第5章 『時空の相克』
第4話

「…何だって? 杏さんと土筆さんが…戦死!?」

ジェノ
「ああ、更に二海も重症だ…すぐには戦線復帰出来ねぇ」
「俺は今から中央に展開されてる部隊を叩きに行く、お前も大愛にいつでも出られる様に言っておけよ?」


それは、あまりに唐突の訃報だった…
俺はあまり話した事とか無かったけど、まさかこんな所で死者が出るなんて…!
頭じゃ解ってたはずなのに、いざその現実を突き付けられると頭を抱えちまう。
次はもしかしたら俺かもしれない…そんな不安がいつまでも付き纏いそうになるんだ!



(…でも、それでも生きる為に戦わなきゃならない)


俺は、魔更先輩が今までやって来た事の重みを、少しだけ知った気がした。
あの人はどんな状況でも、どんな苦境でも、どんな理不尽があっても諦めずに全員救っていったんだ…

それはひとえに、先輩が持つ奇跡の力が後押ししてたんだとは思う。
ただそれでも、あの人は1度しか諦めなかった…
そしてそこからは2度と絶望になんか負けなかったんだ…



(あの人は、そもそも俺達と決定的に違う部分がある)


それは、俺自身先輩と関わる様になってから、徐々に気付き始めていた違和感の事だ。
最初はただ根性座ってるだけの先輩だと思ってた。
バトルフロンティアん時にヤキ入れられて、器の違いを見せ付けられたのは良い思い出だな…
あの時、先輩の渇があったから…俺は大愛さんと正面切って話し合う事が出来たんだから。

そして、組長や雪さんの時の一件…
あの時俺は、先輩の持つ違和感にようやく気付いた。
それは……



「…あの人は、善悪の揺れとかが殆ど無ぇんだよな」


良く言えば、真っ直ぐで誠実。
ただ悪く言えば無情で無関心で、そして冷徹なんだ…
キャンプの時はそんなに気になる事は無かったんだが、あの彼岸の一件でその違和感が強くなった。

先輩はとんでもない過去と経験があるからこそ、あんな異様な世界でも全くたじろがねぇんだと思ってたけど…それは多分違ったんだ。
あの人は多分…ただ自分が正しいと確信してるから、何も揺れ動かねぇ。
本人も、自分はエゴイストだと言っていた。
だが、そのエゴは神様相手だろうが貫き通すのがあの先輩の恐ろしい所だろう。

とどのつまり…



「…俺が、魔更先輩みたいなヒーローになれはしねぇって事だな」


もし俺がヒーローなら、ふたりは死ななかっただろう。
もしここに魔更先輩がいたなら、誰も死なずに全部救ってくれたろう。
だが、現実は非情だった…既にふたりが死に、俺みたいな弱者が生き残ってる。
そんな弱者の俺に、出来る事があるんだとしたら…



………………………



大愛
「よし、なら行くぞ?」


「ああ!」

白那
「待て大愛…宙君を連れて行くのには賛成出来ない」


それは、俺達が出撃する寸前の一言だった。
白那さんはやや厳しめの表情で大愛さんを見ており、大愛さんは特に興味も無さそうな顔でため息を吐いている。
当の俺は…ふたりのやり取りを待つ事にしていた…


白那
「彼はあくまで人間の少年だ、前線に出る必要は無い」
「君自信も、そう思っていたんじゃないのか?」

大愛
「これがただの蹂躙であるなら、それが最善だな」
「ただ、既にこちらは死傷者と負傷者を出している…」

白那
「だからこそ! 宙君はここで待機するべきだろ?」


白那さんは俺の事を考えた上で発言してくれてるのは解る。
それはひとえに白那さんの優しさからだろう。
だが、今回俺が出るのには明確な理由がある。
大愛さんもそれを理解してくれた上で、俺と共に出撃する選択を認めてくれたんだ。


大愛
「宙はお前が思っている程、無力ではない」
「むしろ、この戦況だからこそ宙の存在は大いに役立つのだ」

白那
「何だって? 宙君を囮にでもする気か?」

大愛
「ふざけるな、誰がそんな事を許すか…」
「宙はここで唯一の人間だ…そして、明確に私を使役出来る存在」
「そしてそれは敵にも伝わり始めている」

白那
「…まさか、その種蒔きの為に最初特攻したのか!?」


どうやら白那さんも気付いたらしい。
そう、俺があえて最初に大愛さんとセットで出撃したのには理由がある。
それは大愛さんという最高戦力のひとりが、人間の俺に使役されているという事を知らしめる為。

あの時の大愛さんは大立ち回りしながらも、常に俺を護り続けてくれた。
その光景は敵からすれば、最高戦力のポケモンが無力な人間を護っている…という風に映るだろう。
そして同時に、俺を狙えば大愛さんは動けなくなる…とも。


大愛
「恐らく、次は確実に宙が狙われる」
「だからこそ、それを利用するのだ…あえて宙に全てを託してな」


「白那さん、大愛さんを信じてくれませんか?」

白那
「…君は、怖くないのかい?」


俺は白那さんに言われて少し俯く。
怖くない訳なんか、無い。
だけど、俺は俺の中にある唯一の信頼を裏切りたくねぇんだ!
ここだけは、これだけは魔更先輩にも負けねぇっていう…唯一の武器を!!



「俺ぁ、大愛さんを信じてる」
「誰よりも、俺が大愛さんを信じるんだ!」
「これだけは、魔更先輩にも負けたくねぇ…!!」


俺はしっかりと白那さんの顔を見てそう告げた。
そんな俺の覚悟を受けてか、白那さんは少し目を瞑り…そして軽く息を吐く。


白那
「…分かった、君を信じよう」
「だけど、絶対に死んじゃダメだよ?」

大愛
「舐めるな、この私がいる限りそんな事は起こり得ない…」
「私がこの世で唯一、主と認めた男だぞ?」
「そんな世界に唯一の存在が、簡単に死ぬものか…」


そう言って大愛さんは白那さんに背を向ける。
そして行くぞ…と俺に呟いてからゆっくり走り出した。
俺は無言で頷き、その背中を追い掛ける…



………………………




「で、具体的に作戦はどうするんすか!?」

大愛
「お前は出来る限り私の近くにいろ、そうすれば狙われても対処出来る」
「今回の目的は、お前の存在が重要な物だと敵に知らしめる事だ」
「だから、遠慮無く私に命令しろ…それこそ大声で、必至になってな?」


成る程、そうすりゃ俺が戦場で直接大愛さんを動かしてる様に思われるって訳か。
そして、相手がそう思い込んでくれたのなら…作戦は成功って事な。
しかし、口で言う程簡単なミッションじゃあない。
大愛さんの神懸かり的な動きに合わせなきゃなんねぇし、自分自身の身も守らなきゃならない。
何より、大愛さんは長期戦向きの戦力じゃないんだ…


大愛
「私のおおよその活動限界は理解しているな?」


「時間停止は約5回まで、加速減速も残体力と比較しておよそ10分!」


あくまで目安だが、これが大愛さんのおおよその活動限界らしい。
勿論、休み無しに戦い続ける上での限界であり、休みが挟めるならもっと余裕は生まれるそうだが…


大愛
「上出来だ…目測は見誤るなよ?」
「いざピンチの時に限界でした…では命の保証は無いと思え」


信頼しているとはいえ、今回大愛さんは俺の命令を厳守する。
相手にそう思い込ませる為とはいえ、俺への負担は想像以上に大きいだろう。
勿論、それをフォローしてくれる強い味方もまたいるんだが…


ジェノ
「雑魚散らし位は任せろよ? メインは譲ってやるがな…」

フーリア
「大丈夫! 何かあったらお姉さんが助けてあげるからね?」


そう、今回同行してくれるのはこのメンバー。
ジェノさんは間違いなく強キャラだし、今回も頼りになるだろう。
ただ、問題なのはこの謎のビキニ姉さん…
相当強ぇって話らしいが、イマイチ信用出来るのか解らん!

未生羅さんのピンチに駆け付けてくれた仲間って事らしいが、誰もこの人の事は知らねぇそうだし、この軽そうな性格もあって何とも言えねぇんだよな〜



(とはいえ、敵はもう目前…出たとこ勝負でやるしかねぇ!!)



………………………



ウォディ
「…左翼、右翼はどうなっている?」

部下
「はっ、左翼のスフゥルト様は川沿いにそのまま進行! 右翼のロッキー様はやや遅れる形で山側を進行中です!」

三海
「ふ…あの無能ふたりに任せて大丈夫なのか?」


私の側で待機している三海がそう呟く。
今我々は、本隊を押し上げながら中央を大部隊で攻めている最中だ。
私と三海はその部隊の最後方の馬車で優雅に進行中という訳だな。

私は余裕を見せながらも専用の椅子に座り、顎に手の甲を当ててこう言ってやる。


ウォディ
「まぁそう言ってやるな…アレはアレで役に立つ」
「戦力としては確かにイマイチだが、大部隊を同時に運用する際には指揮官としてそれなりに有用だ」

三海
「指揮官として、はね…だが、たった10にも満たない敵相手に勝てないのであっては無意味にも程が無いかい?」

ウォディ
「ふ…そうでもないさ」


私は微笑みながら軽く言う、
まぁ、三海には理解が出来んだろうからな…


ウォディ
「これはあくまでゲームだ、なら勝った負けたで一喜一憂するのはプレイヤーの特権だとは思わんか?」

三海
「…それは、別に負けても構わないと?」

ウォディ
「勿論、ただ負けるのもそれはそれで癪に障る」
「だが、私はゲームとなれば楽しむのが主義だ」
「特に、勝負に勝った時のカタルシスはそれ程大きい…特に相手が強ければ強い程、な!」


そう、今回の相手は強い。
恐らく、大神官ふたりでは到底攻め込めまい。
だが、アレは別にそれで構わない。
今回の作戦の本命はあくまで中央突破なのだからな!


三海
「…敵も中央へ戦力を集中させている様だが?」

ウォディ
「ならば望む所だ、我が部隊の『量』が勝つか…それとも?」

三海
「敵の『質』が勝つか、か…」
「定番の格言で言うなら、量より質…だがね」


そう…だからこそ、それを覆すのが面白いんだ…!
質より量…そんなさも当たり前の格言を、この傲慢が打ち崩す!!
総戦力、約1000…さぁどう立ち向かう気だ?


三海
(ん…何か妙な反応を感じる…? 母上殿は気付いていないのか?)

ウォディ
「…む? 何か懐かしい気配を感じるな…」

三海
「母上殿?」


私は立ち上がって遠い前方を念視する。
いわゆる千里眼という奴だが…すると、私の視界には遥か前方の敵が映った…
そしてそこにいたのは4人の男女…内3人はポケモンだが。


ウォディ
「あの小僧…また前線に出ているのか?」

三海
「小僧…ああ、宙お兄ちゃんか」
「彼が前線に出るという事は…大愛さんも一緒だな」


宙…ねぇ。
三海はやや興味深そうな顔で感心している様だが?
確かあの小僧はただの無能力者だ…いわばガキ。
そんな場違いな存在が、何故この中央の戦力に存在している?
それとも、何か私の知らない能力でも隠しているのか?


ウォディ
「三海、その小僧に何か力は有るのか?」

三海
「そうだな…強いて言うなら、彼は運命に愛されている子供だ」
「ここに向かっているのであれば、勝つ為に来てるんだろう…」


三海は何処か確信めいた顔でそう答える。
私は顎に手を当ててしばし考えた…
運命に、愛されているだと?
それはあの特異点の様な何かを秘めているとでも?
ええい三海め…要領を得ん言い方をしおって。
しかし、ここで聞き返したら馬鹿みたいではないか!
こうなったら、意地でも自分で答えを導き出してやる!!


ウォディ
「ちっ、それより何だこのノイズは!?」
「さっきから視界をうろちょろしてるこの緑の……」


ズガガガガガガガガガガッ!!!


三海
「ちぃっ!!」


突然の衝撃波…
それは約500程配備していた中央の部隊を、モーセの十戒の様に薙ぎ払ってみせていた…
幸い、三海がいち速く反応してその衝撃波を超能力で霧散させる。
そのお陰で最も戦力の集中していた本隊はほぼ無事であった。


部下
「報告します! 敵戦力の一撃で先遣部隊はほぼ壊滅!!」
「隊列は完全に乱れ、指揮系統が滅茶苦茶です!!」

ウォディ
「こ、この不快な一撃…!! まさか、奴はぁ!?」



………………………



フーリア
「お姉さん! 絶好調〜♪」

ジェノ
「…で、出鱈目な技使いやがって!」

大愛
「…何だアレは? もしかして『聖なる剣』のつもりか?」
「アレは主に角を利用して使う接触技じゃないのか?」


それは敵を目視した瞬間の惨劇だった。
フーリアさんは軽く右手1本を縦に振るっただけで、どこぞのMAPWの様に敵を薙ぎ払ったのだ!
それを間近で見ていた俺たちですら、あまりの威力に唖然としていた…


フーリア
「うーん、でもわざわざ角でやるのって人型では意味無くない?」

大愛
「確かに正論だがな…!」

ジェノ
「もう良いんじゃねぇのか!? とりあえず穴は開いたんだ!!」
「この際作戦云々は置いといて、敵の大将を倒すのが最善だろ!?」


「た、確かに…! こんだけ出鱈目な技があるなら、もう雑魚なんてゴミクズみたいなモンだ!!」

フーリア
「あ、ちなみにさっきのは連発出来ないから注意してね?」
「いくらお姉さんでも、アレ1発でPP半分は使っちゃうから…」


ホントどういう原理してんだ!?
まだまだ俺にも解らねぇ仕様ってのが沢山有るみたいだな…
と、とにかく…もうフーリアさんの一撃は期待出来ねぇんなら後は自力が勝負だ!!


大愛
「やれやれ、敵の指揮系統がガタガタなのが幸いだな」

ジェノ
「とにかく特攻だ! こちとら人数少ねぇんだし、頭を取るのがセオリーだろ!!」


ジェノさんはそう言って突撃して行く。
『ギアチェンジ』という技を駆使してジェノさんはドンドン加速し、邪魔な敵兵を次々と吹っ飛ばして行った。
大愛さんも俺の手を握り、一気に時間加速して中央を正面突破する。
ぐ…! 想像以上に疲労の加速がヤベェ!?


大愛
「少しだけ我慢しろ!」


「……!!」


俺は加速した自分の体に違和感を覚えながらも耐える。
大愛さんは、いつもこんな感覚の中で戦ってるのかよ!?
こんなの…普通の人間が生身で体感出来る加速じゃねぇぞ!?



………………………



唖々帝
「ちっ! 数だけは多いな!!」

祭花
『唖々帝! 敵部隊の指揮官は遠距離から砲撃可能らしいわ!』
『曲射には気を付けて!!』


高空で敵を俯瞰している祭花がそう叫ぶ。
私はインカムを通じてそれを聞き、すぐに『放電』の態勢に入った。
まずは数を減らす!!


バチバチバチバチバチィッ!!


火花を置き散らしながら、私は前方の敵部隊を扇状に攻撃した。
一気に数十の兵を倒すも、まだまだ数はいる様だ…


祭花
『敵戦力は残り約200よ! 気を抜かなければ唖々帝なら大丈夫!!』

唖々帝
「やれやれ、気休めじゃなきゃ良いんだがな…!」


私は腹に電気を溜め、気合いを入れ直す。
任された以上、こっちは私が必ずやってみせるさ!!



………………………




「ロッキー様! 敵はクワガノンの女がひとり!!」
「しかし、凄まじい電力でこちらの兵を薙ぎ倒しています!!」

ロッキー
「電気タイプか、それも空中を飛び回れるクワガノンをあえて単騎で配置させるとは…!」
「全兵に通達! 固まらずにバラけて、小隊ごとに波状攻撃を仕掛けろ!」
「それと、すぐにレールを用意しろ!! こちらからも仕掛ける!!」


僕がそう命令すると、部下はすぐに2本の電極をこちらに持って来た。
僕はそれを受け取って地面に刺す。
そして角度を定めてから僕は遠距離にいる敵を『ロックオン』した。


ロッキー
「さぁ、僕の体から産み出した鉄(くろがね)の『ストーンエッジ』を削って作った砲弾…たっぷり味わえぇ!!」


僕は両足でストーンエッジを作り、それを一瞬で加工して即席の砲弾を作ってみせた。
そしてそれを電極の間に乗せ、後は僕の電磁力で粒子加速させる!
すると鉄の大岩砲弾は超高速で射出された…



………………………



唖々帝
「…!?」

祭花
『砲弾接近!! 上空から高速落下!!』


私は祭花からの警告を聞き、すぐにその場で身構える。
そして迫って来る砲弾を目視で確認した。
次の瞬間、私は全力で『電磁砲』を腹に溜めて集中し、口の角から砲弾に向けて発射する。
巨大な砲弾にそれは着弾し、凄まじい電磁波と熱波が周りに広がっていた。
私は腕で頭を隠すも、その熱に皮膚を焼かれる。
だが…どうやら凌げた様だ!!


唖々帝
「祭花ぁ! 敵の位置は!?」

祭花
『捕捉完了! 左40℃修正! 山肌の後ろよ!?』

唖々帝
「了解だ!! 今度はこっちが食らわせてやる!!」


私はZストーンの力を開放し、全身からオーラを放つ。
そして角度を決めて私は全電力を角に集中させた。


唖々帝
「レールガンなら…こっちの方が十八番なんだよ!!」
「くたばれ! 『ライトニング ショック レールガン』!!」


構えから叫ぶと同時、私の角から青白いプラズマ弾が亜光速に近い速度で射出される。
それは正面に有る山肌を容易く貫き、目標に向かって正確に着弾した。


ドッバァァァァァァァァァァァァンッ!!!


凄まじい大爆発が起き、敵の大将は空に吹き飛んで行く…
あ、そういやどんなポケモンなのかも確認してなかったな…報告どうしようか?
まぁ、それは祭花が確認してるから良いか…


唖々帝
「さて…残りはどうする?」


私がそう言って兵を睨むと、兵たちは恐れをなして逃げ出した。
やれやれ…楽で良い。
私は流石にその場で座り込んで休む事にした。
もう、1Vも出せやしないからな…



………………………




「うおらぁぁぁっ!!」

スフゥルト
「ぬぅぅ!!」


アタシは敵部隊の指揮官と素手でやり合っていた。
相手は炎タイプであり、手には大剣を両手持ちしている。
見た目は何か洋風の騎士って感じの服装で、いかにもな奴だよな〜



「おらどうした? そんな武器持っててもアタシには通用しねぇぜ?」

スフゥルト
「この私相手に力勝負とは…! 随分舐められたものだな!!」


敵は剣を横に薙ぎ払って『熱風』を巻き起こす。
アタシは歯を食い縛ってそれを耐え、すぐに全身から冷気を放って冷却した。
とはいえ、タイプ相性不利なのは変わらない。
しかも近付かなきゃこっちに勝ち目は無いと来た…



「しゃあねぇ…! 近付かなきゃ話になんねぇしな!!」

スフゥルト
「ふん…! ただ力任せなだけか!!」


敵は手を上げて部下を動かす。
一気にアタシの周りには槍兵が押し寄せ、アタシの足を止めようとしていた。
アタシはそれに対しただ力任せに槍の先端を握ってみせる。
そしてそのまま……



「しっかり握っとけよ!?」

槍兵
「え!?」


アタシは槍を持った兵ごと雑に振り回す。
その勢いで周囲の敵兵は吹き飛び、アタシはそれを適当に放り投げた。
そしてニヤリと笑って前進を続ける。
敵の指揮官は更に指示を飛ばし、今度はローブと杖を装備した妙な部隊を並べる。
そしてそいつ等はほぼ同時に何かゴチャゴチャ言って、杖から炎を出してみせた。



「うおっと!!」


アタシは咄嗟に『守る』を使い、その炎を凌ぐ。
だが、思ったよりも敵の数が多い。
このままだと効果切れでねじ込まれるか…!?



「なら…! これでどうだ!!」


守るの効果が切れるとほぼ同時、アタシは右手に水を纏ってそれを正面に振るった。
いわゆる『クラブハンマー』なんだが、やっぱ炎には水だよな!?


スフゥルト
「ぬぅ!? 生意気に水を扱うか!!」


「そりゃ元マケンカニなんでね!? こんな事も出来るぜ!?」


アタシは思いっきり息を吸い込み、口から『バブル光線』を吐き出した。
それをマトモに食らって敵の杖はビショビショに湿気ってしまっう。


魔術師
「げっ!? 炎が出ない!!」

スフゥルト
「こ、小癪な真似を!!」


「いい加減、普通にケンカしようぜ?」


アタシは笑いながら両手をボキボキ鳴らす。
相手の指揮官様は怒り心頭のご様子だが、それでも部下を並べるだけで前に出ては来なかった。
アタシは流石にため息を吐くも、遥か遠くの山から凄まじい電気と爆発音が炸裂したのを耳にする。



「おっ、ありゃ唖々帝の必殺技だな〜?」
「くっそ〜結局向こうの方が速くカタ付いたのかよ…!」

敵兵
「スフゥルト様! 右翼部隊壊滅しました!!」

スフゥルト
「何だと!? あの馬鹿者め…! あれ程油断するなとウォディ様に言われておったのに!!」


明らかに狼狽えた相手の隙をアタシは見逃さない。
アタシは思いっきり地面を叩き、敵集団に向けて『地震』を発動させた。
すると一瞬で敵陣は崩れ、炎タイプの大将も弱点で怯む。
アタシはニヤリと笑い、そのまま全オーラを開放して足元を凍り付かせる。
その氷は氷柱の牢となり、正面一直線上にいる敵指揮官を見事捉えてみせた。
そのまま、アタシはスピードスケートの要領で徐々に加速していく。



「とりあえず即興奥義!! 必殺技に見せてパンチだけただの『クラブハンマー』!!」

スフゥルト
「ぶべらぁぁぁぁっ!?」


アタシは途中で必殺技をスパキャンしてクラブハンマーでトドメを差す。
アタシの特性は『鉄の拳』だから、半減の必殺技当てる位ならこっちの方がダメージデカいんだよね〜消耗も少ないし♪

(なお、実際のゲーム中では特性が乗りません!)

まっ、そんなこんなで敵の指揮官様は無様に転がったって訳だ!



「おっしゃ乗ってきた! 今なら残りも全滅出来る自信有るぜ!?」


アタシは思いっきり踏み込んで地面を揺らす。
だけどそれを見た兵士達は恐れ慄き、気絶した指揮官を連れてさっさと逃げ出してしまった…
アタシはため息を吐き、軽く頭を掻く。
そして自分の右手を見て、何となくこう思った。



「…な〜んか、久し振りに怪我せずに勝った気がする」



………………………



三海
「両翼がやられたな…まぁ予想通りか」

ウォディ
「そこそこ時間稼ぎにはなっている」
「敵の戦力ふたりを消耗させて撤退なら、さほど影響は無いさ…」
「それよりも大問題なのが…!」


母上殿は口元をピクピクさせて、目の前で起こっている惨状に目を細めていた。
それもそのはず、あれだけ自信満々に配備していた500もの兵はたったの3人に蹴散らされているのだから…

その内、先頭で切り込んでいる見知らぬポケモンがヤバイ。
どうやら母上殿の知り合いみたいだが、一体何者なんだ?


フーリア
「あ、ひっさし振り〜♪ ウォディちゃん元気してた〜!?」


そんなフレンドリーに接しながらも、そのお姉さんは全身凶器を駆使して兵を吹っ飛ばしまくっていたのだ…
強いて言うなら、アレだ…何とか無双!!
何とかBASARAでも良いな、うん!!

と、とにかくそれ位無茶苦茶な動きで彼女はこちらに切り込んで来ている。
後ろにはジェノお姉ちゃんと大愛さんもいるけど…正直ほとんど出番が無さそうだった。


ウォディ
「ええい!! 何であのバカがここにいる!?」
「完全に想定外だぞ!? これではハナから戦術が成り立たん!!」

三海
「は、母上殿…? あのお姉さんは何者なんだ?」
「何て言うか、もう戦略級の戦力で動いてるが…」


母上殿はドン!と椅子の手摺りを叩いてワナワナ震えていた。
どうやら相当理不尽な戦力の様で、あの傲慢な母上殿が頭を抱えるしかないとは…


ウォディ
「おのれ…! こんな時にアイツ等がいないとは、どうなっているんだ!?」


アイツ等とは、黒騎士と白騎士の事か。
どうもふたりして独自に動いていた様だけど、結局ワタシは顔を合わせる事も無かったな…
確かに、只者じゃない何かは感じていたけど。


三海
(それでも、あの出鱈目なお姉さんよりも強いか?)


正直、それ位異次元の戦力だあの人は…
アレとマトモにやりあえるのは、家族だと白那さんや鐃背さん位じゃないだろうか?
単純な格闘戦だけで見るなら、守連お姉ちゃんよりも上かもしれないな…


ウォディ
「ちっ…! 忌々しいが、このままでは勝てん…!」

三海
「…なら母上殿、せめて最後にワタシが出ても良いか?」


ワタシがユラリと宙を舞い、背中越しに母上殿にそう進言する。
すると母上殿はやや考え、やがてこうワタシに告げる。


ウォディ
「…3分だけなら許す、それ以上はかけるなよ?」

三海
「了解だ…少しは敵にも恐怖を知ってもらわないとな♪」


ワタシは怪しく笑い、いよいよ出撃した。
さて、今の彼女達でどこまでやれるのか…精々見せてもらうとしよう!










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第4話 『宙の信頼、そして決戦へ…!』


…To be continued

Yuki ( 2021/10/10(日) 15:38 )