終章 『Avenger』
第6話 『屑の覚悟』
PZ
「ああああぁぁっ!!」


私は怒りに任せて辺りを吹き飛ばしていく。
人は恐れ、逃げ惑い、私に憎悪の念を向ける。
だけど、私の心は何ひとつ晴れない。
そう、たったひとりの人間がいなくなっただけで、私は例え様の無い怒りに震えているのだ。


PZ
「クソが!! 何故逃げるんですか!?」
「悔しくないんですか!? 立ち向かう勇気も無いのですか!?」
「そんなんだから…そんなんだからあいつはぁ!!」


私は出鱈目にトライアタックや放電を繰り返す。
辺りの住宅やビル郡は次々と倒壊し、もはや阿鼻叫喚となっていた。


蛭火
「あ〜あ、ウザッ」
「リーダー、完全にぶちギレてるし」

細歩
『大護いなくなった…だからリーダー怒ってる』


下らない…何なんだこれは?
誰も立ち向かおうとしない…そんなに私が怖いんですか?
憎むだけなら、バカでも出来ますね。
全く…生きてるだけ無駄な連中ですよ。


PZ
「…こんな奴ら、早く滅べば良いのに」


「そうか…そんなに他人が憎いのか?」


突然、私の前に誰かが立つ。
それは、何故かメイド服を来た鳥ポケモンだった。
茶色のロングヘアーを靡かせ、同色の翼はかくも美しい。
間違いなく、多くの人間が綺麗と答えるであろう風貌だった。
だが、私にはそんな事は関係無い。
立ち塞がるなら、それは戦う意志があると言う事。
ようやく、楽しませてもらえそうですねぇ!?


PZ
「さぁ、何秒耐えられるか見せてもらいましょうかぁ!?」


私は開幕右手から冷凍ビームを放つ。
一瞬で正面数10mは凍り付き、一帯の気温は低下する。
だが、そこには誰もいなかった。



「遅い攻撃だな、私を舐めすぎていないか?」


それは上空からの声。
私は瞬時に全身から放電し、まずは距離を探る。
すると、相手は目にも止まらぬ速度で飛行していた。
こいつ、ただのPKMじゃない!?


蛭火
「…細歩、奴のCPを測定」

細歩
『とりあえず8000以上、まだ上昇してる』
『でも、リーダーには及ばない…と思う』


細歩は相手を凝視し、CPを測定する。
細歩のエスパー能力を使い、大まかですが測定可能です。
とはいえ、正確な値は割り出せないのですが。


蛭火
「8000以上!? 私たちの倍近くのCPですって!?」


とりあえず蛭火は驚愕していた。
そりゃそうでしょう…CP4000あれば、連合じゃ幹部クラス。
私の足元にも及びませんが、まだ上昇してるとなると、油断は出来ませんね。



「君は少し冷静になるべきだな」
「力は凄まじいが、使い方がなっていない」
「それでは私に当てるのは無理だ」

PZ
「ちっ!!」


私はロックオンを試みるが、まるで定まらない。
音速超えそうな速度で旋回してますね…鬱陶しい事です。
私は一気に頭を冷やして判断を変える。
そして、相手から攻撃してこないのを良い事に、私はトリックルームのチャージに入った。



「くっ!?」


私を中心に発生したトリックルームは半径200mを球状に覆う。
相手は運良く射程外に逃れましたか…ホントに鬱陶しいですね。



「危なかった…まさかそんな技も使えるとは」

PZ
「臆病者が、近付く気は無いんですか?」


私の挑発にも相手は動じない。
だが、やや顔を険しくはした様です。
とはいえ、この状態で飛び込んで来るのは愚行。
この中にいる限りは、私にも攻撃はまず当たりませんからね。


蛭火
「…あれピジョットよね? あんなLv高いの観測されてた?」

細歩
『有り得ない、だからあれは多分CPをコントロール出来るタイプのPKM』
『連合で出来るのは、リーダーとリアさん、後カネ位』


蛭火は舌打ちして分析していた。
ピジョットでしたか…まぁ検索したらすぐ解るんですけど。
しかし成る程、ピジョットは全ポケモンの中でも飛行速度は最速クラスと言われるマッハ2。
そんな速度で飛び回られたら、この辺一帯はソニックブームで吹き飛びますね。
今は幸い全て瓦礫の下ですし、気に止む事は無いんですけど。


ピジョット
「…君は、何故そんなにも心が冷たい?」
「君の技はどれもレベルが高く、とても一朝一夕の技とは思えない」
「それだけの力がありながら、何故君はこんな破壊活動しか出来ない!?」

PZ
「説教で時間稼ぎですか? 姑息ですね…」
「私に心なんて邪魔なだけです、私は人工的に造られ、進化したポケモン」
「いわばデスマシーンですよ♪ 破壊するのが仕事です」
「なので、良い加減落ちろカトンボ!!」


私は相手の動きが止まった間にロックオンを完了。
そのまま10万ボルトを構えて一気に放射した。


バチバチバチィ!!


ピジョット
「ぐあぁぁっ!!」


ピジョットは呆気なくアスファルトに落ちる。
私は余裕の笑みを浮かべながら、ツカツカと歩いて近付いた。
まだルームは効果中。相手はほとんどスローモーションですね♪
私は笑いが堪えられずに震える。
偉そうにベラベラと喋ってましたが、これが現実!
弱い奴に生きる術は無い!
私に勝てる奴は、やっぱりいないんですね…


PZ
「お別れですね、じゃあさような…」


ドガッ!!と突然誰かに後頭部を殴られる。
背後からの奇襲に私は一発で意識を失った。
そんな…!? レーダーには、何…も……


ピジョット
「!? き、君は?」

リア
「…悪いがここまでだ」
「貴様との戦いはシナリオに無い、去れ」


私は気絶したPZを肩に担ぎ、ピジョットを尻目にそう言う。
だが、ピジョットは食い付く様に私に向かって言葉を放った。


ピジョット
「待ってくれ! 君たち連合は何を考えている!?」
「何故戦争など起こす!? こんな破壊活動に何の意味がある!?」

リア
「貴様たちがそれを知る必要は無い」
「精々、犠牲の上の安寧を受け入れろ…そのせいでPZはこうなったんだからな」


私はそれだけ言って蛭火や細歩と共々裏の世界に消える。
やれやれ、目を離したらこれとはな…軽く恐怖したぞ。
もし、あれに何かあったら、またやり直す羽目になる可能性があった。
とはいえ、理由を言うわけにもいかん。
下手な言葉はレールを切り替えかねない。
今は、何とかこのまま突き進むしかないんだ。


ピジョット
「…犠牲? 何なんだ…それは?」



………………………




「…出たで!?」

ルザミィ
「ええ、大護のGPSが確認出来たわ!」
「…あまりにも、明け透けだけど、罠じゃないわよね?」


「…大護やからな、偽装の可能性はあるが」


俺たちは、大護の携帯に仕込んであるGPS発信器をようやく捉えた。
今まで何があったんかは解らんが、どうやら移動しとる。
しかし、地下…か?
俺はとりあえず、それを確認すると、一旦拠点を出る事にした。
まずは合流せんとな!


ルザミィ
「待って! 素直に外に出るのは危険よ?」
「もしかしたら、大護の携帯を使って私たちを誘き寄せようとしてるのかも」


その可能性は高いか…確かに、素直に追うのは危険やな。
とはいえ、何かコンタクト取る方法は無いんか?



「ダミーの携帯使って連絡取るか?」

ルザミィ
「逆探知されたらアウトよ? 確実に私たちはマークされてる」
「かなり消極的だけど、何か別の方法で大護を呼び寄せる方が良いわ」


「ちっ、やっぱアナログな方法しかないか…」


俺たちはとりあえず色々考えてみる事にした。
何にしても、大護とは合流したい。
無事の確認もあるが、何よりもPZちゃんを助けるには大護が必要なんや!



………………………



紫音
「…あれ? この匂い!?」


私はついにオジさんの匂いを見付けた。
それは間違いなく懐かしい匂い…なんだけど、何か色々混ざってる?
むぅ…オジさん、一体誰とナニしてたのよ〜!?
とはいえ、やっとの思いで見付かったオジさんの手掛かり。
私は狂喜乱舞し、躍りながら匂いを辿って行った。
絶対に助けるからね、オジさん♪



………………………



大護
「これで良いか」

ピーチ
『座標確認、コンマ5のズレが確認されますが?』


俺が地下に設置したとある兵器に対し、ピーチはツッコム。
俺は軽く頭を掻き、良く解ってないピーチにこう言ってやった。


大護
「こいつは射出角から目標地点までに多少誤差が出る」
「それに、いざ本番となったら定位置に相手がいる保証は無い」
「だから、この誤差はおまじないみたいなもんだ…」
「元々、そんなに細かく計算する必要は無いからな…熱源感知でロックするんだし」

ピーチ
『…成る程、おまじないですか』


一応、ピーチは納得した様だ。
俺は軽く笑い、とりあえず地上に上がる事にした。



………………………



大護
「…随分、荒れちまってるな」

ピーチ
『連合による無差別テロで、この街にはもうあまり人は住んでいません』
『何故連合がこの街に出没するかは不明ですが、何かあるのかもしれませんね』


俺はタバコに火を点け、軽く休む。
周りは大体瓦礫の山…人もPKMも姿が見えねぇ。
これじゃ、今後は拠点変えねぇと仕事が無くなりそうだな。



「石蕗 大護ね? やっと見付けたわよ」


突然、俺の横から声。
その声の主はかなり特徴的なファッションの黒人女性だった。
目は妖しく笑い、まるで俺を品定めするかの様な視線で全身を眺めている。


ピーチ
『検索完了、カプ・テテフと予測』
『恐らく、連合幹部と思われます、注意を!』


俺は言われて懐の銃を持つ。
だが、そいつは特に動じる事無く、ただ笑っていた。



「私はカネ…とりあえず話をしたいだけなんだけど?」

大護
「信用出来るか…前は囲まれて捕まったんだからな」


俺は銃を突き付けて睨む。
カネと名乗ったPKMはふぅ…とため息を吐き、軽く目を光らせた。
すると、俺の銃は意味不明な力でバキベキと破壊されてしまう。


カネ
「そんなオモチャじゃ、どの道効果は無いわね」
「人間が作った武器なんて、私には正面からじゃ通じないわよ?」

大護
「ちっ、PZかリア辺りからの差し金か?」
「それとも、ボスの命令かよ?」


俺が舌打ちし、銃の残骸を捨ててタバコの煙を吐くと、カネははぁ…と更に長いため息を吐いた。
何なんだこいつ? 話があるって言いやがったが、何考えてやがる?


カネ
「私に命令出来る者はいないわ」
「だから、これは私の意志」
「私の考えと決定で今ここにいる」
「石蕗 大護…まずは貴方を知らせてもらうわ」


そう言ってカネは歩み寄る。
すると、俺の体は軽く浮遊感に捕らわれた。
カネは笑いながら目を光らせている。
俺にはどうしようもない…こいつは他の奴らとは明らかに違う。
下手に刺激しない方が良いだろうな。


カネ
「ふふ、素直なのは良い事よ?」
「…ふーん、随分復讐に拘っているのね」
「悪意、憎悪、でもそれは根底にある優しさから発生した物…か」

大護
「…何しやがった? お前も細歩みたいに心が読めるタイプか?」


俺の言葉にカネはふふふ…と笑う。
それなりに満足したのか、俺は解放され、カネは軽く髪を払った。
パッと見は美人だ…だが掴み処が無い。
連合幹部が、一体何の目的で俺に会いに来た?
いや、違うな…こいつは自分の意志でと言った。
ここに来たのは、連合としての立場じゃない。
こいつはあくまで個人の興味でここに来たんだ。


カネ
「私は鱗粉を通して相手の意識を探るの」
「エスパーと言うより、フェアリー寄りだからね私は」

大護
「フェアリー? 妖精さんかよ…あんましそうは見えねぇが」

カネ
「そりゃ、PKMだもの…人間とはそんなに見た目が変わらないわ」


確かに。そりゃそうか。
考えた所でそんな事は些細な事だな。
こいつは人間と変わらない。
特殊な力は持ってるが、それでも他の奴らと変わらない心を持ってる。
目的は解かんねぇが、まぁ話せば解りそうだな。



………………………



カネ
「ふ〜ん、それじゃあリーダーと出会ったのは本当に偶然なのね?」

大護
「そうだな…それでも、結局救えやしなかった」


俺は近くの瓦礫を椅子代わりに座って、カネと会話を続けていた。
P2との出会いやら、俺の過去やら、何となくの気分でとりあえず語る。
カネはそれを別に嫌とも思わず、むしろ優しそうな微笑みを浮かべて聞いていた。


カネ
「貴方は、リーダーを救いたい?」

大護
「いずれな…だが、それは悪いが後回しだ」
「俺には譲れねぇ訳がある…テメェん所のボスには復讐しなきゃなんねぇ」

カネ
「良いんじゃない? あいつは死んで当然の人間だし」
「あいつが死ねば、連合も解体…晴れて戦争は終結する」
「私は、それをちょっとだけ手伝ってあげる…」


そう言ってカネは俺に顔を素早く近づけ、笑ってキスをする。
俺は突然の事で頭がグチャグチャになり、途端に吐き気を催した。


大護
「ぐっ!?」

カネ
「あ、あら? そんなに苦しかった!?」

ピーチ
『トラウマ発動です、お気になさらず』


俺は何とか嘔吐は堪えるものの、かなり気分を悪くしてしまう。
クソッタレ…たかがキスでこれとはな。


カネ
「…トラウマねぇ。そんなに反応されるとは思わなかったわ」

大護
「…ぐっ、これも俺の復讐の糧だ」
「何がなんでも羽黒を殺す! それが俺のトラウマを乗り越える鍵なんだからな!!」


俺の脳裏には、未だに姉の虚ろな死体の表情がこびりついている。
そして、それを犯した羽黒…俺は奴を必ず殺す!
だが、何故かこの時、俺はP2の顔を思い出した。
思えば、P2の顔は姉貴に似すぎている。
理由は解らないが、確かに似ているんだ。
…ホントに何でなんだろうな。


カネ
「…貴方は危ういわね」

大護
「構いやしねぇ…ヤツさえ殺せるなら、俺はどうなろうと」

ピーチ
『ですが、それでは私の本体は救えません』


俺は、言葉に詰まる。
確かに、そうなんだが…それでも、俺は。


カネ
「…良いんじゃないの? その為にリーダーの所にはリアがいるんだし」
「同時に私がここにいる…だから、大護は好きにすれば良い」

大護
「…何でお前がそんな事をする? 連合の幹部だろうが?」

カネ
「そんな肩書きは、ただ自由に動く為の免罪符に過ぎない」
「私は私の自由に生きる…そして、私は勝手に貴方を手伝うと決めた」
「それだけの事よ…貴方は利用するだけ利用すれば良い」


カネはあっさりとそう言う。
俺は軽く笑い、そうかよ…と呟く。
なら、利用させてもらうさ。
俺は俺で、羽黒を殺す事に集中する。
PZの事は今は良い、リアが絶対に守ってくれるさ。


大護
「…決行は明日だ、明日ヤツと決着を着ける」

ピーチ
『本当に来るのですか?』

大護
「来る…ヤツは絶対にやられないと言う自負が多分ある」
「罠だらけだろうが、俺は踏み込むだけだ」


そう、これは俺が調べた結果だ。
ヤツは必ず、定期的にこの街の拠点に戻る。
理由は解らねぇが、何かあるのは確かだ。
俺はその日に奇襲をかけるだけで良い。
俺が死ぬか、ヤツが死ぬか…結果はどちらかしかない。


カネ
「当日は私が露払いしてあげるわ」
「貴方は復讐に集中しなさい」

大護
「ああ、そのつもりだ。助かるぜ」


俺が素直に感謝すると、カネは少し複雑そうに顔を背けた。
何だ、可愛い所あるじゃねぇか♪
いきなりキスされたのは焦ったが、まぁ事故だと思っておこう。


ピーチ
『フラグが立ちました』

カネ
「ちょっ!? 別に私はそう言うんじゃないわよ!?」

大護
「やれやれ、しっかりと頼むぜ?」
「こうなった以上、俺らは一蓮托生」
「やるかやられるかだ…死にたくないなら今の内に逃げろ」


俺はそう言ってカネに手を出す。
カネは躊躇う事無く、微笑して俺の手を握った。
冷たい手だったが、別に悪い気はしない。
さて、終わりは見えて来たな…ようやく。
25年か…長かった。



「オッジさーーーーーん!!」

大護
「…ん?」


何やら騒がしい声で、こっちに駆け込んで来る猫娘がひとり。
そいつはかなり必死な形相で全速力を出して走っている。
その速度は人間に出せる速度ではなく、明らかにPKMだと解るスピードだった。
そして、そいつはこっちに向かってジャンプする。
カネは何か危険を感じ取ったのか、俺から手を離して離れる。
すると、ジャンプしたそいつは俺に向かって蹴りを見舞う。

メキャァ!と顔が歪む音。
俺は防御すら出来ずに顔面を蹴り抜かれ、そのまま吹き飛んだ。


カネ
「…あら」

猫娘
「あ、あれ!?」


吹き飛んだ俺を見つつも?を浮かべる猫娘。
俺は数m吹っ飛んだ後、ヨロヨロと体を動かして何とか立ち上がる。
くっそ〜意識飛びかけたじゃねぇか…


大護
「この野郎…いきなり飛びかかって来るとは良い度胸してるじゃねぇか!?」

猫娘
「タ、タンマ! ストップ!!」


俺は手の指をボキボキと鳴らしながら、目を釣り上げて猫娘を睨む。
すると、そいつは両手を前で振って叫んだ。
その時点で、俺は冷静になって相手を見る。
そこにいたのは、もう何度も見たであろう猫耳PKMの姿だった。


大護
「…紫音ちゃんじゃねぇの、何で襲いかかって来たわけ?」

紫音
「だから違ーう! オジさん助けようとしたら、この人が避けるから…」

カネ
「あら、知り合い? 可愛らしい猫ポケモンね♪」


カネは楽しそうに笑って両腕を胸の下に回し、重そうな乳を支えた。
それを見てか紫音ちゃんはやや毛並みを逆立て、カネを威嚇する。
おいおい…一体何だってんだよ?


紫音
「オジさんから離れて! もうオジさんはどこにも連れて行かせない!!」

カネ
「ふ〜ん、良いわね貴女。とっても良いわ♪」
「貴女の心は純粋、多少汚れているけど、とっても真っ直ぐ」
「でも、ここから先戦うのは少し力不足よ?」
「お姉さんは敵じゃないから、今は信じてもらえないかしら?」


そう言ってカネはウインクし、紫音ちゃんを宥める。
お姉さん、ね…ってカネの年齢とか知らねぇけど。


紫音
「…そうなの?」

大護
「そうだよ…カネは俺に味方してくれるらしい」
「理由は…解らねぇがな」


俺の言葉を聞いて紫音ちゃんは警戒を解く。
とはいえ、カネの雰囲気は独特の何かを放ってるからな。
紫音ちゃんも流石に完全には信じられない様だ。


紫音
「オジさん、これから何をしようとしてるの?」

大護
「…紫音ちゃんは、もう帰りな」
「多分、これが最後だ…勝っても負けても、これでお別れだ」


紫音ちゃんはそれを聞いて目を見開く。
そして、涙目になって俺にこう詰め寄った。


紫音
「お別れなんてどうして!? 私、まだ何も返せてないのに!!」

大護
「良いさ、もう十分返してもらったよ…」
「毎日、挨拶して、軽く話して、それだけでも俺は癒された」
「こっからは、紫音ちゃんが踏み込んじゃいけねぇ領域だ」
「俺は、紫音ちゃんを裏の世界になんか巻き込みたくない…」


これは本音だ。
俺は、短い間でも紫音ちゃんと会うのは嬉しかった。
俺なんかが人助けして、毎日笑ってくれる。
それが、どれだけ俺の力になったか…
だから、もう良いんだ。
紫音ちゃんは、何も知らないまま、生きていてほしい。


紫音
「そんなの……そんなの嫌だぁ!!」


紫音ちゃんは泣き叫んでしまう。
俺の胸に飛び込んで、わんわん泣く。
俺はどうしたら良いのか解らずに、紫音ちゃんを抱き締める事すら出来なかった。


紫音
「私、オジさんの事好きなのに!!」

大護
「…!!」

紫音
「私、オジさんの為なら何でもする!!」
「だから、お別れなんてやだぁ!!」


紫音ちゃんは強く抱き締める。
その力は流石PKMと言うべき力で、俺は簡単には振りほどけそうに無かった。


大護
「紫音…ちゃん」


初めてだった…誰かに好きだなんて言われたのは。
俺は誉められた人間じゃない。
屑で外道で最低の人種だ。
そんな世界のゴミが、誰かに好きだなんて言われて…どうすりゃ良い?
こんな可愛くて、純真な子供を巻き込むのか?
そんな、残酷な事無いだろう?
これは、屑の仕事だ。
個人的な復讐を果たす為だけの、ただの自己満足だ。
そして、それはもう退けない…俺はそんな所まで来た。


大護
「…ありがとな、紫音ちゃん」


俺はドカッ!と紫音ちゃんの耳の裏を強打する。
人間と違う位置だから効くか解らなかったが、ちゃんと気絶した様だ。
三半規管の位置はあんま変わらなかったみたいだな。


カネ
「それで、良いの?」

大護
「ああ、この娘は関わる必要はねぇ」
「俺は人間の屑だ、誰かに愛されるなんて、あっちゃいけねぇ」


カネはそれを聞いて少し眉をひそめる。
そして無言で気絶した紫音ちゃんを受け取った。


カネ
「…屑、ね」
「私からしたら、他の人間の方がよっぽど屑に見えるわね」
「ただ怠惰に生活して、生かされてる事にすら気付かないで」
「貴方の様に、全てを覚悟して生きてる人間なんて、何人いるのかしらね?」


カネはそれだけ言って、紫音ちゃんを抱えたまま空を飛ぶ。
あんな事も出来んのかよ…ホントにスゲェな。


ピーチ
『仮にも伝説のポケモンで、神と崇められるポケモンですからね』
『あの位は朝飯前でしょう』


そうかい…神様たぁね。
俺は神なんざ信じちゃいない。
あいつは神なんかじゃないさ…俺たちと同じ、生きて、悩んで、覚悟してる人間だ。
きっと、カネも何か背負ってんだな…
そして、自分の意志で俺を手伝うと言ってくれた。
俺は、そんなカネの覚悟を信じよう。


大護
(ごめんな、紫音ちゃん…恨んでくれて一向に構わねぇ)


俺は覚悟を決める。
何があっても羽黒を殺す。
そして、せめて…紫音ちゃんやPZ、リアたち皆には、普通に生きてほしい。
皆、俺みたいな悪党じゃない…やっぱ戦争とかダメだ。
その全ての元凶を俺が殺して、皆を解放する。
その先に、きっと俺はいないだろう。
だが、それで良い…これが俺の最後の仕事だ。
潔く、幕引きとしようぜ…なぁ?


大護
(お互い屑同士、屑の流儀で決着着けようや!!)










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』


第6話 『屑の覚悟』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/05(金) 18:43 )