二人の戦い
「よーしそれじゃ演習を始めるぞ! 組み合わせを言うぞ、アイカワはマルイとだ。ケンイチは−−」
授業が始まってすぐにそんな担任のベンケイ先生が響いた。よ、よりによって相手はマルイか。
だってマルイってさ
「やあユウスケ、精々楽しませてくれよ? おっとテレポートしか使わない臆病者には無理な相談かな?」
こ、この通り嫌な性格してるんだよ……!
わざわざテレポートしか使えないっていうふうに把握してて使わないって言うのが気に入らないよ!
『ユ、ユースケ落ち着け。所詮は腰ぎんちゃくみたいな奴だ。そんな奴の挑発に……』
「ま、君が臆病者じゃなかったとしてもケーシィごときじゃ勝てないけどね」
『野郎……!』
い、今のやり取りですごく落ち着いたよ。ケーシィって僕より血の気が多いのは気のせいなんかじゃないよね
「ストップだよ。試合前に挑発行為なんて感心しないな」
え? マルイの挑発を咎める声。その声は聞き慣れていて聞いていて安心する声だ。
「ラン」
「キタムラさん……まあユウスケをからかうのはここまでにしとくよ」
「ユースケくん、マルイくん。今回はあたしが審判をする事になったからよろしくね」
マルイの言い方は気に入らないけどそんな事よりランだ。
キタムラ・ラン、ケンイチと同じく僕の幼なじみなんだ。僕の家のお隣りさんだから多分彼女が初めての僕の友達なんだと思う。小さい頃の事なんて覚えてないけどさ
審判をやるのは生徒同士。フィールドの数が足りないのもあるし審判のスキルを上げる意味もあるらしい。そんな風に先生たちも色々考えてるんだなって素直に感心するよ
「ん、分かったよ。早く始めようよ!」
「ユ、ユースケくん張り切ってるね……お互いにフィールドにポケモンを」
僕は頷いてベルトに手を回す。行くよ!
「ケーシィ、頼むよ!」
「ズバット!」
『よおし!』
『キィー!』
フィールドに姿を表した2体のポケモン。僕のケーシィとコウモリみたいなポケモン、ズバットだ。
ポケモンの持つ属性であるタイプはどくとひこう。ケーシィはエスパータイプだからどくタイプには有利……なハズだけどエスパー技が使えないから関係ないんだよね……
「それじゃ行くよ。試合開始!」
「さっさと決めさせて貰うよ。きゅうけつだ!」
試合開始のコールと同時にマルイが指示を送りズバットが突っ込んでくる。
むしタイプのその技を受ける訳にはいかない!
「ケーシィ、ギリギリまで引き付けて……テレポート!」
『!』
ギリギリのタイミングでケーシィは消える。流石にやすやすとは当たらないよ!
「やっぱりそれしか手は無いのかい? きゅうけつだ」
ケーシィが背後に現れた瞬間にズバットは旋回。またケーシィに向かってくる。
一回目のテレポートは牽制。油断したところに!
「今だ、ケーシィ!」
『シャドーボール!』
『キィッ!?』
「なに!?」
ケーシィに噛み付こうとするズバットの目の前に黒球が現れズバットを弾き飛ばした。
油断しすぎなのさ!
「攻撃技だなんて……騙すなんて酷いじゃないか」
「睡魔の見返りだよ。ケーシィ、畳み込もう。シャドーボール!」
またシャドーボールでケーシィは攻撃する。ここ何日か睡眠時間を削ってケーシィが覚える技について調べて特訓だってしたんだ!
「ユースケなんぞに、急降下からの翼で打つ攻撃!」
体制を立て直し、直ぐさま急降下でシャドーボールを回避し、そのままケーシィに向かってくるズバット。なんぞって甘く見るんじゃないよ!
「ケーシィ、シャドーボールで受け流すんだ!」
『ッ!直撃しなけりゃいいんだよ!』
『キィッ!?』
ズバットの翼による攻撃をケーシィは急遽シャドーボールを作り、それを壁変わりにして受け流す。
時間がなくて作りかけしか作れ無かったけど……ダメージは押さえたよ!
「超音波で動きを止めるんだ!」
「ケーシィ、勝負どころだ。頼むよ!」
受け流されたとはいえそのまま旋回して今度は音波攻撃。それは貰えない!
『おうさ』
そんなテレパシーが聞こえたかと思えばケーシィは姿を消した。
「後ろさズバット。そのまま音波を出しながら旋回するんだ」
まずっ! 僕達のお約束のパターンが読まれてた!
いつもの癖がこんなところで……
『キィィィィ!』
『それで勝ったつもりか!』
ケーシィは予定通りの場所に姿を現す。でもそのケーシィの手元にはさっき受け流す時に使ったシャドーボールをしっかりと作り直していた。
音波をシャドーボールを壁変わりに使ってそらしたんだ! 変わりにまたシャドーボールは歪んだけど……超音波は防いだ! ここだ!
「撃つんだ、ケーシィ!」
『食らえ!』
『キシャァァ』
歪んだ状態のシャドーボールを叩き込む。ズバットは大きくバランスを崩す。拡散して威力が足りない!? けどまだだ!
「これで最後だ。シャドーボール!」
『とどめだぁ!』
「ズ、ズバット!?」
駄目押しの一撃はよろけているズバットには回避する力は残っていない。直撃をうけたズバットはよれよれと落下し、そのまま起き上がらない。よし!
「勝負ありだよ。ズバット戦闘不能、ユースケくん達の勝ちだよ!」
『やったぜユースケ!』
勝負の結果を告げるランのコールが響き、すぐにケーシィのテレパシーが聞こえる。そうだよ
「うん、僕達の勝ちだ!」
僕は力強くケーシィの言葉に頷いく。やっぱりのるかそるかのバトルって楽しいな
「くっ、お前がいきなり技を使いだすから負けたんだ。本当ならぼくが勝ってたんだからな!覚えてろよ」
う、うわ……あんな事言ってて負けたせいかすごい捨て台詞だ。いいものが見れたというかなんというかなんというか、ただすごい気持ちいい。それは間違いのない今の僕の気持だった