恨み ( No.34 ) |
- 日時: 2010/09/07 00:20
- 名前: でりでり ID:
- 参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/
- 緊張してきた。何もないのになにかと辺りをキョロキョロ見渡したり、手を握って開いたり。
こんなにジーッとしていられなくなるとは思わなかった。緊張すること自体久しぶりなのだが緊張するってこういうことだっけか。 あと二回勝てばいいんだ。あと二回。まずは準決勝、同級生の藤原拓哉を倒すんだ。 そう、藤原拓哉。なぜ準決勝にいるのか。悪いがとてもじゃないがここに勝ちぬけるような実力の持ち主ではない。 運だけではまず予選は抜けれない。準決勝となればなおさらである。まず予選をいち早く抜けるという時点でずっと疑問になっていた。 『準決勝第一試合を始めます。選手は試合会場七番にお集まりください』 考えても仕方ない。とりあえず今は出来ることをするんだ。
3D投影機は大きい。その大きさ故にプレイヤー同士は非常に遠くにいることになる。普通の大会ならばテーブルの向かいで非常に近いのだが視力が悪いと相手の顔が見えない。 「拓哉、よくここまで来たな! 俺とお前で楽しい勝負にしようぜ!」 遠いとはいえたかが知れている。声が聞こえない訳がないはずだが、拓哉からは一切の返事がない。 「……」 仕方なくデッキをシャッフルし、手札を引いたりサイドを用意するも拓哉は一向に用意をする気配が感じられない。 「おい、拓哉!」 思わず声を荒らげる。気弱な彼だから、「ごめんね」と言って慌てて動き始めるのだろう。しかし向こうから返ってきた返事は想像とはかすりもしない言葉だった。 「何が楽しい勝負だ。ふざけるな!」 激しい剣幕で怒鳴られたため思わず手が止まる。 「俺様はお前を許さねぇ」 「何をだ」 意識しなくても引きに回っている。アニメではエフェクトで強い向かい風が来そうなほどだ。 俺の知っている藤原拓哉はこんな人間じゃない。 「あぁ!? どこまでもふざけた野郎だ!」 誰にでも優しいヤツだ。人づきあいが苦手で教室の隅にいるような人間のはずだ。 「お前が俺様に声をかけるまでは良かった。俺はいつも一人だったからな、正直言うとうれしかったよ。あの時はな!」 嫌味らしく語尾を強調するしゃべり方。相当俺が憎いのだろう。しかし全く覚えがない。会場は小虫の羽音も聞こえそうなほど静かだ。 「そしてお前は俺様にカードを教えた。カードもくれた。しかしもらうカードじゃとてもじゃないが足りない。そうだろ?」 「ああ」 「お前も金を出すことを勧めた。俺は為すがままにカードを買っていく。本来遊びたいだけのカードが次第に勝ちたいという願望に変わっていった」 「誰もが通る道だ」 「しかしお前も知ってると思うが俺様の家は貧乏だ。奨学金が頼りとなっている。その中ギリギリの小遣いを必死に切り盛りしてカードを買うものの、母にカードを見つかった。ギリギリの生活しているんだ。余計なことを買うなと怒るよな普通?」 「何が言いたいんだ?」 「俺様は怒り余って『こうした』んだよ!」 拓哉はニヤリと笑うと、左手に持っていたデッキからカードを無作為に一枚引きだしステージ外の観客に向ける。 何をと思ったのは束の間だった。カードから紫色の霧が発せられ、観客のいる中に霧が漂う。それらの霧は見慣れた形を為す。 「3D投影機外なのに……!」 ゴーストポケモンサマヨール。だがその姿は3D投影機で映るポケモンよりもより実体的に見える。 サマヨールは傍にいた子供の腕を掴むと、腹から出したブラックホールに引きずり込む。子供の姿が見えなくなると同時にサマヨールは再び霧となって霧散した。 サマヨールに吸い込まれた子供の姿はどこにも見当たらない。 「あの子はどうした!」 「『別の次元に幽閉した』んだよ。これが俺様の能力(ちから)だ!」 「それをお前の親にしたのか」 「ああ。お前がカードを勧めたせいで身に付けた力でな! お前がカードを勧めさえしなければこういうことにはならなかった」 「結果論だ!」 「なんとでも言え! お前はクラスで一人ぼっちだった俺様をお前らの仲間にしたわけじゃあない。お前の遊び相手を増やすという自己満足のために俺に近づいたんだ」 「そういう……」 ステージの外からは子供の母親と思わしき人の鳴き声がする。先ほどまで準決勝で盛り上がりムードだった会場が一変していた。 「とどのつまりは自分のことなんだ。他人を助けたつもりでいるが、結局は自分のため。俺はそういう偽善者を許さん。徹底的に潰す!」 「……、お前のその怒りも自分勝手じゃないか」 「お前が言ってんじゃねぇ!」 迫力のあまり言い返せない。ここは下手に刺激しないほうがいいようだ。下手に回ろう。 「この能力の残念なところは心がある程度ダメージを受けていないと別の次元に幽閉出来ないところだ。まずはこのカードでお前の心を叩き折る!」 拓哉の怒りが体にピリピリ伝わってくる。 「……。その代わり俺が勝てばお前が幽閉した人たちを解放してやれ」 「クククッ……! どこまでも偽善者だな! 悪いが俺様の意思じゃ解放は出来ねえんだよ!」 静かな会場に拓哉の高らかな笑いだけが響く。じゃあさっきのあの子はもう助からないっていうのか……? 「オラオラ、さっさと始めっぞ!」
翔「今日のキーカードはゴージャスボール! 好きなポケモンをサーチできるぞ! ただし基本は一回だけ。
ゴージャスボール トレーナー (破空) 自分の山札の「ポケモン(ポケモンLV.Xはのぞく)」を1枚、相手プレイヤーに見せてから、手札に加える。その後、山札を切る。 自分のトラッシュに、すでに別の「ゴージャスボール」があるなら、このカードは使えない。
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