『Avenger The After』
第0話 『大護と、その家族…』
ピース
「大晦日ですよ!? 年越し蕎麦はまだですか!?」

蛭火
「アンタはアホですか? 年越し蕎麦は年を越してから食うから年越し蕎麦なんですよ!!」

細歩
『まだ夜9時…5時間はあるね』

大護
「おい、お前ら! 少しは掃除手伝え!!」
「ただでさえ安物の賃貸なんだから、一斉清掃は重要なんだぞ!?」


俺は叫ぶ、そう今日は大晦日。
いわゆる、その年の汚れを清算する日らしいのだが、どいつもこいつも掃除しようとしやがらねぇ。
俺は似合わないと解っていても、三角頭巾に割烹着と、かなり場違いな殺し屋のスタイルで部屋中の埃を殺し回っていた。
ちなみに、ここはルザミィがかつて泊まってた部屋だ。
それなりに部屋の数も多く、4人で住んでもまだ部屋は余ってる。
ルザミィはひとりで住んでたみたいだが、明らかに広すぎだろ…


紫音
「もう〜! 掃除は重要なんだよ〜?」

大護
「全くだ! これからも4人で住んでいく拠点なんだから、少しは敬ってやれっての!」

蛭火
「はいはい、自分の部屋位はもう掃除してますよ…」

細歩
『うん、他の所は分担されてないしね…』

ピース
「それよりお腹空きました! 後5時間は持ちません!!」


良い加減しとけよお前ら!?
と言いたい所だが、蛭火と細歩はただでさえ働いて稼いでくれているだけに、俺もそこまで強くは言えないのは事実だ。
とはいえ、部外者の紫音ちゃんが手伝ってくれてるのに、ダラダラされるのはそれで問題だろ…


大護
「ピース、掃除やらないならお前は年越し蕎麦無しだぞ?」

ピース
「さぁ、やりましょう!! 全ての汚れはこの世から消し去りますよ!?」
「蛭火さん、細歩さん、やっておしまいなさい!!」

蛭火
「アホですか…それはアンタだけでしょうが?」

細歩
『私たちは、指示された場所は終わってるし…』


そう、一応蛭火と細歩は自分の部屋を掃除したのだ。
この中で何もしてないのは、暴君ただひとり…
俺は軽く睨み付け、ピースにアイコンタクトを送る。
ピースは露骨に不機嫌そうな顔をするものの、悪いとは思っていたのか、すぐに便所掃除に向かった。
やれやれ…手のかかる相棒だな。


紫音
「あははっ、オジさん苦労してるね?」

大護
「紫音ちゃんは良かったのか? お婆ちゃん退院したんだし、一緒にいてあげなくても…」

紫音
「うん、お婆ちゃんにはちゃんと許可貰ってるし」
「むしろ、お婆ちゃん凄く嬉しそうに送り出してくれるから、逆に私の方が心配になっちゃったよ…」


やれやれ…紫音ちゃんは紫音ちゃんで苦労してそうだな。
だが、紫音ちゃんがあえて俺の所にいてくれる事を選んでくれたのは、それなりに嬉しくはある。
もっとも、紫音ちゃんには俺の裏の仕事はまだ伝えてないんだがな…
出来れば、紫音ちゃんには知られたくねぇ。
紫音ちゃんはあくまでただの好意で一緒にいてくれるんだ。
事情を知ってる他の面子とは違うからな…


蛭火
「…大護、今夜23時に決行ですよ?」


蛭火は俺の横を通りすぎる際にそう呟く。
その声は小さく、他の誰にも聞かれてはいないはずだ。
そう、俺は今夜久し振りに『仕事』をやる。
金銭的な事情もあるし、依頼主の心に俺は動かされた…だから俺は受ける事にした。
まぁ何はともあれ、金は必要だからな…


大護
「…ああ、紫音ちゃんには知られるなよ?」


蛭火は無言で軽く多足の脚(頭から被ってる様に見えるアレ)を振る。
何だかんだで蛭火は気を使ってくれてるな…
あの性格だし、俺の仕事のサポーターとしては合格だ。
細歩もその辺は協力的で助かる。
特に、このふたりの能力は暗殺に向いてるからな…



………………………




「はぁ…はぁ…!! な、何でこんな事に!?」
「!? うっぎゃあああああぁぁぁっ!?」


深夜、人気の無い埠頭の倉庫内。
ターゲットの男は無様にコンクリートの床を転がる。
足元には蛭火が設置していた『毒菱』が多数落ちていた。
男はそれを踏み抜いてしまい、瞬時に毒に侵される。
あくまでこの毒は補食用の為の用途が主らしく、動きを止めるのが本来の目的だそうだが…
並の人間なら激痛でショック死する事もあるんだそうだ…おお怖い。


大護
「どうだ、追い詰められる気分は? お前が殺したPKMはそんな恐怖すら理解出来なかったんだぞ?」

蛭火
「クククッ! 何なら、内蔵溶かしてから美味しく吸い上げてやりましょうか!?」


蛭火は男の目の前で脚(多足で蛭火の本体を覆ってる物)を軽く開き、そうやって恐怖を煽る。
勿論、必要なら俺は蛭火を止める気は無い。
が、あくまで今回はギリギリまで追い詰めるのが復讐の内容だ。
依頼主の怒りは、それ程に重い。
可能な限り、後悔してから死ぬ様にと受けているからな…



「た、頼む! 俺が悪かった!!」
「もう、2度とPKMには手を出さない!! だから命は助けてくれ!?」

蛭火
「だそうですよ? コイツ、状況解ってませんね…」

細歩
『…バカみたい、生きて帰れる可能性が残ってると思ってるの?』


男は声も出せなくなっていた。
そう、これが俺たちの仕事だ…復讐代行。
受けた依頼は必ずこなす。
そして、ターゲットには100%の死。
今まで、例外を作った事は1度として無い。


大護
「…お前が殺したPKMは命乞いをしたか?」


「…え?」


俺は無言で男の顔面を蹴り抜く。
男の口に鉄板が入った俺の靴先がめり込み、男の歯が大半へし折れる。
口から血を吐き、毒が回ってピクピクしているターゲットに向け、俺はこう言い放つ。


大護
「殺された3歳のバチュルちゃんは、命乞いすら出来る歳じゃ無かったんだってな!?」


今回殺されたのは、バチュルの幼児。
依頼主の女性は、その娘を自分の娘の様に可愛がっていたそうだ。
だが、そんな幸せな生活の中、コイツはその女性の家に忍び込み、依頼主の女性を犯す為に動いていた。
その際、たまたま泣き叫ぶバチュルの幼児が邪魔だと言う理由だけで、マンションの上層バルコニーから外に投げ捨てて殺したらしい。

その娘は幼さ過ぎたゆえに、恐怖すら感じたのかも解らない。
ただ、最後の最期まで泣き叫んでいたそうだ。
依頼主の女性はそのまま辱しめられ、この男はのうのうと今も生きている。
法はそんな男を裁こうとしなかった。
正確には、裁ける材料が足りなかった様だが。
仮に捕まったとしても、数年で釈放されるのも予想出来る。
依頼主にとっては、それでは足りないのだ。
だから俺は依頼を受けた。
法で裁くには、こいつのやった事はあまりにも重い。
まだ、PKMには人権が薄い。
前の事件もあり、PKMが人間に殺された所で罪には問い辛いからな。


大護
「良いか? お前は法では裁かせない」
「世界が許しても、俺が許さねぇ…テメェは死刑だ」


男は目に涙を浮かべ、震える。
毒が大分回っちまったな…もう言葉も話せねぇか。
俺は細歩に顎で合図を送り、細歩は『テレキネシス』で男の体を倉庫の天井付近にまでに舞上げる。
天井つっても、この倉庫は大きい。
軽く10m位はあるだろうな…まぁ、落ちればほぼ間違いなく死ぬ。


細歩
『勢い付ける?』

大護
「高さが足りねぇからな…初速は速めにしてやれ」


俺がそう言うと、細歩は軽く『念力』で下のベクトルに加速させる。
男はそこそこの勢いで地上に向かって落ち、倉庫の床に体を打ち付けて絶命した。
俺は、あ…と思い、こう呟く。


大護
「…体重計算するの忘れてた、重力加速合わせたらオーバーしすぎたか?」

細歩
『…ん〜そうかも、あれだと50m位の高さから落ちた計算になるね〜』

蛭火
「…そこまで拘るんですか?」


まぁ、良いんだけどな…
とりあえずこれで依頼は終わりだ…後は始末だけ。


大護
「やれやれ、蛭火…適度に溶かしといてくれ」

蛭火
「はいはい…まぁ、誰か判別出来る程度にしときゃ良いですよね」


蛭火は適当に『ベノムショック』を口から吐き、男の死体を適度に溶かす。
溶解液みたいな物らしいが、別の毒と反応する事で溶解速度が上がるらしい。
ちなみに蛭火は『人でなし』と言う特性なので、この状態だと更に威力が上がるんだそうだ…
要するに、ドSな特性って事か?
まぁ蛭火の性格を表した特性とも思えるな。


大護
「よし、終わりだな…撤収するぞ?」
「帰りはそれぞれ別行動だ…拠点の位置を悟られるなよ?」

蛭火
「言われるまでも無いですよ…」

細歩
『ううっ、時間過ぎちゃった…早くお蕎麦食べたい』


やれやれ…仕事で頼もしい反面、日常では可愛いもんだな。
とはいえ、流石に元連合の幹部だ。
人殺しにも躊躇いは無いし、手際も良い。
これは予想以上に頼れる仲間みたいだ…



………………………



大護
「おっちゃん、日本酒と玉子!」


「…あれから、どうなの?」


俺はいつもの屋台でひとりの女性と会っていた。
今回は収入も入ったし、一応俺の奢りだ。


大護
「…真莉愛ちゃんには、感謝してるぜ」
「真莉愛ちゃんが手を回してくれなかったら、ピースたちは今頃人目から逃げながら生活してた所だ」


真莉愛ちゃんは、特に感情を出さずに酒を一口飲んだ。
一応、近くには真莉愛ちゃんの仲間が潜んでいる。
俺はそれを承知であえてひとりでここにいた。


真莉愛
「…あの時の借りがあったからね」

大護
「…そんな事もあったな」


俺は玉子にかぶり付き、酒をグイッと飲む。
すると、真莉愛ちゃんは俺のグラスに酒を注いでくれる。
俺はへへっと笑い、更に厚揚げとがんもを頼んだ。


大護
「真莉愛ちゃん、俺の事は憎いか?」

真莉愛
「…そうね、憎たらしいわ」
「必要悪だなんて、言いたくないけど世界はそうやって動いている」


真莉愛ちゃんもグラスの酒を飲み干す。
今度は俺が真莉愛ちゃんのグラスに酒を注いでやった。


大護
「…はは、俺の仕事は必要悪か」

真莉愛
「勿論、そんな物は裏の建前よ」
「あくまで貴方は凶悪犯罪者…あの羽黒と同じよ」


俺は何も言わずに厚揚げを食った。
そりゃそうだ…同じ屑だからな。


真莉愛
「…ただ、PKMに罪は無いのよ」

大護
「…そうだな、だから感謝してるんだ」


俺たちは同時に酒を飲み干す。
そして、更に酒を注ぎ足した。
気が付くと、瓶は空になっている。


大護
「…やれやれ、もう無くなっちまったか」

真莉愛
「結構飲めるのね? 何気に貴方と飲むのは初めてか…」


真莉愛ちゃんはそれ程酔っている様には見えない。
俺も弱くはねぇが、とりあえず今回はここまでだ…まだ帰ってから一仕事あるからな。


大護
「…真莉愛ちゃんもすっかり垢抜けたよなぁ」

真莉愛
「そりゃそうよ…貴方と初めて会ったのはもう10年前だもの」
「あの時の私は、前しか見てなかった」
「貴方と出会わなかったら、きっと私は別の道へ進んでいたでしょうね…」

大護
「そりゃ違うだろ…きっと俺がいなくても、真莉愛ちゃんは今の仕事をやってるはずだ」
「俺が真莉愛ちゃんを助けたのは結果に過ぎねぇ…」
「たまたまさ…たまたま、真莉愛ちゃんみたいな良い女がピンチだったから助けたんだよ♪」


真莉愛ちゃんは少し顔を赤くして酒を飲む。
俺はクククッと笑ってがんもをかじる。


真莉愛
「ねぇ…大護君はPKMの事好き?」

大護
「…さぁな、俺にとっちゃPKMは人間と変わんねぇよ」
「人間と同じ様に悩んで、恋をして、そして生きている」
「だから、俺は戦うんだ…力の無い人間の為に」
「…ごちそうさん!! 代金置いとくぜ!」


真莉愛ちゃんは、何も言わなかった。
俺はその背中を見て頬笑む。
そして、懐からタバコを取り出し、ライターで火を点ける。
そのまま、何も言わずに俺は立ち去って行った。



………………………



真莉愛
(バカ…どうして私は何も言えないのよ?)

店長
「嬢ちゃん、あいつはただのバカなのさ」
「だから、言葉では全部語らない…あいつの背中は、それを語ってる」
「追いかける気なら、あの背中は見失っちゃいけねぇな」


私は残りの酒を飲み干し、立ち上がる。
そんな事は解ってる。
だから、私たちは相容れない。
互いに想いは変わらないのに、その方法はまるで違う。
私には、私の想いがある。
そして、大護君には大護君の正義があるのだから…



「マスター…そろそろ」

真莉愛
「ええ、ありがとう愛紗…さぁ、仕事よ!」


私は仲間と一緒に今夜もゲートの出現先に向かう。
私は私らしく生きよう…初恋はもう初恋のままで良い。
私はあの日、私を命がけで助けてくれたヒーローに憧れて今の道を選んだのだから。



………………………



ピース
「美味い! やっぱり蕎麦は海老天が合いますね〜♪」

紫音
「私初めて〜♪ こんなに美味しいんだね〜」

大護
「う〜っし、蛭火と細歩の分も出来たぞ〜」


俺はエプロン姿でどんぶりを両手に持って蛭火たちに出してやる。
ふたりには海老天を更に多くプラスしてある…今夜は手伝ってくれたからな♪


細歩
『いただきま〜す♪』

蛭火
「やれやれですね…まぁ、とりあえず初仕事って事で♪」


ふたりも美味しく食べていた。
俺はとりあえず作った甲斐があったと頬笑む。
そして、俺は肝心の自分の分を忘れていた事に気付いた。


大護
「おっと、俺の分忘れてたぜ…」


「あら、良い匂いね〜? 私も良いかしら?」

蛭火
「ぶっ!? な、何でアンタがここに!?」

細歩
『あ、カネ〜♪ 久し振り〜』


何と、外のベランダから顔を見せたのはあのカネだった。
あの事件以来、姿が見えなかったのに、どうして今頃?


カネ
「ふふ…ちょっと後始末に時間がかかっちゃってね」
「とりあえず行く所も無いから、ここで養ってもらえない?」
「も・ち・ろ・ん…タダとは言わないわよ?」


そう言って妖しい笑みを浮かべて俺に胸を擦り付けるカネ。
俺はやれやれ…と思いながらも、とりあえずカネを引き剥がしてキッチンに向かった。


大護
「とりあえず、部屋は余ってるし…好きな所に住め」
「ったく、いきなり訪ねてきやがって…人数分しか蕎麦買ってねぇんだぞ!?」
「くっそ…まぁ俺はもう良いか、とにかく待ってろ!!」



………………………



蛭火
「すっかり所帯染みて来てますね…」

細歩
『でも、カネもやっぱり大護が好きなんだね〜♪』

カネ
「ふふ…さぁてね? 私をただの人間扱いしたのは大護だけだし、ね…」

ピース
「…人の旦那を寝盗らないでくださいよ?」

カネ
「…あら? いつの間にそんな関係に?」

紫音
「旦那じゃ無い癖に〜…って、また愛人増えるの〜?」

蛭火
「こらあっ!? さりげなく私たちまで含んでんじゃねぇですよ!?」

細歩
『あれ…? 蛭火も好きじゃないの…?』


蛭火さんは顔を真っ赤にして否定していた。
やれやれですね…蛭火さんもあんな態度ですけど、侮れません。
しかし! あくまで正妻は私ひとり!!
愛人など、いずれ駆除してやりますよ…ククク!

ゴホンッ! おっといけません…あくまで私はヒロイン!
こういう悪どい部分はカネさんや蛭火さんの専門ですね!
とまぁ、そんなこんなで私たちの大晦日は終わりました。
皆、生まれて初めて聞く除夜の鐘に心を揺さぶられながら、新たな生活に身を委ねる。
そして、私はこんな生活がただ幸せです。
これからも、色んな暗い世界を歩く事でしょう。
それでも、私は愛する大護をただ支えてみせます。
大護の1番は、きっと私のはずなのですから♪



………………………



大護
「らっしゃい! フランクフルトはどうだ〜!?」

カネ
「あ〜ら、そこのお兄さん…良かったら1本買ってくれなぁい?」


カネはそんな甘えた声で客の注目を浴びた。
結局、俺はひとりでやるのもしんどいと思い、カネだけ連れて来たのだ。
理由はこいつが1番人付き合いに問題が無さそうだから。
後、見た目が1番人間っぽいし、最悪何かあっても誤魔化せると踏んだからだ。

ここは街の神社の一角。
とりあえず深夜だというのに客はモロ混み。
俺はフランクフルト専門の屋台で、とりあえず必至こいて焼き続けていた。

想像以上にカネの注目度が高い…つーか、もうPKMってバレてんじゃねぇのか?
とりあえず、この調子で後3日は売る予定だが、問題だけは起きるなよ〜?


カネ
「大護、2本お買い上げ〜」

大護
「おう! そこの渡してやってくれ!! ケチャップ、マスタード、マヨネーズにペッパーはセルフだからな!?」


俺はカネにそう指示し、カネは慣れないながらもちゃんと接客する。
つか、何か行列になってるじゃねぇか!?
何でこんな急に増え始めたんだ!?
俺は一気にフランクフルトの袋を破り、焼くペースを上げた。
鉄板全体にフランクフルトを並べ、火力を高める。
チックショウ…嬉しい誤算だな、このままだと朝には売り切れちまうぞ…



………………………



大護
「だぁ〜!! やっと落ち着いたか…」

カネ
「凄い行列だったわね…いつもこんな感じなの?」


カネはエプロンの前掛けをヒラヒラさせながら息を吐いていた。
もう既に夜明けは過ぎており、気温的には寒い。
とはいえ、ここは幸い火の入った鉄板の前だし、むしろ暑い位だがな…


大護
「まぁ、俺も初めてだから詳しくは知らねぇよ」
「とはいえ、この街のどこにこんだけの人間が住んでんのか…」

カネ
「人間だけじゃなく、ポケモンも多いわ」
「この街では、人とポケモンが平穏に暮らしている…」
「争う事もなく、ただ…幸せそうに」


カネは胸の下で両腕を組み、何やら俯いた。
こいつはこいつで、悩みがあるんだろうな。
何で俺を助けてくれたのかは結局聞けなかったが、こいつの顔を見てると、何だか他人事の様には感じねぇんだよな…

俺はとりあえず鉄板から少し離れ、タバコを取り出して火を点ける。
鉄板からは背を向け、誰もいない後側に向かって煙を吹いた。


大護
「…別に、お前だって変わんねぇじゃねぇか?」

カネ
「…え?」


カネは心底不思議そうな顔をする。
やれやれ、こいつやっぱり変に思い込んでる節があるな。
俺はタバコを吸いながら、頭を軽く掻いてカネにこう言ってやった。


大護
「売り子やってるお前は、それなりに楽しそうだったぞ?」
「こんなしんどい仕事で、あんな顔出来るのは逆に貴重だ」
「そんなお前が、あっちで歩いてる人間やポケモンと何が違う?」
「お前だって立派な女だ、本当ならああいう風に友達とかと初詣に行ってるのが普通なのに」
「それを、お前はわざわざここで仕事を手伝ってくれてる」
「そんなお前を誰かが咎めるなら、俺がぶっ飛ばしてやるさ…」


俺は灰皿に灰を捨て、再びタバコを咥える。
そして折り畳みの椅子に座り、俺はくつろいだ。
カネは何故か呆けている。
そんなに俺は変な事を言ったんだろうか?
でも、カネはもう沈んだ顔はしてなかった。
それ所か、微笑んで目を潤ませている。
気持ち…顔が紅潮してる様にも見えるな。
黒い肌だからちっと解り辛いが。


カネ
「ふふ…あんまり真面目にそういう事言うと、フラグが立つわよ?」

大護
「何だそりゃ? それより、ちょっと飲み物買って来てくれや…」
「俺はコーヒー頼む、お前のは好きに買って良いからな?」


俺はそう言ってカネに千円札を渡す。
カネは嬉しそうに笑って歩いて行った。
俺はその背中を見てそれなりに安心する。
あいつがどんな過去を背負ってるのかは知らねぇが、それも少しづつで良いから乗り越えられたら良いだろ…



………………………



カネ
「ふんふ〜ん、ふ〜ん♪」


「随分楽しそうだな…」


私は鼻歌を歌いながら歩いていると、妙なポケモンの男に声をかけられた。
その姿は、一言で言うならヤクザみたいな格好のモヒカン。
背中には大きな仮面に見えるパーツを背負っており、体は軽く帯電していた。
私ははぁ…とため息を吐き、無視して歩く。
だけど、男は構わずに言葉を続けた。



「お前がそんな顔をするとは知らなかった…」
「何があった? それとも、良からぬ事でも考えているのか?」

カネ
「…貴方には、解らないわよ」
「ここにいる私は、貴方が知っているポケモンじゃない」
「神でもポケモンでも、人間でもない…」
「ただ…ちょっと恋をしている、ひとりの女よ…」


私の言葉に男は無言で目を瞑った。
余程予想外の答えだったんでしょうね…でも、それで良い。
今の私は、土地神なんかじゃない。
信仰も争いもいらない…私は、今初めての居場所を見付けたのだから。



「…そうか、悪かったな」
「俺の勘違いだ、知り合いに似てたんだが…どうやら人違いだった様だ」
「そのまま祭りを楽しんでくれ、じゃあな…」


男はその場から電光を纏い飛び去った。
私は少し俯く…そして過去を思い出した。
でも、次の瞬間に大護の顔が浮かび、声をかけてくれる。
私は、その声を思い出してすぐに頬が緩んだ。
うん…そうよね、私も楽しんでて良いのよね?
誰かが咎めるなら、それは大護がブッ飛ばしてくれる。
だから私は、ここにいても良いんだ…



………………………



大護
「へいらっしゃい!!」

客A
「あれ? あの黒人の店員さんは?」

客B
「何だよ、いないじゃん…メッチャ可愛い娘いるって聞いたから楽しみにしてたのに」

客C
「まぁ良いじゃん、それなら他行こうぜ?」


何やら3人のチャラい野郎共が冷やかしに来やがった。
カネの奴、まだ戻らねぇが大丈夫だろうな?


少年
「オジちゃん、1本頂戴!」

大護
「おっ、毎度! んじゃ、300円な♪」

少年
「あれ? あ、200円しかないや…」


おっと、まぁ良くあるパターンだな…
俺はははっと笑い、1本少年に渡して200円を受け取った。
少年は驚いた顔をし、そして困った顔をする。


少年
「良いの? 足りないよ?」

大護
「気にすんな! 今回だけ特別にこれで売ってやる」
「その代わり、他には内緒だぞ? 約束出来るか?」


俺が顔を近付けてそう言ってやると、少年はパァ…と顔を綻ばせ、うんっ!と強く頷いた。
そして、嬉しそうにありがとう!と言ってから少年はフランクフルトを持って走り去った。
やれやれ、何も付けずに持って行っちまった…まぁ、良いか♪


カネ
「ごめんなさい、屋台見付けるのに時間かかって…」

大護
「おう、無事で良かったぜ…何かトラブルかと心配したんだからな?」


俺がそう言うと、カネはうふふ…と笑ってコーヒーを渡してくれた。
カネはビールを持って微笑んでいる。
って、酒かよ…まぁ良いがな。


大護
「あんまり酔いすぎるなよ? まだ在庫は少し残ってんだから」

カネ
「大丈夫よ、これ位なら水みたいな物だから♪」


そりゃ強いこって…
カネって、何だでこういう所はフリーダムだよな。
俺は缶コーヒーを開けてグイッと一口飲んだ。
ふぅ…冷たいが少し落ち着いたぜ。


大護
「そういや、妙な連中がお前を探してたから気を付けろよ?」

カネ
「…何者? どこかの組織?」

大護
「いや、ただのナンパ野郎だ…チャラそうなガキ共だったな」


俺がそう言うと、カネははぁ…とため息を吐いて缶ビールを飲む。
予想とは違ってたんで、呆れた顔だな。
いや、少し空気が違うか…?
まるで、嫌悪するかの様な風にも見えるな…


カネ
「…ねぇ、本当に守ってくれる?」

大護
「あん? 何からだよ?」

カネ
「もう…! 私が、誰かに言い寄られたら、守ってくれるの?」


俺は少し言葉に詰まるも、カネは酒が入ったせいかやや目を潤ませていた。
俺は冗談で流すのは流石に悪いと思い、真面目に答えてやる事にする。


大護
「…そうだな、お前が本当に嫌がってるなら、な」


俺はそう言ってコーヒーを置き、フランクフルトを焼いた。
そして、また少し客が増え始め、俺は在庫の残りを全て売り切る。
カネも満足そうにビールを飲み切って手伝ってくれた。
そんなこんなで、とりあえず今回の仕事は大成功だ♪



………………………



大護
「サンキューなカネ…助かったぜ」

カネ
「別に良いわよ…世話になる以上、私だって何かしたいもの」


俺たちは屋台を片付け、エプロンを脱いでふたり歩く。
とりあえずは一旦帰って飯かな?
今頃は暴君が腹減らして唸ってるかもしれん。


カネ
「あら、お参りはしていかないの?」

大護
「別に良いだろ? それともしたいのか?」

カネ
「良いじゃない…私、誰かを信仰とかした事ないし、新鮮だわ♪」


そう言ってカネは俺の腕を絡め取り、胸を密着させる。
おいおい…んな目立つ事しなくても。
とはいえ、振り払うのも忍びない感触なので、俺は存分に堪能する事にした。



………………………



カネ
「これだけの人間に信仰されてるって、よっぽど凄い神なのね…」

大護
「そうなのかね…? 都心の方とかは比べ物にならない規模だと思うが」

カネ
「そう言えば、街ごとに信仰が違うのよね?」
「つまり、ここにいる神は土地神って事かしら?」


どうなんだろうな…? 俺も神社ごとの神様知ってるわけでもないし、流石に反応に困るな。


大護
「つーか、そういやお前のカネって名前、何か意味のある名前なのか?」

カネ
「そうね、ちょっとした神話から借りた名前だけど」
「誰かに名付けられるとか、気に入らなかったし…」

大護
「…神話ね、思い当たるのはハワイの四大神のひとりか」
「生命、ないし生殖の神だそうだが、それか?」


俺が予想してやると、カネは驚く。
当たりか…まぁ、安直と言うか何と言うか。
ちなみそのカネ(カーネとも呼ばれる)神様は、生物を創った神とも言われている。
その力はハワイの四大神の中でも最も大きいとされ、クー、ロノ、カナロアの3人と共に四大神と呼ばれているそうだ。


カネ
「私は詳しくは知らないんだけど、何となく私に似てる気がしたから…」

大護
「お前も生命をコントロール出来るんだっけか」
「その気になりゃ新たな命を創ったりも出来るのか?」

カネ
「そうね…試した事はないけど、器に生命を吹き込む事は不可能じゃないかもね」
「とはいえ、生命を吹き込んだ所で、そこに自我が生まれるとは限らない」
「ただ生きているだけじゃ、生物とは言えないかもしれないわね…」


まぁ、流石に無茶か…いくらカネでもそこまでの事はした事ないってわけだな。
だが安心した、やっぱこいつはそこまで無茶苦茶じゃない。
それは、人間と同じ様に悩む心があったからだ。
カネがただの無感情な神なら、それこそ暴君も真っ青の傲慢さだったんだろう。
だが、それをしなかったのはカネに人間性があったからだ。
やっぱ、俺にはカネが神とかそう言うのには無関係に見えるな。


大護
「よし、順番来たぞ…良いか? とりあえずまずは礼だ」
「角度は45度でこう…出来たら次は賽銭だ」

カネ
「こうね…成る程」


俺は礼をしたカネに100円を渡す。
俺は賽銭箱の入り口にゆっくり100円を落とし、カネもそれを真似する。
こういうのは基本的に投げ入れるのは本来ご法度だ。
混んでる所に急ぐ理由は解らなくもないがな…


大護
「よし、鈴を鳴らすぞ…次はまた礼だ」
「今度は90度で2回…ゆっくりで良いから丁寧にな?」


俺が鈴を鳴らし、礼をするとカネも真似をする。
丁寧に2回礼をし、俺は次を指示する。


大護
「次に手を合わせる。右手は気持ち下にしとけよ?」
「これも丁寧に2回だ、慌てなくて良いからな…」

カネ
「結構、決まった作法があるのね…」

大護
「出来たら次は願い事だ、手を合わせたまま目を瞑って、とりあえず好きな事願え」


俺たちはしばし目を瞑り、願い事を願った。
俺は無難に金運が上がる様に願っておいた。
さて、カネは何を願ったのやら…


大護
「最後にもう1度90度の角度で礼だ」
「そんで次は45度でもう1回…これで終わりだな」


俺の後にカネはきっちり真似をし、そして拝殿から離れる。
他の連中からやや白い目で見られたが、俺は気にしなかった。
こういう作法を知らない奴も多いからな…まぁ、そこまで神経質になる必要はねぇんだが、仮にも神様が相手だ。
カネにも間違った知識は持ってほしくねぇからな。



………………………



カネ
「ふふ…やった大吉♪」

大護
「俺は凶か…こいつぁ良い」

カネ
「え? 凶って、あまり良くない結果なんじゃ?」

大護
「だからだよ、悪いって解るなら、その分気を引き締めて対策出来るからな」
「逆に大吉だからって気を抜くなよ? 努力無しに幸運なんて訪れないんだからな?」


カネは感心した様におみくじの内容を読んでいた。
俺もそれを確認し、おみくじを懐に納める。


カネ
「え? あそこに結ぶんじゃないの?」

大護
「おみくじは神様のお告げだぞ? いつでも読み返せる様に自分の元で保管しておくのがベストだ」
「あんな風に結ぶのは、ゴミ扱いしてる様なもんだぞ?」


俺はそう言ってやり、カネも感心して胸元にねじ込んだ。
いや、良いけどな…服にポケットとか付いてないのか?


カネ
「何だか、他の人間は誰も同じ事をやってないのね…」

大護
「まぁ、形骸っちゃあ形骸だからな…とはいえ、正しい作法を知っていて困るもんじゃない」
「むしろ間違った作法を正しいと思う事の方が問題だからな」

カネ
「ふ〜ん、大護って意外に真面目なのね?」


真面目って、あのな…
普段からおちゃらけてるわけじゃないぞ?
これでも勤勉なんだ…学ぶ事に無駄があるとは思った事無いからな。


大護
「とりあえず帰るぞ? ピースがいい加減呪いの呪詛を唱え始めてる気がするからな…」

カネ
「ふふっ…確かに♪ だったら、何か美味しい物買ってあげないと」


俺は確かにと頭を掻き、タバコを咥えて火を点けた。
人の邪魔にならない様に端を歩き、携帯灰皿に灰はきっちり捨てる。
やれやれ…何買って帰るかな?



………………………



ピース
「お、おおおおおっ!? こ、これが、かの有名なおせち料理ですかぁ!?」
「重箱ですよ!? 三段重ねです!!」

大護
「こらこらこら! いきなり適当に開けるな!」
「おせちはまず1番上の一の重から食べる!!」
「本当ならおとせから頂くんだが、今回は用意してないからまずこれからだ」


俺はそう言って一の重をまず真ん中に置く。
待ちきれないピースを見ながら、俺はまず真ん中の具材を皆に配った。


大護
「こうやって、食べる時は真ん中の奴からな?」
「端から食うと福が行き渡らないから、気を付ける様に!」

細歩
『は〜い、いただきま〜す♪』


細歩は頭のゲルを解除し、ゲルの手で器用に箸を使って食べていた。
カネとピースも早速食べ始め、味には問題無い様だな。


蛭火
「順番あるとか、意外に面倒なんですね…そんな気にする必要あるんですか?」

ピース
「何言ってるんですか蛭火さん!?」
「おせちは縁起の塊なんですよ! 幸せは重要です!!」

大護
「まぁ、そういう事だ…今回は初めてだし、とりあえず正しい食い方を覚えておけ」


蛭火は面倒そうにしながらも、美味しく食ってはいる様だった。
特に海老を殻ごとバリバリ食うのがお気に入りの様だ。


カネ
「お雑煮はどうするの?」

大護
「あれは最後だ、順番的にはおせちの後に食うもんだからな」
「だから、まずはこれを食う…とはいえ、量はあるから無理はしなくて良いぞ?」
「最後に雑煮を食えるだけの余力は残しとけ…余った分は後でも食えるからな」


とりあえず俺たちは美味しく重箱をつついていった。
そして、皆がそれなりに満足する中、余った分もピースが残さず食ってしまった。
さて、なら次は雑煮だな…
俺はあらかじめ煮込んでおいてる雑煮の鍋から、ひとり1個の餅を分けていく。
煮込み加減はまぁまぁだな、悪くはねぇだろ。


ピース
「ハリアップ!! お雑煮カモン!!」

大護
「やかましいぞピース…お前段々図々しくなっていくな?」

蛭火
「良いから早く全員分置いてくださいよ…」

カネ
「ふふ…お餅とか初めてね♪」

細歩
『美味しそう〜♪』


俺はさっさとそれぞれに配膳し、俺もいただく事にする。
そして、最後の雑煮も皆きっちりと食いきったのを見て、俺は軽く微笑んだ。



………………………




ピース
「大満足です! 後はひたすら寝正月ですよ〜♪」

大護
「ホントに暴君だなお前…」

蛭火
「全く、このまま食っちゃ寝し続けるつもりですかね?」

細歩
『…もう、平和だからってだらけすぎだよ?』


ピースは話を聞いていないのか、既にごろ寝モードだった。
やれやれ、何かこいつにも働かせなきゃダメだなこりゃ…


カネ
「洗い物ってあれで良かったの?」

大護
「おう、悪いな…後は休んでて良いぞ?」
「お前も眠いだろうし、ゆっくり寝てて良いからな?」

カネ
「ありがとう…そうさせてもらうわね」


そう言ってカネはやや疲れた足取りで部屋に戻った。
今日は負担かけちまったからな…何なら明日は休ませてやるか?
つーか、1日で完売したからぶっちゃけ後はやらなくても良いんだがな…ノルマ達成してるし。
とりあえずは当面何とかなりそうだし、金銭的な問題はクリアだ。


蛭火
「…そう言えば、やけにカネの機嫌が良かったですけど、余程お楽しみだったんですか?」

大護
「アホかお前は…? 仕事に出てたんだぞ?」
「何を楽しめってんだよ…?」

細歩
『でも、ホントに凄い嬉しそうだった…』
『あんなカネの顔、見た事無い』


そうか、そんな風に見えるのか。
俺からしたら、それが自然に見えるんだがな…
俺はタバコに火を点け、しばし一服する事にした。
やれやれ、こたつ位用意するかな?
電気カーペットとファンヒーターで部屋は暖めてるが、何となく欲しくなるな…


蛭火
「まぁ、別に良いですけどね…それより、みかん取ってください」
「そこの段ボールに入ってるんで」

大護
「やれやれ、いくついるんだ?」

蛭火
「とりあえずひとつで良いですよ」


俺は段ボールにギッチリ詰まっているみかんを3つ取り出し、それをテーブルに置いた。
俺と蛭火と細歩で、それらをひとつづつ剥き始める。
ちなみに、これは蛭火たちが仕事場からお裾分けで貰った物らしい。
やっぱこたつ欲しいな…みかんと言えばこたつだろ。
後、猫…って、そういや紫音ちゃんは今日は来ないのか?
昨日蕎麦食って帰ったから、てっきりまた来るのかと思ったんだが。


大護
「しっかし、平和だねぇ…」

蛭火
「戦争するよりマシでしょ…たださえ殺伐した仕事してるんですから」


確かにな…今でも依頼があるなら俺は仕事をする。
この仕事に定休日なんざ無いからな。
とはいえ、流石に元旦から依頼はしんどいがな…
葛も今は帰省中だし、しばらくは帰って来ねぇだろ。
ルザミィも行方不明だし、あいつ何やってんのかな…?


大護
「おいピース、寝るのは良いが部屋に戻れ」
「こんな所で寝てたら風邪引くぞ?」

ピース
「んふふ〜心配してくれるんですか?」

大護
「…体調壊されても困るだけだ」
「お前らには保険証とか発行されないんだからな…?」

蛭火
「確かに、病気とかは注意ですよね…まぁ、怪我とかならここにいる3人は『自己再生』出来ますが」


考えると恐ろしいな…改めてポケモンってスゲェ。
その気になれば四肢切断位じゃ死なねぇらしいからなこいつら。
銃弾食らってもケロッとしてるし、殺しても死にそうにねぇ…


細歩
『でも、病気とかかかるのかな?』

蛭火
「かかるはかかるでしょう…一般的な風邪とかは解りませんけど」

ピース
「ダイゴ〜お姫様抱っこで連れてってください〜♪」

大護
「ドアホウ、甘えるな…そういう台詞は働いてから言え」


俺が素っ気なく言うと、ピースは頬を膨らませてぶーたれる。
とはいえ、働いてないのを少しは恥じているのか、渋々立ち上がって部屋に戻って行った。
やれやれ…手のかかる相棒だ。


蛭火
「…とりあえず、私たちも仕事は4日からですし、依頼があるなら早めに言ってくださいよ?」

大護
「ああ、決まったらすぐに連絡する」
「細歩もそれまでは自分のペースで過ごしてて良いからな?」

細歩
『うん、そうする〜♪』


俺たちはそんな感じで元旦の日をまったりと過ごした。
これから、新たな家族で新たな生活が始まる。
そしてこれからもそれなりにトラブルに巻き込まれたりして生きていくのだろう。
今は、それでも良い…もう俺には、復讐の相手はいないのだから。

強いて望むのなら、ピースたち皆が少しでも幸せになってくれれば、それで良い…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger The After』


第0話 『大護と、その家族…』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/06(土) 18:17 )