Re: 2010年秋企画【投稿期間10/16〜11/6】 ( No.8 )
日時: 2010/10/30 20:09
名前: 二級河川 ID:

「白く雄大な」
A部門 橋


 自宅のあるマンションから川沿いに向かって数分歩くと飛翔橋という橋がある。
 淀川左岸から南に分かれた大川に架かった白く大きな橋は、そのネーミングも雄大な姿も、結構自分の好みである。
 この飛翔橋を使って大川の向こう側に行けば北区に入り、天神橋筋に程近い一帯にたどり着く。
 小学生くらいは自転車に乗ってこの橋を渡り、よく母と梅田に向かった。しかし、中学生くらいになると母と梅田に行く機会も減り、梅田より塾のあった上本町ばかり行ったためこの飛翔橋を渡ることはほとんどなくなった。
 ただ、部活のランニングのときに臭く緑っぽい色の大川の川沿いを走るとき、あの白くて大きい飛翔橋をよく眺め続けていた。
 高校生に入ると飛翔橋を眺める機会さえなくなった。
 高校通学のため、JR桜ノ宮駅を利用する。大川沿いを渡って駅へ行くことも可能だったのだが、都合のついた有料自転車置き場が大川沿いでなく駅を挟んだ反対側であったため、大川とは縁がない地下鉄都島駅の前の大きな交差点の側を通る道から通学していた。
 それでも、ときたま休日に自転車で大川を渡って梅田に向かうこともあったが、飛翔橋ではなく都島橋を利用していた。
 都島橋は便利だが、飛翔橋に比べると多少味気ないところがあったが、やはり利便性に勝るものはないのでこちらを使っていたのだ。
 その利便性というのも、なにせ飛翔橋は坂がきついのだ。
 車は通れず人しか通れないこの飛翔橋、他の大川に架かる橋と比べて高い位置に架かっているため、橋の入り口と出口がスキーで滑ってもそこそこの速度が出る程の傾斜の坂になっている。
 しかももう一点不便な点を言うと、都島橋で渡ると大きな交差点の方へ出るが飛翔橋で渡るとマンションの立ち並ぶ住宅街に出るため梅田に行くには飛翔橋から渡ると都島橋に比べると距離が出来やや不便だ。



 と、延々愚痴を漏らした手前だが、この間大川沿いを体力造りと称してランニングしたときの話だ。
 新橋に向かって走ったその復路、特に意味もなく飛翔橋へ足を踏み入れた。
 既にヘトヘトの体に鞭をうち、きつい坂を気合いで登りきり、飛翔橋の真ん中程まで来たところで正面から手すりにもたれかかった。
 眼前には相変わらず汚い大川が広がっていたが、ただ、それ以外にもたくさんのものが見受けれた。
 そこにはたくさんの人。
 橋の上から見る人はチョコボールよりも小さかったが、そこから伝わるものは大川よりも大きかった。
 川沿いをランニング、ジョギングする人々。または大川を行くボート部の人々。
 それぞれ進む方向、やること、人の性別や体格や容姿服装はてんでバラバラだが、その中でも誰にも通じる共通点があった。
 誰もが一生懸命だ、ということだ。それは単純で、当たり前かもしれない。でもそんな人々の熱意や姿勢が何故だかやけに伝わり、胸が思わず熱くなる。
 疲れて汗だくのバテバテになって、走るのが面倒だなどと今すぐ愚痴りたかった先ほどまでの自分はもうなかった。他の人の頑張ってる姿勢に感化され、疲れきった顔が自然と笑顔になる。
 こんなに胸が熱くなりやる気に満ち溢れたのはかなり久しぶりだ。都島橋ばかり使っていたけど、たまにはこの飛翔橋も悪くないかもしれない。
 よし、と一人で呟くと、駆け足で飛翔橋を降りて、あらかじめ想定していた距離よりももう少しだけランニングを始める。
 他の人にも負けないように、と。
 そんな僕の背をあの白く雄大な飛翔橋が見守ってくれてる気がした。



 あとがき
1432字の短い小説です。
橋と言えば思いついたのがこの飛翔橋。もちろん実在します。
坂がきついと言ったけど、登るのが辛い分下るのが楽しいなあ。