常葉 茂編
エピローグ


 「あぁ、もう一度君に、巡り会えるのなら、メビウスの宇宙(そら)を越えてゆけ〜」

ガチャリ。


 「ご主人様?」

俺は気が付くと目を覚ましていた。
何故だか分からないが、俺は胸に去来する不思議な感じを受けていた。
とりあえずベッドから起き上がると、茜は俺の元に駆け寄ってくる。
俺はその頭を撫でると、茜は目を細め尻尾を振った。


 「お前、本当に撫でられるのが好きだな?」


 「はい、大好きです……」

俺は時間を確認すると、ゆっくりベッドから起き上がる。
とりあえず着替えないとな。


 「茜、着替えるから外に出てろ」


 「ん」

俺は茜を外に出すと、部屋の中を見渡す。
当たり前だが、俺の部屋だな。
一体何を心配しているんだって話だが、どうにも変な感じだな。



***



ガチャリ。

着替え終えると、俺はいつものように部屋を出る。

保美香
 「あら、おはようございますかしら、だんな様」


 「ん、おはよう」

俺はキッチンに向かうと、既に朝飯が用意されており席に座ると、並べられていたのは和食だった。
皆は席に座り、俺の号令を待っている。


 「それ皆さん手を合わせて、いただきます」

全員
 「「「いただきます」」」

この感覚、いつも通りの風景だ。
俺が箸を持つと、既に茜は食べ始め、伊吹はのんびりポリポリと。
当たり前の光景に違和感を覚えるのも不思議だけど、なんだかとても懐かしい。


 (この味……やっぱり俺には保美香の味が一番、だな)

そう、俺はこの味が大好きだ。
けどなにか……これとは違う味を俺は記憶している?


 「ご馳走様」

美柑
 「ご馳走様! くっ!? 今日も茜さんに勝てませんか!」

保美香
 「急ぐ必要なんてありませんわ」

伊吹
 「そうだよ〜、重要なのは〜、ちゃんと噛んで食べること〜」


 「いや、伊吹はいくら何でも遅すぎるだろう……」

相変わらず騒がしいな。
だがこれがウチの家族だろう。
茜は食器を片づけると、テレビの前に座る。
茜の日課は朝のアニメだからな。

華凛
 「ダーリン、口元にご飯がついているぞ? ふふ、私がとってやろう」

保美香
 「シャラーップ! それはわたくしの役目かしら!?」


 「お、おいおい……テーブルを揺らすな!?」

伊吹
 「あはは〜」


 (馬鹿騒ぎになっちまったな……)

俺はそのご飯を口に放り込むと、さっさと朝ご飯を食べる。


 「ご馳走様」

保美香
 「お粗末様ですわ」

俺は食べ終えるとバッグを手に取った。


 「あ、ご主人様……!」

俺が玄関に向かうといつものように茜はやってきた。
所謂お見送りだ、茜の日課だからな。


 「それじゃ、行ってくるから留守番頼むな?」

俺は最後にもう一度茜の頭をワシャワシャと撫でる。


 「行ってらっしゃい、ご主人様」


 「行ってきまーす♪」

俺は玄関を開くと、冷たい風が吹き込んだ。
俺は身震いすると出口に向かう。


 (10月末だもんな……寒くて当然だよ)

でも何故だろう、俺は寧ろ暑さを覚えていた気がする。
今日は兎に角変な感じだな。
まぁでも大人は24時間頑張らなきゃならんからな!


 「ハァーイ♪ 常葉さん、今日もワーカーホリックね!」


 「急いでますんでー!」

家を出ると、階下に住むある白人の女性が気軽に声をかけてくると、俺は軽く会釈して通り過ぎた。
やがて階段を降りて1階に辿り着くと、アイツは現れる。

セローラ
 「レレ〜ノレ〜♪ お出かけですか〜♪」


 「セローラよ、そこは箒を持って言うところだぞ?」

1階にはセローラがゴミ袋を持っていた。
今日もセローラは相変わらずのようで、ヴィクトリア調の古風なメイド服に袖を通していた。

セローラ
 「いや〜、社畜には私のような心の余裕という物はあるのでしょうか〜?」


 「お前もそう言うか! それが一家の長の勤めなの!」

俺はセローラと別れると、駅へと向かう。
やがて喧噪は大きくなり、駅には人が集まった。


 (全く、そりゃワーカーホリックだろうな……)

俺はふと空を見上げた。
空は晴天、晴れ晴れとしている。


 「……気のせい、かな」

俺はなにか視線を感じた気がしたが、直ぐに割り切り喧噪の中心へと向かった。



***




 「結果として計画は失敗、魔更聖は混沌を広げるには役不足と判断、更に秩序勢の出現と、あのままでは傍観勢の介入を呼ぶとこの世界からの撤退を余儀なくする、と」

そこは暗闇だった。
窓一つない小さな小部屋にテーブルがあり、テーブルにはロウソクが立てられていた。
そこには白髪の細い青年がなにかをレポートに刻み込む。


 「魔更聖は強大な混沌の特異点になる可能性もあったが……まぁ秩序勢が現れた時点で、計画は無駄だったか……やれやれ」

青年は立ち上がる。
もうこの世界でやることはないからだ。
既に常葉茂の記憶は改竄してあるし、神々の王への刺激も最小限の筈だ。
おそらくこの点は秩序勢も余計な刺激はしていないだろう。
いくらあの白いジガルデでも傍観勢の勢力下で活動するのはかなり危険だ。
あの世界は混沌も秩序も受け入れないからな。


 (常葉茂……最大の不確定因子である特異点……奴が禍根にならなければいいが……)



***



そこは星屑の宮殿とでも言えばいいだろうか。
宇宙のような空間に佇む、超常の宮殿。
そこでは一人の女性が微笑んでいた。
白髪で長身の完璧を絵に描いたかのような女性。


 「……どうやら良好のようですね」

それはなんに対する微笑みか。
それは人知れず行われた神の領域の物語か。
それとも人とポケモンの織りなした奇跡の物語なのか。

それは……誰にも知られる事はない。

そう……何故なら。



突然始まる歴史改変する物語と、とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない物語の……奇跡のクロスオーバーなのだから。



突ポ娘 X とポ女

エピローグ 完





後書き


とりあえず始まった奇跡のクロスオーバー。
とは言っても一切茜たちは出ず、逆に不慣れなクロス先のキャラを書くという事もあり、先方には多大な迷惑をかける事になりました。
今回クロスに当たって特に注意したのは、客演先への遠慮でした。
あまり此方のキャラを目立たせてもそれはクロスオーバーとして失格であり、かと言っているだけ参戦ではそれも失敗ですから、各キャラに如何に活躍させながら、逆に茂君を主人公として成立させるか考えさせられたのです。

以下各キャラに対する個人的感想。

・愛呂恵

最初のクロスキャラ、個人的に一番クロス先で好きなキャラという事もあり、作中での出番は多めになりました。
文字通り彼女はクロスする上で狂言回しの役目であり、彼女と茂君が出会うことで物語は加速したのです。

・華澄

2人目のクロスキャラ、クロス先ではぶっちぎりに出番の多いキャラなので使い安かったですが、作中では対マッギョでの活躍以外では、各員の亀裂に対する緩衝材となってくれました、勿論私自身華澄ちゃんはとても好きです。

・阿須那

彼女に与えたのは疑心で、そういう意味ではそんな役回りをさせてしまいました。
物語上のギミックとしてはどうしても必要で、なぜそんなに他人を信じられるのかという、クロスオーバーでどうしても付きまとう問題を彼女で描けたのは個人的には気に入っているシーンでもあります。
良くも悪くも炎は作品的に使いづらいという事も彼女で思い知らされました!

・女胤

正直クロスする上で、彼女の取り扱いは非情に困りました。
原作ではかなりぶっ飛んだキャラの性で、菜種油さんだの、ポーションさんだの散々ですが、借りる上でそこまでさせるわけにもいかず、結果的に彼女の狂気性を描くのはとても難しかったです。
良くも悪くも保美香とは違う変態だと思い知りました。

・三海

物語上ではある程度キーパーソンが必要でしたので、彼女はそういう意味では最も重要なキャラでした。
彼女の救出から物語は加速し、そして収束するなど、三海ちゃんは活躍はさせられないけど(強すぎて)、必須キャラでした。
……という建前はそこまでとして、三海ちゃん可愛いよ! 小動物系万歳! と個人的性癖ふんだんに反映されてしまいました。


・守連

クロス先の代理主人公、最後の登場という事もあり良くも悪くも活躍はラスト中心ながら少年マンガばりの演出も含め、やり過ぎかなというラインまで詰め込みました。
特にラストの茂君とのダブルパンチは、個人的にはやりたかったクロスならではのラストで、やって良かったと思います。
兎にも角にも主人公なんで、活躍して当たり前なんですが、ある意味原作より活躍させてしまった気も……。(汗)



最後にクロス先のとポ女に感謝しつつ、コラボの難しさも実感しました。
コラボするなら、内容の調整、コラボ先に対するちゃんとした配慮など、気にする部分も多く、世のクロスオーバー作品を作っている人達は本当に凄いと思います。
とりあえず今回は人数少なかったから回せたけど、それでも全員にちゃんとクロスでやった意味がある……と信じたいもんだ。

ところで……エピローグ冒頭茂君がBeyond the timeを歌っているのですが、気付いたでしょうか?
アレは今回のクロスにとても歌詞が合うと思って導入しました。
茜たちを想い、守連たちを想う茂君にはピッタリでした。



後書き 完。

BACK | INDEX | NEXT

Yuki ( 2019/05/01(水) 21:45 )