序章 『石蕗 大護という男』
第5話 『繋がり』
P2
「はぁ…想像しているよりも、この世界は過酷なのかも」


私はひとり歩いてそう呟く。
私は気が付けばゲートを通り、そこからこの世界に来た。
だけど記憶のほとんどは失われ、脳のデータも破損して私はまともに動く事も出来なかった。
その状態で誰かに拾われ、私はあの店に連れられる。
そして、ダイゴに助けられた…


P2
(ダイゴは、私の事を好きでいてくれるのかな?)


ダイゴには、あまりにも辛い過去がある。
復讐を誓った相手がいる。
そしてその為にはどんな犠牲も厭わない。
私は、考えて悩む。
私には、ダイゴは救えないんじゃないかと…
ダイゴは、その内いなくなってしまうんじゃないかと…



………………………



P2
「…近くに執調部がいる、確か…御影 真莉愛」


私は衛星からGPSを受信して特定の相手の居場所をサーチする。
あの女性には出来れば近付かない方が良い。
私はそう思って別の帰宅ルートを選ぶ。
少し遠くなるけど、仕方ない。


P2
(…それにしても、本当に増えてる)


私は、街を歩いているPKMの存在を見てそう思う。
この街にはそれだけのPKMが住んでいる。
人に保護され、時には愛されたり、恨まれたりする。
ダイゴはそんな街で誰かの為に手を汚しているんだ…


P2
(PKMは、幸せなのかな?)


私はふと疑問に思った。
街を歩いているPKMたちは、ほとんどが保護責任者と共に歩いている。
だけど、その顔は千差万別。
嬉しそうに手を繋ぐ者もいれば、不安そうな顔の者もいる。
PKMと言う制度は、果たして私たちを本当に幸せにしてくれるのだろうか?



「おっ、今はひとりなんか?」
「あかんで? ひとりでPKMが彷徨いたら…怖い人に連れてかれるで〜?」

P2
「…葛さん」


私に声をかけてくれたのは葛さんだった。
確か、今日はダイゴと一緒に出掛けていたはずだけど…



「ルザミィの奴、せめて送ったれや…P2ちゃんは違法保護されとんのやから」

P2
「違法、ですか?」


私が聞くと、葛さんはせや!と強く言う。
そして、私は葛さんから強めに注意され、改めて自分の立場を認識した。
私は、ダイゴに拐われているに過ぎない。
世間から見たら、そう。
ダイゴは犯罪者にしか、世間には写らない。
それは、とても悲しく思えた…



「とりあえず、俺が送ったるわ…俺と一緒なら怪しまれはせんやろし」
「…ひとりを除いては、やが」

P2
「…ひとり、ですか?」


「せや、御影 真莉愛…あいつだけは要注意や」
「この街の保護責任者は全て把握しとる、見つかったらアウトやで?」


そうか、だったら余計に会うわけにはいかない。
私は、ダイゴと一緒にいたい。
例え、違法でも…それでも。



「ホンマはちゃんと認可受けた方が安全なんやけどな…」

P2
「でも、それだとダイゴと一緒にはいられません」


葛さんは黙ってしまう。
解ってはいる事のはず。
ダイゴは決してまともな道は歩めない。
保護責任者等、足枷にしかならないのだから。



「まぁ、そやろな…あいつがそんな責任者になるわけあらへん」
「とにかく、はよ帰るで? 拠点に戻ったらとりま安全や」


私は頷いて葛さんに付いて行く。
今はこの生活で良い…私は、ダイゴと一緒なら。



………………………



大護
「…ちっ」


俺は舌打ちしてタバコを吸う。
今はコンビニで時間を潰しているが、少々鬱陶しい事になったっぽい。



「………」


俺の隣には謎のPKM。
別に依頼者というわけじゃない。
俺はポケモンとか詳しくねぇから種族とか解かんねぇが、とりあえず頭に猫みたいな耳付いてて、猫みたいな尻尾があるし、猫型PKMなのは間違いない。
服は普通の長袖シャツにミニスカート。
いかにも未成年ですみたいな風貌だが、胸はかなりある良いおっぱいだ。
肩まで伸びる紫のカールしたセミロングの髪を指先で弄りながら、少女はこっちをチラ見していた。
俺は構わずタバコを吸う。


大護
「………」

PKM
「………」


互いに沈黙…特に会話は無い。
まぁ、俺から話す事は無いし、向こうが何考えてやがんのか次第だが。


PKM
「ねぇ、オジさん? お金持ってる?」


突然そんな事を言い出した。
金って、今時のPKMは知らないおっさんに金をせびるのか?


大護
「恵んでほしいなら他所へ行け、俺は忙しい」


俺はそう言って追い払う様に手を振る。
しかし、少女はニヤリと笑ってこう言った。


PKM
「3000円くれたら口でヌイてあげるけどどう?」

大護
「悪いな、凄まじく魅力的な提案だが、俺は諸事情によりそういうのは出来ない」


妄想や夢ですらスイッチが入るからな。
本気でやるとなると確実に気持ち悪くなって吐くし、多分勃ってもすぐ萎える。


PKM
「何で? オジさん早くも不能になっちゃったの?」

大護
「不能って訳じゃねぇがな…多分マトモに勃たない」

PKM
「え〜? じゃあ試してあげよっか? 私これでもテク自信あるよ〜♪」


そんな事を言って手で輪っかを作り、縦に動かす。
やれやれ、PKMがヘルスやってるたぁ、世も末だねぇ〜


大護
「とりあえず勘弁してくれ、俺はそういうのにトラウマがあるから、気持ち悪くなって吐いちまうんだ」

PKM
「そうなの〜? 何か可哀想…」


同情されてしまった。
つーか、ギャルっぽいPKMだなこいつ…
手慣れてそうだし、お小遣い稼ぎってとこか。


大護
「とりあえず、これで暖かいモンでも食え」
「じゃあな、トラウマ克服出来たらまた頼まぁ」


俺はジャンパーのポケットから取り出した1万円札をそいつに渡す。
そいつは目をぱちくりさせて受け取り、マジマジと金を見ていた。
俺はさっさと背中を向けて立ち去る。
とりあえずあまり関わり合いにならない方が良いからな。


PKM
「あ、オジさーん! これ良いの〜!?」


俺は背中越しに手を振って答える。
すると、少女は嬉しそうな声でありがとー!と言ってくれた。
俺は少し心が暖まる。
やれやれ…何やってんだかな、俺ぁ。


テーレレレッテーレレレッ! テーレレレッテーレレレッ!
テーレレッテレーテレレレレッー!


某有名作品の処刑用BGMが携帯電話から流れる。
前に仕事中マナーモードし忘れて鳴った時は、思わずレーザーブレード!!と叫んでしまった物だ…
あの時はターゲットにドン引きされたな…まさに黒歴史だ。
って誰から着信だ…ん? 葛か。


大護
「どうした? 依頼でも見付けたか?」


『せやな、依頼っちゃ依頼なんやが…』


何だ? やけに歯切れが悪いが。
何か言い難い事なのか?



『とりあえず、P2ちゃんが付いて来たい言うてな…』
『お前から何か言ってやってくれんか? 俺は止めとき言うてんねんけど』


何だって? P2が駄々こねてるのか?
珍しいな、そんな事今まで無かったってのに…
俺はとりあえずP2が電話に代わると、まずこう言ってやる。


大護
「とりあえず帰れ」

P2
『もう、家にいます…』


成る程、葛と一緒に拠点だったか。
それならとりあえず待機だな。


大護
「お前は外に出たら捕まる立場だ、大人しくしてろ」

P2
『足手まといにはなりません、私だってダイゴのパートナーです』


決心は固そうだがやはりダメだ。
信頼はしているが、それでも譲れない事はある。
俺にはこいつを護る義務があるからな…それが拾っちまったモンの責任だ。


大護
「俺は何があってもお前を護る、その為にはまずお前を危険には晒さない」
「それが聞けねぇなら、俺は力付くでもお前を括りつけるぞ?」

P2
『…でも、それじゃあ私は何なんですか?』
『私はダイゴに護られるだけの存在なんですか?』
『ダイゴは…私を好きでいてくれますか?』


最後の方は泣きそうな声になっていた。
好き、か…何て俺には不釣り合いな言葉だろう。
俺は誰も愛さない、好きにはならない。
俺は殺し屋だ、人を殺すのに愛情は抱けない。
だったら、俺は何でP2を拾った?
何故姉に良く似たあの死んだ目のP2を拾った?


大護
(俺は、飢えていたのか?)


知らずの内に、P2に愛情を抱いていたのか?
だからP2はこんなにも俺を慕おうとするのか?
はっ…何て馬鹿な、そんなんだから俺は駄目なんだ。


大護
「P2、お前もプロでありたいなら置かれている状況を考えろ」
「お前が外を彷徨くのはそれだけでリスクだ」
「いくら監視カメラやGPSをハック出来たとしても、それは人の目を欺くだけに過ぎねぇ」
「相手はPKMを駆使してでもこの街を守ろうとしている」
「俺たちは、そんな組織相手に隠れて仕事を遂行しなきゃならねぇ…」

P2
『…はい』

大護
「お前は、裏からサポートするのが今は最善だ」
「深夜ならともかく、昼間から仕事で連れるのは問題だな」

P2
『…深夜?』


気付いたか…まぁ、それなら話は早い。
俺は軽く息を吐いてから、こう答える。


大護
「深夜の仕事なら連れて行ってやる、ただし絶対に足手まといにはなるな?」
「1度でもヘマしたら、2度と外には出さねぇからな?」

P2
『は、はいっ! 私、私頑張ります!』
『必ず、ダイゴの役に立ちます!!』


普段物静かなP2は気合いを込めてそう答えた。
俺は心の中で笑ってやる。
そうだ、これで良い。
愛情なんて無いかもしれない…それでも、信頼はある。
だったら、俺はその信頼には答えなきゃならない気がした。
それが、相棒ってモンだわな。



『…ええんか? 俺はあまり気が進まんが』

大護
「良いんだよ、P2だって仲間だ信頼は出来る」
「で、仕事の話は?」


俺が少し真面目な声で言うと、葛も気を引き締めた様に声を低くする。
そして、今回の仕事内容を聞き、俺は少し顔をしかめた。


大護
「…そりゃ、正義の味方の仕事じゃねぇのか?」


『せやから、お仕事や…たまにはええやろ?』
『少しでも執調部に良い印象持たれとる方が今後動きやすいで?』


その仕事とは、PKMを利用した風俗店の検挙だった。
もちろん俺たちは警察じゃないから検挙なんざ出来ない。
つまり、俺たちの仕事は相手を押さえるだけ。
今回は殺しは無しって事だな…


大護
「ちなみに、それ金出るのか?」


『安心せい、俺が給料は出したる…まぁ、普通の金額やけどな』
『ちなみに、夕方の開店後に突入予定やから、P2ちゃんはアウトな』


やれやれ…面倒だがたまには良いか。
葛にはいつも世話になってるからな、たまにはこいつの顔も立ててやらねぇと。


大護
「OKだ、だったら準備は任せるぜ?」
「俺は一旦そっちに戻る、P2も待機させておいてくれ」


葛は了解やと言って電話を切る。
俺はとりあえず駆け足気味にその場から動いた。
はぁ…まさか警察のお手伝いとはな。



………………………




「さて、準備はエエか?」

大護
「おう…って、ふたりだけか?」
「警官とかは何やってんだ?」


夕方から夜に切り替わる位の時間、俺たちはとある隠れた風俗店の近くに隠れていた。
店は開店開始し、早くも客が入り始めている、こりゃ中々の繁盛店の様だ。
しかし、ふたりだけであれを押さえる気か?



「まぁ、ぶっちゃけ客装って潜入するのが目的なんやけどな♪」

大護
「はぁ? 何だそりゃ? あの店には何かあるのか?」


俺がそう聞くと、葛は真面目な顔をする。
そして、低く押さえた声で呟く様にこう言った。



「…あの店は、はぐれPKMを扱ってる店や」
「それに体売らせて金稼いどる」

大護
「…はぐれPKM」


確か、前に俺を襲った奴らもそうらしい。
最近勢力を拡大してる一団らしいが…あれもその仲間か。


P2
『はぐれPKMは、まだ世間には公表されてません』
『報道等も一切されてなく、まるで都市伝説の様に噂で留まっている情報です』


P2が俺の電話からそう説明する。
あの襲撃騒ぎがあって公表されてねぇだぁ?


大護
「臭ぇな、何か隠す理由があるのか?」


「今回はそれを探る為の潜入や」
「見取り図はこれ、お前は万が一の実力行使役や」
「俺は客を装って中に入るから、お前は俺が連絡してから入って来い」


そう言って見取り図を俺に渡し、葛は中に潜入していく。
俺はタバコを吸いながら待つ事にした…
さて、どんな情報が飛び出すのかね…?


P2
『…妙ですよね? はぐれPKMはもう何人かは執調部に捕まっているはずなのに』

大護
「つまり、政府側が何か企んでんだろ」
「それか、公表出来ない何かがある…今回はそれを探る仕事ってわけだ」


葛はPKMに対して並々ならぬ想いを抱いている。
はぐれPKMたちの事も、あいつにとっては大切な存在なんだろうか?
俺はタバコを吹かしつつ、連絡を待つ。
そして30分程して、葛から連絡があった。


大護
「…分かった、なら潜入する」


俺は見取り図を確認し、葛の指定した部屋の外壁を目指す。
幸い、デカいビルに囲まれており、上に上るのは苦労しない。



………………………



大護
「よっ、と!」


「流石に速いな、もうここまで上って来たんか?」


指定された部屋は3階の一室。
しっかりと窓が付いているが鍵などは無く、そもそも開くタイプの窓じゃなかった。
だが葛はそれを窓枠から外しており、俺はあっさりと中に潜入する事が出来たのだ。
葛は俺が入ってすぐにまた窓を元に戻している。
っても、単にはめただけだな…触ったら倒れそうだが。


大護
「しっかし…ちゃんとお楽しみしてたのね」


「金払っとんねんからな…据え膳食わんのは相手に失礼やし♪」


相手をしていたであろうPKMは優しくベッドに眠らされていた。
俺に配慮してか、しっかりと布団で体を隠しており、裸は見えない。
しかし、臭いはしっかりと残っており、それなりに濃厚なやり取りがあったのは想像出来た。


大護
「…30分か、さては早漏だなテメー?」


「やかましい! ちゃんと相手もイカせたわ!!」


早漏は否定しないのな…
まぁ、とりあえずこちとら仕事だ。
さっさと目的を済ませねぇとな…


大護
「で、これからどうする?」


「とりあえず、頭を押さえに行く」
「万が一の時は頼むで?」


俺はおう、と言って葛の後に続く。
念の為P2に外の状況を調べてもらい、特に問題が無いか確認しておいた。



「警官隊が来るのはもうちょい後や、まぁ余裕やろ」

大護
「…なら、さっさと店長の所に行こうぜ?」


俺たちは気を引き締めて店長の部屋に向かった。



………………………



店長
「な、何だお前たちは!?」


「おっと、騒ぐなや? とりあえず可能なら穏便に済ましたいからな…」


葛は銃を構えて店長を脅す。
サイレンサーは付いてるし、殺すのはわけ無いな。
だが、今回は殺しが目的じゃない。
警官隊が後から来る以上、下手に死体は残せないからな。
店長は割とどこにでもいそうな普通のおっさんだった。
無精髭で顔は覆われており、清潔感はさほど無い。
服も店の制服で、別段特別扱いされてる様な様子もねぇな。



「はぐれPKMをどこから手に入れた?」

店長
「そ、そんな物知らない! 俺はこの店を任されただけで、人材は最初からこの店にいた!」

大護
「…嘘は止めとけよ? こちとら自白剤も用意してるからな?」


俺は自白剤の入った瓶を相手に見せつけ、相手を揺さぶる。
あんまり強情そうじゃなさそうだし、大して嘘は言ってないか?



「…なら誰からこの店を頼まれた?」

店長
「し、知らない男だった…俺は仕事も無かったから、良い話だと思って受けただけなんだ!」
「怪しいのは解ってたけど、金はいるし…」


典型的なドロップアウトだな…
ある意味哀愁漂うが、こりゃ大した情報は期待出来ねぇな。



「情報のやり取りは?」

店長
「俺の所には手紙が届いてる、見たらすぐに処分してるからもう無い」


葛は苦虫を噛み潰す様な顔で唇を噛んだ。
とりあえず有力な情報は無い、か…



「分かった、もうええ…とりあえずもうすぐ警官隊が突入する」
「お前はここで終わりだ…自分のやった事を後悔しろ」


そう言って葛は銃を懐に戻して踵を返す。
俺は一応店長に釘を刺す事にした。


大護
「命が惜しいなら警官には俺たちの事は言うな…」
「もし何か喋ったら、例え刑務所の中でもお前を殺しに行く」
「俺はプロだ、その時は確実に殺る」


俺が睨み付けると、店長は顔を青くして震えていた。
とりあえず脅しは十分だろ…こんな弱気な相手ならチクる勇気はねぇはずだ。



………………………



大護
「…収穫はあったのか?」


「…利用されてたPKMを解放出来たんや、収穫だらけやろ」


強気だが、声には抑揚が無い。
宛は外れたって感じだな。
とはいえ、もう警官隊が店を押さえてるしこれで一件落着。
とりあえずバイトは終わりだ。


大護
「葛、お前がPKMに執着する理由は解らねぇ」
「だが、お前がそこまで思い詰めるってのは、それだけの何かがあるって事だろ?」
「俺に手伝わせるってのは相当なリスクを考慮してる証拠だ、お前は黒幕が誰か解ってんじゃねぇのか?」


葛は無言で夜のビル街を歩いて行く。
俺もそれに着いて行き、葛の言葉を待った。



「まだ言えん、確信は無いんや」

大護
「そうかい、なら仕方ねぇな…で、報酬は?」


俺がそう言うと、葛はズボンのポケットからくしゃくしゃの一万円札を3枚俺に差し出す。
あれだけで3万か…まぁ楽なバイトだな。



「悪いな、今日は助かったわ」

大護
「別にお前ひとりで大丈夫だったんじゃないのか?」


「…万が一はあったからな。はぐれPKMを擁してる以上、用心棒も想定してたし」


そういやいなかったな。
ああいう店なら大概いるはずだが…



「多分、あの店は囮や」
「俺らの動きは悟られとるんかもしれん」


葛は何を見ている?
俺たちが踊らされているってのは相当な何かがいるという事だ。
裏の稼業を続ける俺たちはあくまで隠れた存在。
それの動きを把握して、コントロールしてるとしたらそいつは何者だ?
葛は、そんな得体の知れない相手を探ってるって事か。


大護
「まぁ良いや、とりあえず飯でも食いに行くか?」

P2
『それ私だけ食べられません…』


おっと、それは失念してた。
確かにP2だけハブるのはよろしくないな。



「悪いな、今日は遠慮しとくわ…」
「また、何かあったら連絡する…ほなな」


葛は肩を落としてズボンのポケットに両手を突っ込んで去って行った。
やれやれ、思い詰めてるな…
俺は頭を掻き、その場でタバコを咥えた。
すると、誰かに声をかけられる。



「ここは路上喫煙は禁止されてるわよ?」

大護
「…んな面倒な制度が出来てんのか?」


俺は言われてタバコを箱に戻す。
そして注意してきた女を見た。
俺はため息を吐いてまた頭を掻く。
それを見て女はクスリと笑った。


真莉愛
「そういう所は変わってないのね、まさか今日も仕事?」

大護
「違ぇよ、良い風俗あるって聞いたから来たんだ」
「まぁ、もう潰れちまったみてぇだが」


俺は遠目に警官隊が跋扈する店を眺めた。
すると、真莉愛ちゃんははぁ…とため息を吐く。


真莉愛
「女好きは変わらないのね…いっつもセクハラ発言しか言わなかったし」

大護
「おっ、じゃあ今から真莉愛ちゃんがヤらせてくれる?」


俺が笑って言ってやると、真莉愛ちゃんは頭を抱える。
まぁ、どの道無理だからな。
仮にヤらせてもらっても吐いて萎えるだけだし…
ピンポイントに見たり揉んだりなら大丈夫なんだが…この辺は結構ギリギリな所だ。
正直女とヤりたいのは本音で、ある意味俺の野望でもある。
まぁ、トラウマの元凶を殺すまでは無理だろうけどな…


真莉愛
「…まさか、あの店に行こうとしてたの?」

大護
「そうだよ、可愛い娘一杯いるって聞いてたのに…」

真莉愛
「あの店は違法PKMに働かせてる悪質な店よ?」
「知らずに来たとは思えないんだけど…」

大護
「…PKMだって、金がなきゃ生きていけねぇだろ?」


俺は今日出会った猫耳PKMの事を思い出す。
確かに誉められる事じゃないかもしれない。
だけど、生きる為にあの娘だって必至なんだろうさ。
その為に体使っても、本人が楽しけりゃ良いと思うがな。


真莉愛
「その為の保護法よ? PKMは働かなくても、責任者が養ってくれる様に法律が出来てるの」

大護
「で、その法律様ははぐれPKMを守ってくれるのかい?」
「幸せを踏みにじられたPKMに手を差しのべてくれるのかい?」
「ただ、体を求める為だけに責任者となる人間は、風俗で女買うのと何が違う?」


俺は少し怒気を込めて言ってやると、真莉愛ちゃんは何も言えなかった。
法律なんざ現状は大して機能してないだろ。
厳正な基準で責任者は選ばれてるとはいえ、それは表向きだ。
確かに、葵さんの様に真剣にPKMと結婚を願う人もいる。
だが、一方で肉体関係のみで引き取るエロ親父もいるんだ。
PKMに溢れるこの街で、全てのPKMを保護するのはどう考えても無理がある。


真莉愛
「それでも、私はPKMを護らないといけないっ」

大護
「真莉愛ちゃんは立派だよ、その為にこうやって街を駆けずり回ってんだ」
「だが、それだけじゃPKMは護りきれない」
「俺の仕事は、どうしようもなくなった人の代わりに動く仕事だ」
「そこには人間もPKMも無い、生きていく限り、俺にとってはPKMも人間と同じだ」
「法律はPKMをペット同然にしてるも同じじゃ無いのかねぇ〜?」


俺はそう言って背中を向けた。
真莉愛ちゃんは何も言わず、その場で悩んでいる様だった。
俺は、そのまま去って行く。
これ以上、言う事は無いだろ。



………………………



P2
「で、どうして晩御飯に屋台なんですか?」

大護
「屋台を舐めるなよ? 今や貴重なんだぞ」
「親父さん! 厚揚げと卵、後牛すじと日本酒だ!」


俺が手早く注文すると、店主はささっと出してくれる。
良いねぇ、こう言う手際の良さはベテランの味がする。
俺はまず厚揚げに噛みついてから日本酒を一口飲む。


大護
「か〜! 五臓六腑に染みるねぇ〜」

P2
「ダイゴ、年寄り臭いですよ?」
「あ、私ちくわと卵とがんもをお願いします♪」


P2も注文して早速食べ始めていた。
味の方は悪くない、よく染みてらぁ。


店主
「お客さん、保護責任者かい?」
「良いねぇ、可愛い娘だ♪」

大護
「ははっ、まぁそんなとこだ!」
「どうだ美味いか?」

P2
「はい! とっても出汁が染みてて美味しいです〜♪」
「あ、厚揚げとウインナーもお願いします!」

店主
「あいよ! たくさん食べてくんな♪」


P2の奴、気に入ったみたいだな。
やっぱおでんはこういう屋台で食うに限る…
風情があって良いもんだからな〜


大護
「親父さん、繁盛してんの?」

店主
「そうさなぁ、この時代コンビニでもおでんとかは食えるからなぁ〜」
「やっぱ時代の流れは感じるねぇ」
「昔に比べたら、客は減ったよ…」

P2
「そうなんですか? でもコンビニのおでんより、私はここのおでんの方が美味しいと思います♪」

店主
「はっはっは! そりゃ嬉しいねぇ〜♪」
「ほら、ジュースおまけしてやるよ!」


ほう、P2の奴中々に上手く煽てたな。
意外にこいつは世渡り上手なのかもしれない…
俺に出会いさえしなけりゃ、もっと良い人間に拾われたかもしれねぇのにな…


大護
(いや、違うか…あそこで俺が拾わなきゃ、こいつは殺されてた)


あの現場は既に火が放たれていた。
動けないP2はどの道他に道は無かったんだ。
だったら、もしもの話はするべきじゃないな。
今は俺の相棒なんだ、大切にしてやらねぇと…


P2
「大護、食べないんですか?」

大護
「んっ? いや、食うぞ! 親父さん、はんぺんとつくね頼まぁ!」

店主
「あいよ! 酒のお代わりは?」

大護
「おっ、すまねぇな〜♪」


俺はコップを差し出して注ぎ足してもらう。
そしてはんぺんとつくねをつまみにしながら俺は気を良くして酒を飲んだ…



………………………



P2
「ごちそうさまでした〜♪」

大護
「ははっ、随分食ったな…満足したか?」

P2
「はいっ、とっても美味しかったです♪」
「この時期は結構寒くなりますから、温かいおでんは最高です♪」


P2は大満足の様だった。連れて来て良かったな。
さて、ボチボチ帰りますかな…


P2
「あ、忘れてました…ダイゴ、これ」

大護
「ん? 何だ指輪…か」


俺はP2から指輪を受け取る。
よく見ると、P2の左手の薬指にも同じ物が付けられていた。
ペアリングって奴か?


P2
「ダイゴにプレゼントです…良かったら、付けてみてください」

大護
「指輪ねぇ…サイズ合うのか?」


俺はとりあえず左手の小指に差し込んでみたが、一応フィットした。
P2は満足そうに笑う。


P2
「これでお揃いですね♪」

大護
「ふーん、わざわざこれ選んだ理由は?」

P2
「貴方と繋がりが欲しいから…」


P2は優しく笑っていた、俺は少し心が痛くなる。
俺は、P2の事をどう思っているのだろうか?
P2はこの半月で俺にいくらでも尽くしてくれた。
エッチな要求以外なら、それこそ何でも答えてくれた。
俺は、こいつにそれを返してやれてるんだろうか?
それとも、ちゃんと割にあった物を返してやらなきゃならないんだろうか?
俺はこの先、こいつを護ってやれるんだろうか…?

そしてその答えは、この指輪が語っているのだろうか?










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』



第5話 『繋がり』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:23 )