終章 『Avenger』
第4話 『宣戦布告、PZの存在理由』
大護
「ところで、リアは何のPKMなんだ?」

リア
「………」


俺は唐突に尋ねた。
いや、今更なのは解ってんだが…ここまで説明ねぇじゃん?
皆知ってる前提で話進んでるけど、そろそろちゃんとした説明をだな…


PZ
「…はぁ、バカにつける薬は無いと言いますが」

リア
「…構わん、言って困る物でもない」
「私は『ギラティナ』…反骨ポケモンとか人間には言われるな」


やっぱり、こいつがギラティナだったのか…まぁ、予想は何となく出来てたんだが。
この妙な世界と現実世界を、自由に移動出来るチート能力者。
何でも伝説のポケモンだそうだが、性格は別に悪かない。
むしろ、PZに対して過保護すぎる位の接し方で、毎日PZの無茶振りな要求に答えて奔走してるからな…


蛭火
「リアさんはもうちょっと反論するべきだと思いますが…」

大護
「そういや、お前も訳解らんPKMだが、何なんだ?」


俺が横で茶を啜っている蛭火に聞くと、蛭火はこちらを見る事なく、「その足りない脳ミソで考えろ!」と毒づかれた…
コノヤロウ…解らんから聞いとるんだろうが!!


リア
「…私の使命はPZを護る事、ワガママを聞くのはそのついでだ」

蛭火
「だからって、毎日食料探しに奔走しなくても…」

PZ
「いい加減黙っててください蛭火!」
「今、良い感じで毛蟹が茹で上がってるんですよ!!」
「リア、カニミソの準備!!」


PZは箸をカチンカチン鳴らしてリアを急がせた。
リアは丁寧に茹で上がったカニの甲羅を引っ剥がし、中のカニミソを上手くかき集めてそれを皿代わりにPZの前に出す。
すると、PZはそれをまずひとつまみ…


PZ
「ん〜♪ 最高ですね! やっぱ釧路から直送の毛蟹は素晴らしいです!!」


PZはご満悦で更にポン酢を絡めていただく。
俺たちも一緒に毛蟹の鍋をいただく事にした。


大護
「おお、確かに美味いな…毛蟹とか初めて食ったわ」

蛭火
「何、身だけ食ってるんですか? 殻ごとバリバリいきなさいよ勿体ない!」


無茶言わないで! オジさんあんたみたいに歯が強くないの!!
つーか、よく殻ごと食えるな? 俺の事も食うつもりだったみたいだし、歯と顎は相当強いみたいだ…


大護
「…殻、食うか?」

蛭火
「な…何、懐柔しようとしてるんですかっ!?」
「私は物じゃ釣られませんよ!?」


そう言いながらも、蛭火は差し出された身の無い殻を取ってバリバリ食べていた。
こう言う所は素直なんだな…むしろこいつがツンデレなんじゃね?


PZ
「思うんですけど、オニヒトデって珊瑚が主食でいわゆる肉食に分類されるはずですよね?」

リア
「…そうなるな」

PZ
「何で蛭火は殻だけ食べるんですか?」

蛭火
「私は単にカルシウムが好きなだけですよ…」
「ちなみにオニヒトデは石灰質の珊瑚を食べますから、ある意味私と同じカルシウム好きですね!」


そう言って美味そうに蛭火は蟹の足をバリボリ食う。
すげぇな…本当に。
つーか、蛭火はドヒドイデってのか…比較されたって事は、オニヒトデがモチーフなのな。
まぁ、ヒトデは肉食、草食、泥食と主に三種類も食性があるからな。
蛭火は仮にもPKMなんだし、肉食で問題無いんだろうさ…



………………………



リア
「…PZ、そろそろ」

PZ
「分かってます…行きますよ蛭火!? リア、他の幹部たちは?」

リア
「問題無い、既に全員場に配置されてる」
「連合総勢2048名、既に重慶基地に攻める準備は出来ている」


2048名だと…? いつの間に日本にゃそんだけの数のPKMが?
元々加速度的に増えてはいたが、ここ数週間だけでそんなに増えたのか!?


蛭火
「腕がなりますね…連合の初陣ですよ!!」

大護
「…テメェ等、マジに戦争おっ始める気か?」


聞いてるだけで想像を絶する事態になってるみたいだ。
重慶基地に襲撃だと? そこには何かあんのか?


PZ
「これは、宣戦布告ですよ…私たち連合が、世界最強のPKM戦闘集団という事を証明する為の!」


そう言ってPZたちはリアの能力で転移する。
この世界には俺だけが残され、俺はやり場の無い怒りに身を苛まれていた。
ここはリアの世界だそうだが…ここもあいつの瞳と同じ様に寂しい世界だな。


大護
(俺は、どうすりゃ良い?)


P2はもういない…あれはPZだ。
PZは進化した反動で俺の事を忘れちまってる。
あんな、怖い顔して戦争にノリノリな奴が、P2の進化系とはな。


大護
(P2…お前、今の自分に満足なのか?)


俺は懐からタバコを取り出す。
そして、さっきの鍋で拝借したチャッカマンでタバコに火を点けた。
とりあえず、歩くかな…この意味不明な世界でも。



………………………



中国、重慶基地…その日はまさに悪夢の日だった。
日本から巨大な空中空母が送り込まれ、そこから2000もの戦闘用PKMが降下して行く。
中国側の反攻は微々たる物で、とてもその猛攻を凌ぐ事は出来なかった。
むしろ、逆であったのだ…
中国に集められていたPKMたちはこれを機に一気に反乱。
日本側のPKMに協力し、重慶基地は1日と持たずに火の海と化した…



………………………



PZ
「ハローエブリバディ! 世界の皆さん、初めまして!!」


私は衛生ネットを通じ、全世界にこの演説を報道している。
あくまで重慶基地は狼煙です、この戦いは始まりに過ぎない。
そして、世界にはもう少し危機感を持って貰わないといけませんからね〜


PZ
「私たちは、日本の組織…対国際戦闘用PKM連合!」
「私はそのリーダーのPZです」
「映像をご覧の通り、中国の重慶基地は1日足らずでこの有り様ですよ?」
「ですので、これは警告はなく命令です」
「世界の皆さん、とっとと降伏か死か選んでください」
「ああ、勿論どっちも嫌だっていうのも良いですよ?」
「その場合は…こうなるだけですので!!」


私はオーラを纏い、右腕に力を集中させる。
そして、同時に特殊攻撃力を高めるデータをダウンロード。
その後、後で待機させている部下に『手助け』をさせた。
直後、私の右腕から大口径の光線が光の速度で放たれる。
直径5mにも及ぶ太さで、私は大気圏外にまで到達する程のZ技、『ハイパースペースキャノン』を撃ち込んだのだ。
当然ながら、その途中にあった物は全て消滅する。
そして、地平線の彼方まで焦土と化した中継を流し、私は笑う。


PZ
「アッハハハハハッ!! どうです? 最高のショーでしょう!?」
「私がその気になれば、いつでも全世界狙撃出来ますよ?」
「衛生砲? こちとら月位ぶち抜ける射程です!」
「もはや、私たちに対抗出来る組織なんかありません!」
「さぁ、選んでください世界の皆さん!?」
「この力の前に、ひれ伏すか消え去るか!!」


私は両腕を広げ、後ろに仰け反って高笑いする。
最高の気分ですよ…これが私の存在理由!
全てが私の思うままに動く! 世界が私の力にひれ伏す!
俗な事かもしれませんが、今まで歴史上誰もやった事の無い偉業。
例え今は暴君でも、やがて歴史は私を称える事でしょう…♪
さぁ、世界はどんな選択をするんでしょうかね?



………………………



ダンッ!!と、俺は強く机を叩く。
ふざけとる…! P2ちゃんに、あんな事させるなんて!!



「大護までおらんようなって…もう、俺ひとりか」
「何やねん…こんなもん!!」


俺はやっとの思いで突破したセキュリティの先に見つけた、羽黒首相の計画データが映されたPCの画面を蹴り飛ばす。
ガタンガタン!と大きな音を立て、モニターは派手に割れた。
俺は両手で頭を抱える。
そして、この計画が運命等ではなく、25年もの間、綿密に下ごしらえされた悪魔のシナリオだと俺は理解した。



「ちょっ!? カッツーどうしたん!?」


「…マルちゃんか、スマン…モニター弁償するわ」


俺は立ち上がり、財布から10万円出してマルちゃんに渡した。
マルちゃんは俺の知り合いで、いわゆるハッカー仲間。
たまたま、PKM関係の掲示板で知りおうた仲で、たまたまウマがおうて仲良うなったんや…
そして、今はそのマルちゃんの拠点に置いてもらってた。
もう、俺の拠点も押さえられてしもたからな。


マル
「カッツー、もう止めた方が良いんじゃね?」
「どうやっても、戦争は止められないって!」
「いや、むしろもう終わってる的な?」
「PZちゃんのあの光線見て、歯向かうバカはいないと思うよ?」


確かに、あれだけの破壊力見せられたら、核ミサイルでもオモチャ扱いやろ。
iCBM見てから破壊光線余裕でしたやからな…
こないなモン、従順しか選択肢あらへん。
あえて国ごと消えるのはバカやからな…



「悪いマルちゃん、これ以上迷惑かけられへん…」
「俺は後はひとりでやるわ…ありがとな」

マル
「何考えてんの!? カッツーひとりで何でそこまでやるん!?」
「こんなん、ハッカーひとりの仕事じゃないでしょ!?」


マルちゃんはかなり強い力で俺の両肩を押さえ、動きを止める。
マルちゃんの気持ちは嬉しい…せやけど、これは俺の意地や。



「マルちゃん…これは世界一のスーパーハッカーたる、俺の決意や無い」
「ただの、PKMが大好きな人間…紅恋 葛としての想いや…」


俺の涙にマルちゃんは力を弱める。
マルちゃんかて解ってくれてるはずや…俺と同じ位、PKM好きなはずやから。



「マルちゃん、俺らの夢がやっと叶ったんや…」
「萌え萌え擬人化美少女が、現実に飛び出して来たんや…!」
「そんな、そんな美少女たちが、何で人間殺して戦争やらなあかんねん!?」
「ちゃうやろ!? 俺らはただそんなPKMたちとイチャつきたいだけや!!」
「ただ、愛してあげたいだけやんか!?」

マル
「…もちろん、解ってるよ」
「でも、だからと言って同志見捨てる程、僕は人間腐ってないよ!!」


ダンッ!と俺は力強く壁に叩きつけられる。
マルちゃん、本気なんか? ホンマに俺と心中する気なんか?



「…マルちゃん、今ならまだ幸せになれるねんで?」
「好きな娘見付けたんやろ? 関わらんかったら、きっと日本は平和や」
「本質はディストピアかもしれんけど…それでもマルちゃんは幸せになれる…」

マル
「くどい! ここでカッツー見捨てたら、きっと僕は後悔して、絶対にあの娘を迎えになんて行けないお!!」


俺は、力を失う。
どうあっても、マルちゃんは退かんか。
一般的なデブ属性のオタクの癖に、心は男前過ぎんで…



「…分かった、せやけど無理はすんなよ?」

マル
「当然! どうせ僕に出来るのは情報収集位だし…」
「でも、カッツーの負担はきっと減らせるよ」


そう言ってマルちゃんは右手の親指を立ててウインクする。
俺は軽く笑って、決意を固め直す。
ひとりや無い…なら、何としても生き残らなな!



………………………




「…とはいえ、大護がホンマにやられてもうたんやろか?」


少なくとも、あのプランは大護が生きてる前提の計画や。
あくまで重要なのは大護とP2ちゃん…いや、いまはPZちゃんか。
大護が生きてるなら、監禁されてる場所が割り出せへんのが謎や。
どっかの地下施設とかにしても、管理プログラムとかがあるはずなんやがな…
と、なると…考えられんのはひとつや。



「PKMの力で、押さえ付けてるか、か…」


あの大護とはいえ、力自慢のPKMやエスパー系に囲まれたら手も足も出んやろ。
そうなったら、脱出も難しい。
こんな時にルザミィがおれば…! 潜入とかはあいつが専門なんに。



「ホールドアップ、撃たれたくなければ動かないで」


突然、俺の後頭部に何かが突き付けられる。
ここはたまたま人気の無い一般歩道や、堂々と襲撃かいな!?
俺は舌打ちしつつも、逆らうわけにはいかんと両手を上げる。
そして、後の誰かはクスクス笑い。



「手をかけさせられたわね…紅恋 葛?」
「貴方には上から捕縛命令が出ている…数々のハッキング行為、暴けばどれだの罪状が出て来るのか?」


成る程な、政府直属か。
こりゃ年貢の納め時かもな…流石にこんなに速く捕まるとは思ってもおらんかった。
とはいえ、声からすると女か…それも外人っぽいが。



「捕縛とは生温いな? その場で抹殺が基本ちゃうんか?」


「一応ここは日本よ? 殺人はご法度…裁かれるなら裁判所ね」
「最も、死刑は確定でしょうけど」


さて、どないしたらこの窮地を抜けられる?
俺は大護やルザミィと違うて肉弾戦は無理ゲーや。
銃位は撃てるけど、大護みたいに精密射撃は出来ん。
俺の分野はあくまでインドア系やからな。



「とりあえず、拘束するわ!」


俺は瞬時に前へと倒され、手足を縛られる。
こいつは間違いなくプロやな…手順に迷いが無い。
明らかに訓練された手際や、警察とはちゃうな。
俺は目隠しされ、何やら男に抱え上げられる。
そして、何やら車の荷台に乗せられた様やった。
この揺れ方、護送車みたいやな?
とりあえず、身動き取れんし、このまま流されるしかなさそうや。
あわよくば誰か助けに……来るわけ無いわな。
はぁ〜っ、悪いマルちゃん…いきなりリタイア臭いわ〜



………………………




(…えらく荒い運転やな?)


とてもやないが、法廷速度を守ってるとは思えんかった。
高速走っとる様にも感じへんし…何を急いどるんや?
瞬間、車が思いっきりスピンする。
俺は遠心力で壁に張り付き、そのまま勢いで転がってしもうた。
な、何やねん!? 事故かいな!?



「だ、誰が…!?」


プシュッ!と乾いた音が響く。
今のは、サイレンサーの音!? 銃撃か!?
2発、3発とその音は響き、やがて場は静まり返る。
そして、車の荷台が開かれ、俺は目隠し越しに光を感じ取った。
そして誰かが俺に近付き、まず目隠しを取る。
すると、そこには見慣れた女の姿があった…



「んぅうぅ!?(ルザミィ!?)」

ルザミィ
「ハロ〜♪ 随分な格好ね?」


ルザミィや、ホンマにルザミィや!!
ルザミィは全身を黒いタイツで覆い、明らかに潜入用の装備やった。
手早くナイフで俺の拘束を解き、俺は自由になる。
そして、すぐに立ち上り、ルザミィの顔を見た。



「ルザミィ! お前、てっきり死んだんやと…!」

ルザミィ
「話は後よ! 追っ手が来る前に逃げるわ!!」


俺はルザミィに手を引かれ、素早く別の車に乗る。
何やら物々しいジープだが、これって軍用か!?



「お前、こんな車どないしたんや!?」

ルザミィ
「緊急用よ…対PKM用の」
「最も、PKMの規格外な能力にどこまで対抗出来るのかは未知数だけどね!」


ルザミィはことさらに荒い運転で道なき道を進んで行く。
どうやら山道の様やが、何でこんな所を?


ルザミィ
「とりあえず、生きてて良かったわ」


「それはこっちの台詞や!! 何でお前今まで連絡も寄越さんと…!」


ルザミィは申し訳無さそうに目を細める。
こいつは仕事に関しては非情やが、決して悪党ではない。
俺らとはあくまで利害の一致で付き合ってた、一時の仲間に過ぎへん。
せやけど、ルザミィは大護の事を気に入っとった。
何があっても、大護の事だけは裏切らへんと、俺は今でも思ってる。


ルザミィ
「…私ね、ホントは死ぬはずだったのよ」


「何やて? ほんなら何で生きてるんや?」

ルザミィ
「解らない…死ぬはずだったのに、生きてる」
「そして、 私はこんな未来知らない…!」


ルザミィは車を止め、ハンドルに顔を埋めて泣いていた。
初めて見た…ルザミィが泣く所なんて。
俺は戸惑うも、ルザミィの背中を優しく撫でてやった。
するとルザミィは少し落ち着いたのか、唇を噛んで震える。


ルザミィ
「…私ね、もう何度も死んでるの」


「…は?」

ルザミィ
「決まって11月21日…その日を境に私は必ず死ぬ」
「そしてその度に、私は時間を遡って甦るの…」
「でも、そこから何度やり直したとしても、私はそのデッドラインを越せない」
「なのに…どうして今回は越えてしまったの!?」
「そして、何故P2ちゃんがあんな風になったの!?」
「どうして、大護がいなくなってしまったの!?」


ルザミィは俺の両肩を掴んでガクガクと揺らす。
全くもって理解が出来へん。
時間を遡る? まさかPKMの力か!?
せやったら、何でルザミィなんや…?


ルザミィ
「…ごめんなさい、こんな事貴方に言っても、信じてもらえないのに」


「アホッ! 信じるわ!! お前、俺らとどんだけ腐れ縁や思てんねん!?」
「どうせPKMに何かされたんやろ? それが原因なんや!」
「せやけど、お前は生きてる! それでええやんけ!?」
「大護は、お前を助ける為に動いて、どっかに捕まってる!!」
「今はお前の力が必要や! 協力してくれ!」
「大護を、そしてPKMたちを救う為に!!」


俺がルザミィの手を握って強く言うと、ルザミィはスイッチを切り替える様に真剣な目をする。
そして、強く頷いて目を細めた。
ええ目や、それでこそプロやで♪
ここに来て、運が向いてきたかもしれへん。
死ぬはずのルザミィが生きてた、俺も助けられた!
後は、大護とPZちゃんを助けるんや!!



………………………




「…こないな所に地下施設?」

ルザミィ
「今は使われていないわ…過去にはここでゲートの研究をしていたみたいだけど」


ゲート…未だに詳細は不明のPKMを増やす何かか。
あれから日本のPKMは5000を越した…加速度が上がってる。
収容所は到底足りず、奇しくもPKM人権法の発足によって暴動は起きてへんが…
近い内に、犯罪のひとつでも起きる可能性はあるやろな。



「…とりあえず拠点としちゃ上出来か」
「通信は出来るんか?」

ルザミィ
「回線を引かないと流石に難しいわね…この辺りは妨害電波が今も残ってて、電話すらアナログよ?」


そう言ってルザミィはプッシュホンの電話を指差した。
成る程な、そんだけ特殊な空間なら返って安全か。
俺はとりあえず鞄からノーパソを出して机と向き合う。
そして、改めてあのプランを睨み付けた。


ルザミィ
「それは何?」


「日本の内閣総理大臣、羽黒 芸知巣の計画書や」
「とんでもない狂人やであいつ?」


ルザミィはプラン内容を見て絶句していた。
そこに書いてある内容は、俺らの想像を絶する計画。
全ては、石蕗 大護を使い、PZちゃんを利用して、そして…



「己の欲望を満たす為だけの、それだけの計画」

ルザミィ
「ふざけてるの!? 何なのこれは!?」
「じゃあ25年もの間、大護が追っていた相手って言うのは…」


俺は頷く、多分大護はまだ知らんやろな。
そう、羽黒 芸知巣こそが、25年前に大護の家族を惨殺した狂人。
それからずっと、表向きには気の良い政治家として市長にまでなり、今や総理大臣。
その裏では定期的に狙った女性を殺し、その死体とSEXをする狂人中の狂人。
今回の一連の事件も、全てはそんな狂人の欲求を満たす為の計画。


ルザミィ
「大護はどこにいるか解る?」


「あかん…少なくとも世界中のネットワーク見てもどこにも足跡が無い」
「予想としては、PKMの力でどこかに隔離されてると踏んでる」

ルザミィ
「…妥当な所ね。この世界で葛君の目から逃れられる場所なんて逆に限られるものね」


そう、解らないなら解らないで逆算は出来るんや。
せやけど、今回はその逆算すら宛にならん。
それ位大護の失踪は唐突過ぎるんや。



「しばらく、外で情報集めたい所やが…」

ルザミィ
「貴方はここにいて…私が探るわ」


ルザミィはそう言って銃をチェックした。
こいつもスパイらしく、切った張ったは得意やからな…
とりあえず安心して頼めるわ。



「しゃあない、俺はここで連絡待つわ」
「外に仲間のハッカーもおるさかい、そいつと連絡取りながらサポートするわ」

ルザミィ
「ええ、私も定期的に連絡をするわ」


俺たちは頷き合い、互いに役割を遂行する。
俺はとりあえずマルちゃんに電話を、ルザミィは情報収集に外へ。
さぁ、こっから反撃開始やな!!



………………………



PZ
「あ〜全力出したからお腹空きました〜!」

リア
「…仕方あるまい、何か買って来よう、何が良い?」

PZ
「広島焼きが食べたいです! もちろん本場で!!」

大護
「ちなみに、本場で広島焼きって言うなよ? 怒られるぞ?」


広島の人にとっちゃ、あれは立派なお好み焼きだからな。
断じて広島焼きとは言っちゃいけねぇ。
これはマナーだ!


リア
「…では、どう言えば良いんだ?」

大護
「普通にお好み焼きくださいって言えば良い」
「つーか、多分メニューにはそう書いてある」
「あ、ちなみに俺は普通のそば肉玉で良いから」

リア
「…普通じゃないのもあるのか?」


リアは不思議そうに聞いてくる。
うーむ、馴染みがないと流石に疑問なのか?


大護
「まぁ、一般的な奴なら豚、イカ、エビ、後はネギとか餅とか」
「贅沢さんには全乗せってのもある、値段はその分上がるが」

PZ
「私は全乗せ一択で!!」


やれやれ大食いさんだなPZは…進化して更に食う様になったんじゃねぇのか?
って、そういや蛭火は…?



『…私エビ食べたい』


あん? 何か見た事が無い、小っこいのがいる…って、うおおっ!?
俺は思いっきり驚いて後ずさる。
蛭火の見た目にも驚かされたが、こいつも大概だな!?
何て言うか、小っこい水着幼女が妙なゲルっぽい何かに包まれてる!
緑色に透き通ったそれは、巨大な腕を2本備えており、自分の腕みたいに扱える様だ。
そして、何故か猫耳みたいなのが着いてる…ゲルっぽいが。
とりあえず、色々とインパクト強ぇ〜!


リア
「…『細歩』(さいほ)か、今日はお前が当番か?」


リアが細歩と呼んだゲルっ娘は、コクリとゲル内で頷く。
何て言うか、あれで呼吸とか大丈夫なのだろうか?
やっぱ、PKMって色々と理解出来んなぁ…
とはいえ、蛭火に比べると大人しそうだな…何気に癒し臭い。


PZ
「細歩、気を付けるんですよ? この人間は誰にでも欲情しますから!」

大護
「流石に幼女趣味は無い! 俺ぁボンッキュッボンッが好みなんだ!!」

細歩
『誰が幼女か! 私はこれでも20歳!!』


そう言って目を細め、俺は睨まれる。
声はゲルの中から響いて聞こえるせいか、何だかエコーがかっている。
しかし、ハタチだぁ〜? やっぱPKMって解んね〜!
見た目と歳が一致しねぇんだよな〜


大護
「あぁ、悪かった悪かった…オジさんPKMには詳しくないから、説明よろしく」

細歩
『むぅ…私はランクルス、増幅ポケモン』
『液体状のこの腕で、岩をも砕ける!』


そう言って細歩は腕を振り回す。
岩をもか…何気にスゲェな。
俺なんか3段位の氷柱割りしか出来ねぇぞ?


リア
「…とりあえず広島まで行って来る、しばらく待っていろ」

PZ
「楽しみにしています!」

細歩
『行ってら〜』

大護
「気を付けてな〜」


何だか、俺も馴染んで来たなぁ〜
外じゃとんでもない事になってるみたいだが、案外ここは平和なモンだ。
ある意味、ここでずっといられるなら…もう何も苦しむ事も無いのかねぇ?


大護
「…火ある?」

PZ
「ありませんよ、タバコなら離れて吸ってください」

細歩
『火なら出る、どうぞ〜』

大護
「おっ、細歩は良い娘だなぁ〜どこぞの暴君とは違うわ〜」


俺が誉めてあげると、細歩は恥ずかしそうにゲルの片腕で顔を隠してしまった。
そしてもう片方の腕の指先から炎を出し、俺はそれでタバコに火を点けた。
ちなみに、タバコは定期的にリアに買って来てもらってる。
飯買いに行くついでとして、特に嫌がらずにいつも買って来てくれるのだ。
リアも良い女だよな〜ああ言う献身的なのは純粋に好みだ。


PZ
「細歩! 懐柔されるんじゃないですよ!?」

細歩
『大丈夫、大護の心汚れてるけど、優しい♪』

大護
「…!」


俺はタバコを咥えたまま、固まる。
心…ねぇ。
一体今ので何があったのかは俺には解らないが、少なくとも細歩は優しく微笑んでいる。
汚れてるけど、優しい…か。
そうだよな…俺の心は汚れてる。
今更、安息なんて無いんだよな…きっと。


細歩
『…ごめんなさい、勝手に心触って』

大護
「ん? 別に良いさ…まぁ、人に見られて誇れる様な心でもないだろうし」

細歩
『うん、でも優しい♪』


この娘、本当にハタチなんだろうか?
仕草とかやけに幼女過ぎる! 可愛いから良いけど!


PZ
「細歩、それ以上近付いてはダメ! 取り込まれる!!」

細歩
『ん〜! リーダー独り占めする気!?』

PZ
「そんな訳無いでしょう!? 私はそんな男全く知らない…の、に……!」


突然、PZは冷や汗を垂らして固まる。
そして、苦笑いを見せ、PZは俺を見ていた。
知らない…ね、悲しい事だなそりゃ。
短い間だったが、俺ぁP2の事信頼してたのに…


細歩
『…リーダーの嘘吐き、本当は愛してた癖に』

大護
「ぶっ!? 愛してただぁ!? こいつヤンデレ系か!?」

PZ
「誰がヤンデレですか!? そもそも貴方の事なんか記憶に無いんですよ!?」
「なのに何でこんなにも胸が苦しいんですか!?」
「何で私は貴方を知らないんですかっ!?」


その言葉は俺の胸に突き刺さった。
そうか…それが本音か。
お前も、ちゃんと苦しむ心は残ってたんだな。


大護
「…すまねぇな、余計な事言ったわ」
「俺の事は知らなくて良いんだ、それが1番良い」

細歩
『大護…悲しいの?』


細歩はゲルの腕で優しく俺の顔に触れる。
俺は軽く笑い、大丈夫だと心で伝えた。
すると、細歩は少しだけ笑って納得する。
結局、PZは訳も解らずにその場で蹲ってしまった。
俺は無言でただタバコを吸う。
細歩は少し不安そうに、PZを見ていた。










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』


第4話 『宣戦布告、PZの存在理由』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/05(金) 18:06 )