『Avenger The After』
第2話 『十柱調査依頼』
大護
「あん? 十柱の調査ぁ? 」


「せや、ちょっとした依頼なんやが…」


今は昼過ぎ、俺たちは喫茶店のポケにゃんで話し合っていた。
ちなみに、ここは何気に蛭子と細歩が働いている職場でもある。
アイツらは今絶賛接客中だ。


客A
「ひ、蛭子様! どうぞ踏んでくださいませ!!」

蛭子
「だから私は別にそんな趣味無いって言ってんでしょうが!?」
「いい加減、ヤンデレ属性付与するの止めてもらえませんか!?」


蛭子そう叫びながらも、客が土下座しているので頭の脚で客を踏みつける。
いや、多分本人的には腕で押さえてるつもりなんだろうな…でもヒトデ的にはそこは脚だから、客は踏まれてる…と思うわけだこれが。
やや不憫に思うものの、それもまた蛭子の人気に繋がるのだから笑えない話だな…


客B
「細歩ちゃ〜ん! こっち向いて〜♪」

細歩
『は〜い♪ ご主人ちゃま〜♪』


細歩は露骨な演技でロリを演出していた。
まぁ、見た目は幼女だからな…あんなんでも成人なんだが。
客席がどれだけ理解してるかは知らないが、細歩はしっかりと自分の強みを理解して生かしている様だった。


ピショット
「凄いな、あのふたり…まだ経験も少ないのに、あそこまで客の寵愛を受けるとは」

アブソル
「ふたりとも、見た目がかなり突飛ではあるからな」
「やはり、ご主人様としても、他には無い新たな風を求めていたというわけか…」


ふむ、ふたりは先輩にもそれなりに認められている様だ。
あれからPKM法も改正されて、しっかりと社員扱いで給料もらってるし、ふたりには感謝しか出来ねぇよな…



「…とりあえず、依頼主は『若葉 育美』って人や、謎の主婦らしい」

大護
「主婦だぁ〜? 何で主婦が神様の調査を頼むんだよ?」


少なくともその時点で主婦じゃねぇだろ!
そもそも、十柱とかいう神様PKMの調査って時点でキナ臭い臭いしかしねぇんだが?



「…まぁ、依頼主には謎が多いのも確かや」

大護
「目的は何だ?」


「ホンマにただの調査らしいで? ただ、十柱の今の生活状況を知りたい…って、それだけらしい」


それは探偵の仕事だろ…俺は復讐代理で暗殺者だぞ?
畑違いにも程あるだろうが…
俺はややウザそうにしながらも、とりあえずコーヒーを飲んだ。
何気に美味いな…ただのメイド喫茶かと思ったら意外じゃねぇか。



「とりあえず、報酬は十分に用意するって話やし、どないや?」

大護
「直接会わねぇってのが気に入らねぇ…」


この依頼は、とりあえず依頼主の素性が不明瞭すぎる。
何で主婦なんだよ…謎の!



「…大護、頼まれてくれんか? 今回の依頼は、俺からも頼みたいんや」


葛はパスタを食いながらそう俺に懇願する。
俺はそんな葛の頼みを聞いて、それなりの理由があるのだと察する。
詰まる所、俺には明かしたく無い何かがあるって事か。


大護
「ちっ、お前には借りしかないからな…良いぜ、それならやってやるよ」
「その代わり、金銭のバックアップはお前持ちだ…それでも良いか?」


「なら、交渉成立や…任せとけ、旅費と滞在費は全部面倒見たる」


俺はいきなり不穏な言葉を聞く。
旅費と、滞在費…?


大護
「ちょ、ちょっと待て葛…それってまさか?」


「とりあえず、初っぱなはニューヨークや! 誰連れて行くかは知らんけど、準備はしっかりとして行けや?」

大護
「やっぱりかテメェ!? 海外とか聞いてねぇぞ!?」


俺はやや客の注目を浴びながらも叫んでしまう。
俺はてっきり日本国内の仕事だと思ってたのに…



「アホかお前は、イベルタルの時点でアメリカって聞いとったやろ?」
「十柱はそもそも日本にはひとりしかおらんで?」

大護
「だったら最初はソイツだろ!? 何でいきなりニューヨークなんだよ!?」


「せやからそっちは俺がやるっちゅうねん…」
「これは分担作業や…俺は日本離れられへんし、海外は任せる」


葛は本気で言っている様だった。
俺は頭を抱える…上手く言いくるめられたな。
ちっ、まぁ受けた以上はやるのがプロだ。
とりあえずニューヨークね…やれやれ。



「…一応、気ぃ付けぇや? 仮にも神と呼ばれたポケモンや」
「下手したら、指先ひとつでボンッ!やで?」

大護
「だろうな…まぁ、調査ってだけだろ? 必要以上の刺激はしねぇさ…」


俺は残りのコーヒーを一気に飲み干す。
そして、外でタバコを吸う為にとりあえず店を出ようとするが、蛭子が突然カクテルを俺に出して来た。
ん? この店は酒は取り扱って無いんじゃなかったか?
それとも、カクテルっぽいノンアルコールか?


蛭子
「…大護、10分待ちなさい」

大護
「………」


蛭子はそうすれ違い様に呟く。
俺はこの時点で察した…ゴタゴタか?
俺は再び椅子に座り、カクテルを一口飲む。
アルコールじゃねぇな、ただのジュースだ。
だが、紛らわしい事に意味はあるか…注目させて俺を留めるとはな。
葛も露骨に無言でコーヒーを飲んでいた。
どうやら、他の店員は何も知らねぇんだな。


大護
(ちっ、何がありやがる? ん、アイツら…?)


俺はたまたま店内のあるテーブルを見た。
そこには、やや一般人と言うには屈強すぎる男がふたり座っている。
あからさまに偽装してやがるな…恐らく、どこぞの組織関係の構成員か?



「大護、武器は?」

大護
「愛用のデザートイーグルだけだ」


葛はそれを聞いて少し顔をしかめる。
しゃあねぇだろうが! 愛用なんだから!
ちなみに日本じゃ当たり前に所持自体が犯罪なんだがな!
とはいえ、今の俺のは50口径のカスタム品だ。
以前の事件の事もあって、銃に関しては特に今は力を入れてる。
コイツなら徹甲弾内蔵で、最新のボディーアーマーも貫ける代物だからな。



「…とりあえず、当たりは当たりや」
「せやけど、すぐに動いたら誰かが傷付く可能性が高い…何とか出来るか?」


葛は感付かれない様に小声でそう言った。
当たりってのは、つまりあの怪しいふたり組が何かするってこったな。
しかし、葛的には店員を傷付けたくないって所か。
やれやれ…面倒臭ぇな。
とはいえ、蛭子と細歩はここの店員だ、戦わせるわけにはいかねぇ。
蛭子もそれが解ってるから、こんな回りくどいやり方で俺を足止めしたんだ。
つまり、俺が出て行けば奴らはすぐに事を起こす…って可能性が高かったわけだ。
そして、俺が期待されてるわけね…なら、しゃあねぇわな。


大護
「葛…奴らの素性は?」


「多分、ロケットコーポレーションの残党やな…」


俺は、それを聞いて目を見開く。
ロケットコーポレーション…それは、今や過去の大企業。
何年か前に俺が依頼を受け、社長を暗殺してその後倒産したはずの、過去の企業だ。
それが何でまたゾンビみてぇに残党が彷徨いてやがるんだ?



「詳しい話は俺も掴んでない…せやけど、何かあるんやろ」

大護
「PKM関係で…か?」


俺たちはあくまで一般客を装い、小声で会話していた。
例のふたり組は特に事を起こす様子は無く、食事をするわけでもなく、何か時間を気にしている風に見えた。


大護
(それにしても、蛭子の奴は何で時間指定を?)


しかも、10分と言った。
その時間に何か意味があるのか?
そして、その10分はじきに過ぎようとしていたのだが…


店長
「ご主人様の皆さん! 悪いけれど今日はここまで!」
「閉店時間となりましたので、お会計を順にお願いします♪」


突然声をかけたのはオカマの店長。
よく見ると時間はもう閉店時間だった。
成る程、これを見越して待てと言ったのか…
で、こうなれば客も一斉にレジへ向かう…そうなりゃ相手の狙いも絞れるって訳か。
考えたな蛭子の奴…これなら相手の動きを見て、目的が何かを推察出来る。



「…大護、ここは俺が払うから、お前は奴らの後から目を光らせてくれ」

大護
「おう、任しとけ」


俺はとりあえずノンアルコールのカクテルを飲み干し、行列になるレジを見た。
そして、残党と思われるふたりもその行列に加わる。
俺はそれを見て立ち上がり、あくまで一般客を装ってそのふたりを背中側から凝視した。
武器を持ってるかは微妙だな…屈強な体でもあるし、肉体派の様にも見えるが。
そして、奴らの前にいる人間に俺は注目する。
この中では偉く場違いなスーツ姿の男だな。
手にはやけに頑丈そうな鞄を持っている。

その男が清算を済ませると、次は例のふたり組。
その片割れのスキンヘッドが、会社員みたいなスーツの男をつけて行った。
俺はソイツに注目し、ある程度の距離を置いて尾行を開始する。
やれやれ、解りやすい小悪党っぽいな…



………………………



大護
(この辺りは、狙いすましたかの様に人気が少ねぇな)


住宅街ではあるものの、時間はもう夜だ。
こうなると、闇に隠れて仕事をする人間もいるってわけだが…


怪しい男
「ゲッ!?」


俺は背後から近付いて来たふたり組の片割れを、振り向かずに銃で脅す。
銃口は後にいる男の口の中に捩じ込まれており、いつでも殺せると俺は無言で警告した。
そして男が震え上がった所を、俺は左手に持った予備のスタンガンで男を気絶させる。
対PKM用の強烈な奴だ、音も静音設計で遠くからはまず何が起こったかなんて解りゃしない。

さて、後は肝心のハゲだな。
一体何を狙ってやがる?



………………………



スーツ男
「な、何だキミは!?」

スキンヘッド
「おっと騒ぐなよ? 痛い目見る事になるぜ?」


男は人気が完全に無い公園の隅でスーツ男を無理矢理追い詰めていた。
解りやすい脳筋なのは助かるが、とりあえず目的を喋ってもらわねぇとな…


スーツ男
「ま、まさかコイツが狙いなのか!?」

スキンヘッド
「そうよ! じゃソイツを貰おうか?」


ハゲはサバイバルナイフでスーツ男を脅し、鞄を無理矢理引ったくる。
その後、ナイフの柄でスーツ男の後頭部を殴り、気絶させてしまった。
やれやれ、あんまり情報は得られなかったな…しゃあねぇ。


スキンヘッド
「へっへっへ! これを持ち帰りゃ、俺は幹部昇進も夢じゃねぇぜ!」


ハゲはすぐに逃げ去ろうとするが、その先にいた俺の体にぶつかる。
奴の方が体がデカイが、俺は微動だにせずハゲの顔を無言で見上げた。


スキンヘッド
「な、何だテメェはぁ!?」

大護
「テメェに聞きたい事がある…」


俺はワザと指をボキボキ鳴らして相手を威圧する。
とはいえ、流石に相手の方がガタイは上だ、あんまし脅しにゃなんねぇな…


スキンヘッド
「へっ、テメェこのナイフが見えねぇのか?」

大護
「そう言うテメェこそコイツが見えねぇか?」


俺は相手のナイフに対して容赦無く銃を構える。
銃は剣より強し! ンッン〜名言だなこれは。
相手は空笑いを浮かべ、数歩後に退がった。
俺は逆に詰め寄る、銃にはサイレンサーも付いてるから、こんな人気の無い所なら簡単に殺せる。


スキンヘッド
「ま、待て! も、もしかしてお前もコイツが狙いか?」
「だったら、半分やるよ! サンプルは複数あるはずだから!!」

大護
「全部だ…」

スキンヘッド
「えっ!? そりゃないぜ! コイツは元々俺のだぜ!?」


正確にはあのスーツ男のだがな!
とりあえず俺は心でツッコミながらも、男に銃を突き付けて更に言う。


大護
「全部だ!」

スキンヘッド
「コ、コノヤロウ死ねぇ!!」


ハゲは勇気を出してナイフを振るって来た。
いい根性してるじゃねぇか…まぁ、どの道返り討ちだがな!

バチィッ!と俺の左手から電撃が放たれ、ハゲは泡吹いて倒れる。
俺は落ちたナイフを靴で踏み抜き、刀身を叩き折った。
俺の靴は鉄板入りだからな、これ位は余裕だぜ。

さて、とりあえず任務完了。
コイツは持ち主に返してやるか…
って、何か気が付いたら奪還任務になってやがる…
どうなってんだ? 俺は店に被害出さない様に何とかするつもりだったはずだが…?


大護
「ちっ、まぁ良いか…」


俺はとりあえず持ち主に鞄を返す為、とりあえずスーツ男の倒れている場所に向かった。
すると、男は気が付いたのか頭を抱えてゆっくりと立ち上がる。
俺はそんな男の前に鞄をドカッと置いてやった。
すると、男はそれを見て咄嗟にしがみつく。
やれやれ、一体どんな中身なのやら…?


スーツ男
「よ、良かった!! 無事だったんだね!」

大護
「おい、ソイツには何が入ってんだ?」

スーツ男
「…それは言えない、機密事項だ」


まぁよくある話か。
なら仕方ねぇな…これ以上は俺の仕事じゃない。
俺は背中を向けてさっさと帰る事にした。


大護
「とっとと帰れ…他にもソイツを狙ってるのは多いぜ、多分」


俺はそれだけ言ってツカツカと歩いた。
そして葛に連絡を入れ、例のふたりの回収を依頼した。
やれやれ、突然のトラブルだったな…
さっさと俺も帰って今後の事を考えるか。



………………………



大護
「…ふーん、量子コンピュータのサンプルねぇ」


「まぁ、実際に完成したとしても、早く見て20年以上はかかる代物やろ」
「かの希代の天才、魔更 准一が今も健在なら、もっと早くに完成も出来たんやろうが…」


俺たちは例の寺でまた会合を行っていた。
今後の事も相談したかったし、今回の事も謎が多かったからな。
俺たちは互いにタバコを吸いながら、とりあえず色々話し合っていた。



「しかし、残党がサンプルをねぇ…キナ臭い話やが、幹部昇進とか言うてるって事は、いつの間にか水面下で再建しとったんか?」

大護
「とりあえず、そっちは俺に関係の無い話だ」
「当面は、例の十柱だろ?」


あくまで調査の依頼だ。
それがどこまで必要なのかは全く解らねぇが、とりあえずそれなりの報酬は用意されてるし、悪くは無い仕事だ…リスクさえ目を瞑れば。



「ふふ…また、新たな仕事ですか?」

大護
「まぁな…つっても、俺の本業じゃねぇが」


突如闇夜からゆっくり現れたのは、造と言う白髪の巨乳女性。
相変わらず、不思議な雰囲気を身に纏ったミステリアスレディだ。
俺はとりあえずタバコの煙が向かない様に立ち位置を変えた。



「…そういう細かい所にも配慮出来る喫煙者は、そうそういないでしょうね」

大護
「俺のポリシーだ、タバコは一応有害だからな…」
「造さんが妊娠してたら悪影響与えちまうだろうし」


俺がそう言うと、造さんは少しキョトンとした。
な、何か珍しいな…いつも飄々としてる人なのに。



「…そうですか、そうですね」


「…まぁ、世界に渡るんやったら喫煙マナーは基本やからな」
「そういう意味では日本はまだ甘い方やし」

大護
「確かにな…次はニューヨークかよ、面倒クセェな〜」
「歩きタバコ全面禁止は良いとして、室内もほとんどダメらしいし、見付かったら罰金だもんな…」


まぁ、日本も今じゃそれなりに禁止されてはいるんだが、あくまでマナーの範囲だからな。
ニューヨークは法律で禁止になってるから、とにかくチェックは気にしねぇと。



「とりあえず、我慢するんやな…つーか、これを機に少し禁煙せぇ」

大護
「まぁ、切実な問題だな…トラウマ全盛の頃は、これしかストレス軽減方も無かったし」


あの頃はエロ本もダメ、エロビデオもダメ、自慰は論外とロクな経験が無かったな…
まぁ、今でもビビって出来ねぇわけだが…



「大護君は、趣味などは無いのですか?」

大護
「趣味ねぇ…特に無いんだよな〜」
「俺ぁ、ガキの頃から人を殺す為だけに全青春を賭けちまったからな」
「かといって、当たり前にやる鍛練や勉強を趣味とは言わねぇだろ?」


「せやから、さっさとピースちゃん押し倒してガキ作れや…」
「子育てし始めたら、自ずと新しい趣味でも見付かるやろ?」


俺は言われて頭を抱える。
まぁ、確かにそうなったら何かあるのかもしれんが…
俺は少し真面目に考えてしまう。
子供…ねぇ。



「大護君は、まだ親にはなりたくないのですか?」

大護
「…そういうわけじゃねぇ」
「ただ、子供に隠れて人を殺してる俺が、誇れる親になれるか?」


造さんは優しく語りかけてくれた。
俺は、正直に今の心境を造さんに伝える。
すると、造さんはそんな俺を諭す様に、優しい笑顔でこう言ってくれた。



「大護君…子供の為に頑張る親は、例え人殺しでもそれは立派だと私は思いますよ?」
「確かに、褒められた仕事では無いと思います」
「ですが、貴方は正しいと思ってやっているのでしょう?」

大護
「正しいかは知らねぇよ…ただ、俺は誰も裁かないから俺が裁くと決めただけだ」
「法律や規則じゃ、上っ面しか守ってくれねぇ」
「その裏で潜むドス黒い悪を俺は裁く為に、殺しの技術を磨いたんだ」


俺の最初の仕事は、それこそ学生時代に自殺しかけてた、ただの不運な虐められっ子を助ける為だ。
結果として、俺はそのまま学校から去って海外へ逃げたんだがな。
それでも、俺は何も後悔はしちゃいなかった。
後から調べたら、ソイツも今は家庭を持って幸せに暮らしてるそうだ。
俺は、そんなひとりの人生を救えたのだと思えるだけで、今の仕事に誇りが持てる。


大護
「…そうか、そうだな」


「はい」


造さんはただ頷いた。
俺の心境を察したのだろう。
俺はタバコの灰を携帯灰皿に捨て、満点の星空を見る。


大護
「親父が誇りを持って命賭けてんだ…そんときゃ、子供は許してくれるのか」


「まぁ、お前の子供とかどう成長するか解らんがな…」
「ただでさえあんな曲者だらけのPKMに囲まれたら、変態に育ちかねんが」


俺は想像して目を細める。
まっ、当分ありえねぇ光景だがな。



「ふふ、その時は楽しみですね」

大護
「勘弁してくれ…まだ当分そのつもりはねぇよ」
「海外に飛んでる内は、そんな気にならねぇし」


「そういや、皆連れてく気なんか? っても、蛭子ちゃんや細歩ちゃんは一応働いとるしな…」


俺はその辺も既に考えている。
とりあえず俺はタバコを咥えてこう言った。


大護
「連れてくのはカネだけだ、残りは日本に置いておく」


「まぁ、妥当か…ピースちゃんもアメリカでは凶悪犯罪者やからな」
「流石に、堂々とニューヨークは歩けんわな…」


まさにその通りだ。
それに、ピースなんか連れてったら本当に食費がヤバイ。
それこそ、現地の名物料理食い尽くすまで食い歩きしそうだからな…


大護
「とりあえず、蛭子と細歩は良いとして、ピースの事はよろしく頼むわ」


「ええやろ、まぁ生活費に関しては任しとけ」
「その代わり報酬は山分けやぞ?」


そう言って葛は嫌らしく笑う。
ったく、ちゃっかりしてやがる。
まぁ、俺は金に執着はねぇし、面倒が無いなら構わんがな。



「ニューヨーク、ですか…まだ、あそこはそれ程PKMに対しての整備がされていませんし、気を付けると良いでしょう」

大護
「ああ、そのつもりだ…とにもかくにも、十柱とか言う神様の調査だからな」
「せめて話が通じる相手なら助かるって所か…」


俺は葛から受け取ったリストのデータをスマホで見て、とりあえず考える。
そこには、ひとりの神様の姿が写真で写っていた。



『ゼルネアス』

ニューヨーク在住、医者見習い
現地ではホリィと呼ばれており、現在最も簡単に遭遇出来ると思われるPKM
性格も非常に温厚で優しく、敵対性もほぼ確認出来ない



………………………



カネ
「そう言えば、私のパスポートとか発効出来たの?」

大護
「大きな声じゃ言えねぇが、一応な」
「俺のも事実上偽装だし」


当たり前だが、俺たちは世間的には凶悪犯罪者だ。
そんな俺たちが堂々と本名名乗って審査通るのは危険すぎる。
よって、偽名でパスポートは発効してるし、その辺はとりあえず今は問題無ぇ。
俺にとっちゃいつもの事だしな。

俺とカネは偽名を名乗ってニューヨーク行きの飛行機に無事乗り込む。
カネにとっても初めての事の様で、珍しく子供の様にウキウキしている様だった。



………………………



カネ
「へぇ…意外と静かなのね」

大護
「そりゃあな…とりあえず時差が14時間程あるから、俺は寝るぞ?」
「今こっちは10時だが、向こうじゃまだ昨日の20時だからな」


あらかじめ時差を考えて俺は睡眠時間を調整しておいたからな。
カネにも前もって言っておいたはずだから、調整はしてると思うが…


カネ
「そっか…着く頃には朝になるのね」

大護
「そういうこった…13時間は空の上だから、向こうの9時〜10時には着く予定だ」


俺はそう言ってシートをリクライニングさせて寝る体勢に入る。
カネは少し窓から景色を眺めてから眠る様だった。



………………………



カネ
「………」

大護
「…ん、ニューヨーク時間で5時か」


俺はとりあえず8時間程眠って起きる。
カネはまだ眠っている様なので、とりあえず寝かせたままにしておく。
その際に、毛布がはだけていたので俺は直してやった。
ついでに軽く胸を揉んでみる…ううむ、このボリュームはやっぱスゲェな。
サイズだけならピース以上だし、柔らかさもグッドだ。
とはいえ、前の電撃の件もあるからここで自重しておく。
カネはエスパーだから、寝ぼけて体グチャグチャにされても困るしな。


カネ
「ん…もっと触っても、良いのよ……」

大護
「…寝言か、焦るじゃねぇか」


一瞬気付かれていたのかと思ったわ。
しかし、コイツは意外と拒否ったりはしないんだよな…
どうもピースや蛭子を見てると、エロ否定派が普通だと思ってしまっている。
カネや細歩はむしろカモン系だもんな…後、紫音ちゃんもか。

とまぁ、俺はそんなカネの可愛い寝顔を見てつい乳首を摘まんでしまった。
うお、勃ってやがる…! スゲェ…女の体でもこんなんなるんだな。


カネ
「んん…っ、大護ぉ…」

大護
「…い、いかんいかん、これ以上は本当にマズイ!」


思わず流されそうになる所だ。
カネだったら受け入れかねないし、第一こんな旅客機で本番まで出来るか!
とりあえずイタズラはもう止めておこう…



………………………



カネ
「ん〜? ふぁ…夢かぁ」

大護
「お、おう起きたか」


俺はとりあえず平静を装う。
まぁ、夢と思ってくれれば幸いだからな。


カネ
「ふ〜ん? そんなに私の胸は感触良かった?」


バレてんじゃねぇか!!
つーか、そう言えばコイツは人の頭ん中とか探れんだっけか!?
完全に忘れてたぜ…隠す意味も無かった。


カネ
「もう…こそこそ触る位なら、堂々と触ってくれれば良いのに」

大護
「いや、まぁそうなんだが…一応ここは他の目もあるから、な?」


まぁ、多くの人間は気にもしてないみたいだが。
席は何だで満席だし、とりあえず会話は気を使わないとな…


カネ
「ふふ…降りたら楽しみね♪ 私が、大護の赤ちゃん最初に産んで、ア・ゲ・ル♪」


そんな甘い言葉をカネは俺の耳元で呟く。
ついでに耳を甘噛みされた、俺の体温は確実に上昇した事だろう。
こりゃ下手したら押し倒されかねんな…覚悟はしておこう。



………………………



ニューヨーク…PKMの数は日本に比べれば圧倒的に少なく、ましてや広大なアメリカ大陸ではそう狙ってPKMに会う事は非常に稀である。
そんな環境でありながら、一般のPKMよりも簡単に遭遇出来る伝説のポケモンが、そこにはいるとの情報があったのだ。


大護
「この辺りか…」

カネ
「随分、寂れた…って言うか、活気の無い所ね」


俺たちは空港からバスを使って移動し、とりあえず目的地のスラム街へと辿り着いていた。
ここは、いわゆる貧民街と言う場所で、いわゆる世間からはみ出しもの扱いされてる連中が集まる街だ。
アメリカは自由の国と言いつつも、それは力が有る者の話に適用される
逆に言えば、力の無い者は淘汰されるのも宿命だ。

だが、ここではそんな中でも、希望を失ってない者の集まりに俺は見えた。


大護
「…目が死んでねぇな」

カネ
「目?」

大護
「少なくとも、この街に住んでる奴らは他のスラムの奴らとは違う」
「ここまで、目に命が宿ってる奴は、ほんの一握りなのがこの界隈なんだがな…」


少なくとも、この街の人間は俺たちを見て訝しげな目をしてる。
人生を諦めた奴なら、気にもしねぇはずなんだ。
カネは活気が無いと言ったが、俺には逆に見える。
これ程、住民に活気があるスラム街は見た事が無ぇ。



「よお、オッサン…随分良い格好してるが、もしかして日本人か?」
「黒人の女はべらせて、こんなスラム街に何の用だい?」


俺たちに突然英語で絡んで来たのは、黒人の少年だった。
見た感じ、高校生位か…着ている服は他の連中よりもしっかりしてる、さしづめグループリーダーって所か。
しかし、改めて見るとカネってやっぱり普通の黒さじゃないよな…
やっぱカネはアメリカ黒人っていうより、アフリカ系の黒人に感じる黒さだ。
まぁ、それでも美人には違いないがな。
ちなみに、今の俺たちは偽装の為にスーツ姿で移動してる。
端から見たら金持ちっぽく見えるのは当然だな。
カネは元々人間に近い姿だから、偽装すりゃ人間にしか見えない。
ボロさえ出さなきゃ、素人は騙せるだろ…


大護
「ちょいと人探しでな…この辺で医者見習いのPKMって知らねぇか?」

少年
「PKMだぁ? ホリィさんの事か?」


そういや、現地ではそんな呼び方されてるんだったな。
とりあえず早くも目的に近付けた様で何よりだ。
ちなみに、俺はこれでも会話だけならほとんどの言語を話せる、読み書きは流石に限界があるが…まあ英語ならほぼ大丈夫だ。
とまぁ、そんな俺の英会話でとりあえず話を進める事に…
カネは完全に?を浮かべており、意味不明だと言うのが良く解った。


大護
「ああ、間違いなくその人だな、PKMなんだろ?」

少年
「こんな廃れた街で医者やってる酔狂なPKMは、ホリィさんくれぇのモンだよ」
「まぁ、俺たちにとっちゃ天使みたいな人だけどな!」


天使…ねぇ。
コイツらは知らねぇんだろうな…その人がモノホンの神様扱いされてるって事。
だが、悪くない。
コイツは少なくとも、その神様相手に物怖じもしてねぇんだ。
そんだけ、その神様は人懐っこいんだろうな。


大護
「良かったら居場所教えてくんねぇか? 金は出すぜ?」

少年
「その前に、アンタら何モンだ?」

大護
「おっとそうだったな…俺らはこういうモンだ」


俺はあらかじめ用意していた偽の名刺を少年に渡してやった。
そこにはこう書かれている、出梵(でぼん)コーポレーション、代表取締役 石蕗 大五郎(だいごろう)と…
ちゃんと英語でもルビ振られてるから理解は出来るはずだ。


少年
「成る程、日本企業の社長さんか…それでまた何でホリィさんに?」

大護
「将来有望な医者がこんな所で頑張ってるってんだ、支援したいって思う社長さんだっているんだぜ?」

少年
「へぇ、そりゃ奇特な社長さんだ…で、こっちの頭の悪そうなのは社員か?」


カネはプルプル震えながらも我慢していた。
会話は解らなくても心の中は読めるから、感情位は理解してるのか…
とはいえ、流石に問題起こすわけにもいかず、カネはただ黙っていた。
そんなカネを見て俺は軽く微笑んでこう紹介する。


大護
「コイツは俺の妻だ、石蕗 カナ…アフリカ系の黒人でな、英語は話せねぇが出来の良い女だぜ?」


あくまで設定だがな。
とはいえカネも満更ではないみたいだし、最低限の演技は出来てる。
少年も特に怪しむ事は無く、肩を竦めて両手を上げた。


少年
「…まぁ、人の趣味にどうこうは言わねぇさ」
「解ったよ、悪い奴らじゃ無さそうだし、案内してやる」
「それよか、しっかり報酬頼むぜ?」

大護
「悪いな、奮発してやるからよろしく頼むぞ?」


俺はそう言って100$札を1枚渡した。
すると、少年は口笛を吹いて喜ぶ。


少年
「ヒュ〜♪ コイツぁ本物だ! 良い日に出会えたモンだぜ!」


俺たちは気を良くした少年に案内され、スラムの街を闊歩する。
やはり、この街は活気に溢れている。
殺伐とした空間の中に、コイツらは命が燃えているんだ。
ホリィさんねぇ…俄然興味が湧いて来たじゃねぇか!










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第2話 『十柱調査依頼』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/22(月) 11:01 )