第1章-スクール編-
仲いい二人は喧嘩する
「あっつ!」

練習場のドアは破壊されていて中ではブーバーが暴れている。本当にどういう事なんだろう?
この辺りにはブーバーなんて生息してないし……それより今はケーシィだ! なんとしても助け出さないと!

「……まだ、ベンチは焼かれてないな」

 なんとか無事なのを僕は確認し、そこにしっかりと僕のボールが放置されている事に気付く。

『ブゥゥゥッ!』

 あわわ、好き勝手暴れてるよ。仕方ないから一気に近づいて……って言いたいところだけど、流石に僕が走ってるだけじゃ危険がかなり高い。なら、どうする?

「少しの間だけ動きさえ止めれれば……」

 何かいい方法は……ブーバーの特徴を思い出すんだ。ポケモンの攻撃じゃなくても弱点を付くことが出来れば時間を稼ぐぐらいなら!
 ブーバーは確か体全身が炎の炎タイプのポケモン。弱点のタイプは岩と地面と水。
 小石をぶつけるとか砂をかけるとかすると怒りそうだし……どこかでバケツに水を酌んできてかけるのも焼け石に水だろうし……あ、そうだ!

「……こういう使い方していいのかな?ま、緊急事態だし仕方ないよね」

 そう自分に言い聞かせながら僕は演習場の入口前の廊下に設置されていた赤い小型のタンクを手に取る。安全ピンを引っこ抜き、ホースを片手に取っていつでも使えるように構える。よし、行くぞ……!

「ブーバー!」
『ブバァァ!』

そう叫ぶと僕の方へブーバーは振り向く。正直、怖い。けど!

「ここで逃げるもんか!」
『ブ、ブゥッ!?』

 僕は手に持ったタンク、消火器のレバーを力任せに握りホースから消火剤を発射した。
 消火剤の塊だよ! 炎の体でただで住むと思わないでよ!

『ブ、ブゥ…!』
「い、今だ!」

 丁度消火剤が切れたところでブーバーが膝をついた。僕は消火器を適当に放り投げ、ベンチまで走る。
 そして……

「ごめん、ケーシィ」

 そう言って僕はケーシィの入ったボールを手に取る。返事は無い。喧嘩した後だもん。仕方ないよ……
 後は、勝ち目はなさそうだし逃げながら……

『ブゥゥゥッ!』

ッ!

 ブーバーが吠えた。それに僕はギリギリで反応し、デタラメに走る。背後に熱気。い、今のって火炎放射……

『ブゥゥッ!』

 お、怒ってるんだけど……さっきの消火器攻撃がそんなにイラッて来たの!?

「こうなったら!」

 戦うしかない。僕は手に持つボールを構える。

「ケーシィ、頼む……」

 よ。って続けようとした時だった。僕はボールを投げるのを止める。こんなの、虫が良すぎるって思ったからさっき、僕はケーシィに何をした?
 負けをケーシィのせいにして八つ当たりをして酷い事を言った。なのに自分がピンチだからって、こんなの都合が良すぎるよ。

『ブゥゥゥ!』
「あわわ……」

 続く攻撃を僕は尻餅をつくことでなんとか回避出来た。でもこれ以上は……

『おいユースケ、さっさとオレを出せ!』

へ?

『早くしろよ、のんびり屋さん!』
「分かったよ! 行くよ、ケーシィ!」

 僕に止めをささんとしているブーバーの顔面に僕はモンスターボールを投げつけた。 ブーバーはのけ反り、そしてモンスターボールから僕のパートナー、ケーシィが姿を現した。さ、頼むよ!

『ブゥゥッ!』
「火炎放射が来るよ! テレポートで後ろに回るんだ!」
『おう!』

 そこでテレポートであっさりと火炎放射を回避するケーシィ、そして後ろに姿を現して……

『どこ向いてんだお前は!』

 そうブーバーの背後から蹴りを放った。勿論技でもなんでも無いし貧弱なケーシィから放たれたものじゃこの間のアーボとは違いブーバーはダメージを受けない。

『ブゥ?』

 当然のけ反る訳でも無く、何事も無かったようにケーシィの方を向く。なんでそんな事を……

『さあ来い!お前の相手はオレだぞ!』
『ブゥゥッ!』

 さらに煽るようにケーシィはブーバーを挑発する。それに怒り狂ったようにブーバーは炎を纏った拳を振り上げた。大振りになった今がチャンスだ!

「ケーシィ、ブーバーごとテレポートするんだ!」
『その指示を待ってた!』

 そうケーシィは素早くブーバーの懐に飛び込みブーバーの腹に触れるとその瞬間に二匹は消える。テレポートにどこかに跳んだんだ。えと、多分ケーシィは……
 僕は上を見上げるとそこにはブーバーとケーシィがさっきの体制で姿を現した。ケーシィがあそこに跳んだ理由……それは

『スプリンクラーでも食らえ!』

『ブゥッ!?』

一般的にポケモンバトル関連の施設のスプリンクラーは始動しにくくなっている。
 それは炎技を使うポケモンが不利になら無いためなんだけど……流石に危険なぐらいな炎になら反応するようになっている。
 例えば、天井にある火災報知器が感知するぐらい近くで炎技を使ったりとかね! もともと体が炎で出来ているようなポケモンの上に怒って炎のパンチまで発動してるんだ。それは発動するよ

『ブゥ……』
「つ、冷たい……」

 スプリンクラのシャワーの勢いは強く、少し痛いぐらい激しい。でも弱点の水をそんな距離で受けたブーバーにはダメージは大きい。

『よっと』

 そんな声を出しながら僕の前にケーシィは姿を現す。そしてブーバーが地面に落下し、落下したあたりの泥が跳ねた。さっきの消火器にスプリンクラ、それから落下のダメージで倒せなかったら……

『ブヒィ!?』

……ふぅ、完全に目を回しているブーバー、な、なんとか勝てたよ。

『これで一件落着だな。俺たちだってやればできるんだな』

 そんなケーシィの声が聞こえる。それに僕は笑って頷いた

























――屋上――
 あれからすぐに火事は治まった。消防の人が来てくれたし、購買にいた先生方やケンイチら何人かの生徒が消火栓や消火器で少しでも被害を小さくしようと頑張ったおかげだね。
 ブーバーに関しては色々と不明な点が多いらしく、どこから来たかも、何故あれ程気性が荒くなってたかもわからないらしい。後は警察に送られて調べるらしいけど、あんな気性が荒いポケモンを連れていって大丈夫かな?

「うう、ビンタが効くなぁ……」
『ランを心配させたお前が悪い』

 で、僕はミナミ先生に絞られて、あんなこと言って無茶したから起こったランにビンタされて、エリとケンイチには呆れられてと踏んだり蹴ったりだよ。
屋上のフェンスによしかかりながら遠くを見渡しながら言うと、僕の隣でフェンスに繋がって同じように遠くを見渡しているケーシィが返してくる。

「そんなの分かってるよ。流石に野次馬って言って火事の中に突っ込むのは馬鹿だったよ」

今では反省してるよホントに……

「ところでさ、ケーシィ。その、僕が酷い事言ったのさ、怒ってない?」
『んな訳あるか。怒ってるよ! 何がバーカバーカだ。お前には言われたくないぞ』

た、タイミングがタイミングで言いかえせない……

『けど、さっきは来てくれて……その……助……。そ……あり……』

?
あ、あれテレパシーにノイズかな?
なんか上手く聞き取れない……

「ケーシィ、今なんて言った?」
『オレは、なんでお前はオレがピンチの時にいないんだよってたんだ!この馬鹿トレーナー!』

 え、ええ!
な、なんでそんな急に!

『さっきの事をチャラにしてやるから、ずっとオレと一緒にいろ! いいな!』
「嫌だ! 誰がケーシィみたいないばりんぼの言うことなんて聞くもんか!」

 ケーシィに対して僕は全力で怒鳴り返した。

 つい喧嘩してしまう自分たちに僕は少し呆れながらもなんとなくいつもの感じがして安心したのであった


Yu〜suke ( 2013/06/22(土) 22:36 )