魔更 聖編
第7話

「全く…露出度皆無の巨乳美女など、MSに変形しないデストロイ○ンダムみたいな物だというのに」

ジガルデ
「やかましいわ! 寒いんだから仕方無いだろうが!? 後、そのデストロイ何とかって何!?」


「別名、2本足の毒キノコ…」

美拑
「知ってるんですか!?」


とりあえず、今は常葉宅のリビング。
俺たちは常葉さんの家族を全員集めて、ジガルデの事を紹介した。
とはいえ、かなり不信感は抱かれている様で、あまり歓迎されてはいない状況だ。


華凛
「とりあえずそこのデストロイもどきを、味方と良い張る気かお前は?」

ジガルデ
「だからデストロイ違う!!」


「無理に信じろとは言わないさ、敵対してたのは確かなんだから」
「だけど、それなら痛み分けだろ? コイツ等だって自分たちの為に必至だったんだ」
「現況はあくまでパチモン軍団…利害が一致してるなら、俺はコイツを受け入れてやる」


俺の言葉に華凛はとりあえず黙る。
まぁ、当たり前の対応だ…誰もが俺みたいな思考を持てるわけ無いんだから。


伊吹
「まぁ、色々あったけど〜、別に良いんじゃない〜?」

保美香
「貴女はもう少し疑ってください…わたくしも流石にはいそうですか、とは言えませんわ」


「それで良いですよ…保美香さんは別に間違ってない」
「凪さんも、同じ考えですか?」


「…そうだな、我々の脳を弄くってでも利用しようとした相手だ、簡単には信じる事は出来ない」


とりあえず嫌われてるモンだ…ちなみに、俺と茜ちゃんとセローラに関しては、ジガルデから全ての経緯は聞いており、協力する事に関しては全く問題が無い。
そしてまだ他のメンバーにはその経緯を話しておらず、あくまで俺が一方的に味方として受け入れてる…という風に見えるわけだ。

ジガルデにも、あえて余計な事は言うなと釘は刺してあるし、あくまでここは他のメンバーの本音を聞きたかった。


ジガルデ
「……ふん」


「賛成1、否決4か…まぁ妥当だな」

美拑
「あれ? それだと数が合わなくないですか?」


「私はどっちでも良いから…あくまで家族に合わせる」


そう、茜ちゃんには俺を支持するなと言ってある。
だから、茜ちゃんの真意はどうあれ、こうなるのは初めから決まっていた事だ。
セローラは…まぁ、どうでも良い。


セローラ
「まぁ、私はあんまり関わりたくないですし…パスって事で!」

保美香
「…期待はしてませんわよ、それより…それでどうするつもりですの?」


「なら…これで、サヨナラです」
「俺はジガルデと共にパチモン軍団をぶっ潰して、全部救います」


俺の言葉に全員が黙る。
茜ちゃんとセローラは解っている選択だ…その上で、俺は協力を拒んだ。
どっちにしても危険すぎるし、パチモンとはいえパルキアに勝てるとはあまり思えない。
それなら、実力自体はありそうなジガルデとだけ行った方が確率は高いだろう。
常葉さんの家族を、俺は誰ひとりとして危険な目には合わせたくない。



「ちょ、ちょっと待て! 敵の居場所は解ってるのか!?」


「ジガルデがそれは知ってます、だから大丈夫ですよ」

伊吹
「でも〜…戦える人は多い方が〜……」


「信頼が出来ない仲間は、仲間では無いです」
「あえて突き放す言い方をしますが、このジガルデが信用出来ないなら誰も来ない方が良い」
「でも、心配はいりませんよ…常葉さんは必ず俺が救うと約束しますんで」


俺は最後に笑ってそう言う。
その言葉に、誰も反論はしなかった。
いや、伊吹さん辺りは露骨に辛そうな顔してるな…あの人は1番優しそうだし。


保美香
「…本気で、言ってるのかしら?」


「もちろんです…それが、俺である証みたいなモンなんで」


保美香さんは目を瞑って何かに耐える様な素振りを見せた。
この人も相当なお人好しだ、本当は損得無しに手伝いたいと思ってるんだろう。
だけど、その為に大事な家族を危険な目には合わせられない。
特に、信頼が出来ない部分があるなら、なおの事だ。


美拑
「…ボクは何も言いませんよ?」


「ああ、お前は家族を守ってやれ…親玉は俺が何とかする」


美拑は結構冷静だよな…だけどこういう時は扱いやすくて良い。
周りが見えてる分、便りにもなるだろう…


華凛
「ふん…それがお前の決断か」


「そうだな、信じろとは言わないが…」


華凛もダルそうに壁に背中を預け、それ以上は何も言わない。
コイツは何を考えてるのかあまり解らないな…冷めてるのか、それとも思う所があるのか…



「………」


「悪いな、色々巻き込んで…」
「まぁ、心配するなよ…お前の大切なご主人様は何とか助けてみせるから♪」


茜は俯き、何も言わないながらも受け入れてはいる様だった。
コイツは別に俺を頼る理由も無いし、擁護する理由も無い。
ただ、自分の主人が戻って来るならそれで良い…多分そう思ってるんだろう。
俺は軽く微笑んでやり、そして皆に背を向けた。
さて、そろそろこの混沌を終わらせますかね…



「行こうぜ、ジガルデ…ラスダンに案内してくれ」

ジガルデ
「ああ、分かった」


俺たちはふたりだけで常葉宅を出る。
服は結局常葉さんのを借りたままだが、まぁ全部終わったら元に戻るだろきっと。



………………………




「そういや、さ…」

ジガルデ
「…何だ?」


「常葉さんの家族を利用するって聞いてたけど、何をさせるつもりだったんだ?」


俺は、何となく気になったので聞いてみた。
ジガルデがそんな事を考案するとも思えないし、一応真相を聞いておきたかった。
だが、ジガルデはかなりどうでも良さそうな口調でこう答える。


ジガルデ
「知らないね…私は信者の立てた作戦とか、何も聞いてないから」
「そもそも、私はいつの間にかボスみたく信仰されてただけだし、別にそこまで仲間意識は無いよ」


「何だそりゃ…じゃあ、お前は本当にただ祭り上げられてただけで、別に仲間意識は無かったって事か?」

ジガルデ
「そうだよ…まぁ、いきなり異世界に呼び出されて、帰りたかったってのは共通意識さ」
「でも、そんなのは利害の一致で協力してた様なモン…ただ信者の連中は、勝手に私を秩序の象徴と思って信仰してただけさ」


俺は呆れてしまう。
つまり、コイツはただ信者から一方的に祭り上げられてただけで、コイツ自信は仲間意識なんて無いってんだ。
ただ単に元の世界に帰りたかっただけで、自分の頭じゃ考えが出なかったから信者の理論を信じて暴走してただけ。
結局、全部流されてただけかよ…



「お前は、それで良かったのか?」

ジガルデ
「あん? 知らないね…私は頭が良くないから」
「そもそも秩序秩序って、ジガルデだから全部何とか出来るとか、そんなの勝手な解釈だろうが…」


そりゃ、もっともな意見か…とはいえ、俺を信じてくれると言ってくれたあの色ジガルデさんは、紛れもなく秩序を護る監視者の風格があった。
つまり、その信者共はそんなジガルデさんみたいな神を信じた狂信者って訳だ…
実際のコイツは確かにジガルデなんだが、コイツにそんな風格は無い。
伝説のポケモンだからって、誰もが神みたいなわけじゃないんだって良い例だな…


ジガルデ
「…お前は不思議だよな、私みたいなのでもそうやって友人感覚で話しかけてくるし」


「俺からしたら、お前はただの美女だよ…」
「確かにちょっと変わってるタイプだろうけど、それでもポケモンだ」
「ちゃんと人並みに考えて、人並みに悩みもあるんだろ?」
「だったら、それで良いじゃねぇか…俺は、そんなお前を特別扱いしたりしないよ」


我ながら少し臭かったか…?と思うが、後の祭りだ。
別にジガルデも気にした風は無かったみたいだし、この辺は何だで家族連中とは違うよな…
コイツにとっては別に俺は特別な存在でもないし、ただ単に利用出来るから一緒にいるだけだろ。


ジガルデ
「やっぱり変わってるよ、お前は……ほら、着いたぞ?」


「…そうかよ、やっぱここか」


俺は道筋からしてもそうだと思ってた。
そしてその予感は的中…俺はそんな当たり前の様に公園の入り口で立っている。
『ダイヤモンド小公園』…左右反転した、俺が知らない並行世界の公園。
その公園は今も利用者はおらず、ただ違和感だけに包まれていた。


ジガルデ
「準備は良いか? これを割れば奴の空間に辿り着く…」


ジガルデはひとつの黒いガラス玉を取り出して目を細める。
俺はそれを見て無言で頷く。
この先にパルキアはいるのだろうか?
それとも、もっとヤバイ奴が待ってるのか?
どっちにしても、俺は恐怖すら抱いていない…何があっても俺は常葉さんを救う!
誰が相手でも、これだけは絶対に揺るがない!



「やってくれ…そんでもって決戦だ!」


俺が言うと、ジガルデはその玉を握り潰す。
そして瞬時に空間は闇へと包まれ、俺は感じた事の無い違和感に包まれた。
このこの感覚、前の混沌とも違う…!
白那さんの空間転移とも違う感覚だ…
俺たちは一瞬にして闇に包まれる空間に身を起き、そこから周囲を探った。



(視界は無い…だけどジガルデの姿は見える)


要は最果てと同じ仕様だ。
だが、ここは明らかに重力がある。
暗闇だが、ツルツルの床を踏みしめている様な感覚があるのだ。


ジガルデ
「ちっ…誰もいないのか?」


「みたいだな…が、パルキアが相手ならいつでも空間転移は出来ると考えて良い」


「安心しろよ、今はソイツはいない」


俺は背後から声を聞き、即座に振り向く。
その先には、ひとりの少年の姿があり、俺は目を見開いて驚いていた。
幻覚じゃない、そこにいたのは間違いなく…



「よう、初めまして…俺」


「何のネタだこりゃ? どうして、俺がここにいる!?」


あまりの事に頭がテンパっている。
何がどうして俺が目の前にいるんだ?
いや、正確には昔の俺と言って良い…体は細いし、身長も少しだけ低く見える。
服は夏服の学校指定制服を着込み、虚ろな目で俺を憎らしそうに睨んでいた。


ジガルデ
「何だ…? まさかコイツもパチモンか!?」

偽聖?
「何だ、結局失敗したのか? 所詮パルキアって言っても、紛い物か…最後は役に立たなかったな」


「まさか…お前が常葉さんと俺を交換したのか!?」


俺はやや声を荒らげてそう聞くが、もうひとりの俺は憎らしく顔を歪ませ、歯軋りする。
何だコイツのこの憎悪みたいなのは?
俺はこの時点で、少し疑問に思う。
色ジガルデさんが言っていた、もうひとつの雫。
それは、コイツが持っている物だったのか?
だとしたら、コイツは本来常葉さんの世界で存在した俺、なのか…?


偽聖?
「さて、そうだとしたらどうする?」


「元に戻せ! そうしたら1発ぶん殴って終わりにしてやる!!」


俺は右手を横に払い、そう宣言する。
するともうひとりの俺は笑い、その面はまさに悪党その物に見えた。
チクショウ…俺ってこんな悪党面出来たのかよ?


偽聖?
「お前、何か勘違いしてるんじゃないのか?」
「わざわざふたりだけで来るとは、良い度胸してるじゃないか!」


「罠があろうが、既にかかって様が関係無ぇよ!」
「俺はお前が現況だってんなら、許さない!」
「常葉さんを返してもらうぞ? そしてこのジガルデも元の世界に戻す!!」


俺は親指を立ててジガルデを指差しそう言う。
それを見て、もうひとりの俺は更に顔をしかめた。
やはり、コイツは何か俺に対して恨みを持ってる…?
だが、その理由は何だ!?
コイツが秘めている悪意は…一体何なんだ!?


偽聖?
「クソが…余裕あるじゃねぇか!!」
「何で…お前は成功したんだよ……!」


「…? 何だと?」


俺はボソッと毒づいたその声を正確には聞き取れなかった。
だが、コイツが俺に憎悪を向けているのは解る。
目的は解らないが、コイツは確かに悪意を持って今回の混沌を起こしたんだ!


ジガルデ
「どうでも良い事をゴチャゴチャ言ってんじゃないよ!」
「こちとら、イライラしてんだ! さっさと私を元の世界に戻せ!!」

偽聖?
「道具が偉そうに喋るな…利用価値も無いハズレアイテムが」


もうひとりの俺はそんな事を喋って歯軋りする。
まるでジガルデの事など眼中に無いと言った顔で、アイツは俺だけを見ていた。
それに対し、当たり前だがジガルデは怒る。
そして、そんなもうひとりの俺に対し、ジガルデは右手を輝かせて足元を掌で突いた。
その瞬間、地面は輝いて一瞬の内にもうひとりの俺を攻撃する。
まるで地震の様だが、全然違う…敵の足元から力場が生まれ、天高く立ち上るその力は、見た事も無い技だった。
いや、違う…見た事はある。
確か、前に色ジガルデさんがパルキアを攻撃した技に酷似してる…って事は。


偽聖?
「うるさいハエが、ルールが飲み込めていないのか?」

ジガルデ
「がぁぁぁぁっ!?」


突然、ジガルデが宙を舞う。
俺は状況が理解出来ずに戸惑い、ジガルデが無造作に地面へ落ちるのを見ている事しか出来なかった…



「今の『グランドフォース』が、まるで効いていない!?」

偽聖?
「少しは理解したか? 俺はゲームマスターだ…お前らは俺が創った世界で遊んでいる駒に過ぎない」


俺は頭をフル回転させて今のセリフを正しく変換しようとする。
だが意味がまるで解らない! ゲームマスター? 駒…?
俺はこの時点でひとつだけゾッとする答えを導き出した。
もし奴が夢見の雫の継承者であるなら、それはまさに神。
俺たちは、いわば神に逆らうウィルスみたいな物…?



「お前…! 雫を何に使ったぁ!?」

偽聖?
「流石は俺だ、理解が速いな…だが勘違いするな、お前の質問なんて俺は求めてない」
「常葉 茂の事も俺には興味が無い、俺は俺の目的の為だけに、ゲームデザインをしたに過ぎないんだからな!」


俺は拳を握って震える。
やはり、コイツは明確な悪意を持って雫を使ったんだ…!
その結果が解ってないのか? コイツは解っててそんな無茶をしてるのか?
どっちにしても、無敵化なんてやりすぎだ!
コイツはそこまでのリスクを犯してでもやりたい事があるのか!?


ジガルデ
「…の、野郎……!!」


ジガルデは体をボロボロにしながらも立ち上がる。
だが様子がおかしい、ジガルデの体からはセルがボロボロと崩れ落ち、体型を維持出来なくなってるのだ。
『スワームチェンジ』の特性なら、むしろダメージで体は大きくなるはず。
なのに、ジガルデは逆に小さくなってる…?


偽聖?
「ふん、思ったよりタフだったか…まぁ、もう大して動けないだろ?」
「それよりも、いい加減俺の目的を達成する…」
「出来損ないのパルキアが役に立たなかったせいで、結局この様だ」


「お前…! 白那さんに何かしたんじゃねぇだろうな!?」

偽聖?
「白那…? 誰だか知らないが、自分の心配をしろ!」


もうひとりの俺が手をかざすと、俺は突然痛みに襲われる。
何をされたのか全く解らなかったが、それが奴の設定したチート攻撃だと俺は予測。
つまり、マトモに抵抗しても俺は勝ち目が無い。
完全にしくじった…! まさか、夢見の雫が敵に回るとは思ってもいなかった!!


偽聖?
「さぁ、お前の雫を貰うぞ? そして俺は今度こそ家族を救う!!」


「な…ん……だ、と……!?」


俺は継続する痛みに耐えながらも、言葉を放つ。
そして、俺は察した…コイツの憎悪、悪意、追い詰められた目。
そうか…そうだったのか。


偽聖?
「安心しろ、お前の雫は俺が有効活用してやる」


「情けねぇ奴だな…負け犬?」


近付いて来るもうひとりの俺に向かって俺はそう言う。
すると、俺の言葉に奴は立ち止まった。
そしてプルプルと震え、俯き気味に俺を睨み付ける。
図星かよ…くだらねぇ。



「お前は、小物だよ…レベリングも出来ずに、チート使ってゲームをクリアしようとする程度のな!」

偽聖?
「黙れ!! 俺はまだ負けてないんだ!!」


奴は俺への攻撃を強める。
意識を飛ばさない様に気を付けながら、俺はその場で痙攣し、何とか耐えてみせる。
だが体は自由に動かない…どうやら奴の力で目に見えない拘束が施されてるらしい。
俺は舌打ちしながらも、しっかりとした目で奴を見た。
それ見て、もうひとりの俺は忌々しそうに歯軋りする。


偽聖?
「何とでも言うが良い…! 俺は絶対にやり直して今度こそ勝つ!」


「無理だな…お前が何をやっても救いは有り得ない」

偽聖?
「お前の言葉など必要ない!! これは決定事項だ!!」
「例えお前を殺してでも俺は雫をもうひとつ手に入れる!!」


やっぱり、コイツは何も解っちゃいない。
夢見の雫に秘められた本当の想いも、どうやって俺の元に引き継がれたか、その願いも…
そんなバカな悪党に夢見の雫を使わせる?
無理だそんなの…結果が目に見えてる。
でも、コイツはそれが解っちゃいない…ただ、理不尽なクソゲーと断じてただの高難易度ゲーを酷評してるだけだからな。
そんな奴に…夢見の雫は使えない。


ジガルデ
「クソッタレがぁ!!」


ジガルデはボロボロの体を動かし、四つん這いになってグランドフォースを放つ。
だがそれは俺の足元に放たれ、俺は一瞬の痛みと共に宙に吹き飛ばされた。
そして俺を拘束していた何かが解かれる。
やるじゃないか…多分テキトーにやったんだろうけど、今はそれが正解みたいだぜ!?
俺はジガルデにキャッチされ、すぐに下に下ろされてジガルデに守られる。
おいおい…殊勝じゃないか。


偽聖?
「ちっ! あんな方法で束縛を解くとは…だが、何をやっても同じだ!!」

ジガルデ
「がはぁ!?」


ジガルデは再び宙を舞う。
そして更にセルはバラバラになり、もはや小さな子供にまで体を小さくしていた。
ダメだ…! これ以上はジガルデも持たない!!
俺は歯を食い縛って立ち上がり、奴の目を強く見る。
そして、俺は無造作に夢見の雫を取り出して奴に見せ付けた。


偽聖?
「!? 何の、つもりだ…!」


「出せよ、テメェの雫をよ!?」
「どうせ、濁りきって限界なんだろ? おら、どうした!?」


俺は乱暴な言い回しでわざと挑発する。
すると、奴は素直にそれを外に出し、顔を歪ませた。
その色の差は歴然。
透明な俺の雫に対し、奴のは黒く濁っていた。
だが、その濁りの中でも、僅かに綺麗な色もある。
そうだ、アイツは俺なんだ…だったら俺は教えてやらなきゃならない。



「相当、やり直したんだろうな…だけど、お前は勝てなかった」

偽聖?
「だったらどうした!? 嫌みのつもりか!?」


「そうじゃない、お前は正しい雫の使い方を知らないだけだ」


俺の真面目な言葉に、もうひとりの俺は?を浮かべる。
俺は構わずに言葉を続けた。



「夢見の雫は、正しい心で使う時のみ、その濁りは薄まる」
「そして悪意を持って使えば暗く濁り、やがて世界すらも滅ぼす」

偽聖?
「何だそれは? つまり、俺が間違っていると言いたいのか!?」


「当たり前だろうがバカヤロウ!!」


俺は強く言ってやる。
すると、驚いたのか奴は体をビクッと震わせ、目を見開いていた。
弱気なこった…まぁ、俺なんだから当然か。
俺だって…絶望してた時は、きっとこんなんだったんだろう。



「お前だって、救いたいのは同じなんだ…なのに、お前は雫の意味も知らずにただ使い潰しただけ」

偽聖?
「意味だと? これは所詮願いを叶える欲望のアイテムだ!!」
「こんなチートアイテムを手に入れたら、使えるだけ使うのがフツーだろうが!?」


「恵里香がそれを望んだとでも言うのかよ!?」


俺の叫びに、奴は狼狽える。
そうだろうさ…絶対に恵里香はこんな俺を望まない。
でも、恵里香の事だから何も言わなかったんだろう。
きっと心の中では泣いて、それでも俺を信じて助けようとしたんだろう。
コイツはそんな事も忘れて、独り善がりに戦っていたんだ…


偽聖?
「黙れ……黙れ黙れ黙れ!!」
「俺は勝つ! 例え悪魔に魂を売ってでも家族を救う!!」
「恵里香はそんな俺を信じると言ってくれた! なら俺は何をやってでも結果を出す!!」


「その為に犠牲を生み出して、お前は満足なのかよ!?」

偽聖?
「犠牲が何だってんだ!? そんな綺麗事で救えるなら、俺はこんな所にいない!!」


「違うだろ! 何で歪んだ!? お前の雫が、誰の願いで受け継がれたか知らないからそんな事が言えるんだろうがぁ!?」


俺の叫びに、奴は言葉を詰まらせる。
そして?を浮かべ、数秒の静寂が生まれた。
俺は息を荒らげ、呼吸を整えて雫を見る。



「…お前の雫を俺に寄越せ、代わりにコイツはくれてやる」

偽聖?
「なっ!? 正気かお前!?」


俺はつかつかと近付き、奴にそう言って雫を差し出してやる。
そもそも、交換して正常に使えるのかは知らないが、とりあえず何とかなんだろ…多分!
俺は半ば強引に奴の雫を奪い取り、そして俺の雫を奴に渡してやった。
奴はかなり戸惑っており、俺の顔と透明な雫を交互に見る。
そんな奴に、俺はこう言ってやった。



「ひとつ、賭けをしようか?」

偽聖?
「賭け…だと?」


「俺は今から、この雫を使ってひとつの願いを叶える」
「もしそれに成功したら、その雫はお前の好きにして良いよ…」
「失敗したら…まぁスマン、一緒に死んでくれ!」

偽聖?
「なっ!? そんなふざけた賭けに乗れるかバカヤロウ!!」


あからさまに狼狽えてやんの…俺はケラケラ笑って横目に奴を見た。
そして俺は真面目な顔をし、限界ギリギリっぽい奴の雫にひとつの願いを込める。
するとそれは明るい光を放ち、まるで光溢れる世界の中に、たったひとつ浮かび上がった黒点の様な物に見えた。


偽聖?
「…何だ、この光は?」


「まぁ安心しろよ、この願いにはお前の事も入れてあるから」

偽聖?
「何…だと?」


「滅んだとしても、それは俺とこの虚無の空間だけだ」


つまり、どっちに転んでもコイツにはメリットしかない。
失敗する気も無いがな…この輝き方を見る限り。
俺は、この時点で何となく…夢見の雫のシステムを少し理解した。
コイツは使う人間の悪意よりも、その周りの悪意に左右されやすい。
あくまで仮説だが、この閉じられた空間で俺が使うのであれば、恐らく暴走の危険は限りなく低い。
もちろん、どれだけの願いを叶えるか…ってのに左右されるが、な……



「じゃあな、ジガルデ! お前の事もしっかり元に戻してやるから、そん時は妙な教団作るんじゃねぇぞ!?」

ジガルデ
「ちっ…何だよ、そりゃ」
「でもまぁ、結果良けりゃ全て良し! 私はそれで良いよ…」


ジガルデはすっかり幼女みたいな姿になってそう笑った。
服がブカブカになって、被さってるみたいになってるな…意外と可愛く見えるじゃないか!



「良いか、よく見てろよもうひとりの俺!? これが、夢見の雫に秘められた本当の輝きだ!!」

偽聖?
「本当の…輝き……?」


俺が使った雫は更に輝きを増す。
そこに濁りは一切無い…俺は安心した。
何だかんだで、コイツもしっかり俺なんだと理解出来たんだ。
なら、後はもう大丈夫だろ……俺は俺を信じるさ。



「お前は、もう少し周りを信じろ…全部救うのに、お前だけが戦ってるんじゃないんだから」


俺は最後にそう言って笑い、雫の輝きは黒の世界を埋め尽くす。
もはや視界すら封じられ、俺の願いは発動された。
その輝きに飲まれ、俺は意識を微睡ませる。
さて…そろそろ帰るか……?










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』

X

『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』



第7話 『夢見の雫に込める願い』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 21:38 )