序章 『石蕗 大護という男』
第2話 『姉』
P2
『…マスター、何か私に出来る事はありますか?』

大護
「だったら黙ってろ、これはお前が直接関わるには黒すぎる仕事だ」


俺は深夜23時前、拠点の近くにある神社の前で人を待っていた。
その間にP2と幾度か会話をしたが、P2は俺の仕事に興味がある様だな。
だが、俺はそれを適当にはぐらかし、P2には詳細を伝えていない。
そして、深夜23時きっかりに目的の情報屋は現れた。


情報屋
「毎度〜♪ 情報屋やで〜」

大護
「相変わらず時間通りだな、って事は思ったより簡単だったか?」


俺がニカッと歯を出して笑ってやると、情報屋はため息を吐く。
そして、呆れた様にこう言った。


情報屋
「簡単も簡単…そもそも、こんなん警察の甘えやんけ」
「単に面倒やから担当が放置しただけやろ、クソ警官やな」

大護
「…成る程な、福さんがPKMだからだと軽んじられてただけじゃねぇって事か」


俺が言うと、情報屋は頷く。
そして携帯電話を胸ポケットから出して俺に促す。
俺は呼応して自分の携帯電話を情報屋に向けた。
そして俺はこう言う。


大護
「P2赤外線通信だ、データを受け取れ」

P2
『了解しました、データを受信します』

情報屋
「な、何やこの娘!? 妙なアプリ入れとんな〜?」

大護
「良いだろ? 俺専用だぜ♪」


俺がヘラヘラ笑ってやると、情報屋は感心した様に画面に映っているP2を見ていた。
そして赤外線通信を行い、P2はそのデータを確認する。


P2
『受信完了、同時に目的地の場所も把握』
『いつでもご案内出来ます、ナビを始めますか?』

大護
「いや、まだ良い…とりあえず休んでろ」


俺がそう言うと、P2は一旦黙り画面をスリープモードにした。
俺は胸ポケットにそれを仕舞い、情報屋に袋を渡す。
情報屋はそれを受け取り、中身を確認した。


情報屋
「…今回は50万でええわ、こんな簡単な仕事に200万も貰えるかっ」
「それより一応追加情報やが、警察がちらほら動き始めとる」
「出くわす可能性もあるから気ぃ付けや?」


そう言って情報屋は袋から50万だけ抜き取り、それをズボンのポケットにねじ込んで袋を俺に突き返した。
俺はそれを受け取り、タバコの箱を差し出す。
情報屋はそこから1本抜き取って口に咥え、ライターを取り出し火を点けた。
俺は金を鞄に押し込み、自分もタバコを咥える。
が、ライターが切れてた事に今更気付き、顔をしかめた。


情報屋
「カッカッカッ! お前ホンマそういう所変わらんのぉ〜ほれ♪」

大護
「悪ぃな…まだ日本に帰って来たばかりで、荷物の整理もロクに出来てねぇんだ」


俺は情報屋からライターを受け取り、タバコに火を点けた。
そして、とりあえず一服…俺たちは久し振りの再会にしばし会話を弾ませる。


大護
「ところで葛(かつら)、今この日本はどうなってんだ?」


『紅恋 葛』(ぐれん かつら)、この情報屋の名前だ。
この仕事を初めてからもうずっと情報のやり取りをしてる、親友みたいな奴だな。
身長は170ちょい、体つきはそれ程良くもないが頭の回転はすこぶる速い。
髪は肩まで延びるセミロングで、中々のイケメンだ。
ちなみにネットワーク関係にはすこぶる強く、日本だけならず世界の情報すら調べてくれる世界最高峰のハッカーでもある。
本業はこの街のとある会社でプログラマーやってるらしいが、稼ぎはそれなりにあるんだろうな…
服装はラフな格好でとても会社員には見えないが。



「日本ねぇ…とりまPKMの大量発生でわやくちゃやな」

大護
「…そんなに多いのか? ルザミィも名指しで日本を挙げていたが」


ちなみにルザミィとは前に電話をかけた橋渡しの女の事だ。
あいつも俺たちと深い繋がりがあるいわば親友…なんだが。
まぁ、今はとりあえずそれは置いておく事にする。



「ここ最近から爆発的に増えとる、何かの前触れちゃうんかって噂も出とる位や」
「加えてPKM保護法の設立、保護責任者の増加…」
「今や日本、特に何故かこの街ではPKMが多く確認されとる」

大護
「…何故か、か」


確信は無い、あくまでそういう感じがする…程度の考えの様だが。
俺はタバコを吸い、煙を吐いて考える。
PKMは人と恋をする、そこに人間と何の違いがあるんだろうか?
何故PKMは、人の保護下に置いて観察しなきゃならない?
福さんの無念は、まさしく人の心だ。
俺はその想いがただの保護動物とは到底思えない。


大護
「葛、今回の依頼だがな…PKMからの依頼だった」


「…知っとるよ、葵 孝洋(あおい たかひろ)っちゅう、ええとこのサラリーマンの保護下に置かれてるPKMのタブンネや」
「生活は特に不自由も無く、近所からも慕われる程、人のええふたりやったらしい」

大護
「…で、そんな葵さんが3日前に地獄に叩き落とされたわけだ」


金目当ての強盗に会い、葵さんはこの世を去った。
残された福さんはそれまでの約束された幸せを踏みにじられ、生き地獄に落ちる。
どれ程辛い想いをしたのかね…そして、そんな福さんの無念を知らずにその強盗共はのうのうと人生を謳歌してやがる。
俺は短くなったタバコを素手で握り潰し、火を消す。
それを見て葛もタバコを消した。
タバコ用の小さい吸殻ケースにそれを入れ、俺にも差し出す。
俺は握り潰した吸殻をそれに捨てた。



「…予定通りなら、犯人は指定の場所から明日の朝までは動かん」
「人手がいるなら手伝ったるで?」

大護
「いや、相手はふたりだろ? ひとりで十分だ」
「それより、警察の動きは?」


「まぁ、ちらほら彷徨いてるったって、やる気の無いクソ共や」
「後1時間もすれば、イチイチ人割いて探しはせんやろ」


俺はそれを聞いて納得する。
さて、ボチボチ準備して始めますかな…


大護
「車は?」


「あるで、まぁ中古のボロ車やがな」
「指定の道具も全部積んでるさかい、一応後で確認しとけや?」
「キーはこれや、駐車場もさっきのデータに入れてある」

P2
『確認済みです、いつでもご案内出来ます』


P2の音声で確認は取る。
まっ、今回の仕事はぶっちゃけ楽勝だ。
久し振りの日本でやる仕事としちゃあ軽く流させてもらうかな…


大護
「そういや、お前表の仕事はどうなんだ? ぶっちゃけ上手くいってんのか?」


「急に何や? まぁ、最近ゴタゴタはあったけど別に問題は無いわ」
「ちーっと、パワハラ問題で上司辞めさせたったけどな…」

大護
「何じゃそりゃ? パワハラとかお前がやられたのか?」


俺が聞くと、葛はうんにゃ、と首を横に振る。
そしてケタケタ笑いながらこんな事を言う。



「俺はあくまで派遣やし、ホンマはどうでも良かったんやけどな」
「会社に死んだ魚みたいな目ぇした社畜がおってな、そいつがやけに上司にパワハラ受けとったんや」
「まぁ、その上司自体アホやったし、周りからも評価低かったからな〜」
「俺も割と鬱陶しい思っとったし、裏情報流して訴えたった」
「つーても、実際にはその社畜が訴えたって言う風に擦り付けたったんやけどな♪」


そう言って葛はケタケタ笑う。
よっぽど傑作だったらしい。
やれやれ…相変わらずみてぇだな。


大護
「お前、表でもそんなえげつない事やってんのか?」


「人聞き悪いなぁ…あれは訴えられて当然の人間やで?」
「俺はちーっと細工しただけや…それで訴えたのは結果社畜やし」
「まぁ、笑いの種にはなったわ♪」


成る程ね、葛も楽しくやってんだな。
俺はまだ日本の情勢は良く解らんし、しばらくは便利屋でやるしかねぇな。

俺は普段裏の仕事をやらない時は何でも屋をやってる。
便利屋とも言うが、基本的に依頼があれば何でもやる仕事だ。
っても、ほとんどは便所掃除とか迷子犬探しとかあんまし金にならねぇ仕事ばかりだが…


大護
「…今の日本って便利屋とか流行る?」


「さぁなぁ…この街やったらPKM関係で色々あるし、需要無い事も無さそうやけど…」


やっぱ微妙かね…まぁ、それならそれでPKM関係から仕事探してみっかな〜?



「何や、相変わらず便利屋で稼ぐ気なんか?」

大護
「それしか出来ねぇしな…資格とかもあんまし持ってねぇし」


「まぁ、今の社会は実力主義やしなぁ…資格無しは稼ぎも無いで?」


だろうな…その辺は何だで中東とかの方が過ごしやすいわ。
傭兵やってるだけで金入るし、人殺し程楽に稼げる職業はねぇわな。
その点日本は平和過ぎらぁ…欠伸が出ちまう。
まぁ、その分PKM関係で稼げれば御の字かね?



「…さて、そろそろ始めるか?」

大護
「あぁ、悪いな今日は…」


「気ぃにすんなや! 俺かて共犯者や、お前が真面目にPKMの事考えてくれたんは正直嬉しいしな♪」


葛はそう言ってケタケタ笑う。
何だよ…こいつPKMに何か思う所でもあんのか?
俺が不思議そうな顔をしてたせいか、葛は更にこう続けた。



「大護、お前が日本に帰って来たのは運命や」
「このPKMが増え始めとる日本に、お前はきっと導かれたんや」
「せやから頼むで? この日本で、PKMの力になってやってくれ」

大護
「…葛、どうしたんだお前?」
「何か、らしくねぇじゃねぇか…」


いや、元々葛は人情味には溢れている。
裏家業に手を染めてるとはいえ、実行するのは俺みたいな人間の屑だ。
葛はあくまで金で情報を提供するだけ…深くは関わっていない、はずだ。



「俺はな、PKMを守ってやりたい」
「今の保護法はハリボテや、実質PKMはペットや危険生物と変わらん扱いを受けとる」
「せやから、俺はそれを変えたいと思っとる」
「お前は、多分その力になれると思う…」
「初対面で、PKMの依頼者に呼応したお前なら、きっと…」


葛はいつになく真剣な顔だった。
こいつとはそれなりに長い付き合いだが、こんな顔は初めて見た。
つまり、こいつはそれだけPKMに強い想いを抱いている。
それが何なのかは俺には解らねぇ。
だが仕事は仕事だ、俺は決してPKMだからといって手は抜かない。
必ず復讐は成し遂げる…それが依頼を受けたプロとしての仕事だ。


大護
「…まぁ、お前がそこまで入れ込む理由は聞かねぇ」
「安心しろよ、俺はPKMを差別するつもりは無い」
「仕事は必ず成し遂げる…まぁ今回のはいわゆる狼煙だがな」


「せやな、お前にとっちゃ軽すぎる仕事や♪」
「まぁ、明日のニュースを楽しみにしとくわ!」
「せやから、頼むで?」


俺はおう、とだけ返して踵を返す葛の背中を見送った。
そして、俺は車の鍵を握り締め、こう告げる。


大護
「行くぞ、案内しろP2」

P2
『了解しました、駐車場までの最短距離をご案内します』


俺はP2の的確なナビの元、車の停まってる駐車場を目指す。
ここからそこまでは離れていなく、15分程で目的の駐車場に辿り着いた。



………………………



大護
「中古の軽ワゴンか、荷物は…よし、全部揃ってるな」

P2
『復讐代行…ですか、マスターはずっとこの仕事を?』


P2の声はやや不安そうな声だった。
間接的とはいえ、こいつも関わろうとしてるからな…
そろそろ仕事内容の方も予想出来てきた所か?


大護
「…まぁ、15年位はな」

P2
「15年…マスターが17歳の時から」


確かその位だ、俺が初めて仕事に手を染めた歳。
最初は金も大して貰わずに俺は仕事を実行した。
それまでに準備した入念な対策を持って。
結果、俺は裏の家業に手を染め、それから世界を渡りながら名を上げていく。
稼ぎはそこまで多くは無かったが、仕事振りからやがて政府関係や軍関係にもコネは出来た。

そして気がつきゃあこんな復讐代行なんて肩書きまで付いていた…と。


大護
「さて、行くか」

P2
『了解ですナビを開始します』


俺はハンドル横のスマホ立てにスマホを設置する。
そしてP2はナビを表示させ、目的地への最短ルートを示した。


大護
「…目的地の詳細は解るか?」

P2
「航空モードで確認します」
「街外れの廃駅、そこを拠点にしている様です」


成る程、そこまで解るなら便利だ。
こいつはナビとしちゃ合格だな。
俺はニヤリと笑い、エンジンをかけて車を走らせる。
そしてナビに従って最短ルートを通って行った。



………………………



男A
「で、どうだったよ?」

男B
「楽勝楽勝♪ 大当たりだぜ!」


街外れの廃駅、今は使われていない路線の様で、その近くの高架下で隠れる様に佇むふたりの男。
見た目はやや幼くも見え、青年と言うよりかは少年とも思える風貌だった。
バイクが1台停めてあり、恐らくはどちらかの所有物だろう。
ふたりともタバコを吸いながら楽しそうに談話している。
自分たちが追われる立場と言うのを全く理解していない顔だな。


P2
『…マスター、突入するのですか?』

大護
「…黙ってろ」


俺は近くで奴らの会話に耳を立てていた。
P2をとりあえず黙らせ、俺は会話を聞く。
そして、数分してからP2にこう囁いた。


大護
「…音声の録音は出来るか? それも、俺の声以外をピンポイントに」

P2
『可能です、ポケット内からでも距離さえ近ければ録音してみせます』
『射程は20mもあれば可能かと』

大護
「この距離からは?」

P2
『少々遠いですね…ですが出来なくもないかと』


よし、と俺は思い録音を開始させる。
一応裏付けを取らねぇとならねぇからな…
間違えました、じゃ洒落にならねぇし。


男A
「で、稼ぎは?」

男B
「20万位だな、売春させりゃあもっと稼げるぜ?」

男A
「へへっ、3日前の元手でもう20万か、こりゃ楽に稼げそうだ♪」


聞く感じ、女絡みみたいだな。
売春…か、女使って稼がしてるって所かねぇ〜?
やれやれ、見た所未成年臭いが随分大人な仕事してるじゃないの…


男A
「やっぱPKMは相当稼げるぜ?」

男B
「あぁ、襲撃の方も上手く行ったらしいしな!」


んだと…? 襲撃…?
俺はつい先日の事を思い出す。
PKM、襲撃、売春…俺は頭の中でピースをはめていく。
そして推測する、あいつ等は昨日の事件と関わってるのか?


男A
「へへっ、3日前のショボい稼ぎなんて吹き飛んじまったな!」
「サラリーマン襲って強盗してたのがバカらしい位だ♪」


葛の野郎、まさかワザとこの事は黙ってやがったのか?
PKM関係の仕事だと解った上で、俺を試しやがったのか…
俺は軽く舌打ちし、黙ってそれに乗ってやる事にした。
あくまでこれは福さんの復讐代行だ。
昨日の事件はとりあえず関係ねぇ。
俺は俺の仕事を完遂する…他の事は後回しだ。


男B
「そういや、この指輪どうする? 一応それなりに高そうなダイヤだろ?」

男A
「指輪は売ったら足が着くからな…どっかのバカにでも安く売りつけるか?」


男たちは指輪を取り出してそんな事を言っていた。
俺は遠目にそれを確認し、それが婚約指輪である事を確認する。
福さんと全く同じ指輪だ…これで確信も取れたな。
俺はその場から静かに立ち上り、足音をたてずに男たちの側まで歩み寄る。
そして、懐から小型のボウガンを取り出し、指輪を握っている男の掌をまず撃ち抜いた。

ブシュッ!と音がし、3p程の長さの矢は正確に男の掌に刺さって血を流す。
それに遅れて男は叫びをあげ、俺はすかさずにもうひとりの男の太股を撃った。
深夜にふたりの男は叫びをあげ、その場で蹲る。
俺はワザと足音を大きくたて、呆然とするふたりの視線を浴びながら近付いて行った。


男A
「な、何なんだテメェは!?」

男B
「ボウガンとか正気か!? 何考えてんだ!?」

大護
「喚くな喚くな…まぁ、すぐに薬が効いて全身が麻痺するだろうがな」


俺が軽く言うと、男たちは全身を弛緩させ始める。
回り始めたな、これでこいつらはもう逃げる事は出来ねぇし、まともな大声も出せねぇ。
だが、意識や感覚は残ったまま、さて…まずは恐怖を味わってもらわねぇとな。


大護
「さて、まずこいつは返してもらう…これはお前らの様な屑が持ってて良い代物じゃない」


俺はそう言って足元に転がった指輪を拾う。
そして、ボウガンを懐にしまってハンカチを代わりに出し、指輪を軽く拭いてハンカチに包んだ。
俺はそれを上着のポケットに突っ込み、男たちを睨む。
男たちは訳が解らないと言った風に震え、俺を見ている。
俺はまず、近くのバイクに跨がりエンジンをかけた。
中々良いモン乗ってんじゃねぇか…勿体ねぇ位だな。
俺はとりあえずそれを走らせ、軽くスピードに乗せてからひとりを轢き飛ばした。
男は人形の様に吹き飛び、アスファルトの上に叩きつけられながら転がっていく。
全身から血を流し、そいつはピクピクと痙攣していた。


男A
「ちょっ!? マジかよ!?」

大護
「な〜にがマジかよ、だ…お前らが3日前にやった事と同じだろうが?」
「やられる気分はどうだ? 痛いか?」


俺は聞いてみるも、片割れの男はプルプル震えて地面に横たわっている。
やれやれ、あの程度で声も出せねぇか…葵さんは恐らくもっと速い速度で轢かれたろうにな。


男A
「3日前って、何の事だよ!? お前何の恨みでこんな…」

大護
「しらばっくれるのは定番だが、テメェ等の音声は録音済みだ、何ならもう1度聞かせてやろうか?」


俺はバイクのエンジンを切り、降りてそう言う。
そして男は震えながら唇をガタガタと揺らしていた。
やれやれ、肝が座ってねぇな…ホントにただのガキか。


大護
「俺は、お前らが3日前に殺したサラリーマンの恋人から依頼を受けた」
「復讐代行って言ってな、力の無い人の為に俺が代行してやってんのよ」


俺はそう言って男を担ぎ上げ、バイクに乗せる。
震える男はロクにハンドルも握れず、ダラリと体を預けるだけだった。
俺はそのままバイクのエンジンを再びかけてやり、一緒に乗って男の手をハンドルに握らせる。
俺は後で二人羽織の様にバイクを操作し、横たわってる男に向けアクセルを思いっきりかけた。


男A
「止めろぉぉぉぉっ!?」

大護
「黙ってろクソ野郎、これがお前らのやった事に対する報復だ」


俺は容赦無く横たわってる男を轢き潰す。
大型バイクだけに、その重量は300kg程はある。
そのタイヤとアスファルトに挟まれ、男の体はグチャグチャになって血と肉片を飛び散らせた。
そして、俺はそのまま走らせてどんどん加速させる。


男A
「止めろぉ!? これ以上何をする気だ!?」

大護
「はい、地獄までご案内しま〜す…」


俺はほぼ最高加速で高架下の壁にバイクをぶつける。
当然直前で俺は飛び降り、難は逃れていた。
とはいえ、ちーとタイミングをミスり、激突して飛び散ったバイクの破片を背中に貰っちまう羽目に…くっそ〜刺さりはしなかったが痛てぇじゃねぇか。

俺は若干涙目になりながらも、バイクの残骸を見る。
乗っていた男は一緒に壁に叩きつけられてヒラメみたいになってる。
まぁ、即死だな…爆発しなかったのは意外だったが。


大護
「…とりあえず復讐完了っと、まぁこんなもんだろ」

P2
『…これが、マスターの仕事なのですね』

大護
「…見えてねぇだろうに、音だけで解るのか?」


俺が聞いてみると、P2は少し間を置いてから答える。
その声は不安そうながらも、察した様な声でもあった。


P2
『復讐代行、マスターはそうやって誰かの代わりに手を汚して来たのですね…』

大護
「これが俺の仕事だ、この仕事こそが俺の生き甲斐でもある」
「…お前も、間接的には関わっちまったが、後悔していないのか?」

P2
『私はマスターのポケモンです』
『マスターの為なら、どんな役目でもお手伝いします』


P2は力強くそう言った。
俺はそれを聞いて携帯電話を取り出し、P2にこう言う。


大護
「仕上げだP2、警察にこの場所の連絡入れろ」
「ただし音声は合成で作れ、後電話はこっちのダミーを使う」
「出来るか?」

P2
『問題ありません、お任せを』


俺はダミーのガラケーを取り出し、それをスマホのスピーカーに向けて110番通報させる。
P2は適当な合成音声を作り出し、スピーカーから警察に連絡をした。
さて、じゃ退散と行きますか。ボウガンの矢も回収しとかねぇとな…



………………………




「よっ、お疲れさん♪」

大護
「テメェ…何で襲撃事件の事黙ってやがった?」


次の早朝、俺は葛を呼びつけてそう詰め寄った。
すると葛は少々真剣な顔でこう言う。
その顔はまるで俺に不審を抱く様な顔でもあった。



「あくまで結び付きは偶然や」
「せやけど、俺はお前が本当にPKMに対して平等なんかは不安やった」
「もっとも、その不安も杞憂やった訳やが…」

大護
「…何考えてる? 俺を試す様な真似しやがって、何かあんだろ?」


俺がタバコを差し出して言ってやると、葛はそれを受け取ってタバコに火を点ける。
俺も今度は自分で火を点け、そして葛の言葉を待った。
葛は曇っている空を見上げ、煙を吹いた。
そして、何故か遠くを見る様な目でこう告げる。



「…こっから先、PKMとは恐らく争いが起こる」

大護
「…んだと? PKMと争いだぁ?」


俺が言うも、葛は頷く事はしなかった。
あくまで予測なんだろうが、穏やかじゃねぇな…
PKMとの争い、あくまでそれがどんな規模の物かは解らねぇ。
だが、もし戦争クラスの事態だったら最悪だ。
人類は未曾有の危機に晒されるかもしれねぇ。
そうなったら、俺たちはどうなるのかね?



「俺は、お前にそれを止めてほしい」

大護
「ちょっと待て! 俺ぁ復讐屋だ、PKMとの争いなんざに首を突っ込む気はねぇぞ?」


「いや、お前は必ず突っ込む、無関係でない以上な」


俺は葛の言葉に目を見開く。
無関係でない、だと…?



「今はまだ良い、せやけど覚悟はしとけ」
「お前には避けられへん目的があるはずや、これはそれに繋がると俺は睨んでる」

大護
「…待てよテメェ、本気でそう思ってんのか?」


俺は低い声で葛を睨み付けて言う。
葛はやはり頷かなかったが、肯定している様にも思える。
俺の、避けられない目的。
復讐、全ての元凶、俺の動機。



「まだ正直未確定や、せやけど引っかかる点が何故かある」
「それには25年前のあの事件が絡んでいる気がしてならへん…」


俺の心臓がドクンッと高鳴る。
25年前、その事件こそが俺の生き方を決定させた。
俺の、全ての、発端…


大護
「…何で絡んでると睨んだ?」


「PKM保護法が制定されてからと言うものの、何故か日本政府はやけに動きが活発化しとる」
「それも他国を意識しての行動ではなく、あくまでPKMの確保に対して、や」
「そしてそんな中、何故か妙な動きが一部分だけある」
「お前が日本に帰って来たのと同時に、お前はPKMの事件に巻き込まれた…」


俺はハッとなる。つまり、葛はこう思っている。
あの事件は、そもそも俺を巻き込む為の餌だと…?



「ルザミィにも確認取ったが、あの襲撃は完全に予想外」
「だが、そこにはお前がいた…依頼の話をする為に」

大護
「って事は、ルザミィも嵌められたって事か?」


葛は小さく頷く、だが自信はあまり無い…って顔だな。
しかし、小さな疑問のひとつひとつが俺に繋がり、そして25年前に到達する…か。
やれやれ、どう思えば良いのかね?



「あくまで俺の推論や…せやけど、偶然にしてはタイミングが良すぎる」
「そういえば、お前のアプリの画面に映ってた女の子、あまりに気になってちょっと調べたんやが…」


ヤベ…まさかPKMってバレたか?
ってまぁ、別に葛相手に隠す必要はねぇが…



「…お前、よりにもよって死んだ姉にそっくりな容姿の女の子選ぶ事無いやろ〜?」

大護
「………は?」


俺は思わずタバコを落としてしまった。
とりあえず拾って吸殻を握り潰して消火する。
そして呆れた顔の葛を見て俺は?を浮かべていた。



「お前の姉や、違うんか? 写真調べたらクリソツやったぞ?」

大護
「姉貴に…そっくり?」


俺は、思い出してしまった。
25年前、殺された姉の姿を。
そして、あの虚ろな目を…P2も、あの時同じ目をしていた?
俺は、P2に姉を重ねたのか?
あの目が、あの時の目にそっくりで…それで俺は無意識に…?


大護
「ぐっ!?」


俺は思わず吐き気を催し、口と腹を押さえる。
その姿を見て葛は驚き、俺に駆け寄った。



「トラウマスイッチ! 大丈夫か!?」

大護
「…ぐはぁ、はっ、はっ!」


俺は息を荒くして呼吸を乱す。
そして目の前が霞み始める。俺は思い出す。
あの時の、惨劇を…俺の、怒りを、憎悪を、そして復讐を…!


大護
「…そうか、だとしたら、本当にヤツが絡んでるのか」


「一体どうした? あのアプリに関係あるんか!?」

大護
「葛、あれはアプリじゃねぇ…PKMだ」


俺は呼吸を整え、小さく告白する。
それを聞いて葛はギョッとし、目を見開いて俺を見ていた。
俺はとりあえず言葉を続ける。


大護
「そうか…そういや、似てるなP2は姉貴に」

P2
『マス、ター? 姉貴、とは?』


P2はスマホのスピーカーから声を発して聞いてくる。
俺は笑って思い出す…姉の最期の辱しめを。
そして俺は憎悪する、ヤツの存在そのものを。
俺は一時たりともこの復讐を忘れはしない。
ヤツが絡んでいるなら、俺は必ずヤツと出会う。
これは恐らくそういう運命だ…決められているに違いない。


大護
「ククク…面白くなってきたなぁ〜♪」


「大護、お前…」


俺は葛から手を離され、ひとりで歩き始める。
もう大丈夫だと手を上げてジェスチャーし、俺はこう呟いた。


大護
「葛…何か仕事あったら紹介してくれ、ルザミィにも声かけておくから」


「お、おう…」


葛はやや躊躇いがちにそう答えた。
俺はそのまま歩いていき、感情を整える。
俺は、復讐者だ…その為に今日まで裏で生きてきた。
ヤツを殺すまで、俺は絶対にあの日を忘れはしない…!!



………………………



P2
「…マスター、大丈夫ですか?」

大護
「大丈夫じゃない…だからパイズリして〜♪」

P2
「…マスター、こんな時までエッチですっ」


俺が甘えた声でそうねだると、P2は頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。
拠点の寝室でふたり座って休んでいたが、P2も特に問題は無い様だ。
飯もちゃんと食ったし、とりあえずは仕事も終わってのんびりするかな…?


P2
「ですが、私はそんなにマスターの姉に似ているのですか?」

大護
「そうだな…髪の色以外はそっくりだ」
「確かに、偶然にしちゃ気になるわな」


俺は改めてP2の顔を眺め、姉の顔とイメージを重ねる。
本当に、偶然なのか疑いたくなる位そっくりだ。
だが、こいつはPKMでポリゴン2、あくまで姉貴じゃない。


大護
「さて、じゃあ郵便局に行ってくるか…」

P2
「郵便局、ですか?」

大護
「あぁ、返すモンもあるからな…郵送で送る事にする」

P2
「それでは、私も意識を移して同行します」


そう言ってP2はケーブルを咥えてスマホに接続する。
後はコロリと横に倒れ、意識をスマホに移してしまった。
俺はその状態のP2の本体に触り、パンツをズラして中身を見る。
うむ、ちゃんと女としての機能は付いてるっぽいな…つか、人間と変わらねぇ。
こりゃたまらん光景だな…♪


P2
『マスター…! 女の子の1番大事な所を見て笑うなんてエッチ過ぎです!!』


おっと、これまでに無い位怒気を込めて怒られた。
流石に俺は触るのは止めておき、すぐに立ち上がって出かける事にした。


P2
『下着をズラしたまま放置しないでください〜!』

大護
「良いじゃん、エロいし後でオカズにしよっと!」

P2
『マスター、人でなしです…』


散々な言われ様である…まぁ人でなしに違いはないがな。
だが、俺はこんな現実を楽しく思った。
P2が側にいる現実、俺はそれを大切にしようと何故か思った。
俺にとって、25年振りの家族みたいなPKM。
俺は、あの時みたいな頃に戻れるのだろうか?


大護
(戻れるわけ、ねえわな…)

P2
『マスター…?』

大護
「悪ぃ、これからはマスターは無しだ」
「俺の事は名前で呼べ」

P2
『了解しました、それではダイゴ…ナビを開始しますか?』


俺は笑ってああ…と言う。
そして、晴れた空を見上げながら俺はゆっくりと郵便局に向かって行った…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』


第2話 『姉』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:20 )