赫奕たる銃弾
前編 『招かれざる男』
男A
「…ほう? こいつぁ大物だな、賞金200万たぁ」

男B
「しかし、見た事の無い顔だぜ? こいつぁ、何のポケモンだ?」


動物も寝静まる深夜…
とある市街地の薄暗い路地で、ふたりの男が壁に張ってある紙を見ていた。
そこには何枚もの賞金首の顔が並んでおり、男たちはその内の1枚に注目していたのだ。

それはやや真新しい物の様で、他の賞金首たちよりも少しだけ綺麗に見える。
そして、そこに写っている男の顔は、やや中年に入りかけた男の顔だった。


男A
「…種族の詳細は不明だとよ、見た感じじゃ全く解らねぇな」


男はそう言って自分の顎髭を触る。
それはただの髭では無い…白く丸い形で顎下から伸びており、それは彼の種族の特徴とも言えた。
口髭も立派に伸びており、やや首の長いその体は『ジジーロン』と呼ばれるポケモンだ。

だが、一般的にそれが『ポケモン』というには、やや疑問がある。
何故ならば、この男…いや、この世界に住む全ての者は『人化』した『ポケモン』であるからだ。
恐らく、今この物語を見ている諸君らには、?の文字が浮かんでいるだろう。

しかし、それはこの世界の理(ことわり)であり、そして真理…
とある神が造りたもうたこの世界に置いて、ポケモンは皆等しく、人の姿をしているのだから…


男B
「名前はUNKNOWNね…要は解かんねぇって事か」


もうひとりの男は、まるで河童の皿の様な頭部を傾けて息を吐く。
その息はやや長い鼻から放たれており、それは高温を放っている。
彼は『バクガメス』という種族であり、炎のドラゴン…
背中には特徴的な甲羅を背負っており、下手にそれに振れれば大爆発を起こす危険な代物だ。

ふたりは、いわゆるタッグであり賞金稼ぎのふたり。
そう、このふたりは新たに賞金を稼ごうと思い、賞金首のリストが張られているこの路地裏に来ていたのだ…


ジジーロン
「…しかし、賞金200万P(P…ポケ、この世界に置ける共通通貨)ってな相当のワルか?」

バクガメス
「確かに、その下の凶悪犯罪者が50万って所だからな」
「何々…? マフィアから指名手配だぁ?」
「おいおい、コイツぁアレじゃねぇのか?」
「前に、国家転覆しかけたって…確か、女ひとり助ける為に奴隷売場を襲ったって奴!」


相方のジジーロンはそれを聞いて顔をしかめた。
その話はこの辺りでそれなりに有名であり、そしてごく最近の話であった。
そして同時に恐ろしい話でもあり、この辺りの国家を脅かしている有名マフィアに目を付けられている話題でもある。

ふたりは、正直そこまで有名な賞金稼ぎでも無い。
精々、小物とかその辺の賞金首を狩って生計を立てている程度だ。
つまり、ふたりにとってこの200万Pという賞金首は、あまりに高嶺の花であり、そして無謀な挑戦でもある。

しかし、ふたりは同時に燻ってもいた…
今まで小物ばかりを相手にしていて、ここらで大物を狩って名を上げたいと思っていたのだ。
そして、この名も無い賞金200万Pの男は、ある意味格好の相手であった。


ジジーロン
「成る程な…誰かは知らねぇが、マフィアに追われてるなら好都合じゃねぇか?」

バクガメス
「やる気か? 相手は仮にも200万だぜ? それもひとりで世界的に有名なマフィアに喧嘩を売ったバカだ」
「アレを相手にして生き残ってるとなると、俺たちだけじゃ手に余る…」

ジジーロン
「だからこそだろうが? 利用出来る物は何でも使う…」
「要はマフィアの依頼だろ? この200万ってのも、そのファミリーが大袈裟に色付けてるだけだろうが」


ジジーロンはそう言って葉巻に火を点け、ククク…と笑う。
そう、この世界のご時世…ちょっとした賞金首に多額の金がかけられるのはそれ程珍しくもない。
特にマフィア関係の賞金首となれば、メンツに関わる部分も多い。
それ故に、実力や危険度とは関係無く、多額の賞金がかけられる事は往々にあるのだ。

だからこそ、ジジーロンは笑ってその賞金首の顔を見た。
相方のバクガメスは高温のため息を吐き、そして同じく賞金首の顔を睨み付ける。
互いにやる気だ…これはチャンスなのだから。


ジジーロン
「行くぞ?」

バクガメス
「やれやれ、まぁ本当に小物なら助かるんだがな…」


「ちっ…ここにも張ってあんのかよ」


ふたりが立ち去ろうと壁に背を向けた直後、ひとりの男が壁を見て毒づいた。
男はこの世界では見ないタイプのタバコを吹かし、壁に張られた200万Pの賞金首の紙を手で剥ぎ取る。
そしてそれをすぐにライターの火で炙り、さっさと焼却してしまった。

それを見て、賞金稼ぎのふたりは目を向いて驚く。


ジジーロン
「あの人相…そしてタバコ!?」

バクガメス
「間違いねぇ! アイツだ!!」
「アイツが、200万の……」


瞬間、バクガメスの眉間に孔が空く。
いかに装甲の厚いバクガメスとはいえ、柔らかい急所はある。
タバコを吸っていた男は、相手を見る事無く、その急所を的確に銃で撃ち抜いてバクガメスを絶命させた。

隣にいたジジーロンはそれを見て逆上し、大きく口を開ける。
…が、その瞬間にジジーロンの口の中に1発の銃弾が撃ち込まれた。
仰け反り気味に口を開けたのが災いし、その銃弾はジジーロンの口内から脳にまでめり込んでしまったのだ。
ジジーロンもそのまま絶命し、後ろにゆっくりと倒れた。



「…ここも、アウトか」


男はタバコの灰を灰皿に捨てる。
それは胸ポケットに仕舞ってある携帯灰皿であり、この世界では異質の持ち物。
そして、それはその男の特異性を示す持ち物でもあった。



「…残弾はとうとう1発か、いよいよ心許なくなってきたな」


男は自分の銃を見て顔をしかめる。
その銃は、この世界では見る事の出来ないワンオフとも言える銃だ。
故に、弾丸は有限であり補給はままならない。
つまり、彼のその言葉はある意味追い詰められている証でもあった。



「ちっ、何でこんな事になっちまったんだか…」


男はそう言いながらタバコを握り潰す。
そうして手の中で火を消し、吸い殻を携帯灰皿に捨てた。
このタバコも既に残り少ない…やはりそれもこの世界には存在しない銘柄であり、ある意味彼の最大の悩みでもあったのだ。



「知り合いもいない、訳も解らない、どこにいるかも解らない…」
「やれやれ…前途多難なこって」


男はそう言って銃を懐に仕舞い、死体となったふたりに目もくれずその場を去る。
男はこの世界ではやや珍しい服装をしており、白のタンクトップに茶色の革ジャン、更に茶色のズボンを掃いており、それはいわゆる現実世界に置いて、現代的なファッションとも言えた。

しかし、この世界ではそんな服装は当然メジャーな訳ではない。
この世界は、いわゆるファンタジー寄りな世界観であり、どちらかと言うと中世的とか、SF的とか、そういう世界観と価値観であるからだ…

そう、これを見ている者なら想像は付いているだろう。
彼は、この世界の人間ではない。
そして、ポケモンでもない…彼は、異世界からやって来たひとりのイレギュラー。

その者の名は……


少女
「大護! こんな所にいた〜!!」


「ちっ、大声出すなバカ…追っ手がここまで来てんだぞ?」


大護と呼ばれた男は、そう言って少女の後頭部を軽く叩く。
その衝撃で少女は前のめりによろけ、涙目で頭を抑えて男を睨んだ。
そう、それはこの男の名前…
たったひとりの女の為に世界を敵に回し、そして救おうとした愚か者…

その者の名は、本来の世界で『石蕗 大護(つわぶき だいご)』と呼ばれている…


少女
「何よバカ〜!? 心配して探してあげたのに〜!」

大護
「バカはお前だ…狙われてる自覚をしろ」
「こうなった以上、俺らは一蓮托生…もう余計な争いは出来ねぇんだぞ?」


大護はそう言って少女を睨み付ける。
それを見て少女は悲しそうに俯いた。
少女の背丈は大護の胸辺りであり、身長は150cm程。
髪型は普通のロングヘアーで、色は透き通った白。
しかし、頭からは2本の長い触覚が伸びており、彼女がただの人間ではないのだと証明している。

いや、この世界においては彼女の方が普通ではあるのだが…


大護
「とにかく、目立つな…ただでさえこちとら賞金首にされてんだ」
「いつどこで狙われるか解ったもんじゃねぇ」

少女
「う、うん…」


少女は青い瞳を細めて悲しい顔をする。
その際、背中に生えている美しき白い羽根が小さく羽ばたき、そこから冷たい鱗粉を放った。
大護はそれに当てられ、やや体を震わせて頭を抱えている。

そう、彼女もまたポケモンであり、その種族は『モスノウ』…
まだ少女の外見でありながら、その姿はあまりに美しく、そして身の上的に狙われやすかったのだ…


大護
「…すぐにこの街を出るぞ」

モスノウ
「でも、ここから逃げてもどこに行けば…?」


大護はそれ以上何も言わなかった。
モスノウの少女は、そのまま早足で歩く大護の背中にちょこちょこと付いて行く。
ひょんな事から、たまたま出会ったこのふたり…
一体、これからふたりはどうなってしまうのか…?











Avenger 『赫奕たる銃弾』

前編 『招かれざる男』









………………………



大護
「………」

モスノウ
「ねぇ、一体どこに向かおうとしてるの?」


俺は、残り少なくなったタバコを吹かしながら、とある街の路地裏を歩いていた。
人気はそれほど無いが、誰もいない訳じゃない。
むしろ、この夜が更けた時間帯においては、一部の客層が溢れ返る時間帯だ。


大護
「…黙って付いて来い、とりあえず安全そうな場所で身を隠す」


俺がそう言うと、近くから艶やかな声が響き渡る。
その声を発しているのは色っぽいポケモン娘であり、見た目からしてエロい女だ。
そう、この通りはいわゆる風俗街であり、その手の接客が多数行われている通りって訳だ。


風俗嬢
「そこのお兄さ〜ん♪ ウチで1発ヌイてかな〜い?」

大護
「悪ぃな、今日は先約があってよ…また機会があったら寄らしてもらわぁ♪」


俺はタバコを咥えながら、ウインクして会釈する。
それを見てエロい風俗嬢は笑顔で手を振ってくれた。
それを見て、姫さんは露骨に嫌な顔をする。
ちなみに、姫さんってのは俺の少し後ろからちょこちょこ付いて来てる、モスノウのお嬢さんの事だ。

名前は『ティア・フローシス』…
身長は150cmちょいで、セミロングの白髪が非常に美しく、見た目はかなりレベルが高い。
虫タイプって事もあり、背中から生えている羽根は透き通った色をしており、うっすらと背景を透過していた。
そしてその羽根からは氷の鱗粉が振り撒かれており、近付く物を軽く凍てつかせる事も出来るらしい。
俺にゃあよく解らねぇが、何でもポケモンの特殊技とかを弱める効果があるんだとか…

普段はちゃんとコントロールして抑えてる様だが、まだ進化したばかりの姫さんじゃそう上手くは扱えないらしいが…


ティア
「…貴方、もしかしてそのつもりで私を連れ回してるの?」

大護
「冗談は止せ…俺はガキに興味は無ぇ」


俺はあっさりとそう返す。
まぁ姫さんは身長が低いだけで、胸はあるしそれなりにエロそうな体はしてそうだが…
とはいえ、年は年。
未成年相手に欲情する程、俺は落ちぶれてもいねぇ。
…まぁ、本当にエロいなら仕方無い事もあるんだがな!


ティア
「むぅ…私のナイスバディに目が眩んで、襲おうって腹なのね!?」

大護
「寝言は寝て言え…体は確かに立派だが、俺はこれでも理性は強い方なんだ」
「とりあえず少し静かにしてろ…安全そうな店を探すからよ」

ティア
「どんな店に連れ込むつもりなのよ!?」
「私、絶対に処女は守り通してみせるんだからね!?」


そう言って姫さんは自分の体を抱いて訴える。
服は真っ白なダッフルコートを着込んでいる為、見た目でスタイルは解り辛い。
やれやれ…しかし面倒臭ぇな。
そもそも、何で俺はこんな子守りをやる羽目になったのか?
話せば短くなるが、とりあえず読者に説明は必要か…



………………………



あれは…本当に唐突な出来事だった。
眠っていた俺が目を覚ますと、目の前に広がっていた光景は見た事も無い世界。
これでも世界各国を回りに回った旅の経験者だが、それでもこの世界は記憶に無い世界だった。

そもそも、人化したポケモンだけが住んでいる世界とか俺は聞いた事も見た事も無い。
地球上に住んでいる『PKM』は、全人口の中からしたらあまりにも少ない数だからな。
それなのに、この世界では俺みたいな『人間』が逆に珍しいと来てる。
そもそも、存在自体見た事も無いって位に俺はレアな存在らしい。

そんな俺は、たまたまマフィアに襲われていた姫さんを助けちまった。
成り行きとはいえ、そのまま俺は姫さんと行動を共にし、そして今に至るって訳だ。
件のマフィアからは常に狙われているし、ロクでもない賞金稼ぎにも命を狙われる毎日…

正直、ひとりで逃げりゃ全然楽だったんだがな…


ティア
「………」


俺は横目に姫さんの顔を見る。
不安そうな顔だ…まぁ命を狙われてるんだからな。
理由はよく解らねぇが、とにかく世界でも有数のマフィアに命を狙われている。
見た目はかなりの美少女でスタイルも良い。
もうちっと成長したら、誰もが羨む女になるであろう事は容易に想像出来た。

しかし、俺に助けられたのが運の尽き…今じゃ地獄の逃亡生活だ。
まぁ子供にゃあ、受け入れ難い生活だわな…


ティア
「…ねぇ、本当に体目的じゃないの?」

大護
「くどいっつーの!! どうせ抱くならテクもあるちゃんとした風俗嬢を抱くわ!!」


俺はタバコの灰を携帯灰皿に捨てながら反論する。
まぁ、姫さんのレベルなら抱けなくもないんだが…それでも俺にはそんな気が起きない。
いや勃つには勃つんだが、実行する気はないってトコか。

ちなみにこう見えても俺はかなりの女好きだ。
ちょっと前は色々と問題もあったが、今ならそれも克服してる。
ヤろうと思えば、いつでもヤれるんだよ今の俺ぁ…?


ティア
「…そんな事言って、顔はニヤついてるじゃない!?」

大護
「そりゃこ〜んな風俗街にいるんだ! どこ見てもエロそうな女ばっかじゃねぇか!?」


俺は目を煌めかせて色んな店の受付嬢を見た。
正直、この世界の女はレベルが高い!
現実のPKMは、何かとピンキリだからなぁ〜
あ、ちなみにPKMってのは、俺の世界で言う『ポケモン人間』の呼称だ。
人化したポケモンの事を、総括してそう呼ぶ事にされてる。
まぁ、その辺は適当に覚えておいてくれ。

細かい設定は以前の作品やら本家の方で語ってるからな…
一応今回は独立した作品ではあるものの、専門用語はいくつか出て来るから、意味だけでも知っておいてもらえると有り難い。


ティア
「…ホンット最低! 何で貴方なんかが、私を助けたのよ…」


姫さんは泣きそうな顔で俯く。
やれやれ…追い詰められ過ぎてもう余裕も無いか。
俺は少し頭を掻き、トレードマークの長いお下げを揺らして息を吐いた。
そしてタバコの吸い殻を携帯灰皿に捨て、俺はひとつのホテルに目を付ける。
いわゆる大人が休憩する場であり、値段もそれなりのホテルだ。

俺はとりあえず姫さんの手を引いてその店に入り込んだ。
その際に、周囲の気配を探っておく…とりあえず、追っ手は無さそうだな。



………………………



ティア
「………」

大護
「…今の内に風呂に入っとけ、朝にはすぐ出るぞ?」

ティア
「良い…お湯とか嫌いだし」


そう言って姫さんはベッドの上で踞っていた。
何だかんだで服やら体は汚れてる。
目立たないって意味でも、風呂位には入ってもらいたいんだがな?


大護
「無理矢理にでも俺に入れられたいのか?」
「汚れた顔のままじゃ目立つから入れって言ってんだ」

ティア
「…うるさいわね、解ったわよ」


姫さんは愚痴りながらもひとりで風呂場に向かう。
俺はため息を吐きながらも、自身が愛用する銃の手入れを続けた。
残った弾は1発…か、実質この銃はもう使えないも同然だな。

これを撃つ時は、俺が命を捨てる覚悟の時だ…
今後追っ手と戦う際には、別の武器で戦わなきゃならない。
これでも、俺は人間という枠内なら世界最強の殺し屋として自負してる。
だが、この世界にいるのは人外も同然のポケモン人間共…

そんなバケモノ共相手に、無策で挑むのは流石にリスクが大きすぎるからな。


大護
(相手が格闘戦に特化してればまだ良いが、そうじゃなかったら何されるか解らねぇ…)


何しろ、ポケモンってのはタイプが数多くある。
そのタイプごとに特徴も様々、得意技も千差万別。
特に俺はポケモンの事は詳しくねぇ…正直、知らないポケモンを相手に立ち回るのはそれなりに怖さはある。

この世界において、俺の今まで蓄積した殺しの経験がどこまで通用するかは解らねぇからな…
少なくとも、ここまでの相手は急所を撃ち抜けば即死する奴らばかりだった。
つまり、どうあってもPKMの体は人間のそれとそれ程の違いは無ぇって事だ。

弾さえありゃ、殺すのは訳無ぇ奴らばかりなんだがな…


大護
(まっ、そんなに上手くいくわきゃ無ぇってな…)


この世界に俺の愛銃の弾なんざ有りゃしねぇ。
銃という概念すら希薄な感じだし、そもそもPKMしかいない世界でわざわざ銃を使う奴なんていないってこったな…

そもそも、どうやったってこの世界は人外のPKMだらけ。
この世界に置いては、俺はただの無力な種族に過ぎない。
そんな俺が、姫さんを庇いながら生き残るには知恵がいる。

いや、知恵だけじゃ限界もあるだろう。
だからこそ、俺には助けがいるわけだ。
そして、俺には欠け替えの無い『相棒』がひとりいる…
俺はそんな相棒に期待をして、ポケットからスマホを取り出し、こう語りかける。


大護
「おい『ピース』、追っ手はどうだ?」

ピース
『わんさかいますよ〜正直、ウザッ!って思いたくなる位には…』


俺のスマホの画面に突如表示されたのは、ひとりのポケモン娘。
名はピースと言い、種族は『ポリゴンZ』とかいうのらしい。
更にバーチャルポケモンとかいう分類でもあり、コイツは例外的に俺の世界から連れて来られた仲間でもあった…

…まぁ、このスマホに封印されたまま、外に出て来る事も出来ねぇんだがな!

しかし、コイツの能力は非常に優秀だ。
この状態でも広範囲に索敵は出来るし、電子ロックの鍵なんかちょちょいのちょい。
その気になりゃ衛星乗っ取ってコントロールも出来るって位らしいが、どこまで本当なのやら…

とまぁ、こんな女が俺の相棒であり、そして大切なパートナーって奴さ。
ちなみに、見た目はレースクイーンの様なピッチリ系の服を着ており、強調されているボディーラインはグンバツ。
胸元だけは青色で塗られており、それ以外は赤色。

髪型は赤髪のストレートロングでサラリとしている。
そして、頭の天辺には種族特有の角の様な丸い突起。
ちなみに、瞳の色は金色だ。

口調は基本的に丁寧なんだが、性格はやや粗っぽい。
毒舌家でもあり、丁寧な口調でも容赦無くメチャクチャな言動をかます姿はまさに暴君と呼べるだろう。

…基本的に大人しくしてれば、ただの可愛い奴なんだがな。


ピース
『面倒ですね〜、この状態じゃなかったら秒で一掃してやるんですけど』

大護
「…そうも言ってられねぇのが現状だ」
「この世界は解らない事だらけ、右も左も解らない以上、生き残るにゃあ策を練らなきゃならん」

ピース
『それなら簡単でしょう? とっととひとりでオサラバですよ!』
『何が楽しくてわざわざ足枷はめるんですか? 生き残るのが優先ならそれが最善でしょう?』


言いたい事言ってくれるぜ…まぁ概ね正論だ。
姫さんの事なんざ捨てて、とっとと逃げりゃそれだけで安全だからな。
ピースの能力を生かせば逃げ続けるのは苦じゃない。
少なくともスマホの電池が持つ間はどうにでもなるだろ。


大護
「…だが、それじゃあ俺の生き方を否定する事になる」


俺はそう言ってジャキン!と音を立て、メンテしていた銃を組み直した。
残弾は1発のみ…出来れば使う事無く、ここを切り抜けたい所だな。


ピース
『…まぁ、解ってましたけどね』
『電源落としますよ? 電池が勿体無いですし』


ピースはため息を吐く様なモーションでアニメーションし、すぐにスマホの電源を切った。
どの道、通話とかは出来ねぇからな…充電する方法も無ぇし、電池が切れたらそこでピースの助力は終わる。

やれやれ…全方位的に追い詰められてんな。


大護
「…敵はわんさか、か」


俺は立ち上がって窓際に立つ。
そして外から見られない様にしながら、ゆっくりとカーテンをズラして外を確認した。

時間は深夜の風俗街。
夜だというのに道は明るく、人もそれなりに歩いている。
いや、明らかに多い位だな。
つまり、歩いてる奴らの半分位はマフィアの下っ端か。


大護
(今出るのは無理だ…だが朝になれば)


夜明け前位になれば、客たちが一気に外に出始めるだろうからな。
そこに乗じて身を隠せば、比較的安全に外に出られるはずだ。
とにかく、まずは街を離れる。
追っ手が来るにしても、移動し続けるのが重要だからな。


大護
(幸い、賞金首のお陰で金に関しては問題が無い)


その辺は何だで有り難いもんだ。
ある程度力がありゃ、それで稼げるんだからな。
もっとも、その俺自身が最高額の賞金首だっつーんだから笑えねぇわけだが。

よりにもよって200万Pとか、破格な賞金がマフィアから提示されやがった。
俺は有名な不死身の毒蛇さんじゃねぇんだぞ?
顔変えて、記憶も消して隠遁した方が良いのかねぇ〜?


大護
(馬鹿馬鹿しい…俺にゃあ○イコガンみたいな必殺武器は無ぇのに)


良くも悪くも、俺はただの人間だ。
鋼タイプの様に体が固くもなければ、エスパータイプの様に超能力があるわけでもない。
強いていうなら、殺しの経験と知識なら俺が有利だろう。
しかし、純粋な肉体勝負となったら不利でしかない。
バカ正直に相撲取ろうもんなら、俺は秒でミンチにされかねないのだ。

しかも相手は手練れのマフィア軍団。
少なくとも殺しのプロ共となりゃあ、どこまで俺にアドバンテージがあるやら。


大護
「…姫さん、長ぇな」


俺はふと、部屋に置いてある置き時計を見た。
何気にデジタル式であり、ちゃんと24進数で時間を刻んでいる。
この世界はポケモンだけの世界だが、世界観はあくまで本当に存在してそうな位、リアルな人間の世界に感じていた。

そんな時計を見て、俺はあれから10分以上経っているのを理解する。
いくら何でも長すぎる…姫さんは氷タイプでお湯は嫌いって言ってた位だ。
少なくとも長風呂するとは思えねぇんだが…


大護
「ちっ、まさか…!」


俺は、すぐに警戒してバスルームに向かった。
扉を開けたその先からは湯気が立ち込めており、シャワーの音が鳴り続けている。
だが明らかにおかしい。
水音はあまりに一定であり、誰かが使っているとは思えなかったのだ。
そして、僅かに流れる空気の流れ。
こりゃあ、どこかに穴が空いてるな。

俺はそれを理解した所で、踏み込む決意を固める。
が、バスルームの扉に手をかけた所で、俺はすぐにバックステップした。
瞬間、扉はガシャーン!と大きな音を立て、バスルームからは屈強なスーツの男が現れる。

頭はスキンヘッドみたいに丸まっており、一見すると肌色ヘルメットの様にも見えた。
口からは白く立派な髭を生やしており、その姿は非常にダンディだな。
そして、スーツの上から肩に背負っているソレは、まるで鎧の様な重厚さを表現している。
その鎧からは4本の大きな突起が背中側に飛び出ており、それよりも小さな突起が肩から前方に突き出ていた。

ソイツは明らかな敵意を俺に向けており、間違いなくマフィアの手先だというのが理解出来ている。
俺は軽くため息を吐き、頭を掻いて横目に相手を睨んだ。

相手は緑の手甲を腕に着けており、それを軽く振り回して俺を威嚇する。
タイプは良く解かんねぇな…俺にゃさっぱりだ。
だが、俺は軽く笑ってやる。
幸い、相手は肉体言語系だ…これなら与し易い。
下手に超能力やら災害系やらを操るタイプよりも、よっぽど解りやすいからな。


大護
(さて…まずは情報を集めますかな!)










Avenger 赫奕たる銃弾


前編 『招かれざる男』 完



…To be continued

Yuki ( 2020/09/09(水) 14:57 )