第1章-スクール編-
非日常への第一歩
「ふわ……」

ね、眠いなぁ……血圧はそう低い方じゃないけど朝はやっぱり辛い。自力で起きて朝ご飯も食べて登校中な訳だけど、どうしても朝は弱いんだよなぁ
わりとフラフラと歩いている気がする……

「シャキッと歩けアイカワ!おはよ、どうやら昨日の本を読み耽って徹夜でもしたのかしら?」

「なんだエリか。おはよう……なんでそれを知ってるのさ」

「いや、あんたの行動パターンは分かりやすすぎるのさ」

ケンイチにもたまに指摘されるけど、僕はどうしてこうも読まれるのか……

『本を読み出したら止まらないお前だ。読まれて当然だって』

むむ……そう言われたらそうか。熱中したら周りが見えないのは悪い癖だな。

「分かりやすくて悪かったね。こんな性格だから仕方ないだろ」

「悪いとは言わないわよ。ところでアイカワ、昨日放火事件があったの知ってる?」

「放火?」

そういえば何故か昨日の夜が騒がしかったけど……そうか、なるほどね。父さんも朝からいなかったし合点いったよ

「そ、商店街の方がちょっとしたぼや騒ぎがあったらしいわ。目撃者はなしって聞いたわよ」

物騒な話だよ……やっぱり例の黒づくめの人の仕業?
それとも野生のポケモン?
う〜ん、生息分布的にそれはないか。でも何かの偶然が重なって……う〜ん?

「……父さんも大変だな。悪意をもった犯人がいたとも分からない事件なのにさ」

『大丈夫。なんせ親父もいるんだからな』

パートナー揃って親子な僕とケーシィ。やっぱり考える事も似てるのかな?
まあ、いいや。さ、学校に急ごう!
















『ピカ!ピカチャア!』

『ガウ!』

『ガーディもピカチュウもこうしてやる!』

ケーシィとガーディ、それに加えてピカチュウがじゃれあってるのを尻目に、僕は屋上のフェンスにもたれ掛かりながら、母さんが作ってくれたおにぎりを頬張る。
うん、ワカメのふりかけのおにぎりはおいしいね

「勝った日の昼ご飯はやっぱりいいね」

「攻撃技が使えるようになっただけで結構やるもんだな」

気分よくそう言う僕にケンイチがそう茶々を入れてくる。それはそうさ

『テレポートだけで戦ってきたんだ。技があるだけでバトルが楽で楽で』

ケーシィの言う通りだよ。文字通り知恵とテレポートだけで今までやってきたんだ。一手増えるだけで戦い方にバリエーションが増えてくるよ

「でもそのわりには今日も危なっかしかったよね。とっさの指示が出来て無かったり、テレポートを発動し損ねてたり」

ラ、ランは鋭い……よく見てるよ。ホントに

「そ、そうだけど、今回は勝てたからいいだろ?それは次に生かすしさ」

「ここでランちゃんに問題だ。ユースケの次はどれくらい当てになる?」

「真面目な時は信用出来るんだけど……今なら4割程度かな?」

え、ええっ!? な、なんだよこの信頼! こんな信頼のされ方嫌だよ!

「……ケンイチ、後で覚えてなよ」

ここでランの名前が出てこないのは一番付き合いが長いせいからこの評価が間違い無いと思うところがあるからか

「2時間ぐらいだったらな。さてとユースケとランちゃん、放課後に時間あるか?」

放課後? えと居残りの補習とかはあったかな?

「あたしもユースケくんも特に無いと思うけど……どうしたの?」

どうして僕よりランの方が僕の予定に詳しいのか……まぁ、特別に酷い点数のテストとか無いはずだし大丈夫だろう

「ああ、オーキド博士のとこにな。ほら、自分のパートナーのポケモンの進化に関するレポートが出されただろ?」

ああ、そういえばそうだっけ。進化した後の技とか進化した後の特徴を調べてレポートにするんだよね……父さんに聞こうと思ったけど最近忙しそうだしねぇ

「なるほど、僕としては願ったり叶ったりだ。ランはどうする?」

「あたしも一緒にいくよ。あたし達のパートナーって進化の方法が少し特殊みたいだからみんなで調べて早く終わらせたほうがいいと思うしね」

ああそっか……そこでじゃれあってるパートナー達って、石で進化するポケモンだったり交換だったりで普通のポケモンみたいに単純な成長でって訳にはいかないんだ。
それならあそこの資料を貸してもらうのが一番だね。

「それじゃ決まりだ。ユースケ、ランちゃん、放課後にオレの席に集合だ。くれぐれもリョウトに捕まるなよ」

アハハ……リョウトの事だ、またランがあーだこーだって騒ぐのに決まってる。それに着いてきても集中してやるかって言われたら大分怪しいよ

「ん、了解。ランも捕まらないようにね」
「う、う〜ん……善処するよ」

……上手く逃げれたらいいんだけどな。そう強く強く僕は思うしかなかった。
















「オーキド博士、結局通信進化ってどういう意味なんですか? ユンゲラーがフーディンに進化する時とかそう呼ばれるらしいですけど」
「うむ、ポケモンには何種類か同様な形の進化をするポケモンもおってな。通信交換を行う時の電波の影響だと思われるのじゃが詳しい事は分かっとらん。まだまだポケモンには謎が多いんじゃ」
『父さんってわりと訳わからないんだな』

ふ〜ん……ポケモン研究の権威って言われるオーキド博士でもわからない事が多いんだね。
放課後、オーキド博士の研究所に行くと博士が快く僕達を迎え入れてくれた。応接室に招かれて進化について色々教えて貰ってるんだけどこれが難しいんだよ。レポートどうしよう……

「なるほど、参考になります。忙しい中ありがとうございます」
「いいんじゃよ。ワシも特別忙しいって訳でもないんじゃから、マサラののんびりとした環境で気ままに研究出来るのはいいことじゃ」

確かにマサラほどゆっくり時間が進んでる場所も少ないんだろうなと思う。そんな中で研究って研究者にとっては贅沢な時間なのかもね

「それでは諸君、ワシは研究に戻るからわからない事があれば言ってくれたまえ」
「はい、ありがとうございます」

博士がドアを開けて去っていく中、ランの声が狭い部屋の中を少しだけ反響した。さてっと、博士がわかりやすい資料を置いていってくれたからなんとかレポートを仕上げないと。

「ラン、そっちの資料とって。それとそのハードカバーの奴も」
「ランちゃん、そっちの資料もだ。ついでにメモも貸してくれ」
「二人とも人使いが荒いよ! っと……はいこれ」

少し頬を膨らませながら資料を渡してくれるランは優しいと思う。僕がその資料を受け取ろうとした時だった。

「な、何をするんじゃあ! うわぁぁ!」

い、今の悲鳴は……オーキド博士!?
研究室の方からなんだろうけど……

「な、何!?」
「わ、わからないよ!」

ランの悲鳴にはそう返す事しか出来ない。な、なんだっていうんだよ!

「ユースケ、とにかく行ってみるぞ。最近物騒だから何か起こってるかもしれん……!」

エリの言ってた事を思い出す。黒い服装の人とか放火とか……嫌な予感がする。

「ん、分かったよ。ランはここで待ってて僕とケンイチだけでいく」
「う、うん。気をつけてね! ピンチそうな声が聞こえたらすぐに助けに行くから!」

い、いや危ないから来てほしく無いんだけど……って! 今はそんな事言ってる場合じゃないよ!

『油断するなよユースケ、ケンイチ』
「ああ、行くぞユースケ!」

応接室を走って出ていくケンイチの背中を僕は追う。今は怖がってる場合じゃない! 頑張れ、僕!


Yu〜suke ( 2013/06/10(月) 01:45 )