『Avenger The After』
第13話 『ディアルガは静かに暮らしたい』
ピース
「ダイゴ! とりあえず、どっちの炒飯が美味しかったんですか!?」

蛭火
「まぁ、アンタのが炒飯かどうかは置いておいてね!」

大護
「ふむ…」


俺はとりあえず、折角貰った常葉さんの炒飯を食っていた。
うむ、間違いなく美味い!
これは、そんじょそこらの腕じゃあない!
かなり良い腕だな…一流の料理人が作る味によく似てる。

しかし、そういう意味では庶民的な味とは言えねぇか。
良くも悪くも、万人受けするか?と言われたら、少々疑問は浮かぶかもしれねぇ。


大護
「勝者、常葉さ〜ん」

ピース
「がくっ! 第三者に負けたー!?」

蛭火
「…まぁ、ティナが相手なら認めてやりますよ」
「あの女、例のウツロイドに師事してやがりますからね!」


ふーん? とにかくまぁ、そのティナってギラティナさんは良い腕ってこったな。
やれやれ…これも縁と言うのか、それとも何と言うのか。


大護
(神の番外か…リストに載ってたってこたぁ、十柱調査に関係してるのか?)


あくまでリストに載ってたってだけで、実の所調査対象じゃないんだが…
可能なら、頼む…って程度の件だ。
つまり、可能と言えば可能…さて、どうするかね〜?


細歩
『…? 大護、何を気にしてるの?』

大護
「いや、大した事じゃねぇさ…」
「それより、久し振りに皆で飯だ! 新しく入った奴もいるし、今夜は騒ごうぜ!!」

紫音
「さんせーい! オジさん、私がお酌してあげるねっ♪」


そう言って紫音ちゃんは瓶ビールの栓を開け、俺のコップに注いでくれる。
俺はそれを飲み、とりあえず一息着いた。


大護
「かぁ〜! 日本のビールも久し振りだな!」

セーラ
「へぇ、日本の中華って、中国の料理とはまた違うのね…」

蛭火
「当然ですよ…日本には日本独自の味付けがありますし」

カネ
「やっぱり、私は日本の食事が良いわね〜」
「アメリカやイタリアの料理は美味しかったけど、それでもここの味がやっぱり好みね♪」


そんな感じで、俺たちは楽しく夕飯の時間を過ごした。
ピースも何だかんだで家事はやっていたのか、料理自体はそれなりに出来ていたみたいだ。

次々と出て来る中華料理の数々に、俺たちはそれぞれ舌鼓した…



………………………



大護
「とまぁ、久し振りに騒いだぜ…」


「みたいやな…とりあえず安心したわ」


あれから時間も経ち、今は深夜帯。
俺たちはいつもの神社でまた会合をしていた。
とりあえず、互いにタバコを吸いながら情報の交換。
そして、俺は改めてリストを確認する。


大護
「…つー事は、これで未確認なのはイベルタルとディアルガ、パルキアの3人だけか」


「…その事なんやがな、どうもイベルタルらしきPKMが日本に来とるらしい」


俺はギョッとしながらも、葛の真面目な顔を見て気を引き締める。
イベルタルが、日本に…?
放浪癖があるって聞いてたが、また偶然にしては出来すぎだな。


大護
「…どこにいるんだ?」


「東京の官邸付近や、どうもイギリスからの旅客機で来たみたいやな」

大護
「イギリスだとぉ〜? わざわざそれで日本に何しに来たんだ?」


仮にも元神の一柱が、一般人に紛れて旅行気分かぁ?
聞いてた話じゃ、風来坊でどっちかつーと危険人物寄りのはずだが…



「…理由は知らん、ただそこにはルザミィらしき女がおった」

大護
「!?」


俺は絶句する。
そして目を細め、やや俯いて考えた。
ルザミィが、来てるのか…?
それも、イベルタルと一緒に…?



「どうせ、連絡も無いやろ? こっちからかけても応答せんし」

大護
「あのバカ、何考えてやがる?」


どうせルザミィの事だ、仕事絡みだろうが。
しかし、官邸ってこたぁ日本政府からの依頼か?
キナ臭い感じがしてくるな…



「ルザミィの事や、俺らに迷惑はかけたくないんやろ…」

大護
「だろうな、ったく不器用な女だぜ」


あいつは強がりが過ぎるからな…分不相応だとしても、自分の力で何とかしたがる。
親友に位、頼りゃ良いのによ…



「ふふ…その人はきっと、おふたりの事が大事なのでしょうね」

大護
「あんたは…って、その腹」


「こんばんわ、造はん♪ 大分、大きなって来ましたな…」


そう、現れたのは前と同じ服に身を包む長身の女性。
しかし、その腹は膨れており、間違いなく妊婦のそれだと俺は確信していた。
あれから約半年か…だとすると、出産もそれ程遠くないのか?



「…お久し振りです、大護さん」

大護
「あ、ああ…そうだな」


俺は、タバコを握り潰して携帯灰皿に捨てる。
そして、何となく…顔が見づらかった。
別に後ろめたさとかは無いんだが、ただ何となく、だ。


大護
(造さん、妊娠してたのかよ…)


意外ではあった。
何を考えているか全く読めない人ではあったが、まさか妊婦だとは本当に予想外。
しかし、それ自体は実におめでたい事で、俺は少し苦笑してしまった。



「…どうか、しましたか?」

大護
「いんや…こんな美人の妊婦ひとりに掃除押し付けて、旦那のバカは何やってやがるのかと気になってな」


俺が皮肉を込めて言ってやると、造さんは口に手を当ててクスリと笑う。
やれやれ、冗談って訳でも無いんだが…



「造はんの家庭は、事情有りや…俺らが口出せる領域や無い」

大護
「何だよ、お前は知ってるって顔だな?」


「…逆や、何も解らんからそう思うんや」


俺はそれを聞いて言葉に詰まる。
葛の奴がそう言うってのは、ことのほか重い言葉だ。
葛は世界中のネットワークを介して、有りとあらゆる情報を入手する情報屋。
つまり…この世界において、葛以上に情報を持ってる存在はいないという事だ。

その葛を持ってして、何も解らない…と言いやがった。
それはつまり、この造さんは相当なイレギュラーだって事だろう。



「…申し訳ありません、私から言える事は何も」

大護
「…構いやしねぇさ、人には誰でも秘密はある」
「ただ、必要ならいつでも言ってくれりゃ良い…」
「俺みたいな屑の力で良いなら、いつでも依頼は受けてやる」


俺がそう言って目を逸らすと、造さんは小さく微笑む。
そして自分の腹を優しく擦り、我が子に何かを伝える様に目を瞑った。
俺はその姿をチラ見し、また考える。

人の親、か…


大護
(あいつも言ってたな、子供が産まれるって)


そして、俺は気付いてしまった。
いや、疑問に思ったと言うべきか?
それが思い付いた瞬間、俺は様々な疑問のピースが浮かび上がる。
それらは全く噛み合わなかったはずのピースなのに、形が変わってハマったかの様な…そんな感覚。

俺は、思わず葛にこう聞いた…


大護
「…おい、葛」


「ん? 何や?」

大護
「今回の依頼、依頼者の名前は誰だった?」


「…若葉 育美って、謎の主婦や」
「忘れてたんか? 調査リストにも書いといたやろ?」


若葉…若葉?
これは、偶然なのか?
確か、あいつもその名字だった…


大護
(若葉…討希)


思えば、疑問はあった。
何故あいつは俺の名を知っていたのか?
これが偶然じゃないとしたら、意図的に仕組まれた依頼だったのか?
いや、仮にそうだったとして、依頼主に何のメリットがある?

討希は少なくとも、俺の仕事について知らなかった。
だとしたら、名前は聞いていたにせよ、計画的な何かを画策していたとは考え難い。


大護
(そして、アルセウスか…)


それは討希の奥さんであり、あいつの大事な女性。
一方、十柱にとっては統率者であり、神のリーダー。
それが…若葉 育美の正体なのか?



「…? どないしたんや、やけに考え込んで」

大護
「…どこまで、考えてんだろうな」


俺は誰に対してでもなく、そう呟いた。
繋がったピースは、更なる疑問を呼ぶ。
そしてそれは、一体何を求めている?


大護
「…この依頼、何が目的だと思う?」


「単純に、生活環境が知りたいとか、そんな感じの内容やで?」
「興味本位で知りたいって風や無いのは確かやろ…」


そりゃそうだ、仮にも神の統率者が興味本位は有り得ねぇ。
それこそ、知りたいなら自分でやりゃ良い話だ。
何でわざわざ俺らに頼む? それも裏の人間である俺らに?

考えれば考える程、腑に落ちない。
しかし、逆に裏付ける事もある。
それは……


大護
「俺を、試してやがるのか?」


「は? 試すって、何を?」


俺が聞きたい位だがな。
それ位、曖昧な感覚だ。
とにかく、神の統率者がわざわざ俺をご指名してくれてんだ。
理由が無きゃその必要は無い。

その理由は…何だ?



「…大護さん、今は自分に正直になってみては?」

大護
「自分に? 俺がらしくないって言うのかい?」


「はい…少なくとも、私にはそう見えます」


造さんは微笑みながらも、優しく告げる。
らしくない…ね。
俺は軽く頭を掻き、今までの旅を振り返った。

すると、どうだろうか? 笑いが込み上げて来る。
俺は、今まで会って来た神の連中を思い出す度に、吹き出しそうになるのだ。


大護
(そうか、そうだな…答えは、あいつらが出してくれてるのか)


どいつもこいつも、人間みたいに考えて、悩んで、苦労してんだ…
アルセウスは、それを俺に見せたかったのかもしれねぇな…
そして、そんな不器用な神様たちに俺を会わせたかったのか。

そう思うと、確かに俺はらしくなかったと思えた。
疑問の答えは全部、ここまでの旅が語ってくれてる。
もしかしたら、黒い計画が動いてるのかもしれないが、それは多分依頼主とは関係無いんだろ。


大護
「すまねぇな、造さん…気が楽になったぜ」


「いえ、そう言っていただければ、幸いです」


造さんは本当に謎だらけだな…
葛でも一切情報が無い上に、進んで俺たちに関わろうとしている。
本当に…誰なんだろうな? こんな良い奥さん放置してるクソヤロウは…



………………………




「……ふふ、本当に彼に頼んで良かった」


「で? わざわざ呼び出した理由は?」


大護さんと葛さんが帰った後、私は箒を両手で持ちながら後の気配に振り向く。
そこには、月明かりに照らされた、ひとりの美女が嫌そうな顔で立っていた。

身長は170cm、髪は暗い青色で、ストレートの長髪。
胸にはダイヤモンドが埋め込まれており、人によってはそれを金剛石とも言う。
すなわち、彼女は人にあらず…そう、まさにポケモン。

服装はどこにでもありそうなフォーマルファッションで、青のジャンパーに白のシャツ。
ズボンは藍色のジーンズを履いており、靴は動きやすそうなスニーカー。
思ったよりも服装は現代的に纏めていますね…



「答えは出ましたか、ディアルガ?」

ディアルガ
「そんなのは知らない、何の為にやってんの?」
「少なくとも、王が消えて神を降ろされ、アンタは一体何がしたいの?」


ディアルガは、鬱陶しそうな顔で私を睨みながら言う。
彼女は私の事を快くは思っていない、本来なら呼びかけた所でここには来なかっただろう。
ですが、彼女は今ここにいる…それが私にとっては答えなのだ。



「王が消えた理由などは、正直どうでも良い事」
「むしろ、喜ばしいとすら思っているのでありませんか? 特に貴女は…」

ディアルガ
「私が聞きたいのは、そういう事じゃない!」
「揚げ足を取るな! 質問に答えなさいよ!?」
「いつもそんなんだから、私はアンタが嫌いなのよ『アルセウス』!!」


彼女は堂々と私の正体を高らかに叫ぶ。
やれやれ…一応隠しているのだけれど。
この娘は、いつまで経っても反抗期ね。



「…では、質問に答えましょうか」
「私の目的は、幸せになる事ですよ」

ディアルガ
「はぁ…? アンタが、幸せ…?」


ディアルガは呆れた顔でそう言う。
まぁ予想していた反応ですが。
私は軽くため息を吐き、自分のお腹を擦る。
そうすると、軽く反応が帰って来る。
私は、そんな我が子を想い、ただ微笑んだ。



「…所詮、神などという物は幻想に過ぎない」

ディアルガ
「…アンタがそれを言うの? 完璧とさえ称えられた、神のアンタが!?」


「それは、誰が決めましたか?」

ディアルガ
「…っ」


ディアルガは黙る。
何故なら、それを語っているのは、神である自分たちに他ならないからだ。
少なくとも、私は人間にそう言われた事はほとんど無い。



「私は、今が幸せですよ」
「結果として、計画は無駄に終わった…ですが、それももうどうでも良い」

ディアルガ
「だからアンタは墜ちたの!? 代表でありながら、部下を見捨てて人と同列に墜ちたのか!?」


「…ふふふ、貴女がそんな事を考えていたとは」

ディアルガ
「…っ!? 可笑しい!? アンタたちの無責任さが原因で、私たちはこうやって途方に暮れてるのよ!?」


私は口元に手を当てクスクス笑う。
そして、私は懐から数枚の写真を取り出し、それをディアルガに見せた。


ディアルガ
「何よ、これ…?」


「見たままですよ、それが『今』です」


私が渡した写真は、大護さんたちが撮ってくれた十柱たちの物だ。
全員分ではないが、それでもディアルガを震えさせる事は出来たらしい。



「皆、それぞれ自分で決めて自分の道を選びました…」
「パルキアも、ついこの間会いに来ましたよ?」

ディアルガ
「!? パルキア…が」


「あの娘も、自分で考えて決めると言ってくれました」

ディアルガ
「嘘…でしょ? あのパルキアが、自分で?」


そう思うでしょうね。
パルキアは良くも悪くも依存症の神。
全てを放り出されて、立ち上がれるとは私も思ってなかった。
最悪、大護さんに会えば何とかなるのでは?と思ったけれど、予想に反し、あの娘は自らの意志で立ち上がったのだ。

親として、こんなに嬉しい事は無かった。
あの娘はもう大丈夫…そして、残った問題はこの娘だけ。



「…ティナの事は、許してくれとは言いません」

ディアルガ
「アンタは、いつもそうだ…何も言わない癖に、人には無茶振りを押し付ける」


「ですが…あの娘もまた、幸せを見付けてくれました…」

ディアルガ
「…それに関しては、不問にしてあげるわ」
「あの娘が幸せになれるなら、私はそれで良いから」


ディアルガは、とにかく妹思いだ。
それだけに、妹が幸せならそれで良いと思うタイプ。
そこに、自分の幸せは無いとしても…



「…ディアルガ、貴女もどうか幸せになってほしい」

ディアルガ
「止めてよ…私の柄じゃない!」
「…これからどうすれば良いのよ? 私は、どうしたら……」


ディアルガの姿は虚ろだった。
絶望している訳じゃない。
自由はむしろ望んでいたはず。
しかし、いざ自分ひとりになったら、どうすれば良いのか解らなくなったという所か。



「ディアルガ、石蕗 大護という人に会いなさい」
「貴女の道は、きっとその人が示してくれるわ…」


ディアルガは黙って俯く。
そして数秒後、時空を超えて消えてしまう。
理解はしているはず…後は、お願いします、大護さん。



………………………



大護
「…ん?」


それは朝日が差し込む時間。
俺はふと目が覚め、頭を掻きながらあくびをする。
時間は…5時半かよ。
もうこの時間でも朝日が差し込むのか…季節の流れを感じるねぇ〜


大護
「ちっ、2度寝するのも面倒か」


俺はとりあえずタバコに火を点け、部屋の窓を開ける。
そして、煙を外に噴き出し、しばしボーッとした。
鳥のさえずりや虫の鳴き声が聞こえる。
もう少ししたら夏か…そうなったらまたやかましくなるな。



「アンタが石蕗 大護よね?」

大護
「!? な、何だテメェ?」


気が付いたら、窓の外に人がいる。
宙に浮いてるのか…? 青髪の女で、胸に何か埋め込まれてる?
そいつは俺の答えを無視しながら、窓を潜って部屋に入って来た。
俺はタバコを咥えながら、部屋の中に後ずさる。



「…ふぅん、シンプルな部屋ねぇ」

大護
「おいおい、いきなり何の用だ? 朝っぱらから寝込みを襲うつもりだったのか?」


「あら、流石に私みたいな美女相手なら抱きたくなる?」


女は体をくねらせて、それっぽく振る舞う。
が、俺は特に反応せずに、タバコを噴かしてこう言った。


大護
「ふー…悪いが俺はトラウマがあってな、女抱ける勇気はまだ無い」


「はぁ? トラウマって…度胸無いわねぇ〜まぁ、冗談だけど」


だろうな、明らかにおちょくってる顔だったからな。
本気ならもう少し反応出来たんだが、冗談なのが解ると萎えるだけだ。
俺はタバコを灰皿に捨て、息を吐く。
やれやれ、面倒事か。



「…アンタ、変な人間ね?」

大護
「かもな…ろくでもない人種なのは確かだ」
「で? わざわざ来た理由は何だ? 誰か殺したい相手でもいるのか?」


「な、何よそれ…? そんなの、いないけど」

大護
「…って事は、依頼関係じゃねぇのか」
「訳解かんねぇな…何しに来たんだお前?」


「私が聞きたいわよ…アンタに会えって言われたから来たんだけど?」


俺は、はぁ?と言って呆れる。
依頼でもねぇのに、会えと言われた?
一体誰がそんな事を? いや、そもそも何を期待してコイツはここに来たんだ?


大護
「ちっ、面倒そうだな…まぁ、良い」
「とりあえず外に出るぞ? 着替えるから出てろ…」


「はいはい…分かったわよ」


女はそう言ってまた窓から出て行く。
ここって3階なんだがな…そうポンポン空飛んで良いモンなのかね?
俺はため息を吐きながらも、さっさと着替えをすまして家の外に出た。



………………………



大護
「ふぁ〜あ」


「ちょっと、止めてよ…こっちまで眠くなるじゃない」

大護
「知るかっ、生理現象だ!」

ティナ
「あ、石蕗さん…おはようございます♪」


俺は階段を使って下に降りると、常葉さんに挨拶される。
手にはゴミ袋を持っており、今からゴミ捨てに行くみたいだ。


大護
「ああ、おはよう…朝から大変だな」

ティナ
「いえ、もう慣れましたので…」


「嘘…アンタ、ギラティナ……?」

ティナ
「え…?」


それは、俺も予想出来ない事態だった。
どうやら、このふたりは知り合いらしく、互いの顔を見て固まってしまったのだ。



………………………




「…そう、そうだったのね」

ティナ
「まさか、こんな所で会うなんて…」

大護
「まさか姉妹たぁなぁ〜世間は広そうで狭いな」


あれから話を聞いてみたら、どうやら青髪の女はディアルガと言うらしく、まさかの元神だった。
そして常葉さんとは姉妹で、ディアルガの方が姉だという。
見た目だと、どう見ても常葉さんの方が大人に見えるがなっ。


ディアルガ
「アンタ…アルセウスを恨んでないの?」

ティナ
「…そんな感情は、この半年でもう無くなったわ」
「今の私は、常葉家のティナ…」
「それ以上でも、それ以下でもない」

大護
「恨み辛みなんざ、持たねぇ方が良い」
「特に、血の繋がった相手なら尚更だ…」


俺は、過去の記憶を掘り起こしてそう言う。
俺自身、復讐に全てを費やした屑だ。
だからこそ、その惨めさも知ってる。
そんなのは、このふたりには似合わねぇだろ。


ディアルガ
「…アンタに何が解るのよ?」

大護
「知らねぇさ、だが家族全員ぶっ殺されて、復讐に人生費やした経験はあるぜ?」


俺の呆れた顔を見て、ディアルガは少なからず退く。
俺の目は、それだけ空虚だったんだろうな…
復讐したのは良い、だがその後の虚しさも、また言い難い何かだったからな…


ティナ
「石蕗さん…」

大護
「あんたは俺みたいになるな、幸せになれ」
「今があるなら、それで良いじゃねぇか…それが幸せだと思えるなら尚更だ」
「もし、それを邪魔しようとするバカがいるなら、そん時は俺に言え…」
「そうしたら、俺が代わりに守ってやる…」


俺はそう言って先頭を歩く。
常葉さんとディアルガは互いの顔を見て、何かを考えている様だった。
そして常葉さんはひとり吹き出し、笑い始める。
ディアルガは?を浮かべ、ひとり理解していない様だった。


ティナ
「ふふ…ありがとうございます、石蕗さん」
「やっぱり、理奈が言って通り…間違って無い」

ディアルガ
「…何、それ?」


常葉さんは笑顔を見せ、早足で俺の隣へ走る。
そしてニコニコしながら、俺の左手をそっと握った。
俺はドキリとし、思わず手を引いてしまう。
だが、常葉さんはそれでも俺の手を逃がさず、両手でしっかり握り締めた。


ティナ
「確かに、この手は血に染まっているかもしれない」
「でも、この手は私たちの様なポケモンでも、等しく守ってくれる、優しい…手」

ディアルガ
「…!! アンタ、どうしてそこまで…?」

ティナ
「私は、今が幸せだから」


常葉さんの言葉は、ディアルガに突き刺さった様だった。
そして、ディアルガは俯いて悩む。
コイツは、どうやらまだ自分の気持ちが理解出来ないらしい。
神としての生き方が抜けきって無いんだろうな…


大護
「よし! ディアルガ、朝飯食いに行くぞ!?」

ディアルガ
「え、えっ!?」


俺はディアルガの方に走り、空いている右手でディアルガの手を取って引く。
ディアルガは慌てるものの、常葉さんがディアルガの手を取る事でディアルガは少し安心する。
俺はカカカ…と笑いながら、とりあえず歩き出した。
何だか面白くなって来やがった…!
調査の事もあるし、もう少し関わってみるかな…?



………………………



ディアルガ
「で、アンタも付いて来て良かったの?」

ティナ
「うん、家には連絡入れてあるし、私も興味あるから♪」


俺たちはとりあえず駅前に着いていた。
この時間で飯食える店なんて数が限られてるからな…


大護
「とりあえず、牛丼かハンバーガーならどっちが良い?」

ディアルガ
「えっと…それなら、ハンバーガー…かな?」

ティナ
「良いですね〜私も食べたいです♪」


常葉さんは思ったよりもマイペースだな。
しっかり楽しむ気みたいだし、良い傾向だ。
対して、このお姉ちゃんは酷く頼りない。
本当に常葉さんの姉か? 血繋がって無ぇんじゃねぇのか



大護
「まぁ、良いか…とりあえずそこの店で良いな?」

ティナ
「あ、あのお店有名なんですよ? この時間は空いてるし、チャンスかも♪」

ディアルガ
「有名、ねぇ〜? 別に普通のハンバーガー店みたいだけど」


俺も詳しくは知らねぇんだよな〜
そもそも、久し振りに日本に帰ったし…有名店とか全く解らねぇわ。
とりあえず、常葉さんはノリノリだし、入ってみるかね?



………………………



大護
「さて、何食おうか……」

店員
「いぃらっしゃいま〜せ!! よくぞ我が暗黒の晩餐に来たな!?」
「今なら、新たに召喚した純潔の精霊が味わえるぞ!?」
「限られた時間のみに現れ、その身が朝日に包まれた瞬間にのみ、その精霊力は黒に染まる!!」
「さぁ!? 勇気ある者はその身に刻め!!」
「これこそが! ベヒーモス・ブラッド・エンチェンター!!」

ティナ
「あ、じゃあ私それが食べたいです♪」

大護
「良いのかよ!? 得体の知れねぇメニューだぞ!?」

ディアルガ
「つーか、ルナアーラじゃないのさーーー!?」


とりあえず、にわかに大騒ぎになってしまった。
どうやら、2度ある事は3度あるらしく、俺はまたしても世界の狭さを痛感する事になったのだ…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第13話 『ディアルガは静かに暮らしたい』


To be continued…

Yuki ( 2019/11/13(水) 21:52 )