ平淡な声で「そうか、引き続き頼む」と言って通話を終了させた
「判ってますよ。“時空双子捕獲”は僕の役目なんですから ………それにしても、彼のほうも失敗したみたい “光闇の神子(みこ)”を盗り逃した…というか自ら退いたみたいですけどね」
時間も残っていないのに。と今は居ない仲間に愚痴を漏らして木から降りた
少しずつ、少しずつ、闇が3人に忍び寄っていく その事に、まだ誰も気づかない
「――――へぇ、“ユウナ”の言ってた双子君がノンノに来るのかー」 《多分ですよ。タイの森で迷ってるかもしれませんから まぁ、来ていたら………どうするんですか? “ソラ”さん》 「んー……とりあえず実力調べ、かな」 《うわ……。でもあの二人も結構強いですよ?》 「判ってるよ。なんたってあのユウナを負かさせたくらいだもの」 《ッ…言わないでくださいよ! 結構ショックなんですから!! …それじゃ》
プッ、という音の後無機質な音が耳に通るのをきいて、ソラと呼ばれた少年も電話を切る その顔はほんの少しだけ苦笑いを浮かべていた
(相変わらずの強がりさんだよねー……)
続く
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