旅する罪人 ( No.6 )
日時: 2011/02/15 12:38
名前: ティス ID:WP.r/H7A

四話「遭遇」

戸惑った心のまま私は知らず知らずのうちに見つめていた。
それは今から少し前のことだった。
私の住んでいる村はもうすでに栄養がなくなってしまった大地のため、作物が育たなく食料を買い足しにいかなければならない環境下にあった。
そのため週に一度、近くの王国に食料を買い足しに行く必要がある。

戦場の中を抜けていくんだもの、誰も行きたいはずがない。
しかし行かなければならないので、その村に住んでいる村人はどんな子供でもポケモンを持っている、週代わりで買い足しにいけるように。
でも子供の場合ポケモンの腕も未熟なので親から離れないのが普通なのだけれど、私は自分でも思う、どうしようもなく意地っ張りな性格で、親とはなれて行動していると戦渦に巻き込まれて親とはぐれてしまった。

戦渦に巻き込まれたの、場合によっては命を落とすことは珍しくない。
私は私の親ほど持っているポケモンも強くなく、敵国の民と悟られると軍人に攻撃され、パートナーはあっけなく倒されてしまった。
パートナーであるイーブイの痛々しい姿に涙が流れてきて、目の前にいる敵国の兵士の強そうな黒と灰色の体毛、鋭い牙と瞳を持つ狼、グラエナを見てパートナーを抱きしめながら震えていた。

その鋭い牙が私を襲おうとしたとき、銃声が響き渡った。
襲ってきた軍人は力なくふらつくと倒れ、グラエナは突然の事態に振り返ると鋼鉄と化した何かにその頭を割られた。
鈍い音が鳴り、顔を青白くさせた私は倒れたグラエナの上に舞い降りるように自らのパートナーと同じような外見を持つポケモンか軽い音を立てて着地したのが見えた。

そのイーブイは可愛い顔に似合わない冷たい瞳で私を見下してきた。
瞬間的に私は悟った、このイーブイは自分を助けたのではなく、近くにいた敵対するものを倒しただけなのだと。
私はイーブイの後ろから背の高めな、銀髪が目立つ、眼帯をした少年がゆっくり歩いてきたことに恐怖をした。

その童顔から見ておそらく同じくらいの年だとは思ったものの、体の回りにまとうオーラという物が全く違うことに気がついた。
右手に握った銃が、私は冷たく語りかけてくるような気がした、「死ね」と。
彼は私の額にその銃口を当てて、冷たい感触が私を震え上がらせた、それでも私は助からないとは思っていたので、せめて今腕の中にいるパートナーだけは助けて欲しくて、

「この子は、助けてあげて……」

私は震える声で呟くように言った。
その言葉を聞くと彼は私の額から銃口を離し、ベルトについていた結晶を軽く叩くとリュックを出現させ、その中から道具箱のようなものを取り出して、スプレー状の傷薬と消毒薬、ガーゼ等を出して優しく私に言った。

「わかった、その子を助けてあげる」

・・・・・
そんなことがあって、私は彼といた、城下町に行く最中だと言うと、彼はそこに行くまで守ってあげると言い、共に行動していたのだ。
私はまだ両親に会うことが出来なかったけど、彼のおかげで無事につけそうだと思った。

彼の手は震えていたけど、それでも彼が強かったから。
彼のそばにいたイーブイも軍人のポケモンが何匹束になっても敵わないほどに強い。

目が覚めた私のパートナーも、その段違いの強さに呆然とした。
同じ種族なのにどうしてこうも違うのか、パートナーは悲しそうに俯いた。

気がつけば、彼の後ろには敵国の軍人がいて、今にも殴りかかろうとしている、あわてて助けようとしたけれども……
私がそんな気を起こさなくても彼は全然平気だった、殴りかかろうとした軍人の方を見ずに強力そうな裏拳がとんだ。
その後に力強く飛び上がって体制を崩したそいつに頭めがけて回し蹴りをして、体制が悪い彼に襲い掛かろうとしていたそいつのポケモンの額に風穴を開けた。

あんなに忙しそうに戦っているのに、私に近づいた敵も難なくやっつけて、何十人もいた軍人は全員地に伏してしまった。
そうしてそれを見た後、恐怖と、尊敬から頭が真っ白になっている私に、返り血で見るたびに汚れて行く彼はそっと手を差し出して優しく言うのだ。

「さぁ、行こうか」

死体には目を向けないように、銃を背中に隠して、震える手で。
強い、でもこの人は確実に殺すことを怖がっている。
笑顔の裏にある本心がすぐに見え隠れする人だ、戦っている最中は全くそんなそぶり見せなくなったのに、終わった瞬間にこれだ。

一緒に走り始めて、いつも見慣れた買出し先の城下町についた。
彼もここが最終目的地みたいで、私はこの後彼に何をするのかたずねてみた。
すると彼はいきなり悲しそうな表情を作って、私を見てくる。

「僕がここの国王を殺すって言ったらどうする?」

……、一瞬冗談だと思った、第一質問をしているだけだし、そう決め付けるのは良くない。
でも、彼の目はうそを言っていなかった、その栗色の瞳が、きっとそれが彼の目的なのだと無理やりにでも信じさせるような強い輝きを秘めている。
驚きで何もいえなくなった、この国の王は確かに戦争好きでろくでもないけど、その人を失ったらこの国は戦争に負けて、そしてそれと同時に国が他国に吸収されてしまう。

「絶対に、駄目……」

震える声で、何とか勇気を振り絞って言った私に、彼は悲しそうな瞳で笑いかけて、城のほうへ歩き出す。
そしてその最中に言った。

「他国との戦争に負けるとかは考えなくていい、もう戦争には勝っているから、向こうの国の王はもう殺したから」

どちらにせよ止めなければならないと思った、君主をなくした国は荒れるだけだから。
でも何を言っても彼は止まってくれなかった。
だから、言った。

「王を殺すことは、国を壊すことにも繋がる大罪なのにどうしてそんなことを……」

私がそれを言いかけると、途端に優しかった彼の雰囲気は変貌を遂げた、肩に乗っている彼のイーブイもそうだ、振り返らない彼に対して彼女は私を見下したような瞳で睨みつけてきた。
今まで戦った後は決まって震えていたのに、今の彼が放つ威圧感は悲しくて、凄まじい。
悲しい威圧感を放つ彼がしばらくして私に言った。

「罪人になったっていい、罪をかぶる覚悟はもうとっくにしてあるから」

それを言うと彼は走っていった、途端に城下町に悲鳴と警報装置が作動したのか騒音が響き渡る。
その騒ぎに乗じて逃げてきた両親に私は会うことが出来たのだけれど、結局村に帰ってから数日後、聞いた話だと王は何者かに殺されたらしい。
あの人だと思った、そして、旅人だけれど食料等も十分に補給したのか、それとももうこちらの方面には用がないからかこの村に来ることはなかった。

大罪人が来ないのはいいことなのかもしれない、けど……。
聞きたいことがあった、何故あなたは自分の意思で罪をかぶるのか、とかいろいろ。
覚悟はもうとっくにしてある、その言葉を言ったときの彼の後姿は暗く、寂しかった。
あの時助けてくれたお礼もまだ言ってなかったし、本当に聞きたいこととか言いたいことだらけだった。

あの人と遭遇したことは、たぶん、一生私の中に残るだろう。