赫奕たる銃弾
後編 『善意の協力者』
大護
(…気配は確かにある、ふたり)


俺はドアノブを握ってから、ある程度中の気配を感じ取る。
どんな相手かは解らねぇが、炎と岩のポケモンらしい。
だとすれば、自ずとこの先の展開も読めるって事なんだが…


ドォォォォォンッ!!


と、ドアを開けた瞬間に大轟音。
俺の予想通り、すぐに炎が噴射されてドアは吹き飛んでしまった。
俺は当然読んでいたので、煙と轟音に紛れて中の様子を見る。
まず見えたのは、屈強な赤髪の男。
服はマフィアの制服で、何かライオンの鬣みたいな髪型してやがる色物だった…

その隣にいたのは、赤白黒の3色を使った長い髪の女…
体格はそこまででも無いが、肉付きは良い。
スタイルもグンバツで、こちらもマフィアの制服を来ていた。
胸は零れそうになってんな…眼福眼福と。

…と、俺は相手をしっかりと確認して外から弓矢を放つ。
先ずは色物からだ。


色物
「!?」


ビィィィィン!と、色物の首元で矢が止められる。
止めたのは女の方であり、右腕を横に翳して素手で矢を握り締めていた…


大護
(ちっ、あの視界で止められるたぁな)


俺は仕方無く、部屋の中に歩み出る。
こうなったら奇襲は失敗だ…背後からも火の手は迫ってる、腹決めねぇとな。


色物
「ほう、貴様が組織に楯突く愚か者か?」


「確かに情報通り…見た事の無いポケモンみたいね?」


俺は弓矢を足元に捨て、ナイフを右手に構える。
あんな野獣っぽい体格のポケモン相手に、飛び道具は無理だ。
つまり、こっからは死ぬ気で相手するしか無ぇ…
やれやれ…生身の人間には辛いこって。


大護
「おい色物、姫さんはどこだ?」

色物
「誰が色物だ!? 貴様に言う必要は無いわーー!!」


そう言って、すぐに色物は飛び掛かって来る。
その獣の様な突進を見て、俺はナイフを合わせた。
かなりのスピードだが、反応出来ない程でもない。
俺はやや屈んでから相手に向かって飛び出す。
そして、床スレスレの低空で俺は体を回転させ、真上に向かってナイフを振った。
相手は俺の上を遠すぎており、俺のナイフは奴の胸から腹を切り裂く。

前の奴とは違い、今度はちゃんと肉を切り裂けた。
傷口から、奴の出血が見られるな。


色物
「ぐおおっ!?」


「ちっ!? 油断したかバカモノ!!」


直後、床を滑った俺に向けて女が床を手で叩く。
すると、突然岩が連続でせり上がり、俺の方に向かって来ていた。
俺は危険を感じ、すぐに転がってそれを回避する。
かなりのスピードだったが、モーションはデカ過ぎだな。


大護
(この部屋に姫さんはいるはずだが…どこだ?)


俺はすぐに立ち上がり、戦いの最中姫さんの居場所を探す。
ピースは確かに反応を確認していた…この部屋にいるはずだ。
なのに、姿が見えない…この部屋からは他の部屋には繋がっていないというのに。



「余所見してる余裕があるのかい!?」

大護
「!!」


俺は冷静に相手の動きを見切り、あくびが出そうな遅さのパンチをヘッドスリップでかわしてナイフを振った。
だがナイフは相手の肌で止まり、切り裂くに至らない。
やはり岩ってか…急所を狙わねぇとダメなタイプだな。



「そんなチャチな武器で!!」

大護
「同じ様な事言って、死んだお仲間さんがいたぜ?」
「あんま余裕は見せねぇこったな…」


俺がそう言ってナイフを構え直すと、女はすぐにバックステップする。
危機回避能力はあるか…頭はそれなりにある様だな。
さて、背後からは殺気…色物が起き上がったか。
傷を付けたとはいえ、致命傷には程遠い。
やれやれ…とっとと数を減らしたかったんだがな。


色物
「よくもやってくれたな!? 今度は焼き殺してくれる!!」


そう言って、色物は口から炎を吐こうとする。
女はそれを予測して軌道上から逃れ様と横に動いた。
俺はそれに合わせて女と軸を合わせる。
すると…当然の様に、色物は俺の方に向けて炎を吐いたのだ。
そして、その射線上には俺と女…
俺はそのまま懐から、ひとつの缶を取り出す。
それを軽く女の方に放り、俺はすかさずその場で伏せた。

瞬間…ドオオオオォォォォォォン!!と大爆発。
女はマトモに爆風を浴び、叫び声をあげて地面を転がった。
さっきの缶は、ガス缶だ。
いわゆるライターとかの補充用の奴で、中身はまだまだ満タンあった奴だな。
で、それが高熱の炎で引火してドンッて訳だ。

女は服や髪を燃やされてのたうち回っている。
いくら岩肌のポケモンだろうが、呼吸器官は人間と変わらねぇはずだからな。
さぞ苦しいだろうさ…


大護
「………」


俺はすぐに起き上がり、のたうち回っている女の首を踏み潰してすぐに息の根を止める。
そして軽く服の煤を払って、俺は色物を睨み付けた。
奴は呆気に取られており、何が起こったのか理解していない。
俺はやれやれ…とため息を吐き、少し歩いてナイフを投げ付けた。
色物はそれに反応して大きく回避するが、やはりアホだ。
俺はすぐに走り始め、捨てた弓矢を拾う。
そして座りながら狙いを定め、俺は奴の目を狙って矢を放った。
色物はそれをも回避するが、俺は既に2本目を放っている。
奴の回避するであろう方向にそれは飛んでおり、容赦無く奴の右目を貫いた。
色物はそのまま呻き声をあげ、矢を引き抜いて怒り狂う。
俺は冷静に次の矢をセットし、それを足に向けて放った。
色物は足を射ち抜かれ、その場で膝を付く。


大護
「さて、一応聞いてやる…姫さんは何処だ?」

色物
「だ、誰が言うか!!」


俺は歩きながら矢を放ち、奴の左目を奪う。
すると色物はその場を無様に転がり、もはや戦意を失いかけていた。
俺は壁に刺さっていたナイフを取り、弓矢をまた捨ててからナイフを構える。


大護
「これで最後だ、姫さんは何処だ?」

色物
「誰が貴様なんぞに…!」


俺はそのまま奴の首を切り裂く。
時間の無駄だな…思ったよりもコイツは口が固い。
多分、幹部とかそういう気がする。
下っ端とは違うんだろ…喋っても粛清されるのがオチって所だろうしな。

こう言ったマフィアならある程度統率も取れてるだろうし、忠誠心もコントロールしてるはず。
少なくとも前の奴とは明らかに違う…脅しは効かねぇ、か。


大護
「ちっ、だとすると…姫さんはここにいねぇのか?」


俺は火の手を確認しながら、探索を開始する。
部屋はそれなりに大きく、隠れられそうな場所は結構ある。
だが、仮にも人ひとりを隠すなら場所は限られるはず。
俺はクローゼットとかベッドの下とかをチェックするものの、姫さんの姿は確認出来なかった。


大護
(窓はある…あそこから逃げ出したとかか?)


俺は窓から身を乗りだし、外を確認した。
当然ながら断崖絶壁…姫さんなら飛べなくも無いっぽいが。
あの幹部っぽい奴らは慌ててもいなかった…だとすると、直前に連れ去られたと思うのが妥当だ。

俺は舌打ちをし、頭を抱えてスマホの電源を入れる。
すると、ホーム画面が立ち上がる前にピースの声が聞こえて来た。


ピース
『外…南……400』


そこですぐに音は途切れる。
そして、画面には電池残量0の文字が…
俺は歯軋りし、すぐにその場から離れる事にした。



………………………



大護
(南…は、確かこっちだな!)


俺は砦から無事に脱出し、全力で走っていた。
もうピースの力は借りられない。
後は、アイツが最後に残してくれたヒントで探すだけだ。
方角が間違ってないなら、その内見付かるはず。
400ってのが、kmじゃなけりゃな!!


大護
「クソッタレ…! 俺の方も体力は余裕無いってのに!」


正直、いくら超人の俺でもここまで休み無しで疲れてる。
どう考えてもオーバーワークであり、明らかに俺の足取りは悪くなっていた。
そして、段々と絶望感が押し寄せて来る…

もし空輸だったら、とても人の足じゃ追い付けない。
だが…諦めるわけにもいかねぇ!!


大護
「姫さん…!」


「ちょっとそこの人〜? どうかしたの〜?」


突然、俺に話しかける女の声が…
俺は疲れた顔でその方向を見ると、やけに汚い作業服に身を包んだ巨乳の姉ちゃんがいた。
見た感じ、工場とかで働いてるタイプだろうか?

両腕には何か青いアーマーみたいな何かが付いており、手の甲には鉄の爪…というかトゲ?
まぁとにかく…そんな格好の青髪短髪姉ちゃんは不思議そうに俺を見ていたのだ。
俺は、とにかく今余裕が無い為、素っ気なくこう答える…


大護
「悪いが、今急いでんだ…!」

青髪
「急いでるって…そんな疲れてどうしたの?」
「何だったら、ボクの車に乗っていく?」


そう言って、青髪姉ちゃんは何やら耳に手を当てる。
彼女の額には、Xの形をした額当てが付けられており、耳には何か通信機みたいなのが付けられていた。
そして何かをボソッと呟くと…


大護
「うおっ!?」


突然、別の道から車が走って来た…それもホバーで。
俺は目をパチクリさせ、その圧倒的な違和感を放つ車を眺める。
時間は無いと言うのに、ついそのインパクトに見惚れてしまったのだ…


青髪
「ほら、乗りなよ! 急いでるんでしょ!?」


俺はハッとなり、その車に乗り込んだ。
そして方角を告げると、その車はほとんど音も無く飛行を開始する。
俺は感嘆の声をあげ、思わずこう呟いてしまった…


大護
「マジか…こんな○ラえもんとかで出て来る様な乗り物が」

青髪
「何それ? って言うか、そんなに珍しい?」

大護
「あ〜、まぁ俺にはな…この世界の連中にはどうか知らねぇが」


俺が曖昧にそう言うと、青髪姉ちゃんはふーん…と言って車を運転する。
ほとんど反動無ぇんだな…浮いてるんだし、当然何だろうが。
しっかし、オープンカーなのにほとんど風を感じねぇぞ?
一体どうなってやがるんだ?


大護
「何で風を受けねぇんだ?」

青髪
「そりゃバリア張ってるもん」


あっさり返された。
俺は呆れて何も言えなくなる…バリアってか。


青髪
「…この星の文明って、ホントに低いんだね〜」
「成る程、納得だよ…道理で受付が厳しい訳だ」

大護
「あん? どういうこった?」

青髪
「この星はね…いわゆる文明レベルが低い星なの」
「だから、外から来たボクたちからしたら、イタズラに干渉したらダメなわけ」


俺はまた目をパチクリさせて考える。
星ってか…つまり、何だ?


大護
「もしかして…おたく、宇宙人?」

青髪
「この星の人からしたら、そうなるね〜」
「一応、他星系から来たのは確かだから」


俺は絶句する。
まさか、本物の宇宙人に会えようとは…
だが、見た感じコイツもポケモンっぽいんだが?
宇宙ポケモンとでも思えば良いんだろうか?


青髪
「そう言えば、自己紹介がまだだったね…」
「ボクは『佐藤 花子(さとう はなこ)』、メタグロスのポケモンだよ♪」

大護
「思いっきり日本人かよ!?」

佐藤
「あれ? 知ってるの!? もしかして、君も地球人!?」


俺は思わず頭を抱える。
広そうに見えて、何て宇宙は狭いんだ!
つーか、つまりここは別の星系の惑星か何かな訳ね…


大護
「…はぁ、俺ぁ石蕗 大護」
「ただの、人間だ」

佐藤
「人、間…?」
「それって…遥か大昔に存在してたって言う、幻の!?」


遥か昔…ね。
この世界じゃ、そういう存在な訳だ。
俺は随分レアなモンじゃねぇか…
つまり、本来ならいるはずの無い存在って訳だ。


大護
「…この車、充電とか出来ねぇか?」

佐藤
「何を充電するの?」

大護
「スマホだよ、携帯電話」


俺はそう言ってスマホを出すと、佐藤さんはギョッとした顔でそれを見た。
そして、目をキラキラさせながらこう喋る。


佐藤
「何それ!? 滅茶苦茶古いタイプのアンティークじゃん!?」
「スッゴーーイ! ボク初めて見たよ!! それまだ使えるの!?」

大護
「あ、いや…通話は出来ねぇんだが、色々便利なんでな」

佐藤
「うーん、でもそれを充電するのは無理かな…普段はどうやってやってるの?」

大護
「そりゃ、有線ケーブルで電源に差してだろ…」
「最近のは無線のもあるらしいが、俺のは対応してねぇし」


俺はそう言って、ポケットから充電ケーブルを取り出す。
佐藤さんは片手で運転をしながら、それを手に取って確認していた。


佐藤
「うわっ、端子も古い…出力も低そうだね〜」
「でも、これなら船に戻れば何とかなるかも…」
「そう言えば、君の目的地って何処なの?」

大護
「拐われた人を探してる…方角は南としか解らねぇんだが」


俺はそう言って周りを見渡す。
この車は軽く150kmは速度が出てる…それなのにそれらしい影も見えねぇとは。


佐藤
「拐われたって…誰に?」

大護
「マフィアだよ…何でもこの辺りで幅効かしてる大物らしい」
「何でもモスノウってポケモンは貴重らしく、それで狙われたんだ」

佐藤
「まさか…それって、宇宙海賊マフィアなんじゃ!?」


うわ…何か嫌な予感しかしないワードが出てきたな。
何か急にSF感が出て来たんだが、大丈夫か本当に?


大護
「…とりあえず、何なんだそのマフィアは?」

佐藤
「ここらの星系を牛耳ってる、元締めみたいなマフィアさ」
「基本的に悪どく、狙った獲物は宇宙の果てでも追いかける!」
「理由は知らないけど、とんでもない相手に狙われたんだね〜」


聞くだけで嫌気が差すな。
そして本格的にヤバイ感じがしてきた。
この辺りの星系とか言い出したら、つまり逃げ場なんて無ーってこった…

俺は思わず頭を抱えてしまう。
本気でバックレてやろうかと一瞬思っちまったぜ…
まぁ、それ位絶望的ってこったな…やれやれ。


大護
「…しゃあねぇな、おい佐藤さん」

佐藤
「ん、何?」

大護
「宇宙に出る為のステーションとかはこの先にあるのか?」

佐藤
「うん、あるよ」
「って言うか、ボクの船がある所なんだけどね〜」


成る程、そりゃ好都合だ。
本当に相手が宇宙海賊とかなら、恐らく姫さんはこの星から連れ出される可能性が高い。
仮にも姫さんはここでは重要人物だ。
いくらマフィアの圧力が強いと言っても、わざわざこの星で姫さんを売るなんて真似はしねぇだろ。
だったら、ステーションで探した方が手っ取り早い。
それらしい連中を見付けりゃ、ふん縛ってでも吐かせりゃ良いからな…


大護
「ちなみに、この星には他にもステーションはあるのか?」

佐藤
「ううん、無いよ」
「この星は文明力も低いし、そもそも小さな星だ」
「宇宙ステーションでさえ、公には出来ない場所にある」
「その存在その物が、この星の文明に影響を及ぼしかねないからね…」


文明…ね。
要は、この星にとっちゃ宇宙船とかは未知の文明で、それを下手に広めたら星系のバランスが崩れるとか、多分そんな話なんだろう…
宇宙で戦争とか起こったら、それこそとんでもない事になるだろうからな。


大護
「悪いな、何か利用してるみたいで」

佐藤
「あははっ! 君って、良い人間なんだね♪」


彼女はそう言って嬉しそうに笑う。
素直に可愛いと思えるその顔を見て、俺は思わず口元を押さえて顔を背けた。
ちっ…調子狂うじゃねぇか。


佐藤
「ボクは…色々と問題のある性格でさ」
「多分、君に手を差し伸べたのはただの善意なんだよ」

大護
「………」


彼女は前を見て運転しながら、そう呟く。
俺は彼女の横顔を見て、何となく陰があるのを理解した。
過去に何かあったタイプだな…それも、相当根が深そうな感じだ。


佐藤
「…まぁ、とにかく気にしないで!」
「ボクに協力出来る事があるなら、手伝ってあげるから♪」

大護
「…相手は巨大な組織なんだろ? 下手に関わらない方が良いんじゃ無ぇのか?」

佐藤
「そうだね…でも、大丈夫さ」
「ボクたちの船はここからだと別銀河だし、地元に帰れば相手も追っては来ないよ」


そりゃまたスケールの大きい話だ…
いくらマフィアと言えども、管轄外まで逃げれば手出しは出来ねぇってか?


大護
「全く…それなら宇宙刑事とかも本気でいそうだな」

佐藤
「そりゃそうさ! 宇宙警察がいなかったら、今頃全宇宙で犯罪だらけになっちゃうよ…」


どうやら本気でいるらしい。
まぁ、流石に○ャバンみたいなのはいないと思うが。
やれやれ、特撮ファンが聞いたら卒倒しそうな話題だぞコレは。

とまぁ、そんな感じで会話をしながら、俺たちはステーションへと向かった。
到着までは小一時間程だが、ぶっちゃけ速すぎだ…
この星には法廷速度なんて無いからトバしたい放題なんだそうだ…



………………………



大護
「…マフィアの奴らはいるか?」

佐藤
「多分ね…偽装してるかもしれないけど」


俺たちはステーションに入ると、早速発着場を探索する。
ここはそんなに広くは無い施設で、ぶっちゃけ停まってる船も2隻だけだった。
その内のひとつが佐藤さんの物らしく、必然的にもうひとつがマフィアのって事になるが…


佐藤
「多分、あの船が本命だとは思うんだけど…」
「大護君は決して無茶しないでね? 後、君のスマホを貸してくれないかな?」

大護
「? 何故こいつを?」

佐藤
「充電がいるんでしょ? だったらボクの船で何とかするよ」
「後…増援をひとり送るから、上手く合流して」
「姿は、赤い砲を右腕に装備した『ブロスター』だから…」


佐藤さんはそれだけ言って、俺のスマホを胸の谷間に突っ込んで走り出した。
あれは天然でやってるのだろうか?
後で匂い嗅いどこう…


大護
(しかし…赤い砲ね)


○イコガンか何かなのだろうか?
色々と妄想を掻き立てられるが、とりあえず俺は俺の仕事をする。
武器はナイフ1本と、残弾1発のデザートイーグルか。
相手はどんだけいるか解らねぇが、増援さんに期待させてもらうかね?

俺はそう思い、まずは奴らの船を目指した。
ちらほらと人が出入りしてやがるな…



………………………



大護
(見た感じ、一般人っぽいが)


俺は荷物の影に隠れながら観察をする。
船を出入りしている奴らは割と普通の格好をした作業員みたいな連中だった。
佐藤さんの言う様に偽装してるだろうか?
だとしたら、特攻は危険すぎるな…

仮にも相手はポケモンだ。
それも俺にゃあタイプも種族も全く解らん!
強いのか弱いのかも判別は付かねぇからな…
いきなり踏み込んで灰になりましたじゃ笑えねぇ。


大護
(とはいえ、姫さんが既に中だとすると行かざるを得ねぇ)


最悪…機関部を破壊でも出来りゃあ、佐藤さんに拾ってもらって逃げる事も出来そうだが。
あまりあの人に負担はかけたくねぇ。
俺の仕事は第三者に迷惑をかけないのが筋だ。
本当なら、手伝ってもらう事自体がタブーなんだがな…

だが、あの人の眼は本物だった。
本当にただの善意だけで俺に協力すると言ってくれたのだ。
あんな人間は、そうそういねぇだろ…


大護
(だからこそ…極力眼を付けられねぇ様にやりたいんだが)


俺は船内に突入する算段を整える。
船員が何人いるのかは不明だが、少なくとも荷物を搬入してる奴は何人もいる。
変装して忍び込むのが鉄板なんだが、良くも悪くも俺の見た目はただの人間だ…
いくらなんでもポケモンに成り済ますのは無茶すぎる。
と、なると…必然的に強行策になるわけだが。


大護
(荷物の搬入が終わる前に、やらなきゃならない)


救い出せたとしても、それで宇宙に飛び出してましたじゃ本末転倒だからな。
可能なら、すぐに佐藤さんの船に乗り込んで逃げたいのが本音だ。
やれやれ…げんなりしそうなミッションだな。

とはいえ、俺の頭は冷静だ。
そして確実に仕事を遂行するルートを構築していく。
こういうのは経験が物を言う。
相手はマフィアって言っても下っ端だろう。
なら、あしらうのはそこまで問題じゃないはず。


大護
「問題は…ここだけだ!」


俺はクルーの眼に止まらない一瞬の隙を突いて、船の入り口近くまでまでは走る。
幸い搬入の音に紛れて足音は気付かれてねぇ。
誰も俺には注目しておらず、俺は搬入口の階段を下からジャンプしてよじ登った。
その間わずか2秒! 我ながら素晴らしい速度だ。

俺はそのまま滑り込む様に船内へ侵入し、すぐに荷物の影に隠れて気配を絶った。


大護
(よし、ここまでは満点だ…後は姫さんを探すだけなんだが)


増援がどのタイミングで来るかは解らない。
だが、少なくとも武装したポケモンを送り込んで来るなら、暴れさせる気なのだろう。
なら、俺は可能な限り速く姫さんを回収して脱出する。
多分、増援は入り口を制圧してくれると俺はヤマを張った。

こういう時、勘が物を言うってね♪



………………………



大護
(小さい船だ、そんなに手間はかからないと思うんだが…)


俺は船内をくまなく探す。
だが姫さんの姿は見付からなかった。
後、各部屋にはオートロックがある様で開く気配は無い。
つまり、部屋に入れられてたら俺にはどうしようもないってこった…


大護
(ちっ、こんな時にピースがいりゃあな)


あいつなら探知も出来るし、電子ロックならすぐに開けられるはず。
今更だが、こんな時こそあいつの出番だと思う…
元々、あいつの性能はこんなSF寄りだしな。


大護
(とはいえ…こりゃミスったかな?)


このままじゃ時間が過ぎるだけだ。
佐藤さんの言う通り、無茶をしない方が良かったのかもな…
しかし、愚痴ってても仕方無い。
こうなったら、マフィアを見付けて脅しかけるしか無いだろう。


大護
(と、丁度良くひとりで彷徨く馬鹿発見!)


俺はすかさず背後から接近し、まずは口を抑えて相手の両脇を切り裂いた。
そして、すぐに首へナイフを当ててこう脅しをかける。


大護
「大声は出すなよ? 俺の質問にだけ素直に答えろ」

船員
「!!」


船員はコクコクと激しく頷き、素直に従う様だった。
もしかしてパンピーだったんだろうか? だとしたら悪い事をしてしまったな…
まぁ、とりあえず情報収集だ。


大護
「この船にモスノウの少女はいるか?」
「ちなみに俺は嘘が解る能力者だ…嘘だと解ったらその場で殺す」

船員
「そ、その少女なら積み荷の中だ…!」
「確か、最後に搬入される積み荷に詰め込まれてるはず…」


ちっ、まさか積み荷だとはな。
完全に俺の読みが外れてんじゃねぇか!
くっそ〜勘には自信あったんだがな…自信無くすぜ。
ちなみに、嘘が解るとかは完全にハッタリだ。
この世界には無能な人間はいないらしいし、それ位ハッタリ効かせても信じてもらえるだろうからな。


大護
「最後にもうひとつ、お前はマフィアの一員か?」

船員
「ち、違う! 俺はただ船を動かす為に雇われたクルーだ!」

大護
「そうか、なら悪かったな…応急手当位はしといてやるよ」


俺はそう言って船員の三半規管を銃のグリップで強打し、気絶させる。
その後、上着をナイフで切り裂いて船員の両脇を止血しておいた。
上着はそのまま捨てておく…まぁそこまで寒くは無ぇからな 。

タバコは…もう良いか、ほとんど残ってなかったし。
俺は若干寂しさを感じながらも、愛用の革ジャン捨ててすぐに走り出した。
銃は脇下のホルスターに仕舞っておく。

やれやれ…出戻りたぁな!



………………………



大護
(最後に搬入つってたな…だとしたら護衛とか付けてんのか?)


少なくとも、積み荷に詰め込まれてるのは確かだ。
だったら、わざわざ船内に潜る必要性は無かったんじゃねぇか…
やれやれ、本格的に俺も耄碌したもんだぜ。
まさかここまで無駄な行動を取るたぁな。
やはり、情報不足な状態で突っ走るのはダメだと改めて教えられた。

とはいえ、船外よりも船内の方が脅迫は楽だったのも確かだ。
船外でやってたら、誰に眼を付けられるかも解らねぇからな。
下手に警報でも鳴らされてたら、その場でアウトだ。


大護
(ちっ、しゃあねぇな…こうなったらまた眼を盗んで)


と、俺が思った矢先…突然近くにいた船員が倒れ始める。
血は出ていないが、眠らされてる!?
俺はすぐに状況を察し、ポケットからハンカチを出して口を塞ぐ。
船内に霧がかった何かがバラ撒かれたのだ。

俺はこの時点で察する…恐らく、増援が来たんだろう。
なら、さっさと合流すべきだが…


大護
(待て…いくら何でもタイミングが良すぎる)


船内の様子を俺は思い出す。
中にはマフィアらしきポケモンはいなかった。
むしろ雇われのクルーだけを使ってるってのは、どうにも府に落ちねぇんじゃねぇのか?

マフィアの船だってんなら、もっと護衛を増やしてる可能性が高いはずなのに…


大護
(まさか…このタイミングで!?)


俺はハッとなり、すぐにナイフを構えて船内で奇襲を仕掛ける事にした。
まず駆け込んで来た相手を狙い、俺は急所を的確に切り裂く。

すると、ゴトリ…と音をたて、ひとり倒れた。
見ると、全身武装した何者かだ。
尻尾みたいなのも見えるから、その手のポケモンだな。
そして手には見た事もない銃…俺はそれを見てすぐにナイフを仕舞い、銃を拾って感触を確かめてみた。


大護
(何だコリャ? いくら何でも軽すぎんだろ、オモチャか!?)


それ位軽い。
俺はそれを実銃だとはとても思えず、違和感だらけの銃を握って戸惑う。
腐っても未来世紀の銃だ、多分相当スゲェんだろ。
俺は若干期待しつつも、それを持ち敵を迎え撃つ事にした…










Avenger 赫奕たる銃弾


後編 『善意の協力者』 完



…To be continued

Yuki ( 2020/09/09(水) 14:58 )