『Avenger The After』
第3話 『ニューヨーク ウィズ ホリィ』
大護
「…ここか?」

少年
「ああ、じゃあ俺はここまでだな…」


そう言って案内をしてくれた少年は上機嫌に去って言った。
俺たちはとりあえず目的の部屋の前で扉を凝視する。
ここはいわゆるただのボロアパートで、その一室に過ぎない。
ネームプレートには漢字で『聖』と書かれており、Hijiriとルビが振ってある。
おおよそ医院とは思えない場所だな。
そもそも、見習いだからモノホンの医者じゃねぇんだが。
俺はとりあえず頭を掻き、扉をノックした。
呼び鈴も付いてねぇもんな…やれやれ。

コンコンと俺は2回軽めに叩き、しばらくして扉が開く。
その先にいたのは、予想外にインパクトの強い見た目の女性だった。


女性
「…あら、どちら様ですか? 見た感じ、アメリカの人では無さそうですけど」

大護
「なら日本語は解るか? まぁ、ちょっとした仕事でね…立ち話もなんだから中に入らせてもらっても?」


俺があえて日本語で話すと、彼女は驚く。
とりあえず、この人がホリィさんなのは間違い無さそうだ。
やたら色彩の多い角が頭から生えており、屈まないとドアも潜れない程長かった。
服は医者を意識はしてるのか、一応白衣。
髪はセミロングで、青と白で色が分かれており、中央部分だけが白かった。
耳は尖っており、まるで毛皮の様な感じの獣耳。
この時点でも相当人間っぽくはねぇな…まぁ解りやすいが。
尻からは尻尾も生えてる…とりあえず獣系のタイプか。


ホリィ
「うーん、かなり散らかってますけど構いません?」

大護
「お構い無く、気にはしませんから」
「カネ、お前は外で待っててくれ」

カネ
「分ったわ、一応気を付けてね…?」


カネは少し警戒している感じだった。
まぁ、頭ごなしに信用するのはバカではあるからな。
とはいえ、まずは話だけでも聞かせてもらうとするか…一応レポートにまとめろって言われてるからな。
俺はとりあえず中に案内されてその惨状に絶句する。
何と言うか…足の踏み場も無かった。


ホリィ
「あ、はは…驚いたでしょ?」

大護
「まぁな…だが成る程、割と本気なのは良く解った」


彼女のしっかりした日本語を聞き、俺は近くに落ちている参考書を手に取った。
しっかりとタグが貼り付けられており、本の状態から言っても相当使い込まれてるのが解るな。


大護
「大したモンだ、こんなボロアパートで医者の勉強とはな」

ホリィ
「場所は関係無いですよ、やる気の問題ですから」


そう言って彼女は小さくガッツポーズを取る。
強がってるわけじゃない、素直にそう思ってるから笑えるんだろうな。
俺は参考書を元の位置に置いておく。
この手のタイプは場所が変わると慌てる可能性が高いからな…


大護
「とりあえず、何で医者を目指そうと?」

ホリィ
「深い理由はありません、ただ…この街の人たちを助けたいからです」


そりゃ、立派なこった。
コイツは、夢も希望も溢れてるんだろうな…元、神の一柱だそうだが、とてもそんな風には見えねぇ。
ただ純粋に、コイツは人助けがしたいだけなんだろう。
成る程…俺には、ち〜と眩しすぎらぁ。

大護
「…とりあえず、込み入った話をしても良いか?」

ホリィ
「はい? それはどんな…」

大護
「十柱てな、一体何なんだ?」


俺の言葉を聞いて彼女は黙る。
そして、やや訝しげな顔で俺を睨んでいた。
本来なら聞く必要は無いんだが、俺はあえて聞いてみたかった。
だが、この言葉の意味は相当重いらしい。


ホリィ
「…貴方は、それを知ってどうするんですか?」

大護
「どうもしない、ただこっちも面倒な仕事でな…得体の知れないPKM相手に会いに行かなきゃならねぇ」
「だから、これは別に強制じゃない…答えたくないなら黙ってれば良い」
「別に知ろうが知るまいが、俺は仕事ならこなすだけだからな…」

ホリィ
「貴方は、何者ですか?」


俺はため息をひとつ吐く。
コイツに隠す必要は無いだろうし、とりあえず素性は話しておくか。


大護
「とある依頼で、アンタら十柱の生活状況を知りたいって言われてな」
「だから、こうやって自宅に突撃レポートしてんだよ…」
「危険度の高い奴もいるらしいし、出来ればこっちもリスクは減らしたいんだ」

ホリィ
「生活状況って、誰がそんな事を? まさか関係者が?」


そんな事は俺も知りたい。
とはいえ、謎の主婦と言って信じられるとも思えんしな。


大護
「依頼主に関しては、俺もよく解らねぇんだ…」
「とりあえず金は前金で半分貰ってるから、こうやって来たんだがな」

ホリィ
「…確かに危険な仕事ですね、十柱全員に会うとか正気の沙汰じゃないですよ?」
「少なくとも、一介の人間に出来るとは思えません」
「皆が皆、私の様に話が通じるわけではありませんし」


だろうな、だから話せそうなアンタに聞いてるわけだが。
次行った先、指先ひとつでダウンじゃ洒落にならねぇからな…


大護
「まぁ、期待はしてなかったから構いやしねぇさ」
「俺はプロだ、やるからには必ず仕事はこなす」
「アンタも、医者になりたいなら解んだろ?」
「それともアンタは、自分が危険だからって言って、死にそうな患者を見殺しにするのか?」

ホリィ
「…そうですね、失礼な事を言ってしまいました」
「でも、教えてください…貴方は何故そんな危険な橋を渡ってまでその仕事を?」


俺は数秒黙る。
まぁ、くだらないっちゃあくだらない理由だからな。
とはいえ隠す必要は無い、むしろこっちだけ情報を求めるのは確かにフェアじゃねぇからな。


大護
「ちなみに、ここって禁煙?」

ホリィ
「出来れば…あまり臭いとか付けてほしくないんで」


そりゃ残念…仕方ねぇ、後で吸うか。
俺は胸ポケのタバコから手を離し、とりあえず頭を掻いた。


大護
「理由は、大したモンじゃねぇさ…家には大食いのお姫様がいるから、ソイツに飯を食わせてやらなきゃならねぇ」
「だから、単純に金がいるのさ…コイツは報酬額がデカイからな」


俺はそう言って笑う。
それを聞いて、彼女は苦笑する。
だからくだらねぇって言ったんだがな。


ホリィ
「それなら、もっと安全に働けば良いじゃないですか」
「いくら稼げるって言っても、命を賭ける事なんて…」

大護
「そりゃごもっともだな…だが生憎、俺はそう言った職業につけない理由があってね」


俺はあくまで日の下で仕事は出来ない。
裏の家業に手を染めた時点で、どの道真面目には生きられねぇんだ。


ホリィ
「…理由、ですか」

大護
「聞かないのか? 別にアンタなら話しても良いがな…口は固そうだし」

ホリィ
「私にも、厄介な姉妹がいますから…何となく、解ります」

大護
「そうかい…で、その姉だか妹だかはどこに?」

ホリィ
「呼ぼうと思えば呼べるんですけど…あの娘放浪癖があるんで、いつ来るやら」

大護
「成る程、イベルタルとか言うのか…姉妹だったんだな」


俺が当ててやると、彼女は驚く。
定住せずに放浪してるって聞いてたからな。
確かアメリカで前に目撃されたって情報だし、まさかと思って言ってみたら当たりか。


ホリィ
「イベルタルの事、知ってるんですか!?」

大護
「いや、噂で聞いただけだ…そういう殺し屋みたいなのがいるって」
「同業者的には気になってな…まぁ依頼上その内会うつもりだが」


彼女はまたしても驚く。
実際には同業者って訳じゃ無いんだろうが、とりあえず俺の素性を知って驚いた様だな。


大護
「悪いな…実の所、俺は悪党で外道でろくでなしだ」
「とりあえずこれでアンタの件は終わりにしとくよ…じゃっ、勉強頑張ってな」


俺はそう言って背を向ける。
とりあえずタバコを吸わねぇと落ち着かん…やっぱ禁煙は無理だな。


ホリィ
「ま、待ってください! 貴方は本当にそんな依頼でここに来たんですか?」

大護
「それが依頼だからな…本業じゃねぇが仕事は仕事だ、プロなら受けた以上絶対にこなす」
「そこが、地獄の先でもな…」


俺は顔だけ横に向け微笑する。
後はさっさとドアを開けて外に出た。
やれやれ…次はどうすっかな〜?


カネ
「あら、終わったの?」

大護
「ああ、とりあえずひとり完了…後はホテルでレポートを纏める」


俺は外で待っていたカネにそう言い、タバコを取り出す。
が、そこで俺は忘れていた物を思い出してキャリーバッグから札束を取り出した。
まぁ、一応約束だからな。
俺は1万$程の札束をホリィの部屋のドアに付いてるポストに突っ込んでおいた。
一応、少しは情報を貰えたからな…あれ位安いモンだ。
報酬の半分はこんなレベルの額じゃ無いしな…


カネ
「良いの? あんな所に放り込んで」

大護
「まぁ、良いだろ…別に消えやしねぇだろうし」



俺はそう言って外に出る事にした。
歩きタバコ禁止だったな…ったく面倒だぜ。



………………………



大護
「ふぅ〜…やれやれだな」

カネ
「どうだったの? あのゼルネアス…」

大護
「ただの医者見習いだよ…それ以上でもそれ以下でもねぇ」
「ただ、誰かを救いたいって思ってるだけの人間さ…」
「俺には、眩しすぎらぁ…」


俺は彼女の顔を思い出して空を見上げ、太陽の眩しさに目を細めた。
懐かしいな…真莉愛ちゃんも学生ん時はあんな目ぇしてたっけか?
真莉愛ちゃんも、ただひたすらに夢を追う学生だったからな…あん時も、俺は今と同じ事言った気がする。


カネ
「ふふ…貴方にとっては神も人も平等ね」

大護
「関係無ぇよ…神だのとか言ってるのは、アイツの事を見た事も無い奴なんだろ」
「普通いるか? 神様が参考書片手に勉強して、人を助けたいって夢を語る奴…」


いるわけがない。
だからアイツは人間だ。
それで、良いじゃねぇか。


カネ
「ふ〜ん、嬉しそうね大護?」

大護
「そうだな…思ってたよりも普通だったからな」
「この調子で他の連中も話やすけりゃ良いんだが…」


まぁ、無理だろ。
ホリィも言ってたからな…皆が皆、話が通じるとは思えないらしいし。
とはいえ、これは仕事だ。
金も貰ってるし、使っちまった以上は最後までやり遂げる。
まぁ、最悪存在確認出来りゃ、遠くから観察して大体の生活推察すりゃいけんだろ。


カネ
「実際にはかなり難しいでしょうね…そもそも出会えるかも解らないのが多数だし」

大護
「そこだな…とりあえず目撃例を足掛かりにするしかねぇんだが」
「前にイベルタルはアメリカで目撃されたって話だが、ホリィの話から推測すると恐らく近くにはいねぇだろ」
「リストで見ても、次に行けそうなのはロシアか…もしくはパルキアってのだが」


とにかく情報が無さすぎるからな…出来れば近い方が良い。
もしくはホリィにイベルタルを呼んでもらうかだが…いつ来るかは解らねぇらしいしな。
つーか、それなら連絡先交換して連絡してもらえば良いか?
いや、また訪ねるのは流石にプライドが許さねぇ。
迷惑かけるだけだしな…やっぱ自力で何とかした方が良い。
アイツは、裏の世界に関わらせちゃいけねぇ奴だ…
俺はそう思い、タバコを携帯灰皿に捨てる。
そして、ホテルに向かう為に歩き始めた。
だが、その瞬間静寂は爆音で絶たれる。
俺たちは後を見て愕然とする…何故なら、ホリィがいるであろう部屋が吹っ飛んでいるのだから。


大護
「RPG-7だと!? 一体誰が!?」

カネ
「!! 大護、彼女は無事よ! 生命反応をキャッチしたわ!」


流石はカネ…って事は鱗粉撒いてたのか。
抜け目が無ぇのは良いこった。
しかし、こんなスラム街でロケランとは恐れ入るぜ!
俺は背を向けて逃げ様とする犯人の右肩に容赦無く50mm弾を撃ち込んだ。
すると男と思わしき覆面の犯人は住居の屋上で倒れる。
そしてカネはすぐに俺を念力で浮かせて俺を運んだ。


犯人
「ひ、ひいぃっ!!」

大護
「とりあえず質問に答えろ…何でホリィを狙った?」
「ちなみに待ち時間は2秒だ、喋らないならまず片目を撃つ」
「1…2!」

犯人
「しゃ、喋る!! 頼まれたんだ! 奴をやったら金をくれるって聞いて!!」


俺はとりあえず目を細めて待ってやった…コイツはただの雇われか…
だが、それにしちゃ武装が物騒すぎる。
ただのテロリストが街中でRPG-7をブッ放すか?
どう考えても後楯があるって思うのが妥当だ。
まずはそれを聞き出すか。


大護
「誰が依頼した?」

犯人
「し、知らねぇ! 俺は金と武器を貰っただけだ!!」

カネ
「嘘は言ってないわ、本当に知らないみたいね」


こういう時カネは頼りになるな…無駄に交渉する必要が無ぇのは助かる。
しかし、これでカネは英語が話せなくても嘘かどうかは解るって事が判明したな…
さて、それならコイツに用は無ぇ。
俺はトリガーを弾いて犯人の頭を撃ち抜く。
生かしてやるとは一言も言って無ぇからな。


カネ
「気になるわね、誰の差し金かしら?」

大護
「解らねぇ…だが、ホリィが狙われてるのは確かだ」
「武器は比較的新しいな…最近作られた奴か」
「他に荷物が無いって事は、1発限りの特攻用…使い捨てのテロリストだろうな」


俺は犯人の遺留品を調べて推測する、そして電話取り出して葛を呼び出した。



『どないした? 何かトラブルか?』

大護
「葛、今から言う型番を調べてくれ…ブツはRPG-7だ」


俺は電話を片手に武器の型番を葛に伝える。
葛はそれを聞いてすぐに調べた。
そして数分後、葛からこう連絡が入る。



『どうもCIAが絡んでる臭いな』

大護
「CIAだと!? 何でアメリカの情報局が武器の横流しをしてる?」


『理由は知らん…せやけど、型番は間違いなくCIAが購入したモンや』
『少なくとも、イベルタルに関わってると思われてるんちゃうか?』


イベルタルか…確かにドンピシャな訳だが。
成る程、ワザとホリィを襲って誘い出そうって腹か。
よっぽどイベルタルが憎いらしい。
しかし、さしものCIAも相手が悪かったと言わざるを得ないな。
あれで死なねぇんだ…ゼルネアスってのも相当なバケモンみたいだぜ。


大護
「…とりあえず解った、後はこっちで何とかする」
「ちなみに、現大統領は今どこか解るか?」


『ホワイトハウスはまだ吹っ飛んだままやからな…ああ、そういや明日ニューヨークで演説する言うてたで?』

大護
「そいつぁ良い…手間が省ける」


俺はそう言って電話を切る。
そろそろ警察が来るな…俺はカネに頼んですぐにその場を離れた。
そして、俺たちはすぐにホテルへと向かう。
やれやれ…面倒をかけてくれるぜ。



………………………



カネ
「それ、何なの?」

大護
「ああ、見るのは初めてか? コイツはな…」


俺は実際に見せてやる。
今、俺たちはホテルの一室で複数の郵便物を開いていた。
そしてそれらを全て俺は確認し、それらを『組み立てて』いった。
すると出来上がったのは…


カネ
「わ…ライフルって奴ね? でも銃身がスゴく長いのね…」

大護
「スナイパーライフルだからな…コイツなら2km位は射程がある」


俺はそう言って12.7mm弾を持ち、状態を確かめる。
俺の腕なら最大射程でもボール位は狙える。
流石にそれ以上はちっと自信無ぇがな…


カネ
「でも、それで誰を撃つの?」

大護
「撃つのは人じゃねぇ…あくまで警告だからな」


俺はそう言ってライフルを試しに構える。
よし、フィットは悪くねぇ…限界近くまで軽量化してるから、羽みたいなモンだ。
さて、予定は明日の昼過ぎだったな…場所も確認したし、後は待つだけだ。
CIAに直接警告するよりも、その上に仕掛ける方が効果はデカイ。
その分難易度は上がるんだが、まぁ殺すわけじゃねぇ…せいぜいビビらせるだけだ。



………………………



次の日、俺は大統領の演説をラジオで聞いていた。
内容はPKMに対しての法的措置に関してだ。
言ってる事はそれ程悪くもなく、穏便な感じで演説をしている。
今の大統領は前と違って温厚派らしいし、比較的PKMにも受けは良い大統領みたいだからな。
つーか、前のがタカ派で連合の怒り買ってピースに吹っ飛ばされたんだから笑えねぇわな。
基本的に今のアメリカはPKMに対してまだ恐怖が刷り込まれてるのかもしれねぇ。


カネ
「流石に演説中に撃つわけじゃないのね…」

大護
「室内にぶち込むのは流石に面倒すぎる」
「それに、タイミングは別にどうでも良いんだ…大統領が危機感さえ覚えてくれりゃ」


そう、今回の狙撃はあくまで警告。
特に、PKMを戦争に巻き込むなと言う警告だ。
ホリィはただ真面目に勉強して、医者になりたいだけなんだ。
今回は、少しそれを理解して貰いたいってだけだ…


カネ
「出て来たわね…やるの?」

大護
「もう少し待て、クルマに乗ってからだ」

カネ
「車って…防弾じゃないの?」

大護
「だから別に殺すわけじゃねぇっての…良いから落とすなよ?」


ちなみに、俺たちは今上空2kmにいる。
かなり気温は寒く、コートを着てるがかなりの冷え込みだった。
まぁ、とりあえず正確に狙う必要はあまりねぇからな。
俺はそこからライフルを構え、大統領が乗った車の座席側にある窓を狙って弾丸を発射した。
すると、風や気圧で弾丸の軌道はかなり曲がるものの、ちゃんと窓へ着弾。
弾は防弾ガラスに当たって砕け散り、そこから緑のペイント塗料が窓ガラスに撒き散らされた。
俺はすぐにカネに連れ去られ、場を離れる。
カネの鱗粉と超能力で光学迷彩もどきを施してるから、周囲からはモニター出来てないはずだし、多分補足はされねぇだろ。
さて、後は大統領がちゃんと理解してくれてるなら、余計な仕事は終わりだ。



………………………




SP
「大統領、大丈夫ですか!?」

大統領
「あ、ああ…これは、ペイント弾か?」
「…! そうか…これは、警告か」


私は、窓に付いている緑の塗料を見て察する。
これは、とある殺し屋の仕業だと私は理解した。
そして、これに込められた意味を理解出来るのは、大統領である私だけ。
正確には数代前までの大統領ならば解る事でもあるが、つまりはそういう事。


大統領
(わざわざこのタイミングでの狙撃…つまり、PKMに手を出すな、か)


この警告は、正確には単純にそれ以上踏み込むな…と言う警告なのだが。
それでは何の事かが解らない、つまり今より前に起こった事件から推察するしかない。


大統領
「確か、昨日スラム街で襲撃騒ぎがあったな?」

SP
「は、はい! ひとりのPKMが住んでいたアパートが吹き飛ばされたと報道されています」


やはり…と私は思う。
彼は、関わっていたのだな…だからこの警告を。
幸い、当のPKMは無事だったそうだが、犯人は既に死亡していたそうだし、間違いないか。
私はネクタイを締め直し、携帯電話を取り出す。


大統領
「私だ、CIA長官と繋げてくれ…」



………………………



大護
「………」

カネ
「会わなくて良いの?」

大護
「良いさ、俺は外道だ…日の下で立派に歩いてるあいつに出来る事は何も無ぇ」
「俺に出来んのは、あいつに危害を加え様とする敵を始末してやる事位だ」
「理由はどうあれ、あいつは命を狙われた…それも人間に」
「だったら、同じ人間が手をくださねぇとな」


俺たちは既に出国手続きを済ませていた。
とりあえず次はロシアだ…更に寒くなりそうだな。



………………………



神父
「ミセスホリィ、良いのですか? 礼をしなくても」

ホリィ
「…構いません、彼は名前すら名乗りませんでしたし、そう言う事なのだと思います」


私は、あれから教会で世話になっていた。
あの襲撃のせいで重要な参考書とかも吹っ飛んでしまったし、散々だ。
でも、私はそれでもへこたれてはいない。


少年A
「ホリィさん、何だか届け物が来てるよ!?」

ホリィ
「あらダグ、ありがとう…後は私が持つわ」


私は30p程の高さがあるダンボール箱をダグから受け取った。
かなりズシリとした重量で、ダグには重かったろうに、それでも彼はニッコリ笑っていた。
一体、何かしら? 送り状には出梵コーポレーションと書いてあった。


少年B
「あ、これ確か昨日会った社長さんの会社名だぜ!?」

ホリィ
「社長さん…? ジョン、その人ってまさか後髪がお下げのオジ様?」


私がジョンにそう聞くと、ジョンはそうそう!と強く頷いた。
私はそれを聞いて、ダンボールを床に置き開けてみる。
すると中に入っていたのは、綺麗な参考書の束だった。


神父
「おお、良かったじゃないですかミセスホリィ」
「これで、また勉学に励めますね♪」


私はコクリと頷き、そのひとつを取る。
各種ジャンルにも対応した医学書も沢山ある…歴史書まで。
私は少し俯き、ちょっとだけ後悔した。
どうしてあの人はここまでしてくれるんだろう?
ポストに大金を入れていたのも、きっとあの人だ。
私は、そこまでされる様な存在じゃないのに。


ジョン
「へへ、本当に気前の良い社長さんだな」
「ホリィさんの事支援したいって言ってたし、嘘じゃなかったんだ!」


ジョンはそう言って笑うが、真実は違うのだろう。
彼は、自分を悪党で外道でろくでなしと称していた。
そんな彼が、そんな殊勝な事を言うわけが無い。
多分建前だったはず…でも、彼はこうやって本当に贈り物をしてくれた。
私は、改めて気持ちを強く持つ。
医者になろう…そして、人を助けよう。
それが、彼に対しての1番の恩返しになるだろうから。


ホリィ
(そしてもし、彼がピンチになったらその時は絶対に助けてみせる)


それは私の誓いだった。
きっとその時でも、彼は救いを拒否するのだろう。
それでも、私は絶対に助ける。
だってそれが…プロになるという事だから。



………………………



大護
「げ…?」


「あら、久し振り…って言うべきかしら?」


何と俺たちはロシアの空港に着くなり、予想外の女と出会う。
その女の名は…


大護
「ちっ…テメェも仕事か『リーリエ』?」

リーリエ
「ご生憎様、もう終わったわ…私はこれからフランスよ」
「だけど、貴方いつからPKMと仕事する様になったのかしら?」
「基本的には一匹狼だったのに…」


そう、コイツの名はリーリエ。
ルザミィと同じ女スパイで、いわゆる同業者。
とはいえ、スパイとしての経験値はルザミィよりも遥かに上で、プロとしての徹底度合いは完全に上回っている。
稼ぎに関しても、相当だろうな…
しかし、今度はフランスかよ…忙しいこって。


大護
「俺が誰と組もうが関係無ぇだろ?」
「それに、今回は殺しの依頼じゃねぇからな…」

リーリエ
「あら、珍しいわね? 金になる仕事なのかしら?」

大護
「まぁな…下手な依頼より遥かに面倒で危険だが」

カネ
「…大護、彼女は仲間なの?」


俺は違ぇよ…と、かったるく呟く。
むしろ敵になる事の方が多いからな。
味方になった事なんて覚えが無ぇわ…


リーリエ
「へぇ…よく見たら貴女、元連合幹部じゃない」
「確か、カネだったかしら? カプ・テテフの…」


カネは驚いて一歩退く。
まぁリーリエなら知ってても納得だが…


大護
「…お前、羽黒の事知ってたのか?」

リーリエ
「まぁね…必要なら始末する様依頼を受けてたけど、誰かさんがホワイトハウス吹っ飛ばしてくれたお陰で、依頼主がビビっておじゃん…」
「結局ロシアに仕事しに来る羽目になったわ…」


成る程、そりゃ御愁傷様…恨むならピースを恨め。
しかし、ロシアもキナ臭ぇな。
コイツがいる所は大概ロクな事が起こらないからな。
前もイギリスでいきなり強盗事件に巻き込まれたし…
その前はシリアで銃撃戦、インドでも巻き込まれたな。
数えたらもっとあるかもしれねぇ…基本的に俺はコイツと関わりたくないんだ。


大護
「くっそ…絶対ハズレ引いたぜ、最悪だ」

リーリエ
「失礼ね…貴方が不幸体質なんでしょ?」

大護
「どの口が言いやがる! お前の存在が致命的なんだ!!」
「何で行く先々で人に事件なすり付けやがる!?」
「意図的にやってんだろ!?」


俺は声を荒らげてツッコム。
リーリエは不満そうに頬を少し膨らましたが、全く可愛くない。
ルザミィより年上の癖にキャラ作りすぎなんだよ。


リーリエ
「ふん…知らないわよ、貴方なんてどうせ殺しても死なないんだから別に良いじゃない」


そんな事を言い残してリーリエは不満そうに去って行った。
やれやれ、相変わらずだな…ったく。


カネ
「随分面倒臭そうね?」

大護
「実際面倒なんだよ…基本的に関わりたく無ぇんだ」

カネ
「ふーん、まぁとりあえずそれなら無視して良いんじゃない?」


そりゃ同感だ…とはいえアイツの呪いは徹底してるからな。
まずはそれを解いてから動き出さねぇと、おちおち寝てもいられん。


大護
「…ちっ、ただでさえタバコも吸えねぇのに最悪だぜ」

カネ
「それも面倒よね…別の嗜好品探したら?」


それも考えるか…このままじゃ俺の胃に穴が空きそうだからな。
とにかく、少し時間置いてからだ…サンクトペテルブルクへは後でも良いだろ。
リーリエの呪いを解いてから行った方が絶対に良いからな!
俺はとりあえずイライラしつつもタバコは吸わない様に気を付ける。
そして、頭の中でも別のストレス解消方を探しながらホテルへ向かう事にしたのだった。











『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第3話 『ニューヨーク ウィズ ホリィ』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/24(水) 11:52 )