第1話 『ライチュウさんは凄腕軍人?』
時は近未来…この地球では、今や特異な時代に移ろうとしていた。
ある日、突如として現れた人の姿を模す『Pokemon』という異世界の存在が、世界の情勢を変えたのだ。
いわく、それは異世界のモンスター。
いわく、それは近しい隣人。
いわく、それは戦うモノ。
それぞれ、人によって捉え方は様々だった。
しかし、地球人たちはそれを受け入れ、Pokemonたちと手を取る道を選んだ。
何故ならば、地球に住む人間もまた、とある驚異と戦わなければならないからである!
Pokemonの持つ能力は、人間の比ではなかった。
ある者は軽々と車を持ち上げ、ある者はマッハを越える速度で空を飛んだ。
手足も使わずに物を動かし、炎、電気、水とあらゆる自然現象をも使ってみせる。
地球人にとって、この力はあまりにも魅力だった。
何故ならば、地球人は侵略者に攻撃を加えられていたからである。
『ダクタリアン』…それは、Pokemonたちが現れるよりも前に、地球を侵略しに来た謎の生命体。
それ等もまた、人間の力で立ち向かうにはあまりにも強く、地球人はジワリジワリと侵略を受けていた。
ダクタリアンは南極を拠点とし、そこから各所に尖兵を送り込んで来る。
その数は決して多くはないものの、圧倒的な戦闘力で瞬く間にオーストラリアを制圧。
その後、それ等は南アメリカへと進路を伸ばし、現在はそこが人類の防衛地点となっていた。
Pokemonの力は、人類に勇気を与えた。
立ち向かう者として、人類の協力者として、そして愛おしき隣人として…
これは…そんなPokemonと弱き人類が、手を結んで侵略者と立ち向かう、戦いの記録である。
『遠い世界のPokemonさん』
第1話 『ライチュウさんは凄腕軍人?』
………………………
男
「敵、既にニューヨーク市街に潜入!! 数は1匹です!!」
初老の男
「ふむ、ならば彼女に任せよう…メイリン少尉、行けるかね?」
モニターの先で見えている姿の女性は出撃準備を既に終え、武装のチェックをする。
今彼女が居る場所はこの空中要塞のカタパルト。
これは人類が開発した物で、対ダクタリアン用の要塞。
装甲は厚く、並みのダクタリアンでは傷ひとつ付ける事は出来ない。
それもこれも、彼女たちPokemonの解析が進んだお陰だ。
しかし、この要塞はまだまだ試作品でロクな武装も付いていない。
よって、ダクタリアンを殲滅するには、まだPokemonの力が必須なのだ。
彼女は『ライチュウ』と言われる異世界の種族。
電気タイプ、エスパータイプのふたつを備える、優秀な我らの戦力だ。
彼女は軍指定の戦闘服に身を包み、豊満な胸元を少し開く。
どうも窮屈なのが嫌らしく、彼女はいつもああやって胸元を開いてしまっている。
彼女は軽く微笑み、長いツインテールの茶髪を靡かせた。
その際に可愛らしい黄色の耳が揺れ、あくまで彼女はPokemonなのだと、我々には思わされた。
メイリン
『こちらメイリン、出撃準備完了! いつでも行けるわジェフリー長官!!』
ジェフリーとは、私の事だ。
年齢は67歳、北アメリカ軍所属、対ダクタリアン部隊の長官。
さして大きな功績があるわけでは無いが、人望の良さを買われてこの部隊に配属されたという所か。
ジェフリー
「うむ、それではよろしく頼む…マイク君」
マイク
「はっ! カタパルト装着! 続いて電磁フィールド展開します!」
部下であり、優秀な通信士でもある黒人のマイク君が、通信と共にカタパルトに電磁フィールドを展開させる。
それは電車のレールの様に真っ直ぐ足元に敷かれた。
彼女はそれを見てカタパルトに足を乗せ、体勢を前傾に構える。
そしてハッチが開き、彼女は外を見て顔を引き締めた。
やる気は十分の様だ、今回も期待出来るな。
メイリン
『メイリン少尉、出撃します!!』
彼女はカタパルトと共に一気に空に飛び出した。
そして、彼女は電磁フィールドの上で加速し、空を滑る様に移動する。
その際、彼女は自分の尻尾に両足を乗せ、サーフィンの様に乗りこなして、自由自在に空を飛んでみせた。
これは彼女の持つ特性と、人類が生み出した科学が融合した結果だ。
これこそ、人類がPokemonを研究して生み出した科学の結晶のひとつ。
『エレクトリックライン』と呼ばれる、彼女の靴から放出される電磁フィールド発生装置を使い、彼女はああやって自由に空を飛ぶ事が出来るのだ。
………………………
男性
「ダクタリアンだーーー!?」
女性
「誰か助けてーーー!!」
ニューヨークの住民に襲いかかる、謎の生命体ダクタリアン。
その姿は闇の様に黒く、様々な形を持つ。
決まった形は何ひとつ持っておらず、ほとんどが前の姿と一致しない。
しかし、その戦闘力は人間を遥かに越え、大型の物だと腕のひと振りで民家を薙ぎ払う程だ。
今回のは比較的小型寄りの中型で、体長はおよそ3m。
動きは素早いけど、それだけね!
マイク
『敵ダクタリアン、CPはおよそ1200! ただのザコですね、楽勝ですよ!』
メイリン
「当たり前でしょ!? こんなのに手こずってたら、防衛軍なんかやってられないっての!!」
私は一気に空中から降下し、腰のホルスターから銃を2丁取り出し、それを両手でそれぞれ構える。
そのまま相手を見定め、急所を狙って…Fire!!
ダクタリアン
「ギイアアアアアァッ!?」
ダクタリアンは独特の悲鳴をあげ、電気を帯びた銃弾で頭のコアを貫通され崩れ去っていく。
全身は霧の様に霧散し、そこにはもう跡形も残っていなかった。
私は華麗に地面へと着地し、すぐに超能力を介して通信をする。
メイリン
「ダクタリアンの排除完了! 他に反応は?」
マイク
『いえ大丈夫です! 今回のはたまたま防衛ラインをすり抜けたイレギュラーでしょう…』
イレギュラー、ね…だと良いけど。
今回、ニューヨークにダクタリアンが現れたのは初の事だ。
基本的に、南アメリカの海岸線で防衛ラインは引かれてるから、余程の事がない限りは北アメリカ大陸まではそうそう来れないはずだけど。
それでも、東南アジアや南アフリカ大陸にも出現報告は少なからずある。
やっぱり、日を追う毎にダクタリアンは進行を進めているのかも…
ジェフリー
『メイリン少尉、直ちに帰還したまえ! テレポートラインを繋げる』
長官がそう言うと、私の近くで転送用のゲートが足元に現れる。
これは『テレポートライン』という人類の技術で、ゲートに乗れば一瞬で要塞に戻れる優れ物だ。
私はとりあえずそれですぐに要塞に戻り、今回の任務は完了とした。
………………………
メイリン
「メイリン少尉、ただいま戻りました!」
私はビシッ!と敬礼し、すぐにダルそうにして全身の力を抜いた。
基本的に堅苦しいのは嫌いだ、あー早くシャワー浴びたい。
ジェフリー
「お疲れ様メイリン君、簡単な仕事だったかな?」
メイリン
「そうですね、でも被害はそれなりに大きかったし、もっと早く駆け付けられたら…」
今回は完全に人類側の油断が生み出した結果だ。
ニューヨークまで敵は来ない…そんな油断が敵への対応を遅らせた。
ダクタリアンはとにかく謎が多い、いつも神出鬼没で強さもバラバラ。
今回は比較的小さいのが1匹だから良かったものの、あのサイズだったら複数いてもおかしくはなかった。
現行、各国に戦えるPokemonは何人かいるものの、人類側にも問題は山積み。
今のアメリカは良くも悪くも、他の国からあまり良い目で見られてはいな勝ったから…
マイク
「救護部隊、 現地に到着! これより救護活動に入ります!」
ジェフリー
「了解だマイク君、後は現地の者に任せよう」
「空中要塞『インディペンデント』はこのまま待機! 特別要請があるまでは救護を担当する!」
マイク
「了解です!」
マイクはそう答えて、要塞内の全乗組員に通信を送った。
とりあえず、私の仕事は終わりね…そうそう連続で敵が現れる事も無いでしょ。
メイリン
「とりあえず、1度家に戻ります」
ジェフリー
「うむ…出動要請があれば、すぐに連絡する」
私は了解!と敬礼して言い、すぐにカタパルトに向かった。
私の家はニューヨークにあるから、すぐにひとっ飛びだ!
そして、私を待っててくれる人の元へ、私は心を踊らせながら飛んで行く…
………………………
メイリン
「よっ! 到着っと!」
私はニューヨークの寂れたスラム街に着地し、そこからは自分の足で闊歩する。
そして辿り着いた場所、ここが私の家…まぁ、ボロいけど。
よくあるボロアパートに、私はひとりの人間と住んでいた。
本当は私の給料でいつでも引っ越せるのに、同居人は頑なにここから動こうとしないのだ。
何か理由はあるんだと思うけど、それは私には話してもらえなかった…
メイリン
「ただいま〜」
男性
「あ、お帰りなさいメイリンさん…今日も大活躍だったみたいですね?」
私を優しい笑顔で出迎えてくれたのは、黒髪、メガネ、短髪の細い体をした男。
日系人とか言うのだそうで、アメリカ人と日本人のハーフなんだそうだ。
メイリン
「へへっ、今日もノアの為に頑張ったんだから♪」
そう、この人の名前は『ノア・サクラガワ』
サクラガワは漢字で書くと桜川と書くらしい。
身長は170cmと26歳のアメリカ人にしては小さな身長で、その辺は血筋もあるのだそうだ。
とにかく、ノアは優しくて思いやりがあって、更に料理が上手くて、更に更に私の事を大切に思ってくれる、とっても大事な人だ♪
私としては、それ以上の関係も望んでいるけど、まだPokemonにそういった人権は存在しない。
特別措置として、私はアメリカ国籍を貰ってはいるけど、あくまでそれはPokemon用の暫定的な物で、正式に人類として認められているわけではないのだから…
ノア
「とにかく、お疲れ様です…今すぐお風呂の用意をしますね?」
メイリン
「うんっ、いつもありがとう♪」
ノアは笑顔でどういたしまして、と言ってくれた。
私は、この笑顔の為にダクタリアンと戦っている。
人類を守るのは、あくまでそのついでに過ぎなかった。
とはいえ、決して他の人類を軽視している訳じゃない。
弱者を守るのは、力の有る者の使命だ。
ただ、私はそれ以上に…ノアの事が大切なだけだった。
………………………
メイリン
「いただきまーす!」
ノア
「いただきます…」
私たちは両手を合わせてそう言う。
これはノアのお母さんが教えてくれた作法だそうで、日本では一般的に行われる儀式みたいな…物?
私はとりあえず、箸を使ってツナサラダを頂く。
うん、やっぱり美味しい♪
シンプルなサラダだけど、ノアが作っている和風ドレッシングはアメリカでは中々味わえない。
ノアは、日本食が1番好きなんだそうで、こうやっていつも箸を使うのが我が家庭では一般的になっていた。
メイリン
「このシチュー美味しい〜♪ でもとろみが全然無いね?」
ノア
「はは…それは肉じゃがですよ? シチューとはちょっと違いますね」
成る程、初めて食べたけどこれも日本食なのかー
でも美味しいから良し!
私はそのまま、ノアと軽く雑談しながら楽しく食事した。
………………………
ノア
「そうですか、防衛ラインをすり抜けて…」
メイリン
「うん…でも安心してね? 何があっても、私は絶対に負けないから!」
私は笑顔でそう言ってガッツポーズを取る。
ノアもそれを見て笑顔を見せてくれた。
うん、これでまた私は戦える。
ノアが笑ってくれる限り、私は誰にも負けない…!
ピー! ピー! ピー!
その時、私たちの楽しい団らんを中断するやかましい音が…
私の制服のポケットに突っ込んでる通信機からの音で、このタイミングなら間違いなく緊急要請の類いだと予想出来た。
私はすぐに険しい顔をし、超能力を介して通信機に直接応答をした。
こういう時、一々手に取らなくて良いから、エスパータイプは楽である。
メイリン
「…はい、こちらメイリン!」
マイク
『メイリン少尉、すぐにインディペンデントまで来てください!!』
『南アメリカの海に、超巨大ダクタリアンが出現!』
『各国からもPokemonの出撃要請が出ています!!』
メイリン
「了解! すぐに戻ります!!」
「…ゴメン、また行かなくちゃ」
ノア
「はい、頑張ってください…私はここで、メイリンさんを信じて待っていますから」
私はすぐに、自室に設置されているテレポートラインでインディペンデントに戻る。
そして、私はすぐに作戦概要を聞く為に、ブリッジへと向かった。
………………………
メイリン
「メイリン少尉、ただいま戻りました!」
ジェフリー
「うむ、早速で悪いが、君には出撃してもらう」
マイク
「敵は現在、南アメリカの海岸に向かって歩いています!」
「大きさは約50m! 鈍重ですが、空軍の攻撃が全く通用していません!」
「幸い、攻撃意志があまり無いのか、反撃の頻度は低いみたいです」
私はモニターを見て驚愕する。
確かに大きい…あんなダクタリアンは初めて見た。
それは巨大な四脚獣の様に見え、のそりのそりと海を歩いている。
相当に足長のタイプで、胴体は海から10m以上上に存在していた。
あれだと、足は何10mあるのやら…?
その後、多数の空軍機がミサイルや爆雷で攻撃するも、そいつにはまるで効いていなかった。
ダメージが皆無という訳では無さそうだけど、すぐに再生している感じね。
メイリン
「他のPokemonたちはどうしてるの?」
ジェフリー
「現在、南アメリカ軍担当のひとりが対応している」
「が、ひとりでは無理だろう…すぐに君も応援に向かってほしい」
南アメリカ軍の担当って事は、『ネイティオ』のサイアね。
前に演習で会った事があるわ…
とりあえず、まずは行かなきゃ話にならないか!
メイリン
「それでは、これより現地に向かいます!」
ジェフリー
「うむ、頼んだぞメイリン君!」
マイク
「これより、メイリン少尉が出撃する!」
「テレポートラインの準備急げ! カタパルトと同時に現地へ転送!!」
私はすぐにカタパルトデッキに走った。
そして銃の確認をする…正直、これじゃ心許ないけど。
とにかくやるしかない! あんなのが上陸したら、未曾有の危機となってしまうのだから!!
………………………
マイク
『カタパルト装着! テレポートライン良し! いつでも行けます!!』
ジェフリー
『よし、出撃!!』
メイリン
「メイリン少尉、出撃します!!」
私はカタパルトが射出されると共にテレポートする。
すると、次に見えたのは南アメリカ大陸の南部だった。
既に敵は目視圏内にまで近付いている。
空軍は尚も奮闘している様だけど…
そして、そんな中ひとり優雅に飛ぶPokemonが…
メイリン
「こらサイア!? アンタ、そんな所で何してんのよ!?」
サイア
「あら、遅かったのねメイリン少尉…お陰で予定が大幅に遅れたわ」
サイアは特に表情も変えず、かったるそうにそう言う。
サイアは何に関しても無関心で、感情に乏しい。
ネイティオ特有の色鮮やかな翼と尾翼、緑の短髪は確かに綺麗だが、その瞳は全てを見透かしている様で個人的には不気味だった。
彼女は翼に特殊な装備を付けており、それは私のブーツや銃と同様、人類がPokemonの為に作り出した装備。
つまり、対ダクタリアン用の装備だ。
彼女のそれは飛行能力を大幅にサポートし、同時に武装も備えている。
ネイティオは飛行タイプとして、それ程動きが速い種ではない故の補助装備でもあった。
メイリン
「とにかく、攻撃するわ! アンタも手伝え!!」
サイア
「無駄だと思うけど、仕方無いわね」
私は銃を構え、サイアは翼から射出されたブーメランを両手に持つ。
そして私たちは超巨大ダクタリアンに向かって、一気に加速接近した。
メイリン
「コアはどこなの!?」
サイア
「それが見えないから、こうやって観察してる…」
「多分、腹の辺りの中心点…あまりに分厚いから、豆鉄砲で通せるかは微妙ね」
メイリン
「それは、やってみなくっちゃ解らないでしょ!?」
私はとにかく、敵の背中から連続で弾丸を撃ち込む。
それ等は電気を纏い、全てが着弾するも、とても皮膚を貫通出来るレベルじゃなかった。
これは確かに…無理そうね。
サイア
「やっぱり無理ね…今の装備じゃとても貫けない」
「他の国のPokemonたちは自国優先で来ないみたいだし、アメリカ軍は嫌われ物ね…」
私は何も言い返せなかった。
現にPokemon救援は誰ひとり来ない。
私たちふたりでは足止めする事も出来ず、このまま上陸を見守るしかないの…!?
メイリン
「上がダメなら、下からで!」
サイア
「止しなさい、反撃されたら一瞬でミンチになるわよ?」
私は言われて止まる。
そう言うって事は、腹側に武装を持ってるのか…!
でも、それなら弱点の可能性も高い。
他に手が無いなら、それしかないじゃない!!
メイリン
「…サイア、もしもの時は頼むわ」
サイア
「貴女死ぬ気…? そこまでして戦う理由があるの?」
私はすぐに大好きな人の笑顔を浮かべた。
そうだ、理由はある!
私には、何をしてでも守りたい笑顔がある!!
メイリン
「メイリン少尉…特攻するわ!!」
サイア
「そう、本気なのね…なら、止めないわ」
「精々、華々しく散って…」
メイリン
「折角気合入れてるのに、水を差すな!!」
「ああもう! とにかくやってやるんだからーーー!!」
私はサーフテールで一気に加速する。
私のブーツに取り付けられてある、電磁フィールド発生装置により、私は常時特性を発動し続けられるのだ。
加えて、『電磁浮遊』の応用で自由自在に飛行可能!
ブーツの電力は私の電力と直結してるから、私の電力が続く内は問題無く飛べる!
メイリン
(腹側に武装があるとしたら…一体どんな?)
私は想像するも、何とも言えない。
しかし、そんな中私を通り越して突撃する戦闘機の姿が。
それ等は一気に近付いてミサイルを放ち、腹部を攻撃されたダクタリアンは初めて呻き声をあげた。
効いてる!? だったら私の予想は当たってた!
やっぱりあそこが弱点……
ドバババババババババッ!!
直後に閃光。
腹から放たれたそれは幾重もの拡散レーザーとなり、軽々と戦闘機をバラバラにした。
目に見える速度じゃない…あんなの撃たれたら私は?
すぐに頭を振って恐怖を振り払う。
恐れてたまるか…! 弱点なのは解ってる!
そこからコアさえ破壊出来れば、私たちの勝ちだ!!
メイリン
「あああああああああぁぁぁぁっ!!」
私は叫んで突っ込む。
幸い、敵は攻撃されるまで反撃はしなかった。
だったら、すれ違い様に撃ち込めば反撃はかわせる!
私は恐怖を忘れ、海面スレスレを飛行した。
そして奴の腹を見上げ、その瞬間に銃弾を複数発射する。
そのまま私は着弾を見ずに後方まで抜けた。
直後に放たれた反撃のレーザーは、私の体を掠める事も無く、無事に攻撃は成功した様だ。
しかし、敵の歩みは止まらない…やっぱりこの銃じゃダメなの!?
と、その時インディペンデントから突如通信が入る。
ジェフリー
『メイリン君! 聞こえるか!?』
メイリン
「長官!? どうかしたんですか!?」
突然、長官が慌てた様子で通信をしてきた。
私はそれに答えて聞いてみるが、長官はこのタイミングでこんな事を言ってくる。
ジェフリー
『奴の装甲は厚い! あれを突破するには新兵器が必要だ!!』
メイリン
「新兵器!? あるんですか!?」
ご都合主義のベタな展開みたいだが、それはこの状況を打破する為の希望だった。
だけど、それには当然リスクも伴うのが定番。
果たして、どんな新兵器なのか…?
ジェフリー
『今からそちらに転送する! 詳しい説明は技術班のアンナ中尉から聞いてくれたまえ!』
アンナ
『あー…とりあえず転送ね』
気だるそうな女性の声と共に、私の手元には巨大な銃が転送された。
それは、まるで人が使う事を考えてない程巨大な代物で、銃身だけでも3mはある巨大銃。
こ、こんなモンどうやって使えってのよ!?
アンナ
『良いかーい? それはアンタの電気エネルギーを限界まで吸い取って発射する銃だ』
『ただし、発射までには5秒程かかる…その分威力は高く、弱点と思われる腹部からなら、容易にコアを撃ち抜けるだろー』
メイリン
「それ以前に…これ重すぎるんですけど!?」
サイア
「やれやれ…見てられないわね」
そう言って、突然横から飛んで現れたサイアが銃を一緒に持ってくれた。
その際、サイアは目を光らせて超能力を使い、銃口を持ち上げる
これなら、何とか構えられる?
サイア
「少しは頭も使いなさいよ…本当にエスパータイプなの?」
メイリン
「わ、忘れてたのよ!! って言うか、あんまりエスパー技は得意じゃないの!」
私は冷静になるも、恥ずかしくて顔を紅くした事だろう。
確かに、エスパーとしての能力を使えば、ひとりで銃を持ち上げる位は出来そうな感じだった。
しかし、今回はタイムラグも考えて、確実に高速戦闘。
ぶっつけ本番で成功する確率は決して高くない。
でも、ふたりでやるなら、あるいは…?
サイア
「特別に、銃口補生はやってあげるわ…だからトリガーは貴女が引きなさい」
メイリン
「分かったわ! タイミングは任せるわよ?」
私たちは無言で頷き合い、再び奴の腹側に向かった。
私はサイアの合図を受け、全電力を銃に注ぐ。
飛行はブーツの予備電力とサイアの装備でしばらく賄える。
後はタイミングを合わせて、撃ち抜くのみ!!
サイア
「敵との距離、500…400…300…200…100!」
メイリン
「これでぇ…どうだぁーーーー!?」
私は全電力が込められた弾丸を奴の急所に向けて真っ直ぐ撃ち出す。
直後に敵の反撃は行われ、私たちはかわせずにいくつか貰ってしまった。
しかし、それ以上の追撃は無く、敵は体を霧散させ始める。
私たちは拡散レーザーで吹き飛ばされて海面を漂う中、既に暗くなっていた星空を見た。
ああ…やっぱり、綺麗だな……海から見る、星空は。
ジェフリー
『聞こえるかメイリン少尉!? ミッションコンプリートだ!!』
『すぐにテレポートラインを繋ぐ、すぐに帰還してくれ!』
メイリン
「…はいはい、了解でーす」
「って、全電力使い果たした上に、身体中火傷してもう動けないってのに…」
サイア
「無様ね…まぁ、私も人の事言えないけど」
私の近くでプカプカと浮いていたのはサイアだ。
サイアも銃の発射の際に大量の電気を浴びて、まだ痺れているみたいだった。
私は可笑しくなり、クスクス笑ってしまう。
何だかんだ良いながら協力してくれるんだから、コイツも変な奴よね…
サイア
「不愉快ね…何が可笑しいのよ?」
メイリン
「べっつにー? ただ、嬉しいだけー……♪」
それは、確かな本音だった。
そう、私はちゃんと約束を守れたのだ。
ちゃんと勝って、生きて返る。
大好きな…人の元へ……
………………………
サイア
「…気絶したわね? やれやれ、こっちもロクに動けないのに」
「ちょっと、聞こえる? こちらサイア少尉…超巨大ダクタリアン、排除成功…」
「ただし、こちらも被害甚大で行動不能…直ちに回収を頼むわ」
私はとりあえず超能力を介して仲間の軍に通信を送り、救援を待った。
全く…2度とゴメンだわ、こんな役回り。
私は大きくため息を吐き、力を抜く。
しばらくしたら救援部隊が現れ、これで私たちは晴れて任務完了って訳ね…
………………………
メイリン
「ただいま〜…」
ノア
「メイリンさん、お疲れ…って大丈夫ですか!?」
私はボロボロになりながらも何とか自宅に帰った。
本当は入院必須の大怪我だったんだけど、とにかく直接会って顔を見たかった。
これだけは、私は譲れない。
なお、今の私は全身包帯まみれでほとんどミイラだ。
そりゃノアも驚くよね…
メイリン
「あっははは…勝つには勝ったけど、キツかったよー」
ノア
「そ、そうでしたか…ですがすぐに病院に行かないと!」
メイリン
「うん、でもノアの顔が先に見たかったから…」
ノアはそれを聞いて少し黙ってしまった。
そして苦笑し、軽くため息を吐く。
ノアはそれから笑顔になり、改めてこう言ってくれた。
ノア
「メイリンさん、お帰りなさい…無事で、何よりです」
メイリン
「うん…♪ しばらく治療しなきゃならないから、今日はインディペンデントに戻るね?」
私はそう言って苦笑する。
ノアはそれでも、優しい笑顔で私を抱き締めてくれた。
私は言葉を失い、思わず顔を紅潮させる。
そして改めて思う…やっぱり、この人は私の全てなのだと。
私はこの人の為に戦い、そして死ぬのだろう…
ノア
「そうですか、では体力回復に効果的な果物を用意しないといけませんね…」
メイリン
「えっ…? いや、そんなそこまで気を遣わなくても…」
ノア
「いえ、メイリンさんの様子を見れば解ります」
「きっと、相当な苦労をなされたのだと思いますので…」
「でしたら…私に出来る事は、そんなメイリンさんに料理を作ってあげる事位…」
私は、そんなノアの言葉に涙を流した。
やっぱり、私はこの人を好きになって良かった。
この人は私の1番大切な人なんだ。
だから私は戦える…どれだけ傷を追っても。
この人の為に、私は命を賭けるんだ。
メイリン
「ありがとう、ノア…私、貴方の為にまだまだ頑張るね♪」
私はとびきりの笑顔でそう言う。
そしてノアはそれに対して笑ってくれる。
私はそれが嬉しかった…そして、その度に力を貰えた。
迫り来るダクタリアン…だけど私は負けない。
例え何があっても、この笑顔を守ってみせる。
戦いは長引くかもしれない、でも私は戦う。
ノアの笑顔の為に、私の自己満足の為に…
Pokemonという、異世界の住民であっても、私は…ノアが、世界で1番、大好きだから……
To be continued…