第2章 『関西人の阿須那』
第2話
風路
『どう聖君? 美味しい?』


『うんっ、お姉ちゃんのオムライスが1番大好き!』


私は、また夢を見ていた…
過去の聖君と、風路の夢。
いや、そもそもコレは本当に夢かどうかも解らない。
そもそも、雫が私に見せている虚像かもしれないのだから。


彼岸女
(でも、だったら何でこんな物を見せる?)


理由は何ひとつ解らない。
ただ…


彼岸女
(……聖君は、あんなに嬉しそうに笑っていたのか)


あまりにありふれた、自宅での食事風景。
しかし、大きな家の食卓にあまりに不自然な子供ふたりの食事だ。
聖君の過去の事はあまり知らないけれど、とても…寂しく思えた。
こうやって俯瞰した立場から見ると、特にそう感じる。

ただ、それでもふたりの顔は幸せそうに見えた…



………………………



彼岸女
「……っ」


私は重い瞼を開いて前を見る。
どうやら仰向けに倒れているらしく、私の視界にはまず夕暮れの空が…
そして同時にけたたましい金属の擦れる音が聞こえ、私は意識を覚醒させ始めた。
ゆっくりと体を起こし、まずは状況を確かめる。

どうやら他の世界に来た様だけど、前の世界とは違って現代風だ。


彼岸女
(…さっきの音は、電車が止まった音か)


見ると近くには駅があり、ここが日本風の世界だと解る。
かなり昭和チックに寄せてるみたいだけど、また王の悪い趣味かねぇ?
とりあえず私は頭を搔き、まずは近くで寝てる仲間を見付ける。
そしてそれに近付き、ユサユサと体を揺すって起こす事にした。

すると…彼女は目をパチクリさせ、ガバッと勢い良く飛び上がって警戒体制に入る。
まるで野生の獣の反応だね…まぁ、野獣生活2年も続いてたみたいだし、仕方無いのかも。


守連
「こ、ここ何処!? あれ? 電車!? ってここ日本!?」

彼岸女
「どうどう…まずは落ち着きな」


私は両手を前に翳してそう宥める。
すると守連ちゃんは次第に警戒を解き、耳をダランと垂らして脱力した。


彼岸女
「…さて、後は」


私はもうひとりの姿を確認し、安堵する。
その人物は既に自分で起きており、まるで信じられないと言った顔で、ただ…空を見ていた。



「やれやれね…とりあえず成功といった所かしら?」


気が付くと雫が私の体から飛び出し、新たな世界の大地を踏む。
とりあえず、雫のお陰で助けられたって感じかな?
助けたって言い方はおかしいのかもしれないけど。


タイナ
「これが…空? 本当に…辿り着いたのですか?」

彼岸女
「辿り着いた…かどうかは知らないけど、結果的に君を巻き込む事にした」
「恨むんなら、恨んでくれて良いよ?」


私はワザらしくそう言い、タイナはキョロキョロして状況を確認する。
そしてゆっくりと立ち上がり、この世界に感銘を受けている様だった。
今は幸い人通りも少なく、そんなに目立っても…いるか。

冷静に考えたら、こんな世界観の街で明らかにファンタジーな格好した私たちが目立たないはず無い!
しかも駅前というだけあり、明らかに視線が集まり始めている。
下手したら即職質だっちゅーの!


彼岸女
「とりあえず場所を変えよう! まだ世界の概要も解らないし、下手に目立つのは良くない!」


「やれやれね…早速お腹が空いてきたのだけど?」

守連
「うう…それを言われたら私ももうペコペコ」

タイナ
「あ、えっと…! 私鈍足なんで、出来ればゆっくり…」


結局、死ぬ程目立った。
まぁ解ってたんだけどね!!



………………………



彼岸女
「ったく! リング広がれば簡単に隠れられるのに!」


「相変わらず50cmしか開かないわね」


私は右腕にはめていたリングを広げてみるも、それ以上は一向に広がらない。
物を取り出すならこれで十分だけど、人ひとりを通すとなるとかなり面倒だ。
とりあえず、私たちは高架下を移動して人目を避けていた。


彼岸女
「…やけに昭和チックな街並みだけど、住んでる住民もその時代相応に合わせられてるのか」

守連
「? どういう事〜?」


「そういう世界観のゲームと思えば良いわ」

守連
「ああ、○ガテンとか○ルソナみたいなのか〜成る程」


実に解りやすい例えだね。
とはいえ、それはもっと近代が舞台だけどね!


タイナ
「この世界も、もしかして箱庭なのですか?」


タイナは高架下の端の方で、何やら目の前に触腕を翳していた。
そして何か確信めいた表情をし、左手を顎に付けて何か考察する。


彼岸女
「何か解ったのかい?」

タイナ
「…ここ、壁がありますね」
「もっとも、目には見えませんが」


言われて私はすぐに気付く。
そして、ある程度の仕様を理解した。
私は少し目を細め、頭を搔いてこう言う。


彼岸女
「…そこが世界の限界点か、いわゆる画面端って奴だね」

守連
「って言う事は、ここから先には進めない?」


「でも住民たちはフツーにいるわね…設定やデザインだけはされてるって事かしら?」

タイナ
「…つまり、私たちはあくまでプレイヤーだと?」


私はコクリと頷く。
流石は研究職、飲み込みが早くて助かるよ♪
私は少しダラけながらも、簡単に仕様を説明する事にした。


彼岸女
「まず、大前提として覚えておく事がある」
「この世界は『混沌の王』が創り出した世界であり、必ず世界ごとに異なったクリア条件が設定されているんだ…」

守連
「今までやってきた混沌と同じだね」


確かに、守連ちゃんからすればそれ程戸惑う事も無いだろう。
しかしタイナにとっては初体験…出来るだけすぐに馴染んで貰わないと。


彼岸女
「って、そういえば付いて来る前提で話してるけど、良いの?」


タイナはそれを聞いてポカン…としている。
こちらの意図を読めてない…訳は無いと思うんだけど。


タイナ
「一体何を期待してたんでしょうか?」
「私は所詮、ゲームの舞台に造られた存在でしかなかったのでしょう?」
「でしたら、今どうして私はここにいるのでしょうか?」


タイナはそう言って自分の胸に手を当てる。
そして嬉しそうに微笑み、彼女は迷い無くこう言った…


タイナ
「辿り着いた場所が所詮箱庭なのであれば、私の求める空ではありません」
「私の次の研究…正しき空を見るまでは、貴女たちに付いて行きますよ?」


それは彼女なりの決意表明であり、参戦の意志。
私はふっ…と微笑し、やや顔を俯けて右手を差し出した。
それを見て、タイナも食腕を伸ばして手を握る。
成る程…これがブリムオンでの親愛の印って所かな?


彼岸女
「私たちはとある目的の為に、全てのステージをクリアしなくちゃならない」
「多分、長い旅路になると思うけど、覚悟はしておいてね?」

タイナ
「もちろん、相応のリスクは許容内です」
「研究に危険は付き物…リスクを恐れていては真実になど辿り着けませんから♪」


彼女の意志は固そうだった。
研究者ってのは、少なからず狂人…彼女の矜持だったね。
良くも悪くも、尖った仲間がいきなり増えたモンだ。



「説明も良いけど、ご飯!」

守連
「うう…もうお腹と背中がくっつきそうだよ〜」

彼岸女
「やれやれ…仕方無いな」
「この格好で店なんて入りたくないし、着替えをするにももっと目立たない所じゃないと」

タイナ
「この格好はそんなにマズイのですか?」


あ〜うん、タイナは別の意味でヤバイね。
流石に胸元強調した微エロのドレスは、確実に職質される!
…守連ちゃんの野生スタイルも大概だけど。
結局、2年経っても伸びる所が伸びなかったのは幸か不幸か…


彼岸女
「とにかく! 私たちの格好はこの世界に不釣り合いすぎる!」
「外人で通すのも無理あるだろうし、とりあえず着替えれる場所を探そう!」


私たちはそう話し合い、まずは移動する事にした。
タイナと守連ちゃんには、上からはおえるコートを出してあげた。
これだけでも少しはマシに見えるでしょ…私も流石にローブは脱いでおく。
季節的には秋冬って感じで、半袖だと肌寒いかな?
私の格好は黒のTシャツに短パンだからね〜
まぁ、ロングコートでも着ておけば問題無いか。



………………………




「…で、公園のトイレで着替えると」

守連
「うう…結構臭いキツいよ〜」

タイナ
「我慢しましょう、これも必要な事なのですから」


タイナは物分かり良くて良いね〜
そう言えば年齢とか気にしてなかったけど、どの位なんだろ?
雰囲気的には大人の感じがするけど…


彼岸女
「タイナって、今何歳なの?」

タイナ
「ふふふ…女性に年齢を聞くのはタブーですよ?」


「まさか、オバ…」

守連
「しー!! それ以上言っちゃダメだよ!?」


おっと、守連ちゃんが止めたって事は当たらずとも遠からずかな?
これは楽しみなネタが増えたね♪



「フッ…どうだ? 当たらずも遠からずと言った所だろう…」

タイナ
「ふふ…さて? これでも魔女ですので♪」


何という大人の対応…
ネタ振った雫が哀れにしか見えない。
ツッコミ不在は辛いね…



………………………



守連
「こんな感じで良いの〜?」


「おお…コレがかの有名なオードリー・ヘップバーンの!」


まぁ、大体そんな感じ。
ここの時代設定だとやや廃れてるかもだけど、別に不自然さは無いはずだ。
守連ちゃんは都合良く貧乳で、ニーズに合ってそうだしね♪
…もっとも当時のニーズは細い、も含まれるんだけど。
守連ちゃんは細い所か太い、だ…
以前よりも筋肉質になってるし、とても日本人体型じゃない。
まぁ、ポケモンだし大目には見て貰えるだろう…

ちなみに、雫のは子供に定番のオーバーオール。
世界一有名な配管工のアレと思ってくれれば良い。
カラーもそれにしてるから…帽子は流石に用意してないけど。


タイナ
「ふふ…いかがですか?」


タイナは綺麗なピンクのワンピース。
トレードマークの三角帽子は本人が外したくないという事で残してあるけど、色合いはピッタリだし文句は無いね。
オプションでハンドバッグと日傘も用意してるし、雰囲気はグンバツだ。
ちなみに私は黒のロングコートをそのまま着てるだけ。
別に寒くはないし、この方が動きやすい。


守連
「わぁ〜タイナさん、綺麗〜♪」


「…中々やるじゃない」ギリッ!


守連ちゃんは素直に褒め、雫は何故か恨めしそうに爪を噛んで歯軋りしてみせた。
ネタのつもりだったんだろうか?
それにしても誰も乗れないのは悲しすぎる…


彼岸女
「さて、とりあえず食事だね…」
「お金あったかな〜? って、日本通貨で良いんだろうか?」


「製造年月日とかツッコマれたら事よ?」
「偽札で捕まるとかバカらしいし」


そりゃごもっともで…と、なると必然的に自炊するかどうかなんだけど。
材料も問題だし、機材や電気も…後場所!
それに、最大のネックは…


守連
「……!」


既に涎を垂らしながら期待している守連ちゃん…
これの腹を満たすのが当面の問題点だ。
さて、どうするかね〜?


タイナ
「とりあえず、無難に食べられる物を出してみては?」
「流石に料理となると、このメンバーでは四苦八苦しそうですし…」

彼岸女
「そっちの経験は?」

タイナ
「私は研究者ですよ?」


察した…ズボラなタイプか。
まぁ、自身を狂人と言って憚らないマッドサイエンティストだしね〜
むしろ何食って生きてきたのか?
ちなみに、私も料理なんて出来ない。
レンチンとかカップ麺なら作れるけど、手料理とか冷奴(ひややっこ)位しか無理!

いや、面倒だからやらないだけなんだけどね?


彼岸女
「流石に公園で食うのも問題か…」
「じゃ、歩きながら食えるのでいこう! はい!!」


「何で○ィダーインゼリーなのよ!? せめて○者メシにしなさい!!」


どっちにしても腹は膨れないけどね!
私は仕方無いから雫に菓子パンを握らせてあげた。
守連ちゃんには…もうとりあえず持てるだけ持たした!!


彼岸女
「タイナは何が良い? とりあえず在庫はもう少しあるけど…」

タイナ
「私は…良く解らないので、お任せします」


そう言えば、森で生活してたタイナに菓子パンとか概念自体無いのか?
そうなると、とりあえず食べやすいのが無難かね…


彼岸女
「ハイ、ジャムパン」

タイナ
「ジャム…ですか? 袋に入ったただのパンに見えますけど」

彼岸女
「中に苺ジャムが入ってるの…食べれば解るよ」


タイナは不思議そうに袋からパンを取り出し、かぶり付いてみせた。
とりあえず…お味はいかがかな?


タイナ
「…本当にジャムが入ってるんですか?」

彼岸女
「あ〜まぁ、一口目で具に辿り着かないはあるあるだよね〜」


一般的な安い菓子パンあるあるだ…中身は大抵片寄ってたりするから、女性の小さな口だとすぐには届かないだろう。



「乙女か!? もっと野獣の様に食い散らかしなさい!!」

守連
「ハムハムハムハムハムハムハムハムッ!!」


言ってる側から守連ちゃんがハムスターみたいな顔で平らげてるよ!
文字通り食い散らかしてるよ! スゴいスピードでパンが消えていくよ!!


タイナ
「あ、あはは…」

彼岸女
「逃げたくなったらいつでも言ってね、善処するから…」


私たちは呆れていた…
しかし忘れてはいけない…この先、更に恐ろしい事が待っているであろう事を。



………………………



彼岸女
「…ふむ、思ったよりも狭い範囲でしか構成されてなさそうだ」

タイナ
「精々、500m四方ですかね?」


私は頷く。
どうやらほぼ忠実に大阪の街を再現してるらしい。
時代設定は大体1960年前後。
恐らく範囲は北新地の街が中心と思われ、目の前に広がる梅田の街並みには辿り着けなかった。
思ったよりも活動範囲は狭い…この世界で、一体何が条件に?


彼岸女
「……!?」


一瞬、ゾクゥッ!と背筋が凍りそうになる。
私はその瞬間体を震わせ、最悪の自体に軽く恐怖した。
そして、この世界のボスを理解する。


彼岸女
「やってくれるじゃないか…早くも大ボス登場ってわけ?」

タイナ
「? 彼岸女さん…?」


当然、誰もその存在には気付いていない。
それもそのはず、これは元七幻獣である私だから感知出来るといって良い波長だ。
本来なら味方を識別するシグナルみたいな物なんだけど、最悪な事に今は敵を感知する事になる。
同時に、私たちの存在が敵に知られるって事だね!


彼岸女
(どうする? 今の私たちで勝てるか? 恐らく、この波長はカルラ!)


七幻獣、怠惰のボルケニオン…恵里香の後釜であり、その正体は謎のベールに包まれている。
自ら動く事は殆ど無く、その能力すらも殆ど謎。
男か女かも解らないその素性は、恐らく王しか知らないと思われる。
そのカルラが、先陣を切る…と?


彼岸女
(いや、先陣とは限らない…この世界はあくまでたまたまぶつかった程度のはず)


もしかしたら、他の世界では既に聖君の家族と交戦してるかもしれないのだ。
王の掌の上だとしても、このタイミングは最悪と言える。


彼岸女
(考え方を逆転すれば、この世界には味方がいるかもしれない…)

タイナ
「では、当面の目的はその味方探し…という事ですか?」

彼岸女
「!?」


どうやら、テンパってて駄々漏れしてたらしい。
エスパー相手にはもう少し気を配らないとね〜
しかし、タイナは冷静だな…こっちからしたら相当危険な橋を渡るんだけど。


タイナ
「…問題は他にもありますね」
「現状、解決策が無いのであれば、この世界に滞在する費用なども計算に入れなければ」


ぐ…何気に痛い所を。
でも確かにそうだ、いくら備蓄あると言っても限界がある。
基本的に生物は保存が効かないし、自炊は期待出来ない。
とはいえ通貨も無く、働き口を探すのも更なる問題点だ。
やれやれ、これじゃあ敵を倒す前に生きる事が大変だよ…



「彼岸女〜そろそろ守連が限界近いわよ!?」

彼岸女
「だーもう!! 性能と引き換えに燃費が悪い!!」

守連
「うう…ゴメンね〜?」


守連ちゃんはパンを全て平らげたものの、またすぐに減ってきた様だ…
ここまでロクに食事もしてなかったみたいだし、多少は反動もあるか。
私は頭を抱えながらも、当面の路銀を稼ぐ方法を探すのだった…



………………………



彼岸女
「…流石に夜か」

タイナ
「結局、街を歩いただけでしたね…」


私たちは人気の無い場所を選び、そこでキャンプをしていた。
いわゆる定番の橋の下であり、幸いに誰の縄張りでも無かった様だ。
私は、リングから必要な物を多数出し、自炊の準備をしていた。


彼岸女
「とりあえず発電機はOK…後は電気ケトルに水っと」

守連
「カップ麺〜! もう待てない〜!!」


「ヘイ! そんなせっかちガールには生麺タイプがお勧めよ!」

彼岸女
「消費期限近いのから出来るだけ食べてよ〜?」


私はとりあえず満腹になるであろう分の数を取り出し、雑にテントの中で散らかしていく。
とりあえず味はこの際何でも良い! カップ麺ならストックも大量にあるし、しばらくは何とかなるでしょ。


タイナ
「…これ、お湯を注ぐだけで出来るんですか?」

彼岸女
「そっ、インスタントラーメンって言ってね…保存も効くし便利でしょ?」


私はそう言って、ラーメン自体初体験であろうタイナの分を選んで用意してあげた。
まぁ無難に醤油味で良いでしょ♪
…タイナの味覚が解らないからアレだけど。



「私は豚骨…! これは外せない!」

彼岸女
「守連ちゃんはどれにする〜?」

守連
「え? 全部!」


私たちは全員凍り付く。
いや、これ…30個は出したんだけど?
大盛のも沢山あるし、結構な量よ?



「それも1個や2個ではない! 全部だ!!」

彼岸女
「これいけたら世界記録クラスだと思うけど、守連ちゃん本当に大丈夫?」

守連
「大丈夫! 今ならいける!!」


そりゃ恐ろしい…って言うか、本当に今後の事考えないと食費がヤバイ!!
とりあえず私はありったけのペットボトルを出して、水を用意する。
期限は…ヨシッ! とりあえず足りるはず…



「そう言えば、こういう水とか何処で保存してるの?」

彼岸女
「適当な空間…気温冷蔵庫並の」


「…ここからでも繋がるの?」

彼岸女
「……繋がるね」


「…それ、潜ったら別の世界に行けるの?」

彼岸女
「それは無理」


私はあっさり否定する。
いや、確かに流れ的には行けそうだけどね!?
私が保管庫にしてる空間は、かなり特殊な場所にある空間であり、世界の壁の外にある。
いわば王ですら干渉しにくい場所であり、唯一今の私が自由に干渉出来る空間でもあるのだ。
私の能力は、その気になればパラレルワールドまで手を出せるからね〜

もっとも、この世界じゃ制約されて役に立たない訳だけど!


彼岸女
「まぁ説明すると長いんだけど…いる?」


「良い…期待して損した」


雫ちゃんのご期待には添えられなかったらしい…
私はふぅ…と、ため息を吐いて自分の分のカップ麺を開封した。
味は…ただの味噌だ。
まぁ、有名な○ッポロ一番の奴。



「これなら袋麺の方が速くて安上がりじゃない?」

彼岸女
「う〜ん、洗い物作るのがヤ〜」


まぁ、使い捨ての鍋もあるけどね…
それはそれでゴミ増えるし、カップ麺が1番楽!


守連
「あ〜! この3分が長い!!」


守連ちゃんは既に1つ目のカップ麺に湯を注いでいた。
私は苦笑しながらもタイナと雫の麺に湯を注いでいく。
電気ケトルも複数あれば良かったかも…今度見付けたらストックしとこう。


タイナ
「不思議な食べ物ですね…後、これは?」

彼岸女
「ああ、割り箸は無理だったかな? フォークもあるよ…」


私はタイナに使い捨てのフォークを渡してあげた。
日本の万博に来た外人さんも、フォークで食べてたんだよね〜


彼岸女
「雫は箸で大丈夫?」


「バカにしないで…当然のスキルよ!」


そりゃ何よりで…さて、そろそろ完成かな?
私はタイナのカップ麺の蓋を取ってやり、フォークで軽くかき混ぜてあげた。
そしてそれをタイナに渡し、タイナは恐る恐る麺を啜る…
反応はいかに…?


タイナ
「…!? 美味しい…それに熱い!」

彼岸女
「そりゃ出来立てだからね…火傷しない様に気を付けなよ?」


「彼岸女もすっかり丸くなったわね…」

彼岸女
「そりゃ、そういう状況だしね…仮にも皆の命預かるんだから」


私はそう良いながら箸で麺を食べる。
雫も美味しそうにズルズルと食べていた。
守連ちゃんは…見なかった事にしよう!



「や、野郎…! わざわざ2分おきに湯を注いで次の麺を準備してやがる!!」
「あれなら、ひとつ食べきる頃には次のが出来ているって寸法だ!!」


まさしくフードファイターだ…あれなら大食い大会に参加させた方が経費かからないんじゃ?
1度探してみようかな?


タイナ
「ふふ…楽しいですね、何か」

彼岸女
「…そう、かい?」

タイナ
「はい」


タイナは多く語らず、笑顔で麺をゆっくり啜っていた。
多分、元から少食なのだろう…体は細いしね。
雫は見た目よりも結構食べるみたいだけど、それも私の夢が足りないせいなのだろう…

ちなみに私はそこまで食べない…
って言うか、食べる必要が無い。
愚者になってからというもの、そもそも体の機能が以前と違いすぎるのだ。
ぶっちゃけ、多分食べなくてもある程度何とかなるし、雫さえ元気なら私も元気なんだろうと思う。

私がしっかり雫に夢を食わせられるなら、それこそ不老不死みたいな物なんだろうと軽く予測出来る位だ。
その上で、対価に合わせた奇跡を使える、と…そうなったら本当にチートだね。

ある意味、この力はゲーム的に裏技だ。
クリアに必須では無いだろうし、ゲームをクリアするだけなら必要の無い力。
だけど、上手く利用出来るなら大幅にゲームをヌルく出来る…
もっとも、王が想定してないとは思えないけど、ね。


彼岸女
(カルラ、か…顔を合わせた事は無いけど)


真姫から粗方今の七幻獣の事は聞いてる。
確か、今動けるメンバーは…

傲慢のミュウ…ウォディ。
基本的に1番活動的なのはコイツで、王の忠臣。
実力はまぁまぁだけど、今の私だと勝てるとは思えない相手だ。
もっとも、守連ちゃんなら軽く捻れる位の戦力だけどね。

憤怒のゲノセクト…ノーマ、とか言ったっけ?
メロディ以来、長らく欠番だった憤怒の枠。
カルラ同様に情報が少なく、何を考えているのかは全く解らない。
コイツも、要注意だと言えるね。

怠惰のボルケニオン…カルラ。
恵里香のすぐ後に加入し、それなりに結果は出しているみたいだ。
ただ、殆どは従者任せと聞くし、その従者もかなりの頻度で交代している。
対応の難しさで言ったら、コイツがNo.1にキツいかもね。

暴食のシェイミ…チキ。
怠惰同様、自分からはあまり動かず、従者任せ。
基本的に面倒臭がりな性格だし、今はそこまで注意する相手ではないかな?
とはいえ、出会った時の厄介さは折り紙付きだ。
今は出会わない様に祈るしかない。

そして最後は強欲のディアンシー…ペルフェ!
聖君を消した張本人であり、殺さなければ気が済まない程憎い敵!
今頃何してるのかは知らないけど、見付け次第必ずブチ殺してやる!


彼岸女
(残りのふたりは、まず動かない)


嫉妬のマーシャドー…スカア。
真姫に眠らされ、何処かに飛ばされたみたい。
今どうしているのかは、全く不明だ。
もっとも、個人的には1番合いたくないけどね!

そして色欲のダークライ…真姫。
私と内通し、王の枷を外そうと結託した裏切り者。
とはいえ、結果的に計画は失敗。
私の枷は外されたものの、真姫は違うだろう。
今頃、私を憎みながら咎を受けているに違いない。
可能なら、説得して味方に引き込みたいんだけどね…
性格は最悪だけど、根は悪党じゃないし。


彼岸女
「…前途は、多難か」

タイナ
「かも、しれません…ですが」


タイナは両手でカップ容器を抱え、ずず…とスープを飲む。
私は黙ってそれを見ており、次の言葉を待っていた。


タイナ
「仲間がいるのでしたら、きっと大丈夫ですよ」

彼岸女
「…そう、だね」


今は、それで良いのかもしれない。
とにかく、仲間を信じて進もう。
皆が愛する、聖君の為に…










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第2話 『辿り着く愚者』


…To be continued

Yuki ( 2021/01/10(日) 16:18 )