序章 『石蕗 大護という男』
第1話 『復讐代行』
真莉愛
「………」


「な〜によ、真莉愛ちゃん!? ようやく1発ヤラせてくれる気になった?」


私が指定した時刻通りに現れた人物は、開口1番そんな馬鹿な事を言った。
男はヘラヘラしており、見た目から不誠実そうな男だけど、この男は一応私の顔見知りだ。

身長は185cmで、ボサボサの髪に腰まで伸びるお下げを首の下でゴムバンドを使い止めている。
服は白のタンクトップに上から茶色の革ジャン。
下は茶色のズボンでベルトにはチェーンが付いている。
そして一般的な黒のシューズを履き、ダルそうにしながら革ジャンのポケットに左手を突っ込んでいた。

私はそんな32歳の男に対し、呆れた様にため息を吐いてこう返す。


真莉愛
「…まず最初に会って言う言葉がそれ?」
「とりあえず、相変わらずの様ね大護(だいご)君」


私がそう言うと、彼はへいへい…と適当に返す。
彼の名は『石蕗 大護』(つわぶき だいご)、一応このスピンオフ作品の主人公となる男よ。


大護
「そっちも相変わらずだな…って、前に会ってからそんなに日は経ってねぇだろ?」

真莉愛
「直接会ってなくても、足跡は嫌でも目立ってるわよ?」
「今回は注意勧告…次からはもうこっちも黙っていられないわ」


私がそう言うと、彼はハハハッと軽く笑う。
飄々とし、彼は何ひとつ悪びれる事なく堂々とヘラヘラしていた。
私は真剣な顔を崩さずに続けてこう言う。


真莉愛
「これまでの貴方の殺害件数はもう数えられない…でも、最近になってからの貴方は特に活発すぎる」

大護
「…そりゃあ、そんだけ依頼が多いってこった」
「特に…PKM関係でな」


そう言いきると、彼は一瞬険しい顔をした。
だがすぐにまたヘラヘラした顔に戻り、場を濁そうとする。
そう、彼の言う依頼…それは彼の仕事の領分。
それも、復讐絡みから来る依頼が大多数で、主に通り名は復讐代行。
凶悪犯による通り魔事件や、交通事故、誘拐、リンチ、強姦etc…
それ等に巻き込まれて死んだ人間の遺族から、主に依頼を受けて復讐を代行している。
その成功率は100%…様々な手を尽くし、完璧に仕事を遂行する男。
事実上、政府の暗黙の了解として彼は放置されている。
理由は単純…政府高官でさえお世話にはなっているからだ。


真莉愛
「何故PKMが現れてから、貴方はそんなにも…?」

大護
「ちょっと待った、それよりも何で真莉愛ちゃんがそこまで俺に踏み込む?」
「正規の仕事ってんなら、政府関係者が黙っちゃいないぞ? 俺の仕事は暗黙の了解のはずだ」
「こんな腐った職業柄だが、結構信頼はされてる」
「俺を狙うって事は、ある意味政府に逆らうって事だぜ?」


彼は少々険しい顔でそう言った。
そう、これはあくまで私の独断。
彼を止めなければならない…それは私の不安。
その為なら、私は例え政府が相手でも手を尽くさなければならない。
ましてや、PKMが関わるのなら…!


大護
「止めときな真莉愛ちゃん、似合わねぇよそんなの」

真莉愛
「それを貴方が言うの!? 似合わないって…そんなのは」


『ダイゴ、そろそろ時間です』


突然、大護の胸ポケットから音声が流れる。
その声は少女の声で、やや機械的にも聞こえる音だった。
大護はその場で頭を掻き、やれやれと言う。


大護
「…音がデカい、他の人間にも聞こえてんぞ?」


『申し訳ありません』


今度は音を下げて言ったが、それでも私には聞き取れた。
一体、誰なのだろうか?
少なくとも、以前に会った時には聞かなかった声だ。


大護
「じゃあな真莉愛ちゃん、次に会う時は股開いて待っててくれよ?」

真莉愛
「あっ!? ま、待ちなさい!!」


私が言うよりも早く、大護君は人混みの中に消えて行った。
その動きは人間離れしており、とても私の足じゃ追い付く事は出来ない…
私は伸ばした右手を下ろして顔を俯ける。


真莉愛
「馬鹿…貴方は、どこまでも止まれないのね」



………………………



大護
「…撒いたな、さて」


『仕事ですね、ナビを開始します』


大護
「待て『P2』(ピーツー)、声がデカい…」


俺が周りを見ながらそう言うと、音声は黙る。
チックショウ…やっぱイヤホン買うか? 便利なんだがコイツは周りが見えてねぇからな〜
ちなみにコイツの名はP2…俺の今の相棒だ。
ひょんな事から俺と出逢い、俺はコイツと組む事にした。
まだそんなに日は経ってないが、俺はそれなりに信頼している。
とはいえ、まだまだ問題だらけだ…まぁ、仕方ないんだがな。



………………………



それは、今から1ヶ月前の事だった。
俺は信頼出来る仕事の橋渡しから依頼を受け、いわゆる闇市場に足を運んで行く。
慣れた空気に俺は身を馴染ませながらも、俺はその先でトンでもないモノを見付けてしまったのだ。
そこで見た物は、俺の想像を遥かに越えている。
いや、そんなレベルじゃない…まさに非現実が目の前にあった。


大護
「おい、この大量のキメラは何だ?」

老人
「キメラではない、彼女たちはPKMだ」


俺はそれを聞いてギョッとする。
そういや聞いた事がある、今や日本じゃPKMとかいうモンスターもどきが増え始めているって。
俺は最近まで中東の方にいたから詳細は解らなかったが、まさかこんなにもいやがるとは…

俺は暗い奴隷市場の室内に何人も座り込んでいるPKMたちを見る。
その姿は簡単なボロ服を着せられているだけで、生活感は何も無い。
表情も堅く、笑顔ひとつ見られなかった。
俺は少々イラつきながら、店長の老人に詰め寄る。


大護
「オイ、こりゃどういう事だ? 俺の職業知ってて依頼すんだよな?」

老人
「勿論だ、このPKMたちをアメリカまで輸送してほしい」
「報酬は前金で5000万出そう、それだけの価値がある」


店長は表情も変えずにそう言い切る。
密輸かよ…冗談じゃねぇぞ?
俺はクズで外道だが、それでも許せねぇ領分はある。
よりにもよってPKMを密輸だ? 確かに大金は手に入るが、これは俺のポリシーに合わない。


大護
「勘違いすんなよ爺さん? 俺は金さえ積まれりゃホイホイ仕事する人間じゃない」
「ましてや、俺に何故密輸を依頼する?」

老人
「簡単な事だ、万が一があれば君なら全員闇に葬れる」
「故にこれは君にしか出来ない」


俺は胸糞悪くなった。
要は失敗したら全員殺せって事だ…それも証拠隠滅して。
ふざけんじゃねぇぞ…どこまでもおちょくってやがる!
俺は乱暴に頭を掻き、舌打ちして店長を睨む。
そして、俺はこう返した。


大護
「交渉決裂だ、話にならねぇ! 言っとくが俺は…」


ダダダダダダダダダダダダダダダッ!!


突然の銃声に店内はメチャクチャにされる。
俺は瞬時に気配を悟り、店の端まで飛んで難を逃れた。
マシンガンか…木造の家財が完全に抉り取られてるな。
そして血の臭い…店長は全身を穴だらけにして血塗れになって死んでいた。
かなり乱暴な手口だな、中のPKMとかも何人か巻き添えになってんぞ。
PKM共は悲鳴をあげていたが、俺は気にする事無く呼吸を乱さずに、その場から死角に移動する。
すると、3人程の覆面男たちが中に踏み込み、店内を見渡していた。


覆面A
「いたぞPKMだ!!」

覆面B
「何人か死んでんじゃねぇか?」

覆面C
「気にすんな! 生きてる奴を全員回収だ!!」


その声と共に更に数人が踏み込んで来る。
俺は隠れる様に息を潜め、成り行きを見守った。
悪いが俺は正義の味方じゃない…PKMには悪いが、助ける義理は無い。
危険は極力避けるのが生きる上での知恵だ。
まぁ、運が無かったと思って諦めてくれ…


PKM
「うぅ〜!!」

覆面A
「へへっ、結構上玉じゃねぇか!」

覆面B
「こりゃ高値で売れるぜ!! 売女には持って来いだな!」


売女ねぇ…PKM使って風俗でもやろうってか?
物好きな連中もいるもんだ…
俺は心の中でため息を吐き、気付かれない様に気配を消す。


覆面C
「おい、死体はどうすんだ!?」

覆面A
「回収終わったら火を放て! 焼いちまえば誰だか解かんねぇよ!!」

覆面B
「これでラストだ! 火炎放射機持って来い!!」


ちょっ!? 火炎放射かよ!!
このままじゃ俺まで巻き添えにされちまうじゃねぇか!!
俺は奴らが店から出たのを見計らってその場から駆け出す、そして店の奥に素早く移動し、窓を探した。
幸い突き当たりに窓は見つかり、俺はそこに飛び込もうとする…が、何かを足元に見付け、俺は踏み止まってしまった。
そこに見たモノは…


PKM
「………」

大護
「PKM…か?」


俺の足元にはひとりのPKMが横たわっていた。
その姿は生きているとは思えない程ぐったりとしており、目は開いているが焦点が合っていない。
呼吸も弱々しく、微動だにしない、まるで死体かと間違う程だ。


大護
「くそっ、構うか! もう時間が…!」


後方から火炎放射の音がした。
そしてあっという間に火の手が回って来る。
この場は既に灼熱地獄と化しそうだ。
俺はすぐに窓に飛び込もうと意識するが、その時コイツと目が合った。


大護
「何だ…? 何故そんな目で俺を見る!?」


そいつは一言も発さない。そして目しか動かさなかった。
そして、その無機質な瞳から俺は何故か寂しさを感じる。
次の瞬間、爆発音と共に俺はPKMを抱き抱えて窓を突き破った。


ガシャアァンッ!!


俺は頭からガラスを突き破り、PKMを庇いながらアスファルトに着地した。
そして次にまた爆発音、ガスにでも引火したかっ。
俺はすぐにPKMを抱いたまま走り始める。
幸いこの辺は俺の庭みたいなもんだ、まず見付かる事はねぇ。
そう思い、俺はとりあえず拠点に戻る事にした。
何にせよ、面倒そうなモンを拾っちまったからな…



………………………



大護
「…ちっ」


俺は拠点に戻るとまず舌打ちする。
今回の依頼、何か妙だ…何であんなタイミングで店が襲われる?
俺に連絡を寄越したのはあの店長じゃない、あくまで橋渡しの女だ。
だとしたら、体よく俺を始末する気だったのか?


大護
(とはいえ、動機が解かんねぇな)


確かに人に恨まれる職業じゃある。
だが、今回の依頼は俺が信頼出来る人間から渡された仕事だ。
結果的に依頼はパァだが、どの道蹴るつもりだったし、それはまぁ良い。
問題は、依頼の受け渡しに対して信頼が揺るぐって事だ。
俺はとりあえず携帯電話を取り出し、電話をかけた。
数コール発信音が鳴り、目的の相手は電話に出る。
俺はまず一言目からこう言った。


大護
「ありゃどういう事だ? 何でいきなり店が襲われた?」


『襲われた? どう言う事なの?』


いきなりそう返される…って事は、流石に知らなかったのか。
まぁ、信頼は出来ると俺が認めてる相手だからな…
とはいえ、ここはあえて脅しをかけておく事にはする。


大護
「お前の事は信頼している」
「だが、万が一でも俺の命を狙っての計画だってんなら、こっちもそれなりの報復をさせてもらうぜ?」

橋渡し
『ま、待ってよ! 何の事か解らないわよ!?』
『命って、一体何があったの!?』


ここまで狼狽えるって事は…本気で偶然なんだろうな。
俺はため息を吐き、とりあえずは1から説明する事にした…



………………………



橋渡し
『…成る程、貴方よっぽど運が無かったのね』

大護
「あん? どう言う事だよ?」

橋渡し
『店を襲ったのは大方組織ぐるみの犯行よ』
『密輸の事を知ってて狙ったんでしょうね』


俺はそれを聞いて舌打ちする。
つまりは何だ? PKMってのはそんなにも価値があるって事なのか?
生憎だが、俺はPKMなんてモノは初めて見た。
それがどんな価値を持っているかなんて俺には計れない。


大護
「…PKMってのは、そんなにも価値があるのか?」

橋渡し
『あるわよ、一国を揺るがす位には』


ハッキリと言い切られる…が、冗談だろ?
一国だと…? そんなレベルの話であんな襲撃が起こってるのか?
あんなものはただのテロだ、それでどう国が傾く?
PKMなんてモノは、所詮一時的なブームみたいなモンだろう?


橋渡し
『未確定情報だけど、PKMは日本だけでもう何百人といるそうよ』
『それも能力は千差万別、上手く使えるなら戦争だってコントロール出来るでしょうね』

大護
「冗談は止してくれ、そんな核兵器紛いの生物兵器が何百人と彷徨いてるってか?」
「そんな馬鹿げた話が本当に信じられるのか?」
「俺は先日日本に戻って来たばかりだが、そんなにもPKMとかは溢れてんのか?」


俺があくまで信じられないという態度でいると、橋渡しの女はそうよ、とあっさり言った。
俺は言葉を失い、それ以上は何も言えなくなる。
PKMなんてモノは、噂や都市伝説かと思ってたんだがな…
確かに、あの店にいたPKMの数が一般家庭にいるレベルなら、大問題だわな。


橋渡し
『とにかく、今回は運が無かったわね…御愁傷様』

大護
「な〜にが御愁傷様だ! この借りは体で返せよ!?」

橋渡し
『や〜よ、女抱きたけりゃ風俗にでも行けば?』

大護
「バッカヤロウ! そんな金があったら依頼なんて受けにいかねぇ!!」


俺がそう言ってやると凄まじく残念そうにため息を吐かれた。
チックショウ…馬鹿にしてやがるな?


橋渡し
『いい加減、貯金ぐらいしたら?』

大護
「お断りだ! 俺は金があったら使う主義なんだ!」


それを聞いて橋渡しの女は電話を切った。
くっそ…呆れて物も言えねぇってか!?
俺は舌打ちしつつ、携帯電話を布団に投げつける。
この拠点は小さなプレハブ小屋で、山奥にひっそりと建ててある。
人ひとり住むなら特に問題も無いし、とりあえずは安全だ。
俺は未だに片手で抱えたままのPKMをその辺に座らせてやった。
そいつは力無く項垂れ、まるで精気を感じない。
植物人間…とまではいかねぇが、生きてる様にも感じねぇな。

ちなみに、見た目はどう見ても女で髪は赤髪のロングヘアー。
瞳は黒で、服はボロ布の服だな。
尻の辺りからは青い突起みたいなのが突き出しており、まるで機械の尾翼みたいだった。
そして巨乳! 何が何でも巨乳!!
俺の目測なら89はあると見た!
身長は163ってとこか…中々の爆乳だな!


大護
「どれ、感触はと…」


俺は無造作にそいつの胸を揉みしだいた。
が、一切反応しない…ぬぅ、感触は最高なのだが。
俺はすぐに興醒めして手を離した。
やれやれ、マグロだなこれじゃ…


大護
「おい、お前喋れねぇのか?」

PKM
「………」


目だけがこちらに向けられる。
項垂れたままだから不気味だな…
まぁ、とりあえず声は聞こえてるらしい。
だがどうするかな? 生きてるって事は食ったり出したりするわけだが…


大護
「…しゃあねぇな、知ってそうな奴に聞いてみるか」


俺はそう思って再び携帯電話を取る。
が、電池が切れてやがった…電源が落ちてる。
俺は頭を掻いてため息を吐く…そして、その辺に落ちていた充電ケーブルを手に持ち電話に差した。


大護
「って、そういやアダプターとコンセントはあっちか…」


俺はPKMの背中側にあるであろうコンセントに近付く。
俺のはUSBだからアダプターに繋がないと充電出来ないからな。
が、不意にUSBの端子が振り子の様に揺れてPKMの口に入ってしまった。
おっといけね…涎でもついたらヤバい。
と、その瞬間俺の携帯が何故か充電開始する。
そして、勝手に携帯の電源が入り、起動し始めた。


大護
「な、何だどうなってる!?」


しばらく立ち上がるのを待つと、携帯はホーム画面を映す。
そして、突然見知らぬアプリが起動した。



『おはようございます…いえ、この場合はこんにちはでしょうか?』


俺は絶句する。
そして無言でケーブルの先を見ると、PKMはUSBの先を口に咥えていた。
しかも高速充電中だと!?



『貴方を私のマスターと設定します…プログラム起動、セーフティロック、 マスター声紋認証と指紋認証を』


俺は言われるがままにまずは指紋センサーへ右手の親指を当てる。
そして、俺は一言こう言った。


大護
「…だ、誰だお前?」


『声紋及び指紋登録完了、ちなみに私はポリゴン2と言います』
『ノーマルタイプのポケモンであり、特性はダウンロード』
『貴方に忠実なポケモンです』


そいつはそんな事を携帯のスピーカーから出力する。
画面に映っているのはこのPKMの顔だ。
一体どうなってる!? 何でいきなり携帯電話をハックしてやがるんだ!?


ポリゴン2
『疑問に思われている様ですので、説明を』
『私はいわゆるバーチャルポケモンと言われ、電気信号を介してパソコン等にデータを送り込む事が出来ます』
『残念ながら、本体の私は脳のデータが破損してしまい、話す事も考える事も出来ません』
『最低限の行動は今からこのスマートフォンを使ってデータを修復致しますので、どうか暫らくの間このケーブルを抜かないでください』


まさしくとんでもだった…理解が追い付かない。
俺はこれでも現実を見る人間だ。非現実なんてリアルじゃないと思ってる。
だが、目の前で起こっている現実は俺の理解の範疇を明らかに越えていた…


大護
「…冗談だろ? ポケモンって…」

ポリゴン2
『冗談でしたらもっと面白い事を言います』
『ですので、これが現実です…私は貴方だけのポケモンですよ?』

大護
「だったら、この場でセックスしちまっても許されんだな!?」

ポリゴン2
『…マスターエッチです、さっきも胸を揉みましたし…』


ぐああああああああああっ!! ちゃんと認識されてたぁーーー!?
しかも、恥ずかしそうに目を背けるなよ!!
くっそ可愛いじゃねぇか!!
PKM、恐るべし…こりゃ狙う奴がいるのも納得だなぁ〜


大護
「ちっ、強姦は趣味じゃねぇ…とりあえずさっさとデータ修復しやがれっ」

ポリゴン2
『申し訳ありません、ご期待に添えられず…』
『それでは後8時間程お待ちください』


長げぇな意外に!!
とはいえ、もうどうでも良いわ…諦めたし。
これが現実なら適応して受け入れるだけだ。
やれやれ…本当に面倒な拾い物だったな。



………………………



大護
「う…いけね、寝ちまってた?」

ポリゴン2
「はい、もう午前7時になります…お腹、空きました」


俺はガバッと起き上がる。
どうやら、ポリゴン2に膝枕されていたらしい。
とりあえずデータ修復は終わった様だ。


大護
「ちっ、まさか朝まで眠っちまうとは…」

ポリゴン2
「既にデータ修復は完了しました、今は何とか通常思考可能となります」
「それでは、マスターご命令を」

大護
「よし、まずは朝勃ちを処理してもらおうか…口で丁寧にな」

ポリゴン2
「…マスターエッチです、朝からそんなご命令なんて…」


チックショウ! 頬を赤らめながら拒否するなよ!?
何気にエッチな要求は拒否するのな!!
俺はやれやれと頭を掻き、さっさとその場から立ち上がった。
服はそのままだしもう良いか…どうせ着替えもあんまり無いし。
…それよりも、問題はコイツだ。


大護
「…お前の服は無いんだよな」

ポリゴン2
「…エッチな事を考えましたね?」


考えてねぇよ!? 確かにボロ布にこの巨乳はエロいけどな!!


大護
「…とりあえず、金は無いしそのままで頑張ってくれ」
「俺は仕事を探しに行く…」

ポリゴン2
「お腹空きました…」

大護
「…金が無いんだ、俺も腹は減ってる」

ポリゴン2
「マスター、ろくでなしです…」


言いたい放題だなチックショウ!!
まぁ、貯金ひとつしない俺にも非はあるが…


大護
「よし、売春させて稼ぐか!」

ポリゴン2
「マスター、人でなしです…」


人でなしですとか言われたよ!!
まぁ、 自他共に認める屑なんだがな俺は…


大護
「まぁ良いや、とにかく金は無いから我慢しろ」
「俺は仕事探してくるから…」

ポリゴン2
「了解しました、それではマスターのスマートフォンにデータを移動させます」


そう言ってポリゴン2はUSBケーブルを口に咥え、パタッと横に倒れる。
どうやら、精神をスマホに移したらしい。
スマホには充電ケーブルが刺さったままであり、そこから接続した様だ。
その証拠に、勝手にアプリが起動してポリゴン2が画面に映っていた。


ポリゴン2
『さぁ、ご命令を…ナビなら得意分野です!』

大護
「よし、画像で良いから裸になれ」

ポリゴン2
『…マスターエッチです、いつもそんな事ばかり考えてるんですか?』


野郎…何気に反抗的だな。
まぁ期待してないんだが…


大護
「とりあえず黙れ…後、勝手に喋ったりするなよ?」

ポリゴン2
「…了解しました」

大護
「素直でよろしい、後お前の事はこれからP2と呼ぶ、良いな?」

ポリゴン2
「P2…ですか、了解しました」
「ちなみに、その理由は?」

大護
「俺の仕事は人に公に出来る内容じゃねぇ、つまり俺に関わるお前もコードネームみたいなモンが必要だ」
「下手に勘ぐられても困るからな…」


実際にはPKM自体がかなりヤバそうな雰囲気だ。
露骨にポリゴンとか言われても色々厄介だろう。
とりあえず、便宜的に解りやすいネーミングはあった方が良い。


P2
『…公に出来ない、ですか?』

大護
「そうだ、俺は悪党だからな」


俺が真剣にそう言うと、P2は黙ってしまった。
そうだそれで良い、どうせロクな仕事じゃないからな…
俺はそう思い、まずはとある場所に向かった。



………………………



大護
「よっ、バアちゃん! 元気してる?」

お婆ちゃん
「おやおや、久し振りだねぇ大護ちゃん♪」
「元気だったかい? しばらく日本には来てなかったろう?」


俺がやって来たのは今だと貴重な駄菓子屋だ。
そして、そこで店番やってるバアちゃんは俺の信頼出来る橋渡しのひとりだ。
俺は軽く笑ってまずこう言う。


大護
「バアちゃん、変わんないね〜♪」
「で、どう? 最近は…?」

お婆ちゃん
「ふふふ…大護ちゃんは相変わらずねぇ〜♪」
「とりあえず、今日はたまたまお客さんが来てるから、奥に行ってあげて…」


そう言ってお婆ちゃんは店内の奥に促す。
どうやら、早速依頼者が来てるみたいだな…
俺は笑いながら靴を脱いで奥に入った。



………………………



大護
「どうも〜♪ 依頼の話に来ました〜」


「…お待ちしてました、貴方が復讐代行の方ですか?」


俺は若干顔をしかめる、何故ならば…今回の依頼者は人間じゃ無かったからだ。
俺の目の前にいたのは、ピンク色の髪に、人間とは思えない大きなタレ耳。
間違いなくPKMだろう。
どうやら、俺の仕事も人類に収まる範囲じゃなくなったらしい…
俺はため息を吐きながら、女性の前に胡座をかいて座る。
そして、真剣な顔で真っ直ぐに女性の顔を見た。


女性
「…依頼をしたいのですが、人間じゃなくても大丈夫でしょうか?」

大護
「その前に、アンタは何者だ?」


俺がまずそう聞くと、女性は悲しそうな顔をし、そして真面目な顔でこう答える。
その顔は、かなり真剣で真摯な顔だった。


女性
「失礼しました…私は、『タブンネ』の福(ふく)と言います」
「…PKM、です」


女性は不安そうな顔をしながらも正直にそう言う。
俺はそれを確認して、安心する。
この人は、裏が無いな…


大護
「誰が相手でも、俺は仕事はこなしますよ?」
「…貴女の心意気次第ですが」


「…依頼したいのは、仇討ちです」


それは、解りやすい内容の様だった。
仇ね…まぁ、復讐ならよくある話だ。



「3日前に、私の保護責任者が殺されました」

大護
「…その仇を、討ってほしいと?」


俺の真剣な言葉に福さんは頷く。
目には涙を浮かべ、福さんは詳細を話始めた…



「…私は、幸せでした」
「保護責任者とはいえ、彼は私を本当に愛してくれました」
「彼は、最後に私にこう言ってくれたんです…結婚しようって」


彼女は泣いていた。
俺は目を細めて更に言葉を待つ。
彼女は泣きながらもこう続けた。



「ですが、彼は殺されました…ただの金目当ての強盗に」
「私は絶望しました、全てを失って…」
「ただのPKMである私に、警察は何も取り合ってはくれませんでした」
「それは、ただの事故だと…不運だったと」
「私には理解出来ませんでした、何故PKMだからといってこうも話を取り合ってもらえないのか…」
「どうして、彼の死はただの事故なのか?」
「私にとっては、愛する人を不条理に奪われた事件だというのに…!」


彼女は本当に悲しんでいた。
そして、その痛みは俺の心に突き刺さった。
この時点で、俺にとって人間とかPKMとかは関係無い。
この人は苦しんでいる、無念を抱いている。
俺はこの人の心を受け取った、なら断る理由は無い。


大護
「…一応聞いておきます、後悔しませんね?」


「はい、報酬は彼が私の為にかけてくれた生命保険の全額をお渡しします」
「確か、1000万円はあったはずですので…」


…そりゃ大金だ、正直多い位の。
だが、ここは俺も受け取る方向で行く。
下手に温情をかけるのは、相手の覚悟に失礼だ。


大護
「…分かりました、その依頼受けましょう」
「必ず、相手の犯人に復讐を完遂してみせます」
「報酬は前払いとなりますが、大丈夫ですか? キャンセルするなら今の内ですよ?」


福さんは首を横に振ってトランクを俺に差し出した。
どうやら、既にやる気満々だった様だ。
俺は軽く微笑んでそれを受け取る。


大護
「確かに受けました、安心してください…必ず復讐は成し遂げますので」


「はい、よろしくお願いします」


福さんは深々と頭を下げてお願いしてくれた。
俺はそれ以上何も言わずに外へ出る。
そして、俺はすぐに電話で知り合いに連絡を取った。



………………………



情報屋
『…3日前の殺人か、まぁすぐに見付けたるわ』
『報酬は今夜23時でええか?』

大護
「ああ、200万で良いか?」

情報屋
『エライようけ見積もるな? そんなにデカい事件とは思えんが…?』

大護
「それが依頼主の気持ちだ、俺はそれに全力を尽くす」


俺の強い口調に情報屋は口調を変える。
どうやらやる気になった様だな。


情報屋
『…まぁ、それなら文句は無いわ』
『とりあえず、話は今夜や…期待して待っとけや』

大護
「あぁ、信頼してるぜ♪」


俺が気楽にそう言うと、情報屋はやれやれとため息を吐く。
そして電話は切れ、俺は情報を待つ事にした。


P2
『…マスター、マスターの仕事って?』

大護
「軽蔑するなら早くしろ、俺の仕事は人間の屑の仕事だ」
「だが、俺はこの仕事を誇りに思ってる…復讐だろうが何だろうがな」


俺の仕事は主に殺しが殆どだ、それも復讐代行が主な内容。
だが、今回の様にPKMからの依頼は前代未聞。
しかも、PKMが人間の仇討ち…
俺は、PKMに対して偏見を抱いていたが、今日からその考えを改める。
PKMも人に恋をする…そして、その想いを踏み躙るクソがいる!
俺はそれを許さねぇ…必ず、その報いを受けさせる!!


P2
『…マスター?』

大護
「逃げるなら早くしろ、俺はお前の信頼なんか期待してない」

P2
『申し訳ありません…私はマスターのポケモンです』
『例え何があろうとも、私はマスターを信じて付いていきます!』

大護
「よし、だったら仕事終わりにはセックスで御奉仕な?」

P2
『…マスター、やっぱりエッチです』


俺は笑ってしまう…こいつはからかい甲斐がある。
俺は今回は気持ち良く仕事が出来そうだ…♪
さぁて、とりあえずは復讐代行といきますか!
俺は期待に胸を膨らませ、夜を待つ事にした。
その間、P2と共に空腹地獄に見舞われたのは、言うまでも無かったが…










『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』

スピンオフストーリー 『Avenger』


序章 『石蕗 大護という男』

第1話 『復讐代行』


To be continued…

Yuki ( 2019/07/04(木) 21:19 )