序章 『石蕗 大護という男』
第3話 『過去』
配達員
「どうもー! お届け物でーす!!」


「あ、どうもお疲れ様です」


丁度朝落ち着いた頃に、郵便物が私に届く。
私は少し?と思う。
何故なら私はPKMであり、人間ではない。
その私に他者から郵便物等あり得ないはずなのに…



「宛先は、聞いた事の無い所から?」


何か会社名の様にも感じるけど、私には解らなかった。
それでもズシリと重量を感じる小包の段ボール箱を私は開け、中身を確認する。
すると、私は目を見開いてその中に添えられていた指輪に目が行った。
私はそれを震えながら指先で摘まむ。
それは、まさしくあの人が身に付けていた指輪だった。



「孝洋…さん」


涙を堪えられない…もう戻って来る事は無いと思っていた遺留品。
綺麗な状態で私の元に届けられたそれには、一通の手紙も添えられていた。



福さんへ…
とりあえず、指輪を見付けたのでお届けします。
後、料金の超過分をお返ししますのでお受け取りください。

これから先、辛い事は多いかもしれませんが、どうか絶望せずに生きて。
後、一肌恋しい時は、いつでもご連絡を!



ワープロか何かで印刷されたその手紙は、機械的ながらもどこか人情味を感じさせる文章だった。
その短い文の中、私は送り主の正体を察する。
そして、私はその文章を目に焼き付け、すぐにそれをシュレッダーにかけて切り刻んだ。
きっとこうする事が、少しでも彼の為になるであろうと、私は勝手に思ったからだ…



(ありがとうございます、本当に)


私は心の中で何度も礼を言う。
決して、こんな復讐は誉められるものじゃない。
それでも、代わりに成し遂げてくれる人がいた。
当然私も同罪だろう、それでも私は絶望せずに生きなければならない。

私は、改めて荷物を纏める事にする。
責任者を失った私は、再び施設に戻らなければならない。
式は挙げてないものの、孝洋さんは私に全ての遺産を残すと生前書き残していたけど、果たしてそれはどこまで有効なのか?
私は、あまりに幸せに溢れていたこの家を思い、また涙する。
そして、私は小さな…小さな声で、ただ別れを…告げた。



………………………



大護
「あ〜あ、これからどうすっかな〜?」

P2
『超過分を返却と言いましたが、何故そんな事を?』
『あれだけの金額があれば、それを元手に新たな仕事を探す事も出来たのでは?』


俺が公園のベンチで休んでいると、P2は不思議そうに携帯電話のスピーカーから声を放つ。
俺はため息を吐き、そしてこう答えた。


大護
「良いんだよ、俺はあの人に生きてほしかったから」
「俺が金なんて持ってても、使い潰すだけだからな…」

P2
『…使い潰す、ですか』

大護
「大金なんてどうせギャンブルと女で消えるモンだ」
「だったら取り分は少ない方が逆に安心する」
「まぁ心配すんな、お前を養う事位朝飯前だから♪」

P2
『でしたら、早く服が欲しいです…』


それは切実な問題だった。
P2は未だにボロ服のままだ…しかもパンツがズレたままの。
エロいから何だで放置してたが、流石にそろそろ考えてやるかな。


大護
「よし! ならコスプレエッチ用にバニー服とか買い漁ろ!!」

P2
『ダイゴ、変態です…』


変態とか言われた!? それじゃあ世の男の99%は変態じゃねぇか!!
俺は心の中でツッコミを入れるも、その場から立ち上がる。
とりあえず服がいるのは確かだ、P2だって外に出たいとは思うだろうし、さてまずはデパートか。



「あら、こんな所で会うなんて奇遇ね?」

大護
「あん? って、お前は…」


俺はひとりの女を横目に見た…身長は173cm程、そいつは白いワンピースに身を包み、長い金髪をたなびかせている。
手には茶色のハンドバッグを持ち、高級感溢れるその姿はまさにセレブの香りだった。
俺はため息を大きく吐き、面倒そうな顔をしてこう言い放つ。


大護
「な〜にが奇遇だ、どうせ狙ってたんだろ? 相変わらずそのセレブっぽい服はどうにかならねぇのか『ルザミィ』?」


俺が軽い口調でそう言ってやると、ルザミィは口元に手の甲をかざし、クスクス笑う。
相変わらずの様だな、電話でしかしばらく会話してなかったが、こいつも変わらなさそうだ。


ルザミィ
「あら、この方が仕事もしやすいのよ?」
「エージェントなんて、人となりが良くないと話にならないし」

大護
「な〜にがエージェントだ! それなら1発位ヤらせろ!!」

ルザミィ
「はいはい…トラウマのせいでぺニス勃起する前に吐く癖を治したら考えてあげるわよ」


俺はうぐっ…と言葉に詰まる。
確かにそうなんだがな…!
実は俺には最大の弱点があり、それがそのトラウマスイッチだ。
詳細はまだ伏せるが、このせいで俺は風俗にも行けねぇし、オナニーも不可能。
エロビデオですら吐いた事あるしし、この症状は死ぬ程重い…
エロい事考える事は出来ても、行為を想像したらスイッチが入っちまう。
最悪だぜホントに…


ルザミィ
「貴方も相変わらずよね…エッチな事ばっかり考えてるのに、トラウマは乗り越えてない」
「それとも、あの事件を忘れない為の行動なのかしら?」

大護
「ああ、そうだな…俺は絶対に忘れねぇよ」

P2
『ダイゴ…あの事件って?』

ルザミィ
「あら、誰の声? どこから聞こえてくるのかしら?」


ルザミィは不思議そうに周りを見渡すが人はいない。
公園とはいえ、小さい上に今は平日だ。
この時間ならどいつも学校に行ってるはずだからな…


大護
「まぁ良いか、ほれ挨拶しろP2」


俺は携帯電話を胸ポケットから取り出し、画面をルザミィに見せる。
するとP2は勝手に画面を映し、笑顔でルザミィに挨拶をした。


P2
『初めましてルザミィさん、P2と言います』
『バーチャルポケモンのポリゴン2です♪』

ルザミィ
「バーチャル…ポケモン!? PKMなの、この娘?」


予想通りルザミィは驚いた。
まぁ当然だろうな、こいつはPKMやら何やらを調べる為に日本に潜入してんだから。


大護
「誰かさんのお陰で事件現場から拾っちまったんだよ…」
「で、今は俺の拠点に置いてるし、仕事も手伝ってもらってる」

ルザミィ
「…姉に似てるのは偶然?」


こいつも葛と同じ事言いやがったな。
って事はルザミィも白か、やっぱ何かあるのかあの襲撃は?
俺は携帯電話を再び胸ポケットに仕舞い、ため息を吐く。
そして、俺は目を合わせずにルザミィにこう答えた。


大護
「…何で似てるのかは知らねぇ」
「だが、もしこれがヤツに繋がるなら、最大の好機かもしれねぇ」

ルザミィ
「…罠の可能性も高いわよ?」

大護
「構いやしねぇ…もう25年間どこにいるかも解らねぇんだ」
「罠だろうが何だろうが、俺は食い付くしか出来ねぇ」


俺は俯いて拳を握る。
体に熱を帯びるのを感じた。
沸々と怒りを覚える…そして恐怖も。


P2
『ルザミィさん、ダイゴはどうして…?』

ルザミィ
「…聞けば逃げられなくなるわよ? それ程、大護の憎しみは深い」
「貴女に、それだけの覚悟はある?」


ルザミィは真剣な表情でそう言った。
P2は数秒黙るも、ブレない意志でこう答える。


P2
『あります、例え何があっても私はダイゴと共にいます』

大護
「待て、何でお前はそこまで俺に尽くす?」
「昨日今日過ごした程度の男に、何でそんな覚悟が出来る!?」


ちなみに俺も人の事は言えない。
俺だってどこかP2に惹かれているのは解ってる。
短い時間なのに、俺はP2と一緒にいるのが楽しいと思っちまった。
そこに深い理由なんか多分無い。
ただ俺はそうしたいと思っただけだ…


P2
『それでも、貴方は私を救ってくれました』
『あの絶望しかない場所で、貴方は私を見捨てなかった』
『貴方がいたから、私はこうやってここにいるんです…』


それはただの感謝だった。
そしてただの偶然だったのに…俺は、多分無意識に姉の幻影を見ただけなのに…
それでもP2は、ただ感謝していた。
俺は、それに答えなければならないのかもな…


ルザミィ
「…どうする? 彼女はこう言ってるけど」

大護
「…分かった、とりあえず帰ったら話す」
「こんな所でそんな話出来るかっ」

ルザミィ
「まぁ確かに良い話では無いものね…」


P2は納得し、俺は買い物に向かう事にした。
何故かルザミィもそれに付いて来る。
まぁ、別に良いか。



………………………



ルザミィ
「何? P2ちゃんの服を買いに来たの?」

大護
「そうだよ、下着から何まで全部揃えてやらねぇと…」

ルザミィ
「サイズは解ってるの? って直接聞けばいいのか…」

大護
「身長163、3サイズは上から89、59、88だな」


俺は軽く答えてやる…見た感じその位のはずだ。
胸は揉んだし確定、尻は今朝見たし、ウエストは一目瞭然だ。
誤差はほとんどねぇと思うが…


P2
『ダイゴ、エッチです…いつの間に人の3サイズを』

ルザミィ
「まぁ、変な特技よね…見れば3サイズ把握出来るって」

大護
「ちなみにルザミィは92、ろ…」

ルザミィ
「はいそこまで!! イチイチ言わなくてよろしい!!」


俺はルザミィに後ろから口を塞がれ、止められる。
やれやれ、ちょっと太ったからって慌てすぎだ。
俺はとりあえず暴露はそこそこに下着を物色する。


大護
「ん〜どうせならTバックとかにするか、ズラしやすいし」

ルザミィ
「ズラす事前提なのね…吐くんじゃないの?」


まぁ、見る分にはそこまででもないからな…
逆にそこまでしか無理なんだが…
ピンポイントに触る位ならともかく、真っ裸見たら吐くかもな…
結構この辺は曖昧だ…俺のスイッチが入るかは精神状態にも左右されるし。
特に、P2は姉貴に似てるってだけにスイッチは入りやすいかもしれないな。


大護
「まぁ、その辺は弁えてるさ…どうせこれから一緒に過ごすんだし」

P2
『…ダイゴ、エッチなのに、エッチな事でトラウマがあるんですね』


P2は半ば呆れている様な口調だった。
まぁ、そりゃそうだろうな…こんだけエロい事考えてても、一線越えたらスイッチ入って吐きそうになるんだから。
端から見たら滑稽だろう…何て馬鹿なのかと。


ルザミィ
「とりあえず、私が見繕ってあげるわよ」
「大護に決めさせたら外も歩けない服になりそうだし」


失礼な、外は歩けるぞ…歩きたいなら。
まぁとりあえず俺に服のセンスなんざ無ぇし、任せるか。



………………………



大護
「で、何で付いて来るんだ?」

ルザミィ
「え? 折角だし、P2ちゃんに会ってみたくって♪」


結局、買い物が終わってもルザミィは着いて来ていた。
P2の服を選んだんだし、実際に着てる所を見たいんだろうがな…
まぁ、良いけどよ。


大護
「こうやって歩いてたら夫婦と間違えられるかもしれんぞ?」

ルザミィ
「冗談キツいわよ…見られるわけないでしょ?」
「良い所、セレブが誘拐犯に連れられてる様にしか見えないわよ」


ヒデェ…まぁ俺が悪人面なのは仕方ないが。
ただそれに関してはルザミィのセンスも問題だろう。
露骨にセレブな格好してやがるから俺が誘拐犯に見えるんだっ。


子供A
「あ、あの人、外人〜キレ〜♪」

子供B
「きったねぇ旦那だな〜風呂入ってんのかな?」

子供C
「奥さん旦那は選べよ〜?」


そんな事を良いながら子供は無邪気に去って行く。
ルザミィは呆然としながらその後ろ姿を見送った。


大護
「…ですって、さ?」

ルザミィ
「日本人の感覚は解らないわっ」


頭を抱えて唸っていた。
まぁ、外人とは確かに感覚違うだろうけど…
子供にとっちゃ、俺らは両親みたいな歳の大人だから、そういう風にしか見えないんだろうな。



………………………



大護
「ただいま〜」

P2
『お帰りなさい…と言うのもおかしい気はしますね』

ルザミィ
「お邪魔しまーす、って何も無いわね」
「布団はあるけど、あそこに寝てるのP2ちゃん?」
「…何で下着ズレてるの? もしかして事後!?」


まぁそう見えるわな…無造作に布団の上で倒れてて下着ズラされた状態じゃ。
しかし残念ながら事後ではない、そもそも俺にそこまで出来るかっ。
出来るなら1日中やっとるわ!


大護
「とりあえずさっさと戻れ…」


俺は充電ケーブルをスマホに差し、USBをP2の口に咥えさせる。
そして、瞬時にP2は意識を本体に移した。


P2
「……!!」


P2は早速下着を穿き直し、赤面しながらその場で正座した。
それを見てルザミィは笑う。


ルザミィ
「成る程、流石はPKMね…意識を電気信号に変えてスマホに常駐するなんて、バーチャルポケモンと言うだけあるわね…」
「それじゃ改めましてP2ちゃん、私がルザミィよ♪」
「こっちはコードネームで、今世間的には『ルザミーネ エーテル』で通してるわ」
「好きな方で呼んでくれたら良いから♪」


そう言って自己紹介するルザミィ。
まぁ、俺らからしたらコードネームの方が馴染みあるからな。
P2的にはどう呼ぶのか?


P2
「分かりました、それではダイゴに合わせてルザミィさんとお呼びします」

ルザミィ
「ん、それじゃお着替えタイムといきましょうか♪」
「大護、外に出てなさい」

大護
「…そだな、裸なんか見たら吐くかもしれん」

P2
「何だか酷い言い方に聞こえます…」


そりゃ気のせいだ。
俺のトラウマスイッチが問題だから仕方ない。
別に吐く程嫌な体ってわけじゃないんだから…
とりあえず俺は家の外に出てタバコでも吸う事にした。



………………………



大護
「やれやれ…」

ルザミィ
「もう良いわよ? ついでにお風呂にも入らせたから、時間かかっちゃったけど♪」


15分は経ってたか、道理で遅いわけだ。
まぁ水の音がしてたから察しはついてたんだが。
俺は吸い殻を握り潰して消火し、空になったタバコの箱に吸い殻をねじ込む。
さーて、どんな格好になったのかね?
俺は少し期待しながら家に入って行く。
そして、四畳半の狭い部屋の端、布団の上に正座していたP2の姿は…


P2
「…どう、ですか?」


綺麗に体と髪も洗われ、艶やかになったP2は綺麗だった。
服は普通のカジュアル服で、白のパーカーと赤のズボン。
エロさは皆無だが、形良く張っている胸は立派なサイズだな。


大護
「良いんじゃねぇか? ズラすのは難しいが…」

P2
「ズラす前提で話さないでくださいっ」


怒られる…俺はワハハッと笑い、ルザミィも後ろで笑っていた。
良いな、こういうのも。
P2も自然と笑顔を見せていた。
俺は少し真剣な顔をし、そして畳に座る。
ルザミィも近くの畳に座って背中を壁に預けた。
そして俺は静かに語り始める…あの時の悪夢を。


大護
「…今から25年前、俺はこことは違う別の町に住んでいた」
「その時の俺は7歳で、まだ小学生に通ってた時期だ」
「家庭はそれなりに裕福で、生活には不自由してなかった」
「家族は両親と姉貴がひとり、4人で幸せに暮らしていたよ…」

P2
「…その姉が、私に似ていると言う?」


俺は頷き、財布から1枚の写真を取り出してP2に見せる。
もうボロボロで所々破れているが、姉貴の部分だけは綺麗に残っていた。
その姿はまさにP2そっくりで、P2本人も驚く。


大護
「当時の姉貴は17歳で、俺とは歳が結構離れてた」
「高校でも結構な有名人で、文武両道、性格も人に慕われると才色兼備の良い女だったそうだ」
「そんな姉が、俺は大好きだった…」


俺は思い出しながら俯く。
そして段々とあの情景が甦ってくる。
俺は次第に声色を変え、あの時の恐怖と憎悪を思い描いた。


大護
「事件が起こったのは、その年の2月29日…」
「俺たち家族は寝静まる頃、あるひとりの男に家を襲撃され、俺を除いて一家を惨殺された」

P2
「…!? ざ、惨殺…?」


P2は口を押さえて顔を青くする。
俺は構わずにこう続ける。


大護
「時間にしたら数分程だ…両親は寝室で寝ている所をハンマーで頭カチ割られて、脳ミソぶちまけて即死」
「姉貴は俺を庇い、頭を強打されて死亡…俺もその時は同じ様に死ぬと思っていた」
「だが、そいつは何を思ったか俺を見て笑いやがった」
「フルフェイスの黒いメットで顔を隠していたにも関わらず、俺にはヤツが笑っていたのが確信出来た」
「そして、ヤツは俺を動けない様に拘束、声も出せない様に口は塞がれた」
「俺は恐怖した、これから何が起こるのか?と…」

P2
「…一体、何が?」


俺は思い出す、あの時の恐怖を。
そして憎悪する、あのヤツの行動を。
俺は憎しみを強く込めてこう言葉を続けた。


大護
「あのクソ野郎は…! 事もあろうに、死体となった姉貴の体を犯しやがったんだ!!」
「それも、俺に見せつける様にワザと!!」
「俺はあの時の死んだ姉貴の目が目に焼き付いて離れない!」
「ヤツの喘ぐ声が耳に張り付いて消えない!!」
「ヤツが絶頂する瞬間まで、俺は意識を失う事なくその光景を目に焼き付けた!」
「そして、姉貴の死体に膣内射精したヤツは、俺の束縛を外して頭を鈍器で殴った」
「俺は意識を朦朧とさせながらも、頭から血を流してヤツの姿を見逃さなかった」
「ヤツはその後、ガソリンを姉貴の死体と床にぶっかけて家ごと燃やした…」
「俺は命からがら這いずってでもそこから生き延び、そして難を逃れたんだ…」


思い出す度に、俺はあの憎しみが呼び起こされる。
今でもこれだけは消える事は無い…俺の生きる糧なのだから。


P2
「…それじゃあ、ダイゴが自慰も出来ないと言うのは」

ルザミィ
「そっ、その時の姉が犯される姿を呼び起こされて吐いちゃうのよ」
「本人がどれだけエッチな事を考えていても、それは復讐を忘れない為の行為に過ぎない」
「その時の記憶を常に保持し、例えトラウマに苛まれようとも大護は憎悪を募らせる」
「今の仕事をやっているのも、その延長線上の様なものね」

大護
「そうだ、俺は復讐の為、裏稼業に手を染めた」
「あの時の憎しみで俺はそれから強くなる努力をした」
「体を鍛え、知識を蓄え、どうすれば人を殺せるのかを常に学び続けた」
「そして、俺は17歳の時に初めて人を殺した…」


P2は黙ってしまう。
予想はしていたという顔だが、やはり受け入れがたいのかもしれねぇな。


ルザミィ
「私と会ったのは20歳の時だっけ? もう12年も経つのね…」
「お互い、歳を食うわけよね…」

大護
「あの頃からお前は世界を行ったり来たりのエージェントだったな」
「今や世界政府の高官から御用達の凄腕エージェントか…」


ルザミィは笑う。
昔を思い出したのかもしれない。
ルザミィも決して順風満帆とはいかなかったはずだ。
女としても様々な事をやらされたろうからな…


P2
「ルザミィさんは、おいくつなんですか?」

ルザミィ
「あらやだ、女に年齢を聞くのはタブーよ?」

大護
「多分俺とそんな変わんねぇだろ…葛よりかは上のはずだ」


俺がそう言うとルザミィはムッとして不満そうな顔をした。
そして子供っぽく口を膨らませてこう言う。


ルザミィ
「葛君よりも下よ! それ以上は教えてあげない!」

大護
「マジかよ…って事は20代か〜? まぁ見た目は若々しいけどよ…」

P2
「葛さんはいくつなんですか?」

大護
「30ピッタシ、だからそれより下なら20代確定だ…」


今まで気にしてなかったが、ルザミィ俺と初めてあった時は学生も同然かよ!
当時から貫禄あったから、てっきりタメ位だと思ってたのに…


ルザミィ
「大護、私と初めて会った時何て言ったか解る?」

P2
「どうせ股開けとか不埒な事を言ったんですよね?」


ルザミィは大当たり!と笑って言う。
俺はその時の事を思い出して少し赤面する。
チクショウ…何かP2にため息吐かれると心に来るな…


ルザミィ
「年下の未成年相手にいきなりしゃぶれ!だったからね〜」

P2
「ダイゴ、昔からエッチです…」

大護
「はいはい、どうせ無理だったんだし…」

ルザミィ
「そうよねぇ、いざ仕事終わりに裸でベッドに押し倒したら、いきなり吐き出すんだからもう驚いたのなんのって!」


ぐはぁっ!? 言わなくても良い黒歴史を!?
P2も流石に哀れみの目を向けている…そんな目で俺を見るなっ。


P2
「トラウマって本当なんですね…って言うか、ルザミィさん意外に積極的なんですね」

ルザミィ
「あら? 女は素直に感謝を体で表す事もあるわよ♪」
「一応、命の恩人だしね…」

大護
「まぁ、俺も吐いたのは何気に初めてだったからな…」
「おかげで未だに童貞だよ…オナニーすら無理だったのはショックだった」


オナニーするにもオカズがいるからな…
妄想してもダメ、エロ本でもダメと、あらゆるオカズが無理だった…


ルザミィ
「でも、勃起はするし、寝てる時に手コキしたらちゃんと射精はしたのよね…」

大護
「ルザミィさん!? 一体いつの間にそんな事試してたのかな!?」
「俺多分その時メチャクチャ悪夢にうなされた記憶あるから!!」


チクショウ! ルザミィが手コキしてやがったのか!?
確かに異様に気持ち良かった夢だったんだ…すぐに悪夢に変わって気持ち悪くなったが。


P2
「あ、はは…ルザミィさんも、凄い事するんですね」

ルザミィ
「ふふ、これでも大護の事は気に入ってるのよ?」
「本当にトラウマ克服したら、すぐにでも抱いてほしい位には…」

大護
「ちっ…どうせ当分無理だろうよ」
「お前もいい加減、男作りゃあいいだろ?」
「勿体ねぇぞ…折角良い女なのに」


俺が少し照れながら言うと、ルザミィとP2はクスクス笑った。
チクショウ、下手な事は言うんじゃなかった!
俺は顔を手で覆って赤くなる顔を隠す。
そして、しばらくふたりが笑い終わるのを黙って待っていた。


P2
「ダイゴも、ルザミィさんも仲が良いんですね」

大護
「まぁ、そこそこ長い縁だからな…この前は本当に命狙われたのかと一瞬疑っちまったが」

ルザミィ
「ホントに酷いわ…私が貴方を狙うなんて、相当の報酬が用意されてなきゃやらないわよ!」


されてたらやるんだな!
まぁそれがプロってもんだ…その時は俺も容赦はしねぇしな。


大護
「で、お前もしばらくはこの街にいるのか?」

ルザミィ
「そのつもりよ…っていうか、もう結構長くいるんだけどね」


ルザミィは呆れた様にそう言う。
そうか、前からPKM関係で日本にスパイとして潜り込むっつー話は聞いてたが、そんなに前からいたのか…


ルザミィ
「…正直、この国のPKMは多すぎるわ」
「ゲートの情報を探れって言われても、今の人類に解明出来るとも思えないしね」

P2
「ゲート…PKMが出現する時に発生すると言われる扉」


扉、ねぇ…とりあえずそのゲートってのが、ルザミィの雇い主の欲する情報って事か。
PKM関係は予想通り闇が深そうだな。
葛の野郎も争いを危惧してやがったし、既にいくつかドンパチはやってるみたいだからな…


ルザミィ
「さて、と…そろそろお暇しましょうかね♪」

P2
「ルザミィさん、今日はありがとうございました♪」
「いただいた服は大切にさせてもらいます!」


P2は礼を言って笑う…ルザミィもそれを見て満足そうに笑い返し、手を振って外に出て行った。
P2の事、相当気に入った様だな…P2もルザミィの事が気に入ったみたいだし。


大護
「さて、とりあえず寝るかな…って布団ひとつのままだったな」
「まぁ良いか、一緒に寝るなら裸で来いよ?」

P2
「…吐くから嫌です」


俺はぐっ…と言葉に詰まる。
チクショウ…もう下手に弄くれなくなったじゃねぇか!
俺ははぁ…とため息を吐き、布団に寝転がって目を瞑った。
とりあえず、まずは休息だ…後は依頼次第。
まずは時差ボケ治さねぇとな…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』


第3話 『過去』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:21 )