終章 『Avenger』
第2話 『強襲』
ドォォォォォォォォォォンッ!!!


大護
「何…だと!?」


「アホか…!? こんな時に爆破テロかいな!?」


それは、山の方で起こった爆発。
俺は嫌な予感がプンプンしていた。
あの方角は、明らかに俺の拠点がある方…となると狙いは?


大護
「っ!? まさか、P2ーーー!!」

俺はすぐに駆ける。
葛は驚き出足が遅れ、俺はひとりで全力疾走した。



「大護ーーー!!」


葛の声が聞こえたが、俺は無視する。
今は一刻を争う、グズグズしていられるか!!
俺の足なら数分で着く、爆発はどこだ!?



………………………



大護
「バ、バカな…!?」


予感は的中していた。
俺の拠点から火の手が上がっている。
その火は既に山火事のレベルで、このままだとデカイ火災になるぞ!?
だが、俺はおかしい事に気付く。
人気が無さすぎるのだ。
いくら何でも、野次馬すらいないのは明らかにおかしい。

プシュッ!と瞬間音が鳴る。
俺は一瞬反応が遅れるも、首を捩り弾丸をかわす。
頬を掠めたが、痛みに反応する程俺は甘くない。
瞬間的に俺は懐から銃を取り出し、撃たれた方向に顔すら向けずにトリガーを引く。
サイレンサー付きの銃から弾丸が1発だけ撃ち出され、とりあえずヒットはした様だ。


大護
(周囲から気配…3、4、5人か!)


足音とガチャガチャした音が混在している、重武装系か?
こんな場所で何でそんな奴らがいる!?
まさか、俺の存在を知ってて刺客を差し向けてんのか?
どっちにしろ、囲む様に移動してやがる。
さっき撃った相手も銃弾が効いてねぇ、間違いなく防弾装備だな。
俺はすぐにその場から動き、山の中に身を隠す。
拠点からは火が上がっているが、見付かりやすい場所で止まるのはバカだ。
とりあえず、相手の装備を確認しねぇとな…


大護
(見付けたぜ、ひとりか? 何だありゃ…やけに物々しいフルアーマーだな)


それは夜間迷彩されたフルアーマー。
防弾チョッキじゃあない、鋼鉄…いや、強化セラミックか?
間接以外は完全に防御しており、あれじゃ並の銃は通りゃしないだろう。
そして武器は大型ライフルか、両手持ちのこれまた物騒な代物だ。


大護
(どういうこった? いつから日本の自衛隊はあんな物々しい装備を扱う様になったんだ?)


少なくとも、対人兵器にしては物騒すぎる。
あのライフルは多分対戦車用だ。
断じて人を撃つ代物じゃない。
最初に撃たれたのはまた違う銃だった、サイレンサーの音がしたしな。


大護
(やれやれ、熱烈歓迎かよ…チクショウ、P2がいなきゃとっととトンズラしてるってのに)


残念ながら拠点にはP2がいる。
もっともあの爆発じゃ死んでるかもしれねぇが。
どっちにしても、確認には行かなきゃならない。
あいつを匿った以上、俺には最低限の責任があるからな。


大護
(とりあえず、油断しすぎで欠伸が出そうだな…)


俺は木に隠れて銃を構える。
そしてトリガーを引き、俺の銃から放たれた銃弾は真っ直ぐに敵の脇を貫く。
その部分に装甲はあらず、銃弾はいとも容易く装甲の隙間をすり抜けた。
そして、脇ってのは意外に急所のひとつと成りうる。
角度が合うなら、そのまま肺や心臓も貫けるからな。
で、まずはひとり…と。
ドガシャアッ!と派手な音をたててフルアーマーは倒れる。
俺は周囲に気を配りつつ、倒れた奴からライフルを奪い取った。
とりあえず、こいつなら装甲の上からでもぶち抜けるな。
俺は背後に向けてこのライフルを片手で構え、そのまま照準をブラす事無く弾丸を射出した。
そしてすぐにそれは着弾。
木をあっさりと貫通し、隠れていた敵に当たってアーマーを貫通した。
アーマーピアシングか…弾速といい反動といい、完全に対戦車ライフルだな。
…そりゃ、まともに直撃すりゃセラミックでもああならぁな。


大護
(ふたりか、これで残り3人だな)


増援が無ければだが。
とはいえ、この程度の戦力で俺を殺す気だったのか?
あまりにもアホらし過ぎるぞ…装備だけは立派でも全然動きがなっちゃいない。
しかもこっちの動きが全然読めてねぇじゃねぇか…俺の誘導で簡単に各個撃破の出来上がりだ。
足並みが素人過ぎる…全員バラバラで追いかけてやがるしな。
俺は大きくため息を吐き、もう1発弾丸を遠距離から撃ち込む。
今度は木々を縫う様に撃ち、正確に間を縫って移動していたフルアーマーの体をぶち抜いた。
今度は距離があった為か、クッション無しでも背中までは抜けなかったな。
とはいえ、胸を正確に撃ち抜かれたアーマー野郎はそのまま倒れた。



………………………



アーマー兵
「そ、そんなバカな!? 全滅したのか!?」

大護
「ご生憎様…テメェでラストだよ」


俺は背後から相手の後頭部にライフルを突き付ける。
すると相手はすぐに武装解除し、両手を上げて降参した。
さて、とりあえず情報収集だな…


アーマー兵
「た、頼む、助けてくれ!!」

大護
「そいつぁテメェ次第だ…まずは俺の質問に答えろ」

アーマー兵
「違う! そうじゃない!! ヤメローーー!?」


俺は違和感を感じる。
そしてすぐにライフルから手を離し、俺はその場から飛び退いた。
次の瞬間…ドォォォォォォォォォォンッ!!とアーマー野郎が大爆発。
俺は何とか火傷だけで済まし、しばらく痛みに耐えて地面に伏せていた。
そして敵の気配を探る…誰もいねぇ、だと?
何だ? だとしたら、自爆装置か!?
俺はアーマー野郎の台詞を思い出し、想像した。
あいつは俺に殺されるのが怖かったんじゃない、自爆させられるのが怖かったんだ…!
クソッタレが…! ここまでなりふり構わねぇとはな!!


大護
(道理で素人だらけのはずだ…初めから相討ち前提で人間爆弾かよ!!)


あからさまに人道無視の戦略だ。
こんな物はただのテロでしかない!
日本はいつからこんな馬鹿げた世界になったんだよ…!?


大護
(…敵の気配は無い、追撃も増援も見当たらねぇ)


俺はゆっくりと起き上がり、体の土を払う。
そしてペッ!と血の混ざった痰を吐き、口を拭った。
やれやれ、ここまで本気だとはな…油断大敵って奴じゃねぇか。
俺でも流石に○ルゴみたいにゃいかねぇな…
やっぱありゃプロ中のプロだわ…


大護
「クソ…気が付いたら消防車が来てるじゃねぇか!」


いつの間にか野次馬も集まっている。
タイミング良すぎだろうが…明らかに全滅を確認して人を集めやがったな?
これで明日のニュースは持ちきりだな…クソッタレが!



………………………



大護
「P2ーーー!!」


俺はあえて叫ぶが、声は返って来なかった。
やっぱり、死んじまったのか…
俺は燃え尽きる拠点の前でしばし立ち尽くした。
そして悟る…どの道、P2はこうなる運命だったんだと。
俺があそこで救っても、結局P2はいずれこうなる運命だったんだな。
俺は血が出る程に歯軋りし、拳を握る。


大護
「悪ぃなP2…仇は取ってやるぜ」


俺は消防隊と出くわす前にその場から離れる。
死体の確認はしなかった…つーか出来ねぇ。
いくら俺でもあの状態で中に入れば焼け死んじまうからな。



………………………




「大護!? お前、生きとったんか!?」


俺が人目に付かない様に山を降りると、葛が発見して近付いて来る。
どうやら葛は何とも無かった様だな…
俺は近くのコンクリート壁に背を預け、その場で項垂れる。
葛は心配そうに俺の姿を見ていた。
まぁ服はボロボロ、全身に軽い火傷も負ってるからな。


大護
「…葛、奴って誰だ?」


「!? な、何で今それを?」


俺は内心確信している。
だが、あえて葛から裏付けを取りたかった。
これはもう本当に引き退がれない。
俺は復讐者だ…その復讐がひとつ増えちまったんだからな。


大護
「P2は多分死んだ…拠点ごと爆破されてたよ」


「なっ!? そ、そんな…!」


葛は予想以上に狼狽える。
こいつは、PKMに特別な想いを抱いてるみたいだからな…
俺は懐から辛うじて生き残っていたタバコを1本取り出し、口に咥える。
…が、肝心のライターがオシャカだった。
俺は舌打ちし、仕方なくタバコを仕舞う。
くっそ…まぁ仕方ねぇか。



「…大体予想は出来とるんやろ?」

大護
「羽黒 芸知巣…だな?」


「せや、奴はPKMへの人権を掲げ、その裏では軍備を整えとった」
「今回の襲撃は意味不明やが、明らかに殺意のある襲撃や!」


確かにな、あんな手段を取るってこたぁ、よっぽど俺が憎いらしい…
その為には、何人死のうがお構い無しかよ…鬱陶しいこって。



「羽黒自体の支持率は高い、仮にも投票でトップになったんやからな」

大護
「そりゃそうだろうさ…不正なんざしたら、どうせすぐにバレるしな」


つまり、奴は日本国民の期待を背負って首相になったんだ。
ちょっとやそっとじゃ尻尾は出さねぇだろう…



「やっぱり、ルザミィももう…」

大護
「まだ解かんねぇだろ? ルザミィだって素人じゃない」
「何だかんだで、きっと生きてるだろうさ…」


もちろん、希望的観測だ。
そんな保証はどこにも無いし、むしろ確率は低い。
だが、それでも俺は助けてやりたい…
これ以上、知った女が死ぬのは御免だ…



「とにかく、別の拠点に移るで? お前のは怪しいから、俺の所に来ぃ」

大護
「あぁ、そうさせてもらうぜ…今全財産焼かれちまったからな」


かなり切実な問題だ。
まぁそんなに残っちゃいなかったんだが…



「はぁ…まぁ、しゃああらへん」
「しばらくは面倒見たるさかい、貸しにしとくわ」


やれやれ…貸しね。
こういう時位、そんな金の話は無しにして欲しいもんだぜ…



………………………



そして、その日は結局葛の拠点で休む事になった。
ニュースでは、かなり大袈裟に火災だけが強調されていたのはどうにも疑問だったが、どうやらそういう事らしい。
あくまで、人的被害は無かった…という事だ。
俺たちはそんな報道を聞いて、ただ呆れるだけだった。



「あからさまやな…逆に罠かと疑うわ」

大護
「…わざわざ、ただの火災で報道してんだ」
「明らかに俺たちを誘ってんだろうよ…」


そう、これは誘いだ。
デカイ釣り針だよ…美味そうな餌をチラつかされてる。
俺は気分が悪くなった…バカにしてやがる。
トコトン疑われる様な行動取りやがって…一体何を考えてやがる?



「…アカンな、ハッキング対策されとるわ」

大護
「ん…? お前にしては珍しいな」


少なくとも、こいつはハッキングに関しては世界一を自負してる。
そんなこいつが、対策ひとつで手を止めるか?



「…ちぃと時間かかるわ、それにあからさまに罠だらけや」
「こんだけ厳重に作り替えられてるっちゅう事は、前のはワザと侵入させたんやな」
「俺のハッキングに追い付いては来んやろうが、これに手ぇ出したら、ちょっと面倒や」

大護
「…だったら時間かけてでもやれ、その間は俺がひとりで動く」
「ルザミィの方も忘れるなよ? お前の腕にかかってるんだからな…」


俺はそう言ってさっさと眠る。
とりあえず明日からだ…本格的に反撃開始だぜ。



………………………



大護
「…流石に近付けねぇか」


俺は焼け落ちた拠点を朝一番で見に来るが、既に警察が跋扈している。
やれやれ、どうしようもねぇな。
俺はとりあえずバレない様に木の陰から警察の声を盗み聞きする。
かなり距離があるが、特注の補聴器を着けりゃ十分聞き取れる。
俺は耳にそれを差込み、スイッチを入れる。
すると、途端に環境音が小さくなり、逆に人の声は大きく聞こえる様になった。
人間の声だけを大きく抽出する装置だからな。
とはいえ、近くで喋られたら耳がヤバイんだが…
俺は近くの気配を特に注意しながら聞き耳を立てる。
どうやら、跡地には何も死体は無かったらしい。
だとしたら、P2はまさか死んでないのか?
死んでいるなら死体位はあるはず。
俺は補聴器を外し、すぐにその場を後にした。
もう用は無い、さて次はと…



………………………



大護
「ちょっとそこの妊婦さん、ここにルザミーネって人、帰って来てた?」

妊婦
「えっ? ルザミーネさん、ですか?」
「確か、昨日朝から出て行ったきり、見てませんけど…」


そうか…ってこたぁ、電話したっきりの可能性が高いな。
俺は妊婦さんからルザミィの部屋だけ聞き、とりあえず調べてみる事にした。
まぁ、鍵が開いてれば良いんだが…



………………………



大護
「…まぁ、開いてねぇわな普通」


当然だが鍵はかかってる。
仕方ねぇな…ピッキングすっか。
俺は特殊な金属棒を取り出し、それを鍵穴に差し込む。
そして、ある程度狙いを定めると、もう一本違うのを取り出して更に差し込んだ。
すると、鍵はあっさり開く。
まぁ、こんなどこにでもある様な団地の鍵なら楽勝だわな。


大護
「おっ、綺麗にしてんじゃねぇか…って、何もねぇ!」


見ると既にもぬけの殻だった。
流石はルザミィ…何ひとつ証拠も無しかよ!
俺はやれやれと思いつつも、一応中を調べる。
まぁ、ゴミ箱か冷蔵庫辺りしか見る物は無いだろうが…


大護
(いや、そういやひとつあったな…ルザミィの癖が)


俺はそれを思い出す。
ちなみに、それはルザミィ自身ですら無意識でやる癖だ。
つまり、もぬけの殻でもその癖が健在なら、何か手掛かりがあるかもしれないってこった。


大護
(…あいつの癖は、大概風呂場にある)


俺は真っ先に風呂場に踏み入る。
中は水滴ひとつ付いておらず、しっかり乾燥していた。
だが、俺はすぐにシャワーのヘッドを手に取り、それで鏡に水を浴びせる。
すると鏡は水を弾き、そこには指で書いた様な文字が浮かび上がった。
やはり、残してやがった…撥水材を使ってメッセージとはな。
書いてあるのは、11月23日…PKMが殺される、ね。


大護
(だが、当然これはフェイクだ)


そう、それがルザミィの癖。
ルザミィは使った拠点の跡地には、必ずこうやって足跡を残す。
それも、ワザと餌を撒いて自分に追っ手が行かない様にするメッセージ。
ルザミィは毎回決まってこんな物をワザと残す。
特に風呂場にはほぼ必ずと言って良い確率であるからな。
探せば、多分他にもデタラメな情報を残してるだろ。
まぁ、当然全部ガセなんだがな…
そして、俺はその意味を逆に考える。
あくまでこれはダミー…つまり、ルザミィの本音は別にある。
ルザミィの自覚しない癖ってのは、ちなみにそれだ。


大護
(ルザミィは、無意識で自分の行動とは真逆の情報を残す)


PKMが殺される…つまりその真逆。
明日、PKMが生かされる…? 意味不明だな。
いや、そもそも明日じゃねぇのかも。
真逆ってなると、過去?
いや、流石にそれは無いだろ…ルザミィが過去に戻れる訳ねぇんだから。
つまり日付は少なくとも今日中か、明後日以降か。
ルザミィの癖からしたら、今日中の可能性の方が高いな。
んで、PKMが生かされる…いや、むしろルザミィが助ける?


大護
(まさか、P2と何か接点でもあるのか?)


ルザミィはある程度の事態は予測していたみたいだし、もしかしたらP2を助けている可能性も…?
あくまで希望的観測だが、ルザミィはP2の事気に入ってたし、無くもねぇかもな。

とりあえず、一応他の足跡も調べておくか…
断片的でも、何か繋がりがあるかもしれねぇ。



………………………



大護
(結局、答えは出ないか…)


あれからいくつか見付けたのだが、どれも風呂場の奴ほど決定的な何かは読めなかった。
やはり、PKM関係で何かがあるはず…
だが、1000を越えるPKMの誰を助けるってんだ?
それとも、既に助けてるのか?
全くこの辺りが読めねぇな…


大護
「ん? 葛か…」


突然、俺の携帯が震えた。
着信だが、内容はメールだった。
俺はタイトルだけ見て、いきなり驚く。


『すぐに逃げろ』


大護
「これは…!?」


俺はすぐにその場から横に飛ぶ。
ゴロゴロとアスファルトを転がり、俺は道の真ん中で襲撃されたのだ。
だが、昨日の様な兵隊じゃない!
俺がいた場所に降り立ったのは…翼の生えたPKMだった!


大護
(ひとりだけじゃない…!? 他にもいやがる!!)


俺は既に囲まれ始めていた。
だが鳥女の睨みが効いており、俺は背を向ける事が出来ない。
やがて、ふたり、3人と増え始め、俺は計4人のPKMに囲まれていた。


鳥女
「対象、包囲完了」


鳥女が言葉を発する。
その声はやけに機械的で、意志がこもってる様に見えない。
だが、そいつは俺に向かって手をかざし、強烈な風を巻き起こした。
俺は踏ん張ろうとするが、あっさりと吹き飛ばされる。
大型台風もかくやという規格外の風圧で俺は宙に飛ばされたのだ。


大護
「がはぁ!?」


俺は電柱に背中を叩き付けられる。
骨がバラバラにされそうな痛みで、俺はそのまま数mの高さから落下する。


大護
「ぐうぅっ!!」


俺は空中で体勢を整え、アスファルトに着地する。
下半身にかなりのダメージがあったが、俺はすぐに銃を取り出して鳥女を射撃した。


プシュッ! パァンッ!


大護
「!?」


何と、銃弾を粉々に砕かれた。
鳥女の仕業じゃない、横から何かが遮りやがったんだ!


大護
「ぐっ!?」


俺は背中から首を捕まれ、アスファルトに叩き付けられる。
この俺が、片手で捩じ伏せられるってか!
その際に頭を打ち、俺は額から血を流して歯を食い縛る。
クソッタレ…この俺が、こんな所で…!!



「どうだね? 特殊訓練されたPKMというモノは?」

大護
「!? テメェは…羽黒 芸知巣!?」


PKMたちは全員跪き、羽黒は笑う。
何だコイツ…? 何でPKMを従えてやがる!?
それに、特殊訓練だと…!?


羽黒
「いかに超人の君といえど、所詮鍛えられたPKMの前では赤子も同然だよ」
「CPにしたら良い所1000も無いだろう」


何を言ってやがる? CPって何だ?
どっちにしても、俺は完全に追い詰められてる…
ルザミィを追ったがばかりに、自分の首を絞めたか…


羽黒
「ふふふ、安心したまえ君はまだ殺しはしない」
「私の欲求の為、君には生きてもらう」
「だが、残念ながら自由を与えるわけにはいかない、それは覚悟してくれたまえ」


勝手な事をベラベラと…!
俺は羽黒を睨み、奴の顔を目に焼き付ける。
ここでわざわざ出て来たって事は、完全に黒だ。
奴は何か大きな目的を持っている…欲求とは何だ?


羽黒
「そうだ、君には彼女を紹介しよう!」
「来たまえ、『PZ』(ピーズィー)!!」


羽黒の後からPZと呼ばれたPKMが現れる。
そいつは、歪んだ笑みで笑い、抑え込まれてる俺を見て目を細めた。
俺は体が凍り付いた様に感じる。
こいつは…この女は!?


羽黒
「彼女はポリゴンZだ…あのポリゴン2の進化系だよ」

大護
「テメェ!? P2に何をしやがった!!」


俺は暴れるものの、全く動けない。
解っていても、俺は叫ばずにはいられなかった。


羽黒
「おお、おお…凄い執念だ!」
「彼女は残念ながらこの通り、もう君に興味は無い」
「これから始まる戦争の為の大切なリーダーだからね!」


戦争…P2がリーダー?
待て、意味が解らねぇ…戦争したけりゃ勝手にやれよ。
何で、俺を巻き込む!? そんなもん、俺の知らない所で勝手にやりゃ良いじゃねぇか!?
何でP2なんだよ…? あいつは人畜無害じゃねぇか?
戦争なんて出来る訳ねぇだろ? 虫も殺せ無さそうな優しさを持った女だぞ!?


羽黒
「…意味不明という顔をしているね」
「だったら、少し教えてあげよう…彼女がいかに規格外かを」

大護
「規格…外?」


羽黒はクク…と笑い、下卑た笑みを浮かべる。
そして、何か妙な機械を取り出し、それを鳥女に向けた。
その機械は何かを読み込んだ様で、何やら数字が表示され、俺はそれを見せられた。


羽黒
「ヨルノズクである彼女のCPは911だ…まぁ、一般的に訓練されたPKMとしては優秀な方だろう」
「そして、君を囲んでいるPKMは皆それ位のCPと思ってくれて良い」
「末端の兵士は500以下のピンキリだが、一部の隊長クラスなら1000前後、幹部なら2000以上と言った所か」

大護
「待てや…そもそもCPってのは何なんだ!?」

羽黒
「おっと、それも知らなかったのか…これは失礼」


羽黒は蔑む様に息を吐き、やれやれ…と言った感じで説明を始める。


羽黒
「CPとはCombat Pointの略だ」

大護
「…!」


俺はすぐに直訳して理解した。
つまり、こいつらの強さって奴の目安だ。
俺は1000程度ね…つまりひとり頭で俺と同じ位。
それが複数ってこたぁ、随分徹底されたもんだな…


羽黒
「あくまで絶対的な数字では無いが、それでも桁が違えばそれは解りやすい差となる」
「ちなみに、このPZ…元P2のCPは24000程だ」


俺は一瞬聞き間違えたか?と思うが、羽黒は笑っている。
規格外のCP…それはつまり、こいつがそれだけ強ぇって事なのか!?


羽黒
「信じられないと言う顔だね…だったら軽くデモンストレーションしようか♪」
「37番、PZに『エアスラッシュ』だ」


羽黒がそう指示をすると、ヨルノズクと呼ばれた鳥女は右手を真上に掲げる。
そして、遠距離から手刀を高速で下ろし、PZの左腕はバッサリと切り落とされた。
まさに真空の刃…何て切れ味だよ。
だが、それ以上に異様なのはPZ。
PZは不機嫌そうに顔を歪め、左手を瞬く間に再生させてしまった。
その光景はまるで、仮想現実でデータが再構築されるかの様な光景。
まるで何事もなかったかの様に再生したPZの腕は軽く開いて、無造作にヨルノズクの前に出す。
すると、そこから光が放射され、37番と呼ばれたPKMは光に包まれて消滅してしまった。
そのまま光線は近くの家屋まで貫通し、1発で大惨事となったのが俺には良く解った。


大護
「何だよ、こりゃ? テメェ、何をしてんだぁ!!」

羽黒
「気にする事は無いさ、ゴミが焼却されただけだ」
「それよりどうだい? PZの力は?」
「今の一撃で優秀な兵士はひとり死んだが、お解りいただけたかな?」


狂ってやがる…こいつは、完全に頭のネジがどうかしてる!!
見た感じ、前方1kmは消滅してる。
遥か後方で大爆発が起きたせいで、騒ぎになってんぞ!?


羽黒
「はははっ、まぁこんなものは彼女の力としては序の口に過ぎない!」
「さぁ、我々のアジトに案内しよう、リア!!」


その言葉と共に、俺たちは一瞬でその場から消えた。
そして、俺たちはそれこそ意味不明な空間を漂っていたのだ。


大護
「何なんだ…ここは?」

羽黒
「アジトさ…まぁ何も無いがね」
「ここは反転世界…世界の裏側にあるとされるもうひとつの世界だ」
「ギラティナと呼ばれる伝説のポケモンが住んでいるとされる世界だよ」


伝説のポケモンだと!?
そいつは、まだロクに観測されてねぇんじゃ無かったのか!?
一体、何から何までどうなってんやがるんだ!?
俺は、何でこんな目にあってんだ?


羽黒
「まぁゆっくりしてれたまえ…私はこれから仕事があるのでね♪」


そう言って羽黒は消える。
ここにはPKMと俺しかいない。
そして、PZは鬱陶しそうな顔でイライラしていた。


PZ
「最悪ですね…! デモンストレーションとか、ふざけた事やらせるなんて」


「落ち着けPZ…貴様はこの連合のリーダーだぞ?」


突然PZの側に、逆さまで立っている仮面の女がいた。
その女は異様な出で立ちで、金髪のスラリとしたロングヘアーが美しい。
服は黒いウェットスーツみたいな物を上半身に纏っている。
バストはPZに勝るとも劣らない巨乳で、ウェットスーツのピッチリさがその形をはっきりと象らせていた。
が…その上半身のエロさとは裏腹に、下半身はムカデの様な黒色の蛇足。
金色の刺が無数に映えている気持ち悪さは、素直に嫌悪感を覚えるレベルだった。
一応、前掛けで股間を隠してるって事は、そこにはあるのか?
その…女の性器が。


PZ
「このクソッタレ…! リアの股間を見て欲情しやがったですよ!?」

大護
「ち、違う!! それは男のサガだ!!」
「そこに入れる穴があるなら勃つのが男だ!!」

リア
「…この私の姿を見て欲情とは、物好きな奴だ」
「余程女運が無いと思えるな…」
「まぁ、それでも望むなら相手をしてやらんでもないが…」


仮面の中から見えるふたつの瞳は、何故か寂しそうだった。
俺は、微妙に恐怖が薄れる。
何故かは解らない…ただ、こいつは他のPKMとは一線を画している様に俺は思えた。


PZ
「リア…! あんまり余計な事をしないでください!」
「すり潰しますよ?」

リア
「…それは困るな、まぁ挨拶の様な物なのだろう?」
「この世界の人間の男は、女と性交する事しか考えてないと聞いているからな」


それはかなりの偏見だぞ!?
世の男は皆エロいが、それだけでもないんだ! 多分…
とにもかくにも、いつの間にか妙な世界に連れ込まれた俺は、いわゆる絶体絶命という奴らしい…
少なくとも、目の前でイラついているPZは、P2が進化した姿。
服はこれまたウェットスーツの様なピッチリ系で、ボディーラインはグンバツ。
胸元だけ青色で塗られており、それ以外は赤。
髪型は赤髪ロングで変わらないが、頭の天辺に角の様な丸い突起が追加されていた。
そして、瞳の色…以前とは打って変わって金色の瞳。
まるで全てを憎むかの様に細めたその目は、酷く既視感を覚える。


大護
(似てる…昔の俺に)


俺もあの惨劇の後はしばらくこんな感じだった。
何もかもが憎く、生きている奴らが腹立たしい。
何故PZは、そんな顔をする様になってしまったのだ?


PZ
「な〜に見てるんですか?」
「貴方は今、獅子心中の虫…生かされてはいますが、殺されてもおかしくない」
「ですから、あんまり私をイラつかせないでくださいね?」
「間違って貴方を殺しでもしたら、こっちが面倒です」


やはり、性格はP2から真逆みたいに非情な性格だ。
だが、要所要所のツッコミは、まさしくP2と同じ人物だと俺には何となく解る。
…そして同時に、もう以前のP2は戻って来ないのだとも、何となく理解した。










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』



第2話 『強襲』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 22:00 )