第1章-スクール編-
前進
「どうしてアイカワはわざわざうちに立ち読みをしに来るのかしら? たまにはランとでもどこか行って来たらどう?」
「旅に出たら当分こっちにこれなくなるからいいだろ? ランとはいつだって話せるからいいよ」

 試験が終わってしばらくだけど僕は暇をつぶそうといつものミサキ書店まで来ていた。正直な話合格か不合格かの通知が来ないとかなり暇なんだよね。それで適当に本を取って読んでるんだけど……やっぱりエリに捕まるんだよね。大体僕が悪いんだけどね

「あんたという奴はほんとどうしようもないな。ほら、たまにはお茶でもだしてあげるから営業妨害はしなさんな」
『だってさ素直にお茶でも飲んで帰るか?』

 う〜ん……正直続きが気になって仕方ないんだけどな。まあそれはこれを買って帰ればいいだけか

「そうするよ。はいエリ、会計よろしく」
「はいはいちょっと待っててよ」

本当にお茶は出てくるとは思わないけど素直に従おうか。エリがレジの方に向かって行く背中を追って僕もレジ前に移動する。丁度レジ前に駄菓子があるし買って行こうかな? う〜ん……今はいいや

「はいこれ。そういえばあんたのポケギア、光ってるけど?」

え? エリに言われて僕は右腕の方を見る。ああ、電話がかかって来ていたのかえっと誰からだろう……オーキド博士?

「あら、また珍しい人からコールが来てるわね。あんたなんかやったわけ?」
「ケンイチとかリョウトじゃないんだからさ……もしもしオーキド博士、何か御用ですか?」
―うむ、いきなりで悪いんじゃが今日中に研究所に来てくれんかの? 渡したいものがあるんじゃ―

 渡したいもの? それって一体……もしかしてポケモンかな? でもあそこにいるのって博士の研究用のポケモンと初心者トレーナーに渡されるポケモンだけだったよね……う、う〜ん

「分かりました。すぐに向かいます」
―そうしてくれると助かる。どうも南の孤島の方がきな臭いことになっておってのうケンスケくんに呼ばれておって研究室でのんびりしておる事も出来んわい―

父さんが? それに南の孤島って……あれって何か大変なことになってるみたいだね。僕が想像もつかない方向に転ぼうとしている、一体あそこで何があったのだろう?
う〜ん……考えてもダメだね。あれについてはプロに任せるべきだよね……絶対よくないことが起こってたから早く解決してほしいもんだよ

「父さんに呼ばれるってことは絶対ろくな事じゃないですよね……」
―うむ、ろくな事ではないの。という事じゃから早く来てくれ―

そう聞こえたかと思うと通信が切れたことを告げる電子音が鳴り響く。さてっとこれじゃお茶を貰ってる暇もなさそうだ。僕はポケギアの通話停止ボタンを押してからほんの入ったレジ袋を受け取ってから口を開く

「という事だよ。残念ながらお茶は無理そうだ」
「みたいね。それじゃアイカワさっさと行ってきなさいな」

そう言ってエリが【しっし】と手を動かす。それが客に対する態度なのかな……? まあ、僕自身が迷惑な客だから仕方ないと言えば仕方ないか

「それとたまにはランを誘ってどこかに行ってあげなさいよ。あの子たまにすごく寂しそうにしてるんだから」
「え……わ、分かったよ。それじゃお邪魔したよ」
『絶対何も理解して無いよな。お前』

そ、そんなこと言われてもさ……ランが寂しそうにしてるとか普段はそんなふうには見えないし僕の観察眼が悪いだけなのかな? う、うーん……観察眼ってトレーナーにはなくてはならない技術なんだけどそれが欠けているってのは致命的だな

『いや、きっとお前が思ってる意味とは違うと思うぞ……』

違わないと思うけど……なんで僕とランがかかわる話になった時はみんな色々と辛らつになるんだ? 僕が一体何をしたっていうんだろうか、全く心当たりが……ま、いいや。早くオーキド博士の研究所に行こう!














―オーキド研究所―
僕はオーキド博士のところに来るや否や研究室に通された。よっぽど時間がないみたいで研究室で待っていたオーキド博士の表情は少し焦ってるようにも見える。うんうん、ちゃんと観察できてるじゃないか。全く観察眼が無いだなんてやっぱり気のせいだったんだよ!

「よく来てくれたの。いきなりじゃがお主に渡したいポケモンがおるのじゃ」
「え?」

ポ、ポケモンだって? いやいや、なんで急にそんな事に……大体なんで僕なんだ。ケンイチでもランでも僕よりポケモンを育てるのが上手い人はいるっているのに

「元々は今年からスクールに入る子向けの初心者用ポケモンなんじゃが……どうもお前さんに懐いてしまったみたいでのぉ」

しょ、初心者向けってまさか……まさか!

「ほれ、出てくるのじゃ」
『カゲェ』

や、やっぱりヒトカゲじゃないか! 出てきたヒトカゲがすぐさま僕のもとに駆け寄ってきて僕を見上げながら鳴き声を上げる。う、うーん、あの襲撃事件以来本当に僕に懐いちゃってるな。だからこそなんだろうけど

「いいんですか貰っちゃっても。僕にはもうパートナーがいますし……」
「言っとるじゃろ。お主に懐いておって新人達のポケモンになりたがらないと」

 そ、そういう意味か。それなら仕方ないよね……それじゃありがたく受け取ろうか

「それじゃありがたく……ヒトカゲ、よろしく」
『カゲッ!』

元気よく帰ってくる返事に僕は「うん」と頷く。炎タイプのポケモンか……ケンイチに今度色々教えてもらおう。初心者向けって言っても炎を扱うんだ。暴発していつかのブーバーの事件みたいなことになったら嫌だからね……

「うむ、ヒトカゲの事を頼むぞ。ところでユウスケくん卒業試験の結果はどうだったのじゃ?」

えっと卒業試験の結果か……まだ来てないんだけどどうだったんだろう。バトルはぎりぎりだったとはいえ勝利を収めたからそこのポイントは高いと考えてもペーパー試験があったことを考えると絶対合格だとは言い難いんだよ

「実技試験は勝ってるんですけど……実際どうかって言われたら自信なんてある訳がないです」
「そうか……ふむ、不合格になろうが合格しようが君には大きな経験になるのには変わりないんじゃ。結果をしっかりと受け止めて自分の糧にするのじゃぞ」


それに対してアハハって苦笑いをしながら頷いた。不合格は、その不合格はちょっと困るかな……確かにいい経験にはなるとは思うんだけど精神的にそれは凄い辛いと思うから

「慣例ではそろそろ届く時期ではあるんじゃが」
「え、本当ですか!?」
「うむ、大体いつもこの時期に届くんじゃ。それでマサラ中が悲鳴とか歓喜の声で染まるからの。間違いないわい」

だったら、だったら……!

『行くぞユースケ。さっさと吉と出るか凶と出るか見てくるぞ』
「うん、分かってるよ。オーキド博士それじゃ失礼します! ヒトカゲ、行くよ!」
『カ、カゲッ!?』
「気を付けて帰るんじゃぞ」

僕はそう言って背中を向けて走り出す。さあ本当に吉と出ているか凶と出ているか……うん、吉って出ててほしいな














「あった、これだよ!」
『ユースケ、早く開封するんだ』

ケーシィは気が早いよ! 走って自宅まで戻ってきた僕はポストを覗き込むと封筒が入っていた。その封筒を取り出して表を見ると【アイカワ ユウスケ様】【テスト結果御中】って書いてあった。ま、間違いないこれだよ!
僕はそれを持って走って家の中に入って自分の部屋に飛び込む。その際母さんの怒鳴り声が聞こえた気がするけどそれは気にしない。デスクの中に入っているペーパーナイフを取り出してそれの封を切り中身を取り出す。中には……

『合格通知書、やったなユースケ』

そう書かれた紙が入っている。下に何かつらつらと書きつづられているが今はそんなのどうでもいい。

「やったあ!」

ただ衝動に任せたまま声を上げた。さあ、これから僕たちの冒険は始まるんだ。頑張るぞ!

Yu〜suke ( 2014/07/26(土) 23:12 )