最終話 『遠い世界の隣人さん』
ジェフリー
「…あれが、旅団の本隊!」
マイク
「全機警戒体制!! これより戦闘空域に入る!!」
「インディペンデントに所属する全戦闘機部隊、出撃せよ!!」
マイク君は力強い号令でそう叫ぶ。
今、我々の目の前にいるのは強大な永遠旅団の戦力…
小型から大型まで、見た事の無い程の数が蠢いており、これこそが敵の最終戦力なのだと我々は否応無く理解させられていた。
ジェフリー
「…先行したサイア中尉は?」
マイク
「交戦の形跡有り! ですが、大事には至っていない様です」
「萌軍曹が、先に前線へ接触します!!」
マイク君の報告を受け、私は状況を理解する。
そうか…中尉、君でも止められなんだか。
それだけ、彼女の意志は固かったのだな?
私は改めて己の意志を固める。
もはや、迷いは無い!
ジェフリー
「…これより、インディペンデントは全力で永遠旅団との和平交渉を進める!!」
「戦闘機部隊全機! 決して無駄な戦闘はしない様にせよ!!」
「そして、全力でメイリン・ルカ少尉をフォローせよ!!」
?
「流石は長官…そのお言葉を待っていましたよ♪」
突然、私の背後からそんな声が放たれる。
私はメインルームにある自分の席を後ろに向け、確認しようとするも既にそこには誰もいなかった。
私は驚いた顔をするも、その声の主の事はとても理解している。
そして、同時に力強い勇気を与えられた。
『彼』が動くのであれば、まさに千人力…
メイリン少尉は、本当に素晴らしい伴侶を得た物だ。
………………………
萌
「あれは…サイア中尉!?」
私は旅団の前衛を見ながらも、その手前で海に浮かんでいたサイア中尉を発見して止まる。
この状況で何を悠長な事を…思うかもしれないが、私にはそれを無視する事は出来なかった。
それが解っているのか、サイア中尉は疲れた顔で私を見てため息を吐いていたのだ…
サイア
「…無駄な時間を潰すのは止めなさい、自分の任務を最優先に……」
萌
「そんな事はどうでも良いです!!」
私は開口一番、そう叫んで声を遮る。
サイア中尉は驚いた顔をし、私はすぐに回線を繋いでこう告げた。
萌
「サイア中尉確保! すぐにテレポートラインを!!」
「損傷はあるものの、まだ大丈夫です!!」
マイク
『了解! すぐに回収する!! 軍曹はそのままメイリン少尉をフォローせよ!!』
萌
「了解であります!!」
私はそう言ってすぐに旅団の部隊へ特攻する。
少尉は既に交戦に入っている…そして凄まじい動きで敵を翻弄していた。
恐らく、あれは側にいる旅団の少女の力なのだろう。
少尉は回避に徹底し、ほとんど攻撃は行っていなかった。
つまり、それこそが少尉が意志!
萌
(やはり、少尉殿は本気で和平を望んでおられる!)
ならば、私も全力でそれを手伝うのみ!!
私は全てのブースターを解放して突撃する。
現状、追い付けるのは私のみ…ならば!
?
「先に行きますよ? それでは♪」
私は目を疑った…何と、私の全速力よりも更に早い速度で、何者かが横切っていったのだ。
それは人型の何かであり、余りに一瞬過ぎて何者かは解らなかった。
ただ、足で空を蹴りそのまま加速していく…それはまるで夢でも見ているかの様な動きだ。
一体、あれは?
………………………
エリーン
「…射程は!?」
アニー
「前衛はもう入ってますにゃ!! でも…」
エリーン
「ワシの指示無しには決して撃つな!!」
ワシは特装の大斧を肩に担ぎ、敵を睨む。
前線ではメイリン少尉が大立ち回りをしている。
だが、あのままでは一方的に狙われるだけだ。
少尉は何かを叫んでいる様だが、敵は一切聞き入れていない。
やはり、和平なんて物は…無理なんじゃないのか?
だが、メイリン少尉の顔は必至であり、それが決して無駄ではないと訴えていた。
側にいる旅団の少女も少尉を信じきっている顔だ。
なら…その行動は間違っていないんだな!?
エリーン
「ニューゴロド全速前進!! ここからワシ等は独自の意志で動く!!」
アニー
「…! 了解ですにゃ!! ニューゴロド全速前進!!」
「主砲は何時でも撃てますにゃ!!」
ニューゴロドはインディペンデントとの線を切り、曳航を拒否した。
そして遅いながらもそのまま前進を続け、ワシ等は独自にメイリン少尉をフォローする様に動き始めたのだ…
………………………
メイリン
「くっ…! やっぱり、声は届かないの!?」
サキ
「届かないわけではない…ただ、下位の団員にはそれを理解出来ても抗える術を持たないのだ」
私たちは前線に突入し、敵の総攻撃を一身に受けていた。
ありとあらゆる攻撃を受けるも、私はサキからの力を受けてそれを簡単に捌いていく。
まさに神がかりな力だった…今までの自分とはとても思えないパワーだ。
まるで…世界が止まって見える!
メイリン
(でもどうする!? どうすれば総意は止められる!?)
サキ
『前線の下位種をいくら倒しても意味は無い』
『だが、イタズラに落としても総意の意志を固める事になる』
つまり、極力戦闘は回避して総意を説得するしかないわけだ。
それはあまりに難易度が高く、そして非現実的な作戦。
まず、総意の本体がどれなのかすら私には解らないのだから…
サキ
『余所見をするなメイリン!』
メイリン
「くっ!!」
サキはテレパシーで私に直接語りかける。
私は油断してエネルギー弾を1発貰うものの、怯んだだけでダメージは無かった。
そしてすぐに体勢を整えるものの、次から次へと旅団の戦力は突撃して来ていた。
私は歯を食い縛って覚悟する。
何があっても意識だけは失うなと、頭で考える。
そして私は両腕を上げてガードの体勢に入った。
目の前には複数の小型個体…!
こんな所で…やられてたまるか!!
メイリン
「…!?」
私はダメージを覚悟するも、一切傷は負っていなかった。
注意して周りを見ると、近付いていた小型は全てゆっくりと海面に落ちていっていたのだ。
私は顔に?を浮かべるも、すぐに何者かの声が背後から響く。
そして、その何者かは軽く私の右肩をポンと叩き、優しい言葉を投げ掛けていった…
?
「メイリンさん、貴方は決してひとりではありませんよ?」
メイリン
「…う、嘘!? 貴方、まさか…ノア!?」
私の頭上を飛び越えて行ったのは、紛れもなくその人だった。
私が戦う理由でもあり、守るべき理由でもある存在。
だけど、その人は自ら空を飛び、手には武器を持って戦っていた…
その姿を私は見た事なんて無いし、想像も出来なかった。
だって…私の知ってるノアは、ただ料理が上手いだけで、力なんて無いはずの一般人のはずなのに。
ノア
「安心してください…貴女に群がる無粋な雑魚は私が止めます!」
そんな事を高らかに言いながら、ノアは空を蹴って自由に飛び回る。
どうやら足に特装の様な物を掃いているらしく、その反応とスピードは尋常では無かった。
明らかにPokemonのそれすら軽く上回っており、スピードに長けた私ですら目で負うのは難しいレベルだったのだ…
ノア
「さぁ、聞き分けの無い旅団の皆さん! ここは人類最強の最終兵器がお相手します!!」
「死にたくなくば、道を開けなさい!!」
ノアはそう叫んで、近くにいる小型を全て撃ち落としていった。
何やらナイフみたいな物を投げている様で、それを受けた相手は全て動きを止めて海面に落ちて行っていたのだ。
コアをやられたのであれば霧散するはずだけど、ノアの攻撃は相手の動きを止めるだけ…?
サキ
『メイリン、この好機を逃すな! 一気に総意の本体を叩くぞ!?』
メイリン
(総意の…本体!?)
サキ
『そうだ、総意とは永遠旅団の大多数の意志…』
『旅団の最高決定権であり、それさえ叩ければ総意は他の派閥に決定権が移る!』
成る程、それが出来れば総意は平和的な派閥に移るわけか!
だったら、今私がやるべき事は…!!
私はすぐに南極大陸へと舵を切る。
目の前には中型と大型が跋扈しているが、私は迷わずに突っ込んで行った。
そして、その瞬間私の目の前を横切って何者かが前方の中型を吹っ飛ばしてしまう。
私は目だけでそれを追い、誰がそれをやったのか確認して驚いた。
萌
「鹿島軍曹、吶喊(とっかん)します!!」
それは間違いなく萌だ。
新たな特装に身を包み、短時間ながら空を飛んで中型を蹴散らしていく。
決してコアは傷付けず、それでも大胆に。
あくまで私の道を切り開く為に彼女は剣を振るっている様だった。
私は決心し、そのまま真っ直ぐ突き進んで行く。
だが、更に多数の大型が立ちはだかる。
何体かは抜けられる…けど、全部は無理だ!!
いくつかの大型が体を光らし、光線を放って来る。
私はフィールドを展開し、サキの力を受け取ってそれを全て防ぐ。
しかし足は止まってしまい、私たちはその場から進む事が出来ないでいた。
倒せるなら、早いけど…それじゃ本当の意味で勝利にはならない!
私はあくまで、旅団と和平を望んでいるのだから!!
メイリン
「サキ! そっちの声は届かないの!?」
サキ
『やっているが、やはり聞き入れてもらえない』
『皆、総意の意志に殉じている…1部迷いはあるものの、それが決定打には』
やはり、全てを決定している総意をどうにかしなきゃならないんだろう。
それこそが、恐らく真の意味での悪意であり、倒すべき敵!!
メイリン
(人間も、Pokemonも何もかもを滅ぼそうとする悪意!!)
私は、意志を強く持つ。
全ての団員がそれを望んでいる訳じゃないのに…!
ただ、声の大きい1部のタカ派が叫んでいるだけで、声の小さい優しい皆は従うしかなくなってる。
そんな…そんな横暴、許せるもんか!!
エリーン
『メイリン少尉!! 上昇しろぉ!!』
メイリン
「!?」
私は突然の通信を受けてすぐに上昇する。
すると、私の居た場所の背後から巨大な斧が回転して通り過ぎて行った。
それは白銀のエネルギーを纏いながら、大型の個体を全て薙ぎ倒していく。
体の1部を両断された大型個体はそのまま動きを止め、明らかな隙が出来る。
私は歯を食い縛り、その隙を縫って突撃した。
エリーン
「全砲門開け!! コアは狙うなよ!?」
アニー
「アイマム!! 主砲、副砲一斉射撃ですにゃ!!」
いつの間にか射程に入っていたニューゴロドから一斉に砲撃が始まる。
その弾幕と火力によって大型の個体は一気に体を削られていく。
私はその弾幕に助けられながらも更に前に進んだ、
南極大陸はもう目の前!! きっとあそこに総意がいる!!
………………………
マイク
「メイリン少尉! 南極大陸へ突入!!」
ジェフリー
「全機、ここが正念場だぞ!?」
「決して攻撃の手は緩めるな!! そして全機生存優先!!」
「旅団への被害も最小限に抑えろ!!」
「忘れるな!! 彼等もまた、我々の『隣人』だ!!」
………………………
アンナ
「…もうすぐ、終わるのかねぇ〜?」
サイア
「さぁね…でも、終わらせるんじゃないの? あの…大馬鹿なら」
私たちは格納庫でふたりそう語り合っていた。
私は特装が損傷している為、出撃は出来ない。
アンナ中尉ももう間に合わないと解っているからか、修理をしようとはしなかった。
私は格納庫の壁に背を預け、床に尻を付けて天井を見る。
無力ね…所詮私は敗北者か。
例え何を言われても、彼女は折れなかったし、貫き通した。
そんな彼女は…そろそろ報われても良いのかもしれないわね。
アンナ
「…やれやれ、お互い不器用で苦労するね?」
サイア
「…何よ? 私タバコなんて吸った事無いわよ?」
アンナ中尉は笑ってタバコを吸いながら、私にも1本勧めてくる。
私は戸惑いながらもそれを1本受け取り、中尉から火を点けて貰い、初めてのタバコを吸った。
サイア
「!? っほ! げほっ!!」
アンナ
「あっははは! どうだい?」
サイア
「…っ最悪ね、何でこんな物を好き好んで吸えるのよ?」
私は一口で音を上げ、すぐに火を消す。
アンナ中尉はケラケラ笑いながら、楽しそうにしていた。
そして、中尉はタバコの灰を足元に落としてこう呟く。
アンナ
「…誰だって、最初はそんな反応をするのさ」
「でも、気が付いたらハマってしまう人も多い」
サイア
「…そうね」
「喫煙者の立場からしたら、そういう物なのでしょうね」
私は、改めて思い知った。
そして、自分の意味を見失う。
私は…結局何を求めたのだろうか?
答えは出た…正しかったのはメイリン少尉。
私が信じた正義は…彼女に叩き折られたのだから。
アンナ
「…君には、君の答えがあるよ」
サイア
「そうかしら? それがまた間違っていたら?」
アンナ
「何度でもやり直せば良い」
「少なくとも、私やメイリン少尉は、そうしてきたつもりだよ」
アンナ中尉は、その為に機械の体を選んだ。
人間としての寿命を延長してでも、やり直せる回数を増やしたのだ。
対して、メイリン少尉はどうだろうか?
彼女は、あくまで自分の体や精神をすり減らしてやり直し続けた。
それが決して報われるとは限らないのに、それでも…
サイア
「…私は、ただ逃げてただけ、か」
アンナ
「でも、人である限りそれも正解だよ?」
「人は誰もがギャンブラーである必要は無い」
「君には君の…安全な人生を歩んでも、良いと思うけどね」
つまり、逃げても構わない。
私はそれ以上進めないし、進む必要も無いと言う事、か…
サイア
「気に入らないわね、それが私の限界だと?」
アンナ
「そうは言ってない…でも、やれる事が無いとも…限らないんじゃないかな?」
中尉はそう言ってタバコの煙を噴く。
私はため息を吐き、無事だった1本の槍を手に取って力を込める。
やれる事…か、なら本能に従って見ましょうかね?
………………………
萌
「つぇああぁぁぁっ!!」
ノア
「無理はしない方が良いですよ? 貴女の性能では、やり過ぎかねない…」
萌
「そんな事は解っています!! ですが、こんな所で手をこまねいていては少尉を助けられない!!」
エリーン
『良いから退がれバカ者!! 砲撃の邪魔だ!!』
そう通信を受けて鹿島軍曹は渋々退がる。
私はクスクス笑いながらも、空中を蹴って先に進んだ。
私の装備している靴や武器は、Pokemonの技術を応用した特装と同じ性質の物。
しかし、その性能は私のスペックに合わせた特注品。
少なくとも、並のPokemonではまるで性能を引き出せない代物です。
人類最強の兵器たる私だからこそ、それを自由に操れるのですから…
ノア
(メイリンさん…貴女なら必ずやり遂げられます)
私はそれを信じて疑わなかった。
何故ならば、彼女こそが私の全てであり、天使。
戦う事しか知らない私にとって、唯一愛せると思った存在。
貴女を失う位なら、私は世界を滅ぼしても構わない。
ノア
(ですが、私は信じいます)
私は南極大陸上空に突入し、大型の集団へナイフを投げ付けていく。
ナイフには特殊なエネルギー体が埋め込まれており、それは掠り傷ひとつで大型の個体ですら麻痺させる代物です。
あくまで麻痺させるだけですので、コアを破壊する事は出来ないのですが、ね。
ノア
「それでも構わない! さぁ、私が敵を引き付けます!!」
「メイリンさん! 全てに決着を!!」
私は一切の傷を追う事無く立ち回る。
いかに上位の個体といえども、私に傷を付ける事など出来ませんからね♪
………………………
メイリン
「…!?」
サキ
「見付けた…! あれが、総意の集合体!!」
私たちは高速で南極大陸上空を突っ切っていた。
そして、日本の昭和基地がある上空辺りに超巨大な雷雲が立ち込めている。
あまりの禍々しさに軽く恐怖を覚えるものの、私はサキの意志を受けて己を奮い立てる。
メイリン
「あれが…ラスボスかぁ!!」
?
『愚かな生命体よ…なぜ抗う?』
サキ
「総意よ! そちらこそ何故争う道を選ぶ!?」
「旅団の寿命を削ってまで、こんな争いを選ぶ理由は解りかねる!!」
サキは私にしがみ付きながらそう叫ぶ。
するとそれを聞いた総意は笑い声を放ち、徐々に形を為していく。
やがて、総意の意志を表すであろうその姿は露になる。
その姿は…まさに圧倒的。
全長300mはあるだろうか? まさにボスという風格を放つ代物だ。
身長170cm程度の私からしたら、まるで要塞に立ち向かう様な物。
でも、私に迷いは全く無い。
総意
『上位個体、No.875639…お前の存在は総意への叛逆と判断する』
サキ
「!? それでも…理由を聞かせて貰いたい!!」
サキの体は振るえていた。
きっと、あの総意が放つ意志が怖いのだろう。
彼女だって、生きているのだから。
だからこそ怖いと思うし、仲間を助けたいとも思うし、私たちと仲良くしたいとも思うんだ!
私は無言で息を吐き、強くサキを抱き締めた。
それに反応したのか、サキはやや驚いた顔で私を見上げる。
総意
『理由など明白…! この惑星に存在する生命体は、あろう事か異界の住民を取り入れて更なる戦力の肥大化を招いたのだ!!』
サキ
「それは…あくまで自衛の結果に過ぎない!」
「こちらが先に手を出されたのは確かだ、だが全ての人類が敵対者とは限らないはず!」
総意
『そんな生温い感情、何処で手に入れた!?』
『我々旅団は、いつもそうやって宇宙の調停を正していたはずだ!!』
サキ
「…確かに、疑う事も最初は無かった」
「だが! メイリンは私たちに手を差し伸べてくれた!!」
「どうして、友好的な意志を示す優しい隣人まで排除しなければならないんだ!?」
「それも…旅団の弱い個体を犠牲にしてまで、実行する価値のある決定かぁ!?」
サキは初めて見せる激昂を放った。
総意は若干それに怯んだのか、一瞬黙る。
サキから感じられる感情は、まさに怒りだった。
私が脳波越しに感じる彼女の意志は、ただ旅団の仲間を守りたいだけなのだ。
だから…私は自分の意志を強く持ってそれをサキに伝える。
メイリン
(大丈夫よ、サキ…貴女が間違ってないと思うなら、私が全部助けてあげるから!!)
サキ
『メイリン…! 私は、私は戦いたくない!』
『でも、総意が望む未来は…犠牲があまりにも大きすぎる!!』
総意
『愚かな個体よ! たったひとりの意志が何を語る?』
『ここにあるのは、旅団の総意! いわば全個体の決定権!!』
『我こそが旅団その物であり、我が意志こそが絶対なのだ!!』
総意は巨大な体を動かし、全身でその意志をアピールする。
総意の体からはやがて2本の巨大な腕が生え、ダルマの様な体型から腕だけを生やした形を形成する。
私は、相手が戦闘態勢を取ったのが解った。
やっぱり…やるしかない。
説得出来ればあるいは…だったけど。
サキ
「総意…それが、あくまで決定か!」
メイリン
「もう良いよ…頑張ったね、サキ」
私は優しくサキを抱き締め、頭を撫でてあげる。
サキが子供かは解らないけど、少なくとも私にはそうしてあげるべきだと何となく判断した。
すると、サキは全身を振るわせて私にしがみつく。
その姿は恐れを抱きながらも、乗り越え様とする立派な意志。
なら、私は答えよう…持ち得る全ての力を持って!!
メイリン
「総意!! 貴方たちがあくまでこちらを滅ぼすと言うなら、私たちは貴方たちを倒してでも和平の道を選ぶ!!」
総意
『!? 和平…? 愚かな!! 下等な生命体が我々と対等になれるとでも!?』
サキ
「…! その、その傲慢な意志こそが初めから間違っていると、何故気付かない!!」
メイリン
「サキ!! やるわよ!?」
「貴女の意志と力、全部私があの解らず屋にブチ込んでやる!!」
私の意志に反応し、サキは私に強く抱き付いて力を託してくれる。
その瞬間私の動きは光速と等しくなり、幾何学的な動きを持って戦闘行動に入っていった。
総意
『フハハハハ!! 無駄な足掻きはよせ!! 貴様らは全て滅ぶ運命なのだ!!』
メイリン
「そんな運命…!!」
サキ
「私たちは望んでいない!!」
総意は腕から巨大なエネルギーを放って来る。
それは一筋のビームの様であり、南極大陸の大地を簡単に抉り取ってしまった。
………………………
マイク
「昭和基地上空の個体から、超巨大なダクタリアン反応!!」
ジェフリー
「くっ…! バリア展開!! 全面に最大出力!!」
「超巨大個体には決して近付くな! 全機生存優先!!」
マイク
「メイリン少尉…! 絶対に死ぬなよ!?」
ジェフリー
「そうだ! メイリン少尉こそが我々の代弁者なのだから!!」
「信じているぞ!!」
インディペンデント全クルー
『行け! メイリン少尉ーーーーーー!!』
………………………
メイリン
「まずはコイツを食らいなさい!!」
サキ
「『インフィニタルエナジー』! フルブースト!!」
私は二丁拳銃を両手に構え、それをただひたすらに連射する。
サキのエネルギーをフルに受けたそれは容易く総意の体を貫き、総意は思ったよりもダメージを負っていた様だった。
総意
『グオオォッ!? な、何故こうも意志が揺らぐ!?』
サキ
「それが私たちの求める意志の力だ!!」
「いかに総意といえども、反発する意志全てを纏める事は出来ないという事だな!!」
私は呼応する様に総意の周囲を飛び、横回転に移動しながら連射を続ける。
コアがあるのかどうかは解らないけど、とりあえず効いてるなら全弾食らわせてやる!!
メイリン
(とはいえ、流石にこれだけじゃダメか?)
アンナ
『メイリン少尉!! 今から特装を送るよ!?』
メイリン
「嘘っ!? このタイミングで!?」
それは正にご都合主義!
しかし、この状況ならそれに乗るしかないわよね!?
メイリン
「よっしゃあ!! この際ジャンジャン来なさい!!」
私はそう言って銃を投げ捨て、瞬時に転送された獲物を手に取って、それを確認する。
それは二丁の機関銃であり、私は迷わず引き金を弾いた。
そこからは電気を纏った銃弾が連射され、まるでマシンガンの様に総意の体を抉りとっていく。
メイリン
「うはっ! スッゴイ威力〜♪」
総意
「おのれぇ!! 調子に乗るなぁ!!」
総意は腕を振り回しながらも全身からビームを放って来る。
私はフィールドを全開にしてそれを受け止め、尚も攻撃を止めなかった。
サキの力はまだ持つ! 負担は可能な限り削るわ!!
メイリン
「次っ!!」
アンナ
『OK!! コアは胸部心臓位置だよ!?』
私はマシンガンを放り捨て、次の特装を受け取る。
それは、懐かしい手触りの超巨大スナイパーライフルだった。
私はニヤリと笑い、それを持って総意の頭上へと一瞬で移動する。
あの時はとてもひとりじゃ使えなかった…でも今ならサキのお陰で簡単に扱えるわ!
メイリン
「受け取りなさい! この一撃をぉ!!」
総意
「グ…ッ!? ウオオオオオオォォォォッ!!」
サキのブーストもあいまり、その閃光は総意の胸部を焼き付くしていく。
だが、流石の巨大さ…これですらまだコアを焼く事は出来なかった様だ。
でも、私にはそれで十分だった…
アンナ
『少尉!! 今だ!!』
私は総意の胸から超巨大なコアが露出されているのを確認する。
そして歯を食い縛り、私は雷電を纏って尻尾の上に乗った。
そこから最大出力で私はサキと共に突撃する。
総意
「!?」
メイリン
「このまま貫く!! 止められるなら止めて見なさいよぉぉぉぉ!?」
サキ
「総意!! 私たちは自分たちで未来を選ぶ!!」
………………………
萌
「…行け、行っけぇぇぇぇぇぇ!!」
エリーン
「突っ込めぇぇぇぇぇ!!」
アニー
「GOーーーーーー!!」
その場にいた皆が意志を込めていた。
相手は強大だ。
でも、それでも少尉は一歩も退かなかった。
だったら、それが報われても良いはずだ。
旅団の総意…確かにそれは全てを纏める重要な意志なのだろう。
だが…
ノア
「貴方たちは、重要な事を忘れていた」
「それは…隣人と手を繋ぐ、たったそのひとつの意志が全てを覆すのですよ!!」
私は安心して祈りを込めた。
大丈夫…出来ますよ、メイリンさん♪
………………………
メイリン
「!? ノア…うんっ!!」
サキ
「!!」
総意
『こんな物、認めるかぁぁぁぁぁ!!』
総意は頭部から口を開き、そこから超巨大なエネルギー砲を発射した。
だけど、皆の想いを受けた私は一切怯まない。
インディペンデントの皆、ノア、そしてサキとその意志に呼応してくれた旅団の皆!
メイリン
(後…憎たらしいけど)
サイア
『間違ってないと思うなら、好きにやれば良いのよ』
私は遠くから届けられたその意志を受け取り、全力で突っ込む。
そして、どこからかやって来たサイアのバリアランサーが、総意のエネルギーを正面から受け止める。
すぐに弾かれてしまうものの、私は射線から外れる事に成功し『サーフライドスラッシャー』でエネルギーを切り裂きながら突っ込んでいった。
結局、私にはコレしかない!
メイリン
「何がなんでも〜! 絶対に勝つ!!」
総意
「ウ…オオオオオオオォォォォォッ!?」
私はそのままエネルギーをブチ破り、ガードされていた両腕もブチ抜いて、剥き出しになっていた総意のコアを貫く。
その後、私は海面スレスレでブレーキに成功し、背後で爆発音に近い音を聞いて安堵する。
私はゆっくりと振り向き、黒い光の粒子となって霧散していく総意の意志相手にこう告げる。
メイリン
「これが…!」
サキ
「私たちの選んだ運命だ!!」
………………………
ジェフリー
「…むぅ?」
マイク
「…あ、て、敵消滅!!」
「超巨大個体、霧散しました! 同時に大型以下の個体も戦闘停止!!」
「終わった…本当に、終わった!?」
私は冷や汗を流しながらも、防止を深く被って背を椅子に預ける。
これで…どうにか終わった様だ。
やれやれ…この老体も無事に済んだか。
ジェフリー
「マイク君、メイリン少尉は!?」
マイク
「えっと…あ!? 生体反応が弱まっています!! すぐに回収を!!」
………………………
アンナ
「ふふ…やっぱり、どうにかしちゃったね」
サイア
「…何よ、出来ると信じていたの?」
アンナ
「そりゃあね…だって、私の大切な友人だもん♪」
そう言って、アンナ中尉はタバコを咥えながら笑う。
私はため息を吐き、そのまま座って俯いていた。
彼女…本当に全部背負って成し遂げたわね。
何よ…ちょっとだけ、悔しいじゃない。
………………………
萌
「…えっと」
エリーン
「ガッハッハ!! 何だ、可愛いもんじゃないかコイツ等も!!」
私たちはニューゴロドの甲板で旅団の皆さんと一緒にいた。
エリーン大佐はそれが面白かったのか、大笑いしながら小型の個体と戯れている。
私は流石に戸惑いながらも、特に敵意も持たない個体を目の前に空笑いしていた。
アニー
「こうやって見ると、愛嬌もありますにゃ♪」
エリーン
「確かに! 戦う必要が無いなら、コイツ等も隣人だ!!」
萌
「はぁ…そこまで割り切れる大佐の器が羨ましい」
でも、これこそがメイリン少尉の望んだ答えなのだと私は確信する。
私たちは、互いに望まぬ戦いを強いられていただけなのかもしれませんね…
………………………
メイリン
「……ぁ、やっぱこのパターン?」
サキ
「…私も、これで空っぽだ」
私たちは互いに海中へと落ちてしまっていた。
どうやら、私のパワーは完全にサキに依存していたらしくそれが切れたらもう動く事も出来なかったのだ。
サキはプカプカと無造作に浮かんでおり、動く気配は無い。
私は私で、ジタバタするも段々沈んでしまっていた。
さ、流石に…今度こそヤバイかも。
ノア
「ふふふ、お疲れ様ですメイリンさん♪」
メイリン
「ノア!? …って、も…ダベ」
私は驚くももう浮かぶ気力が無かった。
そして、あっさりと沈んでいく私の体をノアは優しく引き上げてくれる。
そのまま片手で私を抱き上げ、足元のサキも空いてる手で回収してくれた。
後は…例によってインディペンデントのテレポートラインで確保されるのでした、と。
………………………
ジェフリー
「それでは、我等が英雄に敬礼!!」
パチパチパチパチ!!と、私を称える拍手がインディペンデントのメインルームで響き渡る。
私は顔を真っ赤にして慌ててしまい、何とも言えない気分になってしまった。
メイリン
「え、えっと…」
マイク
「少尉! やる時はやる人だったんですね〜!」
萌
「何の、この私は信じておりましたぞ!?」
エリーン
「ガッハッハッハ! まぁ、無事なら何より!!」
私は思わず頭を抱える。
いくらなんでも持ち上げすぎだ。
今までの自分の扱いからは、とても考えられない。
とはいえ…
メイリン
(確かに、終わらせちゃったのよね…あの戦いを)
私はあの時の事を思い出し、サキの事も想う。
あれから、もう1週間…サキは既に他の旅団を纏める為に動いていた。
私はようやく治療が終わり、自由に動く事が出来る様になっていたのだ。
サイア
「…解りやすい顔するんじゃないわよ」
「行くなら早くしなさい、相手も待ってるわ」
メイリン
「!? うんっ、ゴメン皆!!」
サイアにそう促され、私は全力で格納庫へと走った。
まだ、お別れを言っていない! 私はまだ伝えてない言葉がある!!
………………………
アンナ
「おっ、やっぱり来たね〜♪」
メイリン
「中尉! サキたちの所に…!」
アンナ
「はいはい…そこのカタパルトに乗りな」
「後は目の前に南極があるから」
私はそれを聞いてすぐにカタパルトで飛び出す。
南極だけに服装は厚着をしておいた。
そ、それでも寒いけどね!!
………………………
メイリン
「サキ!!」
サキ
「!! メイリン、体は大丈夫か?」
私は南極の大地を滑る様に着地し、そのままサキたちの元へと向かった。
それを見たサキは私の側まで歩き、安心した様な顔をする。
私は空笑いするも、出来る限り安心させ様と思ってサキを見た。
サキ
「…最後に、顔を見れて良かった」
メイリン
「!? 最後って、やっぱり?」
サキ
「ああ…私たちはまた旅に出る」
それは、私の予想通りだった。
彼女たちは、永遠旅団…あくまでこの宇宙を旅する、旅団なのだ。
サキ
「この惑星の事は、今は保留となった…恐らく、しばらくは調査対象とはならないだろう」
メイリン
「じゃあ…もう、サキとは会えないの?」
サキはやや躊躇いがちに頷く。
その感情は、素直に寂しい…と思わせる物に思えた。
だから私は…踏み込んで彼女の冷たい体を抱き締めてあげる。
彼女は一瞬ビクッとなるものの、私の温もりが安心するのか、そのまま抱き締め返してきた。
私は笑いながら、優しくこう別れを告げる事にした。
メイリン
「…サヨナラ、貴女に出会えて私は良かったと思う」
サキ
「メイリン、感謝している…私たちの運命を変えてくれて」
「だが、忘れないでくれ…我々は永遠旅団」
「宇宙の均衡が崩れる時、私たちは再び現れる」
「どうか…そうならない様に」
メイリン
「うん…って、約束は出来ないけど」
「それでも、私は覚えてるよ…」
「そして、私は頑張るわ…サキたちが来なくても大丈夫な世界になる様に♪」
私は頑張って笑う。
この言葉の意味は、ある意味永遠の別れ。
彼女たちは宇宙を旅する調整者。
彼女たちが現れるという事は、それだけこの世が乱れているという証なのだ。
つまり、そうならなければ彼女たちは永遠に現れない。
サキ
「…泣くなメイリン」
メイリン
「うん…っ、ゴメン! でも、どうしても辛くて…!」
私は涙を抑えられなかった。
理解はしていても、もう2度と会えないかもしれない友人を見送るのはやっぱり辛かったのだ。
それが、人類には1番良いのに…!
サキ
「安心しろ、私もまた覚えている」
「この地球という小さな惑星に、初めての友人がいるという事を♪」
サキは笑っていた。
今までの、無愛想で笑う事など一切しなかったサキが、精一杯の笑顔を見せてくれていたのだ。
私はまた涙が込み上げる。
でも、もう時間は無い様だった…
サキ
「…ありがとう、私の為に泣いてくれて」
「だが、もう行く…時間だ」
サキはそう言って背を向ける。
そのまま、彼女は振り向く事なくただ天を見上げた。
そして、最後に彼女はこう言う…
サキ
「どうか、もう争う事のない様に…」
「私の、大切な隣人がいる…この惑星で」
それを最後に、彼女たちは黒い光を放ってその場から消える。
残されていたのは、南極の寂しい大地と、寒すぎる風だけだった…
メイリン
「………」
ノア
「メイリンさん」
私は背後から声をかけられ、そのままノアに抱き付く。
そして声を押し殺して私はノアの胸でただ泣いた。
ノアはそんな私の頭を優しく撫で、私を慰めてくれたのだった…
………………………
こうして、約5年に置ける永遠旅団との戦争は幕を閉じた…
対ダクタリアン用独立部隊、インディペンデントも解散となり、それぞれが別の道を歩みだしたのだ。
ジェフリー長官やマイクたちクルーは米軍へと帰って行った。
私の事も誘われたんだけど、私は正式に除隊の道を選ぶ事にしたのだ。
出来れば、もう戦う道は…選びたくないから。
萌は祖国日本に帰った。
萌も軍からは退役し、今は世話になっている家族の元で剣の訓練に励んでいるらしい。
エリーン大佐たちは祖国に帰らず、気ままに海の上で過ごしているみたいだ。
主に漁師をやって、生計を立てているらしい。
領海侵犯とかで捕まらなきゃ良いけど…
そしてサイアは……
………………………
メイリン
「で、何でアンタはここにいるわけ?」
サイア
「あら? 軍からお払い箱になって行く所が無いのよ…」
「全部貴女のせいなんだから、しばらく面倒見てくれない?」
メイリン
「何じゃそりゃ!? それは私のせいじゃないでしょ!?」
「アンタなら、普通に軍でやってれば良いじゃない!!」
「アンタの腕ならいくらでも稼げるでしょうに…」
ノア
「まぁまぁ…メイリンさん、部屋に空きはありますし」
ノアは甘い!! そんなんだからサイアみたいなニートが住み着いちゃうのよ〜!
って、私もまだ仕事は決めてないんだけどね!
とりあえず、ノアが用意してくれた昼御飯を私たちはいただく事にする。
メイリン
「う〜ん♪ やっぱりノアのご飯は美味し〜い」
サイア
「全くね…どんな和食の店よりもここの方が美味しいわ」
ノア
「お粗末様です♪ 口に合うのでしたら何よりですよ」
はぁ〜本当にノアってスゴいわよね〜
普段はこんな感じなのに、いざ戦闘になったら人類最強の兵器だって言うんだから、本当に…
多分、私やサイアがふたりがかりでも相手にならない位強いんだろうな〜
サイア
「ところで、貴女たちいつ結婚するの?」
メイリン
「ぶふっ!? い、いきなり何を言うのよアンタは!?」
ノア
「ふふふ…私はメイリンさんさえ良ければいつでも構いませんがね?」
メイリン
「ノ、ノアまで何言うのよ〜!?」
「そ、そりゃ〜…私だってやぶさかじゃ無いけどぉ〜」
サイア
「ハイハイご馳走さま…さて、仕事でも探しに行きましょうかね〜」
そう言ってサイアはすぐに食べ負えて立ち上がる。
普段からグータラしてるくせに、今日はいやにやる気あるじゃない…
メイリン
「はぁ…」
ノア
「ふふ…メイリンさんはメイリンさんの好きにしてくれれば良いんですよ?」
「例え何があっても、私が貴女を守ってみせますから♪」
ノアはそう言って食事をゆっくり食べる。
結婚…か。
そもそも、私たちPokemonと人間が結婚とか許されるんだろうか?
世界には何人もPokemonがいるけど、そんな話は聞いた事もない。
大体、私たちの国籍とかだって、便宜上必要だからあるわけだし。
メイリン
(もしかして、平和になった今…私たちは)
選ぶ時が来たのかもしれない。
私たちは、あくまで地球にやって来た隣人なのだから。
そう考えた時、私はこんな事を思い付いたのだ。
メイリン
「宇宙に出たら、サキたちに会えるのかな?」
ノア
「…そう、ですね」
「会えるかも、しれませんね…」
私はそれを聞いてすぐにやる気が出た。
そして、残った食事を全て平らげて立ち上がる。
こういうのは思い立ったが吉! 行動あるのみよ!!
………………………
アンナ
「え? アストロノーツになりたい?」
メイリン
「うん! そうしたら、もしかしたらサキたちに会えるかもしれないでしょ!?」
私は急遽アンナ中尉のいる基地を訪ねていた。
すると、アンナ中尉は嫌そうな顔をする事も無く私を出迎えてくれたのだ。
今は休憩時間の様で、私たちはテーブルを囲んでコーヒーを飲んでいた。
アンナ
「ふーん、まぁ君らしいって言うか…」
「それじゃあ、これ…受けてみる?」
メイリン
「これって…?」
アンナ中尉がテーブルに置いたのは1枚のチラシだった。
それは、未来に向けての人類移住計画の概要が書かれた物だ。
当然、それに向けてのアストロノーツを募集する要項も書かれている。
勿論…試験があるみたいだけど。
アンナ
「まぁ、1発で受かるわけないだろうから、しばらくは訓練生として通う事になるよ?」
メイリン
「でも…これに受かるなら、私は宇宙に行けるんですよね?」
「だったら、私やります!」
即決だった。
難しくても良い! 少しでも希望があるなら、私は目指したい!
例え、サキに会えなくとも…彼女に近付いてみたかったから。
アンナ
「ふふ…そう言うと思ったよ♪」
「よしっ、それなら私も腕を振るって宇宙船を作らないとね〜!」
メイリン
「えっ!? アンナ中尉が作るんですか?」
アンナ
「もっちろん! 友人のメイリン君が乗ってくれるなら最高の1品にしてみせるよ!?」
アンナ中尉はノリノリだった…
あっはは…こういう顔した中尉はいつだって本気だもんなぁ〜
でも、その方が楽しそうだ♪
私は、新たに目標が出来て安心する。
時間はかかるかもしれない…でもいつかは。
メイリン
(会えたら、良いね…遠い世界の隣人さん♪)
そう…これが、私たちの戦いの始まり。
私たちPokemonが、何故この惑星に現れたのかは解らない。
でも、きっとそれは…些細な事なんだろう。
だって、私たちは…親愛なる隣人なのだから。
『遠い世界のPokemonさん』
最終話 『遠い世界の隣人さん』
…The end