『Avenger The After』
第11話 『不器用な神様たち』
『イギリス ロンドン』


グレートブリテン及び、北アイルランド連合王国…これ等を構成するイングランドの首都。
イギリスやヨーロッパ域内で、最大の都市圏を形成している街だ。

ロンドンはテムズ川河畔に位置し、2000年前のローマ帝国による、ロンディニウム創建が都市の起源とされる。
ロンディニウム当時の街の中心部は、現在のシティ・オブ・ロンドンにあたる地域にあった。
シティの市街壁内の面積は約1平方マイルあり、中世以来その範囲はほぼ変わっていない。

少なくとも19世紀以降、ロンドンの名称は街の市街壁を越え、開発が進んだ周辺地域をも含めて用いられており、市街地の大部分はコナベーションにより形成されているとされる…



………………………



ルザミィ
「…そう、それはそう設定して」

イベルタル
「………」


私たちは、現在ロンドンのカフェで食事を取っていた。
とはいえ、時刻は15時過ぎでどちらかというと軽食メイン。
やや早めのアフタヌーンティーを嗜んでいる所ね。


イベルタル
「………」


イベルタルは、真剣な顔でスマホを弄っている。
私が持っていた予備の物を彼女にあげたのだ。
結局、あれから月日も経ち、今はすっかり4月の中旬。
ロンドンの気候はまだまだ暖かいとは言いづらく、現在の気温は最高気温でも17℃程。
日差しが無い所では、まだまだ上着を着ていなければ寒いわね…


イベルタル
「…これで、電話とやらが出来るのか?」

ルザミィ
「そうよ、試しにかけてみて?」


イベルタルは教わった通りにスマホを操作し、私に電話をかける。
すると、何の当たり障りもないプリセットの着信音が鳴り、私はそれに応答した。


ルザミィ
「どう? 聞こえる?」

イベルタル
「ああ…理解した」


そう言ってイベルタルはスマホから耳を離し、通話を切る。
とりあえず、これだけでも理解してもらえたなら十分ね。
もっとも、イベルタルは私から離れようとはしないから、どこまで意味があるのかは未知数だけど…


ルザミィ
「とりあえず、それは貴女が持っておきなさい」
「電話をかけるだけなら、いくらでもかけて良いから」
「インターネットも出来るけど、あまりイタズラに使わないようにね?」

イベルタル
「分かった、任せておけ」


イベルタルはクールな低音でそう答える。
この娘は不器用だけど、とにかく真面目で何にも真剣よね…
見た目のキツさが災いしてるのか、どうにも近寄りがたい雰囲気があるのだけれど、根はそんなに悪くも無い。
ここまで一緒に過ごして来たけど、別に嫌ではなかった。

むしろ、彼女は私から色んな知識を盗んで成長していく…
気が付けば驚かされる事も多いし、彼女自身、既に日常で人と過ごす術は得ているのかもしれないわね…


ルザミィ
「それじゃあ、ティータイムにしましょ♪」
「この店の紅茶とケーキは美味しいわよ?」

イベルタル
「…そうか」


イベルタルは無愛想だけど、特に問題無く食事は取る。
元々、破壊を司る神とは聞いていたけど、その力はまさに人知を超えたレベルの物。
触れる事すら無く人を殺す事も出来、ある意味最高の暗殺能力を持っているとも言えるでしょうね。

しかし、そんなイベルタルにもちゃんと食事の好みはある様で…


ルザミィ
「ふふ、気に入ったみたいね?」

イベルタル
「…悪くはない」


そう言って、イベルタルは甘いイチゴが乗ったケーキをフォークで刺して食べる。
ちょっと前までは手掴みで食べていた娘が、今は優雅にティータイムをこなしているのを見て、私は思わず笑みが零れた。
そして、思い出す…あの時の日々を。


ルザミィ
(もう、4月か…)


大護と別れて…もう、そんな春の季節。
時間が経てば想いは消えていくと思ったけど、どうやらそんな簡単な話では無かったと、今では思わされてしまう。

だけど、出来れば会いたくはない。
今の私はどこから狙われるかも解らないし、イベルタルは既にアメリカから監視を受けている。
今でも、どこからかで見られており、私はあくまで平静を保ってそれ等を対処していた。
私の顔はどうせ知られているだろうし、下手に手を出しても逆効果だ。
それなら、今はイベルタルを私のパートナーとしておいた方が良いと私は判断した。
私が手綱を握っている…そう思わせておけば、アメリカも少しは安心する事でしょうし。


イベルタル
「…気になるのか?」

ルザミィ
「少しね…でも問題無いわ」


私は笑って優雅に紅茶を飲む。
きっと…端から見たら、美女ふたりの優雅なティータイムに見える事でしょう。
イベルタルも今は綺麗な洋服で着飾っており、イメージを崩さない程度のコーディネイトで佇んでいる。
個人的にはやや男性的な服装が似合っていると思ったけど、それは想像通りで良かった感じだ。


ルザミィ
「貴女の事は、私が最低限何とかしてあげるわ」

イベルタル
「今更だが、何故だ? ここまでする理由は無いだろう?」


私はやや小声で呟く。
イベルタルも同じ様にトーンを落として呟き返した。
私はクスリと笑い、カップに口を付けて紅茶を飲む。
そしてカップから口を離し、微笑んで私はこう言った。


ルザミィ
「理由は出来たわよ…貴女は、一時でも私のパートナーなんだから」

イベルタル
「勘違いするな、私が納得しない限り、死ぬまで追い続ける」


つまりは、一時じゃなくて死ぬまでの付き合いって訳ね…
私は口元に拳を当てて笑い、そんなイベルタルを面白く思った。
きっとイベルタルも、もう理解はしている。
私が決して真相を話さない事も、そして原因は何も知らない事も…

ただ、彼女は私に何かを求めている。
形すら曖昧なそれに惹かれ、彼女は私から離れようとはしなくなったのだ。

ある意味、私はそんなイベルタルが娘の様にも思えて来た。
親の姿を見て育ち、そこから成長していく…
年齢的には私の方が遥かに年下だけど、人生の経験者としては私の方が上だしね。


ルザミィ
「死ぬまで…か」
「いつかはきっと死ぬのよね…やっと、そうなれる」

イベルタル
「…話す気は無いのだろう?」


私は無言で頷く。
カップをテーブルに置き、私は両腕をテーブルに置いて少し俯いた。
そして思い出す…あの無限とも思える地獄を。

何度死んでも、同じ時間にループする。
何度繰り返しても、どこかで死が訪れる。
私はそんな地獄から這い出て来た、異端の存在。

全ては終わり、私は地獄から解放された。
その原因を作った者に対して、私は別に恨みは無い。
既に終わった事だし、結果的には全てが良い方に向かったのだから…


ルザミィ
(ピース…平和、か)


それは、大護がひとりのPKMに付けた名前。
平和という意味を込めた、この世でたったひとつの真名。
彼女は今、幸せに暮らしているのだろうか?


イベルタル
「…もう食わないのか?」

ルザミィ
「…えっ? あ、そうね…」


私がやや曖昧に答えると、イベルタルは残りのケーキも食べてしまった。
ああ見えて、意外に甘い物が好きな様で、イベルタルは無表情に残りのケーキを平らげる。
見た目からは、全く美味しそうに食べている風には見えないけど、それでも気持ち嬉しそうには見える…気がした。


ルザミィ
(見た目は可愛いのにねぇ〜)


どっちかと言うと格好良いとも言うけれど…
ボーイッシュな服装に身を包ませているから、どっちとも取れるか。



………………………



イベルタル
「それで、今度は何の仕事をするつもりだ?」

ルザミィ
「ここでの仕事は終わりよ…次は、日本に向かうわ」


私たちはロンドンの街を歩きながら会話をする。
極力小さな声で、顔を会わせずに会話をし、周りからの注目は極力避けた。
今でも監視の目はあるだろうし、勘ぐられない様にしないとね…

ここは人の通りも多く、観光客も大勢いる。
流石に首都だけあって、人の目はごまんとあるのだから。


イベルタル
「日本…か、意図的に避けていた様だったが?」

ルザミィ
「そうね…でも仕事だもの」
「あまり後回しにするのも印象悪いし、そろそろ受けておかないとね…」


私はため息を吐いてそう言う。
そう、私はその依頼を意図的に避けていた。
日本に渡れば、大護たちと出会う可能性も高いし、こちらとしては出来れば会いたくない。
会いたいのは本音だけど、それは避けたいのだ。

とはいえ、日本は未だに重要な機密が眠る国でもある。
今回の依頼はお得意のアメリカから直接だし、監視の取り巻きもあるから、これ以上は断れないしね…


イベルタル
「…そうか」


イベルタルは表情ひとつ変えずにそう答える。
特に意見も無いのだろう…彼女は付いて来るだけなのだから。
しかし、果たして大丈夫なのだろうか?
日本には多くのPKMが存在しているけど、イベルタルに何か影響を及ばさないかは、少し心配だった。


ルザミィ
「……!?」


そして、突然の違和感。
私が横にいるイベルタルを見た瞬間、全ての景色が停止してしまった。
いや、あくまでそう形容しただけだ。
少なくとも私が今見ている『空間』は、あまりに異質。
環境音が完全が途絶え、人混みも全てが消えている。
空気の流れや、気温すらも固定されている様で、私は自ずとこの状況に馴染む程、冷や汗が出ているのを感じた。


イベルタル
「…何の用だ?」


「おい、カネがたんねーぞ!?」
「…って、そんなネタを振るのはディアルガの役目だよね?」


イベルタルは背後を振り向き、体を横に構えてひとりの少女を見る。
身長は170cmも無い位で、髪はパールホワイトのショートヘアー。
服装はボーイッシュな物で、イベルタルに比べても更に男性的。
まるで寒さなど感じない…そんな風なイメージすら取れる白のタンクトップとピンクの短パンを身に付け、少女は少し険しい顔でイベルタルを睨んでいた。

タンクトップは首元から胸元までVネックになっており、豊満な胸元が若干目立つ。
そして、そんな胸の中心には真珠の様な宝石が埋め込まれており、彼女の異質さを際立たせた。


ルザミィ
「…イベルタルの知り合いみたいだけど、目的は何かしら?」


「…人間に本来興味は無いけれど、君に聞いてみたい事はある」
「だから、ボクの空間に入ってもらった…」


少女は無感情な声でそう言う。
やや機械的なイメージも受けたけれど、イベルタルのそれに比べたらやや業務的な印象だ。
強いて言うなら、どこかの会社の受付嬢…みたいな感じかしらね?


イベルタル
「…もう1度聞く、何の用だ『パルキア』?」

ルザミィ
「パルキア…!? 彼女が…?」


私が露骨に驚くと、パルキアと呼ばれた少女は少し目を細める。
その視線は明らかな敵意を持っているものの、まだ直接攻撃の意志は見せていなかった。
イベルタルはくだらなさそうにため息を吐き、斜めに俯いて言葉を放つ。


イベルタル
「…わざわざ面倒な真似をして結構な事だが、ルザミィに手を出すなら、お前を殺す」

パルキア
「本来なら異端者扱いで即処刑だね…だけど、そんな処断を下す神も、もういない」


イベルタルの脅しにパルキアは一切動じない。
むしろ、やるなら容赦はしない…そんな雰囲気すら漂わせていた。
イベルタルも若干の警戒を見せ、全身から黒いオーラを放ち始める。


イベルタル
「…聞きたいのはそれじゃない」
「これ以上無駄口を叩くなら、貴様を殺して外に出るが?」

パルキア
「それが君に出来る? この空間において、君たちは既に心臓を握られているも同然だ」
「ボクがその気になれば、君が何かをする前に消せるよ?」

イベルタル
「なら、試してみるか? ただし、一撃で仕留められないならお前の死は絶対だ…」


ふたりは段々と気を大きくしていく。
何だか、完全に殺し合う気みたいだけど、本気なのかしら?


ルザミィ
(イベルタルは本気でしょうね…全く)


私は少し呆れてしまった。
イベルタルは不器用すぎて、どうにも感情のコントロールが出来ていない。
自分がこうと決めたら絶対に退かないし、それが適解じゃなくても貫き通そうとする。
無駄や面倒は嫌う性分なのに、自分の前に現れた障害を避け様とはしないのだから…


パルキア
「…君は、変わった様で変わってないね」

イベルタル
「遺言はそれで終わりか?」

ルザミィ
「もう良いわよイベルタル…オーラを消しなさい」
「彼女は貴女を試しただけよ…」


私はそう言ってイベルタルを宥める。
パルキアはため息を吐いて首を横に振った。
彼女からはもう殺気は感じない…初めから脅すだけのつもりだったのだろう。


パルキア
「相変わらず不器用だね…真っ直ぐ最短距離を進む事しか考えてない」

イベルタル
「………」


イベルタルはオーラを消して少し目を瞑る。
言われて思う所はあるって感じね。


ルザミィ
「それで、話を聞きたいんじゃないの?」

パルキア
「うん…君は、何者だい?」

ルザミィ
「何者って…人間以外に見える?」


私が肩を竦めてそう笑うと、パルキアは困った顔をする。
本人にも良くは解っていないのか、まるでその疑問を探しているかの様だ。


パルキア
「人間…か」
「確かに、そのはずだよね…」

イベルタル
「お前も、何かを感じるのか?」

パルキア
「おぼろ気だけどね…何故かディアルガと同質の何かを感じるんだ」

ルザミィ
「………」


私は表情を変えずに少し考える。
ディアルガとは、確か時間を司る神だ。
あのパルキアとは対になっており、世界を創造した神のひとりと言われている。
そんな神と同質の何か…か。


ルザミィ
(時間のループ…リアは知り合いの能力を借りて、それを実現したと言っていたけど)


恐らく、それがディアルガか何かの力なのだろう。
そして、その効果はもう既に無い。
だからこそ、今の私にはその残りカスの様な物が残留しているのかもしれない。

イベルタルたちは、それを感じ取って私に近付いて来たのかも…


ルザミィ
(だとしたら、それを言う事は出来ない)


これは私の一方的な約束だ。
リアの存在をこの世界に残してはならない。
彼女は、地獄の様な役目を終えて、やっと解放されたのだ。
それに巻き込まれた私は確かに不運だったけど、彼女が謝罪をした時点で、私は彼女を許した。
そして、彼女はこの世界を旅立った時点で、私以外の全てから存在を消したのだから…


パルキア
「君は、ディアルガに会った事は?」

ルザミィ
「あると思う? そんな神様みたいなポケモン、会えるなら会ってみたいわよ…」

イベルタル
「…嘘は言っていない、多分な」

パルキア
「…でも、この力の残留は」


パルキアもイベルタルも、それが何かは判断がしにくい様だ。
それだけ、リアが残した痕跡は曖昧な物。
恐らく、時間が経てばそれも完全に消えてしまうのだろう。
そして…それが無くなれば、彼女が私を狙う理由も無くなる。


イベルタル
「…パルキア、お前は手を引け」

パルキア
「どうして? 君にそれを決める決定権があるの?」

イベルタル
「少なくとも、お前には関係無いはずだ」


イベルタルは何を思ったのか、そんな事をパルキアに言う。
表情は何ひとつ変えず、あくまで冷静に。
パルキアはそんなイベルタルを見て、理解出来ないといった風に顔をしかめる。
イベルタルもまた、退くつもりは無い様だった。


パルキア
「イベルタル、逆に聞くよ…君にも関係は無いんじゃないのかい?」

イベルタル
「関係はある…こいつは私のパートナーだ」

ルザミィ
「…イベルタル」


私は少し顔を俯ける。
イベルタルは、恐らくパルキアを退かせる為にそんな嘘を吐いたのだ。
イベルタルの性格からして、そんな言葉を言うとは思えない。
ただ、パルキアが関わるのはイベルタルにとってあまり良い事でも無いのだろう。
だからこそ、イベルタルはそんな嘘を吐いてでもパルキアを遠ざけたいのだ。


パルキア
「パートナーだって…? 本気で言ってるのかい?」

イベルタル
「なら逆に聞く、何故疑問に思う?」
「私たちはもう神じゃない、なら…私が誰と組もうが、そんな物は私の勝手だろう?」


パルキアは悲しそうな顔をした。
まるで、信じていた物を否定された様な、そんな顔。
私はそれを見て思った…パルキアも、きっと不器用なのだ。
今まで神をやっていて、それが必要無くなった時、彼女は何をすれば良いか解らなくなったのだろう。
イベルタルもきっとそう…だけど、イベルタルは私と関わりを持った事で、自分なりの結論を出したのだ。

それが、嘘でも私と一緒にいる理由を作る事。


パルキア
「…ディアルガは、何も言わずにいなくなった」

イベルタル
「…だろうな、あいつなら嬉々として出て行っただろうからな」

パルキア
「でもっ! どうしてボクに何も言ってくれなかったの!?」


パルキアはここで初めて激昂する。
恐らく、溜め込んでいた感情が遂に爆発したのだろう。
少なくとも、パルキアにとってディアルガという存在は、それだけ大きな存在なのだ…
それがいなくなって、彼女はこんなにも苦しんでいる。


イベルタル
「お前たちの事情など知らん」
「ディアルガを繋ぎ止められなかったのは、お前の失態だろう?」
「そんな物、私には関係が無い…」


イベルタルは無情に吐き捨てる。
ふたりは仲間にも関わらず、全く見解が一致しなかった。
イベルタルは良くも悪くも自分本意、他者に対して必要以上な肩入れはしない。

だけどパルキアは違う…きっと何をしてでも、ディアルガに会いたいのだ。
それだけ、彼女は人間的な感情を持っているとも取れる。

私は…ここで初めてパルキアに歩み寄ってみた。
パルキアは警戒する事も無く、ただ頭を抱えて苦しんでいる。
涙を堪え、どうすれば良いか悩んでいる。
私は、そんなパルキアにこう声をかけた…


ルザミィ
「パルキア、貴女も独り立ちしてみなさい」

パルキア
「…他の神と同様に、神の席を捨てて人里に墜ちろと?」
「ディアルガは、もうこの世界にいないかもしれないのに!?」

ルザミィ
「あまり甘えるのは止めなさい! そして、人間を見下すな!!」


私はあえて強気に出る。
あくまで人間として、私はパルキアに怒りをぶつけた。
パルキアは思いの外驚いた様で、怒るでもなく、呆れるでもなく、ただ肩を落として震えている。
今の彼女には、全く神の威厳は無い。
ただ、子供の様に駄々をこねているだけだ。
大人になれない、子供のままの心で。


ルザミィ
「…パルキア、ここから先は自分で考えてみなさい」
「そして、自分で結論を出して、道を決めなさい」
「神なんて物は、人にとってはただの幻想…」
「私から見れば、貴女たちは子供と変わらないわ」

イベルタル
「……私を同列に見るなよ?」


イベルタルはそう言って、やや不機嫌そうな声を出す。
私は心の中で笑うものの、それを表情に出す事はしなかった。
きっと大護なら、腹を抱えて大笑いしてるでしょうね…


パルキア
「…自分で、結論を」

ルザミィ
「どれだけ時間がかかっても構わないわよ…? 貴女はそれだけの寿命もあるんだろうし」

イベルタル
「…ふん」


イベルタルはプイ…と顔を背ける。
自分の時と同じ様な事を言われ、少し不満なのかもしれない。
彼女としては、あまり誰かと比べられるのは気に入らないのだろう。


パルキア
「ディアルガは、自分で決めたんだよね…?」

イベルタル
「さぁな…少なくともお前とは真逆の判断を下すだろう」


パルキアは体の震えを止め、やがて顔を上げる。
そして、今度は真っ直ぐにイベルタルの顔を見た。
対するイベルタルは、そんなパルキアを無表情に見ている。


パルキア
「君は、それが答えなんだよね?」

イベルタル
「…そうだ、私は自分で選んだ」

パルキア
「…ディアルガも、自分で決めて出て行った」
「だったら、ボクも…そうするよ」

ルザミィ
「そうしなさい、そして…自分で考えなさい」
「人は確かに弱く、脆く、儚い…」
「でも、人は必至に生きているわ」
「神から見れば、一瞬の煌めきでも、人は全ての人生を賭けて輝いている」

パルキア
「………」

イベルタル
「解ったなら、さっさと空間を戻せ」


イベルタルがそう言うと、一瞬で私たちは元の空間に戻される。
急に環境音が鳴り響き、車や人の喧騒が耳に煩く感じた。
肌に突き刺さる風はとても冷たく、ロンドンの気候の寒さを改めて理解する。

パルキアは既にいなくなっており、私はふぅ…とため息を吐いてイベルタルを見た。
イベルタルも同様にため息を吐いており、まるで私の真似をしているかの様…
そんなイベルタルを見て、私はクスリと笑ってしまった。


イベルタル
「…何だ? 何が可笑しい?」

ルザミィ
「うふふ…別に? ただ、娘がいたらこんな気持ちになるのかな?って…そう思っただけ」

イベルタル
「…誰が娘だ? 私の方が遥かにお前よりも生きているが?」

ルザミィ
「でも、貴女は何も世間を知らない…」


私の答えに、イベルタルは反論も出来ない。
いくら年を取っていても、それがただの怠惰なら何の経験にもならないのだから。
例え寿命が短くても、その軌跡が濃密なら、それは立派な人生と言える。
逆に、何百、何千年と生きても、そこに価値が見出だせなければ、それは全くの無意味。

100年の無意味な人生よりも、1日の有意義。
私は、それを改めて感じた。
私みたいな裏の人間でも、それを感じられる。
それはある意味、イベルタルたちのお陰なのかもしれない。

確かに人間は小さな存在だ。
神からすれば、路傍の石以下の存在。
でも、それが理解出来ないなら、神も大した事は無い。
どれだけ人知を超えた力を振るえようと、人の心が動かせないなら、それは人にとって無価値だ。


ルザミィ
(リアは…それをよく知っていたんでしょうね)


だからこそ、彼女は足掻いた。
無理だとか、無駄だとか、そんな理屈すら退けて彼女は可能性を探した。
その結果、私が不幸になったとしても、彼女は諦めなかった。

そして、彼女は望んだ未来に辿り着いたのだから…


イベルタル
「…何を考えている?」

ルザミィ
「…そうね、次の仕事はどうこなそうかしら?」

イベルタル
「ふん…興味は無い」
「…が、私はお前を逃がしはしない、だから死ぬまで付いて行く」

ルザミィ
「…好きにしなさい、自分で決めた事なら、それが貴女の人生よ」


私は笑って歩き出す。
イベルタルも無表情に付いて来た。
次の目的地は、日本…久し振りね。
大護はピースちゃんと幸せに暮らしているのかしら?
葛君は、相変わらずかしらね?
私から会うつもりは無いけど、それでも期待は少ししてしまう。
運命がそうさせるなら、私も抗ってみましょう。


ルザミィ
(例え何があろうとも、大護の事は助けて見せるから…)










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第11話 『不器用な神様たち』


To be continued…

Yuki ( 2019/11/02(土) 19:40 )