ギリギリの攻防 その先にあるもの ( No.28 )
日時: 2010/09/07 00:17
名前: でりでり ID:
参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/

 今、石川がサイドを取ったため石川のサイドは残り一枚。一方俺は二枚。
 バトル場には草エネルギーが二つで体力が全回復したユレイドルが立ちはだかる。それに比べて俺はアチャモ一匹。炎エネルギーが二つあるがアチャモでは話にならん。
 しかもベンチには何もない。石川のベンチにはプテラが顕在しているが。
 それだけではなく手札の数も違う。俺が三枚だけに対してヤツは六枚だ。しかも俺の手札はアチャモ、ノコッチ、不思議なアメと救いようがなさすぎる。
 これでどっちが勝ちそう? と言えば大多数が石川と声を揃える。
 しかし頭で考えるだけでは何も進まない、カードを引いてからこそ進むんだ。深く息を吸い込み、気合いを入れて大きく吐き出す。
「俺のターン!」
 俺の右手に新しく現れたカードはオーキド博士の訪問。このカードは山札を三枚引き、その後手札を一枚山札の下に置く。
 ノコッチにまたまた下に行ってもらおう。この三枚のドローで明暗が別れる。
「オーキド博士の訪問を発動!」
 炎エネルギー、炎エネルギー。そんなに固まらなくても。そして最後の一枚を確認すると、バシャーモ。ノコッチを下に戻して石川に笑いかける。
 この状況で一体何だ、何を引いたんだという顔をしているようだ。しかし表情は言ってることとマッチする。ちょっと大人びた顔だ。
「逆転の手立てはできたぜ、俺は不思議なアメを発動。自分のたねポケモンを手札の一進化、あるいは二進化ポケモンに進化させる。俺はアチャモから一気にバシャーモへと進化させる!」
 アチャモの足元から光の柱が現われアチャモをすっぽり覆い隠す。シルエットだけが目に見え、あっという間に大きくなりバシャーモの輪郭を作る。デジ○ンっぽい進化の仕方だ。
「バシャーモに炎エネルギーをつけて攻撃。喰らえ、ほのおのうずっ!」
 渦状の火炎がユレイドルをすっぽり包みこむ。
「ほのおのうずの効果によりエネルギーを二つトラッシュ。ほのおのうずのダメージは100でユレイドルを倒すには及ばないが、弱点でダメージは+30されて一撃だ!」
 炎の渦が消え、倒れ伏すユレイドルが消滅してからサイドをひく。ベンチエリアにいたプテラがバシャーモの前にやってきた。
「あっという間に状況がひっくりかえったぜ。プテラが攻撃するにはエネルギーが二つ必要。しかしお前のプテラにはまだ何も乗っていない」
「それはそっちもだろう、エネルギーが二つトラッシュされてはほのおのうずは連発できない」
「さあどうかな?」
 挑発をかけると石川はむっとする。が、可愛げがまるでない。
「俺の番だ。プテラに闘エネルギーをつけ、ベンチにひみつのコハクを出す。ターンエンド」
「俺のターン!」
 ゴウカザルが来た。なぜこのタイミングなんだ。
「バシャーモに炎エネルギーをつけてポケパワー発動。このポケパワーは相手のバトルポケモン一匹をやけどにする。喰らえ、バーニングブレス!」
 バシャーモが口から3D表示なのに熱そうな息を吹きつける。
「プテラは火傷になったがこの瞬間プテラのポケボディーも発動する。げんしのツメ!」
 バシャーモの火炎の吐息にあらがうがように、プテラはバシャーモにツメで襲いかかる。
「相手がポケパワーを使うたびにポケパワーを使ったポケモンにダメージカウンターを二個乗せる」
「これぐらいのリスクなんてことないぜ。バシャーモで攻撃。わしづかみ!」
 するどい腕でバシャーモがプテラの首根っこをガッシリ掴む。40ダメージしか与えられないが80しかないプテラには十分だ。
「この攻撃を受けたポケモンは次の番逃げられない」
「逃げる気はない」
「そうこなくちゃな。俺の番が終わったのでポケモンチェックだ」
 石川は先ほどとは違いいたって普通にボタンを押す。その表情をチラと見たのだが少年のような笑みだ。さっきの怒りの心情が消えている。
 アイツもこの勝負が楽しくて仕方ないんだ。
「残念だったが表だ」
「さあ、お前の番だぜ」
「俺のターン。プテラに草エネルギーをつけて攻撃。ちょうおんぱ!」
 首根っこを掴まれたままのプテラが口を開き衝撃派を放つ。モニターを見るとダメージカウンターが五つに増えていた。残りHPは80。
 しかしプテラの攻撃技はこのちょうおんぱだけだ。三ターンはもつ。
「ちょうおんぱの効果発動。相手を混乱にする」
 バシャーモの頭の上には分かりやすいエフェクトが。頭の上をアチャモがピヨピヨ駆け巡っている。わしづかみの効果も終わり、バシャーモはプテラの首を離す。
「だがお前の番が終わったためポケモンチェックだ」
「……、また表だ」
 悪運の強い奴だ事。
「俺のターン。バシャーモに炎エネルギーをつける」
 手札にアチャモがあるがベンチには出さない。メリットがないからだ。
 もしも俺のアチャモをバトル場に引っ張り出すカードがあったりするとHPの少ないアチャモが一瞬でおじゃんして負けてしまう。それよりこのバシャーモで戦った方が賢明だろう。
「バシャーモで攻撃。ほのおのうず!」
「しかし混乱の判定をしてもらおう。ワザを使うあるいは逃げる時にコイントスをして表なら成功。ただし裏なら失敗の上ダメージカウンター三つだ」
「……、裏」
 バシャーモにダメージカンターが三つ増え、残りHPが50。三ターン持つつもりだったがこれじゃあ全然持たない。
「プテラのポケモンチェック。……、裏なのでダメージカウンター二つ乗せる」
 しかし相手も同じく限界に近づく。プテラも残りHPが20、互いに状態異常のコイントスによって決着がつきそうになる。
「俺のターン。ちょうおんぱ!」
 口から発せられる衝撃波。音は聞こえないのが妙に理屈。
 これで本当のイーブンだ。
 次の俺の番に攻撃する際、裏が出れば俺の負け。だが次のポケモンチェックで裏を出す、あるいは攻撃する際表が出れば勝ち。
「ポケモンチェック!」
 近視でもなく視力に自信があるのだがそれでも目をモニターに近づける。
「表!」
 声を強めた石川だが、心底ホッとしているのだろう。
「俺のターン。バシャーモで攻撃。混乱判定だ!」
 人差し指を伸ばし、ボタンを押す。それにしてもこの大会、ほとんどコイントスでの運勝ちだ。風見とは大違い。
 でもまだこの大会が終わるまでツキは終わってほしくない。
「……。表だああああ! ほのおのうず!」
 歓喜の声をあげ、高らかにワザ宣言。俺の声に呼応してバシャーモがプテラに向けて攻撃を放つ。
 負けが決まった石川の顔は怒ってはいない。むしろ笑っていた。



 試合終了のブザーが鳴り響く。カードを片づけると、ドーム天井を意味なく見つめている石川を見つける。
「楽しいバトルだったぜ」
「ああ。あんなに願っていた夢だけど、負けてもなぜか悔しくない。むしろ清々しい」
「さっきとは大違いだ」
「……。奥村、頑張れよ。いや、お前にエールを送るなら楽しめよ。のほうが正しいか」
「翔でいいよ。名字で呼ばれるよりこっちの方が好きだからな」
 最後にカードの束をトントンと明るい音を鳴らして揃え、ステージから去る。
 しかし、ふと何を思ったのだろうか。ステージに再び戻ってカードの整理をしている石川に向けてこんなことを言ってしまった。
「やっぱりお前は笑っている方がいいな」
 石川がどんな顔をしているのかは見なかった。いや、見なかったことにしよう。



翔「今日のキーカードはふしぎなアメ!
  たねポケモンから一気に2進化ポケモンにもなれるぞ!
  2進化ポケモンが多いデッキには必須のカードだ。

ふしぎなアメ トレーナー (DP4)
 自分の「進化していないポケモン」を1匹選び、そのポケモンから進化する「1進化カード」、またはその上の「2進化カード」を、自分の手札から1枚選ぶ。その後、選んだ「進化カード」をそのポケモンの上にのせ、進化させる。


───
一度バトルを書き始めると楽だが、書き始めるまでにデッキ考えたりとかあるからしんどい
このバトルは0プロットなのにかなり盛り上がりました。
まぁ逃げるとかそういう戦略要素ないけど