暴風 ( No.59 )
日時: 2010/09/09 00:23
名前: でりでり ID:
参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/

「風見君、変わりましたわね」
「?」
 俺がデッキからドローする前に、久遠寺が急に話しかけてきた。
「昔の風見君と今の風見君、だいぶ変わりましたわね」
「ああ。俺はこの半年で自分を変えてきた。俺は過去と決別する」
「それじゃあわたくしも過去なの? これだけ風見君の事を想ってるのに! ここまで来てすぐ向かいにいるのに!」
「……」
「今までわたくしが接してきたことも全て無になるってこと?」
 今までにこいつと接してロクな事があった試しもないんだけどな。
「そういうことになる」
「あんまりです!」
 久遠寺の悲痛な叫びが襲いかかる。ヤツはただ叫んだだけなのに、ものすごい暴風が来て吹き飛ばされそうになる。手札を持ってない左手で地面のコンクリートに触れて見えない衝撃を受けきる。
 今のは一体何なんだ……?
「どうしてそういうことにっ……。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 鼓膜が爆発しそうな叫びだ。両手で耳をふさぎ、再び謎の暴風に耐えるため姿勢を低く維持する。
 暴風が収まり、立ち上がった。正面にいる久遠寺の表情は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
「風見君、あなた本当に会話ヘタクソね!」
 背後から松野さんの声が聞こえる。松野さんも謎の暴風に煽られていたようで、暴風が止んだ今でも右手で顔をカバーする体勢を組んでいる。どうやらまた暴風があってもいいように構えているようだ。
「振るなら振るでちゃんとまともに振りなさいよ! どう考えても相手を怒らせちゃったじゃない」
「いや、だって」
「だってもクソもない! こうなったらこの勝負に勝って、過去と決別しなさい!」
「はっ、はい」
 なんという剣幕、正直久遠寺と同じくらい怖かった。どっちにしろ退けなくなった。
「久遠寺! 俺がお前とのこの勝負で俺の意志を見せてやる! 俺のターンだ!」
 まずは目の前のハッサムをどうにかしなくてはいけない。残りHPは30だが先ほどのターン、アクセレートでガブリアスLV.Xを倒したためこのターンはワザのダメージと効果を一切受けない。
 俺のバトル場はエネルギーが二つついたガブリアス(130/130)。ベンチにはユクシー(70/70)とレジアイス(90/90)とギャラドス(130/130)。一方の久遠寺のバトル場は達人の帯をつけ、草エネルギーが二つついたハッサム(30/120)、ベンチには体力マンタンで同じく草エネルギー二つのハッサム(100/100)とエネルギーなしのチェリム二匹(60/80)、(80/80)。
 久遠寺の手札は五枚、サイドは四枚。俺の手札は今九枚でサイドは五枚。スタジアムは久遠寺が発動させた破れた時空がある。
「水エネルギーをガブリアスにつける。まずはそのハッサムをのけてやる。ワープゾーンを発動。互いのバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える。入れ替えるポケモンを選ぶのは各々だ」
 ガブリアスとハッサムの真下に青い穴が現れ、穴が二匹を青い闇に吸い込む。
「俺はギャラドスを選択する!」
 ベンチのギャラドスも同じように青い穴に吸い込まれた。久遠寺からは声がしなかったが、ベンチのハッサムを選択したようで、同じように青い穴に吸い込まれる。
 そして吸い込まれた計四匹のポケモンはバトル場とベンチを入れ替えて青い穴から現れた。これで俺のバトルポケモンはギャラドス。久遠寺のバトルポケモンは達人の帯がついていないハッサムになった。
「更にサポーターのクロツグの貢献を発動。トラッシュのポケモンと基本エネルギーを合計五枚までデッキに戻し、シャッフルする。俺はフカマル、ガブリアス、ガブリアスLV.X、ニドラン♀、水エネルギーの五枚をデッキに戻してシャッフルする」
 この一連の操作が、ボタン一つで出来るのはかなり進んだものだなと我ながら思う。デッキポケット隣の青いボタンを押すと、トラッシュからカードを自動回収(オートサルベージ)してバトルテーブル内を通ってデッキポケットに収まり、自動でシャッフルするのだ。
「ギャラドスでハッサムに攻撃。テールリベンジ!」
 ギャラドスが大きな尻尾を勢いよくハッサムに叩きつける。ハッサムは軽々と吹き飛ばされ、HPゲージも0となる。
 そう、先ほどは90ダメージしか受けなかったはずなのに、HPが100あるハッサムが倒されている。久遠寺の目はそのことに驚いているかのように見える。
「忘れてもらっちゃ困るが、リベンジテールはトラッシュのコイキングの数かける30ダメージだ。一、二ターンで俺は手札のコイキング三枚をカード効果で捨てたのを覚えてるな?(49話参照) そして四枚目のコイキングはそのときバトル場にいたギャラドスの下にあった。つまりバトル場のギャラドスはコイキングから進化していたわけだ。だが、今バトル場にいるギャラドスはガブリアスLV.Xの蘇生によって戻ってきたギャラドス。蘇生の効果により、『四枚目のコイキングはトラッシュのまま、ギャラドスはたねポケモンとして戻って来た』というわけだ。よってトラッシュのコイキングの数は四匹。120ダメージだ。俺はサイドを引いてターンエンド」
 ようやくイーブンか。だが波は確実にこちら向きだ。久遠寺は先ほどベンチに戻されたハッサムをバトル場に出すも、手負いの虎は怖くない。
「わたくしの……ターン。草エネルギーをチェリムにつけますわ」
 久遠寺は力ない声と動きでカードを動かす。少し震えている唇からは荒れた吐息が絶え間なく続く。松野さんは能力者との戦いは精神戦と言っていたが、久遠寺が先に折れたのか?
「ハッサム、で、振りぬく、攻撃っ」
 壊れそうな久遠寺とは打って変わってハッサムの動きは相変わらず機敏にギャラドスに襲いかかる。130あったHPがなんと20まで削られた。威力は申し分ない。
「よし、俺のターンだ。グッズカード、夜のメンテナンスを発動。トラッシュのポケモン及び基本エネルギーを三枚までデッキに戻してシャッフル。俺はコイキング一枚とニドクインをデッキに戻す。夜のメンテナンスで戻せるのは三枚までなのであって、三枚以下であるなら何枚でも可能だ!」
「コイ、キングをデッキに……?」
「俺は手札のスージーの抽選を発動。手札のアンノーンGとミステリアスパールをトラッシュして四枚ドローする。ハッサムにはハニカムディフェンダーというポケボディーがあるのは知っている。ハッサムにダメカンが六個以上のっている時、ハッサムが受けるダメージは−40されるという優秀なポケボディーだ。だが、そのハニカムディフエンダーを適用した上でも俺のギャラドスのテールリベンジは防げない。ギャラドスでハッサムに攻撃だ、リベンジテール!」
 リベンジテールで90ダメージ与えるはずだが、ハニカムディフエンダーでその威力は50まで削がれる。しかし残りHP30のハッサムを気絶させるのには十分すぎる。
「ハッサムには達人の帯がついている。達人の帯はつけたポケモンは最大HPもワザの威力も上がるが、それがついているポケモンが気絶した場合、俺が引けるサイドは二枚となる。これで優劣が一気に変わったな」
 俺の残りサイドは2枚。勝利がだいぶ近づいてきた。久遠寺は肩で息をしながらバトルテーブル上のカードを動かす。次のポケモンは先ほどエネルギーをつけたチェリムだ。
「わたくしの、ターン。ベンチのチェリムに、草エネルギーをつけてチェリムで攻げ、コホッ! 攻撃! 甘辛花粉!」
 久遠寺は疲労(?)のせいか、行動が短絡的になっている。ワザを指定されたチェリムは一度花弁を閉じると、勢いよく開いた。開くと同時に黄色の細かい花粉がギャラドスに襲いかかった。甘辛と名のつくだけに、ギャラドスは花粉に反応して大きな体をぐねらして暴れている。
 甘辛花粉は威力20。チェリムが二匹いることによって40まで与えるダメージが増えていく。残りHP20のギャラドスは、ある程度暴れるとそのままぐたりと動かなくなった。
「風見君、チェリムの甘辛花粉はダメージを与えるだけじゃないわ。自分のポケモン一匹のダメージカウンターを二つ取り除く効果つきよ」
 松野さんが背後から声を掛けてくれた。ベンチのチェリムの目をやると、先ほど撒き散らされた花粉がベンチのチェリムにも行き届いていたようなのだが、ギャラドスとは違ってHPバーは最大まで回復していた。どうやらギャラドスにかかったのは辛い花粉で、チェリムにかかったのは甘い花粉ということのようだ。
 俺はガブリアスを次のポケモンとしてバトル場に投入した。久遠寺がサイドを引いたのを確認してから俺のターンを始める。
「行くぞ、コイキングをベンチに出す。スタジアムの破れた時空の効果により、この番出したばかりのポケモンも進化させられる。コイキングをギャラドスに進化させるぞ!」
 手札の残り枚数が危うくなる。手札を増強するカードも手元にないためハンドアドバンテージも稼げない。
「ガブリアスでチェリムに攻撃。スピードインパクト!」
 ガブリアスが急に見えなくなると同時にチェリムの元で衝撃が発生する。物凄い初速で突撃したガブリアスの攻撃を受けたチェリムのHPバーはあっという間に尽きる。
「スピードインパクトは相手のエネルギーの数かける20、与えるダメージが減るが元のダメージ量は120。この場合は与えるダメージは100! チェリムが気絶したことによってサイドを引かせてもらう」
 これで残りのサイドは一枚。油断は最後まで出来ない。俺の場にはまだガブリアスもギャラドスもいるが、下手に凌がれるとどうなるか。久遠寺の最後のポケモンは草エネルギーが一枚ついた二匹目のチェリムだ。
「わたくしのターン。……草エネルギーをチェリムに、つけて、グッズカードを、使いますわ……。ポケブロアー+を二枚、発動」
 虚空から赤い手が現れ、ガブリアスを掴む。それだけではなく、再び虚空からもう一つの手が現れてベンチのギャラドスも掴んだ。そして掴んだまま二匹を持ち上げ、二匹それぞれの場所を入れ替える。
「ポケブロアー+は一枚だけで使うときと二枚同時に使うときで効果が異なるカードよ! 今のように二枚同時に使った時は相手のベンチポケモンを一匹選んでバトルポケモンと入れ替える効果を持つわ」
 松野さんが再びアシストしてくれる。しかしなぜ、ガブリアスからギャラドスに変えたのか。ギャラドスはエネルギーなしでもワザが使えるのに。
「わたくしは、まだ諦めてませんわ! チェリムに草エネルギーと達人の帯をつけて、甘辛花粉!」
 チェリムのHPが100まで上昇し、ワザの威力も20上がる。チェリムのポケボディーと加えてギャラドスに襲いかかるダメージは50。
「俺のターン! ギャラドスのリベンジテール! トラッシュのコイキングは三枚。よって90ダメージだ」
「チェリムは、水タイプに抵抗を、持っていましてよ! それによって受けるダメージは70ですわ」
 しかしそれでもチェリムのHPは確実に削っていく。100あったHPがあっという間に30まで削って行った。
「わたくしのターン! 草エネルギーをチェリムにつけて攻撃……」
 久遠寺がふらついている体を再びしっかり持ち直す。揺らいでいた視線が真っすぐ俺を見つめる。その瞳には闘志が見られる。
「ソーラービーム!」
 夜にも関わらず、太陽を直視したような眩い光がチェリムから放たれた。眩さ余り、思わず目を閉じ右腕で顔を覆う。
 視界は防がれても、音で何が起きてるかはわかる。ギャラドスのHPバーが尽き、ギャラドスが大きな音を立てて崩れ落ちる。
 ようやく視界が戻ったときには久遠寺が五枚目のサイドを引いていたところだった。
「ソーラービームの元の威力は50、帯とポケボディーで80まで威力が上がったか。確かにギャラドスを倒すには十分……」
 バトルテーブルでベンチにあるガブリアスのカードをバトル場へと動かす。それに対応するようにガブリアスが足音を出しながらバトル場へ歩み寄る。
「だがここまでだ。俺のターン! ガブリアスでとどめだ! スピードインパクトォ!」
 ガブリアスが突進する前に、久遠寺の目じりに涙が浮かんでいるのを見かけた。その次の瞬間、ガブリアスの突進によって巻き起こる砂煙のビジョンで久遠寺が見えなくなる。
 俺が最後のサイドを引いたことによってガブリアス達の映像が消え、そして砂煙のビジョンも晴れる。そして見つけた久遠寺は、うつ伏せに倒れていた。
「っ……! うぐあ!」
 その刹那、物凄い脱力感が体を包み込み、物凄い吐き気がしてくる。急に腹の中から押し上げられたような衝撃に、口を右手で防いでいたのだが吐き出るものが全て出てしまった。苦さと苦しさに少しだけ目頭がジーンとしてきた。
「風見くん、大丈夫?」
 松野さんが必死に背中をさすってくれ、ようやく平静を取り戻した。松野さんが渡してくれたハンカチで口元をぬぐう。それでもまだ不快感は残っているが、とりあえず展開しているバトルテーブルをバトルベルトに戻す。
「なんとか、大丈夫……です」
「それじゃあ私は久遠寺麗華をどうにかするから、私の家のベッドで休んでおきなさい」
 松野さんが家の鍵を手渡した。携帯電話で誰かと連絡を取り始めた松野さんをよそに、一人先に休めるところに向かう。
 しかし能力者との対戦がこんなにきついとは。風見杯で藤原と対戦したのち、俺とも対戦した翔の精神の強さを思い浮かべる。
 それにしても、久遠寺と戦ったことで本当に過去と決別したことになるのだろうか。いや、俺の決別はまだ……。



松野「今回のキーカードはポケブロアー+。
   一枚だけでは効果は微妙だけれど、
   二枚使うと相手のポケモンと入れ替えれるわよ!」

ポケブロアー+ グッズ
 このカードは、同じ名前のカードと2枚同時に使ってもよい。
 1枚使ったなら、コインを1回投げる。オモテなら、相手のポケモン1匹に、ダメージカウンターを1個のせる。
 2枚使ったなら、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替える。(この効果は、2枚で1回はたらく。)


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みんな応募ありがとー!
こんなに集まるとは思わんかった。とりあえず期間まで応募まってまーす。

久遠寺麗華の使用デッキ
「ハッサムPB」
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