逃げて前へ進む者、願い前へ進む者 ( No.27 )
日時: 2010/09/07 00:17
名前: でりでり ID:
参照: http://www.geocities.jp/derideri1215/

「アーマルドに草エネルギーをつけて攻撃。ブレイククロー!」
 右手を高く振り上げ、その先にあるつめでモウカザルを襲いかかる。ゴムボールを投げるように吹っ飛んで行くモウカザル。
 でもイマイチ臨場感ないなぁ……。
「ブレイククローの効果はこのワザを受けた相手は次のターン受けるダメージが+40される!」
「まぁモウカザルのHPは20だしまず倒れるな」
「俺の番は終わりだ」
 なんだかメチャクチャ石川の視線が痛い。ダメージカウンターは俺にも乗っているらしい。
「俺のターン」
 不思議なアメねぇ。しかし今の手札では有用出来ない。
「モウカザルをゴウカザルに進化させ、アチャモに炎エネルギーをつける」
 残った手札は二枚。アチャモと不思議なアメだけだ。
「モウカザルからゴウカザルに進化したため、ブレイククローの+40の効力はなくなるぜ」
「言われなくても分かってる」
 しかしこいつ姿恰好の割にはなんか偉そうだな、少年味がまるでない。俺の方が年上なのに完全に見下されてる気がする。ちょっと不愉快。
「ゴウカザルの攻撃、ファイヤーラッシュ! 俺の場の炎エネルギーを好きなだけトラッシュし、トラッシュした数だけコイントス。そして表の数かける80ダメージ。俺はゴウカザルについている炎エネルギー一枚をトラッシュ」
「一枚だけでいいのか?」
「確率の神様は信じる者を救うんだぜ」
 知らないけどな。安いヒーローを気取ったセリフを言うのは好きだがどーも恥ずかしい。恥ずかしさを紛らわすために下を向いて顔を隠し、コイントスボタンを押す。
「表。喰らってもらうぜ! ファイヤーラッシュ!」
 アーマルドはポケボディー、かせきのよろいによって60以下のダメージを喰らわない。しかしファイヤーラッシュは60を越えて80ダメージだ。
 残りHPが0を切り、アーマルドがドシンと音を建てて前へ倒れ伏す。数秒のインターバルをもって消えて行った。
「サイドを一枚っ、とらせてもらうぜ」
 気取ってサイドを取り、そして鬱になる。何してんだ俺。将来がかかっている大会なのにお気楽過ぎである。
 と思っていると派手な音が聞こえる。ドン! という何かを叩く音が響く。響くは言いすぎだろうか、少なくとも俺の試合を見てるやつらが石川の方を向いたのは間違いない。
「俺はリリーラをバトル場に出す」
 口調こそ平静を装っているが声音は明らかにそうではない。荒れている。
 そんな石川を見て俺は口を挟むしかないと思ったのだった。
「お前さ、カードしてて楽しいか?」
「急になんだ!」
「いや、だってさ。カードって楽しむためのモノだろ? 確かに負けたりして悔しいとか思ったりもするけどさ、まだ負けが決まったわけでもないのにそんなに怒るのもないだろう。対戦相手に失礼じゃないか?」
「……この」
「まぁ俺は別に、ってこのが何?」
「このデッキは化石発掘作業中に事故死した父がくれたものだ」
 黙るのは今度は俺だ。
「お前はこの大会、なんのために出ている? ただの遊びのつもりか?」
「いや、俺はこの大会に出て借金を返さなくちゃならない。もし負ければ今まで住んでたボロ家からも出てホームレスの始まりだ」
「そんな重いことがあるのに楽しそうだな」
 こいつも俺みたいに何かあるのだろうか。
「ああ、こうしてでも借金のこと忘れてないと正直辛いからな」
 これは本音である。借金のことを出しても自虐程度でとどめている。本当に考えると冗談抜きで鬱になるし怖くなる。立つこともままならない。
 石川はふっと一つ笑って目をしっかりと俺に向ける。
「強いなお前は」
「そうでもない。借金のことを忘れて現実逃避してるだけだ」
「それこそそうでもない。俺はこの大会で優勝して、父がやりとげれなかった化石発掘の事業をしたいんだ。お前は逃げることで前へ進み、俺は願うことで前へ進もうとする」
 四百万でなんとかなるものなのか。てかこいつ短パンのくせにかっこいい。身なりが良ければ、あと声が低ければよかった。
 人の話を真剣に聞いていない証拠だな。
「だから!」
 落着きを取り戻したと思うとまたまた激しい声。忙しい。
「俺はこの戦い絶対負けられない! 俺のターンドロー!」
 のんびりモードもそろそろ終わり、集中しないと。相手のリリーラは草タイプ。炎タイプが弱点なので俺の方が相性はいいはずだ。あくまで相性は。
「リリーラをユレイドルへ進化させ、草エネルギーをつける。そしてエネルギーパッチを発動。コイントスをして表なら、トラッシュの基本エネルギーを自分のポケモンにつける。コイントス!」
 そんなに強くたたくと壊れそう。
「表だ! トラッシュの草エネルギーをユレイドルにつけて攻撃! ドレインドレイン!」
 何かの曲名にありそうな技名だ。と思っているのも瞬、ユレイドルの首のあたりからピンク色の触手というべきなのかそれっぽいのがゴウカザルに食い込む。
「うっ……」
「30ダメージしかないためゴウカザルは20ダメージ残っているぞ、さあターンエンドだ」
「俺のターン!」
 おっと、ノコッチお帰り。すぐさま帰ってほしい。
「ゴウカザルに炎エネルギーをつけてファイヤーラッシュ。トラッシュするのはゴウカザルのエネルギーだけだ」
 石川と違い普通にボタンを押す。
「表だ。80ダメージを喰らってもらうぜ」
 ゴウカザルが火球をユレイドルにぶち込む。
「ユレイドルは炎タイプが弱点なので30ダメージ追加の合計110ダメージ。一気にHPを120から10へ削ってやったぜ」
「俺のターン、闘エネルギーをユレイドルにつける。そしてサポーター、デンジの哲学を発動。手札が六枚になるように山札からカードを引く。今俺の手札は0。よって六枚引く」
 ここにきてドロー加速。俺の手札が三枚に対して石川は五枚、手札数が逆転した。
「ひみつのコハクをプテラに進化させる!」
 遅まきながらの登場だ。
「ユレイドルの攻撃、ドレインドレイン!」
 先ほどと同じモーション。HPが残り20のゴウカザルはこのドレインドレインによって気絶させられる。しかし似たようにHPが10しかないユレイドルはアチャモでも倒せる。
「アチャモでも倒せると思っただろう?」
 その通りだ。しかし姿と声音と言ってることがマッチしないヤツである。
「ドレインドレインの効果発動。このワザにより相手を気絶させた場合、自分のダメージカウンターを全て取り除く!」
「すべて!?」
 HPが0になったゴウカザルが光の玉となってユレイドルの体に取り込まれる。
 ほぼイーブン状態だった試合が一気に石川の流れに傾いた。
「サイドを引いてターンエンドだ」
 俺はダメージ表示がなくなったユレイドルのモニターを虚ろに眺めた。



翔「今日のキーカードはユレイドル!
  ドレインドレインは30ダメージ!
  相手を気絶させると全回復だぜ!

ユレイドルLv.49 HP120 草 (DP5)
草 ドレインドレイン  30
 このワザのダメージで、相手の残りHPがなくなったら、自分のダメージカウンターをすべてとる。のぞむなら、ダメージを与える前に、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替えてよい(新しく出てきたポケモンにダメージを与える)。
草無色無色 ようかいえき  50
 次の相手の番、このワザを受けた相手はにげるができない。
弱点 炎+30 抵抗力 なし にげる エネルギー3


───
約一年で12話書いた。
しかしこの夏は約二か月で12話書いた。
なにこれ