序章 『石蕗 大護という男』
第4話 『再会』
大護
「…またPKM関係か?」


「せやな、ここん所連続やな…」


俺たちは拠点近くの神社で顔を会わせていた…もちろん依頼の話だ。
俺が日本に帰って来てからはや半月。
ここまでで裏の仕事は何と5件目…3日に1度のペースで仕事が来てる計算だ。
しかも、その全てがPKM関係の依頼。


大護
「PKMの為に敷かれた法が、逆にこんな事態を生み出すのか…」


「ああ、PKMかて心を持つ存在や、裏の仕事人に頼りたい部分もあるやろ」


…それも人情かねぇ?
それとも、意図的にコントロールされてたりするのか?
何となくそんな事を想像してみるが、大して考えなんぞ浮かばない。
どっちにしても、受ける仕事ならやるだけだ。


大護
「で、内容は?」


「…正直、俺は今回手伝うのはここまでや」


葛は俺に紙切れを渡してそんな事を言った。
珍しいな…葛が、んな事を言うとは。
PKM関係の話なら率先して手伝ってくれてた男が何で…


大護
「…ちっ、そういう事かよ」


俺は紙に書かれた内容を読んで納得する。
そして俺は同時に今のPKMの立場と言うものも理解した。
この依頼は葛から渡された物だが、葛は知ってて受けたって事か。



「…悪いな、俺はそこまで割り切れへん」

大護
「構わねぇよ、後は任せろ…俺がきっちり代行してやる」


それを聞くと、葛は唇を噛み締めて背中を向けた。
その姿はある意味怒りに満ちている。
だがそれは自分や法に向けられた怒りだろう。
あいつは仮にもプロだ。
直接手を出す事はねぇ裏方だが、それでも辛いと思う事はあるって事か…
俺は葛が見えなくなると、頭を掻いてため息を吐く。
そして紙切れをズボンのポケットにねじ込み、空を見上げた。
曇り空…か、雨は降りそうに無さそうだが。


P2
『…葛さん、どうしたんですか?』

大護
「今回の依頼は人間様からだ、そして殺してほしいのは恐らくPKM…」


俺が目を細めて言うと、P2は露骨に黙る。
わかっちゃいたはずだ…あくまでこれは裏の仕事だと。
依頼があれば引き受けるのが仕事人…なんだが、俺は少々他とは違う。
あくまで受けるのは直接相手に会ってからだ。
今回葛が渡したのはあくまで依頼人との接触場所。
俺は時間を確認して準備する事にした。



………………………



大護
「あんたが依頼人か?」

依頼主
「はい、どうしてもお願いしたくて…」


とある場所で待っていた女は、見た所高校生位の様だ。
さほど腹黒そうにも見えない、普通の眼鏡っ娘。
いかにもインドア派って見た目だが、はてさて?
俺は流石にタバコは自重し、まずは依頼内容を聞く事にする。
あくまで俺が受けるのは相手の『心』次第だ。
そこに俺が納得する心が伴わないなら、俺は依頼を受けない。
さて、この娘の心はどうかな?


大護
「まずは詳細を聞こうか…」

依頼主
「はい、まず事の成り行きをお話しします」
「1か月前、家にひとりのPKMが来ました」
「家は両親が父しかおらず、父はひとりで私と兄を支えてくれてます」
「そんな中、新しい家族としてやって来たPKMは想像とは全く違いました…」
「仕方ないとはいえ、家では何もせずにグータラしてるだけ」
「父は笑って愛情を注いでいましたが、やがて私と兄は知ってしまいました…」
「父はPKMと、肉体関係を持つ為に引き取ったのだと…」


成る程、こりゃ復讐というか、暗殺が目的みたいだな。
要はそのPKMを抹殺してほしいという訳だ。


依頼主
「ターゲットはそのPKM、そして父を殺してください」

大護
「……父親も、か?」


俺が目を細めて確認すると、依頼主はコクリと頷く。
その意志は固く、結果を理解した上で依頼している様だった。


依頼主
「ここまで育ててもらったのは感謝しています」
「ですが、父はもう母の事など微塵も想ってなかった…」
「私はそんな父をもう見たくない…だからお願いします」


依頼主は涙しながら頭を下げて懇願する。
やれやれ、こんな世の中だからこそ、PKMに欲情するダメ親父もいるわけだが。
葛の野郎もこの内容を知ってたから退いたんだろうな。
人間とPKMの関係は本当に曖昧だ。
互いが望むなら、簡単に肉体関係も築ける。
そして、今ある家庭を破壊する事も…


依頼主
「報酬は、600万用意してます」
「これで、受けていただけるでしょうか?」


俺は金の詰まった革袋の中身を確認する。
問題は無い、が…俺は一応聞いておく事にした。


大護
「後悔はしないな? 俺は受けるからには必ず殺る」
「そこから先の生活は、決して楽じゃないぞ?」

依頼主
「構いません、覚悟は出来てますし、これ以上母への侮辱は耐えられません」


俺はその『心』を受け取った。
母への思いか…死んだ人間に対して立派な事だが、それを蔑ろにして殺し屋に依頼されるダメ親父は大概だな。
俺は軽く息を吐いて袋を鞄に入れる。
そして低い声でこう言った。


大護
「なら、確かに依頼は受けた…必ず始末してやる」
「父親とPKMの行動ルーチンを教えてもらえるか?」

依頼主
「はい、父は……」


こうして、俺は依頼を受けて仕事を始める。
正直、簡単な仕事だが、今回ばかりは俺にも厄介な事故が付いて来やがったのが大問題だった…



………………………



ドォォォォォンッ!!


大護
「ちっ!?」


俺の後で爆発音。
かなりの勢いで炎が上がり、俺は廃ビルの影に隠れてやり過ごしていた。


P2
『前方からふたり、上空にもひとりいます!』


俺は仕事の後に突然PKMから襲撃された。
どうやら、ターゲットのダメ親父は複数のPKMと関係を持っていたらしく、依頼されたふたりを殺したら、こうやって3人のPKMから追われる羽目になったという。
戦うのは決して難しくないが、準備が足りなさすぎる。
それに、依頼の外で殺しをやるのは本来俺の主義じゃない。
とはいえ、空まで制圧されてたら逃げられんか?


ドォォォォォンッ!!


大護
「ちっ! まるで爆弾だな!?」

P2
『相手はマグマッグと思われます、かなりの熱量があるので、炎の直撃は即死を招きますね』
『上空にいるのはオオスバメ、スピードはかなりあるので死角からは出ない方がいいでしょう』
『残りのひとりはコジョフー、格闘タイプですので近付くと危険です』


成る程、とにかく近付かずに死角を移動し続けろと…って無茶言うな!!
ここはそもそも人気が無いから選んだ場所だ、つまり奴らも割と好き放題やれる。
逃げるのは正直難しい…やはり殺るしかないか?
生きるか死ぬかとなったら主義もクソも無い。
俺は何がなんでも生き残る…ヤツに復讐するまでは!


大護
「…P2、上の奴が俺の真上に来るタイミングを教えろ」


俺は懐から銃を取り出し、セーフティロックを解除する。
そして地上のふたりとの距離を測りつつ、死角に移動して合図を待った。


P2
『今です!』


俺は直後に真上へ銃弾を放つ。
サイレンサー無しの銃だから音は出ちまうが、四の五の言ってられねぇ!


ズッシャァァァァァァァッ!!


デカい音を立てて上からオオスバメとか言うのが落ちて来た。
どうやら当たった様だな…まずひとり。
オオスバメは完全に落下衝撃で即死しており、血と肉片が飛び散っていた。


大護
「…あの炎の奴が厄介だな、銃弾で殺せるのか?」

P2
『急所に当たれば十分殺せるかと』
『マグマッグとはいえ、人間としての器官を備える以上、弱点はあります』


成る程、それなら難しく考える必要はねぇな…
要は頭か心臓撃ち抜きゃ死ぬってこった。
俺は残弾を確認して相手の位置を見る。
そしてすぐに気付いて俺はその場から飛び退く。
すると、斜め上から飛び蹴りを放って襲って来るコジョフーとかいう奴の姿が現れた。
やれやれ、いつの間にかビルとビルの壁を蹴って上にいたのか…
俺は銃を構えてすぐに撃つ。
だが、その瞬間にコジョフーとかは体を捻ってかわしやがった。
冗談だろ!? 銃弾を見てからかわすのか?


P2
『あれは「見切り」と言う技です! 連続発動は安定しませんので、連射すればその内当たります』


俺は言われて再度撃つ。
そして矢継ぎ早に銃弾を連射し、2発程撃ち込まれてコジョフーは倒れた。
死んだかどうかは解らんが、とにかくこれで後ひとり!
マグマッグとかは足が遅い、だがその分射程距離がありやがるからこっちも迂闊に射線には入れねぇ。
しかも、相手の技は爆発系で効果範囲が広すぎる。
このまま逃げるのが吉かもしれねぇな…


大護
「P2、逃走ルートを割り出せ」
「さっさと退散しないと警察に嗅ぎ付けられる」

P2
『了解です、が…少し遅かった様です』


俺は気配を感じすぐに身を潜ませる。
そして突然ライトが照射され、俺の側は明るく照らされた。
その側に立っているのは、ひとりの女だった…



「そこの男、出てきなさい!」


黒スーツに身を包んだ長髪の女…?
こんな暗闇でサングラスたぁ、どういう神経してんだ?
とはいえ、面倒な事に代わりはない…数人の警官が混じってやがるな。
さて、PKMの死体もあるし、どう切り抜けるか…


警官
「御影さん、オオスバメの死体が! コジョフーも虫の息です!!」

御影
「何ですって…? まさかPKM同士で争ってるの?」

警官
「マグマッグは対処完了! 愛紗が眠らせました!!」


何だ…? 随分手際が良いな。
しかしそれならそれで好都合だ…さっさと逃げるに限る。
俺は気配を消し、足音を極力たてずにその場を後にした。


御影
「しまった!? 後の事はお願い! 私はあれを追うわ!!」


御影と呼ばれた女はひとりで追いかけて来る。
やれやれ、面倒な事だな。
俺はため息を吐いて全力で逃げた。
相手は必至に付いて来るが、追い付けるわけがない。
俺はこれでも100mを10秒代で走れる、ましてや地形は理解してるから捕まる気はしねぇ。



………………………



大護
「…撒いたか?」

P2
『…の様ですが、何かおかしい気が』


P2は何かを感じ取っているかの様だったが、俺には全く解らない。
この辺りは街外れで人気も無く、隠れる場所もある。
俺はとりあえずその辺の森に入って拠点を目指す事にした。
こっからなら森抜けてショートカット出来るからな。


P2
『!? ダイゴ足元!!』

大護
「何っ!?」


俺は一瞬で飛び退き、足元を見る。
すると、何も無い場所から何かが生えてきた。
いや、何かじゃない…こいつはPKMだ!!


大護
「ちっ、どっちの勢力か知らねぇが…!」

PKM
「待ってください、どうか話を…」


俺は懐から手を抜き、PKMを見る。
黒いドレスにウェーブがかった白髪、異様に細いウエストか。
胸はデケェな…揉み甲斐がありそうだ。


大護
「…話って何だ?」

PKM
「はい、しばしお待ちを…」


俺が?を浮かべると、すぐに何かが森の中に突入して来たのを理解する。
それはまるで野性動物の様で、木々の枝から枝を軽く飛びながら俺たちの前に現れた。
赤い短髪の女…こいつもPKMか?
そしてそいつに担がれていたのは、さっきの黒スーツ…!


大護
「ちっ、足止めが目的だったか…上手く引っ掛かっちまったな!」

御影
「違うわ! 話を聞いて大護君!!」


俺はギョッとする。俺の事を知ってるのか…?
依頼者…には見えねぇな。
だが、黒スーツの女はサングラスを取り、その素顔を俺に見せる。
俺はそれを見て思い出す。
その顔は、酷く懐かしい面影がある顔だった。


大護
「真莉愛ちゃん、か?」

真莉愛
「…ええ、久し振りね」


真莉愛ちゃん、大きくなったな…
あの頃に比べたら、随分大人っぽくなった。
スタイルも良くなったな…これは中々。


真莉愛
「…まさか、貴方が関わっていたなんて」

大護
「…こっちも驚きだ、いつの間に警察なんかやってんだ?」


確か前に会ったのは彼女が学生の頃だ。
たまたま仕事のついでで話をする事になって、そのまま親交を深めたんだよな…


真莉愛
「私は警察じゃないわ、こういう者…」


俺は差し出された名刺を受け取り、ライターで灯りを照らして見る。
成る程、そういう事ね。


大護
「随分立派な職業だな…真莉愛ちゃんらしいが」

真莉愛
「大護君、貴方の事は政府から知らされてたけど…」
「逃げる背中を見た時、貴方だと確信出来た」
「仕事で、ここに来ていたのね?」


政府から、と来たか。
俺の仕事は暗黙の了解だ、迂闊に政府は俺に手が出せない。
だが、それはあくまで人間の法律的に、だ。
正直、PKMに関してまで俺の仕事が暗黙の了解になるとは限らないわけだが…


真莉愛
「オオスバメとコジョフーは貴方がやったの?」

大護
「さてね…それを言うプロはいないだろ」


まぁ、俺の仕事を知ってるなら、ある程度確信は持たれてるだろ。
とはいえ、オオスバメとコジョフーとか言うのを殺ったのは正当防衛のつもりだがな。


真莉愛
「愛紗、彼は襲われてたのね?」


愛紗と呼ばれた白髪の女はコクリと頷く。
そして真莉愛ちゃんはふぅ…と息を吐いてこう言った。


真莉愛
「あのグループは近頃勢力を広げている、はぐれPKMの集団」
「貴方はそれに手を出して襲われたのね?」


はぐれPKM…? 何か組織だって動いてやがるのか?
そして、真莉愛ちゃんはそれを追っていたって事か…?


大護
「どっちにしても、俺は殺されそうになったんだ」
「正当防衛だとは思うがね?」

真莉愛
「確かに、それに関しては何も言えないわね…」
「貴方に対しては法律もあやふやになっちゃうし」


真莉愛ちゃんは頭が痛そうにしていた。
まぁ、面倒な事だわな…PKMの事までともなると。


真莉愛
「お願い大護君、PKMに関わるのは止めて」
「PKMの事は私が対処するから」

大護
「悪いが俺の仕事は俺が決める」
「PKMにはPKMの悩みがある…そこに俺の仕事が必要とされてるなら、それが俺の仕事だ」
「真莉愛ちゃん、意気込みは買うが今の真莉愛ちゃんには救えないPKMも多いと思うぜ?」


俺の言葉に真莉愛ちゃんは顔をしかめる。
理解はしてるって顔だな。
同時に俺には言われたくない…っていう顔でもあるが。


大護
「とりあえず問答は沢山だ、俺を縛る事は誰にも出来ない」
「実力行使なら望む所だ、この場で全員殺してでも俺は生き延びる…」


俺は凄みを込めてハッタリを通す。
気迫だけでも素人相手なら十分ビビるはずだ。
愛紗とかいうのが露骨に警戒してるな、赤髪の方は俺にメンチ切ってる。
つーか、大して効いてねぇ!
無駄なハッタリになっちまったかな?


真莉愛
「お願い、教えて…何故貴方はあんな裏の仕事を?」

大護
「聞いてどうする? 俺を捕まえたくなるだけだぞ?」


真莉愛ちゃんは唇を噛み締め何かに耐えている様だった。
現実を認められないみたいだな。
俺が裏の人間だと知ったのは相当ショックだったわけだ。


大護
「もう帰れ、ここで俺を敵に回すのは自分の立場を危うくするぞ?」
「ちなみに、俺は執念深い…やるなら徹底的にやるのが心情だ」

真莉愛
「それは、ひとりでこの場を切り抜けられるって事?」

大護
「そうだ」


俺は即答してやる…もちろんそんなのはハッタリだ。
いくらなんでも残弾少しの銃だけで3人相手にするのは危険極まりない。
そしてここで弱味を見せるのは愚行だ。
相手には疑ってもらわねぇと困る。


真莉愛
「…分かったわ、ここで貴方と争うのは危険すぎる」
「でも忘れないで、私はPKMを護る為なら命を賭けられるって事を」

大護
「なら俺の事も覚えておけ、俺は力の無い者の味方だ」
「どうしようもない絶望に、闇から手を差し伸べるのが俺だ」
「もちろん、それは決して正義じゃない、むしろド悪党だ」
「それでも、救える心は確かにある…俺は、そう信じている」


俺の言葉を受け、真莉愛ちゃんは無言でサングラスをかける。
そして、何も言わずに背中を向けてその場を去って行った。
俺はその姿が消えるまで待ち、完全に消えてから足を動かした。


大護
「P2、追跡は?」

P2
『ありません、完全に諦めてる様です』
『ですが、今の方とはどう言う?』

大護
「ただの友人だ、昔の話だがな」


俺は思い出すも、すぐに忘れる。
あんな過去はもうお互いに忘れるべきだ。
今の俺には、あの安息は心地良すぎた。
一瞬でも殺気が緩むのが怖かった…今の俺には、その安息は必要無い。
真莉愛ちゃんだって、自分の仕事を遂行している。
俺とは相容れない道で…



………………………




「…執調部ねぇ、まぁいわゆる小間使いか」

大護
「どういう組織なんだ?」


俺は翌朝仕事の報告も兼ねて葛に会っていた。
場所は喫茶店で、やけにうるさい店だな…つーか何だこのPKMたちは?
とりあえず今はハロウィンイベントという事で、色んな衣装を着ている店員たちが客からちやほやされていた。



「とりま、PKMの確保及び対処が目的のこじんまりとした連中や」
「所詮は政府の犬やし、大して気にする必要はあらへん」
「せやけど、PKM関係で仕事するなら避けては通れん」

大護
「…対策用意しとくか、何人かPKMを連れてたからな」


「今の所俺が確認取れたんは、ダークライ、ゴウカザル、ミカルゲの3人」
「あ、いやもうひとりアリアドスが追加されとったな…もっとも協力関係かは解らんが」


4人もいやがるのか…それに警察まで加わるとなると、相当面倒だな。
やれやれ、真莉愛ちゃんの性格ならまず首を突っ込んで来るだろうし、どう対処するか…?



「PKMは所詮素人に毛が生えた存在や、能力にさえ翻弄されんかったらお前は負けんやろ」

大護
「その能力が厄介だからな…影に潜んだり、猿みたいに飛び回られたら厄介極まりねぇ」


「せやな、とりあえず詳しい対策とかはデータ送信しとくから、後で確認せい」


俺はおう、と言ってコーヒーを飲む。
結構美味いな…値段は高めだが悪くない。



「大護、ちなみに誰が好みや?」

大護
「あ? 何だ急に…PKMの店員の事か?」


葛はそうそう!と頷いて楽しそうに店員を見ていた。
こいつ、本当にPKMが好きなのか? 俺はため息を吐きつつも、店員を眺めてとりあえず目に留まったのを指差す。


大護
「あれだな、やはり巨乳に限る」


「まぁ、お前ならそう言うと思ったけど…」
「やっぱ華凛ちゃんは別格やな〜凪ちゃんも凄い人気やけど」

大護
「お前って、何でPKM好きなの?」


素朴な疑問ではあった。
だが、俺にはあまり理解出来ない。
俺にとってはPKMは人間も同然で、別段特別と言うわけではない。
だから好きか嫌いかとかは人間関係の延長でしかないのだ。
P2の様に、俺と協力して生活する…とでもなればもちろん愛情は生まれるが。



「せやな、人間よりかは好きかもしれへん」


葛は遠くを見る様な目でそう言った。
俺はコーヒーを飲んでその意味を考える。
葛は、人情味溢れる裏の人間だ。
人付き合いも良く、表の顔は気さくで取っつきやすい。
だが、そんな葛でも裏の顔は冷酷でもある。
特に、外道に対しては俺以上に冷酷な所がある程に。


大護
「…お前、何か隠してるよな?」


「何でそう思う?」

大護
「PKMに対して露骨なんだよお前は…話したくないんだろうから聞かねぇけど」


俺がそう言ってやると、葛は申し訳なさそうな顔で俯く。
そしてコーヒーを飲み、ふぅ…とため息を吐いた。



「悪いな、こればかりは言えん」

大護
「だから聞かねぇよ…俺はお前の事は信頼してるし」
「だが、何か目的があるんならいつでも言え」
「俺は自分の目的の為にお前を手伝わせてるんだから…」


俺たちは互いに微笑し、コーヒーを飲み干した。
そして、店を出てしばらく歩く。



………………………




「そう言えば、今日はP2ちゃんは?」

大護
「ルザミィと買い物だと…最近仲良いんだよなあいつら」


「大丈夫なんか? P2ちゃん保護登録してへんやろ?」


そりゃそうだ…違法ゲットしてんだから。
まぁ、ルザミィが一緒なら問題ないだろ…
一般人だってPKM連れてるんだから。



「…一応、気ぃつけや? 執調部に目ぇ付けられたんやから、マークあるかもしれへん」

大護
「心配いらねぇよ…ああ見えてP2はしっかりしてる」
「真莉愛ちゃんが近くにいたら、遭遇しない様に自分で索敵出来るからな」


何でも衛星からダウンロードして、色々ネット情報とかも取り込んでるらしい。
特にGPSをハックして、特定の人物の居場所を確実に探知出来るから洒落にならない。
元々宇宙探査用に進化したポケモンらしいから、そんなのは朝飯前って事らしい。



「か〜! やっぱP2ちゃん凄いねんな…」

大護
「実際助かってるよ、P2のお陰で仕事もスムーズだ」
「こんなに助けられるとは正直思ってなかったからな…」


P2は日に日に俺の行動を予測して当ててくる様になった。
特に仕事で移動する時は、あえて危険の少ない道をナビゲートする。
俺の敵かもしれない相手の位置を把握し、スムーズに目的地へと案内。
今までなら面倒な時も多かったが、今じゃP2のお陰で警察にもほとんど出くわさない。
こんな使えるナビは世界中どこ探しても無いだろ。



「大護、P2ちゃんの事、大事にしたれよ?」

大護
「…ああ、言われなくてもそうする」
「あいつは、俺の相棒だ…一蓮托生、死ぬ時まで一緒にいてやる」


俺は空を見てそう約束する。
本人の前じゃ恥ずかしくて言えねぇだろうな…



………………………



ルザミィ
「これなんてどう?」

P2
「可愛いです、でも大きすぎてあの部屋には邪魔になりそうです…」


私たちは、ファンシーショップでぬいぐるみを見ていた。
大小様々なぬいぐるみやアクセサリーを見たり触ったりして私たちは楽しんでいた。


ルザミィ
「うーん、折角だからアクセのひとつでも買ってあげたいんだけど、中々良いのが無いわねぇ」

P2
「私はこのままでも大丈夫ですよ?」
「変に着飾ると、ダイゴが困惑するかもしれませんし…」


私は想像してしまう。
ダイゴは化粧とかそういう着飾るのはあまり好みじゃ無いみたいだった。
だから、私も極力すっぴんで地味目に意識している。
だけど、ルザミィさん的には納得出来ない様だった。


ルザミィ
「折角可愛いんだから、やっぱりもっと意識すべきよ!」
「大護のトラウマを吹き飛ばす位の女にならなきゃ♪」


トラウマ…ですか。
ダイゴの忘れられない悪夢。
私の姿に、死んだ姉を重ねてしまったダイゴ。
それでも、ダイゴは私に優しくしてくれる。
エッチな事は言っても、最後には絶対手を引いてくれる…
そんな、頼れる人。


P2
「私には荷が重いのではないでしょうか?」

ルザミィ
「そんな事無い! P2ちゃんなら大護だって女として見てくれる!」


断言されてしまった。
確かに、ダイゴは私の事を認めてくれてはいる。
でも、それが相棒以上の関係なのかは、私にはまだ解らない。


ルザミィ
「信じて良いわよ? これでも私は大護の事ならな〜んでも知ってるんだから♪」

P2
「何でも…ですか?」


どこまで本気で言ってるのかは解らないけど、でも信じてみる事にした。
信じる事が、大切なんだと、今は思う事にした。


ルザミィ
「そうよ! 裸で密着まではやってるんだから!!」

P2
「でも、そこまでなんですね…」


ルザミィさんはそれ以上何も言わなかった。
内心悔しいのかもしれない…ルザミィさんって自分に凄い自信持ってる人だから。


ルザミィ
「全く、私が裸で押し倒して未遂のままとか、大護だけなんだから…」

P2
「あ、はは…ルザミィさんって、経験は豊富なんですか?」

ルザミィ
「ベッドの上での話? まぁ、そりゃあね…」
「こんな仕事だもの、体使わなきゃ出来ない任務も多かったわ」
「特に、駆け出しの頃は酷い物だった…」
「文字通り地獄の様な辱しめも受けたわ」


ルザミィさんは辛い思い出を思い出している様だった。
私は申し訳なく思い、謝る事にする。


P2
「申し訳ありません、軽率な事を聞いてしまって」

ルザミィ
「ううん、良いのよ…所詮わたしの未熟さが招いた事だったし」
「…それに、大護が助けてくれたから」


ルザミィさんは左手で自分の体を抱き、苦笑していた、
ダイゴが命の恩人とは聞いていたけど、ルザミィさんにとってはどれだけ大きな事だったのか?
聞いてみたいけど、今はとても聞ける雰囲気じゃなかった。


P2
「…ルザミィさん、これどうですかね?」


私は、雰囲気を変える為にひとつの指輪を手に取った。
それほど高い物ではなく、別に宝石とかがあしらわれているわけでもない。
普通の装飾しかされていない、指輪と言うには地味な物だった。


ルザミィ
「そんなので良いの? 指輪だったら、ダイヤでもプレゼントしてあげるわよ?」

P2
「良いです、これで…」
「ダイヤの指輪は、ダイゴに買って貰いたいですから♪」


私が笑って言うと、ルザミィさんも笑ってくれる。
そして、私たちは笑いながらその指輪をふたつ手にした。
もうひとつは、ダイゴへのプレゼントです。



………………………



ルザミィ
「じゃあ、私はここだから…」

P2
「はい、今日はありがとうございました♪」


ルザミィさんは4階建ての団地みたいな集合住宅に入って行った。
PKMも住んでいるのか、ちらほら姿が見える。
あれは、ウツロイドかな? 凄く珍しい…
あ、目が合った…お辞儀をされたので私もお辞儀して答える。
気が付いたらルザミィさんが見えなくなっており、私はひとり残されてしまった。
私はとりあえず帰る為に踵を返すが…


むにゅぅ!


P2
「ひゃあっ!?」


「おお…この身長とこのサイズ!! 茜ちゃんに勝るとも劣らぬ…いやサイズなら上かっ!?」


突然、後ろか私は両胸を鷲掴みにされてしまう。
思わず声をあげてしまうも、私はすぐにその手を振り払った。
そして、背後の誰かに向かってこう言う。


P2
「何なんですかいきなり、エッチですよ!?」


「むぅ、この辺では見ない顔ですね…?」
「見た目では種族は解り辛いですね…ノーマルタイプ?」


見ると、そこにはまるで悪びれていないメイド服の少女がいた。
私はネットを介して検索をかける、ヒット…ランプラーですか。
この住宅の一室に保護されているPKMの様ですね。


P2
「とりあえず、今回の事は後で報告させてもらいます」

ランプラー
「ああん、待ってー! 通報だけは止めてぇ!?」


だったら見知らぬ相手にあんな不埒な事しないでください!
私はため息を大きく吐き、とりあえずこう言った。


P2
「…では今回は不問にしておきます、ですが次はありませんので!」


私は強めに言うと、ランプラーの少女は笑って手を振った。
私はそのまま背中を向けて立ち去る…どうなってるのでしょうか?
ランプラーって皆あんなのなの…?
やっぱり、まだまだ私には解らない事が多すぎる。
ひとりで出歩くのは、極力避けよう…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』



第4話 『再会』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:22 )