4. 炎の中 ( No.5 ) |
- 日時: 2010/09/07 00:42
- 名前: Pause ID:
- 緑豊かな森は、闇の中に赤く染まっていた。昼のように明るく、だが昼ではあり得ない熱さをもって、炎は森を呑み込んでいる。
悲鳴が聴こえる。皆が不安と恐れに強張った顔をして、軽やかに駆けていた野原を逃げ回っている。 マリルリが見えた。懸命に細い川から水を吸い上げて炎を消そうと水鉄砲を放っている。その周りには何匹ものマリル、よく見えないが水ポケモンがいるようだった。 「ジャス、こっちよ!」 呆然と見つめていると、ぐんと腕を引かれた。ピジョット達が避難する者達の誘導をしている。それに従って二人走っていく。 「お母さん……アニマ、なくなっちゃうの……?」 ハルフに手を引かれながら、ジャスティスは呟いた。彼の足が止まる。 「……いいえ。きっとルキさん達が消してくれるわ。焼けたとしても、森はまた蘇るから」 ハルフの言葉は力強かったが、燃え上がる森を目の当たりにしたジャスティスには俄かに信じられなかった。混乱したときのように、足元がおぼつかない。 森は燃えてゆく。 「ほんとうに……?」 「ハルフさん、ジャス、早く!!」 呟きはかき消され、二人が振り向くと背後には先のマリルリがいた。真後ろの炎に向かってハイドロポンプを噴き出す。 「ルキさん、」 「私達に任せて早く逃げて!」 頷いてハルフは半ばジャスティスを引きずるように駆け出した。ピジョット達に従って、南へと逃げていく。 ジャスティスは何度も後ろを振り返っていた。消火に当たる水ポケモン達、それを嘲笑うように炎は広がっていく。 森が燃えてゆく。――森が、なくなる。もうハルフの言葉はジャスティスの頭にない。 「お母さん、森がっ、森がっ!!」 ジャスティスは叫んだ。頭が変になりそうだった。ぐらぐらと揺れていた。 「ジャス、ジャスティス、落ち着きなさい!」 「森が、森がっ、なくなっちゃうよ……!!」 「そんなことないわ! ルキさん達が消してくれるから……!」 「うそだっ」 「嘘なわけないでしょう!」 ジャスティスはただ叫ぶばかり。ハルフは何とかその手を引いて、やっと森の外へ抜け出した。広い荒地に、アニマの住民達が寄り添っているのが見える。 振り返ると赤い森が見えた。次第に色が焦げてゆき、生気を失う。
アニマ。生気と云う意味だと、いつか聞いた。 確かに命が溢れていたはずの森に残ったのは、数多の命を奪い木々を焼いてなお燃え盛る炎と、焼けた灰、さらう風のみ。 二人はただただ、それを見つめることしかできなかった。
やっとジャスティスは、己の頬を伝う涙に気付いた。 この水であの炎を消し止められたら、なんて思った。 熱風にさらわれ、涙はあさっての方向へ飛んでいった。
|
|