#0 月光
雲間に揺れていた月は昨日も今日も姿を現すことは無かった。
先程まで穏やかだった波はここに来て荒れ狂ってきた。
あと、少しだったのに。
手を伸ばせば届く所に、それは在ったのに。
暗闇に閉ざされた光と舵の効かない未来の狭間で、私達に希望なんてモノは無かった。
ふいに現れた一筋の閃光に私達の望みは砕かれた。
一瞬だけ晴れた闇夜と薄れ行く意識の中で、私の心だけがやけに大きく聞こえた。
私は変われたのかな。
いや、変われなかったのでしょうか。
心に宿った小さな光もふっつりと消えていく。
あなたを生かせられるのなら私は消えてもいい。
むしろ、いつも足手まといになっていた私は、消えた方がいいのでしょう。
絶望の底に沈んだ私は、最後の息を静かに吹き出した。