第5章 『時空の相克』
第5話
三海
「見せてもらおうか…元大神官の性能とやらを!」

ジェノ
「ヤロウ!? 二海の3倍の速度で突っ込んで来やがる!!」

フーリア
「相手がポケモンなら人間じゃないんだ! お姉さんだって〜〜〜!!」


何かそんなネタを開幕かましながら、俺たちは交戦しようとしていた。
流石に大愛さんはそこまでネタの神に愛されていないのか、特に交ざる事も無かった様だ…



「って流石にネタで済むか!! 相手はあの三海ちゃんだぞ!?」

大愛
「ここは退がれ宙! 万が一も有る!!」


そう言って大愛さんは1番後方で、俺を庇う様に前に出た。
俺は軽く歯軋りするも、今の状況を冷静に分析する。
相手は既に撤退ムードだ、戦術的な面で見れば間違いなくこちらの大勝。
なのに、相手は切り札同然の三海ちゃんをここでぶつけて来た。
その意図は何だ!? それとも、三海ちゃんひとりでこの戦況を覆せると思ってるのか!?


フーリア
「!!」

三海
「…! 成る程、凄まじい速度の斬撃だ」
「並の達人なら秒殺される腕前だな…だがっ」


次の瞬間、フーリアさんが横に勢い良く吹っ飛ぶ。
あまりに凄まじい勢いで真横に飛ばされており、ほぼ減速無しで近くの木々をへし折って行ってしまった…


ジェノ
「マジか…!?」

三海
「余所見かい? 余裕だね…」


今度はジェノさんが逆側に飛ばされる。
何をしてるのか、こっちから見てもさっぱりだ!
多分超能力とかそんなんなんだろうけど、ここまで格が違うのか!?


大愛
「落ち着け、奴の性能は所詮時間制限付きに過ぎん」
「恐らく持っても数分、いや力を使うならもう2分も無いか?」

三海
「ご明察通りだ、それでどうする!?」

大愛
「こうする」


気が付くと大愛さんは三海ちゃんの背後にいた。
流石の三海ちゃんも時間停止に対応出来る訳は無い!
ましてや同じ時間制限付きでも、大愛さんの方がまだ燃費は良いからな!!


三海
「!!」

大愛
「何っ!?」


大愛さんが手で三海ちゃんに触れ様とした矢先、三海ちゃんは『テレポート』で難を逃れた。
そしてテレポートした位置は、まさか俺の目の前!
三海ちゃんの無機質な笑みに秘められた紅い瞳は、俺に軽く恐怖を植え付ける…


三海
「わざわざ出て来たのはご苦労だが…少し軽率過ぎたかな?」

フーリア
「はぁぁぁぁっ!!」


直後、頭から大量の血を流しているフーリアさんが横から割り込んで来る。
その表情はまるで機械の様でも有り、恐ろしい程に感情が籠ってなかった。
血で視界がボヤけてる筈なのに、相手の姿を真っ直ぐ捉えている。
その姿はまるで、獲物を見定めた肉食獣の如き様相…


三海
「流石だ…だけどワタシはそれを待っていたよ♪」


そう言って三海ちゃんはフーリアさんを見る事すら無く、俺を見たまま片手でフーリアさんの斬撃を防ぐ。
そしてカウンターとばかりにまたフーリアさんを吹っ飛ばし、今度は地面に思いっきり叩き付けた。
自由自在に『念力』を操る三海ちゃんのその力は、常識を超えてフーリアさんを叩きのめしてしまったのだ…!


三海
「ふふ…あのお姉さんは少々強すぎる」
「お兄さんを狙えば必然的に来るかと思っていたら、大正解だ♪」

大愛
「!?」


そして三海ちゃんは更にテレポートを使用し、大愛さんの接近すら拒んだ。
確実に大愛さんの行動を予知しての反応に、あの大愛さんですら呆然としている。
大愛さんのチート能力ですら、三海ちゃんには通用しないってのか!?


三海
「通用しない訳が無い、むしろ相性最悪だ」
「だからこちらも逃げの一手しか出来ないし、これ以上近付きたくもない」

大愛
「…何を考えている?」

三海
「さて、な…挨拶はここまでだよ♪」
「正直ガッカリだ…もっと苦戦すると思ってたのに」
「そんなレベルじゃあ、聖は救えない…!」


「!? み、三海ちゃん!!」


俺は叫ぶも、三海ちゃんは軽く微笑むだけですぐにテレポートしてしまった…
今度は近くにいない…逃げたんだな、時間切れで。
既に敵も撤退し始めており、追走はまず無理。
下手に追っても、この有り様じゃ返り討ちも有り得る。

良くも悪くも、完勝Aだったのをあっさり戦術的勝利Bにされたって感じか…



「…スンマセン大愛さん、俺…結局足引っ張っちまって!」

大愛
「…お前が無事ならそれで良い」
「むしろ、よくあの状況で退かなかったものだ…」
「もし少しでも退いていたなら、三海は容赦無くお前を殺していたかもしれん」


俺はそれを聞いて?を浮かべる。
三海ちゃんが何となくこっちを試していたのは気付いてたけど、それは俺も含まれてたって事なのか?


フーリア
「あ痛たたた…まさか伝説ポケモン同士の格闘戦が、これ程の物だとは流石のお姉さんも予想出来なかったよ〜♪」


「そのネタまだ引っ張るんすか!? 後、あんだけやられてもまだケロッとしてるんすね!?」


フーリアさんは全身ボロボロにされながらも、自分で立ってこちらに歩み寄って来ていたのだ。
ジェノさんなんか、まだ帰って来れてねぇのに…


フーリア
「あはは…まさか、カウンターで吹っ飛ばされるとは思わなかったよ♪」
「しかも、わざわざ特殊技で攻めて来るなんてお姉さんちょっとショック!」


「? どういう事なんです?」

大愛
「ビリジオンは特防がすこぶる高いポケモンだからな…」
「だから三海の念力でも平気で耐えられるし、すぐに立ち上がれたという訳だ」


あ、なーる…そう言えばポケモン毎に得意なステータスってのが有るんだったか。
確か大愛さんとかは特攻や防御が高いんだったよな?


フーリア
「ミュウツーなら『サイコブレイク』の1発も覚悟してたんだけど、結局使いもしなかったんだよね〜」


「えっと…それって必殺技みたいなモンでしたっけ?」

大愛
「正確には違うが…まぁミュウツーだけが使える専用技という意味なら間違ってもいない」
「あの技は少し特殊でな…特殊技でありながら相手の特防ではなく防御を参照してダメージを与える技なのだ」


うわ、何かややこしい!
それってつまり、特防の高いフーリアさんとかにはダメージが上がって、防御の高い大愛さんには逆にダメージが減るって事か?
何か、聞いてるだけじゃイメージ出来ねぇな…


フーリア
「もしお姉さんが食らってたら、多分1発でやられてたかも♪」

大愛
「ふん、わざとらしく言うな…そんな大技が来てたら楽々回避して反撃出来たろう?」
「それが読めていたから三海は使わなかった…」


「ああ…成る程、強い技だけに隙も増えるって事っすね!」


大愛さんはそうだ…と肯定してくれる。
考えてみりゃ当然だよな…ゲームでも強い技は命中が低かったりするし、弱い技はそれだけ連打も出来る。
ターン制RPGだとその意味を実感し難いけど、アクション系に例えればその意味が解りやすくなるって感じか。


フーリア
「うーん、あの状況でかわせるかは正直五分五分だったけど…」
「まぁ最悪、盾になれれば良いって思ってたから♪」


そんな事を軽く言いながら、フーリアさんは笑ってしまっていた…
太すぎる心臓だなマジで…でも、それをホントに有言実行するのだろうから、このお姉さんはマジで凄い。
あんだけ強い三海ちゃんが、強すぎるとまで言って真っ先に倒そうとしたんだからな…!



「だけど、三海ちゃんは結局ホントに裏切ったのか?」

大愛
「…今は結果が全てだ、受け入れろ」

フーリア
「後、一応戦いには勝ったし…ウォディちゃんの性格的にも、もうこの世界は見限ってると思うよ?」


見限る…ね、何とも壮大なスケールの話だ。
こっちからしたら、いきなりの新世界でどうすりゃ良いんだよ?って位なのに…
改めて、俺たちはそういう敵と戦っているんだと理解させられるな。


ジェノ
「ちっくしょ〜…思いっきり吹っ飛ばしやがって」


「ジェノさん! 無事で良かった…」

ジェノ
「たかだか半減の『サイコキネシス』で死ぬか! もっとも、あそこまで遠くに吹っ飛ばされちゃ、戻って来んのも一苦労だけどな!」


とりあえず、ジェノさんはほとんどダメージも無いみたいだ。
流石は改造ポケモンって所だな!
とはいえ、メンテとか大丈夫なんだろうか?
サイボーグみたいな体してるらしいけど、経年劣化で錆びたりしないのか心配だが…


祭花
「皆ー! 敵はもう完全に撤退したわよー!?」


上空から祭花さんがそう叫んで来た。
確か唖々帝さんと一緒に迎撃に出てたんだっけか。
どうやら怪我も無く、無事に任務は終えたらしい。



「…それじゃあ、一旦城に帰りますか!」

フーリア
「おーーー!」


フーリアさんはノリノリでそう言い、ニコニコ笑顔で俺を背に乗せた。
俺は驚きつつも、フーリアさんはすぐにこう言って走り出す。


フーリア
「宙君はお姉さんが背負ってあげるからね〜♪」
「それじゃあ、ゴーゴー!!」


「いや、別に俺は自分の足で…でああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」(ドップラー効果)



………………………



大愛
「…やれやれ」

ジェノ
「ハハッ、役目を取られたな?」

大愛
「ふん、勘違いするな…私の主なら自分で歩くのが当然だ」

祭花
「それにしても元気ねぇ〜」


そんなこんなで、七幻獣ウォディとの戦いは終わりを告げた…
失った物は大きかったものの、それでも彼等の戦いはまだまだ続く。
魔更 聖を救う為、各々が命を賭けて戦うのである!



………………………



白那
「…そうか、皆無事で良かった」

夏翔麗愛
「とりあえず、この世界はクリアになるのです?」


オレは今の状況から少し推測を立てる。
ウォディ達の部隊は既にこの世界からいなくなっており、もはや敵は存在しない状態。
だけどオレ達はまだこの世界に残留しており、別の世界に飛ばされる様子が無かった。

では、その原因は何か?


白那
「…何故、この城はここにある?」

夏翔麗愛
「何気に不気味なのですよ…敵もこの城に何かあると予想して攻めていたんですよね?」

白那
「元々この城は、あの夢見の雫が造り出した世界にすら存在を許されたイレギュラーだ」


そう、最初はあくまでオレ達家族がたまたま見付けただけの、仮初めの家に過ぎなかった。
必要が無くなれば放棄する予定だったし、段々と増える居住者を匿うのには最適だったからね…
だけど、今考えれば異端だらけだ…


夏翔麗愛
「現実のボスの世界にすら、この城は平然と存在していたんですよね…」

白那
「そうだ、それも…何故か直前の損壊具合まで維持してね」


冷静に考えてもそれはおかしい。
夢の世界に紛れたのは百歩譲って偶然と言い切れるけど、聖君やアルセウスが再構築した現実の世界に置いて、何故この城は何も影響が無いまま存在を許された?
本来なら、有るべき場所に帰るのが自然だ。
それも、オレ達が住む前の状態に戻ってなければ…


夏翔麗愛
「…もしかして、この城自体が特異点って事は無いのです?」

白那
「そうとでも言わなけりゃ、説明も付かないしね…」
「ただでさえ、地下にはブラックボックスが広がってる…そこは明らかに空間を超えた先の話だ」


夏翔麗愛はそれを聞いて黙ってしまう。
過去に夏翔麗愛は地下の調査を進めていた、だけど疑問は解消される所か増えるばかり。
そして、黙示録で全世界がリセットされているにも拘わらず、この城は平然とひとりコンティニュー状態で存在してるんだからね…


夏翔麗愛
「やっぱり、この城は変なのですよ…」

白那
「本格的な調査が必要なのかもしれないね…世界が粒子化しない以上、他にクリア条件となる何かを探さなきゃならないし」


オレはそう言って少し頭を掻く。
そして皆の帰還を感知した所で、夏翔麗愛ごと空間転移をした。



………………………



白那
「皆、とりあえずお疲れ様!」
「これで当面の驚異は去った! だけど問題もまた増えている!」

大愛
「…私達だけが、この世界に残されている理由か」


「そういや、結局どうなるんですか? このままこの世界で暮らさなきゃならないんですかね?」

フーリア
「その気になれば、無理矢理にでも世界を超える事は不可能じゃないけど…」


俺達は城の1階広間で集まり、そんな話をしていた。
とりあえず戦闘の疲れも有るし、まずはゆっくり休みたい所でもあるんだが…


夏翔麗愛
「お母さん、とりあえず今は解散するのですよ!」

白那
「…そうだね、思ったより皆のダメージは大きいし」
「それじゃあ! 今はとりあえず解散!!」
「また後日改めて、今後の作戦を立てるよ!」


白那さんのその宣言で、俺達はそれぞれバラバラに行動し始める。
俺も何か腹減って来たし、とりあえず何か食いたいな〜



「大愛さん、飯どうします?」

大愛
「お前は先に食っていろ、私は少し白那と話をして来る」


大愛さんはそう言って白那さんの元に向かって行った。
大愛さんも疲労は有るだろうに…変な所で真面目なんだよなぁ〜
まぁ、それだけに頼りになる人なんだが。


フーリア
「おっ? 宙君は彼女にぞっこんなのかな〜♪」


「ぞ、ぞっこんってアンタねぇ!? そ、そういうのは俺にゃあまだ速いっての!」


フーリアさんは俺の反応が余程面白いのか、ニコニコしながら楽しそうにしていた。
この人、ホント良く解んねぇ!
気軽にポンポン話しかけて来るし、緊張とか全くしてねぇもんなぁ〜



(…あ、でも折角だしそれなら話だけでもしとくか?)


魔更先輩も、家族なら話をする事が重要だって言ってたしな…
大愛さんの時の例もあるし、1度フーリアさんとも腹割って話してみるのも良いのかもしれない。


フーリア
「ん〜? どうした若者〜! 悩んでるならお姉さんが優しく聞いてあげるぞっ?」


「いや悩みは置いといて…それより、フーリアさんの事聞かせてくださいよ?」

フーリア
「おっ? もしかしてお姉さんに興味津々!?」
「えっとね、お姉さんのスリーサイズは上から91、62、90だよ♪」


「特に知りたくもない情報がいきなり出て来たよ!?」
「後やっぱボンキュッボンだな!? まぁ見た目で解るレベルだけど!!」


やっぱこの人色々おかしい!!
どっか頭のネジが数本飛んでんじゃねぇかって気さえするよ!!
俺が聞きたいのはそういう個人情報じゃなくて…



「とりあえず、あのウォディってのとはどういう関係だったんです?」

フーリア
「ウォディちゃん? 彼女とは、いわゆる上司と部下の関係かな〜?」
「まぁ、今はクビになっちゃったけど♪」


クビ、ね…そりゃ解りやすい。
でもそんなに悲観してはいないし、あんまし居心地良くも無かったんだろうか?



「でもクビって、何したんすか?」

フーリア
「ん〜まぁ色々かな〜? 決定的なのは、准一君の為に歯向かった事だと思うけど…」


准一…確か、魔更先輩の親父さんなんだよな。
あの大企業の社長で、事故で死んじまったっていう…
この人は、そんな親父さんが生きてた頃の知り合いだったのか?



「准一さん…って、どんな人だったんですか?」

フーリア
「そう、だね…何て言うのかな?」
「凄く大きな夢を持ってて、信じる物の為に全力出せる!」
「そして、どんな絶望にも負けない強い目をした男の子…♪」


フーリアさんは遠い目をしながらも、その時の事に想いを馳せている様だった。
それこそ…恋する乙女、って位に。



「…フーリアさんは、惚れてたんすか?」

フーリア
「どう、かな…? あっはは…私ってむしろ惚れやすいから〜♪」
「でも、准一君はホントに格好良かったな〜…」
「ハエレちゃんがいなければ、お姉さんが勝ってたかもだけど…」


「ハエレ…?」


聞いた事の無い名前だな。
ポケモン少女だろうか?


フーリア
「うん、きっと今頃は准一君と幸せに暮らしてるんじゃないかな〜?」


フーリアさんはそう言ってややはぐらかす。
あまり聞かない方がいい話なのかな?
しかし、フーリアさんにとっちゃまだ准一さんは子供のままなのか…
今や息子もいて、そんな息子も死んじまうなんて事になってる訳だけども…



「フーリアさんは、息子の聖さんを知らないんすよね?」

フーリア
「うん! 会った事無いしね〜」
「でも、この城の皆はそんな聖君を助ける為に命を賭けて頑張ってるんだよね…」


フーリアさんは少しだけ寂しそうな顔をして城の皆を見渡す。
フーリアさんはまだ来て日が浅いし、あまり皆とも話せてないだろうからな〜
…まぁ、露骨に避けられてる様な気がしないでもないが!



「ちなみに、見ます? これが准一さんの息子の聖さんっす!」


俺はポケットからスマホを取り出し、画像フォルダを出した。
そんでキャンプの時に撮った写真をフーリアさんに見せる。
それを見たフーリアさんは、心底嬉しそうに頬を紅く染めてしまった。


フーリア
「きゃ〜♪ 准一君そっくり〜!」
「そっかそっか、これが聖君かぁ〜♪」
「うん…うん…今度は、お姉さんも助けに行くからね?」


フーリアさんは、泣きそうな笑顔で画像を見て呟いていた。
フーリアさんがどんな思いでここに来たのかはよく解らない。
だけど、これだけは確かだ…



(この人は、ホントに純粋なんだろうな…)


ただ見た物を素直に受け止めて表現する。
確かに暴走気味で歯止めが効かなさそうな所もあるけど、それでもこの人が持ってる芯の強さは伊達じゃない。
そういう意味でもこの人は他のメンバーと一線を画しているし、何処か底知れない部分も感じる。
味方なら、これ程頼りになる人もそうそういないんだろう。

ある意味、本当のヒーローみたいに駆け付けて、そして体を張って護ろうとしてくれる人なのだから…



「フーリアさん、そう言えばどうやってこの世界に辿り着いたんですか?」

フーリア
「…んーと、ホントは他言無用なんだけど」


フーリアさんはキョロキョロと周りを見渡し、俺の腕を掴んで移動する。
俺は?を浮かべるも、気が付けばふたりで地下まで降りてしまっていた…



………………………



フーリア
「ウフフ…優しくしてね?」


「何考えてんすかアンタ!? 発想がブッ飛びすぎてて付いていけねぇ!!」


フーリアさんはニコニコしながらも口元に指を当てて、シー!と言った。
そしてまたキョロキョロし、誰もいないのを確認してから息を吐く。
そ、そんなに聞かれたらマズイ事なのか?


フーリア
「…一応、君が信頼出来ると判断したから教えてあげるけど、絶対誰にも言わないでね?」


「あ、はい! それは絶対に!」

フーリア
「…実はね、お姉さんは宇宙人なんだよ!」


俺は目を点にして眉を顰める。
そしてしばらく空しい空気が流れてしまった。
流石のお姉さんも、こればかりは空ぶったらしい。


フーリア
「うう…ツッコミすら来なかった!」


「つか真面目にやれい!? こちとらドキドキしながら覚悟決めとるのに!!」


俺がそう言うと、フーリアさんはまたシー!と言う。
アンタのせいだろうが!?とは、あえて言わないでおく事にした…
そしてフーリアさんはあははと笑い、今度こそ真面目な笑顔でこう告げる…


フーリア
「お姉さんはね、実はとある勢力と繋がりがあるの…」


「!? とある、勢力…?」


いきなりそれっぽい話になって来た…つーか、まさかスパイとかじゃねぇよな?
いやいくら何でも、この人にスパイとか向かなさすぎだろとは思うが…


フーリア
「まぁ、とにかくその勢力には世界を超える力があって、お姉さんはその力のお陰でここに辿り着けたって訳!」


「じゃあ、その理由は? 何でフーリアさんだけがここに?」

フーリア
「詳しくは言えないけど、その勢力は独自に混沌と戦っているんだって」
「それで、たまたまその勢力のひとりにお姉さんの知り合いがいたから、今回の件を持ちかけられたって訳…」


たまたま…ね。
つまり、フーリアさんはその勢力の実質一員って感じなのか?
しかし独自に混沌と戦う…?
それって、例の混沌の王の勢力の事なんだろうか?
それとも、もっと広い定義の混沌…?


フーリア
「…これだけは信じてね? お姉さんは絶対に皆の味方だから!」
「准一君の家族は、私が絶対に助けてみせるから…」


「…フーリア、さん」


フーリアさんは、ブレない人だった。
ある意味、この人は先輩に似ている様な気がする。
普段はふざけたりするけど、こうと決めたら絶対にブレない芯の強さ。
先輩とはベクトルが違うとは思うけど、深い部分では似ている強さを感じるよな…


フーリア
「准一君の子供の聖君…あの写真を見れば、どれだけ彼がポケモン好きなのかすぐに解ったよ」
「だからこそ、お姉さんも迷わずに協力出来るの!」


「でも、あの人は准一さんじゃないんですよ?」

フーリア
「分かってるよ♪ でも、お姉さんには関係無い!」
「だって、お姉さんは出張ヒーローだもん♪」


そう言って、何処と無く魔法少女っぽいポーズを決めるフーリア姉さん。
いや、それヒーローとは多分違う系だから!
言ってる事は格好良いけど、やっぱどっかズレてるから!?



「はははっ…ホント、フーリア姉さんはよく解んねぇや」

フーリア
「あーひどーい! お姉さんは真面目なのに〜!」


そう言ってわざとらしくブーたれるフーリア姉さん。
俺はとりあえず、この人の事は信用しようと思った。
魔更先輩なら、きっと初見で打ち解けんてんだろうけど…俺にはそんな度胸は無ぇ。
でも、ちゃんと話聞いて理解しようとすりゃ…この人が信用出来るってのはすぐに解る事だった。

つまりアレだ…この人は筋金入りの。



「…筋金入りの、大馬鹿か」

フーリア
「ん〜? 今何て言ったの〜?」


俺はとりあえずはぐらかして歩き始める。
そして後は雑談でも交えながら、フーリア姉さんと食堂に向かうのだった…



………………………



白那
(…独自に混沌と戦う、か)


オレは空間を操作して、フーリアさんの会話を盗み聞きしていた。
悪いとは思うけれど、こっちもそれなりに信用出来る情報が欲しいからね。
とりあえず、彼女は信用しても大丈夫そうだ。


大愛
「…で、お前の見解は?」

白那
「…確かに、理論的には有り得ると思う」


オレ達はふたりでこの城の事を考察していた。
大愛も何か違和感は有ったらしく、オレの意見も交えてみたかった様だ。


白那
「もし、この城の時空だけが独立しているとしたら…」

大愛
「この城自体が、次元を超えた存在と考えられる」


それは、まさしく時間と空間を司るオレ達だから言える結論。
この城は、恐らく有りとあらゆる時空の干渉を受けない独立した何か。
その正体も、建造理由も、経緯も解らないが…


大愛
「お前は試した事があるだろう? この城を跳ばそうとした事位…」

白那
「その際は問題無く出来た、ただ…あくまで同一時間軸の並行世界に限定されるけどね」

大愛
「私の時もそうだ…かつてこの城の物質に時間加速をかけてみたが、何も問題無く効果はあった」


つまり、空間も時間も操作は出来るという事だ。
かつて強襲して来たシェイミの能力からも修復は出来てたし、そんなに問題には思ってなかったんだけど…


白那
「冷静に考えたら、何故そうなる?」

大愛
「そうだ、歴史改変レベルの干渉すら弾くというのに…何故容易く外観は破壊出来る?」
「何故破壊箇所は修正されない? あえて原型を残し続ける意味は何だ?」

白那
「ひょっとしたら…オレ達が見ている城とは、氷山の一角なだけなのかもね」


元々、その疑問はあった。
地下にあれだけ謎の空間が広がっている時点で、その先がどうなっているのか興味も有った。
強いて言うなら、今まで気にも止める必要が無かったんだけど…


大愛
「夏翔麗愛の報告によれば、地下のギミック解除に何故かレシラムとゼクロムの能力が必要だったらしいな?」

白那
「正確にそうとは断定出来ないけど、夏翔麗愛はそうとしか思えなかったとは言っている」

大愛
「ならば、その先にも似た様なギミックは有ると思えんか?」


似た様な、か…
仮に有ったとして、それは何の為に?
仮にも伝説のポケモンが持つ力を要求する理由は何だ?
いや、むしろそれを要求してまで何が隠されている?
この城……いや。


白那
「…そもそも、城ですら無いのだとしたら?」

大愛
「…ふむ、固定概念その物を捨てるか」


大愛も考え始めていた。
オレ達は第1にこの城が原因だと思っていたけど…
そもそも城の地下から行ける空間は、明らかに城の内容量を超えてる。
単純に地下へ進んで行けば、その内地球の地核辺りまで到達しかねない。
なのに、あの地下空間は気圧変動所か気温変動すら無かったらしい。
確実に別の空間へ移動した…と夏翔麗愛も言ってたしね。


大愛
「…やはり、調べるべきだと私は思うが?」

白那
「危険は承知でも、か…」
「だけど、他に道が無いのであれば…!」


オレは、遂に決断する時が来たのだと確信する。
今まで放置していた、この城の地下空間。
その先に、オレ達が待ち望んでいる結果が有るのかもしれない。
だとするなら、オレ達は迷わず進むべきだ。

何故ならその先には、愛する聖君への手掛かりが有るのかもしれないのだから……










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第5章 『時空の相克』 完

第5話 『時空を超越する城の謎』


…To be continued

Yuki ( 2021/10/11(月) 13:00 )