終章 『Avenger』
第1話 『義理』
『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』










大護
「………」


とりあえず、改めて自己紹介はしておく。
俺の名は『石蕗 大護』(つわぶき だいご)…いわゆる、ちょっとした殺し屋だ。
今は拠点の近くにあるコンビニでタバコを吸っている。
特にやる事も無く、俺は暇を持て余していた。



「ちぃ〜っす、オジさんまだトラウマは治らない?」

大護
「…紫音ちゃんか、お前まだヘルスやってんのか?」


俺がタバコを咥えながら紫音という猫耳PKMを見ると、紫音ちゃんはニコニコ笑って手で輪っかを作る。
絶好調か…そりゃ重畳。


紫音
「でも、本番はしないよ? 私は…本番はオジさんが良いもん♪」


ヤロウ…エロい顔で言いやがって。
俺にトラウマがなければこの場で抱いてる所だ。
ぶっちゃけ、紫音ちゃんは良い女だよな…
保護責任者の為に体使って金稼いで、それでも明るく振る舞って。
俺たちが救ってやらなかったら、今頃はどんな事になってるのか…?
まぁ、そんな下らねぇ例え話は俺の嫌いな話だ。
とりあえず、俺はタバコの煙を吹いてくつろぐ。
平和だねぇ〜


紫音
「オジさん、働かなくて良いの?」

大護
「働いて無い訳じゃなんだぞ? これでも、仕事には真面目なんだ」

紫音
「ふ〜ん、でもそれって具体的には何の仕事なの?」
「お婆ちゃんを助けてくれた時は、確かに格好良かったけど♪」


流石にこんな少女の夢を壊す事は無い。
俺が殺し屋で、復讐代行をメインでやってるのはあくまで裏の事情だ。


大護
「…まぁ、正義のヒーローだよ」
「困ってる人がいたら、大金貰って助ける仕事だ」

紫音
「…それ、昔の○リーマンみたいだね」


むしろよく知ってるな!?
俺ですらまだ生まれてない頃のネタだぞそれ!?
何気に紫音ちゃん、本当は昭和の女なんじゃなかろうか?
って、んなわきゃない…これはネタだ。
そう、天から降り落ちる、神の啓示。
…アホらし、真面目に考えてもバカだなこれは。


紫音
「それじゃ、今日もお見舞いだから行くね♪」

大護
「おお、自転車とかには気を付けろよ? 轢かれたらすぐに俺が相手ぶっ殺してやるから!」

紫音
「うん! やっぱりオジさんは優しいね…だから大好き♪」


やれやれ…本当に可愛い奴だな。
トラウマ無かったら、妊娠するまでヤリ通すのに…



『ダイゴ、エッチな事考えてたでしょ?』

大護
「気のせいだ…断じて紫音ちゃんを孕ませたいとか考えてない」


『やっぱり考えてるじゃないですか!?』
『そもそもトラウマのせいでマトモに勃起も出来ないのに、贅沢な事考えないでください!!』


チクショウ! 俺だって好きでトラウマ抱えてるんじゃないやい!!
むしろ、○ックスとか憧れるわ! どんだけ気持ち良いんだよ!?

俺には、そんな快楽すら享受出来ないんだぞ…?


大護
「つーかP2、何か仕事の依頼は無いのか?」

P2
『それ、私に聞く事じゃないと思うんですけど?』


言い忘れていたが、俺の携帯電話から片耳のイヤホン(Bluetooth対応のワイヤレス)を通して声を出している女はP2(ピーツー)だ。
ポリゴン2とかいうPKMで、俺の相棒でもある。
まぁ、コンビを組んでまだ日も浅いが、それなりに信頼はしあってる仲だ。


P2
『…とりあえず、DVの事件は覚えています?』

大護
「…ああ、ビークインとかいうPKMが虐待されてたんだっけか?」
「バカだねぇ…人間なんか下手に信じるからそうなるんだ」


PKMは、いわゆるポケモン娘の略。
この世界では、PKMと言えばポケモンの事だ。
俺は詳しく知らないが、PKMってのはポケモンの為に作られた名称。
意味も理由も解らないが、とにかくそういう物らしい。
そして、この日本ではPKMは大増殖している。
既に1000人以上のPKMが日本で確認されており、日を追うごとに数は増えていた。
そんな世の中で、PKMをペットの様に引き取る飼い主も多くいるって訳だが…


P2
『…そのPKM、福さんと同じ所に収容されてるそうです』
『いわゆる懲罰房とかで、下手をすると2度と出て来られない…なんて噂もある場所らしいですね』

大護
「…待てよ、福さんは何もやっちゃいないだろ?」


福さんとはタブンネのPKMで、過去に俺が依頼を受けた依頼主だ。
あの人はただの優しい女性で、何の罪も無い。
むしろ、罪は俺が受けなければならないのに、何故あの福さんが?


P2
『…あくまで噂ですよ、真実は私には解りません』

大護
「ちっ、デマじゃねぇのか? ったく…脅かしやがって」


俺は露骨に不機嫌になって舌打ちする。
P2はそれが気に入らないのか、こんな事を言って来た。


P2
『デマじゃなかったら、どうするつもりだったんですか?』

大護
「決まってんだろ、収容所ぶっ潰して福さんを自由にする」
「依頼主への被害は何も残さない、それが俺の仕事だ」


俺のせいで福さんに危害が加わったなら、それは俺のミスでしかない。
だったら、何をしてでも福さんを救うのが俺の義務だ。


P2
『はぁっ…それで福さんが喜ぶんですかね?』

大護
「…ちっ」


俺は自分で言っててバカらしくなる。
短絡的なのは性格だ…つくづく殺し屋には向いてない性格だと思うさ。
まぁ、それでも俺はプロだ、仕事なら必ず完璧に遂行する。


大護
「…福さん、ホントに大丈夫なんだろうな?」

P2
『それは大丈夫ですよ、噂は所詮噂ですから』
『収容所の懲罰房は、そもそもPKMを痛め付ける為の物じゃ無いそうですし』
『それにこの街にある以上、あの御影さんがそんな非道を許すとは思えません』


確かに…俺は納得した。
御影 真莉愛、かつて俺の仕事中に出会っただけの知人。
たまたま事件に巻き込まれ、たまたま俺が助けちまった女だ。
それからしばらく会う事は無かったんだが、今回ひょんな事で日本に帰って来た俺は、真莉愛ちゃんと再会した。
そしたら真莉愛ちゃんはPKMに関する役職に着いているし、俺にとっては色々と面倒な事になってた。
そもそも真莉愛ちゃんは俺の仕事を知っているみたいだが、証拠が無いだけに深くは突っ込んで来ないって状態か。
とはいえ、下手をしたら俺の敵でしかない。
…まぁ、俺としては敵にしたくは無いんだけどな。


P2
『…そう言えば、ルザミィさんから電話が来てますよ?』

大護
「あん? だったら繋げ、何で着信音切ってんだよ…」


俺がそう言うと、P2は不満そうにルザミィと接続する。
俺は携帯電話を耳に当て、ルザミィと通話した。


大護
「おう、俺だ…何かあったのか?」

ルザミィ
『今日の事件は聞いた?』


は? と、俺はいきなり意味不明となる。
別にモンスター○ァームの技失敗モーションじゃねぇぞ?
P2といい、ルザミィといい、何でいきなり事件関係の話をしてくんだよ…
俺は正義のヒーローじゃねぇんだぞ?


大護
「んなモンは警察に言え警察に…」

ルザミィ
『はぁ…まぁ良いわ、期待してなかったし』
『それより、今日は11月21日…選挙結果発表の日よ?』

大護
「ん? …ああ、総理大臣の奴か」
「それの何が事件だってんだよ…選挙なんざやりたい奴がやりゃ良い」
「殺し屋が律儀に投票とかバカらしいわ」


ルザミィは特にコメントはしなかったが、何となくバカにされてる気がした。
チクショウ…良いから要件を言え要件を!


ルザミィ
『なら、その総理大臣が新しく変わったのは知ってる?』
『しかも、この街から出馬したひとりの政治家が当選したの…』


そいつは初耳だな…つーか、号外配ってたっけか?
総理大臣の交代とか興味ねぇから、まるで記憶もしてなかったわ。


大護
「で、それが何なんだ?」

ルザミィ
『詳しくはまだ調査が必要だけど、恐らく近い内に戦争が起こるわ』


は…? と、俺はポカーンとしてしまった。
戦争ってアホか…と普通なら言いたい所だが、スパイのルザミィが言うってこたぁ、それは限りなく起こる必然性があるってこったな。


大護
「…お前、何を探ってる?」


俺は少々凄んで問いただす。
ルザミィの野郎、明らかに何か知ってやがる感じだ。
そしてここで総理大臣の交代、戦争の引き金、な〜んか臭いじゃねぇか。


ルザミィ
『…ねぇ、私が死んだら悲しい?』

大護
「何言ってやがる? 俺はもう涙なんざ流し尽くしたぞ?」


まぁ、半分冗談だが。
どっちにしても、そんな例え話はどうでも良い。


ルザミィ
『多分、近い内に私は死ぬわ』

大護
「多分なら解かんねぇだろ?」

ルザミィ
『そうね、それならどれだけ良いか…』

大護
「おい、お前何を知ってる!? ふざけてんのか!?」


ルザミィは明らかに異常だ。
あまりに不可解すぎる態度。
一体何が起ころうとしてんだ!?


ルザミィ
『ゴメンなさい、忘れて…いっそ、私の存在全てと一緒に』

大護
「待てルザミィ!! お前…!」

P2
『通話…切れました』


ルザミィは言うだけ言って一方的に切ってしまった。
あいつ、何考えてやがる?


大護
「P2、ルザミィを監視しろ、直接会って取っ捕まえる!」

P2
『…ダイゴ、止めた方が良いかもしれませんよ?』


P2はいきなりやる気を削ぐ様な事を言って来る。
何でだよ? 明らかにルザミィの奴おかしいだろ?


大護
「まさかお前も何か知ってるのか?」

P2
『…知ってる、と言うより今知りました』
『たった今、新たな内閣府がマニフェストを発表』
『掲げるスローガンは、全てのPKMに人権を…』


何…だと!? 何考えてやがる内閣府は!?
今のPKMに人権? そんなモンが簡単に通ると思ってんのか?
少なくとも、加速度的に増加傾向のPKM問題は、既に収容所すら圧迫してやがる。
そんな貯まりに貯まったPKMに人権を与えるって、そんな事が起こったら世界が……っ!?


大護
「まさか…戦争って」

P2
『PKM関係の事かもしれませんね…ひょっとしたら、PKMを使って戦争を?』


だとしたら、日本は多大に有利だ。
PKMの数が圧倒的に多い。
今のアメリカの戦力を持ってしても、考えて動く虐殺兵器1000人以上を相手にしたら、火の10日間だろう。
まぁ、アメリカなら対策を強いている可能性も高いが、それでも戦争は戦争。
PKMは訓練さえ積ませれば、まさに戦略兵器にもなり得る最強の兵士だ。
これの最大の利点は他にもある。


大護
「仮に負けても、半ば無限に供給されるPKMが死ぬだけ…」
「日本側は大してリスクも無く、どこの国に対しても確実に国力を減らせる…」
「バカげてるぞ? PKMに人権与えて、兵隊にでも仕上げようってのか!?」

P2
『ですが、疑問はあります』
『PKMは確かに従えられるなら強力ですが、全てが攻撃的でもありません』
『訓練を施せば子供でも戦略級になりますが、それでは時間もかかるでしょう』

大護
「その時間が問題なんだ…! 日本のPKM出現率は世界一…」
「世界各国から見りゃ、目の上のタンコブだ」
「だからルザミィみたいなスパイが派遣されてる」
「日本は既に各国からマークされまくってんだよ…」


ルザミィは多分、その辺の事情を予測してやがるんだ。
勘は良い女だからな…そして粘着質がある。
やられたらやり返す気性の女だ、気に入らない事があれば、すぐに反抗するだろう。


大護
(てー事は、ルザミィの奴、アメリカ辺りから何か言われたか?)
(前にチラッとだけ、リーリエの野郎も見たからな…)
(何か吹き込まれたのかもしれねぇ…)


可能性は高い。
リーリエはちなみに、ルザミィと同様のスパイ女だ。
そもそもリーリエという名前自体が偽名だし、スパイらしく本名は名乗らない。
リーリエという名前は、俺たちが便宜的に使ってるだけの呼称だな。


大護
「ちっ、作戦変更だP2…葛を呼び出せ」

P2
『はい、葛さんに発信します』


P2は葛の携帯に発信し、やがて数コールで葛が出る。
俺はやや緊迫感を持って葛に開口一番こう言った。


大護
「葛、内閣の情報を探れるか?」


『今、仕事中やぞ? 後にせぇ!』


速攻で切られた…チクショウ、真人間め!
まぁ仕方無いか、要件は伝わってるだろ。
とりあえず俺は1度、駅前の辺りまで向かう事にする。
腹も減ったし、少し腹ごしらえするか…


大護
「っと、それならP2起こしてやるか…」

P2
『私、焼肉食べたいです♪』

大護
「しゃあねぇな、○スバで焼肉ライスバーガー買うか…」

P2
『そんなの有るんですか?』


当たり前だ、美味いんだぞアレ?
あの値段で焼肉をとりあえず食えるのはお得感がある。
まぁ、流石に量はしれてるが、安く済むに越したこたぁねぇ。


P2
『う〜ん、ダイゴはファーストフード率が高いですよね?』
『後コンビニ弁当…』


そりゃそうだ、自炊する気ねぇからな。
ちなみに作れねぇわけじゃねぇぞ? 作らないだけだ。
飯なんて速いのが1番だ、買ってすぐに食えるのが効率的なんだよ。


大護
「大体金が余裕ねぇんだよ…依頼も最近少ねぇし」


まぁ、殺し屋の依頼がそうポンポンあってもアレなんだが。
とはいえ、紫音ちゃんの時の一件で一気に貯えが無くなったからな…
それもこれもルザミィと葛が吹っ掛けてくるからだ!
恨むならあのふたりを恨め…


P2
『はぁ…ダイゴろくでなしです』


遂にため息まで吐きやがった!
くっそ…コイツも段々図々しくなっていくな。
PKMつっても、コイツは人間と変わりゃしねぇ。
そんなPKMに…人権、ねぇ。



………………………



P2
「へぇ〜確かに美味しいですね、これ♪」

大護
「だろ? ちゃんとしっかり焼肉してるし、ライスでサンドしてるから食いやすい」
「がっつりした量は食えねぇが、とりあえず焼肉食いたいならお得だ」


俺たちは結局○スバで昼飯を食っていた。
店内は流石にモロ混みで、最近寒くなってきたせいか皆外では食ってない。
俺たちは仕方なく外のテーブルで焼肉ライスバーガーをふたりして食っていたのだ。


P2
「オニオンリングも美味しいです♪」

大護
「お前も結構食うよな…」


P2はセットで頼んだオニオンリングとポテトを美味そうに頬張る。
ポリゴン2って、人工的に造られたポケモンだそうだが、こうやって見るどこが人工なのかが解らん。
とはいえ、コイツは電脳空間を自由に行き来出来るし、ハッキングやスキャンも思いのまま。
GPS乗っ取って特定人物のサーチまで出来るから、色んな意味で現代社会ではチートな存在だ。
むしろ、こんなPKMが何であんな所にいやがった?

考えてみれば、P2には謎が多い。
大抵のPKMはまずゲートとかいうのを潜って出現するらしいが。
それは大抵すぐに真莉愛ちゃんたち対策班が回収していると言う流れだ。
だが、P2はその対策班の目を逃れて密輸関係者に捕まってた。
他にも似た様な境遇のPKMがいた所をみると、実際には対策班の手に負えない量のPKMが出現しているんだろうな。


大護
(そこへ、新たな総理大臣か…)


俺は号外の新聞を手に持ち、内容を見る。
新内閣総理大臣、名前は…『羽黒 芸知巣 』(はぐろ げいちす)か。
写真で見る見た目は、特に変哲も無いオッサンだ。
やや色白の肌に、長方形の銀縁眼鏡、綺麗に整えられた角刈りのその風貌はやや厳つく、政治家と言うにはあまり似つかわしくない様にも見えた。
経歴も特に目を引く物はねぇな…つい最近までこの街で市長やってて、今回の選挙に出馬、そのまま当選か。
投票数自体はかなり僅差で、たまたま当選した…とも取れる内容みたいだが。


大護
(だが、あまりにもタイミングが合いすぎてる)


俺はホットコーヒーを飲みながら新聞を睨む。
P2も食べ終わったのか、熱々のコーヒーに手こずっている様だった。


大護
(何故、あえてPKMの人権獲得を全面に押し出したんだ?)


今の日本の情勢を考えれば、人民はそれだけPKM関係の政策を望んでいるとも取れるが。
もし戦争を起こす気なら、こんなマニフェストは逆効果だ。
普通、水面下で進行させるだろ?
こんなモン公表されたら、それこそ世界が動き出すぞ?


大護
(いや、まさかそれが狙いか?)


ワザと手を出させて大義名分を得る…
日本に大勢のスパイがいるのは間違いない。
まず、間違いなく日本の内政は外に漏れてる。
だったら、手を出した奴らがまず標的になる可能性は高いな。


大護
(なら、ルザミィは誰と戦おうとしてる?)

P2
「難しい顔してますけど、そんなに首相が気になりますか?」

大護
「そりゃそうだろ…戦争だぞ?」
「しかも下手すりゃ世界大戦だ、PKMが戦場を駆け回って人を駆逐していくんだぞ?」


P2はそれを聞いて、すぐに悲しそうな顔をする。
こいつ、変な所で頭が回ってないのか?
まぁ、人間からしたらPKMなんざ、皆浮世離れしているモンだろうがな。


P2
「でも、私はそんなのしたくないです」

大護
「そう、そこが問題だ」


俺はP2を指差して指摘する。
まさにP2の言ってる事は真理だ。
PKMには明確に意志や性格がある。
1000人以上もの千差万別の意志を持ったPKMが、戦争です戦ってください、と言って素直に従うのか?
常識的に考えれば有り得ない。
だが、ルザミィは戦争が起こると言った。
まず間違いなくPKM絡みで、だ…


大護
「…P2、PKM1000人を一気に洗脳とかする方法はあるのか?」

P2
「強力なエスパータイプなら有り得ますね、それこそ伝説のポケモンとかになれば可能でしょう」
「一例に挙げますと、アグノムみたいな能力があれば、1000人位は軽いと思います」


アグノム…ねぇ?
どっちにしても伝説か…そんなモンを抱えてる可能性はあるのか?
こういう時は、関係者に直接聞いてみた方が良いな…


大護
「………」

P2
「誰にかけてるんですか?」


俺は携帯電話を取り出して発信する。
呼び出す相手は…



『大護君? 一体何の用?』

大護
「真莉愛ちゃん、ひとつだけ聞きたい…」
「今の日本に、伝説のポケモンとかは確認されてるのか?」


電話の向こうの真莉愛ちゃんは驚いていた。
だがすぐに冷静な声でこう返してくる。


真莉愛
『…いないわけでも無いけれど、極めてレアケースよ?』
『それも、1000人にひとりでもいれば大当たりって位の確率』


成る程、やはりいるにはいるのか。
と、なると可能性はやはりあるのか?


大護
「そいつは、何してるんだ? もしかしてエスパーとか言う奴か?」

真莉愛
『残念ながらそこからは極秘よ…貴方に教える事は出来ないわね』
『後、伝説って言っても、ピンキリよ?』
『世界に影響を及ぼす様な強大な力を持ったPKMは、まだ観測されてない』
『つまりは、そういう事…』


それだけ言って、真莉愛ちゃんは通話を切る。
成る程な、とりあえず今の所そういったレアなのは観測すらされてねぇってか。


P2
「…御影さん、ですか」

大護
「とりあえずPKMの専門だからな、今の所そういうのは観測されてないらしい」

P2
「でも、洗脳の可能性が無いわけではありませんよ?」

大護
「だろうな、だがそうなったら探すのが大変すぎる」
「街中探し回って、見た事も無いPKM探すとかどんだけ苦行だよ…」
「しかも一口にエスパーつっても、色々いんだろ?」


俺はあれからポケモンについて色々調べた。
基本的にはゲームのキャラで、それが人化して現実に出て来たってのが今の情勢だ。


P2
「仮に戦争に利用するとしても、所詮強い兵隊止まりですよ?」
「確かに人間は全く痛みませんが、大国がその気になれば爆撃でも毒ガスでも、戦略級兵器を使えば逆にPKMは簡単に駆逐出来ます」
「基本的には、野性動物に毛が生えた位の強さのPKMが大半なんですから」


確かにな…あくまでPKMを使うならやはり訓練が必須だろう。
適当に突撃させて、戦車や航空機に勝てるPKMは少ないってわけだ。
しかし、そうなるとやっぱ解かんねぇ。


大護
「ルザミィは戦争が起こると言った」
「だったら、戦争するメリットは何だ?」
「勝算の無い戦争なんざ馬鹿げてる」

P2
「…何か、別の目的があるとしか思えませんね」
「例えば、戦争を起こす事で、PKMの反応を見る…とか」


反応ねぇ…つまり戦争は実験の一環ってか?
どんだけ非人道的なんだよ…まぁ、例えだが。


大護
「とりあえずルザミィを探すのは後だ、今は内閣を調べる」

P2
「ハッキングしましょうか?」

大護
「それは、専門家の仕事だ…夜には終わってるだろ」


俺はそう言って席を立つ。
後はそのまま拠点に帰って昼寝した。



………………………




「…来たか大護」

大護
「予想通り今夜だったな…で?」


俺は葛に夜中呼び出され、いつものコンビニで会っていた。
だが、葛の表情は暗い。
一体、何を見付けやがった?



「…単刀直入に言うたる、これはお前の仕事やない」

大護
「…何を見た?」


葛は真剣な目をしていた。
それは決して冗談で言っている顔じゃないのは理解してる。
つまり、それだけ今回の一件は常軌を逸してるって事だな。



「…大護、すぐに日本を出ろ」
「今なら全部忘れて逃げれる…そんでP2ちゃんと幸せになれ」

大護
「お前はバカか? んな事出来るか、俺ぁ…」


「全員死ぬぞ!? 戦争や、もう止められへん…!」
「おかしいやろ? 何でこないな事になってんねん!?」
「奴は何が目的なんや? この街には一体何がある!?」


葛はヒートアップして声を荒らげる。
幸い近くに人はいねぇが、聞かれたら職質モンだぞ?


大護
「落ち着け葛! 何を見た? 何で戦争が起こる?」
「奴とは、誰だ!?」


俺は葛の肩を揺らして詰め寄る。
葛は俯き、歯軋りしていた。
コイツの事だ、大方PKMの事でも考えてたんだろうな…



「ルザミィは、行方不明やな?」

大護
「…ああ、妙な電話をかけて来た」


「そうか…なら、ルザミィはもう」

大護
「…スパイ同士の食い合いか?」


葛は無言だったが、肯定している様にも感じた。
日本にスパイは多い、当然獲物の取り合いもあるはずだ。
そして、明確に戦争が起きると知れば、スパイ共は躍起になる。
我先に我先にと獲物を探すだろう。
そして、同時に必要の無いスパイは駆除されていく。


大護
「リーリエはこの街にいるのか?」


「解らん…神出鬼没やからな」
「せやけど、裏で死体になっとるスパイの数から考えて、噛んどる可能性は高いな」


何てこった…既にお国は動いてんのかよ?
だとしたら、ルザミィももう争いに巻き込まれてる。
あいつは、殺されるのを予想してあんな電話を…


大護
(…ルザミィ、あいつまさか泣いてた?)


俺は何となくルザミィの気持ちを想像してみる。
最初は仕事でたまたま協力関係になっただけの間柄だが、気が付けばお互い不思議な距離感でいたのかもしれない。
ルザミィはあんな性格だ、真面目なのかふざけているのかもはっきりしない物言いが多かった。
だが、それでもあいつは1度たりとも弱音や涙は見せた事が無い。
そんなあいつが、泣いてたかもしれなかった…?



「大護、踏み込んだら戻れへんくなるぞ?」

大護
「上等だよ…ルザミィが死ぬかもしれねぇなら、俺は戦ってやる」
「大統領だろうが総理大臣だろうが、皇帝様だろうが、俺のダチを殺そうとするなら敵だ」
「これは、仕事云々じゃない、義理だ」
「ルザミィには、恩がある…お前にだってもちろんだ」


俺は強気に言う。
実際には、かなり難しい戦いになるだろう。
だが、俺は諦めるわけにはいかない。
ルザミィの危機に駆け付けられなくて、何がヒーローだよ。
今更正義の味方なんかになるつもりはないが、俺はルザミィの為なら1度位はあいつのヒーローになってやる!



「…解った、なら俺も腹括るわ」
「やるからには地獄まで付き合ったる!」

大護
「ああ、頼むぜ親友…」


俺たちはぐっと互いの右手を合わせて握り込んだ。
こうして、俺たちの新しい戦いが始まる。
だが、これはあくまで始まりに過ぎない。
ここから先に待ち構えている苦難は、正直俺の予想を遥かに超える物だったと、後の俺は語るだろう…










第1話 『義理』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:26 )