突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語 『Avenger The After』 - 『Avenger The After』
第14話 『姉よ、妹たちよ』
ディアルガ
「ルナアーラ…アンタ、本物?」

琉女
「とりあえず、営業中だから今は黙れ」


そう言って琉女ちゃんは、この上ないスマイルを提供していた。
葛から話は聞いてから、何となくは想像してたが、ホントにちゃんと店員やってんだな〜
しかも、注目の的じゃねぇか…ちょっとしたアイドルだぞ、これは?

俺はそう思いながらも、何を食おうか考えていた…


ティナ
「とりあえず、石蕗さんは何にします?」

大護
「何にすっかな〜この時間は朝メニューしかねぇし、腹に貯めるなら、メガ系かね〜?」


俺はディアルガをとりあえず無視し、メニューに目を通す。
この店はいわゆる大手のチェーン店で、この時間帯だと朝専用メニューしかやってないのだ。
なので、ぶっちゃけ腹一杯食いたい場合はちょっと考えなければならない…
俺は少し唸りながらも、とりあえず何にするかは決めた。


大護
「ビッグ○レックファストDXのセットにするわ」

ティナ
「わ…それって1番高いのですよね?」

大護
「その分量もあるからな」

琉女
「ありがとうございます♪ お飲み物はいかがなされますか?」

大護
「俺はコーヒーで良い、常葉さんは?」

ティナ
「あ、じゃあ私もそれで」

琉女
「ふたつともコーヒーですね! ビッグ○レックファストDX、セットワ〜ンコーヒー! ベーコン○ッグ、セットワ〜ンコーヒー!」


琉女ちゃんはニコニコスマイルで可愛く伝える。
その瞬間、場が一気に和んだのを感じた。
錯覚じゃない…確実に今空気が変わった!
客どころか、店員までにこやかになってんじゃねぇか…すげぇなルナアーラスマイル!


大護
「ほれ、お前はどうするんだ? 好きなの頼めよ…金は払ってやる」

ディアルガ
「よく、解んないし…とりあえずティナと一緒ので良いわ!」


ほう? 気が付けば常葉さんの事はティナ呼びか。
何だかんだで意識はしてるってこったな…
俺は軽く笑いながら、もうひとつ注文を追加してやった。


やがて段々と増える客を眺めながら、俺たちは出来上がるのを待っていた。
その際、琉女ちゃんのやたらと特徴的な接客が炸裂し、客はニコニコ顔でそれを見ているのを俺たちは目撃する。

あれ、テンプレートなのか?
この店って、そういう接客教えてんの?
つか、ハンバーガー店で店員がメニュー決めるって、どういうスタンスなんだ?

俺は疑問ばかりが浮かぶものの、琉女ちゃんのスマイルと客の満足度を秤にかけた時点でどうでも良くなった。


大護
「…あんだけ嬉しそうなら、接客ルールとかどうでも良いのか」

ティナ
「ですね…本当に楽しそうで、ちょっと羨ましいかも」

ディアルガ
「…あのルナアーラが、あんな厨二だったなんて」


ディアルガはそこそこショックを受けていたみたいだ。
あんな姿の琉女ちゃんを見たのは初めてで、今までのイメージが全部崩れたって感じだな…
まぁ、俺には良く解かんねぇけど、以前の琉女ちゃんはどんな感じだったのやら?

そんな感じでしばらく待つと、やがて注文の品が完成する。
俺たちは比較的空いている方の席を選び、そこで3人座って飯を食う事にした。



………………………



ティナ
「あ、これ美味しいです…」

ディアルガ
「まぁまぁかな…要は肉とタマゴだし」

大護
「感性の違いだな…同じ物を食ってんのに」


少なくとも、ディアルガは良くも悪くもなく…という感じだった。
常葉さんは美味しそうに食べており、こういう食事自体が珍しいのかもしれない…

ちなみに俺はガッツリ食って、しっかり腹は満たす派だ。
味はまぁ無難だが、悪くはねぇ。
良くも悪くも、定番の味だからな。



「お、そこにおるのはディアルガではないか!」

ディアルガ
「ああん? って、アンタはソルガレオ!?」
「何でアンタまでこんな所にいんのよ〜!?」


俺たちがゆっくり食っている最中、ひとりの大女が声をかけてきた。
手にはトレーが乗っており、そこには大量のマフィンが乗っていたのだ…
あれ、全部ひとりで食うのか? 俺より多いな…

ちなみに、俺はこの女は知ってる。
つっても、あくまで葛から聞いた話でだが…
現在の名前は夏川 天海、ソルガレオのPKMで、元十柱の神様だった女だ。
彼女は長袖の作業服に、やや汚れの目立つズボン、首にはタオルをかけており、いかにも今から仕事って格好だった。


大護
「アンタが夏川さんか…会うのは初めてだな」

天海
「ハッハッハ! 天海で良い!! 堅苦しいのは苦手だ!!」


そう言って豪快に笑う天海。
彼女はそのまま、空いている俺の隣に堂々と座った。
俺は少し驚くも、天海は気にせずにマフィンを食べ始める。


ディアルガ
「…アンタまで名前貰ってたの?」

天海
「んぐっ…! うむ、今はひとりの男の妻として日々働く毎日だ!」


天海はマフィンをひとつ口に放り込み、軽く飲み込んでからそう言い放つ。
それを聞いて、ディアルガは思いっきりコーヒーを噴いた。
隣の常葉さんは驚くも、すぐにテーブルを備え付けの紙ナプキンで拭く。
やるな常葉さん…ありゃ完全に主婦の反応だ!


ディアルガ
「つ、つつつ、妻ぁ!?」

天海
「何を驚いておる? 名を貰った以上、生涯を尽くすのは当然だろう?」

大護
「……ちょっと待て、それどういう意味だ?」


俺は唐突に不穏なワードをキャッチし、思わず天海に聞いてしまう。
すると、天海は笑いながら軽く良い放った。


天海
「この世界において、ポケモンが名を貰うという事は、いわゆる契約を表す」
「それは、神々の王が作った制約であり、絶対の理」
「何人たりとも、それに逆らう事は出来ぬ」


俺はそれを聞いて軽く冷や汗を流す。
名を与える事は、契約…ね。
成る程、ピースのデレッ振りはもしかしてそれが原因か?
いや、あいつの場合はちょっと違うか?
バグってんのかどうか知らねぇが、本人でも解らん挙動があるらしいからな…


ディアルガ
「…まっ、王が消えたこの世界じゃ、もうその制約も無いでしょ?」

天海
「確かに! まぁ、その辺は俺の価値観だ!」
「俺にとって、慎吾はそれだけの価値ある男というだけよ!!」


ふーん、今じゃ既に無効ね…だったら気にするこたぁ無ぇか。
天海は少なくとも、自分の意志でそれを選んだって風だし、本人も満足しているみたいだ。。
なら、他人が口出せる領域じゃねぇだろ…ましてや、夫婦の関係なんだから。


ティナ
「………」

大護
「ん? 常葉さん、どうかしたのか?」


気が付くと、常葉さんが少し俯いていた。
その姿は、何かを思い出し、何かを悔やむかの様な…そんな、悲壮な顔に見える。
俺は思わず息を飲んだが、常葉さんはすぐに顔を上げて口を開いた。


ティナ
「…やっぱり、王は戻っていないのね?」

ディアルガ
「そうよ…唐突に消えて、そっから音沙汰無し!」

天海
「俺たちはそのまま神の座から降り、こうやって人間と生活を共にしているというわけだ!」

大護
「王…ねぇ」


そういや、ゼクロムの奴もそんな事を言っていたな。
神々の上にはそれを造った奴がいて、今は消えちまったって。
それが原因で十柱はバラバラになったって話だが…


大護
「…常葉さんも、その王ってのに関係があるのか?」

ティナ
「…いえ、直接関係が、とは言えませんが」
「すみません、私も詳しくは…」


俺は、あ〜と良いながら手を振る。
態度が露骨すぎて、逆に申し訳なくなるわ!


大護
「言いたくないなら言わなくて良い、そこまでして聞きたいわけじゃねぇし」

ティナ
「……はい」

ディアルガ
「…ふん」

天海
「何だディアルガ? お前も折角日本に来たのなら、伴侶のひとりでも見付けてみたらどうだ?」


天海が笑顔でそう言うと、ディアルガは顔を赤くしてすぐに反論する。
ガキだな…この手の話題は苦手と見た!
その点、常葉さんや天海を見ろ!
既にふたりとも既婚者で、この余裕!!

いや〜人生って、ちょっとしたキッカケでこんなに差が着くんだなぁ〜


ディアルガ
「ふ、ふざけないでよ!? 何で私が人間なんかと…!」

天海
「存外悪くは無いぞ? むしろ、慎吾は良く愛してくれるし♪」

大護
「おっと、既に経験済みか? 常葉さんも娘さんいるなら当然か?」

ティナ
「い、いえ!? そ、その私は………まだ」


あらら? 何か思った反応と違うな…?
とはいえ、俺は理奈ちゃんの見た目年齢から色々想像してみた…


大護
「…まさか、連れ子だったのか? もしかして再婚?」

ティナ
「い、いえ…娘は、その、いわゆる養子で」
「結婚自体は…まだ、してないんです」


おっとと…どうやら、かなり早とちりしていたらしい。
あんな幸せそうな顔をしてたから、てっきりラブラブな夫婦でやりまくってんかと思ったが…偏見だった様だ、こりゃ申し訳無ぇな〜


大護
「あ〜何か、悪い事言っちまったな…悪ぃ」

ティナ
「…いえ、詳しく言わなかった私が悪いので」

ディアルガ
「…ふん、何よ人妻に興味あるの〜?」


ディアルガは、何故か頬を膨らませて俺を睨む。
何か不満がある様だが、それにしたって言い方があるだろうに。


大護
「俺は人間の屑でエロいのは大好物だが、人妻には絶対に手ぇ出さねぇ」
「それに、下手に出したら暴君が何するか…」


むしろそっちの方が恐怖だわ。
あいつ、一度暴走したら一国位軽く消し飛ばすからな〜
前例あるだけに、シャレにならん。
つーか、ピースってぶっちゃけ、どの位強いんだろうか?
羽黒の野郎は、相当規格外って言ってたが…
少なくとも、CPにしたら24000とか言ってたし、並みじゃないのは確かだろうが…


ディアルガ
「ふん…人間の男ってホント性欲の塊よね〜」
「気を付けないよティナ? 何かされそうになったら、ソッコー私がぶちのめしてやるから!」

ティナ
「ふふ…大丈夫だよ、石蕗さんはとても良い人だから♪」


そう言って常葉さんは、両手の指と指を口元で重ねて笑った。
くっそ〜可愛い仕草で言いやがって…そこまで信用されてるとは思わなかったじゃねぇか。

こりゃ本当に手は出さねぇ様にしねぇと。
俺は心の中でしっかりとロックをかけ、エロい事は自粛しようと決めておく。


天海
「はははっ、ディアルガは相変わらずみたいだな…」
「琉女なんて、あんなに楽しそうに接客してるというのに…」
「いや、琉女だけではない…俺も、少しは変わったのかもしれん」
「きっと以前なら、人間に惚れる事など考えもしなかっただろうからな!」

ディアルガ
「何よそれ…? アタシが、前に進んでないとでも言いたいの?」

天海
「違うのか?」


天海はあっさりとそう言う。
ディアルガは反論する事も出来ずに、押し黙ってしまった。
図星か…しかも、自覚はあるっぽいな。


天海
「お前は、十柱の中でも1番最初に飛び出したろうに…」

ディアルガ
「………」

天海
「その癖に、自分だけでは道も見付けられんか?」
「まぁ、お前だけに限った問題では無いが、それでも考える時間はそれなりにあったろう?」
「パルキアなんか、1番心配していたぞ?」

ディアルガ
「…解ってるわよ、それ位」


ディアルガは俯いてコーヒーのストローを咥える。
そして行儀悪くブクブク音を立て、自分は悪くないとでも主張しているかの様な態度だった。


大護
「まぁ、ガキンチョにはもう少し余裕を与えやりゃ良いさ…」

ディアルガ
「ちょっと!? 誰がガキンチョよ誰がっ!?」


お前以外に誰がいるんだよ…とは思いつつも、俺は口には出さなかった。
代わりに大きくため息を吐いてやり、『人生』の先輩としてこう言ってやる。


大護
「良いか? お前が何百、何千年生きていようが、それに経験が伴わなけりゃ、無駄の一言だ」
「お前は人間よりも長生きして何を学んだ?」
「俺たち人間は、100年も生きれるか解らねぇ程度の寿命だ」
「それだけに、俺たちは毎日毎日を必至に生きてる…」
「それこそ、今日の昼飯はどうしようか?って、細かい目先の事考えたりする位にはな…」


俺はそう言って、残りの朝食を一気に平らげる。
ちょっと言い方が悪かったか?
我ながら変な例えだったかもしれねぇ…
とはいえ、ディアルガを見てると、昔のルザミィを思い出して仕方無ぇからな…

あいつも、仕事仕事でゆとりのひとつも無く、プロ意識にこだわるあまり、人間関係を疎かにして失敗しやがったからな…
確か、あいつにも同じ様なこと言って笑われたっけか…
もっとも、その時のあいつの笑顔は、良い顔だったがな♪


ディアルガ
「…何よ、それ」

天海
「言葉通りだろう? 俺たちは確かに長寿だが、人間社会の事は何ひとつ解っていない」
「そして、この世界で生きるには、それが必須だ」
「俺は、働き始めて知ったよ…人間は、こんなにも色んな事を考えながら生きているのだと」

ティナ
「そうですね…確かに人間の1日に比べたら、私たちの1日はあまりに怠惰だったのかも」

大護
「だが、今は違うだろ?」
「それは、そんだけふたりが経験を積んだってこった♪」


俺はウインクして笑い、コーヒーを飲む。
すると、常葉さんも天海もふたりで笑っていた。
笑えていないのは、相変わらずディアルガだけ…か。


ディアルガ
「………」

大護
「ほら、さっさと食え…お前だけだぞ? まだ食ってねぇの…」


ディアルガは言われてハッシュドポテトをかじる。
やれやれ、本当にガキンチョだな…顔に出すぎだ。


天海
「さて! 俺は仕事だから先に出る!!」

ティナ
「そうですか…頑張ってね♪」

大護
「おう、事故には気を付けろよ?」


天海は上腕二頭筋を盛り上げて筋肉で答える。
いわゆる、バック・バイセップスのポーズだな。
片手しか上げてないから、ダブルでは無いので要注意だ。
改めて良い筋肉だな…鍛えられてるのが解る。
ありゃボディビルじゃなく、格闘家とかのそれに近いタイプだ。
戦ったら、相当強いんだろうな〜

と、俺が考えていると、天海はそのままゴミをゴミ箱に捨て、トレーを指定の場所に戻して店を出て行った。


大護
「しっかし、建設現場の職人たぁ、立派なモンだな〜」

ティナ
「そうですね、人間の世界はいつでも工事がありますし、必ず必要な人材ですもんね〜」


確かに、体張った仕事でもあるし、続けるってなるとそれなりにキツイ職業だからな…
まぁ、その分給料も良い仕事だから、生活に余裕は持てるだろうがな…


ディアルガ
「…ティナも、仕事とかしてるの?」

ティナ
「…ううん、今はまだ」
「でも、やりたい事は…あるよ?」


常葉さんは、少し照れ臭そうな顔でそう答える。
やりたい事…か。
まぁ、今時主婦だけでやってける程日本の税金は安くねぇからな…
今や日本は世界でも屈指の重税大国だ…秋にはまた税金も上がる可能性があるらしいし、そうなったらまたランキングは更新しそうだな。


大護
「ちなみに、やりたい事ってのは?」

ティナ
「はい…実は、花屋をやろうかと思って」


常葉さんは頬を微かに赤らめ、顔を俯き気味にしてそう言った。
嬉しそうだな…花屋、か。


ディアルガ
「…アンタ、花とか好きだったの?」

ティナ
「そういうわけじゃ無いんだけど…プロポーズの時に、花束を貰ったから」
「それが、とても嬉しくて…私も、そんな風に誰かを幸せに出来る様な、花を育てて、誰かにあげられたらって…」


成る程、旦那さんはよっぽどのロマンチストか何からしい。
ちょっと妬けるな…この嫁さんに、そこまで強い印象を刻み付けるたぁ、罪作りな旦那さんだ。
しかし、今時花屋か…経営とか、そんな上手くやれるモンかねぇ?


ディアルガ
「…そう、アンタが自分で決めたなら、アタシは何も言わないわ」

大護
「何を偉そうに…その前にお前が就職先でも見付けろ!」


俺はそう言ってトレーで軽くディアルガの頭を叩く。
すると、ディアルガは子供みたいに怒り、俺に詰め寄って来た。
カカカ…本当にからかい甲斐がある奴だな♪

俺はそんなディアルガを軽くいなし、ゴミをゴミ箱に捨ててトレーを指定の場所に置く。
常葉さんはそんな俺たちを見て、優しく微笑むだけだった。

そして、俺たちは賑やかになった駅前の街を3人で歩く…



………………………



ティナ
「えっと、名残惜しいですけど、私はそろそろ帰りますね?」

大護
「ん…そっか、じゃあまたな」
「姉ちゃんの事は任せろ♪」


常葉さんは、お願いします♪と、笑顔で主婦らしく礼をして背中を向けた。
ホンット、良い奥さんだな…ピースもあれ位淑やかならなぁ〜


ディアルガ
「…ティナ、本気で幸せになったのね」

大護
「ああ、よっぽど良い旦那さんと出会ったんだろ♪」
「どうだ? 妹に先越される気分は?」

ディアルガ
「う、うるさいわね!? わ、私だってその気になったら良い男のひとりや、ふたり…」


そう言ってすぐに張り合おうとする。
出来もしない事をいけしゃあしゃあと…そういう所がガキだってのに。
まぁ、俺からしたら、可愛らしい妹みたいなモンか…

俺は末っ子だったから、姉はいても弟妹はいなかったからな…
そういう意味じゃ、新鮮な感じもする…


大護
「…お前は、まだやりたい事は無ぇのか?」

ディアルガ
「…解らない、でも妹には負けてられないし」


ほう、少しは前向きになれたか?
それなら、少しは良いレポートが書けそうだな♪


大護
「さって、今日は仕事の予定も無ぇし…どうやって過ごすかな?」

ディアルガ
「何よ…? アンタ、プータローなの?」

大護
「しっつれいな!! 人には言えねぇ仕事なだけだよ!!」

ディアルガ
「人に言えない〜? ま、まさかAV男優!?」
「もしかして、アタシのこの美ボディを狙って!?」


ディアルガはそんなアホな事を良いながら体をくねらせる。
俺は一気に冷めて、片手で頭を抱えながら首を横に振った。


ディアルガ
「ちょっと!? 何よその憐れむかの様な諦めた顔は!?」

大護
「身体は確かに大人だが、いかんせん性格がなぁ〜」
「せめて常葉さん位恥じらいを覚えろ! そしたら抱いてやっても良い…」

ディアルガ
「だ、誰が抱いてほしいって言ったのよ!?」


何だ、そういう意図じゃなかったのか?
てっきり、興味あって言ってるのかと思ったが…
まぁ、俺はまだ本番出来るとは思えねぇがなっ。


大護
「やれやれ、ホントガキっぽいはお前は…」


「否定は出来ませんね…我が姉ながら」

ディアルガ
「げっ!? アンタ、パルキアァ!?」


それは、突然だった。
俺にすら気配を感じさせず、容易に背後を取ったその女は、どこかディアルガに似た雰囲気を持っている。
髪型は全然違うが、胸元の宝石みたいな特徴は一致してる…これが、パルキアってポケモンなのか?
しかも、ディアルガが姉って…


パルキア
「申し訳ありません、姉が粗相をしたみたいで…」


そう言ってパルキアは丁寧に頭を下げる。
これまた、常葉さんとは別ベクトルに大人しそうな娘だな。
…お陰で、余計にディアルガのガキっぽさが浮き上がるんだが。


ディアルガ
「パ、パルキア…アンタ、どうしてここに?」

パルキア
「…ディアルガ、君は本当に何も解ってないんだね?」


パルキアはそう言って、かなり怒ってるかの様な雰囲気を醸し出す。
それは俺にまで解るレベルの怒りで、プルプル肩を震わせてるパルキアは相当お怒りの様だった。
そして、その怒りは真っ直ぐに姉であるディアルガに向けられる。
当のディアルガは、そのパルキアに対し、やや慌てている様だった。
そして、パルキアは既に業を煮やしたのか、ディアルガに対してこう言い放つ。


パルキア
「君は本当に…! 心配ばっかりかけて〜!!」

ディアルガ
「ちょっ!? ま、待ちなさいよ!? こ、こんな所で力使ったら、人間に被害が……」


ディアルガが苦しい言い逃れをしようとするが、瞬間、何か空間が切り替わったかの様な感覚に陥る。
確か、パルキアは『空間ポケモン』…成る程、これがその能力か?

見た目は普通の現実世界に見えるが、ごった返してた人々も、車も、喧騒も、環境音全てが消え、この世界には俺たち3人だけが残される。
見事なモンだな…まるで『○ィバイディングドライバー』みたいな効果か?
俺の仕事の助手に欲しい位だな…


ディアルガ
「嘘ぉっ!? ここまでするぅ!?」

パルキア
「君には少しお仕置きが必要だ!! 覚悟してよね!?」


パルキアはディアルガの慌てっ振りを無視して、周りの空間から多数のナイフやら剣やら槍やらを出現させる。
あ、何かどっかで見た事ある気が…?


ディアルガ
「ゲェッ!? 『王の財宝』!?」

パルキア
「ターゲット…マルチロック!!」


色々ツッコミ所だが、とにかくパルキアが出した得物が、全てディアルガに向く。
ちなみに対象はひとりだから、マルチロックになってない。
本来なら複数同時に攻撃出来そうなのは確かだが…

俺はとりあえず暇になりそうだったので、ポケットからタバコを取り出して一服する事にした。


大護
「ふ〜…」

ディアルガ
「ちょっとアンタ、手ぇ貸しなさいよ!?」

大護
「アホか、自業自得だろ…テメェで何とかしろ」


俺は煙を噴きながら無情にそう言う。
ディアルガは、器用に瞬間移動しながら全弾回避している…無駄に器用だな。

まぁ、そんなこんなで10分程やりあった所で、ディアルガは疲れきったのか、うつ伏せに倒れて降参した。
パルキアも少しは怒りが収まったのか、ディアルガに得物を寸止めした状態で息を吐く。

やれやれ…



………………………



ディアルガ
「本当に申し訳ございませんでした」

パルキア
「はぁ…もう、2度と勝手に消えないでよ?」
「ボクがどれだけ心配したか…!」


ディアルガは、仁王立ちして腕組みするパルキアの前で、土下座して謝った。
相当肝を冷やした様で、ディアルガはプルプルと体を震わしている。
これじゃ、どっちが姉かマジで解かんねぇな…


大護
「お前どんだけ妹に迷惑かけてんだ?」

ディアルガ
「うっさいわね!? アタシにも事情があんのよ!!」

パルキア
「…で、どんな事情があってひとり飛び出したのかな〜?」


そんなドスの効いた声に、ディアルガは、はは〜と平伏する。
笑顔でプレッシャー放ってやがる…こりゃまだお怒りみたいだな。


パルキア
「…君が何を考えているかは解らないけど、それでも一言位は言ってよね?」

ディアルガ
「わ、悪かったわよ…」


ディアルガは罰の悪そうな顔で立ち上がる。
少し涙目になっており、相当堪えた様だな。
これで少しはマシになりゃ良いが…


大護
「…で、おたくがパルキアって元神なんだよな?」

パルキア
「あ…はい、そうですけど」
「そういえば、貴方は? どうしてディアルガと一緒に?」

大護
「たまたまさ…仕事の一環でな」
「まぁ、個人的に興味があったのは否定しねぇが」

ディアルガ
「きょ、興味〜!? やっぱりアタシのナイスバディが目的だったのね!?」


俺はタバコを噴かし、興味無さそうな顔で空を見上げる。
造られた空って感じで、空気が流れている様にも見えねぇな…
タバコの煙も、息の吹き掛けでしか流れねぇし、妙な感覚だ。


パルキア
「…あの、本当に体目当てで?」

大護
「真に受けるな!! どう考えても、興味無さそうな顔してスルーしてるだろっ!?」


パルキアはパルキアで、変な感性持ってるみたいだな…
かなり心配そうな顔で言われたぞ!?
俺はそんなにエロオヤジに見えるのかっ!?

くっそ〜そこまで言われるなら、いっそ隙突いて乳揉んでやれば良かったな…
何気に揉み甲斐のありそうなモンはそこにあるんだし…


ディアルガ
「むぅ…こんな稀代の美少女目の前にして、何でそこまで興味無いのよ?」

大護
「あのな…別に興味が無いわけじゃねぇの」
「お前の性格が興味を失わせるんだ…察しろ」

パルキア
「あ、はは…思ったよりもドライなんですね」


パルキアは空笑いしつつも、安心はした様だ。
性格って点なら、こっちの方がそりゃ好みだわな…
こっちのはディアルガよりも良さそうな体してるし♪(無論エロい意味で)


ディアルガ
「ちょっと! パルキアをエロい目で見ないでよ!?」

大護
「だったら少しは妹を参考にしろ…テメェの体で引き寄せりゃ良いじゃねぇか?」
「まぁ無理だろうがな…」


俺が挑発的に笑って言ってやると、ディアルガは露骨に顔を真っ赤にしてプルプル震える。
お? 対抗心でも燃えたか?


ディアルガ
「上等じゃない! だったら見せてやるわよ、このアタシの美ボディを!!」

パルキア
「えっ!? 脱ぐの!?」


ディアルガはそう言って、ジャンパーを脱ぎ捨てて半袖のシャツ1枚になる。
俺は思わず、おおっ?と注目してしまった…男のサガだ、これは仕方無い。


ディアルガ
「……コギ、プル……コギ、プル…」

大護
「………」
パルキア
「………」


それは、ディアルガの全力だった。
ディアルガはやや前屈みになり、両手を前に軽く突き出してプルプル震えている。
その際、表情はダルそうにしながらも、いかにも必至そうな顔にするのがポイントだな。


ディアルガ
「コギ…プル……」

パルキア
(何、コレ?)

ディアルガ
「コギ……」

大護
「オイお前、全然出来てねーな?」

ディアルガ
「っ!? す、すみません!! 大事な妹が病気で、アタシ、アタシ…!!」

大護
「…体に気を付けろよ」

ディアルガ
「ありがてぇ…! ありがてぇ…!!」

パルキア
「いや、何このくだり!? コレ意味あるの!?」


あるわきゃねーだろ。
つーか、何でこんな微妙に反応しづらいネタを振るかな…
もはや美ボディもクソも無ぇ!

…俺も人の事は言えんがな!
くっそ〜ネタ神の野郎、俺にまで毒牙にかけやがって…


大護
「ちっ…やっぱ変な奴だよな、お前は」

ディアルガ
「余計なお世話よ! 目は引いたでしょ!?」


そりゃ引くだろうよ! しかし、ネタを振り撒くな!!
読者のどんだけが今のネタ理解してくれると思う!?
ったく…今時、アレ覚えてる読者がいるのか?


パルキア
「はは、は……はぁ」


パルキアは空笑いしながら、最後に思いっきりため息を吐いた。
こりゃ、まだまだ苦労させそうだな…このダメ姉貴は。
俺は吸殻を携帯灰皿に捨て、頭を抱える。
しかし…これで結果的に仕事は後、ひとりか。


大護
(しかも、ルザミィと一緒に日本にねぇ〜)


俺は、最後のターゲットを頭に思い浮かべ、ようやく依頼の終了が見えてきたのを理解する。
そうか…もうすぐ終わるのか。
時間かかった様で、思ったよりも早かったかもしんねぇな〜

そして俺はそこから先の事を考えて、何も浮かばなかった。
まぁ、割といつもの事なんだが…この辺は行き当たりばったりだからなぁ〜

俺はそんな風に結論付けると、気を取り直す。
とにかく、今は目の前のふたりだ。
しっかりとレポートに纏めねぇとな…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第14話 『姉よ、妹たちよ』


To be continued…

Yuki ( 2019/11/20(水) 23:06 )