『Avenger The After』
第5話 『狂える混沌の求道者、ルナティック・カオス・ディザイアの琉女!』
婆さん
「ターニャ、ボルシチが出来たわよ♪」

爺さん
「外は寒かったろう? 婆さんのボルシチで暖まろう」

ターニャ
「…ああ」


それは、闇夜の中で遠目から見られる暖かな家庭だった。
俺は木々に隠れ、遠くから双眼鏡で民家の中を覗き、窓から見える光景に少し気を弛める。
そして粗方調査は終わった所で、俺はカネに盗聴器を回収させる指示を出した。
カネは超能力で外壁に付けておいた盗聴器を全て取り外させる。
やれやれ…次はローマだな、出来れば避けたい所なんだが。


大護
(…まぁ、これも依頼だからな)

カネ
「終わったわよ?」

大護
「よし、ならすぐに行くぞ…ここは寒くて仕方ねぇ!」
「タバコも吸えねぇし、ホント最悪だぜ…」


俺たちはすぐにジープへ向かった。
このまま一旦隣国まで言って次はイタリアだ。
あえて海路で行く…空路は嫌な予感しかしねぇからな。



………………………




「ふんふん〜っと、メールか…大護からやんけ」
「ここまでのレポートか…順調にやっとるんやな♪」
「さて…俺の方も色々調べなな」


俺はスマホを弄くりながら情報を検索する。
ちなみにこれは俺専用の特別製で、これは改造機や。
簡単な電子コード位ならハッキングして解除出来る優れ物!
見た目からじゃまずバレへんし、怪しまれる事も少ないからな。



「とりあえず、ソルガレオってのがどっかにおるらしいんやけど…」


「はぁ…! はぁ…! うっぐぅあ!?」


何や!? いきなり物影から呻き声!?
俺は何事かと路地裏を見てみると、そこには何と苦しんでいるPKMがいた。
しかし、何と言うか…何やコイツ!?

全身紫…と言うかそんな感じの服で、タイツとマント!?
子供みたいな風貌やが、背中には特徴的な翼が生えており、間違いなくPKMやと判断出来た。
髪は白で長さはセミロング。
側頭部両側には顎から上に延びるアンテナみたいな角?が付いており、どことなく悪魔的にも見える。

とりあえず俺が近付くと、少女みたいなPKMは左手を前に差し出してこう叫んだ。



「く、来るなぁ! よせ! 巻き込まれるぞぉ!?」


「な、何やと!? 何かあるんか!?」


俺は周りに気を配り、壁を背にして警戒する。
そして、保険と思っていた機能を使って、スマホにこう話しかけた。



「ピーチちゃん! 周りに気配はあるか!?」

ピーチ
『いえ、何もありません…むしろ普通過ぎる商店街の風景だと判断します』


そう、答えたのはあのピースちゃんのバックアッププログラムである『ピーチ』や。
ピースちゃんに頼んで、俺のスマホにデータをコピーしてもろたんや。
しかも、ピースちゃん同様にこうやってアシスタントしてくれる。
ピースちゃんとしてもバックアップ先が増えるのは助かる言うてたし、まさにWin-Winの関係やな♪

それに、俺は大護やルザミィみたいな格闘術は無いからな…やっぱ頭で勝負やで!



「うぅっ!? ぐっ…!! はぁ…はぁ…お、落ち着いた」


「…? だ、大丈夫か君? えらい苦しんでたけど、何か病気なんか?」


「…気にするな、少し太陽の光が眩しすぎただけだ」


俺は言われて空を見上げる。
確かに晴天やが、こんな暗い路地裏で眩しいて…


ピーチ
『葛さん、彼女は特に病気の要素はありません』
『強いて言うなら、仮病かと』
『…もっとも、PKMにはPKM特有の病気があるのかもしれませんし、正確ではないかもしれませんが』


ピーチちゃんはスマホの画面から生体スキャンで彼女の体を調べるも、問題無しと判断。
しかし、この苦しみ様…タダ事とは思えんが。



「とりあえず、君は何て言うPKMや? 見た事無いし、リストにも入ってないんちゃうか?」


「ふ…我が名を聞くとは、相当な覚悟がいるぞ?」


ゆらりと彼女は立ち、顔に右手を当ててニヤリと笑う。
そして赤い瞳がキラリと輝き、口元からは小さな牙がチラリと見えた。
まるで吸血鬼みたいやな…マントとかもそれっぽいし。
…まぁ、付く所は付いてへんみたいやけど。



「ええから、言ぃな…力になれるかもしれへんし」


「ふっ…ならば名乗らせてもらおう! 我が名は『ルナティック・カオス・ディザイア』!!」
「人呼んで…狂えし混沌の求道者!!」


あれ…俺、今何か察した。
この娘…アレとちゃう? その…何て言うか、黒歴史的な?
言ってええんかなぁ〜? 彼女本気でやってるみたいやし、いきなり夢壊すのも何かな〜?


ピース
『典型的な厨二病ですね、ちなみに彼女はルナアーラだと推測します』


「ルナアーラではない! 『ルナティック・カオス・ディザイアだ』!!」


うわ…十柱やんこの娘〜! しかも格好良いポーズ取って言うとか、まさに厨二病や!!
色々ツッコミたいけど、俺大人やから子供の夢壊したくあらへん!!
厨二病でもええんや! 何が悪いんや!?



「して、そのルカデちゃんはこんな所で何してるんや?」

ルナアーラ
「略すな!! …その、ついこの間まで南極にいたんだけど」


え? いきなり南極ぅ? 偉いぶっ飛んだ所から来たんやな…流石は伝説のルナアーラや。
しかし、彼女は少しモジモジしながら、こう可愛く語った。

ルナアーラ
「そ、その…つい神秘的な空間に酔いしれて、悦に入っていたら…もう1ヶ月以上ロクに食べてません!」


それを言って、バタン!とルナアーラは倒れてしまった。
あかーん! この娘色々スゴいわ! 厨二病全開で命賭けとるぅ!!
俺はそんなルナアーラちゃんの気持ちを酌み、そっと優しく抱き上げてお持ち帰りした。
まずは食事やな…とりあえずバーガー店でエエか。



………………………



ルナアーラ
「こ、これはぁ!? まさか伝説に伝わる幻の食事!?」
「金の牛から取り出した肉に、闇の空より落ちたりし小麦! そして1000年に1度咲くという碧い草を使った悪魔の晩餐!!」
「ふっ…ついに私もそこまで来たのか……永かった、だが!!」
「私の野望はまだ遥か先にある!! 刮目せよ人類共!!」
「我が覇道は、いずれ世界を多い尽くす闇となる!!」


「ええから、とりあえず食ぃ〜な…冷めたら美味しないで?」


初めてであまりに嬉しかったのか、普通のハンバーガーを見て大層テンション上がったみたいや。
厨二病全開でポーズ取りながら解説をかまし、周りから相当痛い目で見られとった。
ルナアーラちゃんはそれでも大満足なのか、ちょこちょことパーガーの先端から齧り付く様に、鳥っぽい仕草で少しづつ食べる。
その姿があまりに可愛く、周りの目は一気にほんわかとなごみムードに入った。
癒し系や〜! 何でこれで厨二病なんやろ〜?


ルナアーラ
「美味しい〜!! 初めて食べたけど、こんなにパンが美味しいなんて〜!!」


ルナアーラちゃんは涙ながらに厨二病も忘れて味わっていた。
よっぽどお腹空いてたんやろな…1ヶ月以上もロクに食ってなかったって言ってたし。
あの苦しみ方は本気やと思ってたが、空腹に耐えてたんかもしれんな…



「とりあえず、金は出したるから好きなだけ食い♪」
「話はその後や…」

ルナアーラ
「ふっ…やはり私の心臓にある月の雫の情報が目的か?」
「だが、残念だ…これは私自身でも解明は出来ていない!」
「しかし…魅力的な交渉には違いない、ここは私の脳にある混沌情報でどうだ?」


俺はとりあえず特にツッコマず、それでええよ…とだけ言ってやった。
するとルナアーラちゃんは、やった〜♪と、子供の様にはしゃいで追加注文に向かった。
可愛いなぁ〜♪ 思わず微笑みが溢れる。
周りの空気も一際ほんわかしとる…癒し系や〜♪



………………………



ルナアーラ
「…それで何が知りたい?」


「何で君ら十柱は突然降臨したんや?」


俺は食事後、拠点のひとつにルナアーラちゃんを招き、そこで話をしていた。
ルナアーラちゃんはまるで秘密基地の様な俺の部屋を見て即座にテンションが上がっている。
今も顔に手をかざして不適に笑い、ノリノリの状態や。


ルナアーラ
「私たちが堕ちた理由は解らない」
「ただ、突然神の世界は無くなってしまった…」
「仕方ないから、私たちはここで気ままに過ごしてる」


ルナアーラちゃんは普通に戻ってそう話す。
少し不安そうな顔をするも、別に絶望とかそういうのは無さそうやな。


ピーチ
『十柱と思われる神々が降臨したのは、全員ほぼ同時です』
『それぞれがバラバラに降りており、その内のふたりはダイゴが既に発見しています』


『で、ここに3人目か…』


もっとも、対となるソルガレオも日本におるらしいが…
引き合ったりとかするんかなこの娘ら?


ルナアーラ
「ふっ…例え翼を奪われても、我が心の翼は不滅!!」
「野望が有る限り、私は何度でも地獄から舞い戻ろう!!」


と、ルナアーラちゃんはビシッ!と自称格好良いポーズを決める。
うん、とりあえずこの娘は一切害が無いわ…ただ厨二病なだけでええ娘や。
俺はとりあえず椅子を回転させ、片手で机にあるひとつのPCのキーボードをカタタタタッ!と弾く。
そして画面には現状の十柱データと大護のレポートを表示させる。


ルナアーラ
「あ、ゼルネアスにレシラム…」


「ふたりとも、それぞれ居場所を見付けてるみたいやな…」


ルナアーラちゃんは画像を見て少し放心していた。
ゼルネアスもレシラムも、写真ではそれなりに楽しそうな顔をしている。
神とか言うても、人の世界に住むなら人と変わらんわな…


ルナアーラ
「………」


「どない、したんや?」


突然、ルナアーラちゃんは俯いてしまった。
何かを考えている様やが、無言で小さく震えるだけ。
まるで不安に怯える子供の様に、彼女は何とも言えん顔をしてた。
俺は、そんなルナアーラちゃんの頭にそっと手を置いて撫でてやる。
白いセミロングの髪がさらさらと靡き、俺は優しく撫で続けた。
ルナアーラちゃんは、何とも言えない顔のまま、不思議そうにそれを黙って受けていている。



「とりあえず、その服着替えた方がええな…結構臭うで?」

ルナアーラ
「むぅ…これは我が魔力が封印されし魔装」
「脱げば奴らに狙われた時、成す術が無くなる!」


と、そう言って拒否する。
俺はとりあえず笑いながらこう言った。



「ほな、その間は俺が守ったるから、とりあえず着替えよか?」
「とにかく洗濯位せな…服は、適当に何かあるやろ」

ピーチ
『…何故、女物の服が複数あるのですか?』


俺が部屋の隅のタンスを調べてると、ピーチちゃんにツッコマれる。
俺はうぐっ…となり、手を止めるも、空笑いをしてこう答えた。



「そ、それはアレや…色々と男には事情がやな」

ピーチ
『…成る程、通報案件ですね? ロリコンですか?』


「ちゃうわ!! 誰がロリコンやねん!!」
「これは、コミケで販売するコスプレ服や! そのついでで普段着も置いてあるねん!」


俺はそう否定して説明する。
やれやれ、下手に隠すのもアホらしいな…
ちなみに、この部屋におる間は監視カメラからピーチちゃんは部屋の状況が把握出来る。
顔もPCのモニターに表示出来るし、ホンマにポリゴンってスゴいわな…
なお、既に冬コミは終わっとるから、売れ残ったのは通販とかで捌くんやけど。
まぁ、これもちょっとした副業や…これでも裁縫は得意やしな。
マルちゃんもベタ褒めしてくれるからな…それなりに評判はええみたいや。



「とりあえずこれに着替え…って翼があるから着られへんのか?」

ルナアーラ
「ふっ、問題無い…! 我が翼は混沌の闇夜に紛れし形無きモノ!」


そう言ってルナアーラちゃんは翼をあっと言う間に消してもうた。
そういやゴーストタイプやったな…あれ実態の無い翼やったんか。


ルナアーラ
「と…ご覧の通り、出し入れ自由♪」


「まぁ、それなら安心や、ほなあっちにシャワールームあるし、ついでに体洗いぃな」

ルナアーラ
「え、えっと…どうすれば?」

ピーチ
『私がサポートしますのでご安心を、そのまま右側から見える脱衣所に入ってください』
『モニターは遮断しておきますので、覗かれる心配はありません』


そう言ってピーチちゃんはモニターを全て消す。
ご丁寧にスマホのアプリもロックかけとる! 通話とメールしか出来へん!
まぁ、別に覗く気は無いけどな…
子供言うても、ルナアーラちゃんは身長は150p以上はあるし、小さくても胸に膨らみはある。
高校生って言うには小さい感じやけど、別に違和感は無いって位かな?
まぁ、とにかく言う程ロリでも無いわ…可愛いのは確定やが。



「…ソルガレオの方も調べんとな、近くの工事現場で見かけたって報告もあったけど、そうなると厄介なんよな」


証言のあった現場は既に工事が終わっており、業者はもう別現場や。
出張とかも多い業者みたいやし、ルナアーラちゃん匿う内は遠出は出来へんしな。
ピースちゃんたちの事もあるし、この街から出るのは得策や無い。
とりあえず、ソルガレオに関しては業者の足取り見ながらやな…



………………………



ルナアーラ
「くっ…! 闇の力が光に抑え込まれる!!」
「だがぁっ! 我が深淵に眠る魔物はこの程度では朽ちん!!」


「おっ、可愛いやん♪ ちゃんと洗濯も出来たか?」

ピーチ
『問題ありません、全て滞りなく』


ほうか…それなら安心や。
ちなみに、奇妙なポーズを取っているルナアーラちゃんが来ているのは、いわゆるヒラヒラのフリルが付いたドレスみたいな服や。
一応ちゃんとした普段着で、生地も一般的な物でそこまで簡素でも無い。
まだまだ2月で寒いけど、十分寒さは凌げる様に考えてあるからな。
長袖に膝下まで伸びるスカート、足にはロングソックスで膝下までカバー。
色はピンクと白がバランス良く配色しており、見た目はどこぞのお嬢様やな♪
我ながら中々の出来や。


ルナアーラ
「…あの、どうして私にこんな良くしてくれるの?」


「…? だって困っとるんやろ?」


ルナアーラちゃんは本当に疑問に思っている様やった。
まぁ、元神言うんやし、そんな人間関係のイロハとかも解らんやろしなぁ〜
俺はとりあえず笑ってこう言うた。



「ルナアーラちゃんは何も気にせんでええよ…俺の事は利用したらええんや」

ルナアーラ
「…利用か、つまり互いに存在するブラックボックスの解明が目的と言うわけだな?」


ルナアーラちゃんは突然厨二モードでそう言う。
何かなぁ…服装変わるとイメージが。
何ともシリアスと境目が難しい娘や…



「つーか、何でそんな厨二病に目覚めたん?」

ルナアーラ
「…厨二病?」


…理解してなかったんか。
天然でやってたんやな…恐ろしい娘や。



「その、そういった設定はどっから学んだんや?」

ルナアーラ
「設定ではない!! …とまぁ、本音を言うと大分前にたまたま地上に降りる事があって…」
「その時に、ものすっごく格好良いヒーローがTVに出てたの見たの!」
「もう、それがとにかく格好良くて…私、それにハマって色々考えたんだ!」


成る程、TVに影響受けたタイプか…まぁアニメやら特撮やら好きならそう言う時期もあるわな。
俺も黒歴史はあるし、この手のタイプなら大概何かあるやろ。
しかし、まさか女の子がこうなるとは思わなんだ。


ルナアーラ
「折角、今はこうやって人間の世界に降りたんだから、どうせなら色々やりたいじゃない?」
「私は、ヒーローとか、そのライバルとか、戦ったり、力を合わせたり、それでも追い詰められたり…」
「そんな格好良いお話が大好きなの♪」


成る程、これは貴重なオタクやな…ジャンルはちゃうけど、同類って訳や。
それなら話は早い、俺は右手を差し出してこう話す。



「ほな、良かったら俺と手を組まんか? 狂える混沌の求道者はん?」

ルナアーラ
「!! …ふっ、この私と手を取ると言う事は、共に地獄から這い上がる仲間になるという事だぞ?」


「ええやん、ほな一緒に月の裏側を見に行こうや?」


俺たちは硬く握手を交わす。
交渉成立…これで俺らはとりあえず仲間や。
ルナアーラちゃんに、どんな危険が潜んでるんかは解らん。
ただ、この娘はひたすらに純粋や。
自分で見た物を素直に受け止め、そして自分の行動力に直結させとる。
きっと、この娘に悪意は全く無い。
過去に見たヒーローたちの姿を見て、それに近付こうと厨二病になってもうた稀有なタイプ。
どんな作品見たんかは知らんけど、相当色々な要素が混じっとるんやろうな…


ルナアーラ
「ふ…これでまた、罪が増えてしまったか」


「まぁ、とりあえず仲良くやろうや♪」
「何かやりたい事あるなら協力するし、金銭面は苦労させへんよ」


俺がそう言うと、ルナアーラちゃんは少し考えていた。
やりたい事なんて、多分色々あるんやろうな。
せやけど、叶えられるもんなら俺は叶えてやりたい。


ルナアーラ
「…私、働いてみたい」


「…は、働くぅ? 何でまた…」

ルナアーラ
「だって! 秘密のヒーローって、普段は普通の仕事やってるじゃない?」
「だから! 私もまた普段は働きつつも、同時に覇道を歩んでみたいのだよ!!」


普段の表情から切り替える様にポーズを決め、口調も変えるルナアーラちゃん。
うーん、この娘の事やから裏は何ひとつ無いんやろうけど。



「せやかて、何か特技あるんか?」

ルナアーラ
「その気になれば、指先ひとつで星をも破壊出来るが?」


ネタかどうか解り難いわ!!
仮にも伝説やし、その位出来そうで怖い!!



「もうええわ、とりあえずド素人でも大丈夫そうなバイトでも探したるわ!」

ルナアーラ
「わーい♪」


ルナアーラちゃんはパタパタと動き回って喜びを表現する。
やっぱ可愛いなぁ〜…俺、こういう癒し系大好きや〜♪
せやけど、その前に登録やら名前やら作らんといかんなぁ…
登録はとりあえず御影はんに頼んで何とかしてもらうとして…名前、か。


(流石に厨二病ネームは論外やろ)


本人は喜ぶかもしれんが、流石に一般人にそれを答えるのは色々問題や。
住民登録の問題もあるし、一応マトモな名前は考えた方がええな…



「よし、まずは君に名前を授ける!」

ルナアーラ
「!? こ、この私に名だと!?」


「君はこれから『琉女』(るな)や!! 紅蓮 琉女!!」

ルナアーラ
「琉女…それが、新たに課せられた真名か!」
「良いだろう…それも私が背負うべき咎だ! 琉女…その名を持って私は覇道を歩もう!!」


とりあえず、受け入れてくれたみたいや。
ポーズの後はすぐに無邪気な子供の顔ではしゃぎ、喜びを表現していた。
良かった…喜んでくれてるみたいや。
さて、ほな手続きやら何やらちゃっちゃとこなしますかな!



………………………



こうして、俺と琉女ちゃんの生活は唐突に始まった。
そして、俺はとあるハンバーガーチェーン店に琉女ちゃんを紹介し、バイトとして雇ってもらう事にしてもろた。
今日は、そんな琉女ちゃんの初仕事や!


店員
「いらっしゃませ〜♪ ほら琉女ちゃん、接客お願い!」

琉女
「は、はい! ご注文はお決まりですか?」


琉女ちゃんはとりあえずニコニコスマイルでそう応対する。
とりあえずは大丈夫そうや…せやけど上手くオーダー取れるか?
ちなみに俺は客として座りながら観察してた。
今はコーラを片手に琉女ちゃんの接客風景を見守っとる。
初日やから、あんま下手な事はしたらあかんでぇ?



「う〜ん、何か今オススメとかある?」


アカン! いきなり高難易度や!! あのアホ、普通に注文せぇや!!
ヤバイで…流石に琉女ちゃんがいきなりそんなアドリブ出来るわけ……


琉女
「良かろう! ならばこの私が貴様に相応しい、伝説の魔道具を授けてやる!!」
「神聖な神鳥の生き血と、聖女の魂によって作られた黄金色の魔石!」
「そして、幾人もの犠牲によって黒く染まった闇のエキス…」
「これらが合わさった事による、究極のパッワァ〜がこの魔道具だ!!」
「名付けて! 『ラミエル・ザ・タルタロス』!! さぁ、受け取るか?」


やってもうたぁ〜…いきなりドン引きやろこれ?
一体何をオススメしとるのかも解らへん…これは印象最悪やろ?



「あ…えと、じゃあ…それで」

琉女
「チキン◯ッタ入りまーす♪ よろしければセットでいかがですか?」


俺と客全員がズッこけそうになる。
チキン◯ッタの事かいな!? 紛らわしすぎて解らんわ!!
しかし、その後の可愛らしい琉女ちゃんのスマイルに客は絆されたのか、そのままセットで頼んでニヤついていた。
むぅ…世の中解らんもんやな。
そして次の客までこんな事を言い出す。


客B
「なぁなぁ! 俺にオススメのってある!?」


それは小学生位の小さな男の子で、興味津々と言った顔で目を煌めかせていた。
そんな子供相手に琉女ちゃんは、ふっ…と鼻で笑い、顔に手をかざしてこう話す。


琉女
「良かろう…ならば! 暗き門より現れし邪悪な魚から取れた肉片と」
「更に数々の錬金術によって産み出された悪魔の器!」
「これらに神の息吹を吹き掛ける事によって生まれた伝説の魔道具!」
「『ドミニオン・ブレス・サーペント』はどうだ!?」

客B
「おお〜! それ頂戴!!」

琉女
「◯ィレオフィッシュ入りま〜す♪ 注文は以上でよろしかったですか?」


今度は◯ィレオフィッシュやったか…まぁ魚言うてたしな。
とにかく、こんな感じの厨二病接待が何度か繰り返されながら、琉女ちゃんの初仕事は何とか終える事になった。
今日1日で何かやけに話題になったみたいで、いつもより客が多目に見えたな…



………………………



先輩
「琉女ちゃん、お疲れ様♪ スゴいね〜初日なのに全然出来てるじゃない♪」

琉女
「ふっ…こんな事もあろうかと、密かにスキルは鍛えていた!」
「やはり、私は天才らしい…」


私は格好良くポーズを決めてそう言った。
正直な所、緊張しすぎていつ心臓が止まるか解らなかった…
もうなる様になれで何とかしたけど、これが毎日続くとなると、相当な辛さだ。
いや! 初日だから慣れてないだけ! これからはもっと頑張って仕事を覚えないと!!


先輩
「ふふ…琉女ちゃんって厨二病なんだね♪」

琉女
「厨二病…? 葛さんも言ってましたけど、それって何なんですか?」

先輩
「あ〜PKMだから、そう言うのは解らないのか…」
「まぁ、その…色々と夢が詰まった病気の事だよ!」


夢の詰まった…病気?
わ、私は病気なんだろうか?
うーん、正常だと思うんだけどなぁ…ピーチさんも病気じゃないって言ってたし。


先輩
「とりあえず今日はお疲れ様! また明日からよろしくね♪」

琉女
「は、はいっ! お疲れ様でした!!」


私は元気良くそう言ってお辞儀する。
そして、普段着に着替えてもうすっかり暗くなっている夜の街に私は躍り出た。
店は駅前という事もあってか、まだ人々は賑わい、幾人ものお客さんが店に出入りしている。
今からは夜のかき入れ時だそうで、仕事帰りのお客さんが沢山来るピークタイムらしい。
私のシフトは夕方までだから、このピークには出会わなかったわけだけど…


琉女
(やっぱり、下界はスゴいな…人々は、皆楽しそうに生きてる)


私はそんな人々の生活が羨ましかった。
例え神なんていなくても、人々はあんな素晴らしいアニメや映画を作れる。
私はそんな人が作った作品を見るのが大好きだ♪
そして、これからは私もこの人の輪に加わる。
紅蓮 琉女…私がここで名乗って良い名前。


琉女
(頑張って、働いて、葛さんの役に立とう…)


私は小さくポーズを取って決意する。
お金の心配は無いと言っても、負担はある。
私は自分の趣味位は自分で稼いで手に入れたい。
だから、これからも私はこのお店で頑張る!
私は厨二病らしいけど、きっとそれでも何とかなる!
人間の生活は初めてだけど、私には…



「お疲れさん、どやった?」

琉女
「ふっ…やはり天才は存在するらしい」
「神と悪魔の力を内包したこの私の力の前には、何と容易い仕事か!」


ご免なさい、本当はめっちゃ怖かったです!
でも、頑張りますんで見捨てないでください!!



「ほうか…なら良かった♪ ほな、帰るで? それとも晩飯食ってから帰るか?」

琉女
「うんっ、お腹空いたんで何か食べたい♪」


私は素直にそう言う。
すると、葛さんはハハハと笑って歩き出す。
私も、その背中にしっかりと付いて行った。
そして私はこの背中の為に頑張る。
これから、どれだけの時間一緒にいられるかは解らないけど、それでも頑張る。
私は、紅蓮 琉女…この葛さんの生涯のパートナー。



………そして、これより数日後、彼女は厨二病オーダーを武器に一躍店の名物、人気者となる。
それは十数年後も衰えを知らず、その頃には世界的に有名なPKM店長として、名を馳せるのは…また別の時代の話である。










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第5話 『狂える混沌の求道者、ルナティック・カオス・ディザイアの琉女!』


To be continued…

Yuki ( 2019/08/06(火) 07:56 )